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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 取り消して特許、登録 H01R
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01R
管理番号 1301939
審判番号 不服2014-21766  
総通号数 188 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-08-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-10-28 
確定日 2015-06-30 
事件の表示 特願2011-188594「コネクタ」拒絶査定不服審判事件〔平成25年3月14日出願公開、特開2013-51132、請求項の数(3)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成23年8月31日の出願であって、平成26年7月24日付けで拒絶査定がなされ(発送日:同年8月1日)、これに対し、同年10月28日に拒絶査定不服審判が請求され、その審判の請求と同時に手続補正がされたものである。

第2 平成26年10月28日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)の適否
1 本願補正発明
本件補正は、特許請求の範囲の請求項1について、
「【請求項1】
基板上に取り付けられるハウジングと、前記ハウジングに設けられて前記基板上の信号端子に表面実装されるコンタクトとを備えて構成され、相手側コンタクトを備える相手側ハウジングが前記ハウジングに嵌合されることで前記コンタクトと前記相手側コンタクトとが接触して電気接続されるコネクタであって、
前記ハウジングは、前記基板に沿う前後方向における後方および前記基板に直交する上下方向における上方に開放されて嵌合された前記相手側ハウジングを受容するハウジング受容部を備え、
前記コンタクトは、平板状に形成されており、
前記コンタクトは、
前記ハウジング受容部内の前部側に位置して、前記ハウジング受容部内に前記相手側ハウジングが受容されたときに前記相手側コンタクトと接触して電気接続される接続部と、
前記接続部の下部に繋がって下方に延びて前記ハウジングの前端部近傍における前記基板に取り付けられる側に突出し、前記基板の信号端子に表面実装される第1の接合部と、
前記接続部の下部に繋がって前記ハウジング受容部の下方を後方に延び、前記ハウジングの後端部近傍まで延在する延在部と、
前記延在部の後端部近傍の下部に繋がって前記ハウジングの後端部近傍における前記基板に取り付けられる側に突出し、前記基板の信号端子に表面実装される第2の接合部とを備えたことを特徴とするコネクタ。」
と補正(下線は補正箇所を示すために請求人が付したものである。)するものである。

上記補正は、請求項1において、発明を特定するために必要な事項である「コンタクト」について、「前記接続部の下部に繋がって前記ハウジング受容部の下方を後方に延び、前記ハウジングの後端部近傍まで延在する延在部と、前記延在部の後端部近傍の下部に繋が」る第2の接合部とを備えるとの限定を付するものであり、かつ、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また、特許法第17条の2第3項、第4項に違反するところはない。
そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)否かについて検討する。

2 刊行物
(1)本願の出願前に頒布された特開2009-37955号公報(以下「刊行物1」という。)には、「ケーブル用電気コネクタ」に関して、図面(特に、図1、図2、図4参照。)と共に、次の事項が記載されている。

