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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61K
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A61K
管理番号 1301567
審判番号 不服2012-24840  
総通号数 187 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-07-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-12-14 
確定日 2015-06-03 
事件の表示 特願2006-506582「パーキンソン病を治療するための方法」拒絶査定不服審判事件〔平成16年10月21日国際公開、WO2004/089353、平成18年10月 5日国内公表、特表2006-522800〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 I.手続の経緯
本願は、平成16年4月8日(パリ条約による優先権主張 2003年4月11日,米国)を国際出願日とする出願であって、平成19年4月3日(審査請求時)付けで手続補正書が提出され、拒絶理由通知に応答し平成23年3月25日付けで手続補正書と意見書が提出され、再度の拒絶理由通知に応答し平成24年2月28日付けで手続補正書と意見書が提出されたが、平成24年8月10日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成24年12月14日に拒絶査定不服審判が請求され、その審判の請求と同時に手続補正がなされ、平成25年2月7日付けで請求理由の手続補正書(方式)が提出されたものであり、その後、前置報告書を用いた審尋に応答し平成26年7月18日付けで回答書が提出されたものである。

II.平成24年12月14日の手続補正について
[補正却下の決定の結論]
平成24年12月14日の手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
本件補正は、特許請求の範囲の請求項1について、
補正前(平成24年2月28日付け手続補正書参照)の
「【請求項1】
パーキンソン病の治療のための同時、別々、又は逐次の使用のための組み合わせ製品としての医薬の調製のためのレボドーパ/PDI、ここで、PDIは、カルビドーパ((-)-L-α-ヒドラジノ-α-メチル-β-(3,4-ジヒドロキシベンゼン)プロパン酸一水和物)又はベンセラジド(2-アミノ-3-ヒドロキシ-プロピオン酸-N’-(2,3,4-トリヒドロキシ-ベンジル)-ヒドラジド)である、と組み合わせた0.5?1、2、3、4又は5mg/kg/日のサフィンアミドから選択される第1の薬剤の使用。」から、
補正後の
「【請求項1】
特発性パーキンソン病の治療のための同時、別々、又は逐次の使用のための組み合わせ製品としての経口医薬の調製のためのレボドーパ/PDI、ここで、PDIは、カルビドーパ((-)-L-α-ヒドラジノ-α-メチル-β-(3,4-ジヒドロキシベンゼン)プロパン酸一水和物)又はベンセラジド(2-アミノ-3-ヒドロキシ-プロピオン酸-N’-(2,3,4-トリヒドロキシ-ベンジル)-ヒドラジド)である、と組み合わせた0.5?1、2、3、4又は5mg/kg/日のサフィンアミドから選択される第1の薬剤の使用。」(注:下線は、原文に記載のとおりである。)
とする補正を含むものである。

ここで、上記補正前後の発明特定事項を対比すると、上記補正により、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「パーキンソン病」について「特発性」との限定が付加され、同じく「医薬」について「経口」との限定が付加されるものであるから、上記補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下、「平成18年法律第55号による改正前の特許法」ともいう。)第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本件補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

1.引用例
原査定の拒絶の理由に引用された「Fredriksson A, et al., "Effects of co-administration of anticonvulsant and putative anticonvulsive agents and sub-/suprathreshold doses of L-Dopa upon motor behaviour of MPTP-treated mice", Journal of Neural Transmission, (1999.10), Vol. 106, No. 9-10, pp. 889-909」(以下、「引用例」という。)には、図面とともに、次のような技術事項が記載されている。なお、引用例は英文であるため、翻訳文で摘示する。また、下線は当審で付したものである。

