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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F23G
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F23G
管理番号 1301178
審判番号 不服2014-11958  
総通号数 187 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-07-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-06-24 
確定日 2015-05-18 
事件の表示 特願2011- 3978「廃棄物ガス化溶融処理方法」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 8月 2日出願公開、特開2012-145272〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成23年1月12日の出願であって、平成26年1月7日付けで拒絶の理由が通知され、平成26年3月5日に意見書及び手続補正書が提出されたが、平成26年3月27日付けで拒絶査定がされ、これに対し、平成26年6月24日に拒絶査定不服の審判が請求されると同時に特許請求の範囲を補正する手続補正書が提出されたものである。

第2 平成26年6月24日付けの手続補正についての補正却下の決定

〔補正却下の決定の結論〕
平成26年6月24日付けの手続補正を却下する。

〔理由〕
1 本件補正について
(1)平成26年6月24日付けの手続補正書による手続補正(以下、単に「本件補正」という。)は、特許請求の範囲に関して、本件補正により補正される前の(すなわち、平成26年3月5日付けの手続補正書により補正された)特許請求の範囲の以下のアに示す請求項1及び2を、イに示す請求項1に補正するものである。

ア 本件補正前の特許請求の範囲の請求項1及び2
「【請求項1】
シャフト炉式廃棄物溶融炉に廃棄物を投入し廃棄物を熱分解、燃焼、溶融する廃棄物溶融処理方法において、石炭コークスとバイオマス成形物を投入し、該溶融炉の下部に石炭コークスでコークス同士間の隙間で通気確保と通液確保の機能を有する高温火格子を形成し、石炭コークスとバイオマス成形物を燃焼して溶融熱源とし、石炭コークスの炉内への投入量は、高温火格子を形成することに必要な最小限量とし、溶融熱源として必要な熱量をバイオマス成形物により補い、石炭コークスの投入量は、処理される廃棄物1tあたり20kg以上30kg未満であり、バイオマス成形物の投入量は、処理される廃棄物1tあたりバイオマス成形物の固定炭素量が5kg以上30kg未満に相当する量であり、バイオマス成形物の形状が塊状であり、長径が200mm以下で、かつ、短径に対する長径の比が5以下であることを特徴とする廃棄物のガス化溶融処理方法。
【請求項2】
シャフト炉式廃棄物溶融炉に廃棄物を投入し廃棄物を熱分解、燃焼、溶融する廃棄物溶融処理方法において、石炭コークスとバイオマス成形物を投入し、該溶融炉の下部に石炭コークスでコークス同士間の隙間で通気確保と通液確保の機能を有する高温火格子を形成し、石炭コークスとバイオマス成形物を燃焼して溶融熱源とし、石炭コークスの炉内への投入量は、高温火格子を形成することに必要な最小限量とし、溶融熱源として必要な熱量をバイオマス成形物により補い、石炭コークスの投入量は、処理される廃棄物1tあたり20kg以上30kg未満であり、バイオマス成形物の投入量は、処理される廃棄物1tあたりバイオマス成形物の固定炭素量が5kg以上30kg未満に相当する量であり、バイオマス成形物の形状が大粒径のものを含む粒状であり、粒径分布は粒径5mm以下の重量比率が30重量%以下であり、かつ、算術平均粒径が10mm以上であることを特徴とする廃棄物のガス化溶融処理方法。」

イ 本件補正後の特許請求の範囲の請求項1
「【請求項1】
シャフト炉式廃棄物溶融炉に廃棄物を投入し廃棄物を熱分解、燃焼、溶融する廃棄物溶融処理方法において、石炭コークスとバイオマス成形物を投入し、該溶融炉の下部に石炭コークスでコークス同士間の隙間で通気確保と通液確保の機能を有する高温火格子を形成し、石炭コークスとバイオマス成形物を燃焼して溶融熱源とし、石炭コークスの炉内への投入量は、高温火格子を形成することに必要な最小限量とし、溶融熱源として必要な熱量をバイオマス成形物により補い、石炭コークスの投入量は、処理される廃棄物1tあたり20kg以上30kg未満であり、バイオマス成形物の投入量は、処理される廃棄物1tあたりバイオマス成形物の固定炭素量が5kg以上30kg未満に相当する量であり、バイオマス成形物は、固定炭素比率が10重量%以上であり、長径が200mm以下で、短径に対する長径の比が5以下である塊状物を主に含み、バイオマス成形物に含まれる粒状物は粒径5mm以下の重量比率が30重量%以下である粒径分布であり、算術平均粒径が10mm以上であることを特徴とする廃棄物のガス化溶融処理方法。」
なお、下線は、審判請求人が補正箇所を明示するために付したものである。