ア 「【0019】
図1は本実施形態のコネクタと相手コネクタとを示す断面図で、(A)はコネクタ嵌合前、(B)は嵌合後を示し、図2は両コネクタの端子のみを示す斜視図で、(A)はコネクタ嵌合前、(B)はコネクタ嵌合後の位置関係にあり、図3は、図2(B)におけるコネクタの端子の被規制部を示す斜視図であり、(A)は相手端子全体と本実施形態の端子の被規制部との関係を示し、(B)は被規制部のみを示し、(C)は被規制部の変形例を示している。
【0020】
図1(A)において、符号10は本実施形態のケーブル用コネクタであり、符号30はその相手方たる回路基板用コネクタである。
【0021】
コネクタ10は、圧着等により結線されたケーブルC付きの端子20がハウジング11に装着されている。かかるケーブル付端子20は、本実施形態では、紙面に直角な方向に所定間隔をもって複数、互いに平行に装着されている(図では一つのケーブル付端子しか図示されていない)。
【0022】
ハウジング11は、回路基板(図示は省略)に取り付けられた相手コネクタ30への嵌合のために垂下する嵌合部12を有し、上壁部11A側に横方向に貫通する端子挿入孔13が形成されている。この端子挿入孔13は、ケーブル付端子20がケーブルの長手方向に右方に向け正規位置まで挿入されたときに、挿入方向先方たる前方部分に端子20の接触部を主として収容するための前方収容部14と、その後方でケーブルCと圧着結線されている部分のための後方収容部15とを形成している。
【0023】
(省略)
【0024】
上記後方収容部15には、端子20の正規位置までの挿入を確実に行なうための移動部材16の進入部16Aが進入している。(省略)
【0025】
端子20自体は、ケーブルが結線される前には、図2(A)に示されるごとく、金属板を屈曲して作られており、後方から、ケーブルを被覆にて把持する把持部21、ケーブル心線に圧着結線される圧着部22、ハウジングに対してケーブル長手方向で係止する係止脚部23、ハウジング内で正規の位置を保つように支持される被支持部24、相手端子と接触する接触部25そして相手端子により上記長手方向で規制される被規制部26とを順に有している。
【0026】
(省略)接触部25は、下方に向けつぼまった後に広くなるような略逆U字脚状をなし、そのくびれ部25A同士間にて相手端子の板状の接触部を受け入れ挟圧接触するようになっている。
【0027】
上記接触部25の前方で該接触部25に隣接して設けられている被規制部26は、図3(A)そして図3(B)に見られるように、逆U字脚状に下方に延びる板状の二つの延出部27の先端側(下端側)同士が内方への屈曲により変向して突き当てられている部分で形成されている。この突き当て部分は、平坦な端面同士に限定されず、任意の形状で互いに噛み合うようにすることができる。上記延出部27とこの被規制部26とは、前後に延びる角形の筒状部28を形成している。すなわち、該被規制部26はこの角形筒状部28の底壁をなしている。そしてこの被規制部26の後端面が被規制面26Aを形成し、前後方向で相手端子の前端面と当接する位置関係にある。
【0028】
このような端子20にケーブルCが圧着結線され、この端子20がハウジングの端子挿入孔13に挿入される。(省略)
【0029】
ケーブル付端子20が組み込まれた上記コネクタ10が嵌合接続される相手コネクタ30は、図1(A)のごとく、上方に向け開口された受入凹部32が形成されたハウジング31の底壁31Aに端子40が保持されている。上記受入凹部32は、コネクタ10を受け入れるのに適合した形状の底壁31Aと周壁31Bにより形成されている。該周壁31Bは後部側で、上記コネクタ10の該移動部材16そしてハウジング外へ後方に延出するケーブルCの空間のために、切欠かれているが、その紙面に直角な方向での両側部分にテーパ状の押圧壁33が形成されている。該押圧壁33は、上記コネクタ10の移動部材16が所定の前進位置にまで挿入されていないままで、該コネクタ10がコネクタ30に嵌合されたときに、該移動部材16の後端面16Cと干渉して該後端面16Cに前方への押圧力を与えて、自動的に移動部材16を所定の前進位置にまで押し出すようになっている。この移動部材16の所定の前進位置までの移動は、コネクタ10の端子20の係止脚部23が前方収容部14内に確実に収まることを意味している。
【0030】
端子40は、図3(A)にも見られるように、金属板を屈曲して作られており、上方に延びる平板状の接触部41とその前方で上方に突出する前方突部42とを有し、両者間に凹部43を形成している。該凹部43の下方には前方基部44が設けられ、その下端から直角に屈曲された接続部45が延びている。上記前方基部44の後方側には、中央基部46そして後方基部47とが設けられており、後方基部47の下端からは直角に屈曲された固定部48が形成されている。該固定部48と上記接続部45とは上下方向でほぼ同一レベルに位置している。上記前方基部44、中央基部46、そして後方基部47は上記接触部41そして前方突部42と同一面をなす平坦な板状としてつながっている。上記前方基部44と中央基部46の間には、下方に開放された取付溝部49が、そして中央基部46と後方基部47との間には下方に開放された取付溝部50がそれぞれ形成されている。これらの取付溝部49,50の内縁には、それぞれ係止突起49A,50Aが設けられている。
【0031】
このような、上記端子40の前方突部42、接触部41は、前後方向で、上記コネクタ10の端子20の被規制部26、接触部25にそれぞれ対応した位置にある。したがって、端子40の接触部41の前端面は上記被規制部26の後端面たる被規制面26Aと前後方向で互いに規制し合う規制面41Aを形成する。したがって、接触部41は前端面に規制面41Aを形成する規制部でもある。
【0032】
上記端子40は、その取付溝部49,50で、ハウジング31の底壁31Aの上面から突出する係止壁31C,31Dに係合し、係止突起49A,50Aが係止壁31C,31Dに喰い込んで位置が固定されている。このようにハウジング31に取り付けられた上記端子40の接続部45そして固定部48は、ハウジング31の底壁31Aに形成された対応開口から下方に突出し、該底壁31Aの下面のレベルに位置している。
【0033】
次に、このような本実施形態のコネクタ10が相手コネクタ30に嵌合接続されると、図1(B)のごとく、コネクタ10の嵌合部12がコネクタ30の受入凹部32に収められる。この状態では、コネクタ10の端子20とコネクタ30の端子40は、接触部25,41同士が弾性接触し、被規制部26が凹部43内にあって該被規制部26の後端面たる被規制面26Aと接触部41の前端面たる規制面41Aとが至近位置にて前後方向で対面する(図2(B)をも参照)。図1(B)にて、被規制面26Aは紙面に対して直角方向に延び、規制面41Aは上下方向に延びているので、前後方向から見たときには、直線状に延びる被規制面26Aと規制面41Aとは交差する位置関係にある。
【0034】
したがって、両コネクタ10,30が嵌合接続されている状態で、コネクタ10のケーブルCが不用意に後方へ引かれると、コネクタ10は前後方向でのコネクタ30に対するガタの分だけ後方へ移動する。この移動により、コネクタ10の端子20の上記被規制面26Aはコネクタ30の端子40の上記規制面41Aと互いに交差する位置関係で当接する。端子40はハウジング31内で強固に保持されており、この端子40の規制面41Aが上記被規制面26Aを金属接触により規制するので、上記ケーブルCはかなり大きな力で引かれても、上記端子20,40同士は外れや損傷という事態にはならない。しかも、端子20,40同士の電気的接触には何ら影響を及ぼさない。」