(i)「要約。 低活動のMPTP処置C57 BL /6マウスの運動活性に対する抗痙攣薬および推定抗痙攣薬とドーパミン前駆体であるL-ドーパの同時投与の効果は、6つの実験において測定した。それぞれの場合において、MPTP(24時間間隔で2×40mg/kg、皮下投与)は、行動試験の4?6週間前に投与された。すなわち、これらの薬剤の効果は、L-ドーパの単一急性で閾値以下の用量(5mg/kg,皮下投与)、または、L-ドーパの慢性的で閾値以上の用量(20mg/kg,皮下投与)と組み合わせて研究した。前者では、ラモトリジン、FCE26743およびL-デプレニルが、MPTP処置マウスに対して、L-ドーパの閾値以下(5mg/kg)を投与する60分前にそれぞれ注入され、用量依存的とは対照的に用量特異的な、運動性と立ち上がり行動の向上からなる抗パーキンソン病作用が誘起された。後者では、フェニトイン(1でも3mg/kgでも)を除き、ラモトリジン(3mg/kgで3つの活性の全てについて)、FCE26743(3mg/kgで運動と全活性について;1と3mg/kgで立ち上がり行動について)、L-デプレニル(1と3mg/kgで運動と全活性について)は、L-ドーパ耐薬性のMPTP処置マウスにおいて、L-ドーパの閾値用量(20mg/kg)の運動活性を刺激する効果を回復させた。神経化学的分析により、MPTP処置マウスにおける重度のDA枯渇が確認された。ラモトリジン、FCE26743、L-デプレニルも、閾値以下のL-ドーパでも、それら自身がMPTP処置マウスの運動行動を増加しないので、同時投与の相乗効果が結論される。さらに、L-ドーパの閾値以上の用量は、それだけではその化合物の慢性投与(25毎日注射)に続くMPTPマウスにおける運動活性を刺激することができなかったことから、ラモトリジン、FCE26743またはL-デプレニルとの組み合わせにおいて回復効果が証明された。パーキンソン病の症状のための抗痙攣または推定抗痙攣化合物の潜在的な治療上の利点が説明されている。」(第889頁のsummaryの項)

(ii)「l-メチル-4-フェニル-l,2,3,6-テトラヒドロピリジン(MPTP)は、成体動物の緻密部における黒質細胞の喪失を誘導し、ヒト及びヒト以外の霊長類においてパーキンソン症候群を誘発する(ラングストン、1985)。」(第890頁下から6行?下から4行)

(iii)「・・。以前の研究では、非競合的NMDA拮抗薬MK-801、または競合的アンタゴニストCGP40116のいずれかの低い用量との、L-ドーパの閾値以下用量(5mg/kg)の急性同時投与は、MPTP 処置マウスの運動活性の相乗増強を生じたことを実証している(アーチャーら、1996;フレドリクソンら、1994a,b)。その後の実験では、MAOの投薬またはカテコール-O-メチルトランスフェラーゼ(COMT)阻害剤とのL-ドーパの同じ用量での急性同時投与が、MFTP処置マウスでの相乗効果を同様に誘導した(フレドリクソンとアーチャー、1995)。
この調査の目的は、最初に、単一の急性の閾値以下のL-ドーパ(5mg/kg)を、抗痙攣および推定抗痙攣薬の異なる用量で組み合わせることによる相乗効果を探索し、そして、第二に、先ず投与の5週間(5日/週)によってMPTP処置マウスに耐薬性を生じさせ、L-ドーパの慢性の閾値以上の投与量(20mg/kg)を、同じ抗痙攣または推定抗痙攣薬を異なる投与量で同時投与することによる回復効果を探索した。それぞれの各化合物の間で直接比較するために、同じ用量が適用されたことに注意されたい。」(第891頁9?26行)

(iv)「実験計画と手順
I. 急性投与の実験
マウスの群(特に断りのない限り、各群においてn=8匹のマウス)は、振る舞い試験の前の4?6週間程度にわたり、MPTP(2×40mg/kg)または生理食塩水(対照)の皮下注射がなされた。各化合物の同一用量が、それぞれの間で直接比較するために選択された。
ラモトリジン+L-ドーパ実験: MPTP処置マウスと対照マウスは、活性試験チャンバ内に配置する前に、直ちにラモトリジン(1,3または10mg/kg)または生理食塩水で前処理された。 L-ドーパ(5mg/kg)または生理食塩水は、180分の登録期間の直前に馴化の60分後に注射された。
フェニトイン+L-ドーパ実験: ・・・略・・・
FCE26743+ L-ドーパ実験: MPTP処置マウスと対照マウスは、活性試験チャンバ内に配置する前に、直ちにFCE26743(1,3または10mg/kg)または生理食塩水で前処理された。L-ドーパまたは生理食塩水は、その後、上記のように注射された。
L-デプレニル+ L-ドーパ実験: ・・・略・・・」(第892頁32行?末行)

