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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B21D
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 B21D
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B21D
管理番号 1301222
審判番号 不服2014-16569  
総通号数 187 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-07-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-08-21 
確定日 2015-05-20 
事件の表示 特願2009-213183「金属容器の製造方法、溝加工ツールおよび金属容器」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 3月31日出願公開、特開2011- 62707〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 【1】手続の経緯
本願は、平成21年9月15日の出願であって、平成25年9月24日付けで拒絶理由が通知され、これに対し、同年12月27日付けで意見書及び手続補正書が提出されたが、当該手続補正書に係る手続は平成26年4月23日付けで却下され、さらに同年5月30日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年8月21日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正がなされたものである。

【2】平成26年8月21日付けの手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成26年8月21日付けの手続補正を却下する。

[理由]
[1]補正後の本願発明
平成26年8月21日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)により、特許請求の範囲の請求項1は、以下のように補正された。
「円筒状の胴部と、その胴部の下端を閉じる底部と、その胴部の上端から縮径するように延びる肩部と、その肩部上端の口部とを備えた金属製の容器本体を成形し、前記容器本体を胴部の軸を中心にして回転させると共に、
各対ごとに容器本体の周りに相対するように配置された3対、合計6本の支持杆によって回転自在に支持された、外周に複数の環状突起を有する6個の成形駒を各対ごとに高さが異なるように前記胴部に当接させて、
前記胴部側面に複数の環状溝を形成する、金属容器の製造方法。」

上記補正は、本件補正前の請求項1に係る発明の「成形駒」について、「外周に複数の環状突起を有し、回転自在に支持された成形駒を前記胴部に当接させ」たものであったところ、「各対ごとに容器本体の周りに相対するように配置された3対、合計6本の支持杆によって回転自在に支持された、外周に複数の環状突起を有する6個の成形駒を各対ごとに高さが異なるように前記胴部に当接させ」たものに限定するものであって、特許法第17の2第5項ただし書第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)否かについて、以下検討する。

[2]引用刊行物
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願日前に頒布された、特開2004-188493号公報(以下「刊行物1」という。)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。

(ア)
「円筒状の缶胴の所望の位置を凹入変形させて立体模様を形成する缶胴の外形加工方法であって、内部が気体により所定圧に維持された缶胴の周壁にその外方から押圧部材を圧接し、該缶胴の周壁に所定形状の凹入変形部を形成する押圧成形工程を備えることを特徴とする缶胴の外形加工方法。」(【請求項1】)

(イ)
「・・・外形加工装置1は、・・・図示しない回転駆動手段によって回転駆動される回転軸7回りに周回動する複数の缶胴保持手段8と、缶胴保持手段8に保持された缶胴4の周壁に圧接して該缶胴4に外形加工を施す押圧手段9とを備えている。・・・
外形加工装置1は、図2に一部を断面示するように、前記回転軸7に連設された円盤状の一対の回転支持部10,11を備え、両回転支持部10,11の周縁部に所定間隔を存して複数の缶胴保持手段8が支持されている。該缶胴保持手段8は、円筒状に形成された缶胴4の開口する一端部に当接する第1保持部材12と、該第1保持部材12に対向して設けられ、缶胴4の閉塞された他端部に当接する第2保持部材13とを備えている。図3に示すように、前記第1保持部材12は、缶胴4の開口14の周縁に形成されたフランジ部15に対応する形状を有して該フランジ部15に気密に当接する当接部16を備えている。前記第2保持部材13は、缶胴4の閉塞された底部17に対応する形状を有して該底部17に当接する当接部18を備えている。なお、本実施形態において外形加工を施す缶胴4は、比較的薄肉のアルミニウム製であり、開口14に図示しない缶蓋を巻き締める所謂2ピース缶を形成するものである。
前記第1保持部材12は、図2に示すように、第1回転シャフト19の先端に設けられている。第1回転シャフト19は、一方の回転支持部10に進退自在に支持された第1進退部材20に回転自在に支持されている。・・・」(【0044】?【0046】)


