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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01P
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01P
管理番号 1302049
審判番号 不服2014-10450  
総通号数 188 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-08-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-06-04 
確定日 2015-06-11 
事件の表示 特願2009-251057「同軸バンドパスフィルタ、同軸共振器およびマイクロ波通信機器」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 5月12日出願公開、特開2011- 97463〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成21年10月30日の出願であって,原審において平成25年8月16日付けで拒絶理由が通知され,同年10月18日に意見書が提出されるとともに同日付けで手続補正がなされ,同年11月14日付けで拒絶理由が通知され,これに対して平成26年1月17日に意見書が提出されるとともに同日付けで手続補正がなされたが,同年2月26日に同年1月17日付けの手続補正が却下されるとともに拒絶査定がなされ,これに対し,同年6月4日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに,同日付けで手続補正がなされたものである。



第2 補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成26年6月4日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.本願発明と補正後の発明
平成26年6月4日付け手続補正(以下,「本件補正」という。)は,平成25年10月18日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項4に記載された,

「 接地したハウジング内に内蔵することにより電気的に密封した空間内に配置し,かつ,一端が前記ハウジングに接続され,他端が前記ハウジングからあらかじめ定めた間隔だけ離れた位置で開放状態にされたあらかじめ定めた長さの共振棒を少なくとも備えた同軸共振器において,
前記空間内に配置し,かつ,一端が前記ハウジングに接続され,他端が外部端子に接続されたトランスフォーマを備え,
前記ハウジングを形成する材料と,前記共振棒及び前記トランスフォーマを形成する材料とを,互いの熱膨張係数が異なる材料とすることを特徴とする同軸共振器。」

という発明(以下,「本願発明」という。)を,本件補正に係る手続補正書の特許請求の範囲の請求項3に記載された,

「 接地したハウジング内に内蔵することにより電気的に密封した空間内に配置し,かつ,一端が前記ハウジングに接続され,他端が前記ハウジングからあらかじめ定めた間隔だけ離れた位置で開放状態にされたあらかじめ定めた長さの共振棒を少なくとも備えた同軸共振器において,
前記空間内に配置し,かつ,一端が前記ハウジングに接続され,他端が外部端子に接続されたトランスフォーマを備え,
前記ハウジングを形成する材料と,前記共振棒及び前記トランスフォーマを形成する材料とを,互いの熱膨張係数が異なる材料とし,
前記ハウジングの材料として軽量性および切削性に富む材料を使用し,前記共振棒及び前記トランスフォーマの材料として熱膨張係数が小さい材料を使用し,
温度が低くなった場合,前記共振棒で与えられる誘導成分が小さくなる変化量とほぼ同程度に,前記ハウジングと前記共振棒の他端との間隔で与えられる容量成分が大きく変化し,温度が高くなった場合,前記共振棒で与えられる誘導成分が大きくなる変化量とほぼ同程度に,前記ハウジングと前記共振棒の他端との間隔で与えられる容量成分が小さく変化することを特徴とする同軸共振器。」(下線は,請求人が手続補正書において補正箇所を示すものとして付加したものを援用したものである。)

という発明(以下,「補正後の発明」という。)に補正することを含むものである。


2.補正の適否
(1)新規事項の有無,補正の目的要件,シフト補正の有無
上記補正の内容は,「ハウジングの材料」と「トランスフォーマの材料」に関して「前記ハウジングの材料として軽量性および切削性に富む材料を使用し,前記共振棒及び前記トランスフォーマの材料として熱膨張係数が小さい材料を使用」することを特定する補正と,「共振棒」と「ハウジング」の特性に関して「温度が低くなった場合,前記共振棒で与えられる誘導成分が小さくなる変化量とほぼ同程度に,前記ハウジングと前記共振棒の他端との間隔で与えられる容量成分が大きく変化し,温度が高くなった場合,前記共振棒で与えられる誘導成分が大きくなる変化量とほぼ同程度に,前記ハウジングと前記共振棒の他端との間隔で与えられる容量成分が小さく変化すること」を特定する補正である。
そして,上記補正の内容は,願書に最初に添付された発明の詳細な説明の【0028】,及び【0038】?【0042】に記載されているから,上記補正は願書に最初に添付された発明の詳細な説明の範囲内においてなされたものであり,本件補正前の発明の構成をさらに限定する補正であるから,特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に該当し,特許法第17条の2第3項(新規事項),及び同法第17条の2第5項第2号(補正の目的)の規定に適合している。また,特許法第17条の2第4項(シフト補正)の規定に違反しないことも明らかである。


(2)独立特許要件
上記補正は,特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから,補正後の発明が特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるのかどうかについて,以下に検討する。


