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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H05K
管理番号 1301059
審判番号 不服2014-1768  
総通号数 187 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-07-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-01-31 
確定日 2015-05-21 
事件の表示 特願2011- 3312「部品内蔵配線板の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 4月 7日出願公開、特開2011- 71560〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成17年9月9日に出願した特願2005-261813号(以下、「原出願」という。)の一部を平成23年1月11日に新たな特許出願としたものであって、平成24年7月24日付けの拒絶理由通知に対して、同年9月28日に意見書が提出され、平成25年3月14日付けの拒絶理由通知に対して、同年5月17日に意見書が提出されたが、同年10月30日付け(発送日:同年11月5日)で拒絶査定がされ、これに対して、平成26年1月31日に拒絶査定不服審判の請求がされたものである。その後、当審において、平成26年10月17日付けで拒絶理由を通知し、同年12月18日に意見書が提出されたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1に係る発明は、特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、次のとおりのものである(以下、「本願発明」という。)。
「【請求項1】
配線パターンを少なくとも片面に備えた、エポキシ系樹脂の第1の絶縁板の前記配線パターン上であって電気/電子部品が実装されるべき位置に、すずを含む半田の粒とすずよりも高融点の金属の粒とがフラックス中に分散されたクリーム半田を適用する工程と、
前記クリーム半田を介して前記配線パターン上に前記電気/電子部品を載置する工程と、
前記クリーム半田を加熱しリフローさせて、前記電気/電子部品を前記配線パターンに固定するように、前記クリーム半田から、すずとすずよりも高融点の前記金属とからなる化合物により表面が覆われた前記金属の粒を含有する半田の接続部を形成する工程と、
前記第1の絶縁板とは異なる、エポキシ系樹脂の第2の絶縁板中に、前記配線パターンに固定された前記電気/電子部品を埋め込むように、前記第1の絶縁板に積層状に前記第2の絶縁板を一体化する工程と
を具備することを特徴とする部品内蔵配線板の製造方法。」

第3 刊行物に記載された事項
1.当審の拒絶の理由に引用された、原出願の出願前に日本国内において頒布された特開2003-197849号公報(以下、「刊行物1」という。)には、「部品内蔵モジュールとその製造方法」に関し、図面(特に、【図1】、【図2】参照)とともに、次の事項が記載されている。
以下、下線は当審で付与するものである。

ア.段落【0030】
「【0030】電気絶縁層101は、例えば、絶縁性樹脂及びフィラと絶縁性樹脂の混合物等を用いることができる。電気絶縁層は、樹脂とフィラーを含み、フィラー含量が50質量%以上95質量%以下であることが好ましい。また、ガラスクロス等の補強材があってもよい。絶縁性樹脂としては、熱硬化性樹脂や、熱可塑樹脂、光硬化性樹脂等を用いることができ、耐熱性の高いエポキシ樹脂やフェノール樹脂、イソシアネート樹脂を用いることにより、電気絶縁層101の耐熱性をあげることができる。」

イ.段落【0034】、段落【0035】
「【0034】半田105は、配線パターン102に電子部品104を実装するために用いる。高温半田を用いた場合、モジュールをリフローで実装する際の半田の再溶融を防止できる。また、鉛フリー半田を用いることで環境への負荷を軽減できる。本実施の形態では半田を用いたが、導電性接着剤等を用いてもよい。
【0035】両面基板109としては、ガラス織物にエポキシ樹脂を含浸させた基板(ガラス-エポキシ基板)、アラミド繊維不織布にエポキシ樹脂を含浸させた基板(アラミド-エポキシ基板)、紙にフェノール樹脂を含浸させた基板(紙-フェノール基板)、セラミックス基板など任意の基板から目的に応じて選択し使用できる。」

