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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1301072
審判番号 不服2014-12937  
総通号数 187 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-07-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-07-04 
確定日 2015-05-21 
事件の表示 特願2010- 7414「アライナ」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 7月28日出願公開、特開2011-146600〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成22年1月15日に出願したものであって、平成25年11月28日付けで拒絶理由が通知され、平成26年1月28日付けで手続補正がなされたが、同年4月9日付けで拒絶査定がなされた。
これに対し、平成26年7月4日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、同時に手続補正(以下「本件補正」という)がなされたものである。

第2 本件補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
本件補正を却下する。
[理由]
1 補正後の発明
(1)本件補正の目的等
本件補正は、平成26年1月28日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1を、
「【請求項1】
各々が前記ウエハを保持可能でありかつ各々が保持する前記ウエハが所定方向に並ぶように前記所定方向に並設された複数の保持部を有するストッカと、
前記複数の保持部に保持された前記ウエハの方向を調整するアライメント機構と、
各前記保持部に保持された前記ウエハの方向を調整する位置に停止可能なように前記アライメント機構を前記所定方向に移動させるアライナ用移動機構と、
前記アライナ用移動機構の動きを制御して前記アライメント機構を所定方向に移動させる制御装置と、を備え、
前記制御装置は、前記アライメント機構が前記複数の保持部の内のいずれかの保持部に保持された前記ウエハの方向を調整した後、前記アライナ用移動機構によって前記アライメント機構を前記いずれかの保持部と異なる前記保持部に保持された前記ウエハのところまで移動させて該ウエハの方向を前記アライメント機構が調整することによって、前記ストッカに保持される複数のウエハの方向を順番に調整することを特徴とするアライナ。」
と補正することを含むものである(下線は補正箇所を示す)。

そうすると、本件補正は、補正前の請求項1に係る発明の特定事項である「前記アライメント機構が前記複数の保持部の内のいずれかの保持部に保持された前記ウエハの方向を調整した後、前記アライナ用移動機構によって前記アライメント機構を前記いずれかの保持部と異なる前記保持部に保持された前記ウエハのところまで移動させて該ウエハの方向を前記アライメント機構によって調整する」を、「前記アライメント機構が前記複数の保持部の内のいずれかの保持部に保持された前記ウエハの方向を調整した後、前記アライナ用移動機構によって前記アライメント機構を前記いずれかの保持部と異なる前記保持部に保持された前記ウエハのところまで移動させて該ウエハの方向を前記アライメント機構が調整することによって、前記ストッカに保持される複数のウエハの方向を順番に調整する」と補正するものであって、実質的に、補正前の請求項1に係る発明の特定事項である「制御装置」について、「前記ストッカに保持される複数のウエハの方向を順番に調整する」との限定を付加するものであるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「補正発明」という)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2)補正発明の認定
補正発明は、明細書、特許請求の範囲及び図面の記載からみて、上記(1)に示す特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりの「アライナ」であると認める。

2 引用刊行物及びその記載事項
(1)これに対して、本願出願前に頒布され、原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である特開平11-3929号公報(以下「刊行物1」という)には、「ウェーハ姿勢合わせ装置及び該装置を具備した半導体製造装置」について、図面とともに次の事項が記載されている。

(1-ア)
「【請求項1】 帯状の台板の先端部にウェーハ受載テーブルを回転自在に設けると共に該ウェーハ受載テーブルに従動プーリを設け、前記台板の基部にオリエンテーションモータを設け、該オリエンテーションモータに設けた駆動プーリと前記従動プーリとにベルトを掛回し、前記台板に姿勢合わせ用センサを設け、前記ウェーハ受載テーブルに受載された周縁部を検出する様構成したことを特徴とするウェーハ姿勢合わせ装置。
【請求項2】 帯状の台板の先端部にウェーハ受載テーブルを回転自在に設けると共に該ウェーハ受載テーブルに従動プーリを設け、前記台板の基部にオリエンテーションモータを設け、該オリエンテーションモータに設けた駆動プーリと前記従動プーリとにベルトを掛回し、前記台板に姿勢合わせ用センサを設け、前記ウェーハ受載テーブルに受載された周縁部を検出する様構成したウェーハ姿勢合わせ装置を具備することを特徴とする半導体製造装置。
【請求項3】・・・(中略)・・・
【請求項4】 ウェーハカセットを授受するカセット授受装置と、ウェーハカセットを収納するカセット棚と、ウェーハを保持するボートと、前記カセット授受装置とカセット棚間でウェーハカセットを移載するカセット移載機と、カセット棚とボート間でウェーハの移載を行うウェーハ移載機とを少なくとも有し、前記カセット移載機にウェーハ姿勢合わせ装置を併合させ設けた請求項2の半導体製造装置。」

