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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B60K
管理番号 1301857
審判番号 不服2014-6562  
総通号数 188 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-08-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-04-09 
確定日 2015-06-10 
事件の表示 特願2010-529046「ハイブリッド車両ドライブシステム及び方法、及び無負荷運転削減システム及び方法」拒絶査定不服審判事件〔平成21年 4月16日国際公開、WO2009/049066、平成23年 1月13日国内公表、特表2011-501714〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯及び本願発明
本願は、2008年10月9日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2007年10月12日 アメリカ合衆国、2007年12月17日 アメリカ合衆国、2008年5月30日 アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって、平成22年4月8日に特許法第184条の5第1項に規定する国内書面が提出され、平成22年6月7日に明細書、特許請求の範囲、要約書、及び図面の翻訳文が提出され、平成25年3月6日付けで拒絶理由が通知され、平成25年9月9日に意見書並びに明細書及び特許請求の範囲を訂正する誤訳訂正書が提出されたが、平成25年12月3日付けで拒絶査定がなされ、平成26年4月9日に拒絶査定に対する審判請求がなされると同時に手続補正書が提出されたものである。
平成26年4月9日付け手続補正は、請求項28及び29の削除を目的としたものであって適法なものであるから、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、当該補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものと認める。

「 【請求項1】
第1の原動機、第1の原動機被駆動トランスミッション、再充電可能な電力源、及びPTOを備える車両のための車両ドライブシステムであって、
前記車両ドライブシステムは、
前記PTOと直接的又は間接的に機械的な連結をする油圧ポンプ/モータと、
前記油圧ポンプ/モータと直接的に又は間接的に機械的な連結をする電気モータと、
前記PTO、油圧ポンプ/モータ及び電気モータを制御する制御システムを備え、
前記電気モータは前記原動機被駆動トランスミッションからの動力を前記PTOを介して受け取り、さらに前記再充電可能なエネルギー源からの電力を用い、
前記油圧ポンプ/モータは前記電気モータが回転すると前記回転する電気モータからの動力を受け取ることができ、
前記制御システムは、前記油圧ポンプ/モータ及び電気モータのトルク又は出力の合計が前記PTO、或いは前記第1の原動機被駆動トランスミッションの許容トルク又は出力限界を超えないように、前記油圧ポンプ/モータ又は電気モータのトルク又は出力を制御する、
車両ドライブシステム。」


第2 引用文献に記載された発明
(1-a)本願の優先日前に頒布された刊行物であり、原査定の拒絶の理由に引用された米国特許出願公開第2006/0068970号明細書(以下、「引用文献1」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。なお、仮訳については、引用文献1の日本語ファミリー文献(特表2008-514506号公報)の記載を援用した。

ア.「[0002] The present invention relates to hybrid hydraulic drive systems in general and, more particularly, to a hydraulic drive system of a motor vehicle generating and accumulating propulsion energy by retardation of movement, including an integrated hydraulic machine operatively coupled to a prime mover upstream of a vehicular transmission」([0002])
『仮訳:[0002]本発明は一般に混成液圧駆動装置に関し、特に、車両トランスミッションの上流側で原動機に作動的に結合された一体の液圧機械を含む、減速運動により推進エネルギを発生させ蓄積する、自動車の液圧駆動装置に関する。』

イ.「[0021] FIG. 1 schematically depicts a hybrid hydraulic (or regenerative) drive system 8 in accordance with a first embodiment of the present invention for application in motor vehicles, especially heavy land vehicles, such as trucks and buses.
・・・
[0037] In the neutral mode, the clutch 28 of the coupling device 26 disconnects the pump/motor unit 32 from the crankshaft 11 of the engine 12 to render the pump/motor unit 32 substantially inoperative to exert any significant driving or retarding influence on the drive wheels 21 and 23 of the motor vehicle.」([0021]ないし[0037])
『仮訳:[0021] 図1は自動車特にトラックやバスのような重量級の陸上車両に適用するための、本発明の第1の実施の形態に従った混成液圧(即ち再生)駆動装置8を示す。混成駆動装置8は内燃エンジン又は電気モータのような原動機10と、車両多速度トランスミッション12とを有する。好ましくは、トランスミッション12は原動機10をトランスミッション12に駆動結合する流体力学トルクコンバータ14を含む遊星自動トランスミッションである。任意の適当な形式の車両トランスミッションは本発明の要旨内に含まれることを認識されたい。今度は、トルクコンバータ14は原動機10の出力シャフト11に回転不能な状態で結合されたタービン14a(又はポンプ)と、トランスミッション12の入力シャフト12aに回転不能な状態で結合されたインペラ14bと、ステータ14cと、を有する。好ましくは、図1に示すように、原動機10は内燃エンジンであり、出力シャフト11はエンジン10のクランクシャフトである。

