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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) F16C
管理番号 1302047
審判番号 不服2014-9238  
総通号数 188 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-08-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-05-19 
確定日 2015-06-11 
事件の表示 特願2011-192726「スピンドル装置」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 3月21日出願公開、特開2013- 53689〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成23年9月5日の出願であって、平成26年2月26日付け(同年2月28日:発送日)で拒絶査定がなされ、これに対し、同年5月19日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、その請求と同時に手続補正がなされたものである。その後、当審において平成27年1月22日付けで拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)を通知したところ、同年3月19日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。
そして、本願の請求項1及び2に係る発明は、平成27年3月19日に手続補正された特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりのものである。
「【請求項1】
ハウジングと、
前記ハウジングに収納され、スラストディスクを備えた主軸と、
前記主軸のラジアル方向の支持を非接触で行うラジアル軸受部、及び、前記スラストディスクのスラスト方向の支持を非接触で行うスラスト軸受部を一体的に備えた軸受と、
前記スラスト軸受部を前記主軸の軸方向に貫通し、前記軸受と前記ハウジングとを固定する固定ボルトと、
前記主軸に設けられた回転子、及び、前記ハウジングの内周側に前記回転子と対向して設けられた固定子を有するモータと、を有するスピンドル装置であって、
前記軸受は、
前記ラジアル軸受部と前記スラスト軸受部に跨って設けられた軸受本体部と、
前記ラジアル軸受部において前記軸受本体部の内周側に設けられ、前記主軸の表面に対向して配置されたラジアル軸受用スリーブと、
前記スラスト軸受部において前記軸受本体部の内周側に設けられ、前記スラストディスクの表面に対向して配置された断面視略L字型のスラスト軸受用スリーブと、を有すると共に、
流体を噴出して前記主軸及び前記スラストディスクを支持する流体軸受であり、
前記ハウジングは、
前記軸受に前記流体を供給するための第1供給路を有し、
前記スラスト軸受部は、
前記固定ボルトにより前記ハウジングの負荷側に固定され、前記第1供給路に連通する第2供給路を有し、
前記ハウジングと前記スラスト軸受部との接合面において前記第1供給路と前記第2供給路との連通部を密封するOリングを設置するための第1凹部が、前記ハウジングの負荷側の表面に設けられており、
前記スピンドル装置は、
前記固定ボルトにより前記スラスト軸受部の負荷側に固定されることで前記スラストディスクの外周側に配置され、前記第2供給路に連通する第3供給路を有するスペーサと、 前記固定ボルトにより前記スペーサの負荷側に固定されることで前記スラストディスクを挟んで前記スラスト軸受部と対向配置され、前記第3供給路に連通する第4供給路を有する負荷側スラスト軸受と、をさらに有し、
前記スラスト軸受部と前記スペーサとの接合面において前記第2供給路と前記第3供給路との連通部を密封するOリングを設置するための第2凹部が、前記スラスト軸受部の負荷側の表面に設けられ、
前記スペーサと前記負荷側スラスト軸受との接合面において前記第3供給路と前記第4供給路との連通部を密封するOリングを設置するための第3凹部が、前記スペーサの負荷側の表面に設けられている
ことを特徴とするスピンドル装置。」

2.刊行物の記載事項
(1)当審拒絶理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開平1-98710号公報(以下、「刊行物1」という。)にはスピンドル装置の静圧気体軸受に関し、図面とともに以下の事項が記載されている。(下線は、当審で付与。以下同様。)
ア.公報1ページ右下欄4行?8行
「〔産業上の利用分野〕
この発明は、高速に回転するフランジを有する回転体をコンプレッサ等の外部の給気源から供給された気体によって非接触に支持する静圧気体軸受の構成に関する。」