イ 「【0039】
本発明では、被規制部は接触部に対して前方に位置していなくとも、後方に位置するようにしてもよい。図4の実施形態では、端子20の接触部25’の後方に隣接して筒状部28’を設け、その底壁に被規制部26’を形成している。これに対して、相手端子40には、接触部41’の後方に後方突部42’を設け、該接触部41’と後方突部42’との間に凹部43’を形成している。上記端子20の筒状部28’はこの凹部43’に収められ、被規制部26’の後端面たる被規制面26’Aは、ケーブルCが後方に引かれた際、上記後方突部42’の前端面たる規制面42’Aに当接する。」

ウ 図4には、図1ないし3に示された実施形態に対して、被規制部を接触部の後方に位置する実施形態が示されている(上記イ参照。)。そうすると、図1ないし3の実施形態についての上記アの「上方に向け開口された受入凹部32が形成されたハウジング31の底壁31Aに端子40が保持されている。上記受入凹部32は、コネクタ10を受け入れるのに適合した形状の底壁31Aと周壁31Bにより形成されている。該周壁31Bは後部側で、上記コネクタ10の該移動部材16そしてハウジング外へ後方に延出するケーブルCの空間のために、切欠かれている」(段落【0029】)との記載からみて、図4には、左方を後部側として、回路基板用コネクタ30のハウジング31が前後方向における後方および上下方向における上方に開放されることが示されているといえる。また、図4には、接触部41’が受入凹部32内の前部側に位置することが示されているといえる。

