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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61B
管理番号 1301204
審判番号 不服2013-21321  
総通号数 187 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-07-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-11-01 
確定日 2015-05-20 
事件の表示 特願2008-502292「携帯診断装置」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 9月28日国際公開、WO2006/099988、平成20年8月21日国内公表、特表2008-532719〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は、平成18年3月16日(パリ条約による優先権主張平成17年3月21日、ドイツ)を国際出願日とする出願であって、平成23年7月14日付けで拒絶理由が通知され、平成24年1月19日付けで意見書が提出されるとともに手続補正がなされ、同年7月25日付けで拒絶理由が通知され、平成25年1月31日付けで意見書が提出されるとともに手続補正がなされたが、同年6月28日付けで拒絶査定がなされたのに対し、同年11月1日に拒絶査定不服審判が請求され、それと同時に手続補正がなされたものである。

2 平成25年11月1日付けでなされた手続補正について
平成25年11月1日付けでなされた手続補正は、請求項2?14を削除したものである。
したがって、この補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下「改正前の特許法」という。)第17条の2第4項第1号に規定する請求項の削除を目的とするものに該当する。また、新たな技術事項を導入するものではないから、改正前の特許法第17条の2第3項の規定に適合する。
よって、平成25年11月1日付けでなされた手続補正は、改正前の特許法第17条の2の規定に適合する。

3 本願発明
この出願の請求項1に係る発明は、平成25年11月1日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるものであると認められ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は次のとおりのものである。

「ECG信号を記録するECGユニットであって患者の体からの電気信号を取り出す二個以上のECG電極に接続されているか或いは接続可能となっているECGユニットと、
容積脈波信号を同時に記録するためのパルスオキシメトリーユニットであって患者の体組織の血管系における血液灌流の光学測定のために少なくとも一個の光源と少なくとも一個の光センサを含むパルスオキシメトリーユニットと、
ECG信号及び容積脈波信号を評価するためのプログラム制御される評価ユニットと、
ECGユニット、パルスオキシメトリーユニット及び評価ユニットを収容するケースとを含む携帯診断装置であって、
ECG電極並びにパルスオキシメトリーユニットの光源と光センサが、患者が一方の手で第1のECG電極に触り、他方の手で第2のECG電極に触ると同時に光源及び光センサに触ることができるように前記ケースの外側に配置され、前記光源及び前記光センサが前記第2のECG電極内に一体化されており、パルスオキシメトリーユニットが第2のECG電極に触っている方の患者の手から容積脈波信号を得て、
前記評価ユニットが、
-ECG信号におけるRピークの自動認識、
-容積脈波信号における極値の自動認識、及び
-ECG信号におけるRピークと容積脈波信号における引き続く極値との間の時間差の測定
を可能とするために適切に構成されていることを特徴とする携帯診断装置。」

4 刊行物の記載事項
(1)本願優先日前に頒布され、原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である特開平8-257002号公報(以下「刊行物1」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている(下線は当審で付した。)。

ア 「【0012】
【実施例】以下、本発明の一実施例を図面に基づいて詳細に説明する。図1は、連続的に生体の血圧値を測定する連続血圧測定装置8と共に、脈波伝播速度測定装置が設けられた構成を説明する図である。」

イ 「【0016】上記電子制御装置28は、CPU29,ROM31,RAM33,および図示しないI/Oポート等を備えた所謂マイクロコンピュータにて構成されており、CPU29は、ROM31に予め記憶されたプログラムに従ってRAM33の記憶機能を利用しつつ信号処理を実行することにより、I/Oポートから駆動信号を出力して切換弁16および空気ポンプ18を制御する。」

ウ 「【0020】心電誘導装置60は、生体の所定の部位に貼り着ける複数の電極62を介して心筋の活動電位を示す心電誘導波形すなわち心電図を連続的に検出するものであり、その心電誘導波形を示す信号を前記電子制御装置28へ供給する。」