[0022] 車両トランスミッション12は後方駆動シャフト16及び前方駆動シャフト18を含む車両駆動装置8の駆動ラインに駆動接続される。一層詳細には、車両駆動ラインの後方駆動シャフト16はトランスミッション12を後方駆動車軸組立体20に駆動接続し、一方、前方駆動シャフト18はトランスミッション12を前方駆動車軸組立体22に駆動接続する。混成駆動装置8は前方又は後方において単一の駆動車軸組立体を有することができることを認識されたい。

[0023] 混成駆動装置8は更に液圧パワー装置30を有する。本発明の好ましい実施の形態に係る液圧パワー装置30はエンジンに組み込まれた可逆液圧機械32と、可逆液圧機械32に流体接続された遠隔低圧容器即ち液圧流体リザーバ34と、液圧機械32に流体接続された少なくとも1つの高圧液圧アキュムレータ36とを有する。液圧流体リザーバ34は適当な量の液圧流体を貯蔵し、液圧機械32に液圧流体を供給するために設けられる。従って、液圧流体リザーバ34は液圧機械32の入口と流体連通する。液圧流体リザーバ34は温度センサ62と、低レベルスイッチ64と、リザーバ圧力スイッチ66とを具備することができる。

[0024] 好ましくは、エンジンに組み込まれた可逆液圧機械32は、液圧ポンプ及び切り換わった場合の液圧モータの双方として機能する一体化した液圧ポンプ/モータユニットの形をしている。一層好ましくは、一体化した液圧ポンプ/モータユニット32は容積式可逆高圧ピストンモータ/ポンプである。更に好ましくは、一体化した液圧ポンプ/モータユニット32は可変容量形モータ/ポンプ、例えば、高圧可変容量形軸方向ピストン液圧モータ/ポンプである。この構成のため、一体化した液圧ポンプ/モータユニット32の変位(排水量)は変化することができ、従って、発生した加圧液圧流体の流れは駆動されている速度とは独立に制御することができる。しかし、任意の適当な液圧モータ/ポンプユニットは本発明の要旨内に入ることを認識されたい。

[0025] 本発明のエンジンに組み込まれた液圧ポンプ/モータユニット32はトランスミッション12の上流側でエンジン10のクランクシャフト11に駆動接続される。

[0026] 液圧ポンプ/モータユニット32とエンジン10のクランクシャフト11との間のインターフェイスは多くの形をとることができる。一層詳細には、図1に示す本発明の第1の例示的な実施の形態によれば、一体化した液圧ポンプ/モータユニット32は、可逆液圧ポンプ/モータユニット32をエンジン10のクランクシャフト11に選択的に結合するために設けられた結合装置26を通しての伝達前に、エンジン10の後方端部10Rにおいてクランクシャフト11に駆動接続される。

[0027] 結合装置26は駆動歯車27aの形をした移送歯車箱と、被駆動歯車27bと、結合装置26に対してポンプ/モータユニット32を選択的に結合/結合解除するために設けられたクラッチ組立体28と、を有する。結合装置26はインターフェイスシャフト29を介してポンプ/モータユニット32に駆動接続される。移送歯車箱はポンプ/モータユニット32とクランクシャフト11との間の速度増加又は減速比のために設けられる。移送歯車箱の有効伝達比は意図する車両応用に対応する所定の駆動サイクルにわたって最適なポンピング効率を提供するように設計される。代わりに、移送歯車箱はポンプ/モータユニット32とクランクシャフト11との間に任意の望ましい歯車比を提供する一組の歯車を有することができる。更に代わりに、移送歯車箱はエンジン10のクランクシャフト11をポンプ/モータユニット32のインターフェイスシャフト29に物理的に接続するためにチェーン又はベルト部材を有することができる。随意には、移送歯車箱は多速度比歯車箱の形をとることができる。