また、図4には、上記アの「ハウジング31に取り付けられた上記端子40の接続部45そして固定部48は、ハウジング31の底壁31Aに形成された対応開口から下方に突出し、該底壁31Aの下面のレベルに位置している。」(段落【0032】)との記載からみて、接続部45が接触部41’の下部に繋がって下方に延びてハウジング31の前端部近傍で取り付けられる側に突出すること、中央基部46及び後方基部47が前記接触部41’の下部に繋がって受入凹部32の下方を後方に延び、前記ハウジング31の中央部まで延在すること、及び固定部48が前記中央基部46及び後方基部47の後端部近傍の下部に繋がって前記ハウジング31の中央部で取り付けられる側に突出することが示されているといえる。

上記記載事項、認定事項及び図示内容を総合し、本願補正発明の記載ぶりに則って整理すると、刊行物1には、図4の実施形態について、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

「回路基板上に取り付けられるハウジング31と、前記ハウジング31に設けられて前記回路基板上の取付部に取り付けられる端子40とを備えて構成され、端子20を備えるケーブル用コネクタ10のハウジング11が前記ハウジング31に嵌合されることで前記端子40と前記端子20とが接触して電気接続される回路基板用コネクタ30であって、
前記ハウジング31は、前記回路基板に沿う前後方向における後方および前記回路基板に直交する上下方向における上方に開放されて嵌合された前記ハウジング11を嵌入する受入凹部32を備え、
前記端子40は、屈曲して形成されており、
前記端子40は、
前記受入凹部32内の前部側に位置して、前記受入凹部32内に前記ハウジング11が嵌入されたときに前記端子20と接触して電気接続される接触部41’と、
前記接触部41’の下部に繋がって下方に延びて前記ハウジング31の前端部近傍における前記回路基板に取り付けられる側に突出し、前記回路基板の取付部に取り付けられる接続部45と、
前記接触部41’の下部に繋がって前記受入凹部32の下方を後方に延び、前記ハウジング31の中央部まで延在する中央基部46及び後方基部47と、
前記中央基部46及び後方基部47の後端部近傍の下部に繋がって前記ハウジング31の中央部における前記回路基板に取り付けられる側に突出し、前記回路基板の取付部に取り付けられる固定部48とを備えた回路基板用コネクタ30。」

(2)原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された特開2010-176958号公報(以下「刊行物2」という。)には、「電気コネクタ」に関して、図面(特に、図1参照。)と共に、次の事項が記載されている。

