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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01K |
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管理番号 | 1301474 |
審判番号 | 不服2014-938 |
総通号数 | 187 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2015-07-31 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2014-01-20 |
確定日 | 2015-06-03 |
事件の表示 | 特願2011-521160「温度平衡を用いる温度センサ用のシステム及び方法」拒絶査定不服審判事件〔平成22年 2月 4日国際公開、WO2010/014354、平成24年 2月23日国内公表、特表2012-504750〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1 手続の経緯 2009年(平成21年)7月6日 国際特許出願 (パリ条約による優先権 2008年(平成20年)7月31日 英国) 平成25年 5月30日付け 拒絶理由通知(同年6月4日発送) 平成25年 8月29日 意見書 平成25年 8月29日 手続補正書 平成25年 9月18日付け 拒絶査定(同年同月24日送達) 平成26年 1月20日 手続補正書 (以下、「本件補正」という。) 平成26年 1月20日 審判請求 2 原査定の拒絶の理由 原査定の拒絶の理由は、概略、各請求項に記載された発明は、いずれも、本願優先日前に日本国内において頒布された刊行物である特開昭53-131082号公報(発明の名称:表面温度検出器、出願人:株式会社日立製作所、公開日:昭和53年11月15日、以下、「引用例」という。)に記載された発明に基づいて、本願優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない、というものである。 3 本願発明 本件出願の特許請求の範囲の請求項1ないし14に係る発明は、明細書、特許請求の範囲及び図面の記載からみて、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1ないし14に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明は次のとおりである。 「試験中の物体の温度を測定するための温度検知装置であって、 試験中の物体に接触するプローブと、 前記試験中の物体への又は該物体からの熱伝達を防止するように構成された加熱/冷却源と、 熱流束センサと、 を有し、 前記加熱/冷却源が、前記プローブへ又は前記プローブから熱エネルギを伝えることによって熱伝達を防止すること、 前記プローブと前記加熱/冷却源との間の温度差により、熱流束を前記熱流束センサに通すように駆動すること、 前記プローブは、前記熱流束センサを前記試験中の物体に熱的に接続すること、 を特徴とする温度検知装置。」(以下、「本願発明」という。) 4 引用例の記載及び引用発明 引用例には、次の事項(a)ないし(d)が図面とともに記載されている。(なお、下線は、当審が付与した。) (a) 「いま、被測温物体表面1の温度t_(1),部材2の温度をt_(2),冷熱源3の温度をt_(3)とすれば、部材2の温度t_(2)は、温度条件によつて第2図に示すように時間とともに変化する。すなわちt_(1)=t_(3)の場合は、被測温物体表面1と冷熱源3との間に熱の授受がなく、部材2の温度t_(2)はt_(1),t_(3)と等しくなり、第2図にaで示した状態になる。次にこの状態で、t_(1)が高くなると、同図bに示すようにt_(2)はt_(1)とt_(3)の中間の温度となり、t_(1)>t_(2)>t_(3)となる。また、t_(1)が低くなると、同図cに示すようになり、このときはt_(1)<t_(2)<t_(3)の関係になる。