ウ.段落【0037】?段落【0044】
「【0037】(実施の形態2)この実施形態2では、図1に示した部品内蔵モジュールの製造方法の一実施形態を説明する。実施形態2で用いられる材料は、実施形態1で説明したものである。図2A-図2Dは部品内蔵モジュールの製造工程の一実施形態を示す断面図である。図2Aに示すように、未硬化の電気絶縁層201にスルーホール207を形成する。電気絶縁層201としては、絶縁性樹脂やフィラと絶縁性樹脂との混合物等を用いることができる。最初にフィラと絶縁性樹脂を混合し、攪拌することによって、ペースト状の絶縁性樹脂混合物を作製する。絶縁性樹脂混合物には粘度を調整するために溶剤を添加しても良い。この絶縁性樹脂混合物をシート形状に成形することによって電気絶縁層201を形成できる。シート形状に成形する方法としては、例えば、ドクターブレード法等を用いることによって、フィルム上に作成することができる。電気絶縁層201は、硬化温度以下で乾燥させることによって、粘着性を低下させることができる。この熱処理によって、板状の電気絶縁層の粘着性が失われるため、フィルムとの剥離が容易になる。半硬化状態(Bステージ)にすることにより、取り扱いが容易となる。スルーホール207の形成は、たとえば、レーザー加工やドリル加工、パンチング加工によって作製することができる。レーザー加工は微細なピッチでビアを形成することができ、削りくずも発生しないため望ましい。レーザー加工の場合、炭酸ガスレーザーやYAGレーザー、エキシマレーザー等を用いることができる。また、ドリル加工、パンチング加工の場合、汎用性のある既存の設備でのスルーホール形成が容易である。未硬化状態の電気絶縁層201を用いることで加工がしやすくなる。
【0038】別にキャリア206上に配線パターン202を形成したものを準備する。配線パターン202は、エッチング、印刷といった方法を用いて形成することができる。特にエッチングでは、フォトリソ工法など微細な配線パターンの形成法を利用できる。キャリアとしては、PET(ポリエチレンテレフタレート)やPPS(ポリフェニレンサルファイト)の様な樹脂フィルムの他、銅箔、アルミ箔の様な金属箔等を用いることができる。キャリア206を用いることにより、配線パターン202の取り扱いが容易となる。また、配線パターン202とキャリア206の間に配線パターン202をはがしやすくするために剥離層があってもよい。
【0039】配線パターン208,210とその間を接続するインナービア209を有する両面配線基板211上の配線パターン208に部品204を半田205による実装し、その後、実装検査および特性検査から選ばれる少なくとも一つの検査を完了しておく。配線パターン210の下側には保護フィルム212を被覆しておいても良い。
【0040】次に、図2Aで作成したスルーホール207に導電性ビアペーストを充填する。導電性ビアペーストは導電性粉末と樹脂の混合物、たとえば金、銀、銅、ニッケル等の金属粉やカ-ボン粉と熱硬化性樹脂や光硬化性樹脂の混合物を用いることができる。銅を用いた場合は導電性が高く、マイグレショーンも少ないため望ましい。また、粉末を銅でコートした導電性粉末を用いてもよい。樹脂としては、熱硬化性樹脂、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、イソシアネート樹脂、ポリフェニレンエーテル等を用いることができる。エポキシ樹脂は耐熱性が高く特に望ましい。また、光硬化性の樹脂も用いることができる。ビアペーストの充填には、印刷や注入による方法を用いることができる。特に印刷の場合、配線パターンの形成も行うことができる。ビア203を形成することで、配線パターン202と208間の接続が可能となる。また、電気絶縁層201に内蔵する電子部品204のスペースを形成しておいてもよい。スペースを形成することによってビア203が変形することを抑制できる。
【0041】配線パターン208,210とその間を接続するインナービア209を有する両面配線基板211上の配線パターン208に電子部品204を実装する方法としては、半田205による半田実装(クリーム半田の印刷や半田ボール)の他、導電性接着剤、たとえば、金、銀、銅、銀-パラジウム合金などを熱硬化性樹脂で混練したものも使用できる。また、実装した電子部品204と両面配線基板211の間に、封止樹脂を注入してもよい。封止樹脂の注入によって、後の工程で電子部品204を電気絶縁層201に埋設する際に、隙間ができることを防止することができる。封止樹脂には通常のフリップチップボンディングに使用されるアンダーフィル樹脂を用いることができる。実装後、実装状態をチェックすることで、リペアや不良の原因解析を行うことができるようになる。
【0042】導電性ビアペーストが充填されたビア203を有する電気絶縁層201を中央に配置し、上側にキャリヤーフィルム206上に形成した配線パターン202を配置し、下側には電子部品204を実装した両面基板211を配置し、これらを図2Bのように位置あわせして積層する。
【0043】図2Bの積層後、図2Cに示すように、加圧することによって、電子部品204を電気絶縁層201に埋設する事ができる。絶縁性樹脂に熱硬化樹脂を用いた場合、加圧後、加熱することによって、電気絶縁層201中の熱硬化性樹脂を硬化させ、電子部品204が埋設された板状の電気絶縁層201が形成できる。加熱は、熱硬化性樹が硬化する温度以上の温度で行う。この工程によって、電気絶縁層201と電子部品204とが機械的に強固に接着する。なお、加熱によって熱硬化性樹脂を硬化させる際に、加熱しながら100g/mm^(2)?2kg/mm^(2)の圧力で加圧することによって、半導体装置の機械的強度を向上させることができる。また、シート形状の電気絶縁層を用いずに、粉末やペレット状に加工した後に、金型に溶融して流すこともできる。また、粉末のまま流し込んだ後に、溶融成形することもできる。絶縁性樹脂層を注入する方法としては、トランスファーモールドや射出成形を用いることができる。
【0044】電気絶縁層201の硬化後、キャリア206を剥離し、電子部品204を内蔵した電気絶縁層201となり、実施形態1で説明したように、両面基板211を一体化した半導体装置が形成できる。」