(2)本件補正の目的について
本件補正後の請求項1は、本件補正前の請求項1における「バイオマス成形物」という発明特定事項について、本件補正後に、「バイオマス成形物は、固定炭素比率が10重量%以上であり、長径が200mm以下で、短径に対する長径の比が5以下である塊状物を主に含み、バイオマス成形物に含まれる粒状物は粒径5mm以下の重量比率が30重量%以下である粒径分布であり、算術平均粒径が10mm以上である」という限定を付加することにより、「バイオマス成形物」の形状・構造等を限定するものである。
そして、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に規定される特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に該当する。

2 独立特許要件についての検討
本件補正における特許請求の範囲の補正は、前述したように、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するので、本件補正後の請求項1に記載された事項により特定される発明(以下、「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かについて、以下に検討する。

2-1 引用文献
(1)原査定の拒絶理由に引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2005-249279号公報(以下、「引用文献」という。)には、例えば、以下の記載がある。(なお、下線は、理解の一助のために当審で付したものである。)

ア 「【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャフト炉方式の廃棄物溶融炉に廃棄物及びバイオマスを投入し、廃棄物を乾燥、熱分解、燃焼、溶融処理する廃棄物の溶融処理方法において、熱分解後のガス中に含まれるバイオマスが粉化したダストや、廃棄物が細粒化したダストを除じん器で捕集し、捕集した可燃性ダストを羽口から酸素若しくは酸素富化空気とともに吹き込むことを特徴とするバイオマスを利用する廃棄物溶融処理方法。
【請求項2】
シャフト炉の操作条件が、上、下段羽口を設け、上段より廃棄物乾燥用の空気を、下段より燃焼溶融用の酸素若しくは酸素富化空気を送風することを特徴とする請求項1記載のバイオマスを利用する廃棄物溶融処理方法。
【請求項3】
下段羽口の酸素濃度が25%?40%であることを特徴とする請求項1及び2記載のバイオマスを利用する廃棄物溶融処理方法。
【請求項4】
除じん器によって捕集された可燃性ダストの量が、下段羽口から送風される酸素量に対して一定比率の範囲になるように、炉頂より投入するバイオマスの量を調整することを特徴とする請求項1?3のうち少なくとも1項に記載のバイオマスを利用する廃棄物溶融処理方法。
【請求項5】
コークスとバイオマスを混合して、溶融炉内へ装入することを特徴とする請求項1?4のうち少なくとも1項に記載のバイオマスを利用する廃棄物溶融処理方法。
【請求項6】
コークスとバイオマスをそれぞれ単独で、溶融炉内へ装入することを特徴とする請求項1?4のうち少なくとも1項に記載のバイオマスを利用する廃棄物溶融処理方法。
【請求項7】
コークスの装入量が、固形単素(当審注;「固定炭素」の誤記と認める。)ベースで廃棄物処理量の2.5%以下とすることを特徴とする請求項5または6記載のバイオマスを利用する廃棄物溶融処理方法。」(【特許請求の範囲】の【請求項1】ないし【請求項7】)