(v)「II. 慢性投与(L-ドーパ)の実験
マウス(各群においてn=10匹のマウス)のグループは、振る舞い試験の8乃至9週間前に、MPTP(24時間で各注入を分けて、2×40mg/kg)または生理食塩水(対照)を皮下注射された。
L-ドーパ耐薬性の手順: MPTP処置マウスのグループは、MPTP/生理食塩水処理後の3週間がL-ドーパ耐薬性状態に割り当てられ、そして、これらのマウスは、L-ドーパ(20mg/kg、皮下投与)を各週の5日間毎日[月?金、土日は注射無し](アーチャーとフレドリクソン、1999年のその章でアウトラインを示したように)、25回合計でL-ドーパ(20mg/kg)が投与されるまで投与された。運動活性パラメータは、初日およびL-ドーパ注入の第25日に、つまり、2つの場面で、試験室で120分の期間中に試験された。次いで、マウスを、以下に概説の実験のために、以降、次の週から試験した。
抗痙攣化合物ラモトリジンとフェニトインの効果。 NMDAアンタゴニストを試験するために設計された耐薬性実験のために概説されたように(アーチャーとフレドリクソン、1999を参照)、マウスのグループは、いくつかの改変を除いて、MPTPを投与された(6群)。 L-ドーパ耐薬性MPTPマウスは、活性試験室への配置60分前に、ラモトリジン(1または3mg/kg、皮下投与)またはフェニトイン(1または3mg/kg、皮下投与)のいずれかの抗痙攣薬化合物または生理食塩水(媒体)が、いずれかが投与された。試験チャンバ内に配置した60分の後、各マウスは、L-ドーパ(20mg/kg)または生理食塩水が注入された後、その試験チャンバ内に置き換られ、運動活性は、その後120分の全試験期間にわたって記録した。
新規な推定抗痙攣化合物FCE26743の効果。 先の実験の基本的な手順は、維持された。L-ドーパ耐薬性MPTPマウスを活性試験チャンバー内に配置する60分前に、FCE26743(1または3mg/kg、皮下投与)または生理食塩水(媒体)のいずれかの投与を行った。60分の試験チャンバ内に配置した後、各マウスは、L-ドーパ(20mg/kg)または生理食塩水が注入され、上記のように試験した。
MAOB阻害剤の効果。 ・・・略・・・」(第893頁1?31行)

(vi)「 結果
I. 急性投与の実験
L-ドーパの閾値以下用量(5mg/kg)と、抗痙攣化合物または推定抗痙攣化合物の異なる用量との同時投与は、以下のような効果をもたらした。
対照マウスの各化合物の効果。 ラモトリジンも、フェニトインも、FCE26743も(それぞれの投与量は適用量)、L-ドーパ(5mg/kg)のいずれも、それ自身では、いずれの振る舞いの効果を誘導しなかった(表1参照)。L-デプレニル(1および3mg/kg)は、生理食塩水を注射した対照の運動活性を増加させたが、以前示した(フレドリクソンとアーチャー、1995)ように、MFTP処置マウスには効果が無かった。
ラモトリジンの効果。 ・・・略・・・
フェニトインの効果。 ・・・略・・・
FCE26743の効果。 L-ドーパを生じる60分前に投与されたFCE26743の組み合わせの効果は、そうでなければ明らかに運動低下したMPTP処置マウスにおける運動活性の刺激を、用量毎に異なって生じた(図3参照)。 FCE26743(3または10mg/kg)+ L-ドーパ(5mg/kg)は、抗パーキンソン病作用において運動挙動を誘発した; 3mg/kgの用量において、また1mg/kgの用量においてさえ、立ち上がり行動(rearing behaviour)は増加した(p<0.05)。
L-デプレニルの効果。 ・・・略・・・」(第894頁5行?同頁下から6行)

(vii)「II. 慢性投与(L-ドーパ)の実験
L-ドーパの閾値用量の反復投与の効果。 耐性を誘導するためにL-ドーパを投与したすべてのMPTPマウスは、注射の1日目から25日目まで、投与後の自発運動パラメータの著しい減少を示した(表2参照)。
L-ドーパ耐薬性の運動機能低下のMPTPマウスにおける運動活性の回復を誘導するための、L-ドーパ(20mg/kg)と様々に異なる抗痙攣または推定抗痙攣化合物を組み合わせたことの有効性は、以下のようであった。
抗痙攣化合物のラモトリジンとフェニトインの効果。 ・・・略・・・
推定抗痙攣薬FCE26743の効果。 MPTP処置L-ドーパ耐薬性のマウスは、L-ドーパ(20mg/kg)とその化合物の組合せに応答し、より高い用量において主として増加を示したが、より少ない用量においても、活性パラメータ(立ち上がり行動)に依存して、増加応答を示した。FCE26743(3mg/kg)は、運動と総活性を回復し、一方、立ち上がり行動については1mg/kgと3mg/kgの両用量において回復した。L-ドーパそれ自体は、何の効果も示さなかった。図6は、FCE26743+L-ドーパ を注入したMPTPマウスの運動、立ち上がり行動、全活性カウントを示している。
・・・略・・・
これらのマウスにおいて、L-ドーパ(20mg/kg)それ自体では、いずれの効果も完全に欠如していることに注意してください。」(第894頁下から5行?第897頁下から5行)