[0028] 本発明の第1の例示的な実施の形態においては、結合装置26の駆動歯車27aは図1に示すようにトルクコンバータ14のタービン14aに駆動接続される。代わりに、結合装置26は典型的には車両トランスミッションのトランスミッションケースの前方に位置するエンジン駆動パワーテークオフ(PTO)に駆動接続することができる。このような構成は当業界で「ライブ」PTOと呼ばれ、この場合は、PTOはエンジンに直接接続され、パワーは、トランスミッションの作動に関係なく、PTOを通してエンジンに対して取り出し(又は)付与することができる。更に代わりに、結合装置26は適当なPTOアダプタを介してエンジン10のクランクシャフト11に駆動接続することができる。結合装置26は任意の適当な方法によりエンジン10のクランクシャフト11に駆動接続できることを認識されたい。

[0029] 図1の例示的な実施の形態のクラッチ組立体28は被駆動歯車27bに対してポンプ/モータユニット32のインターフェイスシャフト29を選択的に結合/結合解除するために設けられる。

[0030] 液圧パワー装置30の例示的な実施の形態を図2に示す。本発明の好ましい実施の形態に係る液圧パワー装置30は更に、各々液圧機械32に液圧的に接続された複数の高圧液圧アキュムレータ36のバンク即ち列を有する。更に好ましくは、アキュムレータのバンクは窒素でチャージされる液圧アキュムレータを含む。他の形式の液圧アキュムレータを使用できることを認識されたい。

[0031] 各窒素でチャージされる液圧アキュムレータ36は好ましくは、好ましくは円筒状であるハウジングを有し、このハウジングはシールされた状態でいずれかの端部において閉じられ、ハウジング内で、ハウジングの内部を第1及び第2の室(図示せず)に分割する可動のダイアフラムを有する。第1の室は圧縮可能な窒素ガスのチャージを担持し、一方、第2の室は、適当な弁手段により、この室に対して、オイルのような実質上圧縮不能な液圧流体を受け取ったり解放したりするように、構成される。アキュムレータ11は、可動ピストンが第1の室の容積を減少させるように移動させられ、それによってこの室内に貯蔵されたガスを圧縮するように、第2の室内に貯蔵されたオイルの量を増大させることにより、エネルギを蓄積する。車両が減速モードで作動するとき、流体はポンプ/モータユニット32によりアキュムレータ11の第2の室内へポンピングされる。逆に、駆動モードにおいては、第2の室の容積を減少させるようにダイアフラムを押圧する圧縮された窒素ガスの力により、液圧流体が第2の室から解放されたとき、流体はポンプ/モータユニット32を駆動し、その結果、このユニットは、エンジン12のクランクシャフト11を駆動して、補助のパワーを駆動車輪に供給し、従って車両の推進を補助するように、モータとして作用する。

[0032] 本発明の好ましい実施の形態に係る液圧パワー装置30は更にソレノイド弁38a、38bと、圧力レギュレータ40、43と、システム制御弁42と、アキュムレータ減衰弁44と、アキュムレータ隔離弁46と、システム圧力センサ48と、アキュムレータ圧力センサ50とを有する。ソレノイド弁38a、38bは一体化したポンプ/モータユニット32の一部であり、ポンプ/モータユニット32の容積変位を制御するために使用される。アキュムレータ減衰弁44はソレノイド作動2方向弁である。その機能は、隣接する絞り弁45を介して制御された方法でアキュムレータ圧力を減衰させることである。使用において、この弁は、車両が停止しているか又は装置の故障の場合に、いかなるアキュムレータ圧力をも軽減する。アキュムレータ隔離弁46はアキュムレータ36の確実な液圧隔離を提供するソレノイド作動弁である。液圧パワー装置30のソレノイド作動弁は電子制御ユニット(ECU)(図示せず)により制御される。

[0033] 更に、液圧パワー装置30は微粒子フィルタ52と、熱交換器54と、熱交換器54に関連し、熱交換器54を通って流れる液圧流体を強制的に冷却するための冷却ファン56と、を有する。冷却ファン56は液圧モータ58により選択的に駆動され、このモータは液圧ファンモータ58のバイパス液圧ラインを有効に制御するファンバイパス制御弁60により選択的に作動される。好ましくは、ファンバイパス制御弁60は外部の通気及び排気ポートを備えた可変のECU作動逃し弁の形をしている。ファンバイパス制御弁60は液圧モータ58に供給される液圧流体の圧力を選択的に規制するために冷却ファン液圧モータ58に並列に配置される。当業者なら、冷却ファン56を駆動するために、液圧モータのほかに、電気モータのような任意の他の適当な動力源を使用できることを認識できよう。