イ 「【0001】
本発明は、一般廃棄物・産業廃棄物等の廃棄物の溶融処理方法に関し、特にバイオマスを利用する廃棄物溶融処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般廃棄物・産業廃棄物、あるいはそれらを乾燥、焼却、破砕処理等によって得られた処理物、これらを一度埋め立て処理後、再度掘り起こした土砂分を含む埋め立てごみ等の廃棄物を処理する方法として、これらの廃棄物を廃棄物溶融炉で溶融処理してスラグ、メタルとして再資源化する方法が実施されている。
【0003】
廃棄物を溶融処理する方法に。例えばシャフト炉式廃棄物溶融炉が使用される(特許文献1参照)。
【0004】
これは図2に示すように、炉本体1は、シャフト部1aと下部の朝顔部5とからなり、朝顔部5の下端には燃焼溶融帯用の下段羽口2を設けると共に、その上方には熱分解帯用の複数段の上段羽口3を有している。下段羽口2からは酸素または酸素富化空気を供給し、上段羽口3からは燃焼支持ガスとして空気を供給している。
【0005】
炉本体の上部には処理対象となる廃棄物や助燃剤としてのコークス、塩基度調整剤としての石灰石等を炉内に装入する、シール弁を備えた装入装置11が該けられ、炉本体下端部には廃棄物を溶融処理した後のスラグ、メタルの出滓口13が設けられている。
【0006】
上記構成にあって、装入された廃棄物1bは、溶融炉本体1の上層から乾燥予熱帯6(約300?400℃)、熱分解帯7(約300?1000℃)、燃焼・溶融帯8(約1700?1800℃)を通過して溶融処理される。
【0007】
下段羽口2から供給した酸素又は酸素富化空気によってコークス4や熱分解残渣14を高温で燃焼し、溶融熱源とし、一方、上段羽口3からは空気を供給して主に廃棄物の熱分解残渣14を燃焼し、発生したガスで廃棄物の乾燥・予熱及び熱分解を行う。溶融した廃棄物はスラグ、メタルを溶融物として出滓口13より排出される。
【0008】
高温の燃焼排ガスは、シャフト炉内の廃棄物の充填層を対向流として上昇し、溶融炉本体上部の排ガス管12から可燃ガスとして燃焼室へ導入されて燃焼され、燃焼排ガスは、排ガス管を通ってボイラーへ導入され、排熱が回収された後、減温塔で温度を調整して集塵機に通し、更には、触媒反応塔で公害物質を除去した後、煙突から排出される。
【0009】
この方法では、廃棄物をシャフト炉式溶融炉で廃棄物中灰分を溶融する際に、炉底部から上昇する高温燃焼ガスにより廃棄物は、乾燥、乾留(熱分解)されて揮発分は炉上部から可燃性ガスとして排出され、揮発せずに残って乾留された固定炭素分を主体とする熱分解後の残渣は炉底に降下し、炉底部において下段送風羽口前で下段送風羽口から供給される酸素と反応し高温で燃焼し、廃棄物中の灰分を溶融する溶融熱源となる。しかしながら、廃棄物中の可燃分はその大部分が紙やプラスチック等であって、乾留により細粒化するため、乾留後の固定炭素分を含む残渣は、ガス流によって炉頂より多くの割合で飛散するとともに、炉底に到達したものもすぐに燃焼消失してしまうために、コークスのように燃焼火格子を形成することはなく、したがって、高温のスラグ・メタルを産出することは難しく、その溶融を維持するためには、コークスを添加するか、羽口より燃料ガスや酸素を送ることによって、溶融を維持する他は無かった。したがって、いずれにしろ化石燃料を使用せざる終えず、結果としてCO_(2)を排出することになった。
【0010】
そのため、直接溶融炉設備においても、環境に対するCO_(2)負荷を削減することができるコークス使用量削減技術が提案されている。例えば、コークスを出来るだけ少なくして被処理物を効率よく燃焼溶融させるための手段として、炉頂から排出した可燃性ダスト(チャー)を捕集して再度溶融炉本体へ羽口を介して装入する方法(特許文献2、3参照)、また、廃プラスチックを破砕し、同じく羽口から又は大きなものは炉頂から装入して熱源として利用する方法(特許文献4参照)等がある。
【0011】
また、例えば特許文献5記載の廃棄物溶融炉も、構成は一部異なるものの、シャフト炉において廃棄物の溶融熱源として、コークスを主体とする補助燃料を使用しており、化石燃料起因のCO_(2)を排出するという意味では同種の問題をはらんでいる。
【0012】
また、例えば特許文献6記載の廃棄物溶融炉についても、溶融を維持するためにLNGや灯油等の補助燃料を用いている。これらの方式においても、安定な溶融を維持するためのLNGや灯油等の量は多くなり、化石燃料起因のCO_(2)排出量の大幅な削減は望めない。
【特許文献1】特開2001-90923号公報
【特許文献2】特開平8-285250号公報
【特許文献3】特開2001-21123号公報
【特許文献4】特開平11-153309号公報
【特許文献5】特開平5-346221号公報
【特許文献6】特開平10-132242号公報」(段落【0001】ないし【0012】)

ウ 「【0013】
これら課題に対し、シャフト炉式溶融炉において、溶融熱源として木炭などのバイオマスを利用することが考えられる。しかしながら、シャフト炉方式の廃棄物の溶融処理には、シャフト炉下部に高温の火格子を形成することが不可欠であるが、その火格子を形成するには、バイオマスを利用する場合、破砕、加熱圧縮成型などの事前処理を必要としたり、強度の大きなバイオマスのみ選択する必要がある。これは、事前処理を施さない若しくは強度が小さいバイオマスでは、シャフト炉を下降する再に粉化して、シャフト炉内の上昇流に乗って炉外に飛散するためである。
【0014】
また、下段羽口より粉状のバイオマスを吹き込むことも可能であるが、その場合には、気流搬送に適するサイズに破砕する必要があり、バイオマスを破砕する装置が必要であるとともに、そのエネルギーや破砕機の消耗部品等のメンテナンスコストが必要であった。すなわち、塊状バイオマス、粉状バイオマスを利用して、コークス使用量を低減するには、設置場所、地域、原料、経済面等の制約があった。
【0015】
そこで、本発明では、シャフト炉方式の廃棄物の溶融処理に使用されている化石燃料に由来するコークスやLNG、灯油等の代替として、幅広い種類のバイオマスを利用して、コークス使用量の削減をするとともに、環境に対するCO_(2)負荷を削減することができるバイオマスを利用する廃棄物溶融処理方法を提供するものである。」(段落【0013】ないし【0015】)