イ.公報1ページ右下欄9行?2ページ左上欄7行
「〔従来技術〕
従来のこの種の静圧気体軸受の一般的な構造としては、第3図に示すものが周知である。
第3図において、フランジ1を有する回転体2はビルトインモータ3により回転駆動され、コンプレッサ等の給気源4にて圧縮された気体がフィルタ5及びレギュレータ6を通過した後、気体供給口7から気体軸受部に供給される。
気体軸受部は、ラジアル軸受部材8,ラジアル軸受部81とスラスト軸受部91とを有する軸受部材10,及び回転体2のフランジ1に対向するスラスト軸受部材9から構成されている。気体供給口7から供給された気体は、ラジアル軸受部材8,軸受部材10,及びスラスト軸受部材9に形成された微小な径を有する給気孔8a,81a,91a、及び9aから回転体2あるいはそのフランジ1に向けて放出され、回転体2をラジアル軸受部材8,軸受部材10,スラスト軸受部材9に対して非接触状態にして支持している。」

ウ.公報3ページ右下欄1行?4ページ左上欄8行
「第1図に本発明にかかわる静圧気体軸受の第1の実施例を示す。
第1図において、50は円筒状の軸受部材であって、そのラジアル軸受部51とスラスト軸受部52とは一体になっている。このため、回転体54の外周面に嵌合するラジアル軸受部51のラジアル軸受面511と回転体54のフランジ55の一方の端面551に対向するスラスト軸受部52のスラスト軸受面521とに同時に機械加工を施すことができ、ラジアル軸受面511とスラスト軸受面521との間の直角度を極めて精度よく仕上げることができる。
この軸受部材50には、フレーム58に形成され外部の給気源と接続されている気体供給口59に連通する給気孔51a,52aが形成されており、供給された気体は、それぞれの気体供給穴51a,52aから回転体54の外周面およびフランジ55の端面551に向けて放出される。
・・・
さらに、軸受部材50には、そのスラスト軸受部52から回転体54の半径方向に突出する段状の取付部56が形成されており、この取付部56をフレーム58の端面に当接させてボルトで固定することにより、軸受部材50がフレーム58に取付けられる。」

エ.公報4ページ右上欄3行?同15行
「第2図に本発明にかかわる静圧気体軸受の第2の実施例を示す。説明を簡単にするために第1の実施例と同様の部分には同一符号を付して説明を省略する。
図に示すように第2の実施例においては、軸受部材50のラジアル軸受部51と取付部56とを振動的に切離すための複数個のリング状の溝62がラジアル軸受部51とスラスト軸受部52の間の位置に軸心の方向に適度の間隔をおいて形成されている。そして、このリング状の溝62を避けるようにして給気孔52aと連通する気体供給口61が軸受部材50の取付部56の外方側からスラスト軸受部52に向けて形成されている。」

オ.記載事項ウ.及びエ.並びに第2図の図示内容から第2の実施例について、以下のことが認定できる。
・回転体54はフレーム58に収納されている。

・ラジアル軸受部51は回転体54のラジアル方向の支持を非接触で行い、スラスト軸受部52はフランジ55のスラスト方向の支持を非接触で行うものである。

・ボルト57は、スラスト軸受部52を回転体54の軸方向に貫通し、軸受部材50とフレーム53とを固定している。

・フレーム58は、軸受部材50に気体を供給するための気体供給路を有し、スラスト軸受部52は、ボルト57によりフレーム58の負荷側に固定され、該気体供給路に連通するスラスト軸受部52用の気体供給路を有している。

カ.第3図には、スラスト軸受部91の負荷側に固定されることでフランジ1の外周側に配置され、スラスト軸受部91用の気体供給路に連通する連通路を有するスペーサと、スペーサの負荷側に固定されることでフランジ1を挟んでスラスト軸受部91と対向配置され、前記連通路に連通する負荷側の気体供給路を有する負荷側スラスト軸受が示されている。

キ.第2の実施例に関し、記載事項エ及び第2図には、フランジ55からの負荷側の構成(右側の構成)が明示されていないが、フランジ55が外部に露出されることはなく、かつボルト57の配置位置からみてもフランジ55の負荷側にもスラスト軸受部を有するといえる。そして、負荷側にもスラスト軸受部を備えるためには、該負荷側のスラスト軸受部へ気体を送るための気体供給路が必須な構成となるところ、第2の実施例は、第3図に示された従来例を前提として構成されているから、第2の実施例のフランジ55からの負荷側の構成は、スラスト軸受部52用の気体供給路を分岐させた上で、上記認定事項カ.の構成に倣うものが想定できる。
以上のことから、第2の実施例として、ボルト57によりスラスト軸受部52の負荷側に固定されることでフランジ55の外周側に配置され、スラスト軸受部52用の気体供給路に連通する連通路を有するスペーサと、ボルト57によりスペーサの負荷側に固定されることでフランジ55を挟んでスラスト軸受部52と対向配置され、連通路に連通する負荷側の気体供給路を有する負荷側スラスト軸受を有しているものが理解できる。