上記記載事項から次の事項が理解できる。

エ.上記記載事項ウ、特に段落【0041】から、配線パターン208,210を有する両面基板211の配線パターン208上であって電子部品204が実装されるべき位置に、半田205による半田実装(クリーム半田の印刷)が使用される。
また、当該実装の前提として、前記クリーム半田を介して前記配線パターン208上に前記電子部品204が載置される。

オ.上記記載事項イ、特に段落【0035】から、両面基板としては、ガラス織物にエポキシ樹脂を含浸させた基板(ガラス-エポキシ基板)が使用される。

カ.上記記載事項ウ、特に段落【0039】、段落【0041】の「クリーム半田」に照らせば、両面配線基板211上の配線パターン208上に電子部品204がクリーム半田205によって実装される前提として、当然、前記クリーム半田を加熱しリフローさせて、前記電子部品204を前記配線パターンに固定するように、前記クリーム半田から、半田の接続部が形成される。

キ.上記記載事項ウ、特に段落【0043】、段落【0044】から、図2Bの積層後、図2Cに示すように、加圧することによって、電子部品204が電気絶縁層201に埋設され、電気絶縁層201の硬化後、キャリア206が剥離され、電子部品204を内蔵した電気絶縁層201となり、両面基板211が一体化される。

これら記載事項、図示内容及び上記認定事項を総合して、本願発明に則って整理すると、刊行物1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

「配線パターン208,210を備えた、ガラス織物にエポキシ樹脂を含浸させた両面基板211の前記配線パターン208上であって電子部品204が実装されるべき位置に、クリーム半田205を使用する工程と、
前記クリーム半田205を介して前記配線パターン208上に前記電子部品204を載置する工程と、
前記クリーム半田205を加熱しリフローさせて、前記電子部品204を前記配線パターン208に固定するように、前記クリーム半田205から、半田の接続部を形成する工程と、
前記両面基板211とは異なる、電気絶縁層201の中に、前記配線パターン208に固定された電子部品204を埋め込むように、前記両面基板211に積層状に前記電気絶縁層201を一体化する工程と
を具備する部品内蔵モジュールの製造方法。」

2.同じく引用された、原出願の出願前に日本国内において頒布された特開2002-314241号公報(以下、「刊行物2」という。)には、「電子機器」に関し、図面(特に、【図1】、【図2】、【図4】、【図5】、【図6】及び【図9】参照)とともに、次の事項が記載されている。