エ 「【0025】図4は、上記電子制御装置28の制御作動の要部を説明するフローチャートである。図のステップSA1(以下、ステップを省略する。)では、心電誘導装置60により逐次検出される心電誘導波形が読み込まれるとともに、SA2では、圧脈波センサ46により逐次検出される圧脈波が読み込まれる。次いで、SA3では、心電誘導波形のR波(R点)が検出されたか否かが判断される。この判断が否定された場合は前記SA1以下が繰り返し実行されるが、肯定された場合は、SA4において圧脈波の最大点が検出されたか否かが判断される。
【0026】上記SA4の判断が否定された場合は前記SA1以下が繰り返し実行されるが、肯定された場合は、前記時間差算出手段80に対応するSA5において、図5に示すように、心電誘導波形のR波から圧脈波の最大値までの時間差TD_(RP)が算出される。そして、前記伝播速度算出手段82に対応するSA6において、予め記憶された数式1からSA5において実際に求められた時間差TD_(RP)に基づいて脈波伝播速度V_(M)が算出される。このようにして算出された脈波伝播速度V_(M)は、図示しないアルゴリズムに従って動脈硬化度または末梢抵抗を推定するため、或いは前記圧脈波血圧対応関係決定手段74により対応関係再決定動作開始時における血圧値などを推定するために用いられる。」

オ 「【0035】また、前述の実施例では、脈波として圧脈波或いはカフ脈波が用いられていたが、生体の皮膚を照射する光源と、その光源から放射された光の透過光或いは反射光を検出する光検出素子とを備えた光電脈波センサが脈波センサとして用いられてもよい。このような場合には、2種類の波長の照射光を用いて脈波を検出する光電脈波センサを備えたパルスオキシメータとともに脈波伝播速度測定装置を設けることにより、光電脈波センサを兼用することができる利点がある。」

上記の記載事項ア?オから、刊行物1には、以下の発明が記載されていると認められる。

「心電誘導装置60は、生体の所定の部位に貼り着ける複数の電極62を介して心筋の活動電位を示す心電誘導波形すなわち心電図を連続的に検出するものであり、その心電誘導波形を示す信号を電子制御装置28へ供給するものであり、
生体の皮膚を照射する光源と、その光源から放射された光の透過光或いは反射光を検出する光検出素子とを備えた光電脈波センサを兼用するパルスオキシメータと、
電子制御装置28は、CPU29,ROM31,RAM33,および図示しないI/Oポート等を備えた所謂マイクロコンピュータにて構成されており、
電子制御装置28は、心電誘導装置60により逐次検出される心電誘導波形が読み込まれるとともに、光電脈波センサにより逐次検出される脈波が読み込まれ、次いで、心電誘導波形のR波(R点)が検出されたか否かが判断され、この判断が肯定された場合は、脈波の最大点が検出されたか否かが判断され、この判断が肯定された場合は、心電誘導波形のR波から脈波の最大値までの時間差TD_(RP)が算出される制御作動を行う、
脈波伝播速度測定装置。」(以下「引用発明1」という。)

(2)本願優先日前に頒布され、原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である特開平11-299740号公報(以下「刊行物2」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている(下線は当審で付した。)。

ア 「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は携帯型の生体モニタ装置に関するものである。」

イ 「【0024】(実施例1)図1は本発明の実施例1の生体モニタ装置のブロック図である。また、図2は同装置の外観図で、図2(a)、(b)はそれぞれ同装置の表側と裏側の外観図である。図1において、10はカード型の本体、11は生体情報検出手段で、生体情報検出手段11は、脈波を検出するための発光部12aと受光部12b、心電図、体脂肪率、及び皮膚抵抗の少なくとも1つを検出するための電極13aと13b、体温や皮膚温を検出するための温度検出部14、心拍や呼吸による体表面の振動と身体動作による体動の少なくとも1つを検出するための振動検出部15を備えている。」