[0034] 混成液圧(又は再生)駆動装置8は減速モード、駆動モード及び中立モードを含む3つの作動モードで作動できる。

[0035] 減速モードにおいては、クラッチ組立体28の係合状態で、運動エネルギの外部の源がエンジン12のクランクシャフト11及び結合装置26を介してポンプ/モータユニット32を駆動するとき、ポンプ/モータユニット32は液圧ポンプとして機能する。その結果、ポンプ/モータユニット32は液圧流体リザーバ34から液圧流体を吸引し、貯蔵アキュムレータ38に供給される加圧液圧流体を発生させる。ポンプ32を駆動するのに必要な負荷はエンジン12のクランクシャフト11上に減速力を生じさせる。従って、減速においては、ポンプ/モータユニット32は、エネルギ貯蔵アキュムレータ38内へ液圧流体をポンピングすることにより、自動車の駆動車輪21、23を減速させる。

[0036] 駆動モードにおいては、加圧液圧流体はポンプ/モータユニット32を駆動するためにエネルギ貯蔵アキュムレータ38から解放される。このモードにおいては、ポンプ/モータユニット32は液圧モータとして作用し、インターフェイスシャフト29を回転させるトルクを発生させる。次いで、インターフェイスシャフト29は、クラッチ組立体28が係合した状態で、結合装置26を介してエンジン12のクランクシャフト11を駆動し、補助のパワーを駆動車輪に供給し、従ってエネルギ貯蔵アキュムレータ38からの加圧液圧流体の液圧エネルギを使用して車両の推進を補助する。

[0037] 中立モードにおいては、結合装置26のクラッチ28はエンジン12のクランクシャフト11からポンプ/モータユニット32を切り離し、自動車の駆動車輪21、23に対していかなる重要な駆動又は減速の影響をも及ぼさないように、ポンプ/モータユニット32を実質上不作動にする。』

(1-b)ここで、上記(1-a)及び図面から、次のことが分かる。

カ.上記(1-a)ア.及びイ.の[0021]ないし[0028]並びにFig.1及びFig.2の記載から、混成駆動装置8は、原動機10、トランスミッション12、液圧アキュムレータ36、及びエンジン駆動パワーテークオフ(PTO)を備えていることが分かる。

キ.同上記ア.及びイ.の[0026]ないし[0028]並びにFig.1及びFig.2の記載から、混成駆動装置8は、エンジン駆動パワーテークオフ(PTO)と結合装置26を介して駆動接続をするポンプ/モータユニット32を備えていることが分かる。

ク.同上記ア.、イ.の[0028]及び[0032]並びにFig.1及びFig.2の記載から、混成駆動装置8は、エンジン駆動パワーテークオフ(PTO)、ポンプ/モータユニット32を制御する制御ユニットを備えていることが分かる。

ケ.同上記ア.、イ.の[0035] 及び[0036]並びにFig.1及びFig.2の記載から、ポンプ/モータユニット32は原動機10からの動力を受け取ることができ、制御ユニットは、ポンプ/モータユニット32のトルクがエンジン駆動パワーテークオフ(PTO)を介して供給できるように、ポンプ/モータユニット32のトルクを制御することが分かる。

(1-c)上記(1-a)及び(1-b)より、引用文献1には、次の発明が記載されている。

「原動機10、トランスミッション12、液圧アキュムレータ36、及びエンジン駆動パワーテークオフ(PTO)を備える混成駆動装置8であって、
混成駆動装置8は、
エンジン駆動パワーテークオフ(PTO)と結合装置26を介して駆動接続をするポンプ/モータユニット32と、
エンジン駆動パワーテークオフ(PTO)、ポンプ/モータユニット32を制御する制御ユニットを備え、
ポンプ/モータユニット32は原動機10からの動力を受け取ることができ、
制御ユニットは、ポンプ/モータユニット32のトルクがエンジン駆動パワーテークオフ(PTO)を介して供給できるように、ポンプ/モータユニット32のトルクを制御する、
混成駆動装置8」(以下、「引用発明1」という。)

(2-a)本願の優先日前に頒布された刊行物であり、原査定の拒絶の理由に引用された特開2001-8309号公報(以下、「引用文献2」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。