ク.段落【0018】ないし段落【0020】
「【0018】図2の例では、金属ボール6はCuを用いていて、はんだ7はSn、その化合物8はCu-Sn化合物により構成される。この図1に示した実装構造体19の製造方法を、図4、図5を用いて説明する。第1工程において、中間基板2の電極4に、混合ペースト9を印刷によって供給し、第2工程において、半導体チップ1を搭載する。この時の混合ペースト9の供給の状態を拡大して図6に示したが、混合ペースト9は、Cuからなる金属ボール6と、Snからなるはんだボール10とをフラックス成分11を用いて、混合してある。第3工程でこれらをリフロー加熱し、接続部5を得る。これに第4工程において、封止樹脂12によりチップ周囲を封止する。第5工程で、半導体チップ1が実装された面と反対側の中間基板2の電極13にはんだボール14を供給し、第6工程で、プリント配線基板15の配線ランド16に迎えはんだ17を行い、第7工程で、これらをリフロー加熱を行い、はんだボール14と迎えはんだ17を接続18し、実装構造体19を得る。
【0019】第3工程での加熱温度は、はんだボール10のSnを溶融させる必要があり、はんだボール10の大きさにもよるが、Snの融点232℃以上あれば良い。しかし、加熱後に接続部を更に高融点にするために、Snの融点に比べ十分高い温度、即ち最高温度280℃でリフローを行った。ペーストのフラックス成分11は、Snが溶融し、Cuとのぬれが確保できることが必要であり、RMA(Rosin mildly activated)、RA(Rosin activated)のどちらも可能であるが、今回はロジン系のRMAタイプを用いて行った。雰囲気は、大気中でも良いが、よりCuとSn間のぬれ性を向上させるために、窒素等の不活性雰囲気を用いて行った。RMAタイプは、洗浄が難しい実装構造、例えば、非常に狭ピッチな構造、あるいは洗浄してもその洗浄残渣がかえって問題となりうる構造に適していて、この場合には、活性が弱いため、窒素等の不活性雰囲気下で接続を行う方が望ましい。RAタイプは、洗浄が可能である構造の場合に好ましい。この場合には大気中でも接続が可能となる。また、接続後にアンダーフィルとして利用できるフラックスを使用しても良い。このアンダーフィルは半導体チップ1と中間基板2間を全て覆うことが接続部の寿命向上に望ましいが、図7の様に、電極の周囲のみが樹脂20で覆われていても、接続端部の応力集中を緩和できるため、接続部の寿命向上に効果がある。
【0020】このように図6に示した構成のものを加熱すると、はんだボール10のSnが溶融して、金属ボール6のCuとの界面で金属間化合物を形成し、Cuの金属ボール6間が連結された。この時の接続部5の金属顕微鏡による観察結果を図8に示し、模式図を図9に示したが、界面には、CuとSnの化合物8の層が形成されている。また、溶融したSnは、半導体チップ1の電極3、中間基板2の電極4とも金属間化合物を形成するため、Cuによる金属ボール6と電極3、電極4がそれぞれ連結された。このようにして、半導体チップ1の電極3と中間基板2の電極4が連結される。従って、これらの化合物層形成により、250℃以上での高温でも強度を保つことができる。最終的には、図1中の接続部5は、はんだボール10のSnがCu-Sn金属間化合物(Cu_(6)Sn_(5)、融点:約630℃)となって、接触部及びその近傍は高融点化する。たとえSnの一部が残っても、他の部分が溶融しなければ、後付けのはんだ接続時のプロセスに耐えられる強度を十分に確保できる。」

上記記載事項ク及び【図9】から次の事項が理解できる。

ケ.中間基板2の電極4に、混合ペースト9を印刷によって供給し、すなわち、クリーム半田を適用し、半導体チップ1を搭載してからリフロー加熱し、接続部5を得る。当該接続部5における銅ボール6とすずはんだ7の界面には、金属間化合物(Cu_(6)Sn_(5)、融点:約630℃)層が形成され、当該層が半導体チップ1と中間基板2の接続部を高融点化する。
また、銅はすずよりも高融点の金属であり、クリーム半田を構成する粒がフラックス中に分散していることは自明であるから、半導体チップ1が実装されるべき位置に、すずを含む半田の粒とすずよりも高融点の銅の粒とがフラックス中に分散されたクリーム半田を適用し、前記クリーム半田を加熱しリフローさせて、前記半導体チップ1を電極4に固定するように、前記クリーム半田から、すずとすずよりも高融点の銅とからなる金属間化合物により表面が覆われた前記銅の粒を含有する半田の接続部が形成される(以下、「技術的事項」という。)。