ウ 「【0026】16は名前、身長、体重といった個体属性や治療に関する情報を入力可能な入力手段で、17は生体情報検出手段11の出力信号に基づき、脈拍数、不整脈回数、速度脈波、加速度脈波、脈波伝播時間、血圧、体脂肪率、皮膚温、体温、呼吸数、睡眠深度、運動量、緊張度といった生理心理指標の少なくとも一つを演算する演算手段、18は生体情報検出手段11、入力手段16、演算手段17の出力信号を記憶する記憶手段、19は生体情報検出手段11、演算手段17、記憶手段18の出力信号を表示する表示手段、20は生体情報検出手段11、演算手段17、記憶手段18と外部の情報処理装置21とを通信可能とする通信手段である。22は電極13aと13bにより心電図、体脂肪率、及び皮膚抵抗を検出する際の選択部で、心電図を検出する場合は電極13aと13b間の電位差を、体脂肪率及び皮膚抵抗を検出する場合は電極13aと13b間の抵抗値をそれぞれ検出するように検出回路を選択する。選択部22での検出回路の選択や演算手段17での演算項目の設定については、例えば入力手段16で設定できるようにすればよい。
【0027】図2(a)に示すように、本体10の表側には、電極13aと13b、入力手段16、表示手段17が配設されており、本体10の端部には通信手段20が配設されている。また、図2(b)に示すように、本体10の裏側には、発光部12aと受光部12b、温度検出部14が配設されており、振動検出部15が埋設されている。電極13aと温度検出部14、電極13bと発光部12a及び受光部12bはそれぞれ本体10の表側と裏側の同じ位置に相対して配設されている。」

エ 「【0031】先ず、図5(a)に示すように、本体10を両方の手で支持して使用する場合について述べる。この場合、本体10表側の電極13a、13bにそれぞれ右手と左手の親指が接触するように、かつ、本体10裏側の発光部12aと受光部12bに右手の人差し指が、温度検出部14に左手の人差し指がそれぞれ接触するように本体10を支持して使用する。
【0032】このようにして本体10を使用すると、受光部12bからは光電容積脈波が検出され、電極13a、13bからは選択部22での検出回路の選択結果に基づき、心電図、体脂肪率を求めるための身体の電気抵抗の少なくとも1つが検出され、温度検出部14からは体温及び皮膚温が検出される。そして、演算手段17では、上記の脈波や心電図に基づき脈拍数、不整脈回数、速度脈波、加速度脈波、脈波伝播時間、血圧及び体脂肪率が演算される。
【0033】これらの検出値、演算値のうち、電極13aと13bにより検出された心電図波形と、受光部12bにより検出された脈波波形、及び演算手段17で演算された加速度脈波波形を図6に示した。また、脈拍数は例えば図6のように心電図波形から一拍間隔Pinを求め、60をPinで割ることにより求められる。不整脈回数はPinがある範囲を逸脱した回数をカウントして求められる。速度脈波、加速度脈波は脈波をそれぞれ1回微分、2回微分して求める。脈波伝播時間は、心電図波形のR波と脈波波形の立上りとの間の時間で、図6のPTTとして求められる。」

オ 「【0044】上記作用により、カード型の本体10に配設された生体情報検出手段11に生体の一部を接触するか、または、本体10を身に付けて携帯するだけで生体情報を検出し、その生体情報を本体10に配設された記憶手段18に記憶するとともに、表示手段19に表示するので、薄形で収納性、携帯性に優れ、使用する際に手間がかからない上、身に付けていても拘束感なく生体情報をモニタすることができる。」

カ 「【0053】また、発光部12aと受光部12bの組を異なる複数波長領域で複数組設け、複数のの(当審注:「のの」は「の」の誤記と認められる。)出力信号の比から血中酸素飽和濃度や血液量を演算する構成としてもよい。」

上記の記載事項ア?カから、刊行物2には、以下の発明が記載されていると認められる。

「カード型の本体10は、
脈波を検出するための発光部12aと受光部12b、心電図を検出するための電極13aと13bを有する生体情報検出手段11と、
生体情報検出手段11の出力信号に基づき脈波伝播時間を演算する演算手段17と、
生体情報検出手段11、入力手段16、演算手段17の出力信号を記憶する記憶手段18と、
生体情報検出手段11、演算手段17、記憶手段18の出力信号を表示する表示手段19と、
を備え、
本体10を両方の手で支持して使用する場合、本体10表側の電極13a、13bにそれぞれ右手と左手の親指が接触するように、かつ、本体10裏側の発光部12aと受光部12bに右手の人差し指が接触するように本体10を支持して使用するものであり、
受光部12bからは光電容積脈波が検出され、電極13a、13bからは、心電図が検出され、そして、演算手段17では、脈波や心電図に基づき、脈波伝播時間が演算され、
発光部12aと受光部12bの組を異なる複数波長領域で複数組設け、複数の出力信号の比から血中酸素飽和濃度を演算する、
携帯型の生体モニタ装置。」(以下「引用発明2」という。)

