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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01R
管理番号 1301862
審判番号 不服2014-13611  
総通号数 188 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-08-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-07-14 
確定日 2015-06-10 
事件の表示 特願2009-230517「圧着端子」拒絶査定不服審判事件〔平成23年4月14日出願公開、特開2011-77013〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成21年10月2日の出願であって、平成25年7月9日付け(発送日:7月16日)の拒絶理由通知に対して、同年9月17日に意見書及び手続補正書が提出され、更に、平成26年1月15日付け(発送日:1月21日)の拒絶理由通知(最後)に対して、同年3月19日に意見書及び手続補正書が提出されたが、同年5月13日付け(発送日:5月20日)で拒絶査定がなされ、これに対し、同年7月14日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。

2.本願発明
本願の請求項1に係る発明は、平成26年3月19日に手続補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、次のとおりのものである(以下「本願発明」という。)。
「1本の素線、あるいは束ねられた複数本の素線で構成され、且つ電線の端部に露出する導体の外周に巻付け、加締めることで、圧着され、該導体と電気的に接続される導体圧着部を備えた圧着端子であって、
前記導体圧着部の内面に、前記電線の軸方向に沿って並列に隣接配置される少なくとも1本の溝と、該溝の開口縁に形成されるエッジ部と、から構成されるセレーションを設け、
該導体圧着部を板状に展開した状態で、該溝は、間口の幅寸法と底部の幅寸法が同等となるように、且つ該間口の幅寸法と該底部の幅寸法が共に、前記素線の線径より小さく設定され、
該導体圧着部を前記導体に包むように加締める際に、該溝の該間口の幅寸法が該底部の幅寸法と比べてより小さくなるよう減少することを特徴とする圧着端子。」

3.刊行物に記載された事項及び発明
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願日前に日本国内において頒布された実願昭54-19667号(実開昭55-120080号)のマイクロフィルム(以下「刊行物」という。)には、「アルミ電線接続用端子」に関し、図面(特に第2?6図参照)とともに、次の事項が記載されている。
以下、下線は当審で付与するものである。

ア.明細書1頁15行
「本考案はアルミ電線接続用端子に関する。」

イ.同2頁20行?3頁3行
「端子1は、細長底板2の両側に、アルミ電線の被覆コード部をかしめるための一対のかしめ片3a,3b、裸のアルミ電線をかしめるための一対のかしめ片4a,4bを備えている。」

ウ.同3頁7?15行
「そしてまた、第1?6図に示すように、各かしめ片4a,4bの内面および、底板2における該かしめ片4a,4b間の内面に、端子1の長手方向に伸びる直線状の、換言すれば長方形状の凹部6,6…を二列縦隊に設けている。これらの各凹部6,6…は端子1の展開形状をプレス加工で作出する際に、これと同時に押し込み加工することにより作出し、それらの縁部6aを鋭利(略90°)に形成している。」

エ.同3頁16行?4頁6行
「上記構成のかしめ片4a,4bは、第4図に示す如く、端子1に導入されたアルミ電線7に対して、第5,6図に示すように、アルミ電線7の外周を包囲すべく内側に強く折り曲げられる。この際、各かしめ片4a,4b並びに底板2の内面に設けた凹部6,6…内にアルミ電線7が喰い込む。各凹部6,6…は、上記したように、それらの縁部6aが切り立つて非常に鋭利に形成されているので、たとえ、アルミ電線7の外周に酸化層が形成されていても、凹部の縁部6aがその酸化層を切り破いて酸化層下のアルミ電線本体に接触する。」

オ.同4頁7?14行
「また、アルミ電線7が使用中に膨張しその後収縮しても、アルミ電線7の各凹部6,6…に喰い込んだ部分7aは、各凹部6,6…の各縁部6aにより確実に保持されているので、アルミ電線7と各縁部6aとの接触は確実に保たれ、良好な接触が保証される。さらに、各凹部6,6…に対するアルミ電線7の喰い込みにより、アルミ電線7を端子1より引き抜く力に対する抗力が増大する。」

カ.刊行物の第4図には、端子1のかしめ片4a,4bをかしめる前の、アルミ電線7と凹部6の断面図が記載されている。また、同図及び第5図によれば、アルミ電線7は1本の素線で構成されているといえる。

上記記載事項エ、オからみて、刊行物に記載されたアルミ電線7は、アルミ電線接続用端子1に設けられた凹部6内に喰い込み、且つ、切り立って鋭利に形成された凹部6の縁部6aが、酸化層を切り破いて下のアルミ電線本体に接触するから、アルミ電線接続用端子1がアルミ電線7と電気的に接続されていると認められる。

上記記載事項、認定事項及び図示内容を総合して、本願発明に則って整理すると、刊行物1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

「1本の素線で構成され、アルミ電線の裸のアルミ電線7の外周を包囲して、かしめることで、接触され、該アルミ電線7と電気的に接続されるかしめ片4a,4b及び該かしめ片4a,4b間の底板2を備えた端子1であって、
前記一対のかしめ片4a,4bの内面に、端子1の長手方向に伸びる、縁部6aが切り立って鋭利(略90°)に形成された、長方形状の凹部6,6…を設けてなる、
アルミ電線接続用端子。」