ク.第3図には、回転体2に設けられた回転子、及び、フレームの内周側に回転子と対向して設けられた固定子を有するビルトインモータ3が示されている。

ケ.第2の実施例の回転体54として、上記認定事項クの従来技術に倣い、回転体2に設けられた回転子、及び、フレームの内周側に回転子と対向して設けられた固定子を有するビルトインモータ3により駆動されるものが理解できる。

これら記載事項、認定事項及び図示内容を総合し、刊行物1の第2の実施例を本願発明の記載ぶりに倣って整理すると、刊行物1には、次の発明(以下、「刊行物発明」という。)が記載されている。
「フレーム58と、
前記フレーム58に収納され、フランジ55を備えた回転体54と、
前記回転体54のラジアル方向の支持を非接触で行うラジアル軸受部51、及び、前記フランジ55のスラスト方向の支持を非接触で行うスラスト軸受部52を一体的に備えた軸受部材50と、
前記スラスト軸受部52を前記回転体54の軸方向に貫通し、前記軸受部材50と前記フレーム58とを固定するボルト57と、
前記回転体54に設けられた回転子、及び、前記フレーム58の内周側に前記回転子と対向して設けられた固定子を有するビルトインモータと、を有するスピンドル装置であって、
軸受部材50は、
気体を供給して前記回転体54及び前記フランジ55を支持する静圧気体軸受であり、
前記フレーム58は、
前記軸受部材50に前記気体を供給するための気体供給路を有し、
前記スラスト軸受部52は、
前記ボルト57により前記フレーム58の負荷側に固定され、前記気体供給路に連通するスラスト軸受部52用の気体供給路を有し、
前記スピンドル装置は、
前記ボルト57によりスラスト軸受部52の負荷側に固定されることで前記フランジ55の外周側に配置され、前記スラスト軸受部52用の気体供給路に連通する連通路を有するスペーサと、
前記ボルト57により前記スペーサの負荷側に固定されることでフランジ55を挟んで前記スラスト軸受部52と対向配置され、前記連通路に連通する負荷側の気体供給路を有する負荷側スラスト軸受と、をさらに有するスピンドル装置。」

(2)当審拒絶理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2001-304259号公報(以下、「刊行物2」という。)には、「静圧空気軸受スピンドル」に関し、図面とともに以下の事項が記載されている。
サ.「【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところが、従来技術では上記のような対策を取っても、主軸と軸受面が高速回転中に接触したときに、摩擦熱により容易に変形や焼付き、かじり付きあるいは溶着が生じ、主軸の回転が急停止してロックするといった事故が発生するという問題があった。この様な事故が生じると静圧空気軸受スピンドルは、ダメージを受け。使用が不能となる。本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、高速回転中に主軸と軸受面が接触したときに、主軸と軸受面との間に溶着がなく、主軸と軸受面の耐焼付性や耐磨耗性を改善した信頼性の高い静圧空気軸受スピンドルを提供することを目的とする。」

シ.「【0005】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施例を図に基づいて説明する。図1は本発明の実施例による静圧空気軸受スピンドルの上半分を示した側断面図である。本発明が従来と同じ構成要素については、同一符号を付して説明を省略し、異なる点のみを説明する。本発明が従来と異なる点は、以下のとおりである。静圧空気軸受スピンドルの主軸2はステンレス鋼を用いて形成され、主軸の表面、すなわちジャーナル軸受3、4及びスラスト軸受5、6に対向する箇所に摩擦係数の極めて小さい非晶質ダイヤモンド層19(DLC)のコーティングが施されている。また、ジャナール軸受3、4は、融点の高い黒鉛材を使用した軸受スリーブ17を接着により固定し、給気ノズル穴12を設けている。一方、スラスト軸受5、6は同じく黒鉛材を使用したスラスト板18を接着で固定し、給気ノズル13を設けている。また、非晶質ダイヤモンド層19の膜厚を0.5?1.5μmとすると共に、さらに、主軸2の表面のショア硬度を60?70としたものである。」