5 対比
本願発明と引用発明1とを対比する。
(1)引用発明1の「心筋の活動電位を示す心電誘導波形すなわち心電図」、「心電誘導装置60」、「生体」、「心筋の活動電位」、「複数の電極62」、「脈波」、「パルスオキシメータ」、「光源」、「光検出素子」、「脈波伝播速度測定装置」、「R波(R点)」、「最大点」及び「時間差TD_(RP)」は、それぞれ、本願発明の「ECG信号」、「ECGユニット」、「患者の体」、「電気信号」、「二個以上のECG電極」、「容積脈波信号」、「パルスオキシメトリーユニット」、「少なくとも一個の光源」、「少なくとも一個の光センサ」、「診断装置」、「Rピーク」、「極値」及び「時間差」に相当する。

(2)本願発明の「ECG信号を記録するECGユニット」の「記録する」とは、本願明細書の
「【0033】…ECGユニット1は、患者の体から電気信号を取り出すためのECG電極(図1には詳細に示されていない)に接続可能である。ECGユニット1によって獲得されたECG信号は分析ユニット3に送られる。」
との記載を参酌すれば、信号を獲得することを意味するものであり、「検出する」と同義と解すべきである。
また、本願発明の「容積脈波信号を…記録する」の「記録する」とは、本願明細書の
ア 「【0033】…パルソキシメトリーユニット2は、患者の体組織の微細血管系における血液灌流を光学的に測定するものである。パルソキシメトリーユニット2によって異なる2光波長で獲得された容積脈波信号も分析ユニット3に送られる」
イ 「【0034】…患者の体組織が赤色光と赤外光とによって交互に照射される。体組織19内において、光は分散され、組織19を通って流れる血液のオキシヘモグロビン及び/又はデオキシヘモグロビンの含有量に対応して吸収される。分散した光は光検出器(フォトダイオード)20によって記録される。光検出器20の光子束は変換器21によって電圧に変換され、この電圧が増幅器22によって増幅され、アナログ/デジタル変換器23によってデジタル信号に変換される。そして、デジタル信号は、マイクロコントローラ9の部品である赤外/赤色復調器24に送られる。赤外/赤色復調器24はタイミング発生器10に接続されている。復調器24は、デジタル信号を2個の容積脈波信号25、26に分割する。信号25は組織19における赤外光の吸収を表し、信号26は組織19における赤色光の吸収に割り当てられている。」
との記載を参酌すれば、「光検出器(フォトダイオード)20によって」「光子束」である「容積脈波信号」を獲得することであるから、「検出する」と同義と解すべきである。
したがって、引用発明1の「検出する」は、本願発明の「記録する」に相当する。

(3)引用発明1の「生体の所定の部位に貼り着ける複数の電極62を介して心筋の活動電位を示す心電誘導波形すなわち心電図を連続的に検出する心電誘導装置60」は、本願発明の「ECG信号を記録するECGユニットであって患者の体からの電気信号を取り出す二個以上のECG電極に接続されているECGユニット」に相当する。

(4)本願発明の「容積脈波信号を同時に記録する」とは、本願明細書に「【0039】…図7の上側は、ECG信号55を容積脈波信号56と共に時間の関数として示す。信号55、56は本発明による携帯診断装置によって同時に記録される。」と記載されていることから、「ECG信号」と「同時に記録する」と解すべきである。
そうすると、引用発明1は「心電誘導装置60により逐次検出される心電誘導波形が読み込まれるとともに、光電脈波センサにより逐次検出される脈波が読み込まれる」ものであるから、引用発明1の「生体の皮膚を照射する光源と、その光源から放射された光の透過光或いは反射光を検出する光検出素子とを備えた光電脈波センサを兼用するパルスオキシメータ」は、本願発明の「容積脈波信号を同時に記録するためのパルスオキシメトリーユニットであって患者の体組織の血管系における血液灌流の光学測定のために少なくとも一個の光源と少なくとも一個の光センサを含むパルスオキシメトリーユニット」に相当する。