(viii)「III. 神経化学分析
L-ドーパ+上記の化合物との同時投与で試験されたMPTP処置L-ドーパ耐薬性マウスは、薬剤が投与されていない、生理食塩水を投与したマウスと比較して、線条体のDAの深刻な枯渇を示した(表3参照)。」(第897頁下から4行?末行)

(ix)「 議論
上に示した結果は、急性で閾値以下のL-ドーパ(5mg/kg)の手順、または慢性で閾値以上のL-ドーパ(20mg/ kg)の手順によって、以下に示す様に要約できる。
前者の手順: (1)・・・略・・・ (2)推定抗痙攣薬、FCE26743(運動に対して3と10mg/kg,立ち上がり行動に対して1と3mg/kg)は、運動機能低下の MPTP処置マウスにおいて、さらに運動活性を刺激した。上記の3つの化合物のいずれも、対照マウスに運動活性を生じ無かった。(3)・・・略・・・。
補助的な効果は、ラモトリジン、フェニトイン、FCE26743、またはL-ドーパによって、それら自身、MPTP処置したマウスにも対象マウスにも治療に際し、何らのモーター刺激をもたらさず、しかるに、L-デプレニルは、MPTP処置マウスではなく、対照マウスにおいて、モーター活性を増加した。
後者(慢性L-ドーパ)の手順; (1)・・・略・・・ (2)FCE26743(3mg/ kg)は、L-ドーパ耐薬性MPIPマウスの運動と総活性の回復を生じた; 立ち上がり行動は両方とも1及び3mg/kgで回復した。 (3)・・・略・・・
神経化学的分析は、マークされたDA枯渇がMPTP注射の結果として得られたことを示した。
フェニトインを除く、ラモトリジン、FCE26743およびL-デプレニルは、L-ドーパ(5mg/kg)と組み合わせて、急性投与で、MPTP処置マウスの運動と立ち上がり行動を増加した。 単独で注射された場合、これらの化合物のいずれも、MPTPマウスの運動活性に影響を与えないため、L-ドーパと組み合わせた各相乗効果であると結論付けられる。 L-ドーパ実験、ラモトリジン、FCE26743およびL-デプレニル(ただし、立ち上がり行動ではない)の慢性投与では、L-ドーパ(20mg/kg)と同時投与した場合に、MPTP処置した低活動マウスに、すべての3つのパラメータ運動活動を増加した。したがって、ここでも、L-ドーパ耐薬性マウスでの相乗作用は、運動機能低下のMPTP処置マウスについて、閾値以上の用量(20mg/kg)が活性導入効果の回復に関連すると、今回の結果に基づいて結論されている。
いくつかの点で、抗痙攣および推定抗痙攣薬(神経生物学的関連性のMAO阻害を有する場合も有さない場合もある)のL-ドーパの急性の閾値以下(5mg/kg)の投与との相乗的同時投与は、慢性的に投与するL-ドーパの閾値(20mg/kg)用量との同時投与した場合に確認された。このように、ラモトリジン、FCE26743およびL-デプレニルは、すべて両方の手順で有効であった。慢性手順において有効でないフェニトインは、さらに急性においても有効でないことが見出された。この点に関して、カテコール-O-メチルトランスフェラーゼ阻害剤であるトルカポン(Ro40-7592)が、急性の閾値以下のL-ドーパと同時投与した場合に活性を相乗増加するのに対し、L-ドーパ耐薬性MPTPマウスに対しての閾値以上の用量で投与された場合ではないことに留意すべきである(投稿原稿)。上記の前臨床適応症の一つの内容は、次の点を示唆している: L-デプレニル、ラモトリジンおよびFCE26743は、パーキンソン病とてんかん発作の病気の両方に治療適用の潜在能力があるかさらに試験されるべきである。 ・・・略・・・。
閾値以下の又は閾値以上のL-ドーパとの同時投与における、ラモトリジン、FCE26743およびL-デプレニルの、抗パーキンソン病効果の相乗的回復は、一般的に投与量と薬理学的(治療)効果との間に一切の関係がないことを示した。すなわち、「効果の窓(window-of-efficacy)」は、限定されるように思われる。例えば、急性で閾値以下のL-ドーパとの薬物の組合せの場合には、運動活性についてのラモトリジンについては、3mg/kgだけが有効であり、FCE26743については、3と10mg/kgで有効であり、しかるに、L-デプレニルについては、3つのすべての投与量(1,3,10)で効果的であり、3mg/kgで小さなピーク効果を示した。 慢性で閾値以上のL-ドーパと薬剤の組み合わせの場合には、ラモトリジンおよびFCE26743は、3mg/kgの適用最高用量で有効であった、しかるに、L-デプレニルでは、再び3mg/kgでのピーク効果を示した。FCE26743は、立ち上がり行動について用量関連効果を示したことに注意してください(図6)。有効性の限られた範囲に加えて、各化合物のより高い用量は、より明確な用量関係を生成した可能性があると思われる。・・・略・・・。しかし、最近(フレドリクソンら,1999)と以前(フレドリクソンら,1994a)の、NMDA拮抗薬の作用を関係づける結果は、ラモトリジンとFCE26743の観察された有効性が、MAOb阻害によるものではなく、むしろ抗グルタミン酸効果によるものであるかも知れないことを示唆している。
いくつかの抗痙攣剤は、MPTPの影響およびその他の動作緩慢因子に対して、抗パーキンソン病および/または神経保護特性(DA枯渇および/または運動機能低下)を有することに関与している。例えば、・・・略・・・
要約すると、急性の閾値以下または慢性の閾値以上のL-ドーパの有効性に関し、MPTP処置マウスの運動活性を回復において、抗痙攣薬および推定抗痙攣薬の相乗効果が得られた。・・・略・・・。」(第898頁下から13行?第906頁22行)