(ウ)
「前記第2保持部材13は、図2に示すように、第2回転シャフト32の先端に設けられている。第2回転シャフト32は、他方の回転支持部11に進退自在に支持された第2進退部材33に回転自在に支持されている。・・・
更に、両回転支持部10,11の間には、前記押圧手段9が設けられている。該押圧手段9は、ブラケット42と、該ブラケット42に回転自在に支持された回転軸43と、回転軸43に所定間隔を存して支持された複数の(本実施形態においては7個の)押圧部材44とを備えている。・・・」(【0048】?【0049】)

(エ)
「更に、前記押圧手段9は、ブラケット42に支持された回転軸43に圧接プーリ51を備えている。該圧接プーリ51は、前記第2保持部材13に設けられた駆動プーリ52と他方の回転支持部11に回転自在に支持されたアイドルプーリ53とに掛け渡されたベルト54に圧接され、後述するように、第2保持部材13に同期して回転されつつ揺動可能に構成されている。・・・
また、前記押圧部材44は、図4(a)に示すように円盤状に形成されており、その周縁部には複数の凸部55が所定間隔を存して形成されている。・・・」(【0053】?【0054】)

(オ)
「次に、本実施形態の外形加工装置1による缶胴4の外形加工について説明する。先ず、図1を参照すれば、投入路3に沿って連続供給された缶胴4は、投入ターレット2により保持され、投入位置Aにおいて缶胴保持手段8に保持される。このとき、投入位置Aでは、図5(a)に示すように、前記第1保持部材12と第2保持部材13とが互いに離反する方向に後退した状態であり、投入ターレット2により保持された缶胴4は、第1保持部材12と第2保持部材13との間に位置される。次いで、図5(b)に示すように、第1保持部材12と第2保持部材13とが互いに接近する方向に前進し、第1保持部材12と第2保持部材13との間に缶胴4が挟持される(缶胴保持工程)。この状態にあっては、缶胴4の周壁外面が露出状態とされる。また、図3に示すように、第1保持部材12の当接部16が缶胴4の開口14のフランジ部15に気密に当接し、第2保持部材13の当接部18が缶胴4の底部17に当接する。このとき、図5(b)に示すように、第1保持部材12と第2保持部材13とが回転していることから、第1保持部材12と第2保持部材13とに挟持された缶胴4が回転状態とされる。」(【0055】)

(カ)
「次いで、図6に示すように、押圧部材44が缶胴4に圧接される。即ち、前記筒状部材46から延びる揺動アーム46aの第3カムローラ47が第3カムレール48により案内され、ブラケット42が支持軸45を軸として揺動することで押圧部材44が缶胴4に圧接される。このとき、前記駆動プーリ52と前記アイドルプーリ53との回動に追従して圧接プーリ51を介して押圧部材44の回転が維持される。そして、図7(a)に示すように、各押圧部材44が缶胴4に圧接することにより、図8(a)に拡大断面視して示すように、缶胴4の外壁に押圧部材44の凸部55による凹入変形部56が形成される。前記押圧部材44は、缶胴4の周壁外面から缶胴4内部に向かって凸部55の凹入寸法aが1.2mmとなるまで圧接させる。なお、このときの凹入寸法aは、0.1mm?1.2mmであれば十分に視認できる美観の高い凹入変形部56を形成することができる。」(【0057】)


(キ)
上記記載事項(イ)及び【図3】の記載を参酌すると、「缶胴4」は、円筒状の胴部と、その胴部の下端を閉じる底部17と、その胴部の上端から縮径するように延びる肩部と、その肩部上端の開口14とを備えたアルミニウム製の容器本体であることが見て取れ、また、上記記載事項(オ)及び【図5】の記載を参酌すると、「缶胴4」を胴部の軸を中心にして回転させていることが見て取れる。