(5)引用発明1において「電子制御装置28は、CPU29,ROM31,RAM33,および図示しないI/Oポート等を備えた所謂マイクロコンピュータにて構成されて」いるから、プログラム制御されるものであることは明らかである。
したがって、引用発明1の「心電誘導装置60により逐次検出される心電誘導波形が読み込まれるとともに、光電脈波センサにより逐次検出される脈波が読み込まれ、次いで、心電誘導波形のR波(R点)が検出されたか否かが判断され、この判断が肯定された場合は、脈波の最大点が検出されたか否かが判断され、この判断が肯定された場合は、心電誘導波形のR波から脈波の最大値までの時間差TD_(RP)が算出される」「制御作動」を行う「電子制御装置28」は、本願発明の「ECG信号及び容積脈波信号を評価するためのプログラム制御される評価ユニット」であって「前記評価ユニットが、ECG信号におけるRピークの自動認識、容積脈波信号における極値の自動認識、及びECG信号におけるRピークと容積脈波信号における引き続く極値との間の時間差の測定を可能とするために適切に構成されている」ものに相当する。

してみると、本願発明と引用発明1とは
「ECG信号を記録するECGユニットであって患者の体からの電気信号を取り出す二個以上のECG電極に接続されているECGユニットと、
容積脈波信号を同時に記録するためのパルスオキシメトリーユニットであって患者の体組織の血管系における血液灌流の光学測定のために少なくとも一個の光源と少なくとも一個の光センサを含むパルスオキシメトリーユニットと、
ECG信号及び容積脈波信号を評価するためのプログラム制御される評価ユニットと
を含む診断装置であって、
前記評価ユニットが、
-ECG信号におけるRピークの自動認識、
-容積脈波信号における極値の自動認識、及び
-ECG信号におけるRピークと容積脈波信号における引き続く極値との間の時間差の測定
を可能とするために適切に構成されている診断装置。」
である点で一致し、次の点で相違する。

(相違点1)
診断装置について、本願発明は「ECGユニット、パルスオキシメトリーユニット及び評価ユニットを収容するケース」「を含む携帯診断装置」であるのに対し、引用発明1はそのようなものでない点。

(相違点2)
ECG電極並びにパルスオキシメトリーユニットの光源と光センサが、本願発明では「患者が一方の手で第1のECG電極に触り、他方の手で第2のECG電極に触ると同時に光源及び光センサに触ることができるように前記ケースの外側に配置され、前記光源及び前記光センサが前記第2のECG電極内に一体化されており、パルスオキシメトリーユニットが第2のECG電極に触っている方の患者の手から容積脈波信号を得」るものであるのに対し、引用発明1がそのようなものではない点。

6 判断
(1)相違点1、2について
引用発明2の「電極13a、13b」、「左手」、「右手」、「本体10」、「『表側』及び『裏側』」、「光電容積脈波」及び「携帯型の生体モニタ装置」は本願発明の「ECG電極」、「一方の手」、「他方の手」、「ケース」、「外側」、「容積脈波信号」及び「携帯診断装置」に相当する。
また、引用発明2の「発光部12aと受光部12b」は、「脈波を検出するための」ものであるとともに、それらの「組を異なる複数波長領域で複数組設け、複数の出力信号の比から血中酸素飽和濃度を演算する」ためのものでもあるから、本願発明の「パルスオキシメトリーユニットの光源と光センサ」に相当する。
さらに、引用発明2の「携帯型の生体モニタ装置」を「使用する」者は、本願発明の「患者」に相当する。
したがって、引用発明2は、本願発明の「ECGユニット、パルスオキシメトリーユニット及び評価ユニットを収容するケースを含む携帯診断装置であって、ECG電極並びにパルスオキシメトリーユニットの光源と光センサが、患者が一方の手で第1のECG電極に触り、他方の手で第2のECG電極に触ると同時に光源及び光センサに触ることができるように前記ケースの外側に配置され、パルスオキシメトリーユニットが第2のECG電極に触っている方の患者の手から容積脈波信号を得る携帯診断装置」に相当するといえる。
そして、引用発明1と引用発明2とは、複数の電極を介して検出される心電図と発光部と受光部を用いて検出される脈波から脈波伝播時間を算出する装置の点で共通するから、その装置を容易に携帯することができるようにするために、引用発明1に引用発明2を適用することは当業者が容易になし得たというべきである。

