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審決分類 |
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01T 審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01T |
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管理番号 | 1301608 |
審判番号 | 不服2014-11804 |
総通号数 | 187 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2015-07-31 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2014-06-20 |
確定日 | 2015-06-01 |
事件の表示 | 特願2011-134749「スパークプラグ用の中心電極の製造方法およびスパークプラグの製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 1月 7日出願公開、特開2013- 4326〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成23年6月17日の出願であって、平成26年1月30日付けの拒絶理由通知に対して、同年3月6日に意見書及び手続補正書が提出されたが、同年4月21日付け(発送日:同年4月30日)で拒絶査定がされ、これに対して、同年6月20日に拒絶査定不服審判の請求がされ、その審判の請求と同時に手続補正がされ、その後、当審における平成27年2月4日付けの拒絶理由通知に対して、同年3月12日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。 第2 本願発明 本願の請求項1ないし3に係る発明(以下、「本願発明1」ないし「本願発明3」という。)は、平成27年3月12日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された次のとおりのものと認められる。 「【請求項1】 貫通孔を有する絶縁体と、前記絶縁体の前記貫通孔内に挿設されるとともに、芯部分と前記芯部分を覆う被覆部分と前記絶縁体に支持される支持部とを有する中心電極と、を備えるスパークプラグ用の中心電極の製造方法であって、 前記中心電極を成形する押出成形工程を有し、 前記押出成形工程は、n回(nは2以上の自然数)の成形工程を有し、 前記芯部分の形成材料としての芯材料と、前記芯材料の第1の端面と前記第1の端面に連続する側面の少なくとも一部とを覆う前記被覆部分の形成材料としての被覆材料と、を含むワークを、所定の形状に成形する小径孔部と前記小径孔部より径の大きい大径孔部とを含む内部孔を有する金型の前記大径孔部に前記ワークにおける前記第1の端面側の端部である第1の端部とは反対側の第2の端部から挿入して前記小径孔部側へと押し出し成形し、前記小径孔部の内径と略同一の外径を有する小径部分と前記小径孔部より露出する大径部分とを含む第(n-1)次成形体を形成する(n-1)回目の成形工程と、 前記(n-1)回目の成形工程の後に、形成された前記第(n-1)次成形体の向きを反転させて、前記第(n-1)次成形体における前記第2の端部側の所定の範囲を除去して得られる前記第(n-1)次成形体の向きをさらに反転させて前記(n-1)回目の成形工程と同順序を経て第n次成形体を形成するn回目の成形工程と、 前記第n次成形体の前記第1の端部側における前記芯部分の先端から前記被覆部分の先端までの距離が所定の距離になるように、前記第n次成形体の前記大径部分の全てを含む前記被覆材料の部分を切断除去する除去工程と、を備え、 前記(n-1)回目の成形工程前の前記ワークは、前記第2の端部側において前記被覆材料の端面が前記芯材料によって覆われており、 前記(n-1)回目の成形工程直後の前記第(n-1)成形体は、前記第2の端部側において、前記被覆材料の端面と前記被覆材料から突出した前記芯材料の部分の表面とが離間している、中心電極の製造方法。 【請求項2】 請求項1に記載の中心電極の製造方法であって、 前記除去工程の後に、前記押出成形工程の最終工程として前記支持部を成形する支持部成形工程を備えることを特徴とする、中心電極の製造方法。 【請求項3】 請求項2に記載の中心電極の製造方法であって、 前記支持部成形工程は、前記除去工程後の前記第n次成形体が、前記小径孔部と略同一の径の金型に挿入されて押し出し成形されることを特徴とする、中心電極の製造方法。」 