(x)「

図3.検査室に置く前に、直ちにFCE26743(1,3または10mg/kg、皮下投与)を投与したMPTP処置ウスおよび対照マウスによる運動や立ち上がり行動数。L-ドーパ(5mg/kg、皮下投与)は、1時間後に、即ち、活動記録が開始された後60分後に注射した。ヒストグラムの棒のそれぞれが表すように、各マウスは、180分間にわたって試験された。一方向ANOVAは、意義のあるグループ間の効果を示した: 運動:F(7,56)=98.73 立ち上がり行動:F(7,56)=98.73。** P<0.01,* P <0.05,TukeyのBSDのテスト。値は、最後の120分からの8匹のマウスの平均±SDとして表されている。」(第898頁)

(xi)「

図6.L-ドーパ耐薬性MPTP処置マウスによる運動活動における、L-ドーパの閾値用量(20mg/kg)と組み合わせた場合のFCE26743、MAOb阻害剤、推定抗痙攣化合物の効果。 活性試験室に置く前にFCE26743(1または3mg/kg、皮下投与)または媒体を投与されたMPTPマウスによる運動、立ち上がり行動、全活性値。L-ドーパ(20mg/kg,皮下投与)または生理食塩水が、活性試験室に置き、活性記録の開始の前に直ちに注射された。MPTP(2×40mg/kg、16時間間隔)は、試験の前およそ9週間で2回投与された。グラフのヒストグラムで表されるように、各マウスは、120分の累計期間にわたってテストされた。一方向NOVAは、次に示すように、運動と立ち上がり行動と総活性パラメータについての意義のあるグループ間効果を示す。 運動:F(3、36)=2483;立ち上がり行動:F(3、36)=41.29、合計活性:F(3、36)=13,85 値は、10匹のマウスの平均±SD、** P<0.01、Tulcey HSDテストを意味する。」(第902頁)

これら(i)?(ix)の記載によれば、引用例には、MPTP処置によりパーキンソン病の症状を誘発させたマウスにおいて、L-ドーパに加えてFCE26743を併用(組合せ)することでパーキンソン病の症状が軽減されたことが記載され、また、摘示(i),(vi)?(ix)などに鑑みて、併用(組合せ)が少なくとも「同時投与」されている、すなわち「同時使用」されていると理解できることから、引用例には、次の発明が記載されていると認められる。

「MPTP処置マウスにおけるパーキンソン病症状の軽減のために同時使用されるL-ドーパとFCE26743との組み合わせ物。」

これを、該組み合わせ物の調製にFCE26743を使用する方法の形に書き換えると以下のように表される。
「MPTP処置マウスにおけるパーキンソン病症状の軽減のために同時使用される組み合わせ物の調製のためのL-ドーパと併用される、FCE26743の使用。」(以下、「引用例発明」という。)