第4 対比
本願発明と引用発明とを対比する。

1.引用発明の「配線パターン208,210を備えた」ことは、その機能、構造からみて、本願発明の「配線パターンを少なくとも片面に備えた」ことに相当する。同様に、「ガラス織物にエポキシ樹脂を含浸させた両面基板211」は「エポキシ系樹脂の第1の絶縁板」に、「前記配線パターン208上であって電子部品204が実装されるべき位置」は「前記配線パターン上であって電気/電子部品が実装されるべき位置」に、「前記クリーム半田205を介して前記配線パターン208上に前記電子部品204を載置する工程」は「前記クリーム半田を介して前記配線パターン上に前記電気/電子部品を載置する工程」に、「前記クリーム半田205を加熱しリフローさせて、前記電子部品204を前記配線パターン208に固定する」ことは「前記クリーム半田を加熱しリフローさせて、前記電気/電子部品を前記配線パターンに固定する」ことに、「前記両面基板211とは異なる、電気絶縁層201の中に、前記配線パターン208に固定された電子部品204を埋め込むように、前記両面基板211に積層状に前記電気絶縁層201を一体化する工程」は「前記第1の絶縁板とは異なる、エポキシ系樹脂の第2の絶縁板中に、前記配線パターンに固定された前記電気/電子部品を埋め込むように、前記第1の絶縁板に積層状に前記第2の絶縁板を一体化する工程」に、「部品内蔵モジュール」は「部品内蔵配線板」に、それぞれ相当する。

2.そして、引用発明の「クリーム半田205を使用する工程」及び「前記クリーム半田205から、半田の接続部を形成する工程」と本願発明の「すずを含む半田の粒とすずよりも高融点の金属の粒とがフラックス中に分散されたクリーム半田を適用する工程」及び「前記クリーム半田から、すずとすずよりも高融点の前記金属とからなる化合物により表面が覆われた前記金属の粒を含有する半田の接続部を形成する工程」とは、「クリーム半田を適用する工程」及び「半田の接続部を形成する工程」という限りで共通する。

以上の点からみて、本願発明と引用発明とは、

[一致点]
「配線パターンを少なくとも片面に備えた、エポキシ系樹脂の第1の絶縁板の前記配線パターン上であって電気/電子部品が実装されるべき位置に、クリーム半田を適用する工程と、
前記クリーム半田を介して前記配線パターン上に前記電気/電子部品を載置する工程と、
前記クリーム半田を加熱しリフローさせて、前記電気/電子部品を前記配線パターンに固定するように、前記クリーム半田から、半田の接続部を形成する工程と、
前記第1の絶縁板とは異なる、エポキシ系樹脂の第2の絶縁板中に、前記配線パターンに固定された前記電気/電子部品を埋め込むように、前記第1の絶縁板に積層状に前記第2の絶縁板を一体化する工程と
を具備する部品内蔵配線板の製造方法。」
である点で一致し、

次の点で相違する。
[相違点]
クリーム半田の成分及び半田の接続部の半田の成分について、本願発明では、「すずを含む半田の粒とすずよりも高融点の金属の粒とがフラックス中に分散されたクリーム半田」及び「すずとすずよりも高融点の前記金属とからなる化合物により表面が覆われた前記金属の粒を含有する半田の接続部を形成する工程」あるのに対して、引用発明では、電気/電子部品が実装されるべき位置に適用するクリーム半田の成分が不明であり、半田の接続部の半田の成分も不明である点。