また、ECG電極並びにパルスオキシメトリーユニットの光源と光センサを、一方の手で第1のECG電極に触り、他方の手で第2のECG電極に触ると同時に光源及び光センサに触ることができるようにケースの外側に配置する場合に、パルスオキシメトリーユニットの光源及び光センサと第2のECG電極を、ケースの外側における接触する手指に対応する複数位置のうちの一個所に配置することは、例えば、以下の刊行物ア及びイに記載されているように周知技術である。

ア 特許第3223931号公報
(ア)「【0009】…光学センサ26は、発光ダイオードなどの発光素子とフォトトランジスタなどの受光素子とからなり、心臓の鼓動に応じて指先の血管中に送られた血液中のヘモクロビンの濃度変化を検出して脈拍を測定するためのものである。」
(イ)「【0012】…右手の指先を確実に指載置部7の第2電極8に接触させることができるとともに脈拍検出窓9にこれを覆って密着させることができる。これにより、第1電極4と第2電極8とにより心電波を検出することができるとともに、光学センサ26により脈拍を検出することができ、血圧データを算出することができる。この場合、第1電極4および第2電極8にはそれぞれ両手の一部が上述したように確実に接触しているので、心電波の電気信号が極めて微弱であっても、正しく心電波を検出することができる。また、脈波検出窓9は右手の指先が密着して覆われているので、外部光の侵入を防ぐことができ、外部光に影響されることなく光学センサ26で正しく脈拍を検出することができる。」

イ 特開昭63-186623号公報
(ア)「両検出電極板5、5のうちその一方には、第3図にもみるように、その中央に孔6が形成され、その孔6には蓋体2の底壁7から内向きに突設された突起8が嵌まり合っている。この突起8の内側には、透明ガラス9が嵌め込まれ、このガラス9の裏側に光選択フィルタ10が設けられている。光選択フィルタ10の裏側に設けられた空間は、仕切部13を介して2つの凹部11、12に分かれていて、その一方に、発光ダイオード14が、他方にホトトランジスタ15が設置されている。」(2頁右上欄20行?同頁左下欄10行)
(イ)「計測に当たって、蓋体2から本体1を開いてのち、蓋体2の内側にある両検出電極板5、5に両手の各人さし指を当てるようにする。これにより、両検出電極板5、5を通して使用者の心電位信号が受け入れられる。」(3頁左上欄3?7行)
(ウ)「光電脈波検出法は、第3図にみるように、指Bをガラス9の表面に触れ当てるようにして行われる。」(3頁右上欄12?14行)

そして、パルスオキシメトリーユニットの光源及び光センサと一方のECG電極を、ケースの外側における接触する手指に対応する複数位置に別個に配置するか、ケースの外側における接触する手指に対応する複数位置のうちの一個所に配置するかは、当業者が適宜選択し得るものであり、その際にパルスオキシメトリーユニットの光源及び光センサをECG電極内に一体化させることも、上記刊行物イに開示されるように、当業者が適宜選択し得る設計的事項というべきである。

したがって、引用発明1、引用発明2及び周知技術から相違点1、2に係る構成に想到することは、当業者が容易になし得たことである。

(2)効果について
上記相違点1、2により本願発明の奏する効果は、引用発明1、引用発明2及び周知技術から、当業者が予測できる範囲のものであり、格別顕著なものとはいえない。

7 むすび
本願発明は、引用発明1、引用発明2及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-12-11 
結審通知日 2014-12-16 
審決日 2015-01-05 
出願番号 特願2008-502292(P2008-502292)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A61B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 遠藤 孝徳  
特許庁審判長 尾崎 淳史
特許庁審判官 藤田 年彦
渡戸 正義
発明の名称 携帯診断装置  
代理人 酒井 一  
代理人 蔵合 正博  

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