(1-イ)
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は被処理基板であるウェーハの姿勢を整えるウェーハ姿勢合わせ装置、及び該ウェーハ姿勢合わせ装置を具備した半導体製造装置に関するものである。」

(1-ウ)
「【0008】本発明は斯かる実情に鑑み、ウェーハの姿勢合わせをウェーハカセットが水平姿勢のまま行える様にし、更にウェーハ姿勢合わせ装置の小型化を図り、半導体製造装置内の任意な場所での設置を可能とし、設置上の制約を受けない様にすると共にウェーハの大口径化に対応したウェーハ姿勢合わせ装置、及びウェーハ姿勢合わせ装置を具備した半導体製造装置を提供しようとしするものである。」

(1-エ)
「【0013】帯板状の台板10の上面側から該台板10の外形に沿って周回する長円状のベルト収納溝11を刻設し、該ベルト収納溝11の先端半円部に連続して円形を完成する半円弧溝12を刻設する。該ベルト収納溝11の先端半円部、半円弧溝12の中心部に残置された円形の突出部は従動側軸部13を形成し、該従動側軸部13には軸受14を介してウェーハ受載テーブル15が回転自在に嵌合する。該ウェーハ受載テーブル15の従動側軸部13との嵌合部分16は円環状に突出し、該嵌合部分16には従動プーリ17が外嵌している。
【0014】先端側と同様、前記ベルト収納溝11の基端半円部に連続して円形を完成する半円弧溝18を刻設し、中心部には駆動側軸部19を残置形成する。モータ台21を介して前記駆動側軸部19の同軸上にオリエンテーションモータ22を設け、該オリエンテーションモータ22の出力軸に駆動プーリ23を嵌着すると共に該駆動プーリ23を前記駆動側軸部19に軸受(図示せず)を介して回転自在に外嵌する。前記駆動プーリ23と前記従動プーリ17間にはベルト24が掛回され、前記オリエンテーションモータ22の駆動により駆動プーリ23、ベルト24、従動プーリ17を介して前記ウェーハ受載テーブル15が回転される。
【0015】前記ウェーハ受載テーブル15にはウェーハ5が載置され、ウェーハ5が前記ウェーハ受載テーブル15の回転によって回転される様になっている。前記台板10のウェーハ周縁近傍位置には凹部25が形成され、該凹部25にはオリエンテーションフラット検出用の姿勢合わせ用センサ26が固着されている。
【0016】該姿勢合わせ用センサ26には凹部が形成されており、該凹部に前記ウェーハ5の縁部が通過する様になっていると共に前記凹部を挾んで透過型光センサ(図示せず)が設けられている。前記ウェーハ5の周縁部は前記透過型光センサの光軸を遮り、オリエンテーションフラットは該光軸から外れる様になっている。
【0017】ウェーハ5の姿勢合わせは、前記台板10をウェーハ5の下側に進入させ、ウェーハ受載テーブル15の中心と前記ウェーハ5の中心とが一致した位置で前記台板10を上昇させ、前記ウェーハ受載テーブル15にウェーハ5を受載する。前記オリエンテーションモータ22を駆動して前記ウェーハ受載テーブル15を回転させ、前記姿勢合わせ用センサ26によりオリエンテーションフラットを検出する。該姿勢合わせ用センサ26によりオリエンテーションフラットを検出した位置でオリエンテーションモータ22を停止し、ウェーハ受載テーブル15の回転を停止させれば、ウェーハ5の姿勢合わせが完了する。」