エ 「【0016】
本発明のバイオマスを利用する廃棄物溶融処理方法は、シャフト炉式廃棄物溶融炉に廃棄物を装入し、廃棄物を乾燥、熱分解、燃焼、溶融処理する廃棄物溶融処理方法において、強度の不十分なバイオマスであっても、炉上部から廃棄物と共に投入し、炉底部送風羽口から送風する空気、酸素若しくは酸素富化空気が炉下部で廃棄物を還元燃焼することによって発生した無酸素燃焼ガスによって、一部存在する塊状で強度のあるバイオマスは、シャフト炉下部で火格子状の層を形成する。また、それ以外のものは、シャフト炉下部に到達する前に粉化し、シャフト炉内の上昇流に乗って、炉上部より、可燃性ガス及び可燃ごみ起因の可燃性ダストと共に飛散するが、シャフト炉後流側に除じん器を設置し、飛散したバイオマスと可燃性ダストを捕集し、捕集したバイオマスとダストの混合物を、シャフト炉の下段羽口から空気、酸素及び酸素負荷空気と共に炉内に吹き込み、下段羽口前で燃焼させることによって、粉状物を直接的に溶融熱源に転換できる。
【0017】
発明者らの実験によれば、投入されたバイオマスが、シャフト炉下部で高温火格子を形成するためには、木炭やおがくずを圧縮成型後乾留処理したおが炭等のように、投入するバイオマスが限定され、また、鶏糞や産業廃棄物起因の木質チップ等の場合は、粉砕装置及び加圧加熱成型装置の設置や、運転条件の調整が必要となる事がわかっている.このように、廃棄物溶融炉にバイオマスを使用する場合、高温の火格子を維持するには、粉状バイオマス、塊状バイオマスともに、エネルギーを消費し、成型、破砕などが必要となり、エネルギーの有効活用の観点から、より幅広く、かつ経済的なバイオマスの利用が望まれている。
【0018】
そこで、本発明では、シャフト炉出口にサイクロン等の除じん器を設け、その除じんした可燃性ダストを羽口から空気、酸素若しくは酸素富化空気とともに吹き込むことによって、炉底部に到達するまでに飛散してしまったバイオマス粉をシャフト炉炉底部で燃焼させ、炉底部の高温火格子の消耗抑制を図り、溶融熱源として利用することにより、幅広いバイオマスの使用が可能になる。
【0019】
さらに、その場合、炉外に飛散したバイオマス粉は、シャフト炉内で下降する過程で細粒化し、シャフト炉から飛散するときには、100μm程度の気流搬送に適した粒径となり、破砕などの処理は不要である。この発明により、炉内に装入したバイオマスのうち、高温火格子を形成可能なバイオマスは炉下部で高温火格子を形成し、形成できないバイオマスは、炉外に飛散した後、羽口から吹き込まれ、羽口前で燃焼し、溶融熱源となることで、より効率的なバイオマスの利用が可能となる。
【0020】
この時、下段羽口での酸素濃度は、溶融を効率的に行うために25%以上であることが望ましく、逆に40%以上にしても、溶融温度を上げることができない。これは、羽口近傍のガス温度は、酸素濃度を上昇させると上昇するが、2000度レベルになると、ガスの乖離反応等や吸熱反応が活発になって、それ以上温度は上昇しなくなるため、酸素濃度の上昇は高価な酸素の使用を抑制するために40%程度が効率的である。
【0021】
さらに、羽口から吹き込まれた粉状バイオマスを下段羽口前で効率的に燃焼させるためには、下段羽口における酸素比を適正に保つことが効果的である。
【0022】
発明者らの実験によれば、酸素比が1未満の場合、下段羽口から吹き込まれたバイオマスのうち、燃焼しないものがあり、これらは、炉内を上昇し、上段羽口部で燃焼するか、再飛散する。すなわち、下段羽口から吹き込まれたバイオマスが有効活用されていないこととなる。その場合、炉頂から投入するバイオマスの量を調整することで、除じん器における捕集量、すなわち、下段羽口から吹き込むバイオマスの量を容易に制御可能である。
【0023】
また、投入するバイオマスが、例えば建築廃材チップなどのように、高温火格子を形成し難い形状をしている場合は、最低限のコークスを使用することで、化石燃料起因のCO2の排出量を最低限とした溶融処理が可能となる。ここで、最低限とは、高温火格子を維持するための最低限の量であり、発明者らの実験によれば、処理対象廃棄物の1%程度で十分である。これでも、従来と比較して、大幅な使用量の削減となっている。さらには、単体では高温火格子を形成し得ないバイオマスでも、コークスとともに使用することで、溶融熱源として利用できることから、化石燃料の使用量削減及び幅広いエネルギーの活用という2つの面から有効である.」(段落【0016】ないし【0023】)

