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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61K
管理番号 1301593
審判番号 不服2013-13783  
総通号数 187 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-07-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-07-18 
確定日 2015-06-02 
事件の表示 特願2008-544656「CTLA-4抗体投与量漸増レジメン」拒絶査定不服審判事件〔平成19年 6月14日国際公開、WO2007/067959、平成21年 5月 7日国内公表、特表2009-518446〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、2006年12月7日(パリ条約による優先権主張 2005年12月7日 (US)アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって、平成25年3月15日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成25年7月18日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同日付けで手続補正がなされたものである。


2.本願発明
本願の請求項1に係る発明は、平成25年7月18日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりのものである。
「【請求項1】
患者における固形腫瘍を処置するための医薬の製造におけるCTLA-4抗体の使用であって、
該医薬は、患者に少なくとも3mg/kgの第一のCTLA-4抗体投与量を投与し、ついで投与量が患者において完全な応答となるまで増加投与量のCTLA-4抗体を投与することを含む、投与量漸増レジメンにしたがって患者に投与され、患者が完全な応答を経験した時に、完全な応答となる投与量レベルでCTLA-4抗体を患者にさらに2サイクル投与し、ここで完全な応答は1ヶ月以上にわたる測定されうる腫瘍の消失である、使用。」


3.引用例に記載された事項
(1)原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物である特表2005-529873号公報(以下「引用例1」という。)には、以下の事項が記載されている。
(ア)「実施例5:メラノーマ患者に対するペプチドを伴う抗CTLA-4抗体10D1の投与の研究
進行段階IVのメラノーマである14人の患者は、2つのHLA-A*0201に限定したgp100ペプチドを伴って、抗CTLA-4抗体10D1を使用して予防接種された。患者の特性は以下の表2に要約される。
【表2】

・・・6人の患者は、内臓転移を有していた。患者は、自己免疫疾患や免疫不全症の兆候は示されなかった。・・・

治療サイクルは、3週ごとに投与され、治療サイクルは・・・gp100:209-217(210M)ペプチド・・・が一方の四肢に静脈注入され、・・・gp100:280-288(288V)ペプチド・・・がもう一方の四肢に静脈注入された後に、3mg/kgの抗CTLA-4抗体10D1が90分以上静脈注入されることからなる・・・。・・・患者は1から6の治療サイクルを受けた(表2)。
・・・
悪性度I/IIの副作用として、下痢(患者3、患者5、患者14)、皮膚発疹(患者14)、肺浸潤および軽度な胸膜炎性胸痛(患者4)、白斑(患者2、患者6)が含まれる。

6人の患者に生じた7つの悪性度III/IVの副作用として、皮膚炎(患者1、患者2、患者13)、大腸炎/腸炎(患者1および患者9)、下垂体炎(下垂体の炎症)(患者11)、および肝炎(患者12)。全ての患者は、治療の中断、対処療法の投与および/またはステロイド療法の後、回復した。自己免疫作用の再発や新たな自己免疫作用が起きなかった。

自己免疫スクリーニング血液検査は、抗核Abが生じた患者5と患者12を除いて正常であった。

本研究は、2つのペプチドワクチンとともに抗CTLA-4抗体10D1を受けた患者において、転移性のメラノーマ腫瘍の後退の客観的な証拠が示された。」(【0102】?【0115】)

同じく、原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物である特表2004-512005号公報(以下「引用例2」という。)には、以下の事項が記載されている。
(イ)「【請求項1】
ヒトCTLA-4に特異的に結合するヒト配列抗体。」(【特許請求の範囲】)

(ウ)「(本発明の方法および使用)
(A.方法)
本発明の組成物(例えば、ヒトCTLA-4に対するヒト配列抗体およびヒトモノクローナル抗体ならびにその誘導体/結合体)は、・・・インビボでの診断および治療における用途を有する。例えば、これらの分子は、・・・インビボにおいて被検体に投与され得、種々の障害を処置、予防、または診断し得る。用語「被検体」は、ヒトおよび非ヒト動物を含む。・・・

CTLA-4に対する抗体を、他の薬剤とともに投与する場合、2つの薬剤が、順番に、または同時のいずれかで投与され得る。この方法を使用して、黒色腫、結腸ガン、前立腺ガン、および腎臓ガンを含む任意の種類のガンを処置し得る。
」(【0199】?【0200】)

(エ)「抗体の投与について、投与量は、宿主体重の約0.0001?100mg/kg、そしてより通常には、0.01?5mg/kgの範囲である。例えば、投与量は、1mg/kg体重もしくは10mg/kg体重、または1?10mg/kgの範囲内であり得る。例示的な処置レジームは、毎2週当たり一回、または1ヶ月に一回または毎3?6ヶ月に一回の投与を必要とする。・・・抗体は、通常、複数時に投与される。単回投与間の間隔は、毎週、毎月または毎年であり得る。・・・いくつかの方法では、投与量は、1?1000μg/mlの血漿抗体濃度を達成するように調整され、そしていくつかの方法では、25?300μg/mlである。・・・治療的適応においては、比較的短い間隔での比較的高い投与量が時折、疾患の進行が減少するかまたは停止するまで、そして好ましくは、患者が疾患の症状の部分的または完全な寛解を示すまで必要とされる。その後、患者は、予防的レジームを投与され得る。」(【0178】)

