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審決分類 審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 取り消して特許、登録 F16C
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 F16C
管理番号 1301035
審判番号 不服2014-22010  
総通号数 187 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-07-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-10-30 
確定日 2015-06-15 
事件の表示 特願2012-548365「機械的な燃焼機関冷却材ポンプ」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 7月14日国際公開、WO2011/083011、平成25年 5月13日国内公表、特表2013-516589、請求項の数(8)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2010年12月15日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2010年1月11日、欧州特許庁)を国際出願日とする出願であって、平成25年8月2日付けで拒絶理由が通知され、平成25年12月12日に意見書が提出され、平成26年6月26日付け(発送日:平成26年6月30日)で拒絶査定され、平成26年10月30日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に、手続補正書が提出されて特許請求の範囲を補正する手続き補正がなされ、その後、平成27年5月15日に上申書が提出されたものである。

第2 平成26年10月30日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)の適否

1.補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲の請求項1を、「内燃機関のための冷却材をポンピングするための機械的な燃焼機関冷却材ポンプにおいて、
定置の円筒形の支持体(22)と、
ころ軸受(28)によって円筒形の支持体(22)に支持されかつ燃焼機関によって駆動される回転可能な駆動ホイール(32)と、
ころ軸受(26)によって円筒形の支持体(22)に支持された回転可能なロータ軸(18)に設けられたポンプホイール(20)と、
駆動ホイール(32)をポンプホイール(20)に接続するための切換え可能な摩擦クラッチ(40)とを備え、
円筒形の支持体(22)が、駆動ホイールころ軸受(28)の内輪を一体に有しており、
円筒形の支持体(22)が、軸ころ軸受(26)の外輪を一体に有しており、
円筒形の支持体(22)自体が、駆動ホイールころ軸受(28)の内輪を構成しかつ軸ころ軸受(26)の外輪を構成していることを特徴とする、機械的な燃焼機関冷却材ポンプ(10)。」とする補正(以下、「補正事項」という。)である。

2.補正の適否
本件補正の補正事項は、請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である「円筒形の支持体(22)」について、「駆動ホイールころ軸受(28)の内輪を構成しかつ軸ころ軸受(26)の外輪を構成している」との限定を付加するものであって、補正前の請求項1に係る発明と補正後の請求項1に係る発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また、特許法第17条の2第3項及び第4項に違反するところはない。
そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について以下に検討する。

2-1.刊行物の記載事項
(1)原査定の拒絶理由に引用された本願の優先日前に頒布された刊行物である独国特許公開第102008013534号明細書(以下、「刊行物1」という。)の段落[0001]-[0002]、[0020]-[0034]及び図面には、本願補正発明に則って整理すると、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
「内燃機関のためのクーラントをポンピングするための機械的な内燃機関クーラントポンプにおいて、ポンプハウジング1と、プーリー軸受2によってポンプハウジング1に支持されかつ内燃機関によって駆動される回転可能なプーリー3と、ポンプ軸受4によってポンプハウジング1に支持された回転可能なポンプ軸5に設けられた羽根車6と、
プーリー3を羽根車6に接続するための切り替え可能な作業コーン26とを備え、ポンプハウジング1がプーリー軸受2の内輪を支持しており、ポンプハウジング1がポンプ軸受4の外輪を支持している、機械的な内燃機関クーラントポンプ。」

(2)本願の優先日前に頒布された刊行物である特開昭58-13222号公報(以下、「刊行物2」という。)の第1図には、外側ラジアルニードルころ軸受(1)の内輪(3)の内側に、内側ラジアルニードルころ軸受(11)の外輪を支持させた構造が記載されている。

(3)本願の優先日前に頒布された刊行物である特開昭51-40442号公報(以下、「刊行物3」という。)の第3図には、軸受の中間リング(12)が、内側コロガリ軸受(A2)の外輪を構成し、外側コロガリ軸受(A1)の内輪を構成する構造が記載されている。

(4)本願の優先日前に頒布された刊行物である実願昭49-156809号(実開昭51-83546号)のマイクロフィルム(以下、「刊行物4」という。)の第2図には、中間輪17が、第1転動体18の外輪を構成し、第2転動体19の内輪を構成する構造が記載されている。

(5)本願の優先日前に頒布された刊行物である特表2002-500715号公報(以下、「刊行物5」という。)の図2には、中間リング13が、ニードル列17の外輪を構成し、ニードル列16の内輪を構成する構造が記載されている。