オ 「【0024】
本発明により、シャフト炉方式の廃棄物溶融炉においては、CO_(2)フリーのバイオマスを投入することによって、高温溶融を維持するために必要な、コークスやLNG、灯油等の化石燃料の消費量が大幅に抑制できるため、直接的に化石燃料起源のCO_(2)発生が抑制できるだけでなく、幅広いバイオマス起源の燃料の有効利用を行うことができる。また、溶融炉後段でボイラーによる蒸気回収発電を行えば、電気エネルギーへの変換も可能であり、その結果(1)所内の消費電力をまかない、購入する電力量を抑制できる、とともに(2)電力会社等に送電を行うことによって電力会社等の化石燃料を用いた発電を間接的に抑制することになって結果的に化石燃料起源のCO_(2)発生を抑制できる。」(段落【0024】)

カ 「【0025】
図1は本発明による方法を実施する廃棄物溶融処理設備を示す図で、図2に示す従来の廃棄物溶融処理設備に加え、シャフト炉出口に除じん器15を設けている以外は全く同じである。そこで、同一構成に同一符号を付して、その説明は省略する。図1は既に可燃性ダスト吹き込み用に実機化されているものと基本的には同じであり、設備的には十分実現可能である。除じん器15では、溶融炉本体1から飛散したバイオマス粉と、廃棄物起因の可燃性ダストが同時に捕集され、ダスト吹き込み装置16を経由して下段羽口2から吹き込まれる。
【実施例1】
【0026】
シャフト炉式廃棄物溶融炉に廃棄物、石灰石、バイオマスを装入し、上段送風羽口から空気を、下段送風羽口から酸素富化空気を吹き込んで廃棄物を溶融処理する実験を実施した。
【0027】
バイオマスは、川で採取した流木を天日乾燥後100mm以下に破砕し、乾留炉に装入して、無酸素雰囲気下で1000℃、5時間で乾留した炭化物を使用した。
【0028】
原料が流木であるため、直径200mm程度の丸太から直径2mm程度の小枝など、その大きさは幅広く、20mmの篩分け及び熱間強度CSR測定を行ったところ、結果は表1のようになった。ここで、熱間強度CSRとは、第3版 鉄鋼便覧II、製銑・製鋼(社団法人 日本鉄鋼協会編)の202頁、表4.23に記載されている(熱間静置反応+常温回転試験)法によるものであり、シャフト炉式廃棄物溶融炉においては、この値が大きいほど、シャフト炉下部で高温火格子を形成しやすいことを示している。発明者らの実験結果によれば、シャフト炉下部で高温火格子を形成するには、CSRが20以上あれば十分であることがわかっている.
【表1】(略)(当審注;20mm篩上重量比63%CSR25、20mm篩下重量比37%CSR7という事項が記載されている。)
【0029】
このバイオマス炭化物を使用した試験を実施し、比較のため、コークスを熱源とした試験も行った。操業条件及び試験結果を表2に示す。
【表2】(略)(当審注;左側の「コークス」欄のコークス使用量30kg/tの例と、右側の「バイオマス」欄のバイオマス(炭化物)使用量30kg/tの例が記載されている。)
【0030】
表2に示すように、どちらの条件でもスラグ温度が1500℃以上で操業できている。また、ダストの捕集量もバイオマスが飛散した分増加しており、それらは下段羽口から吹き込まれ、熱源として有効に利用されているのがわかる。尚、今回使用したバイオマスは固定酸素(当審注;「固定炭素」の誤記と認める。)が90%とほぼコークス並であり、同量装入した場合、ほぼスラグ温度が同じになることから、このバイオマスは100%コークスと置換可能であることがわかる。
【実施例2】
【0031】
この実施例は、建築廃材チップと、コークスの混合使用の例である。建築廃材チップは、φ10mm×100mm程度のチップで、乾留操作を行わないまま、炉内に装入した。表3に操業条件と結果を示す。
【表3】(略)(当審注;左側「コークス」欄のコークス使用量30kg/h(表2との対比から、30kg/tの誤記と認める。)の例と、右側の「バイオマス」欄のコークス使用量10kg/h(同じく表2との対比から、10kg/tの誤記と認める。)及びバイオマス(建築廃材チップ)使用量120kg/tの例が記載されている。)
【0032】
実際の試験では、コークスのみ使用の場合と比較して、スラグ温度が同程度となるように、炉頂から装入する建築廃材チップの量を調整したところ、表3のような結果となった。条件が整い、比較的良質な塊状バイオマスが入手可能な場合は、コークスの替わりとして使用することは当然可能である。この例では、化石燃料起因のCO_(2)排出量はゼロとは出来ないものの、従来と比較して、1/3と大輻に低減できている。尚、この例では、コークスとバイオマスを事前に混合し、一つのホッパより炉内に供給したが、別々のホッパを設置し、それぞれ単独に炉内に装入しても良い。」
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の操業方法を実施するシャフト炉式廃棄物溶融設備を示す図である。
【図2】従来のシャフト炉式廃棄物溶融処理設備を示す図である。
【符号の説明】
【0034】
1:溶融炉本体
1a:シャフト部
1b:廃棄物
2:下段羽口
3:上段羽口
4:コークス
5:朝顔部
6:乾燥帯
7:熱分解帯
8:燃焼溶融帯
10:炉底部
11:装入装置
12:排ガス管
13:出滓口
14:熱分解残渣
15:除じん器
16:ダスト吹き込み装置
17:バイオマス」(段落【0025】ないし【0034】)