(オ)「(実施例9.カニクイザルにおける10D1の前臨床毒性試験)
10D1抗体およびマカクの2つの独立した毒性学的研究を実施した。全8匹のサルを分析した。重大な臨床的、免疫毒性学的、または組織病理学的知見なしに、4匹のサル(雄性2匹および雌性2匹)は、3回ボーラスのi.v.用量の3mg/Kgのヒト抗CTLA4に耐え、そして4匹のサル(雄性2匹および雌性2匹)は、3回ボーラスi.v.用量の10mg/Kgのヒト抗CTLA4に耐えた。」(【0288】)

(2)引用例1の記載事項(ア)によれば、引用例1には、メラノーマ患者に対するペプチドを伴う抗CTLA-4抗体10D1の投与の研究と題する研究結果が記載され、その内容をまとめた【表2】によれば、14人のメラノーマ患者が、事前治療として化学療法、免疫療法、放射線療法、外科療法のいずれか、及び、CTLA-4抗体とgp100ペプチドを使用した1治療サイクルを受けた後、1?6回の治療回数で抗CTLA-4抗体の投与を受けたものとされている。また、【表2】に続く記載によれば、抗CTLA-4抗体の投与量は3mg/kgであるとされている。そして、【表2】によれば、14人のメラノーマ患者のうち、1人(患者11)において、CRすなわち完全消失が「7+」月の間見られ、2人(患者1及び13)において、PRすなわち部分消失が「10+」月の間及び「6+」月の間見られたことが記載されている。ここで、「7+」月の間とは、少なくとも7月の間のことを意味するものと推認され、「10+」月の間及び「6+」月の間についても同様であり、かかる推認は、本願明細書の【0099】の「「+」は応答継続中を示す」なる記載とも整合するものである。そして、抗CTLA-4抗体は、メラノーマを処置するための医薬として使用されていることは明らかである。
そうすると、これら引用例1の記載を総合すれば、引用例1には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
「メラノーマを処置するための医薬の製造における抗CTLA-4抗体の使用であって、
該医薬は、14人のメラノーマ患者が事前治療として化学療法、免疫療法、放射線療法、外科療法のいずれか、及び、抗CTLA-4抗体とgp100ペプチドを使用した1治療サイクルを受けた後、該患者に1?6回の治療回数で抗CTLA-4抗体を投与するものであり、抗CTLA-4抗体の投与量は3mg/kgであり、14人の患者のうち、1人において、完全消失が少なくとも7月の間見られ、2人において、部分消失が少なくとも10月の間及び少なくとも6月の間見られた、使用。」


4.対比
本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明にいう「抗CTLA-4抗体」、「メラノーマ」は、各々、本願発明にいう「CTLA-4抗体」、「固形腫瘍」に該当するものである。また、本願発明における患者は、もとより、事前治療の有無を問うものとされていないが、本願の請求項8及び9に係る発明が、各々、「ワクチン、化学療法剤またはサイトカインを患者にさらに投与する、請求項1?7のいずれか一項記載の使用。」、「ワクチンが、gp100、チロシナーゼ、MART-1、またはそれらの組み合わせを含む、請求項8記載の使用。」であること、及び、本願明細書の実施例1の記載中の「CTLA-4抗体・・・による処置に適した患者は、・・・なんらかの全身的癌治療を施してから少なくとも3週間が経過していた。」なる記載からみて、本願発明における患者が、gp100ワクチンやなんらかの全身的癌治療を施されている患者を含むことは明らかである。そうすると、引用発明にいう「事前治療として化学療法、免疫療法、放射線療法、外科療法のいずれか、及び、抗CTLA-4抗体とgp100ペプチドを使用した1治療サイクルを受けた」ものである「14人の患者」は、本願発明にいう「患者」に該当するものである。また、投与回数について、引用発明では「1?6回の治療回数」とされ、本願発明では「ついで投与量が患者において完全な応答となるまで増加投与量のCTLA-4抗体を投与する」とか「患者が完全な応答を経験した時に、完全な応答となる投与量レベルでCTLA-4抗体を患者にさらに2サイクル投与し」とされているが、いずれも、複数回投与する点では一致する。
したがって、両者は、
「患者における固形腫瘍を処置するための医薬の製造におけるCTLA-4抗体の使用であって、
該医薬は、患者に3mg/kgの第一のCTLA-4抗体投与量を投与し、ついでCTLA-4抗体を複数回患者に投与する、使用。」
である点で一致し、以下の点で相違する。
・患者に3mg/kgの第一のCTLA-4抗体投与量を投与した後、CTLA-4抗体を複数回患者に投与する際のCTLA-4抗体の投与回数及び投与量が、引用発明では
「1?6回の治療回数で抗CTLA-4抗体を投与するものであり、抗CTLA-4抗体の投与量は3mg/kgであり、14人の患者のうち、1人において、完全消失が少なくとも7月の間見られ、2人において、部分消失が少なくとも10月の間及び少なくとも6月の間見られた」
ものであるのに対し、本願発明では、
「投与量が患者において完全な応答となるまで増加投与量のCTLA-4抗体を投与することを含む、投与量漸増レジメンにしたがって患者に投与され、患者が完全な応答を経験した時に、完全な応答となる投与量レベルでCTLA-4抗体を患者にさらに2サイクル投与し、ここで完全な応答は1ヶ月以上にわたる測定されうる腫瘍の消失である」
ものである点(以下、「相違点」という。)