(6)本願の優先日前に頒布された刊行物である特開2008-57764号公報(以下、「刊行物6」という。)の図6には、中間輪105が、内側の円すいころ軸受の外輪を構成し、外側の円すいころ軸受の内輪を構成する構造が記載されている。

2-2.対比
本願補正発明と引用発明とを対比すると、引用発明における「クーラント」は、その技術的意義及び機能からみて本願補正発明における「冷却材」に相当し、以下同様に、「内燃機関クーラントポンプ」は「燃焼機関冷却材ポンプ」に、「プーリー軸受2」は「駆動ホイールころ軸受(28)」に、「プーリー3」は「駆動ホイール(32)」に、「ポンプ軸受4」は「軸ころ軸受(26)」に、「ポンプ軸5」は「ロータ軸(18)」に、「羽根車6」は「ポンプホイール(20)」に、「作業コーン26」は「摩擦クラッチ(40)」に、それぞれ相当する。

したがって、本願補正発明と引用発明とは、以下の一致点で一致し、相違点で相違する。

[一致点]
「内燃機関のための冷却材をポンピングするための機械的な燃焼機関冷却材ポンプにおいて、
駆動ホイールころ軸受によって支持されかつ燃焼機関によって駆動される回転可能な駆動ホイールと、
軸ころ軸受によって支持された回転可能なロータ軸に設けられたポンプホイールと、
駆動ホイールをポンプホイールに接続するための切換え可能な摩擦クラッチとを備える機械的な燃焼機関冷却材ポンプ。」

[相違点]
本願補正発明は、定置の円筒形の支持体(22)を有し、(駆動ホイール(32)及びロータ軸(18)を回転可能に支持するために)円筒形の支持体(22)が駆動ホイールころ軸受(28)の内輪を一体に有しており、円筒形の支持体(22)が、軸ころ軸受(26)の外輪を一体に有しており、円筒形の支持体(22)自体が、駆動ホイールころ軸受(28)の内輪を構成しかつ軸ころ軸受(26)の外輪を構成しているのに対して、引用発明は、円筒形の支持体を有しておらず、(プーリー3及びポンプ軸5を回転可能に支持するために)ポンプハウジング1がプーリー軸受2の内輪と、ポンプ軸受4の外輪を支持している点。

2-3.当審の判断
以下、相違点について検討する。
刊行物2に記載された「外側ラジアルニードルころ軸受(1)の内輪(3)」、刊行物3に記載された「中間リング(12)」、刊行物4に記載された「中間輪17」、刊行物5に記載された「中間リング13」及び刊行物6に記載された「中間輪105」は、いずれも回転する部材であって、本願補正発明の「円筒形の支持体(22)」のように定置されるものではない。
この他にも、定置される部材自体に、内側のころ軸受の外輪を構成させると共に、外側のころ軸受の内輪を構成させることが周知であることの証拠は発見できない。
してみると、引用発明に「定置の円筒形の支持体(22)」を設けるとともに、「円筒形の支持体(22)自体が、駆動ホイールころ軸受(28)の内輪を構成しかつ軸ころ軸受(26)の外輪を構成」するものとすることは、当業者といえども容易になし得たことではない。

2-4.結論
したがって、本願補正発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明するすることができたとはいえない。
よって、本件補正の補正事項は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合する。

3.むすび
本件補正は、特許法17条の2第3項ないし第6項の規定に適合する。

第3 本願の請求項1ないし8に係る発明
本件補正は上記のとおり特許法17条の2第3項ないし第6項の規定に適合するから、本願の請求項1ないし8に係る発明は、本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし8に記載された事項により特定されるとおりのものである。
そして、本願の請求項1に係る発明については、原査定の拒絶理由を検討しても、その理由によって拒絶すべきものとすることはできない。
また、本願の請求項2ないし8に係る発明については、いずれも本願の請求項1に係る発明の発明特定事項を全て含むものであるから、本願請求項2ないし8に係る発明も、拒絶すべきものとすることができない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2015-05-28 
出願番号 特願2012-548365(P2012-548365)
審決分類 P 1 8・ 572- WY (F16C)
P 1 8・ 121- WY (F16C)
最終処分 成立  
前審関与審査官 上谷 公治  
特許庁審判長 森川 元嗣
特許庁審判官 中川 隆司
内田 博之
発明の名称 機械的な燃焼機関冷却材ポンプ  
代理人 久野 琢也  
代理人 アインゼル・フェリックス=ラインハルト  

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