上記記載事項(ア)?(カ)、上記認定事項(キ)及び図面の記載並びに当業者の技術常識によれば、上記刊行物1には、以下の発明が記載されていると認められる。

「円筒状の胴部と、その胴部の下端を閉じる底部17と、その胴部の上端から縮径するように延びる肩部と、その肩部上端の開口14とを備えたアルミニウム製の缶胴4を成形し、前記缶胴4を胴部の軸を中心にして回転させると共に、
回転自在に支持された、外周に複数の押圧部材44を有する押圧手段9を前記胴部に当接させて、
前記胴部側面に複数の凹入変形部56を形成する、金属容器の製造方法。」(以下「引用発明」という。)

[3]対比
本願補正発明と引用発明とを対比すると、その機能及び作用からみて、引用発明の「底部17」、「開口14」、「アルミニウム製」、「缶胴4」、「押圧部材44」、「押圧手段9」、「凹入変形部56」は、それぞれ、本願補正発明の「底部」、「口部」、「金属製」、「容器本体」、「環状突起」、「成形駒」、「環状溝」に相当する。

そうすると、両者は、
「円筒状の胴部と、その胴部の下端を閉じる底部と、その胴部の上端から縮径するように延びる肩部と、その肩部上端の口部とを備えた金属製の容器本体を成形し、前記容器本体を胴部の軸を中心にして回転させると共に、
回転自在に支持された、外周に複数の環状突起を有する成形駒を前記胴部に当接させて、
前記胴部側面に複数の環状溝を形成する、金属容器の製造方法。」
の点で一致し、次の点で相違している。

〈相違点〉
成形駒について、本願補正発明が、「各対ごとに容器本体の周りに相対するように配置された3対、合計6本の支持杆によって回転自在に支持された、外周に複数の環状突起を有する6個の成形駒を各対ごとに高さが異なるように前記胴部に当接させ」たものであるのに対し、引用発明が「外周に複数の環状突起を有し、回転自在に支持された成形駒を前記胴部に当接させ」たものである点。

[4]判断
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願日前に頒布された、特開2003-154426号公報(以下「刊行物2」という。)には、「複数の支持杆(ロール支持軸16,17)によって回転自在に支持された、外周に環状突起(成形ロール8,9)を有する複数の成形駒(ロール支持軸16及び成形ロール8,ロール支持軸17及び成形ロール9)をそれぞれ高さが異なるように容器本体の側部に当接させたもの」(以下「刊行物2記載事項」という。)が記載されている。
また、本願の出願日前に頒布された、特開2009-148777号公報(以下「刊行物3」という。)には、「各対ごとに容器本体の周りに相対するように配置された3対、合計6本の支持杆(支持軸16)によって回転自在に支持された、外周に環状突起(加工ロール5a)を有する6個の成形駒(支持軸16及び加工ロール5a)を容器本体の側部に当接させるもの」(以下「刊行物3記載事項」という。)が記載されている。
さらに、本願の発明の詳細な説明には、上記相違点に係る構成に関するものとして、「【0012】このような金属容器の製造方法であって、2個以上の成形駒を高さが異なるようにして前記胴部に同時に当接させる場合、互いの成形駒で容器本体を保持(支持)しながら容器本体を変形させることなく多数の環状溝を形成することができる。前記成形駒をそれぞれ長さの異なる複数の支持杆の先端に支持させた場合、金属容器の胴部の任意の部位に複数の環状溝を形成させることができる。本発明において、前記3種類の支持杆がそれぞれ一対あり、合計6本の支持杆が容器本体の周りに、それぞれの支持杆が相対するように配置しており、6本の支持杆に支持される6個の成形駒により、前記胴部側面に複数の環状溝を形成する場合、容器本体を成形駒によって均等に保持(支持)しながら、溝加工を行うことができるため、安定した成形が可能となる。なお、前記成形駒をカム機構により前記胴部に対して接近又は離隔することもできる。」との記載がある。
この記載によれば、上記相違点に係る構成を採用したことにより、2個以上の成形駒を高さが異なるようにして容器本体の胴部に同時に当接させる場合、複数種類の支持杆をそれぞれ一対とし、相対して配置することにより、容器本体を成形駒によって均等に保持(支持)しながら、溝加工を行うことができるため、安定した成形が可能となることが理解される。
以上のことを踏まえて、検討を進めると、まず、引用発明において、溝加工を、一つの成形駒(押圧手段9)にて行うか、刊行物2記載事項のように複数の成形駒にて高さを異ならせて行うかは、適宜選択し得る技術事項に過ぎない。また、一般に、中空の容器本体を保持しつつ溝加工を行うためには、他の保持部材がない限り、成形駒を相対させ一対とし、両側から挟むように保持するようにして配置することがよいことは、技術常識に基づいて当業者ならば容易に想到し得るものであり、特に、「各対ごとに容器本体の周りに相対するように配置された3対、合計6本の成形駒」を有するものとすることは、刊行物3記載事項に基づいて、当業者ならば容易に想到し得るものである。