2.対比、判断
そこで、本件補正発明と引用例発明を対比する。
(a)引用例発明の「FCE26743」は、サフィンアミドの別名であることから、本件補正発明の「サフィンアミド」に相当する。なお、例えば、一回目の拒絶理由の引用文献2(Chazot PL,"Safinamide (Newron Pharmaceuticals)",Current opinion in investigational drugs,2001年 6月,Vol. 2, No. 6,pp. 809-813)の第809頁右欄には、サフィンアミドについて、その化学構造式と共に「FCE-26743」が別名として記載されている。
(b)引用例発明の「L-ドーパ」は、レボドーパの別名があることから、本件補正発明の「レボドーパ」に相当する。なお、本願明細書段落【0002】には、「レボドーパ、即ちL-dopa」と記載されている。
(c)本件補正発明では、サフィンアミドについて、「第1の薬剤」との記載があるが、請求項6において、サフィンアミドを含む組成物を「第1の組成物」と称し、レボドーパ/PDIを含む組成物を「第2の組成物」と称し、これらを組み合わせたキットとしていることに鑑みれば、本件補正発明においては、「第2の薬剤」たるレボドーパ/PDIと組み合わせて医薬を調製するために使用されるサフィンアミドを「第1の薬剤」と記載しているものと認められる。そうすると、引用例発明でも、「L-ドーパ」(レポドーパ)と組み合わせて医薬を調製するために使用されるFCE26743、すなわち、サフィンアミドは、「第1の薬剤」であるといえる。
(d)本件補正発明の「特発性パーキンソン病の治療」(のための使用)も、引用例発明の「MPTP処置マウスにおけるパーキンソン病症状の軽減」(するための使用)も、どちらも、パーキンソン病症状を呈する動物に対する使用である、という点においては一致するものと認められる。
してみると、両発明は、
「パーキンソン病症状を呈する動物への同時使用のための組合せ製品としての医薬の調製のためのレポドーパと併用される、サフィンアミドからなる第1の薬剤の使用」
で一致し、以下の点で相違している。
<相違点>
A.組合せ製品が、本件補正発明では、「特発性パーキンソン病の治療のため」に使用されるものであるのに対し、引用例発明では「MPTP処置マウスにおけるパーキンソン病症状の軽減のため」に使用されるものである点
B.「医薬」について、本件補正発明では、「経口医薬」と特定されているのに対し、引用例発明ではそのように特定されていない点
C.「レボドーパ」について、本件補正発明では、「レボドーパ/PDI、ここで、PDIは、カルビドーパ((-)-L-α-ヒドラジノ-α-メチル-β-(3,4-ジヒドロキシベンゼン)プロパン酸一水和物)又はベンセラジド(2-アミノ-3-ヒドロキシ-プロピオン酸-N’-(2,3,4-トリヒドロキシ-ベンジル)-ヒドラジド)である」と特定されているのに対し、引用例発明ではそのように特定されていない点
D.「サフィンアミド」について、本件補正発明では、「0.5?1、2、3、4又は5mg/kg/日」と特定されているのに対し、引用例発明ではそのように特定されていない点

そこで、これらの相違点A?Dについて検討する。
(1)相違点Aについて
引用例では、MPTP処置マウスを対象としているが、MPTPが、成体動物の緻密部における黒質細胞の喪失を誘導し、ヒト及びヒト以外の霊長類においてパーキンソン症候群を誘発することが知られていたこと(摘示(ii)参照)に鑑みれば、引用例に記載された実験は、パーキンソン病のモデルとしてパーキンソン病を治療することを想定してなされていると理解できる。