ス.【図1】には、断面視略L字型のスラスト板18が示されている。

3.対比・判断
本願発明と刊行物発明とを対比すると、その意味、機能または構造からみて、
後者の「フレーム58」は前者の「ハウジング」に相当し、以下同様に、「フランジ55」は「スラストディスク」に、「回転体54」は「主軸」に、「ラジアル軸受部51」は「ラジアル軸受部」に、「スラスト軸受部52」は「スラスト軸受部」に、「軸受部材50」は「軸受」に、「ボルト57」は「固定ボルト」に、「ビルトインモータ」は「モータ」に、「気体を供給して」は「流体を噴出して」に、「静圧気体軸受」は「流体軸受」に、「気体供給路」は「第1供給路」に、「スラスト軸受部52用の気体供給路」は「第2供給路」に、「連通路」は「第3供給路」に、「負荷側の気体供給路」は「第4供給路」に、それぞれ相当する。

そうすると、両者は、本願発明の用語を用いて表現すると、次の点で一致する。
[一致点]
「ハウジングと、
前記ハウジングに収納され、スラストディスクを備えた主軸と、
前記主軸のラジアル方向の支持を非接触で行うラジアル軸受部、及び、前記スラストディスクのスラスト方向の支持を非接触で行うスラスト軸受部を一体的に備えた軸受と、
前記スラスト軸受部を前記主軸の軸方向に貫通し、前記軸受と前記ハウジングとを固定する固定ボルトと、
前記主軸に設けられた回転子、及び、前記ハウジングの内周側に前記回転子と対向して設けられた固定子を有するモータと、を有するスピンドル装置であって、
前記軸受は、
流体を噴出して前記主軸及び前記スラストディスクを支持する流体軸受であり、
前記ハウジングは、
前記軸受に前記流体を供給するための第1供給路を有し、
前記スラスト軸受部は、
前記固定ボルトにより前記ハウジングの負荷側に固定され、前記第1供給路に連通する第2供給路を有し、
前記スピンドル装置は、
前記固定ボルトにより前記スラスト軸受部の負荷側に固定されることで前記スラストディスクの外周側に配置され、前記第2供給路に連通する第3供給路を有するスペーサと、 前記固定ボルトにより前記スペーサの負荷側に固定されることで前記スラストディスクを挟んで前記スラスト軸受部と対向配置され、前記第3供給路に連通する第4供給路を有するスピンドル装置。」

そして、両者は次の点で相違する。
[相違点1]
本願発明の軸受は、「前記ラジアル軸受部と前記スラスト軸受部に跨って設けられた軸受本体部と、前記ラジアル軸受部において前記軸受本体部の内周側に設けられ、前記主軸の表面に対向して配置されたラジアル軸受用スリーブと、前記スラスト軸受部において前記軸受本体部の内周側に設けられ、前記スラストディスクの表面に対向して配置された断面視略L字型のスラスト軸受用スリーブと、を有する」のに対し、
刊行物発明の軸受部材50は、ラジアル軸受用スリーブ及び断面視略L字型のスラスト軸受用スリーブを有していない点。

[相違点2]
本願発明は、「ハウジングとスラスト軸受部との接合面において第1供給路と第2供給路との連通部を密封するOリングを設置するための第1凹部が、ハウジングの負荷側の表面に設けられており」、かつ「前記スラスト軸受部と前記スペーサとの接合面において前記第2供給路と前記第3供給路との連通部を密封するOリングを設置するための第2凹部が、前記スラスト軸受部の負荷側の表面に設けられ、前記スペーサと前記負荷側スラスト軸受との接合面において前記第3供給路と前記第4供給路との連通部を密封するOリングを設置するための第3凹部が、前記スペーサの負荷側の表面に設けられている」のに対し、
刊行物発明は、かかる構造を有していない点。