「【0027】
また、各コンタクト20は、平板タブ状に形成されており、縁部が上になるように立てた状態で各コンタクト収容キャビティ13に取り付けられるようになっている。各コンタクト20は、図1に示すように、前後方向に延びる板状の基板部21を備えている。そして、各コンタクト20において、基板部21の後端縁から上方に向けて突出する固定部22が設けられるとともに、基板部21の略中央部から前端部にかけて上方に向けて突出する接触部24が設けられている。固定部22及び接触部24の対向する縁部には、ハウジング10の本体部11に圧入固定するためのバーブ23が設けられている。各コンタクト20は、金属板を打ち抜き加工することによって形成される。各コンタクト20は、図1の矢印で示すように、縁部が上になるように立てた状態でハウジング10の下方から固定部22及び接触部24のバーブ23がある部分を各コンタクト収容キャビティ13に挿入する。これにより、各コンタクト20は、バーブ23で圧入固定される。この際に、接触部24の残りの前側部分は、ハウジング10の本体部11の前面から前方に突出する。接触部24には、相手コンタクト70(図4参照)が接触する。
【0028】
そして、各コンタクト20の基板部21の下方には、後述する切欠26を除き前後方向に前端から後端に至るまで延びる半田接続部25が設けられている。この半田接続部25の下縁面は、回路基板PCB上に形成された導電パッド(図示せず)に半田接続される。
ここで、半田接続部25のうちの接触部24の下方に位置する部分には、回路基板PCBから離間する切欠26が設けられている。半田接続部25のうちの接触部24の下方に位置する部分に、回路基板PCBから離間する切欠26を設けることにより、各コンタクト20は、半田接続部25の下縁面のうちの切欠26を除く部分で回路基板PCB上の導電パッドに半田接続される。このため、半田接続部26のうちの接触部24の下方に位置する部分において半田接続される部分の面積が切欠分だけ小さくなり、その分だけ半田付け量が少なくなるので、半田接続部25から接触部に至るまで上昇する半田・フラックス上がりを低減できる。切欠26は、コンタクト20の打抜き加工時に同時に形成される。そして、コンタクト20に、溝などの特殊な加工やニッケルダム、穴あけなどの付加的な加工を要することはない。
【0029】
また、半田接続部25のうちの切欠26の領域の回路基板PCB上には、配線パターンを形成でき、配線設計の自由度を高めることができる。
また、この切欠26は、図1、図2(C)及び図3に示すように、切欠26の前側に位置し回路基板PCB上に半田接続される第1半田接続部25aと、切欠26の後側に位置し回路基板PCB上に半田接続される第2半田接続部26bとが残るように、半田接続部25のうちの接触部24の下方に位置する部分に設けられている。第1半田接続部25aは、切欠26からコンタクト20の前端に至るまで延び、第2半田接続部26b(当審注:「25b」の誤記)は、切欠26からコンタクト20の後端に至るまで延びる。このため、切欠26の前後の第1半田接続部25a及び第2半田接続部25bが回路基板PCB上に半田接続されるから、半田接続された状態でコンタクト20は両端支持構造となり、半田接続後に、基板部21が延びる前後方向と直交する方向に力が加わったときに容易に半田接続状態が解除され得ない。従って、切欠26を半田接続部25のうちの接触部24の下方に位置する部分に設けるに際して、比較的機械的強度の強い切欠26の設置の仕方とすることができる。切欠26の前部には第1半田接続部25aに至る約45°で傾斜する第1傾斜部26aが設けられ、また、切欠26の後部には第2半田接続部25bに至る約45°で傾斜する第2傾斜部26bが設けられている。」

(3)また、原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された特開2005-158729号公報(以下「刊行物3」という。)には、「ヘッダーコンタクト 」に関して、図面(特に、図1、図12参照。)と共に、次の事項が記載されている。

ア 「【0026】
ヘッダーコンタクト110は、導電性材料により形成されており、本体111と、この本体111から延びて相手側のソケットコネクタのソケットコンタクトに接触する接触部112と、この本体111から延びて実装対象物Bの導体パターンにハンダ付けされる第1接続部113と、この本体111から延びて実装対象物Bの導体パターンにハンダ付けされる第2接続部114とを備えている。このヘッダーコンタクト110はブレード形といわれ、接触部112が板状に形成されており、ソケットコンタクトがこの接触部112の厚さ方向の一方又は両方の端面に接触圧力をもって接触するようになっている。接触部112は板厚方向を幅方向に向けて本体111の幅方向の一端から奥行き方向の手前へ向かって延びている。第1接続部113は本体111の幅方向の他端から幅方向に延びており、先端の高さ方向の一端には実装対象物Bの導体パターンへの対向面113aが形成されている。第2接続部114は本体111の幅方向の他端から奥行き方向の手前に延びており、先端の高さ方向の一端には実装対象物Bの導体パターンへの対向面114aが形成されている。第1接続部113及び第2接続部114は実装対象物Bの表面の導体パターンにハンダ付けしてもよいし、実装対象物Bに形成された孔に挿入して導体パターンにハンダ付けしてもよい。この孔は実装対象物Bを貫通するかどうかを問わない。」