5.判断
上記相違点について検討する。
上述のとおり、引用発明のメラノーマを処置するための医薬は、14人の患者のうち、1人において完全消失が見られ、2人において部分消失が見られたものであり、換言すれば、14人の患者のうち11人には効果がなかったものであるから、かかる引用発明に接した当業者ならば、引用発明の医薬の効果は十分とはいえず、さらなる薬効の向上の方策はないかと考えるのが自然である。そして、医薬の効果が十分でない場合、投与量を増やしてみることは、本願優先日前から当業者がまず考えることの1つといえる。加えて、引用例2の記載事項(イ)によれば、引用例2は、抗CTLA-4抗体に関する文献といえるものであり、記載事項(ウ)によれば、引用例2には、抗CTLA-4抗体は、黒色腫などのガンを処置し得るものであることが記載され、記載事項(エ)によれば、その投与量は、例えば、1?10mg/kgの範囲内であり得ることが記載され、記載事項(オ)によれば、カニクイザルを用いた毒性試験で、該サルは10mg/Kgのヒト抗CTLA4に耐えたことが記載されているから、引用例1及び2を併せ見た当業者ならば、引用発明における抗CTLA-4抗体の投与量を、3mg/kgから、例えば、1?10mg/kgの範囲内で増やしてみることに、格別の創意を要したものとはいえない。
ただ、医薬の投与量をむやみに増やすと副作用が増大する懸念があることは、本願優先日前から当業者が常に留意するところであり、実際、引用例1の記載事項(ア)の【表2】及びそれに続く記載によれば、14人の患者のうち8人において副作用が見られているから、引用発明における抗CTLA-4抗体の投与量を3mg/kgから増やしてみる際、副作用の増大に留意するべく、投与量を漸増させていくことも、当業者にとって格別の創意を要したものとはいえない。
また、引用発明の医薬を患者に投与する際の目標は、いうまでもなく、メラノーマの完全消失であり、実際、14人の患者のうち、1人において完全消失が見られているのであるから、当業者が引用発明の医薬の薬効の向上を目指して投与量を漸増させていく際に、投与量が患者において完全な応答となるまで増加投与量のCTLA-4抗体を投与することとすることにも、格別の創意を要したものとはいえない。
そして、医薬の投与により一定の薬効が見られた後も、念のためもう少し投与を続ける場合があることは、本願優先日前から当業者にとって周知の知見であり、加えて、引用例2の記載事項(エ)によれば、抗CTLA-4抗体の治療的適応においても、患者が疾患の症状の部分的または完全な寛解を示すまで投与が必要とされ、その後、患者は、予防的レジームを投与され得ることが記載されているから、当業者が引用発明の医薬の薬効の向上を目指して投与量を漸増させていく際に、投与量が患者において完全な応答となるまで増加投与量のCTLA-4抗体を投与した後、完全な応答となる投与量レベルでCTLA-4抗体を患者にさらに2サイクル投与することにも、格別の創意を要したものとはいえない。
最後に、引用発明においては、上述のように、完全消失が少なくとも7月の間見られた患者がいたのであるから、引用発明において、完全な応答は1ヶ月以上にわたる測定されうる腫瘍の消失である、と特定することも、当業者が適宜なし得たことに過ぎない。

また、本願発明の効果について検討するに、本願明細書の実施例1の記載によれば、本願発明の医薬は、46人のメラノーマ患者に投与された際、5人の患者に部分的応答が見られ、あとの41人の患者は応答なしであったとされているから、応答があった患者の割合は5/41×100=約12%で、かつ、完全な応答を示した患者がいなかったのに対し、引用発明の医薬における応答があった患者の割合は3/14×100=約21%で、完全な応答を示した患者が1人いたのであるから、本願発明の効果は引用発明の効果に比較して劣るものといえる。
してみると、本願発明が、引用例1及び2の記載から当業者が予測し得ない優れた効果を奏し得たものともいえない。


6.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例1及び2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-01-07 
結審通知日 2015-01-08 
審決日 2015-01-20 
出願番号 特願2008-544656(P2008-544656)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A61K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 安藤 公祐  
特許庁審判長 内藤 伸一
特許庁審判官 大久保 元浩
新留 素子
発明の名称 CTLA-4抗体投与量漸増レジメン  
代理人 川本 和弥  
代理人 大関 雅人  
代理人 新見 浩一  
代理人 山口 裕孝  
代理人 井上 隆一  
代理人 五十嵐 義弘  
代理人 刑部 俊  
代理人 清水 初志  
代理人 渡邉 伸一  
代理人 春名 雅夫  
代理人 小林 智彦  
代理人 佐藤 利光  
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