(2)上記(1)アないしカ並びに図1及び2の記載から、以下のことが分かる。
サ 上記(1)アないしカ並びに図1及び2の記載から、引用文献には、シャフト炉方式の廃棄物溶融炉に廃棄物及びバイオマスを投入し、廃棄物を乾燥、熱分解、燃焼、溶融処理する廃棄物の溶融処理方法が記載されていることが分かる。また、例えば段落【0008】及び図面の記載から、引用文献に記載された廃棄物の溶融処理方法は、廃棄物を処理して可燃ガスを発生させるものであるから、廃棄物のガス化溶融処理方法であるといえる。

シ 上記(1)ア、エ(特に段落【0013】及び【0023】)及びカ(特に表3)並びに図1及び2の記載を上記サとあわせてみると、引用文献に記載された廃棄物のガス化溶融処理方法において、コークスとバイオマスを投入し、該溶融炉の下部にコークスで高温火格子を形成し、コークスとバイオマスを燃焼して溶融熱源とし、コークスの炉内への投入量は、高温火格子を維持するために必要な最低限の量とし、溶融熱源として必要な熱量をバイオマスにより補うものであることが分かる。

ス 上記(1)ア(特に請求項7)の記載を上記サとあわせてみると、引用文献に記載された廃棄物のガス化溶融処理方法においては、コークスの装入量を固定炭素ベースで廃棄物処理量の2.5%(すなわち廃棄物1tに対し25kg)以下とすることが分かる。

セ 上記(1)カ(特に段落【0027】ないし【0030】及び表2)の記載を上記サとあわせてみると、引用文献に記載された廃棄物のガス化溶融処理方法において、乾留したバイオマス(バイオマス炭化物)は固定炭素が90%とほぼコークス並であり、100%コークスと置換可能であることが分かる。

ソ 上記(1)カ(特に段落【0031】及び表3)の記載を上記サとあわせてみると、引用文献に記載された廃棄物のガス化溶融処理方法において、表3右側のバイオマス(建築廃材チップ)とコークスを混合使用する場合の例において、コークスを10kg/t使用する場合のバイオマス(建築廃材チップ)の装入量は、120kg/tであることが分かる。また、表3左側のコークスを熱源とする場合のコークスの使用量は30kg/tであるから、表3のバイオマス(建築廃材チップ)とコークスを混合使用する場合において、120kgのバイオマス(建築廃材チップ)は、30kg-10kg=20kgのコークスと同等の熱量を有していることが分かる。

タ 上記(1)カ(特に表2及び3)の記載並びに上記セ及びソから、120kgのバイオマス(建築廃材チップ)は、20kgのコークスと同等の熱量を有していることから、その固定炭素量は20kg×90%=18kgであることが分かる。この場合の固定炭素比率を計算すると、18kg/120kg×100(%)=15(%)となる。

(3)上記(1)、(2)並びに図1及び2の記載から、引用文献には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。

「シャフト炉方式の廃棄物溶融炉に廃棄物を投入し廃棄物を熱分解、燃焼、溶融する廃棄物溶融処理方法において、コークスとバイオマスを投入し、該溶融炉の下部にコークスで高温火格子を形成し、コークスとバイオマスを燃焼して溶融熱源とし、コークスの炉内への投入量は、高温火格子を維持するために必要な最低限の量とし、溶融熱源として必要な熱量をバイオマスにより補う、廃棄物のガス化溶融処理方法。」

2-2 対比
本願補正発明と引用発明とを対比すると、引用発明における「シャフト炉方式の廃棄物溶融炉」は、その機能及び作用又は技術的意義からみて、本願補正発明における「シャフト炉式廃棄物溶融炉」に相当し、以下同様に、「コークス」は「石炭コークス」に、「バイオマス」は「バイオマス成形物」に、「高温火格子」は、「コークス同士間の隙間で通気確保と通液確保の機能を有する高温火格子」及び「高温火格子」に、「(高温火格子を)維持する」は「(高温火格子を)形成する」に、「最低限の量」は「最小限量」に、それぞれ相当する。