(1-オ)
「【0023】図7は姿勢合わせ用センサ26の変形を示すものであり、ウェーハ5間のピッチが狭くて前記姿勢合わせ用センサ26では上側のウェーハ5に干渉する場合に使用される。
【0024】投光側、受光側にそれぞれ光ファイバーが用いられ、上側の光ファイバ(図示するものは投光側光ファイバ)28を短くした斜型ファイバセンサ30では、光ファイバで導いた光を上側光ファイバ28の先端より検出光として斜に投射し、下側光ファイバ29の先端で受光し、図示しない受光素子迄導く様にしたものであり、前述した姿勢合わせ用センサ26と同様ウェーハ5の縁部が光軸を遮るか否かで前記オリエンテーションフラットを検出する様にしたものである。」

(1-カ)
「【0030】上述したウェーハ姿勢合わせ装置の設置箇所は、前記カセット棚32の一区画、例えば図8中ハッチングを付した部分に設け、姿勢合わせを必要とするウェーハカセットをハッチングを付した部分に移載する様にしてもよい。或は、カセット移載機35に併合して設けてもよい。即ち、前記昇降ガイド38に図1、図4、図6で示したウェーハ姿勢合わせ装置を昇降可能に設け、カセット移載機35がウェーハカセットの移載を行わない場合に昇降ステージ39を待避させ、ウェーハ姿勢合わせ装置を昇降、カセット棚32に対し進退させ、前記ウェーハ受載テーブル15に所定のウェーハ5を受載後、該ウェーハ5をウェーハカセット3より僅かに浮かせ、ウェーハを引出すことなく姿勢合わせを行う様にしてもよい。」



3 当審の判断
(1)引用発明
ア 本願出願前に頒布され、原審の拒絶査定において示された刊行物である特開2000-223551号公報の段落【0002】に「【従来の技術】・・・・・従来の半導体製造装置21に載置されたウエハカセット22には、この装置で加工または測定されるウエハ23が複数枚収納されていて、・・・・・」と記載されているように、通常の「ウエハカセット」には複数のウエハが保持されているのが一般的であるから、刊行物1記載の「カセット棚に収容されるウェーハカセット」にも、複数のウェーハが保持されていると解するのが相当である。

イ 半導体製造装置において、ウェーハカセットが「各々がウェーハを保持可能でありかつ各々が保持する前記ウェーハが所定方向に並ぶように前記所定方向に並設された複数の保持部を有する」ことは技術常識であり、上記記載事項(1-ア)の「【請求項4】ウェーハカセットを授受するカセット授受装置と、ウェーハカセットを収納するカセット棚と、・・・・・前記カセット授受装置とカセット棚間でウェーハカセットを移載するカセット移載機と、・・・・・を少なくとも有し」からみて、刊行物1には「各々がウェーハを保持可能でありかつ各々が保持する前記ウェーハが所定方向に並ぶように前記所定方向に並設された複数の保持部を有し、カセット棚に収容されるウェーハカセット」が記載されているといえる。

ウ 上述のとおり、「ウェーハカセット」が複数の保持部を有し、複数のウエハを保持することは、技術常識であり、上記記載事項(1-エ)の「【0017】・・・・・前記オリエンテーションモータ22を駆動して前記ウェーハ受載テーブル15を回転させ、前記姿勢合わせ用センサ26によりオリエンテーションフラットを検出する。該姿勢合わせ用センサ26によりオリエンテーションフラットを検出した位置でオリエンテーションモータ22を停止し、ウェーハ受載テーブル15の回転を停止させれば、ウェーハ5の姿勢合わせが完了する。」及び同(1-カ)の「・・・・・ウェーハ姿勢合わせ装置を昇降、カセット棚32に対し進退させ、前記ウェーハ受載テーブル15に所定のウェーハ5を受載後、該ウェーハ5をウェーハカセット3より僅かに浮かせ、ウェーハを引出すことなく姿勢合わせを行う様にしてもよい。」からみて、「ウェーハの姿勢合わせ」とは「ウェーハの方向を調整」することを意味し、刊行物1には「ウェーハカセットの複数の保持部に保持されたウェーハの方向を調整するウェーハ姿勢合わせ装置」が記載されているといえる。