第3 当審が通知した拒絶理由の概要 1 この出願は、特許請求の範囲の記載が以下の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。 (1)請求項1には、「前記被覆材料の端面と前記被覆材料から突出した前記芯材料の部分の表面とが離間している」との記載があるが、「前記芯材料の部分の表面」の意義が不明である。 よって、本願発明1ないし本願発明3は明確でない。 (2)請求項3には、「前記支持部成形工程は、前記除去工程後の成形体が、前記小径孔部と略同一の径の金型に挿入されることを特徴とする」との記載があるが、「前記除去工程後の成形体が、前記小径孔部と略同一の径の金型に挿入されること」と「前記支持部成形工程」との関係が不明である(金型に挿入されるだけで、なぜ支持部が成形できるのか)。 よって、本願発明3は明確でない。 2 この出願は、発明の詳細な説明の記載が以下の点で、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。 (1)発明の詳細な説明には、「この空隙GAは、たとえば、金型Caに挿入前のワークWに熱処理を施し、熱処理条件を調整することにより、芯材料29と被覆材料28との境界の拡散層の厚みを調整することで形成することができる(たとえば、拡散層の厚みが5μm程度に調整する)。」(【0032】)との記載があるが、上記「熱処理条件」に係る実施例は何ら記載されていない。 また、発明の詳細な説明には、上記「熱処理条件」を当業者が理解できるように説明する記載もないし、これが、出願時における当業者の技術常識であるともいえない。 よって、発明の詳細な説明は、本願発明1ないし本願発明3を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されていない。 (2)また、「このように、第1次押し出し成形は、第1次成形体M1に空隙GAが形成されるように行われるため、第1次成形体M1の被覆側の端部において芯材料29が被覆材料28の端面を押すことにより芯側の端部における芯材料29と被覆材料28との境界付近に空隙が発生することを抑制することができる。第1次押し出し成形の後、第1次成形体M1を蹴り出して金型Ca1から取り出す。」(【0032】)との記載があるが、内容が理解できない。 よって、発明の詳細な説明は、本願発明1ないし本願発明3を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されていない。 第4 当審の判断 1 特許法第36条第6項第2号について (1)請求項1には、「前記被覆材料の端面と前記被覆材料から突出した前記芯材料の部分の表面とが離間している」との記載があるが、「芯材料の部分の表面」が特定できない。 すなわち、明細書の記載及び図面を参酌すると、【図6】(c)に「芯材料の部分の表面」として、切断線CL1より上側に2つの表面が看て取れる。1つは、芯材料29の先端部分を構成する表面であり、他の1つは、当該先端部分より切断線CL1に近い表面である。当該両表面は、いずれも「前記被覆材料の端面と前記被覆材料から突出した前記芯材料の部分の表面とが離間している」との要件を満たす表面であるから、「芯材料の部分の表面」が両義に解され、特定できない。 よって、本願発明1は明確でなく、請求項1を引用する本願発明2及び本願発明3も明確でない。 (2)請求項3には、「前記支持部成形工程は、前記除去工程後の前記第n次成形体が、前記小径孔部と略同一の径の金型に挿入されて押し出し成形される」との記載があるが、「支持部成形工程」と「第n次成形体が、前記小径孔部と略同一の径の金型に挿入されて押し出し成形される」との関係が明らかでない。 すなわち、第n次成形体を小径孔部と略同一の径の金型に挿入されて押し出し成形しただけでは、明細書及び図面に唯一記載された【図7】(d)に示される小径孔部の径よりも大きな径を含みほぼ球状に近い支持部は成形されないから、どのように支持部が成形されるのか、その工程が明らかでない。 よって、本願発明3は明確でない。 2 特許法第36条第4項第1号について (1)発明の詳細な説明の段落【0032】には、「この空隙GAは、たとえば、金型Caに挿入前のワークWに熱処理を施し、熱処理条件を調整することにより、芯材料29と被覆材料28との境界の拡散層の厚みを調整することで形成することができる(たとえば、拡散層の厚みが5μm程度に調整する)。」との記載があるが、上記「熱処理条件」に係る実施例は何ら記載されていない。 また、発明の詳細な説明には、上記「熱処理条件」を当業者が理解できるように説明する記載もないし、これが、出願時における当業者の技術常識であるともいえない。 