この点に関し請求人は、平成24年2月28日付け意見書に添付されたC.ウォーレン オラノウ博士による陳述書(参考資料1)の記載を根拠として、MPTPマウスモデルは、ヒト患者における可能な治療剤の有効性を予測するためには不十分なモデルであり、MPTPマウスモデルにおける陽性結果は、ヒトのパーキンソン病患者における陽性結果を保証しないことを主張する。しかし、上記陳述書の記載は、MPTPマウスモデルの病態が、ヒトのパーキンソン病の病態を正確に再現していないことや、MPTPマウスモデルで有望な薬で、パーキンソン病患者に無効なものが存在することを指摘するに止まり、本件優先日当時、MPTPマウスモデルがパーキンソン病の動物モデルとして使用できないことが、当業者の技術常識であったことを示すものではない。これに対して、本件優先日後に発行された文献ではあるが、CRJ LETTERS,VOL.17,No.1(2008),p.1-8(http://www.crj.co.jp/cms/cmsrs/pdf/CRJLetters/CRJLetters-17_1.pdf 参照。)には、「パーキンソン病の動物モデル」と題した論文において、「現在パーキンソン病に近似した動物モデルを用いて治療研究が推進されておりその一部を紹介する。」(p.1左欄、「要旨」の項の7-8行)として、「今のところパーキンソン病の進行を抑制するような治療薬はなく多くの施設が競ってその開発を進めている。そのためには、パーキンソン病の動物モデルが不可欠である。パーキンソン病動物モデルに関しては、神経毒を投与する事により作成する方法(図1)と、パーキンソン病関連遺伝子を改変して作成する方法(図2)と大きく分けて二種類ある。現在使われているパーキンソン病モデル動物についてMPTP投与モデルを中心に概説する。」(p.1左欄,「はじめに」の項の14-22行)と記載されており、このように、本件出願後の2008年の時点においてもなお、パーキンソン病の動物モデルとして取り上げられている事実からも、上記陳述書で指摘されるような事実があったとしても、MPTPマウスモデルがパーキンソン病の動物モデルとして使用できないものとまでは認識されてなかったものと考えられる。

また、「特発性」とは、「原因不明の」という意味であるが、大部分のパーキンソン病の原因は未だ不明であり(http://www.parkinson.jp/about/mechanism.html,www.kyowa-kirin.co.jp/parkinson/howto/等参照)、メルクマニュアル(第18版、日本語版、2006年12月25日発行)にも、「パーキンソン病は、運動緩慢、寡動、筋固縮、安静時振戦、姿勢不安定を特徴とする、特発性で緩慢に進行するCNS変性疾患である。」と記載されているように、薬物や遺伝子によるもの等、原因がわかっているごく一部のものを除いた大多数のパーキンソン病は「特発性」であると認められるから、MPTPマウスモデルを用いて治療薬の開発を目指す対象となるパーキンソン病として、「特発性」パーキンソン病が含まれることは自明である。

したがって、引用発明の、組合せ製品を、「特発性パーキンソン病の治療のため」に使用されるものとすることは、当業者が容易になし得るものである。

(2)相違点Bについて
引用例のMPTP処置マウスを対象とした実験では、皮下投与(皮下注射)で行われている。しかし、それらは、マウスを用いた実験であるがゆえに採用された投与形態であり、ヒトのパーキンソン病に対するレボドーパを投与する際には、錠剤を用いた経口投与が知られているのである(例えば、次の(3)で指摘する周知資料を参照)し、サフィンアミドについても、例えば前記(a)での一回目の拒絶理由の引用文献2(Chazot PL,"Safinamide(Newron Pharmaceuticals)",current opinion in investigational drugs,2001年6月,Vol.2,No.6,pp.809-813のp.810右欄1?8行参照)には、パーキンソン病に関連し、「ラットにサフィンアミド(5mg/kg,経口投与)を投与」との記載があり、経口投与されていることに鑑みると、経口医薬とすることは常套手段であり、格別の創意工夫が必要であったは認められないし、また、経口投与としたことによって格別に予想外の作用効果を奏していると解すべき特段の事情は見いだせない。

(3)相違点Cについて
「レボドーパ」を「レボドーパ/PDI」で用いる(PDIを伴って用いる)ことは、本件優先日前に既に知られていることに過ぎない。例えば、「財団法人日本医薬情報センター編, 医療薬日本医薬品集2000年版, 薬業時報社, (1999.10.25), p. 2154-2157」(周知資料)には、パーキンソン病の治療剤として、「レボドパ・塩酸ベンセラジド」や「レボドバ・カルビドパ」の錠剤が医薬品として市販されていることが明らかにされている。ここに、「レボドパ」は「レポドーパ」のことであり、「ベンセラジド」と「カルビドパ」は、本件補正発明でPDIとして特定されている「ベンセラジド(2-アミノ-3-ヒドロキシ-プロピオン酸-N’-(2,3,4-トリヒドロキシ-ベンジル)-ヒドラジド)」と「カルビドーパ((-)-L-α-ヒドラジノ-α-メチル-β-(3,4-ジヒドロキシベンゼン)プロパン酸一水和物)」である。
すなわち、引用例発明の「レボドーパ」として、「レボドーパ/PDI、ここで、PDIは、カルビドーパ((-)-L-α-ヒドラジノ-α-メチル-β-(3,4-ジヒドロキシベンゼン)プロパン酸一水和物)又はベンセラジド(2-アミノ-3-ヒドロキシ-プロピオン酸-N’-(2,3,4-トリヒドロキシ-ベンジル)-ヒドラジド)である」で用いることは、常套手段にすぎず、また、当業者であれば少なくとも容易に採用し得たことに過ぎず、それによって格別に予想外の作用効果を奏していると解すべき特段の事情は見いだせない。
なお、審判請求人は、回答書において、「パーキンソン病(PD)の患者をレボドーパで治療するとき、レボドーパは、常にPDIを伴っているという事実には同意する。」と自認している。