サ.「【0010】図1に示すように、シリーズ式ハイブリッド車両のパワートレインは、電動機と発電機を兼ねる2台の走行用モータ12,13を備え、各モータ12,13の力行時にその回転が図示しない動力伝達装置を介して車輪に伝達される。
【0011】各交流モータ12,13は各インバータ16,17によってそれぞれ駆動される。インバータ16,17は蓄電装置8に接続され、各モータ12,13の力行時に蓄電装置8の直流充電電力を交流電力に変換して各モータ12,13へ供給するとともに、各モータ12,13の回生発電時に各モータ12,13の交流発電電力を直流電力に変換して蓄電装置8に充電する。コントローラ10はアクセルセンサ4の検出信号を入力し、運転者によって操作されるアクセルペダルの踏み込み量に応じてインバータ16,17を駆動してモータ12,13の出力を制御する。
【0012】エンジン1に動力伝達装置20を介して駆動される2台の発電機2,3を備える。
【0013】動力伝達装置20はエンジン1の出力軸に連結されるギア21と、各発電機2,3の入力軸に連結される各ギア22,23によって構成され、このギア21に各ギア22,23が噛み合っている。
【0014】各交流発電機2,3は各インバータ6,7によってそれぞれ駆動される。インバータ6,7は蓄電装置8に接続され、各発電機2,3の交流発電電力を直流電力に変換して蓄電装置8に充電する。
【0015】蓄電装置8は化学反応を用いた各種蓄電池や電気二重相キャパシタ電池が用いられる。なお、各モータ12,13または各発電機2,3は交流機に限らず直流電動機を用い、チョッパ制御装置によって駆動してもよい。
【0016】コントローラ10は蓄電装置8の充電状態検出信号を入力し、充電状態に応じて各インバータ6,7を駆動して各発電機2,3の発電電力を制御する。」(段落【0010】ないし【0016】)

(2-b)上記(2-a)より、引用文献2には、次の発明が記載されている。

「電動機と発電機を兼ねる走行用モータ12,13及び蓄電装置8を備え、走行用モータ12,13は、動力伝達装置からの動力を受け取り、蓄電装置8からの電力を用い、コントローラ10によって制御されているハイブリッド車両のパワートレイン。」(以下、「引用発明2」という。)


第3 対比
本願発明と引用発明1とを対比すると、引用発明1における「原動機10」は、その構造及び機能又は技術的意義からみて、本願発明における「第1の原動機」に相当し、以下同様に、「トランスミッション12」は「第1の原動機被駆動トランスミッション」に、「エンジン駆動パワーテークオフ(PTO)」は「PTO」に、「混成駆動装置8」は「車両のための車両ドライブシステム」又は「車両ドライブシステム」に、「結合装置26を介して駆動接続」は「直接的又は間接的に機械的な連結」に、「制御ユニット」は「制御システム」にそれぞれ相当する。
また、引用文献1の[0032]に「この室に対して、オイルのような実質上圧縮不能な液圧流体を受け取ったり解放したりするように、構成される。・・・第2の室内に貯蔵されたオイルの量を増大させることにより、エネルギを蓄積する。」(下線は、当審が付与したものである。)と記載されているので、引用発明1における「ポンプ/モータユニット32」は、本願発明における「油圧ポンプ/モータ」に相当する。
また、「油圧ポンプ/モータは外部動力源からの動力を受け取ることができ」るという限りにおいて、引用発明1における「ポンプ/モータユニット32は原動機10からの動力を受け取ることができ」と、本願発明における「油圧ポンプ/モータは電気モータが回転すると回転する電気モータからの動力を受け取ることができ」は、一致する。
さらに、「制御システムは、油圧ポンプ/モータのトルクがPTOを介して供給できるように、油圧ポンプ/モータのトルクを制御する」という限りにおいて、引用発明1における「制御ユニットは、ポンプ/モータユニット32のトルクがエンジン駆動パワーテークオフ(PTO)を介して供給できるように、ポンプ/モータユニット32のトルクを制御する」と、本願発明における「制御システムは、油圧ポンプ/モータ及び電気モータのトルク又は出力の合計がPTO、或いは第1の原動機被駆動トランスミッションの許容トルク又は出力限界を超えないように、前記油圧ポンプ/モータ又は電気モータのトルク又は出力を制御する」は、一致する。
したがって、本願発明と引用発明1は、
「第1の原動機、第1の原動機被駆動トランスミッション及びPTOを備える車両のための車両ドライブシステムであって、
車両ドライブシステムは、
PTOと直接的又は間接的に機械的な連結をする油圧ポンプ/モータと、
PTO、油圧ポンプ/モータを制御する制御システムを備え、
油圧ポンプ/モータは外部動力源からの動力を受け取ることができ、
制御システムは、油圧ポンプ/モータのトルクがPTOを介して供給できるように、油圧ポンプ/モータのトルクを制御する、
車両ドライブシステム。」である点で一致し、次の点において相違する。