従つてt_(1)の変化に応じて、常にt_(1)=t_(3)となるように冷熱源3の温度を制御してやれば、常にt_(1)=t_(2)=t_(3)となり、t_(2)より被測温体表面1の温度を測定することができる。」(第2頁左上欄第12行から右上欄第7行まで) (b) 「第3図は本発明の表面温度検出器の一実施例を示す基本構成図で、部材2、すなわち、感熱素子付温度検出器には、被測温物体表面1からの伝熱量を感受検出する第1の感熱素子2aと、冷熱源3と、冷熱源3からの伝熱量を感受検出する第2の感熱素子2bと、部材2の温度を検出する温度検出器2cと、耐熱絶縁プレート6と、均熱板7が収納されている。」(第2頁右上欄第8行から第15行まで) (c) 「そして部材2は、感熱素子2aがある面が、被測温物体表面1に接触または近接して設置される。」(第2頁左下欄第4行から第6行まで) (d) 「感熱素子2a,2bは、それぞれ偏差調節計4に接続され、感熱素子2a,2bで、検出された不平衡温度差、すなわち、抵抗差を入力として、偏差調節計4は、+,-の偏差信号を送出する。そして感熱素子2bの温度が感熱素子2aの温度より低い場合は、冷熱源3の温度を上げるように、また、高い場合は下げるように、上記偏差信号によつて制御する。」(第2頁左下欄第6行から第13行まで) ア 上記(b)の記載から、引用例には、 「感熱素子付温度検出器」が記載されている。 イ 上記(b)の記載から、引用例には、 「部材2、すなわち、感熱素子付温度検出器には、被測温物体表面1からの伝熱量を感受検出する第1の感熱素子2aと、冷熱源3と、冷熱源3からの伝熱量を感受検出する第2の感熱素子2bと、部材2の温度を検出する温度検出器2cと、耐熱絶縁プレート6と、均熱板7が収納され」ることが記載されている。 ウ 上記(c)の記載から、 「部材2は、感熱素子2aがある面が、被測温物体表面1に接触して設置され」ることが読み取れる。 エ 上記(d)の記載から、 「感熱素子2a,2bは、それぞれ偏差調節計4に接続され、感熱素子2a,2bで、検出された不平衡温度差、すなわち、抵抗差を入力として、偏差調節計4は、+,-の偏差信号を送出し、上記偏差信号によつて冷熱源3の温度を制御する」ことが読み取れる。 オ 上記(a)の記載から、引用例には、 「被測温物体表面1の温度t_(1),部材2の温度をt_(2),冷熱源3の温度をt_(3)」が記載されている。 カ 上記(a)の記載から、 「t_(1)の変化に応じて、常にt_(1)=t_(3)となるように冷熱源3の温度を制御してやれば、被測温物体表面1と冷熱源3との間に熱の授受がなく、常にt_(1)=t_(2)=t_(3)となり、t_(2)より被測温物体表面1の温度を測定する」ことが読み取れる。 以上、アからカまでをまとめると、引用例には次の発明が記載されているものと認められる。 「部材2、すなわち、感熱素子付温度検出器には、被測温物体表面1からの伝熱量を感受検出する第1の感熱素子2aと、冷熱源3と、冷熱源3からの伝熱量を感受検出する第2の感熱素子2bと、部材2の温度を検出する温度検出器2cと、耐熱絶縁プレート6と、均熱板7が収納され、 部材2は、感熱素子2aがある面が、被測温物体表面1に接触して設置され、 感熱素子2a,2bは、それぞれ偏差調節計4に接続され、感熱素子2a,2bで、検出された不平衡温度差、すなわち、抵抗差を入力として、偏差調節計4は、+,-の偏差信号を送出し、上記偏差信号によつて冷熱源3の温度を制御するものであり、 被測温物体表面1の温度t_(1),部材2の温度をt_(2),冷熱源3の温度をt_(3)とし、 t_(1)の変化に応じて、常にt_(1)=t_(3)となるように冷熱源3の温度を制御してやれば、被測温物体表面1と冷熱源3との間に熱の授受がなく、常にt_(1)=t_(2)=t_(3)となり、t_(2)より被測温物体表面1の温度を測定する 感熱素子付温度検出器。」(以下、「引用発明」という。) 5 対比 本願発明と引用発明とを、主たる構成要件ごとに順次対比する。 (1)引用発明において、「被測温物体表面1の温度を測定する感熱素子付温度検出器」は、本願発明における「物体の温度を測定するための温度検知装置」に相当する。 引用発明において、「部材2は、感熱素子2aがある面が、被測温物体表面1に接触して設置され」ていることから、部材2のうち被測温物体表面1に接触する面は、本願発明における「物体に接触するプローブ」に相当するといえる。 (2)引用発明において、「冷熱源3の温度を制御してやれば、被測温物体表面1と冷熱源3との間に熱の授受がなく、常にt_(1)=t_(2)=t_(3)とな」るから、冷熱源3は、被測温物体表面1との間に熱の授受がないように制御されるものである。よって、引用発明における「冷熱源3」は、本願発明における「物体への又は該物体からの熱伝達を防止するように構成された加熱/冷却源」に相当する。 また、引用発明は、「t_(1)の変化に応じて、常にt_(1)=t_(3)となるように冷熱源3の温度を制御」するものであり、冷熱源3と被測温物体表面1との間にある、部材2のうち被測温物体表面1に接触する面の温度も被測温物体表面1の温度t_(1)と同じ温度になるように冷熱源3によって加熱または冷却されている。そして、t_(1)=t_(2)=t_(3)つまり、被測温物体表面1の温度(t_(1))と、部材2の温度(t_(2)),冷熱源3の温度(t_(3))を同じにすることで、それぞれの間で熱の授受がなくなることから、被測温物体表面1と部材2のうち被測温物体表面1に接触する面との間でも熱の授受がなくなるものである。 そして、引用発明において、(本願発明の加熱/冷却源に相当する)冷熱源3が、部材2のうち(本願発明のプローブに相当する)被測温物体表面1に接触する面などを加熱または冷却することで熱の授受がなくなるようにすることは、本願発明において「前記加熱/冷却源が、前記プローブへ又は前記プローブから熱エネルギを伝えることによって熱伝達を防止すること」に相当する。 (3)引用発明における「被測温物体表面1からの伝熱量を感受検出する第1の感熱素子2a」及び「冷熱源3からの伝熱量を感受検出する第2の感熱素子2b」と、本願発明における「熱流束センサ」とは、「伝熱量を感受検出するセンサ」である点で共通する。 また、引用発明において、第1の感熱素子2aが被測温物体表面1からの伝熱量を感受検出する際には、部材2のうち(本願発明のプローブに相当する)被測温物体表面1に接触する面を介して伝熱量を感受検出することになるから、感熱素子2a,2bで検出された不平衡温度差とは、部材2のうち(本願発明のプローブに相当する)被測温物体表面1に接触する面と、(本願発明の加熱/冷却源に相当する)冷熱源3の温度差によって生じるものであるといえ、不平衡温度差により感熱素子2a,2b間で熱の授受、つまり熱流束が生じることになる。 してみると、引用発明において、感熱素子2a,2bで検出された不平衡温度差により感熱素子2a,2b間で熱の授受、つまり熱流束が生じることは、本願発明の「前記プローブと前記加熱/冷却源との間の温度差により、熱流束を前記熱流束センサに通すように駆動すること」と、「前記プローブと前記加熱/冷却源との間の温度差により、熱流束を前記伝熱量を感受検出するセンサに通すように駆動すること」の点で共通する。 (4)引用発明において、第1の感熱素子2aが被測温物体表面1からの伝熱量を感受検出する際には、部材2のうち(本願発明のプローブに相当する)被測温物体表面1に接触する面を介して被測温物体表面1からの伝熱量を感受検出することになるから、引用発明における、部材2のうち(本願発明のプローブに相当する)被測温物体表面1に接触する面は、第1の感熱素子2aと被測温物体表面1の間の伝熱経路であり、第1の感熱素子2aと被測温物体表面1を熱的に接続するものであるといえ、本願発明における「前記プローブは、前記熱流束センサを前記試験中の物体に熱的に接続すること」と、「前記プローブは、前記伝熱量を感受検出するセンサを前記物体に熱的に接続すること」の点で共通する。 してみると、本願発明と引用発明の一致点及び相違点は、以下のとおりである。 (一致点) 「物体の温度を測定するための温度検知装置であって、 物体に接触するプローブと、 前記物体への又は該物体からの熱伝達を防止するように構成された加熱/冷却源と、 伝熱量を感受検出するセンサと、 を有し、 前記加熱/冷却源が、前記プローブへ又は前記プローブから熱エネルギを伝えることによって熱伝達を防止すること、 前記プローブと前記加熱/冷却源との間の温度差により、熱流束を前記伝熱量を感受検出するセンサに通すように駆動すること、 前記プローブは、前記伝熱量を感受検出するセンサを前記物体に熱的に接続すること、 をする温度検知装置。」 (相違点1) 温度検知の対象が、本願発明は、「試験中の物体」であるのに対し、引用発明は、被測温物体であるものの試験中の物体か否か明らかでない点。 (相違点2) センサが、本願発明は、熱流束センサであるのに対し、引用発明は、伝熱量を感受検出するものの、熱流束を求めるものか否か明らかでない点。 6 判断 (1)相違点1について 一般に、試験の際に物体の温度を検出することは、当業者が必要に応じて適宜なし得る事項であり、その際に温度検出のための装置を用いることは、当業者が普通になし得る事項である。 よって、温度検出が必要な試験中の物体の温度検出に引用発明の感熱素子付温度検出器を用いて、本願発明の相違点1に係る構成のようにすることは、当業者が容易に想到し得ることである。 (2)相違点2について 引用発明における「被測温物体表面1からの伝熱量を感受検出する第1の感熱素子2a」及び「冷熱源3からの伝熱量を感受検出する第2の感熱素子2b」は、伝熱量を感受するセンサである。そして、「感熱素子2a,2bは、それぞれ偏差調節計4に接続され、感熱素子2a,2bで、検出された不平衡温度差、すなわち、抵抗差を入力として、偏差調節計4は、+,-の偏差信号を送出し、上記偏差信号によつて冷熱源3の温度を制御するもの」であるから、引用発明における伝熱量を感受するセンサは、不平衡温度差に基づく+,-の偏差信号をセンサ出力としている。ここで、偏差信号が熱流束自体を表しているかは明らかではないが、不平衡温度差に基づくものであり、熱流束は、温度差に係数を乗算することで求められることから、上記偏差信号は、熱流束と対応関係にあるものである。 したがって、引用発明は、具体的には、伝熱量を感受するセンサとして、熱流束に対応する偏差信号を出力するものを用いているものであるから、引用発明において、熱流束センサを採用し、相違点2に係る構成を得ることは、当業者が容易に想到し得ることである。 (3)請求人の主張について 請求人は審判請求書において、「ここで、第1の感熱素子2aと第2の感熱素子2bとの間に不平衡温度差が生じることから、部材2は相当の熱抵抗を有することは明らかです。そして、被測温物体表面1と第1の感熱素子2aとの間にも部材2があり、さらに耐熱絶縁プレート6が配置されています。耐熱絶縁プレート6の局所的加熱を防止するための均熱板7が設けられていることから明らかなように、耐熱絶縁プレート6は大きな熱抵抗をもつ部材であります。したがって、引用文献1に記載の発明は、被測温物体表面1と第1の感熱素子2aとを熱的に接続する構成を有しておらず、またかかる技術的思想も存在しないことは明らかであります。」と主張している。 しかしながら、引用例の「被測温物体表面1からの伝熱量を感受検出する第1の感熱素子2a」(上記4(b)参照。)との記載から、耐熱絶縁プレート6を介しても、被測温物体表面1からの伝熱量を第1の感熱素子2aが感受検出できるものであって、耐熱絶縁プレート6は、被測温物体表面1と第1の感熱素子2aとを熱的に接続できないほどの大きな熱抵抗をもつ部材であるということはできない。 したがって、請求人の上記主張は採用することができない。 7 まとめ 以上のとおり、本願発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、他の請求項に係る発明について審理するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2014-12-26 |
結審通知日 | 2015-01-06 |
審決日 | 2015-01-19 |
出願番号 | 特願2011-521160(P2011-521160) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G01K)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 羽飼 知佳、松浦 久夫 |
特許庁審判長 |
酒井 伸芳 |
特許庁審判官 |
関根 洋之 森 竜介 |
発明の名称 | 温度平衡を用いる温度センサ用のシステム及び方法 |
代理人 | 黒川 俊久 |
代理人 | 小倉 博 |
代理人 | 荒川 聡志 |
代理人 | 田中 拓人 |