エ 上記記載事項(1-カ)の「前記昇降ガイド38に図1、図4、図6で示したウェーハ姿勢合わせ装置を昇降可能に設け、・・・・・ウェーハ姿勢合わせ装置を昇降、カセット棚32に対し進退させ、・・・・・ウェーハを引出すことなく姿勢合わせを行う様にしてもよい。」からみて、刊行物1には「ウェーハカセット保持部に保持されたウェーハの方向を調整する位置に停止可能なようにウェーハ姿勢合わせ装置を所定方向に移動させる昇降手段」が記載されているといえる。

そこで、上記記載事項(1-ア)ないし(1-カ)及び上記認定事項アないしエを、技術常識を踏まえて整理すると、刊行物1には以下の発明が記載されていると認める(以下「引用発明」という)。
「各々がウェーハを保持可能でありかつ各々が保持する前記ウェーハが所定方向に並ぶように前記所定方向に並設された複数の保持部を有し、カセット棚に収容されるウェーハカセットと、
前記ウェーハカセットの複数の保持部に保持された前記ウェーハの方向を調整するウェーハ姿勢合わせ装置と、
前記ウェーハカセットの保持部に保持された前記ウェーハの方向を調整する位置に停止可能なようにウェーハ姿勢合わせ装置を前記所定方向に昇降させる昇降装置と、
を備える装置。」

(2)対比
補正発明と引用発明とを対比する。
ア 「ウェーハ」と「ウエハ」が同義であることは、明らかである。
イ 引用発明の「カセット棚に収容されるウェーハカセット」は、ウェーハを一時的にストック(貯蔵)していることになるから、「ストッカ」の一種であるといえる。
ウ 本願明細書の段落【0001】の「本発明は、ウエハの方向を調整(即ち、アライメント)するアライナに関する」と記載されているところ、引用発明の「ウェーハ姿勢合わせ装置」及び「昇降装置」は、その機能・構造からみて、補正発明の「アライメント機構」及び「アライナ用移動機構」に相当する。
エ 同様に、「ウェーハの方向を調整する」装置、すなわち、「ウェーハの姿勢を合わせる」装置を備える装置が「アライナ」であるから、「ウェーハ姿勢合わせ装置」を備える引用発明の「装置」は、補正発明の「アライナ」に相当する。

そうすると、両者は、
(一致点)
「各々がウエハを保持可能でありかつ各々が保持する前記ウエハが所定方向に並ぶように前記所定方向に並設された複数の保持部を有するストッカと、
前記複数の保持部に保持された前記ウエハの方向を調整するアライメント機構と、
各前記保持部に保持された前記ウエハの方向を調整する位置に停止可能なように前記アライメント機構を前記所定方向に移動させるアライナ用移動機構と、
を備えるアライナ。」
である点で一致し、以下の点で相違する。

(相違点)
補正発明では「前記アライナ用移動機構の動きを制御して前記アライメント機構を所定方向に移動させる制御装置を備え、前記制御装置は、前記アライメント機構が前記複数の保持部の内のいずれかの保持部に保持された前記ウエハの方向を調整した後、前記アライナ用移動機構によって前記アライメント機構を前記いずれかの保持部と異なる前記保持部に保持された前記ウエハのところまで移動させて該ウエハの方向を前記アライメント機構が調整することによって、前記ストッカに保持される複数のウエハの方向を順番に調整する」であるのに対して、引用発明ではそのような制御を行っているか不明である点。