〈相違点〉
本願発明においては、「再充電可能な電力源」と「油圧ポンプ/モータと直接的に又は間接的に機械的な連結をする電気モータ」を有し、「前記電気モータは前記原動機被駆動トランスミッションからの動力を前記PTOを介して受け取り、さらに前記再充電可能なエネルギー源からの電力を用い、前記油圧ポンプ/モータは前記電気モータが回転すると前記回転する電気モータからの動力を受け取ることができ」るのに対して、引用発明1においては、「ポンプ/モータユニット32は原動機10からの動力を受け取ることができ」るが、「再充電可能な電力源」及び「電気モータ」を有しない点(以下、「相違点1」という。)。

「制御システムは、油圧ポンプ/モータのトルクがPTOを介して供給できるように、油圧ポンプ/モータのトルクを制御する」に関して、本願発明においては、「前記制御システムは、前記油圧ポンプ/モータ及び電気モータのトルク又は出力の合計が前記PTO、或いは前記第1の原動機被駆動トランスミッションの許容トルク又は出力限界を超えないように、前記油圧ポンプ/モータ又は電気モータのトルク又は出力を制御する」のに対して、引用発明1においては、「制御ユニットは、ポンプ/モータユニット32のトルクがエンジン駆動パワーテークオフ(PTO)を介して供給できるように、ポンプ/モータユニット32のトルクを制御する」点(以下、「相違点2」という。)。


第4 判断
上記相違点1及び2について、以下検討する。
・相違点1について
一般的に、引用発明2に示されているように、ハイブリッド車両において、モータと蓄電装置を備え、モータは動力伝達装置からの動力を受け取り、さらに蓄電装置からの電力を用いることは周知技術であり、また、モータがPTOを介して動力伝達装置に連結することも周知技術(例えば、国際公開第2007/097819号(国際公開日:2007年8月30日)の第7ページ第21ないし27行、及びFIG.2等の記載参照。以下、「周知技術1」という。)である。さらに、ハイブリッド車両において、油圧ポンプと機械的に連結をする電動機を有し、油圧ポンプは電動機が回転すると回転する電動機からの動力を受け取るようにすることは周知技術(例えば、特開平10-37904号公報の段落【0031】、図1等の記載参照。以下、「周知技術2」という。)である。
してみると、引用発明1、引用発明2並びに周知技術1及び2は、いずれもハイブリッド車両という共通の技術分野に属するので、引用発明1に引用発明2並びに周知技術1及び2を適用して、上記相違点1に係る本願発明の発明特定事項とすることは当業者が容易になし得ることである。

・相違点2について
引用発明1においては、制御ユニットは、ポンプ/モータユニット32のトルクがエンジン駆動パワーテークオフ(PTO)を介して供給できるように、ポンプ/モータユニット32のトルクを制御している。ここで、仮に、引用発明1において、エンジン駆動パワーテークオフ(PTO)の許容トルクを超えてポンプ/モータユニット32のトルクを制御すると、PTOの故障につながることは当業者にとって自明な事項であるので、引用発明1において、エンジン駆動パワーテークオフ(PTO)の許容トルクを超えないようにポンプ/モータユニット32のトルクを制御することは、当業者が適宜なし得る設計事項といえる。
そして、周知技術2で示したように、ハイブリッド車両において、油圧ポンプと機械的に連結をする電動機を有し、油圧ポンプは電動機が回転すると回転する電動機からの動力を受け取ることは周知技術であるので、引用発明1に周知技術2を適用し、ポンプ/モータユニット32及び電動機のトルクの合計が、エンジン駆動パワーテークオフ(PTO)の許容トルクを超えないようにポンプ/モータユニット32及び電動機のトルクを制御するように構成し、上記相違点2に係る本願発明の発明特定事項とすることは当業者が容易になし得ることである。

また、本願発明を全体として検討しても、引用発明1、引用発明2並びに周知技術1及び2から予測される以上の格別の効果を奏するとも認めることができない。


第5 むすび
したがって、本願発明は、引用発明1、引用発明2並びに周知技術1及び2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないので、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-01-08 
結審通知日 2015-01-13 
審決日 2015-01-26 
出願番号 特願2010-529046(P2010-529046)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B60K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山村 秀政  
特許庁審判長 加藤 友也
特許庁審判官 金澤 俊郎
林 茂樹
発明の名称 ハイブリッド車両ドライブシステム及び方法、及び無負荷運転削減システム及び方法  
代理人 三好 秀和  
代理人 伊藤 正和  
代理人 原 裕子  

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