上記「熱処理条件」が出願時における当業者の技術常識であるか否かにつき、請求人は、平成27年3月12日付けの意見書(「4-6」の項)で「例えば、特開平7-37678号公報は、スパークプラグ用電極の製造方法に関し、明細書段落[0034]には、熱処理を行うことで銅軸12(芯材料29に相当)とニッケルカップ11(被覆材料28に相当)との境界の拡散層に相当する銅?ニッケル合金層の厚みを所定範囲に調整する旨の記載があります。これはすなわち、上記『熱処理条件』が出願時における当業者の技術常識であったことを意味します。」と主張している。 しかし、特開平7-37678号公報の発明の詳細な説明の段落【0034】には、「この実施例では、・・・銅軸12を650℃以上750℃以下の温度範囲で30分間?1時間程度焼鈍を行い、銅軸12のビッカース硬度を80以上90以下の範囲にしている。これにより、・・・銅-ニッケル合金層は5μm以上、望ましくは10μm以上30μm以下の範囲で確保され、且つニッケルカップ11と銅軸12の被嵌合部19の境界部分に隙間を生ずることはない。」と記載され、「隙間を生ずることはない」のだから、上記刊行物の記載は、上記「空隙GA」が形成される根拠とはならないと解するのが自然である。 むしろ、上記刊行物の発明の詳細な説明の段落【0014】の「耐食金属内に封入される前工程で銅合金を、真空或いは非酸化性雰囲気で600℃以上750℃以下の温度範囲内で熱処理することにより銅合金の硬度を低下させて、耐食金属の内部に銅合金を封入したときに、耐食金属と銅合金との境界部分に隙間が発生しないようにすることによって耐食金属と銅合金との嵌合性が向上する。更に、複合成形体を、真空或いは非酸化性雰囲気で900℃以上960℃以下の温度範囲内で熱処理することにより、銅合金と耐食金属との拡散による強固な銅-ニッケル合金層を形成して、耐食金属と銅合金との境界部分の隙間をなくすことによって耐食金属と銅合金との接合強度が向上する。」との記載も併せ考慮すると、熱処理を行うことで銅軸12とニッケルカップ11との境界部分の隙間がなくなるとはいえても、上記刊行物の段落【0034】に記載される熱処理によって、上記「空隙GA」が形成されるとはいえないし、上記「熱処理条件」が出願時における当業者の技術常識であったともいえないと解するのが合理的である。 よって、発明の詳細な説明は、本願発明1ないし本願発明3を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されていない。 (2)また、発明の詳細な説明の段落【0032】には、「このように、第1次押し出し成形は、第1次成形体M1に空隙GAが形成されるように行われるため、第1次成形体M1の被覆側の端部において芯材料29が被覆材料28の端面を押すことにより芯側の端部における芯材料29と被覆材料28との境界付近に空隙が発生することを抑制することができる。」との記載がある。 上記第4の2の(1)のように、「空隙GAが形成される」工程が明確かつ十分に記載されていない上、「第1次押し出し成形は、第1次成形体M1に空隙GAが形成されるように行われる」ことと「第1次成形体M1の被覆側の端部において芯材料29が被覆材料28の端面を押すことにより芯側の端部における芯材料29と被覆材料28との境界付近に空隙が発生すること」との関係が明らかでない。 よって、発明の詳細な説明は、本願発明1ないし本願発明3を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されていない。 第5 むすび 以上のとおり、この出願は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないし、また、発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。 したがって、本願は、拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2015-03-30 |
結審通知日 | 2015-04-02 |
審決日 | 2015-04-15 |
出願番号 | 特願2011-134749(P2011-134749) |
審決分類 |
P
1
8・
536-
WZ
(H01T)
P 1 8・ 537- WZ (H01T) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 佐藤 吉信 |
特許庁審判長 |
島田 信一 |
特許庁審判官 |
小柳 健悟 森川 元嗣 |
発明の名称 | スパークプラグ用の中心電極の製造方法およびスパークプラグの製造方法 |
代理人 | 青木 昇 |