イ 「【0035】
(省略)また、図12に示したように、第1接続部113及び第2接続部114を実装対象物Bの信号用導体パターンSPにハンダ付けすれば、第1接続部113のハンダ付け部115及び第2接続部114のハンダ付け部116がそれぞれにヘッダーハウジング120の固定機能と信号の接続機能の両方を発揮する。そして、ソケットコネクタ200を挿入又は抜去するときに生じる負荷は第1接続部113のハンダ付け部115及び第2接続部114のハンダ付け部116にそれぞれ分散してかかる。その結果、ハンダ付け部115、116の剥離等が防止されて信号接続の機能が確保され、ヘッダーコネクタ100の電気的信頼性が向上する。さらに、ヘッダーハウジング120に補強金具などのようにヘッダーコンタクト110とは別の部材を設けてハンダ付けするものではないので、部品点数が増すことがなく、製造工程の簡略化、管理工数の低減が図られる。」

3 対比
本願補正発明と引用発明とを対比すると、後者の「回路基板」は前者の「基板」に相当し、以下同様に、「ハウジング31」は「ハウジング」に、「端子40」は「コンタクト」に、「端子20」は「相手側コンタクト」に、「ケーブル用コネクタ10のハウジング11」は「相手側ハウジング」に、「回路基板用コネクタ30」は「コネクタ」に、「嵌入する」は「受容する」に、「受入凹部32」は「ハウジング受容部」に、「接触部41’」は「接続部」に、「接続部45」は「第1の接合部」に、「中央基部46及び後方基部47」は「延在部」に、「固定部48」は「第2の接合部」にそれぞれ相当する。

また、後者の「取付部に取り付けられる」と前者の「信号端子に表面実装される」とは、「取付部に取り付けられる」という限りで共通する。

したがって、両者は、
「基板上に取り付けられるハウジングと、前記ハウジングに設けられて前記基板上の取付部に取り付けられるコンタクトとを備えて構成され、相手側コンタクトを備える相手側ハウジングが前記ハウジングに嵌合されることで前記コンタクトと前記相手側コンタクトとが接触して電気接続されるコネクタであって、
前記ハウジングは、前記基板に沿う前後方向における後方および前記基板に直交する上下方向における上方に開放されて嵌合された前記相手側ハウジングを受容するハウジング受容部を備え、
前記コンタクトは、
前記ハウジング受容部内の前部側に位置して、前記ハウジング受容部内に前記相手側ハウジングが受容されたときに前記相手側コンタクトと接触して電気接続される接続部と、
前記接続部の下部に繋がって下方に延びて前記ハウジングの前端部近傍における前記基板に取り付けられる側に突出し、前記基板の取付部に取り付けられるされる第1の接合部と、
前記接続部の下部に繋がって前記ハウジング受容部の下方を後方に延びる延在部と、
前記延在部の後端部近傍の下部に繋がって前記基板に取り付けられる側に突出し、前記基板の取付部に取り付けられるされる第2の接合部とを備えたコネクタ。」
である点で一致し、以下の点で相違している。

〔相違点〕
本願補正発明は、コンタクトは「平板状に」形成されており、第1の接合部が基板の「信号端子」に「表面実装」され、延在部が「ハウジングの後端部近傍まで延在」し、第2の接合部が「前記ハウジングの後端部近傍における」前記基板の「信号端子」に「表面実装される」のに対し、
引用発明は、端子40は屈曲して形成されており、接続部45が回路基板の取付部に取り付けられ、中央基部46及び後方基部47がハウジング31の中央部まで延在し、固定部48が前記ハウジング31の中央部における前記回路基板の取付部に取り付けられる点。

4 当審の判断
そこで、相違点を検討する。
刊行物2には、コンタクト20が平板タブ状に形成されること、及び相手コンタクト70が接触する接触部24の下方に位置する部分に切欠26を設け、切欠26からコンタクト20の前端に至るまでを第1半田接続部25aとし、切欠26からコンタクト20の後端に至るまでを第2半田接続部25bとし、回路基板PCB上に形成された導電パッドに半田接続することで、コンタクト20は両端支持構造となり、半田接続後に、基板部21が延びる前後方向と直交する方向に力が加わったときに容易に半田接続状態が解除され得ないことがそれぞれ記載されている。