4.対比
本願発明と引用発明とを対比する。

a.引用発明の「アルミ電線の裸のアルミ電線7」、「アルミ電線7」、「凹部6」は、その機能、構造等からみて、本願発明の「電線の端部に露出する導体」、「導体」、「溝」に、それぞれ相当する。
b.上記記載事項エのとおり、引用発明の「かしめ片4a,4b」は、アルミ電線7の外周を包囲すべく内側に強く折り曲げられるものであるから、底板2と相俟って、アルミ電線を圧着していることは明らかである。
すなわち、引用発明のかしめ片4a,4b及び底板2は、本願発明の「加締めることで、圧着され、該導体と電気的に接続される導体圧着部」に相当する。
c.本願発明の「エッジ部」は「溝の開口縁に形成される」ものであるが、引用発明の「縁部6a」も、凹部6(本願発明の「溝」に相当)の開口縁に形成されているから、引用発明の「縁部6a」は、本願発明の「エッジ部」に相当する。
d.引用発明において「端子1の長手方向に伸びる」ことは、本願発明の「電線の軸方向に沿って並列に隣接配置され」ることに相当する。
e.刊行物の第4図からみて、引用発明のかしめ片4a,4b及び底板2の内面に形成される複数の凹部6と縁部6aとが、本願発明と同様の「セレーション」を構成していることは明らかである。
f.上記bからみて、引用発明の「アルミ電線接続用端子」は、「圧着端子」ということができる。

以上の点からみて、本願発明と引用発明とは、
[一致点]
「1本の素線、あるいは束ねられた複数本の素線で構成され、且つ電線の端部に露出する導体の外周に巻付け、加締めることで、圧着され、該導体と電気的に接続される導体圧着部を備えた圧着端子であって、
前記導体圧着部の内面に、前記電線の軸方向に沿って並列に隣接配置される少なくとも1本の溝と、該溝の開口縁に形成されるエッジ部と、から構成されるセレーションを設けた、圧着端子。」
である点で一致し、次の点で相違する。

[相違点]
本願発明では、「該導体圧着部を板状に展開した状態で、該溝は、間口の幅寸法と底部の幅寸法が同等となるように、且つ該間口の幅寸法と該底部の幅寸法が共に、前記素線の線径より小さく設定され、該導体圧着部を前記導体に包むように加締める際に、該溝の該間口の幅寸法が該底部の幅寸法と比べてより小さくなるよう減少する」のに対して、引用発明では、溝について、展開した状態や加締める際の間口と底部の幅寸法の関係が明らかでない点。

5.判断
まず、引用発明の凹部6は、記載事項ウのとおり、「各凹部6,6…は端子1の展開形状をプレス加工で作出する際に、これと同時に押し込み加工することにより作出し、それらの縁部6aを鋭利(略90°)に形成して」いるから、引用発明の凹部6の間口の幅寸法と底部の幅寸法とは略同等になるといえ、当該技術事項からみて、本願発明のように「間口の幅寸法と底部の幅寸法が同等となる」ように設定する点は、刊行物に記載ないしは示唆されており、この点は当業者が容易になし得たことである。
そして、刊行物の第4図からみて、引用発明の「凹部6」の間口の幅寸法がアルミ電線7の線径より小さいことは明らかであるから、底部の幅寸法もアルミ電線7の線径より小さいことはいうまでもない。
結局、引用発明の凹部6も、「間口の幅寸法と底部の幅寸法は共に、アルミ電線の線径より小さく設定されている」といえる。
さらに、引用発明において、かしめ片を第4図から第5図のようにかしめる際の「凹部6」の変形に着目すると、少なくとも、曲げられる度合いが大きい、第5図の両肩部分に形成された凹部は、その間口の幅が狭まるように変形することは明らかであり、上記相違点の「該導体圧着部を前記導体に包むように加締める際に、該溝の該間口の幅寸法が該底部の幅寸法と比べてより小さくなるよう減少する」点は、導体圧着部を板状に展開した状態で、溝の「間口の幅寸法と底部の幅寸法が同等」のものを、加締める際に、必然的に起こる変形を特定したものにすぎない。
以上のとおりであるから、上記相違点に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

そして、本願発明による効果も、引用発明から当業者が予測し得た程度のものであって、格別のものとはいえない。

したがって、本願発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

なお、審判請求人は、審判請求書3頁23?26行において、引用発明では導体が単芯線であるが、本願発明では「束ねられた複数本の素線で構成さ」れており、導体の構成において相違する旨、主張している。
しかしながら、本願発明において「1本の素線、あるいは束ねられた複数本の素線で構成され、」と特定されているのであるから、請求人の主張は失当である。

6.むすび
したがって、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、他の請求項に係る発明を検討するまでもなく、本願は、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-03-24 
結審通知日 2015-03-31 
審決日 2015-04-15 
出願番号 特願2009-230517(P2009-230517)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01R)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 楠永 吉孝芝井 隆  
特許庁審判長 島田 信一
特許庁審判官 小柳 健悟
森川 元嗣
発明の名称 圧着端子  
代理人 三好 秀和  

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