そうすると、本願補正発明と引用発明とは、
「シャフト炉式廃棄物溶融炉に廃棄物を投入し廃棄物を熱分解、燃焼、溶融する廃棄物溶融処理方法において、石炭コークスとバイオマス成形物を投入し、該溶融炉の下部に石炭コークスでコークス同士間の隙間で通気確保と通液確保の機能を有する高温火格子を形成し、石炭コークスとバイオマス成形物を燃焼して溶融熱源とし、石炭コークスの炉内への投入量は、高温火格子を形成することに必要な最小限量とし、溶融熱源として必要な熱量をバイオマス成形物により補う、廃棄物のガス化溶融処理方法。」
という点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点>
本願補正発明においては、「石炭コークスの投入量は、処理される廃棄物1tあたり20kg以上30kg未満であり、バイオマス成形物の投入量は、処理される廃棄物1tあたりバイオマス成形物の固定炭素量が5kg以上30kg未満に相当する量であり、バイオマス成形物は、固定炭素比率が10重量%以上であり、長径が200mm以下で、短径に対する長径の比が5以下である塊状物を主に含み、バイオマス成形物に含まれる粒状物は粒径5mm以下の重量比率が30重量%以下である粒径分布であり、算術平均粒径が10mm以上である」と限定されているのに対し、引用発明においては、そのように限定されていない点(以下、「相違点」という)。

2-3 判断
相違点について検討する。
まず、本願補正発明において、石炭コークスの投入量は「高温火格子を形成することに必要な最小限量」であるのだから、シャフト炉式廃棄物溶融炉の形式や大きさ等を考慮して、当業者が実験等により決定する設計事項である。そして、「石炭コークスの投入量は、処理される廃棄物1tあたり20kg以上30kg未満」とする数値範囲には格別な臨界的意義は認められない。
これに対し、引用文献の請求項7には、コークスの装入量を固定炭素ベースで廃棄物処理量の2.5%(すなわち廃棄物1tに対し25kg)以下とすることが記載されており、本願補正発明における石炭コークスの投入量と数値範囲が重複している。
また、引用文献の表3には、バイオマスの投入量を、コークス換算で20kg/t(固定炭素は18kg/t、固定炭素比率15%)とする例が記載されている。
すなわち、引用文献には、本願補正発明における「バイオマス成形物の投入量は、処理される廃棄物1tあたりバイオマス成形物の固定炭素量が5kg以上30kg未満に相当する量であり、バイオマス成形物は、固定炭素比率が10重量%以上であり」という数値範囲と重複する事項が記載されている。
次に、本願補正発明における「バイオマス成形物は、・・・長径が200mm以下で、短径に対する長径の比が5以下である塊状物を主に含み、バイオマス成形物に含まれる粒状物は粒径5mm以下の重量比率が30重量%以下である粒径分布であり、算術平均粒径が10mm以上である」という発明特定事項について、その技術的意義を知るために本願の明細書を参照すると、以下のように記載されている。
「バイオマス成形物として、以下の性状のものが好ましい。
・形状は塊状が好ましい。粒状物を含む場合には大粒径のものを含むことが好ましい。小粒状物、粉状物を多く含むと高温火格子の空隙を塞ぎ、通気確保と通液確保とが損なわれ、また、溶融炉に投入時に飛散し炉下部にまで到達する割合が小さくなり、溶融熱源として十分機能できないため好ましくない。
・塊状の場合に寸法は長径が200mm以下が好ましい。長径が200mmより大きいと、廃棄物溶融炉で通常用いられる装入装置を利用することが難しく、既設の廃棄物溶融炉の装入装置を変更する必要が生じたり、廃棄物溶融炉を新設する際には装入装置の価格が高くなり、経済的でない。
・塊状の場合に短径に対する長径の比が5以下が好ましい。短径に対する長径の比が5以上の細長い形状になると、装入系統において詰まりが生じたり、廃棄物溶融炉内において装入物の正常な降下を妨げるなどのトラブルが生じるため好ましくない。
・粒状の場合に粒径分布は粒径5mm以下の重量比率が30重量%以下であることが好ましい。かつ、算術平均粒径が10mm以上が好ましい。この粒径分布、算術平均粒径を充足しない場合には、高温火格子の空隙を塞ぎ通気確保と通液確保とが損なわれ、また溶融炉に投入する時に飛散し炉下部にまで到達しないものが多くなり、好ましくない。(以下略)」(段落【0039】)
上記の記載から、本願補正発明において「長径が200mm以下で、短径に対する長径の比が5以下である塊状物を主に含み」とするのは、炉への装入をスムーズに行うためであり、「バイオマス成形物に含まれる粒状物は粒径5mm以下の重量比率が30重量%以下である粒径分布であり、算術平均粒径が10mm以上である」とするのは、高温火格子の通気確保と通液確保のためであることが分かる。
他方、引用文献の実施例においては、例えばφ10mm×100mm程度の建築廃材チップを使っているが、引用文献の明細書において「条件が整い、比較的良質な塊状バイオマスが入手可能な場合は、コークスの替わりとして使用することは当然可能である。」(段落【0032】)とも記載されており、塊状バイオマスを使用しても良いとされている。そして、φ10mm×100mm程度の建築廃材チップ又は塊状バイオマスを使用する場合に、「粒状物は粒径5mm以下の重量比率が30重量%以下である粒径分布であり、算術平均粒径が10mm以上である」とすることは自明な事項又は設計事項である。