また、刊行物3には、ヘッダーコンタクト110が実装対象物Bの導体パターンにハンダ付けされる第1接続部113と第2接続部114とを備えることで、ソケットコネクタ200を挿入又は抜去するときに生じる負荷がそれぞれに分散され、ハンダ付け部の剥離等が防止されるとともに、補強金具などのように別の部材を設けてハンダ付けするものではないので、部品点数が増すことがなく、製造工程の簡略化、管理工数の低減が図られることが記載されている。

一方、本願明細書には、相違点に係る本願補正発明の「延在部が『ハウジングの後端部近傍まで延在』し、第2の接合部が『前記ハウジングの後端部近傍における』前記基板の『信号端子』に『表面実装される』」との事項に関して、「基板側コネクタ1からケーブル側コネクタ2を抜去するとき、特に底部11Bの後側部分に基板7から基板側コネクタ1を引き離そうとする外力が作用しやすい。そこで、本発明を適用した基板側コネクタ1においては、基板側コンタクト30が前側接合部33に加えて後側接合部38においても(ケーブル90の延在方向両端部において)基板7と接合される構成となっている。そのため、固定金具を用いることなく基板7から基板側コネクタ1を引き離そうとする外力に抗して、基板側コネクタ1を基板7に保持することができる。」(段落【0037】)との記載がある。

この記載によれば、相違点に係る本願補正発明の上記事項は、基板側コネクタからケーブル側コネクタを抜去するときに底部の後側部分において特に外力が作用しやすいとの技術的課題を解決するためのものと解される。

そうすると、刊行物2及び3には、このような技術的課題についての記載や示唆はない。

また、刊行物1には、「ハウジング31に取り付けられた上記端子40の接続部45そして固定部48は、ハウジング31の底壁31Aに形成された対応開口から下方に突出し、該底壁31Aの下面のレベルに位置している。」(段落【0032】)との記載があり、この記載によれば、端子40の固定部48は、ハウジング31の底壁31Aに形成された開口から下方に突出して該底壁31Aの下面のレベルに位置することが分かるが、刊行物1の図4には、ハウジング31の底壁31Aの後部側(図4の左方)には、ケーブル用コネクタ10の嵌合部12を受け入れる凹部と、その左方に中央部に比して肉厚に形成されケーブル用コネクタ10の移動部材16の下面と僅かな隙間を介して対向する肉厚部が形成されることが示されている。

そうすると、上記凹部及び肉厚部を備えた底壁31Aの後部側に、中央基部46及び後方基部47を延在させ、端子40の固定部48を突出させるための開口を形成することは、回路基板用コネクタ30の設計変更の域を超えることになるから、当業者であっても、容易に着想し得るものではない。

したがって、刊行物2及び刊行物3に接した当業者が、引用発明において、相違点に係る本願補正発明の上記事項を採ることは、容易に想到し得たということができない。

また、本願補正発明が奏する効果は、引用発明、刊行物2に記載された事項及び刊行物3に記載された事項から、当業者が予測できる範囲内のものということができない。

(4)まとめ
したがって、本願補正発明は、引用発明、刊行物2に記載された事項及び刊行物3に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許出願の際独立して特許を受けることができるものである。

よって、本件補正のうち請求項1についてする補正事項は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合する。

そして、本件補正のその余の補正事項についても、特許法第17条の2第3項ないし第6項に違反するところはない。

5 むすび
以上のとおりであるから、本件補正は、特許法第17条の2第3項ないし第6項の規定に適合する。

第3 本願発明について
本件補正は、上記のとおり、特許法第17条の2第3項ないし第6項の規定に適合するから、本願の請求項1ないし3に係る発明は、本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定されたとおりのものである。
そして、本願については、原査定の拒絶理由を検討してもその理由によって拒絶すべきものとすることはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2015-06-15 
出願番号 特願2011-188594(P2011-188594)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H01R)
P 1 8・ 575- WY (H01R)
最終処分 成立  
前審関与審査官 竹下 晋司  
特許庁審判長 森川 元嗣
特許庁審判官 冨岡 和人
小関 峰夫
発明の名称 コネクタ  
代理人 大西 正悟  

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