第5 判断

1.上記相違点について検討する。
引用発明によって形成された半田の接続部は、二次実装に供された場合、当該半田の再溶融を防止できるものと解される(段落【0034】参照)。
また、刊行物2に記載された接続部も、リフロー加熱をすると、はんだボールのSnが溶融して、金属ボールのCuとの界面で金属間化合物(Cu_(6)Sn_(5)、融点:約630℃)層を形成し、当該層が半導体チップと中間基板の接続部を高融点化するから(段落【0020】)、中間基板とプリント配線基板を接続する二次リフロー加熱をする際(【図4】の第7工程参照)、半導体チップと中間基板の接続部の半田の再溶融を防止できると解される。
そうすると、引用発明と刊行物2に記載された技術的事項は、二次リフロー加熱をする際、半田の再溶融を防止できるという作用・機序において共通するから、引用発明に刊行物2に記載された技術的事項を適用することに動機付けがあるといえ、上記相違点の発明特定事項とすることは、当業者が容易になし得たことである。

なお、請求人は、平成26年12月18日付けの意見書で「引用文献1に記載される技術は、その段落0030にあるように、『耐熱性の高いエポキシ樹脂・・・』の使用を前提としていると見るのが相当であります。この前提の原因は、同文献段落0034にあるように、半田の再溶融を防止するためには高温半田を使用することを要し、そして高温半田を使用するには、『耐熱性の高いエポキシ樹脂・・・』(段落0030)が必要になるからであります。他方、引用文献2が開示する技術は、その発明の目的として段落0006に『鉛を多く含む融点の高いはんだの代替材料・・・を提供』とあるように、今までいわゆる高温半田が使用されている場合にこの代わりとして用い得るはんだに過ぎません。このような半田は、『温度階層接続』(同文献要約、段落0005を参照)で用いられるものであり、もっぱら半田の再溶融が起こらないようにすることに視点があり、本願明細書段落0004で指摘するような絶縁板材料の耐熱性不足を考慮するものではありません。」を前提とした上で(第5頁第34ないし44行)、「請求項1の発明は、引用文献1、2の内容から得られると考えられる部品内蔵配線板の製造方法の場合と比較して、高コストの特殊なエポキシ樹脂を使用せずに済む、異質で大きな効果を有しております。この効果は、引用文献1、2の内容から導出することができません。」と主張する(第6頁第1ないし4行)。
しかしながら、本願の請求項1には、単に「エポキシ系樹脂」と記載されるにとどまるから、上記主張は、請求項の記載に基づかない主張であり、失当である。
のみならず、上記「引用文献1」、すなわち刊行物1には、「絶縁性樹脂としては、熱硬化性樹脂や、熱可塑樹脂、光硬化性樹脂等を用いることができ、耐熱性の高いエポキシ樹脂やフェノール樹脂、イソシアネート樹脂を用いることにより、電気絶縁層101の耐熱性をあげることができる。」と記載され(段落【0030】)、「耐熱性の高い」エポキシ樹脂は、一例示として上げられているに過ぎず、これに何ら限定されるものではなく、また、「半田105は、配線パターン102に電子部品104を実装するために用いる。高温半田を用いた場合、モジュールをリフローで実装する際の半田の再溶融を防止できる。」と記載され(段落【0034】)、高温半田を用いた「場合」のことを説明しているに過ぎず、これに何ら限定されるものではないから、請求人の主張は、上記前提においても誤りである。
さらに、上記「引用文献2」、すなわち刊行物2には、「本実施例による接続方法では、従来の高鉛はんだより接続温度を低温化できるため、半導体チップ1、中間基板2への熱のダメージを低減することができる。・・・また、中間基板2は、一般的にはガラスエポキシ等の有機基板を用いる」と記載され(段落【0031】)、絶縁板材料の耐熱性不足を考慮するものであるから、請求人の主張は、上記前提においても誤りである。
したがって、請求人の上記主張は採用できない。

2.作用効果について
そして、本願発明による効果も、引用発明及び刊行物2記載の技術事項から当業者が予測し得た程度のものである。

3.まとめ
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び刊行物2記載の技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第6 むすび
したがって、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、他の請求項に係る発明を検討するまでもなく、本願は、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-03-18 
結審通知日 2015-03-24 
審決日 2015-04-06 
出願番号 特願2011-3312(P2011-3312)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H05K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 飯星 潤耶  
特許庁審判長 森川 元嗣
特許庁審判官 小柳 健悟
冨岡 和人
発明の名称 部品内蔵配線板の製造方法  
代理人 須山 佐一  

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