また、拒絶理由通知において引用された特開2005-274122号公報(以下、「引用文献2」という。)において「図1に示すシャフト炉式廃棄物溶融炉1に廃棄物、コークス、石灰石、バイオマス固形物を装入し、上段送風羽口2から空気を、下段送風口3から酸素富化空気を吹き込んで廃棄物を溶融処理した。」(段落【0024】)、「バイオマス固形物は、木材加工時に発生するおがくずを、固体温度が約200℃となるように加熱し、約1t/cm^(2)で加圧成形により約40mm径のブリケットとしたものを使用した。また、比較のため、石炭コークスを熱源とした試験も行った。バイオマス固化物及び石炭コークス使用時の操業条件及び結果を表1に示す。」(段落【0025】)と記載され、拒絶査定時に示された特開2005-249310号公報(以下、「引用文献3」という。)において「塊状バイオマス固形物を廃棄物溶融炉でコークス代替として効率的に利用するためには、塊状バイオマスの粒径を20mm以上に整粒することが効率的である。20mm以下の細粒のものは、炉底部に到達してもすぐに燃焼消失してしまうために、コークスのように高温火格子を形成できない。これによりシャフト炉下剖に高温の火格子が形成されて火格子の機能により炉底部での溶融物の通液性、燃焼ガスの通気性を確保することができる。逆に、100mm以上とすると、高炉用コークスに比べて強度の落ちるバイオマスでは、搬送課程及び炉内での割れなどが発生しやすく、かえって炉底部では小径になることが多い。そこで、塊状バイオマスの粒径は100mm以下とすることが望ましい。」(段落【0026】)と記載されているように、シャフト炉式廃棄物溶融炉においてバイオマスを燃料とする場合に、本願補正発明におけるバイオマス成形物と数値範囲が重複する大きさのバイオマス成形物(引用文献2における「約40mm径のブリケット」、引用文献3における「塊状バイオマス」)を使用することは、周知技術(以下、「周知技術」という。)でもある。
これらのことから、引用発明において、「石炭コークスの投入量は、処理される廃棄物1tあたり20kg以上30kg未満であり、バイオマス成形物の投入量は、処理される廃棄物1tあたりバイオマス成形物の固定炭素量が5kg以上30kg未満に相当する量であり、バイオマス成形物は、固定炭素比率が10重量%以上であり、長径が200mm以下で、短径に対する長径の比が5以下である塊状物を主に含み、バイオマス成形物に含まれる粒状物は粒径5mm以下の重量比率が30重量%以下である粒径分布であり、算術平均粒径が10mm以上である」と限定することは、周知技術を参照して適宜設計変更することにより、当業者が容易に想到できたことである。

そして、本願補正発明を全体としてみても、その奏する効果は、引用発明から、又は引用発明及び周知技術から当業者が予測できた範囲内のものであり、格別に顕著な効果ではない。

以上のように、本願補正発明は、引用発明に基づいて、又は引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3 むすび
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 手続の経緯及び本願発明
平成26年6月24日付けの手続補正は前述したとおり却下されたので、本件出願の請求項1及び2に係る発明は、平成26年3月5日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲並びに出願当初の明細書及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、前記第2の〔理由〕1(1)アの請求項1に記載したとおりのものである。

2 引用文献
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献及びその記載事項は、前記第2の〔理由〕2 2-1に記載したとおりである。

3 対比・判断
本願発明は、前記第2の〔理由〕2の2-2及び2-3において検討した本願補正発明における限定の一部である「固定炭素比率が10重量%以上であり、長径が200mm以下で、短径に対する長径の比が5以下である塊状物を主に含み、バイオマス成形物に含まれる粒状物は粒径5mm以下の重量比率が30重量%以下である粒径分布であり、算術平均粒径が10mm以上である」という事項を省いたものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに限定を加えたものに相当する本願補正発明が、前記第2の〔理由〕2の2-3に記載したとおり、引用発明に基づいて、又は引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願補正発明から上記事項を省いた本願発明は、引用発明に基づいて、又は引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
そして、本願発明を全体としてみても、その奏する効果は、引用発明から、又は引用発明及び周知技術から当業者が予測できた範囲内のものであり、格別に顕著な効果ではない。

4 まとめ
以上のとおり、本願発明は、引用発明に基づいて、又は引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

第4 むすび
上記第3のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないので、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-03-25 
結審通知日 2015-03-26 
審決日 2015-04-07 
出願番号 特願2011-3978(P2011-3978)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (F23G)
P 1 8・ 121- Z (F23G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 鈴木 貴雄稲葉 大紀  
特許庁審判長 中村 達之
特許庁審判官 金澤 俊郎
佐々木 訓
発明の名称 廃棄物ガス化溶融処理方法  
代理人 藤岡 徹  

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