(4)相違点Dについて
引用例では、「FCE26743」(サフィンアミド)は、1,3または10mg/kgで併用されている(摘示(iv)参照)ところ、その量は、1日当たりの用量であると解するのが相当であり、この用量も参考にしつつ、ヒトに対する経口投与の場合の用量を検討して、相違点Dに係る用量とすることは、当業者であれば容易になし得るものと認められる。

そして、上記相違点A?Dに係る発明特定事項を併せ採用することに格別の創意工夫が必要であったとは認められず、それらを採用することによって本件補正発明の作用効果が格別のものであるとは認められない。
なお、本願明細書には、レボドーパ/PDIとサフィンアミドを併用した実施例は記載されていない(ドーパミンアゴニストとレボドーパの併用の例のみ)ところ、段落【0009】に「サフィンアミドを他の薬剤と組み合わせて用いると、予想外の相乗効果が得られる。」と記載され、段落【0067】に「サフィンアミドを他の薬剤と組み合わせて使用すると予想外の相乗効果が達成されることを発見した。」との記載が見いだされるに過ぎず、レボドーパ/PDIとの組合せについてその具体的な相乗効果については何らの説明もない。これに対して、引用例では、前述のとおり、急性で閾値以下(5mg/kg)のレボドーパとサフィンアミドを併用した場合の効果と、慢性で閾値以上(20mg/kg)のレボドーパとサフィンアミドを併用した場合の効果が記載されており、これらはいずれも相乗効果といえるものであるから、審判請求理由において提出された、臨床試験の結果や国際会議で発表したポスターの内容を検討しても、本件補正発明が、予想外の顕著な効果を奏したものとは認められない。

よって、本件補正発明は、引用例発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3.むすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年法律第55号による改正前の特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


III.本願発明について
平成24年12月14日の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?8に係る発明は、平成24年2月28日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1?8に記載された事項により特定されるとおりのものと認められ、そのうち請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を「本願発明」という。)は以下のとおりのものである。
「【請求項1】
パーキンソン病の治療のための同時、別々、又は逐次の使用のための組み合わせ製品としての医薬の調製のためのレボドーパ/PDI、ここで、PDIは、カルビドーパ((-)-L-α-ヒドラジノ-α-メチル-β-(3,4-ジヒドロキシベンゼン)プロパン酸一水和物)又はベンセラジド(2-アミノ-3-ヒドロキシ-プロピオン酸-N’-(2,3,4-トリヒドロキシ-ベンジル)-ヒドラジド)である、と組み合わせた0.5?1、2、3、4又は5mg/kg/日のサフィンアミドから選択される第1の薬剤の使用。」

1.引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例、および、その記載事項は、前記「II.1.」に記載したとおりである。

2.対比、判断
本願発明は、前記「II.」で検討した本件補正発明から「パーキンソン病」についての限定事項である「特発性」との特定を省き、「医薬」についての限定事項である「経口」との特定を省いたものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の発明特定事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記「II.2.」に記載したとおり、引用例発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるから、本願発明も、同様な理由により、引用例発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものである。

3.むすび
以上のとおりであるから、本願請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
それゆえ、他の請求項について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-12-26 
結審通知日 2015-01-06 
審決日 2015-01-19 
出願番号 特願2006-506582(P2006-506582)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A61K)
P 1 8・ 575- Z (A61K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小松 邦光  
特許庁審判長 内田 淳子
特許庁審判官 安藤 倫世
穴吹 智子
発明の名称 パーキンソン病を治療するための方法  
代理人 鈴木 音哉  
代理人 田中 洋子  
代理人 小國 泰弘  
代理人 柴田 明夫  
代理人 伊藤 佐保子  
代理人 生川 芳徳  
代理人 小澤 圭子  
代理人 津国 肇  
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