(3)相違点について
上記相違点につき検討する。
半導体製造装置の分野において、その各種構成部を制御装置により制御することは、一般的に実施されていることであるから、刊行物1記載の「カセット移載機」及びそれに併設される引用発明の「ウェーハ姿勢合わせ装置」の動き(昇降)は、一般的な「制御装置」によって制御されると解するのが相当である。
また、前掲の特開2000-223551号公報の段落【0025】に「このようにして、ウエハ3をウエハカセット12内に載置し、ウエハカセット12の内部にウエハ位置方向が未調整のウエハ3が残っている場合には上記動作を繰り返す。」と記載されているように、ウエハカセット内のウエハをアライメントする場合には、一枚のウエハだけでなく、複数のウエハ全部をアライメントの対象とするのが技術常識であるといえる。
そうすると、引用発明においても、「カセット棚に収容されるウェーハカセット」内のウェーハは、一枚のウェーハだけでなく、複数のウェーハ全部がアライメントの対象となっていると解するのが相当である。
ところで、刊行物1の図1には、一枚のウェーハを処理する「ウェーハ姿勢合わせ装置」が記載されており、上記記載事項(1-カ)の「前記昇降ガイド38に図1、図4、図6で示したウェーハ姿勢合わせ装置を昇降可能に設け」からみて、引用発明の「ウェーハ姿勢合わせ装置」は、一枚のウェーハを処理するものを含んでいるといえるから、この場合には、複数のウェーハ全部をアライメントするためには、必然的に、「ウェーハ姿勢合わせ装置を昇降、カセット棚に対し進退させる」動作を複数回繰り返すこととなり、これは、「ウェーハ姿勢合わせ装置が複数の保持部の内のいずれかの保持部に保持されたウェーハの姿勢合わせした後、昇降手段によって前記ウェーハ姿勢合わせ装置を前記いずれかの保持部と異なる前記保持部に保持された前記ウェーハのところまで移動させて該ウェーハの姿勢を前記ウェーハ姿勢合わせ装置が調整する」ことを意味する。また、該「ウェーハ姿勢合わせ装置を昇降、カセット棚に対し進退させる」動作を、ランダムではなく、順番に実施することも、無駄な動きを少なくするために、当業者ならば適宜選択し得る設計的事項であるというべきである。
そうすると、前述したとおり、「ウエハカセット」に複数のウエハが保持されるのが技術常識であることから、引用発明において、「ウェーハ姿勢合わせ装置を昇降、カセット棚に対し進退させる」動作を順番に複数回繰り返すようにすることは、当業者とって十分動機付けが存在し、格別困難なことではないといえる。
よって、引用発明において、上記相違点に係る補正発明の構成を採用することは、当業者ならば容易に想到し得る事項と解するのが相当である。

(4)効果について
補正発明により得られる効果も、引用発明及び技術常識から当業者が予測し得る範囲内のものに過ぎず、格別顕著なものとはいえない。

(5)小括
したがって、補正発明は、引用発明及び技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

4 まとめ
以上のとおりであるから、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により、却下すべきものである。
よって、上記[補正の却下の決定の結論]のとおり、決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されることとなるので、本願の請求項1ないし7に係る発明は、平成26年1月28日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし7に記載された事項により特定されたものであると認められ、その請求項1に係る発明は、次のとおりである(以下「本願発明」という)。
「【請求項1】
各々が前記ウエハを保持可能でありかつ各々が保持する前記ウエハが所定方向に並ぶように前記所定方向に並設された複数の保持部を有するストッカと、
前記複数の保持部に保持された前記ウエハの方向を調整するアライメント機構と、
各前記保持部に保持された前記ウエハの方向を調整する位置に停止可能なように前記アライメント機構を前記所定方向に移動させるアライナ用移動機構と、
前記アライナ用移動機構の動きを制御して前記アライメント機構を所定方向に移動させる制御装置と、を備え、
前記制御装置は、前記アライメント機構が前記複数の保持部の内のいずれかの保持部に保持された前記ウエハの方向を調整した後、前記アライナ用移動機構によって前記アライメント機構を前記いずれかの保持部と異なる前記保持部に保持された前記ウエハのところまで移動させて該ウエハの方向を前記アライメント機構によって調整することを特徴とするアライナ。」

2 引用刊行物及びその記載事項
本願出願前に頒布された刊行物1及びその記載事項は、上記「第2 2 引用刊行物及びその記載事項」に記載したとおりである。

3 当審の判断
本願発明は、補正発明の特定事項である「制御装置」について、実質的に、「前記ストッカに保持される複数のウエハの方向を順番に調整する」との限定を削除したものである。
そして、本願発明の構成を全て備えた補正発明が、上記「第2 3 当審の判断」にて検討したとおり、引用発明及び技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明及び技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるというべきである。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その他の請求項について言及するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-03-18 
結審通知日 2015-03-24 
審決日 2015-04-06 
出願番号 特願2010-7414(P2010-7414)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01L)
P 1 8・ 575- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 牧 初金丸 治之  
特許庁審判長 石川 好文
特許庁審判官 三澤 哲也
長屋 陽二郎
発明の名称 アライナ  
代理人 特許業務法人 有古特許事務所  

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