してみると、引用発明において、上記相違点に係る構成を採用することは、刊行物2記載事項、刊行物3記載事項及び技術常識に基づいて当業者ならば容易に想到し得るものであり、格別の困難性はない。

そして、本願補正発明により得られる作用効果も、引用発明、刊行物2記載事項、刊行物3記載事項及び技術常識から当業者であれば予測し得る範囲のものであって格別のものとはいえない。
したがって、本願補正発明は、引用発明、刊行物2記載事項、刊行物3記載事項及び技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

[5]むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合しないので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記[補正の却下の決定の結論]のとおり、決定する。

【3】本願発明について
[1]本願発明
平成26年8月21日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、出願当初の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。

(本願発明)
「円筒状の胴部と、その胴部の下端を閉じる底部と、その胴部の上端から縮径するように延びる肩部と、その肩部上端の口部とを備えた金属製の容器本体を成形し、前記容器本体を胴部の軸を中心にして回転させると共に、外周に複数の環状突起を有し、回転自在に支持された成形駒を前記胴部に当接させて、前記胴部側面に複数の環状溝を形成する、金属容器の製造方法。」

[2]引用刊行物
原査定の拒絶の理由に引用された上記刊行物1の記載事項は、前記【2】[2]に記載したとおりである。

[3]対比・判断
本願発明と引用発明とを対比すると、その機能及び作用からみて、引用発明の「底部17」、「開口14」、「アルミニウム製」、「缶胴4」、「押圧部材44」、「押圧手段9」、「凹入変形部56」は、それぞれ、本願補正発明の「底部」、「口部」、「金属製」、「容器本体」、「環状突起」、「成形駒」、「環状溝」に相当する。
そうすると、両者は、
「円筒状の胴部と、その胴部の下端を閉じる底部と、その胴部の上端から縮径するように延びる肩部と、その肩部上端の口部とを備えた金属製の容器本体を成形し、前記容器本体を胴部の軸を中心にして回転させると共に、外周に複数の環状突起を有し、回転自在に支持された成形駒を前記胴部に当接させて、前記胴部側面に複数の環状溝を形成する、金属容器の製造方法。」
の点で一致し、相違点はない。
してみると、本願発明は、刊行物1に記載された発明である。

[4]むすび
以上のとおり、本願発明は、刊行物1に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号の規定に該当し特許を受けることができないから、本願の他の請求項に係る発明を検討するまでもなく、本願は拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-03-06 
結審通知日 2015-03-17 
審決日 2015-03-30 
出願番号 特願2009-213183(P2009-213183)
審決分類 P 1 8・ 113- Z (B21D)
P 1 8・ 121- Z (B21D)
P 1 8・ 575- Z (B21D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 福島 和幸  
特許庁審判長 長屋 陽二郎
特許庁審判官 石川 好文
原 泰造
発明の名称 金属容器の製造方法、溝加工ツールおよび金属容器  

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