[相違点1についての判断]
刊行物2には、静圧空気軸受スピンドルにおいて、ジャーナル軸受4(本願発明のラジアル軸受部に相当)の内周側に設けられ、主軸2の表面に対向して配置された軸受スリーブ17(本願発明のラジアル軸受用スリーブに相当)と、スラスト軸受6(本願発明のスラスト軸受部に相当)の内周側に設けられ、ディスク部2a(本願発明のスラストディスクに相当)の表面に対向して配置された断面視略L字型のスラスト板18(本願発明のスラスト軸受用スリーブに相当)を設けることで、主軸と軸受面の耐焼付性や耐磨耗性を改善させることが記載されている。(以下、「刊行物2に記載されている事項」という。)
刊行物発明と刊行物2に記載されている事項とは、スピンドルの静圧気体軸受の技術分野に属する点で共通し、かつ、刊行物発明は、刊行物1に「ホワールが発生するとそれ以上に回転数を上昇させても半径方向軸変位は小さくならず、極端な場合には回転体2とラジアル軸受部材8とが接触し焼き付けを起こすことになる。」と記載されているように、回転体とラジアル軸受部材との焼き付けを防止するものであるから両者は課題の点でも共通する。 したがって、刊行物発明に刊行物2に記載されている事項を適用する動機付けは十分ある。
そして、刊行物発明に刊行物2に記載されている事項を適用し、刊行物発明のラジアル軸受部51とスラスト軸受部52を一体的に備えた軸受部材50をラジアル軸受部51とスラスト軸受部52に跨って設けられた軸受本体部とし、該軸受部材50のラジアル軸受部51の内周側に軸受スリーブを設け、軸受部材50のスラスト軸受部52の内周側に断面視略L字型のスラスト板を設ける構造とすることは当業者であれば容易に想到し得たことである。
よって、刊行物発明において、上記相違点1に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

[相違点2についての判断]
互いに気体の供給路を有する部材の接合面において気体が漏れることを防止することは当然考慮に入れることであり、その具体的手段として、刊行物1の第7図に示されるように、一方の接合面に、気体の連通部を密封するOリングを設置するための凹部を設けることは従来周知の技術である。(以下、「周知技術」という。)
また、Oリングを設置するための凹部を、接合面を形成する各部材のうち、どちらの部材側に設けるかは設計的事項である。
そして、刊行物発明において、互いに気体の供給路を有する部材の接合面は、フレーム58とスラスト軸受部52との接合面、スラスト軸受部52とスペーサとの接合面、及びスペーサと負荷側スラスト軸受との接合面であるから、上記各接合面に上記周知技術を適用し、フレーム58とスラスト軸受部52との接合面において気体供給路とスラスト軸受部52用の気体供給路との連通部を密封するOリングを設置するための凹部を、フレーム58の負荷側の表面に設け、スラスト軸受部52とスペーサとの接合面においてスラスト軸受部52用の気体供給路と連通路との連通部を密封するOリングを設置するための凹部を、スラスト軸受部52の負荷側の表面に設け、スペーサと負荷側スラスト軸受との接合面において連通路と負荷側用の気体供給路との連通部を密封するOリングを設置するための凹部を、スペーサの負荷側の表面に設けることは、当業者であれば適宜になし得ることである。
よって、刊行物発明において、上記相違点2に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

本願発明の奏する作用効果をみても、刊行物発明、刊行物2に記載されている事項及び周知技術から予測し得る範囲内のものであって、格別でない。

よって、本願発明は、刊行物発明、刊行物2に記載されている事項及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願発明(請求項1に係る発明)は、刊行物発明、刊行物2に記載されている事項及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
そして、本願の請求項1に係る発明が特許を受けることができない以上、本願の請求項2に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-04-10 
結審通知日 2015-04-13 
審決日 2015-04-28 
出願番号 特願2011-192726(P2011-192726)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (F16C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 関口 勇  
特許庁審判長 森川 元嗣
特許庁審判官 島田 信一
小柳 健悟
発明の名称 スピンドル装置  
代理人 益田 博文  

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