[補正後の発明]
上記「1.本願発明と補正後の発明」の項において,「補正後の発明」として認定したとおりである。

[引用発明]
原査定の拒絶理由に引用された特開平11-317604号公報(以下,「引用例1」という。)には,図面とともに以下の事項が記載されている。

イ.「【0002】
【従来の技術】図7は従来の同軸フィルタ入出力回路の構造の一例を示す平面図である。これはインタディジタル型同軸フィルタの入出力回路で,外導体(ハウジング)1と,この外導体1の内部に設けられた共振棒2及びトランスフォーマ3とからなる内導体とから構成される。
【0003】このトランスフォーマ3は一方の端部が開放端3aとなっており,他方の端部が外導体1の内壁面と接触する短絡端3bとなっている。
【0004】そして,トランスフォーマ3の開放端3aにRFコネクタ等の中心導体4を接合して信号を取出している。
【0005】即ち,トランスフォーマ3からの信号の取出しは,トランスフォーマ3のインピーダンス,自己容量,外導体1及び共振棒2との相互容量及び共振周波数を変えないようにするため,トランスフォーマ3の開放端3aの面の中心よりこの面と直交する方向に信号を取出していた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかし,従来の同軸フィルタ入出力回路では,第1に入出力端子(中心導体4)の位置は電気特性から決まるトランスフォーマ3の位置,トランスフォーマ3の開放端3aの向きにより決まってしまうため,他の回路と接続する際に外部で接続ラインやケーブルを追加する必要があり,装置が複雑かつ大型化するという欠点があった。
【0007】図8及び図9は従来のフィルタの段数とトランスフォーマの開放端の向きとの関係を示す模式図である。
【0008】図8(A)はインタディジタル型同軸フィルタ入出力回路(段数は4段)の平面図,図8(B)は同回路の正面図であり,図9はインタディジタル型同軸フィルタ入出力回路(段数は3段)の平面図である。
【0009】なお,図8及び図9の各構成部分は図7記載の構成部分と同様であるため,同一番号を付し,その説明を省略する。」(2頁1?2欄)

ロ.「【0021】この線路導体7は両側の外導体1(接地されている)と、・・・・。」(3頁3欄)

上記摘記事項の記載及び図7?9並びにこの分野における技術常識を考慮すると,

a.上記摘記事項イ.及び図7?9には,従来技術として同軸フィルタ入出力回路が記載されており,共振棒が特定の周波数により共振する同軸フィルタが記載されているといえる。
b.そして,当該同軸フィルタは,上記摘記事項イ.の【0002】段落によれば外導体(ハウジング)1を有しており,図7?9は平面図として記載されていて,外観の詳細は明確ではないものの,同軸フィルタとして動作する以上,電気的に密封された構造になっていると考えるのが自然である。
c.上記摘記事項イ.の【0004】段落に「トランスフォーマ3の開放端3aにRFコネクタ等の中心導体4を接合して信号を取出している」と記載されていることから,通常接地側として構成されるRFコネクタ等の外側導体が外導体1に接続されると考えるのが自然であり,そうすると外導体1が接地されることになる。また,図1に記載のものについて,上記摘記事項ロ.の【0021】段落に外導体1が接地されていると記載されているように,外導体は接地されるのが一般的であることを勘案しても,図7?9記載のものは外導体1が接地されていると考えることができる。
d.図7?9からみて,共振棒2は,一方の端部が外導体(ハウジング)1に接続され,他方の端部が外導体(ハウジング)1に離間して位置しており,開放端となっていることが読み取れ,共振棒2と外導体(ハウジング)1が同軸フィルタを構成していることを考え合わせても,そのように理解するのが自然である。またフィルタとして設計されている以上,使用する周波数に合わせて,予め各所の寸法が規定されているのは技術常識であるから,共振棒2の前記他方の端部が外導体(ハウジング)1からあらかじめ定めた間隔だけ離間して位置していることになり,共振棒2の長さもあらかじめ定められた長さであるといえる。
e.上記摘記事項イ.の特に【0002】?【0004】段落及び図7?9によれば,同軸フィルタは外導体(ハウジング)1の内部にトランスフォーマ3を有しており,当該トランスフォーマ3は,一方の端部が中心導体4を介してRFコネクタ等を接続されており,他方の端部が外導体1の内壁面と接触している。

したがって,摘記した引用例1の記載及び図面を総合すると,引用例1には以下のような発明(以下,「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

(引用発明)
「接地された外導体(ハウジング)1内の電気的に密封された空間に,あらかじめ定められた長さの共振棒2が,その一方の端部が外導体(ハウジング)1に接続され,他方の端部が外導体(ハウジング)1からあらかじめ定めた間隔だけ離間して開放端となるように構成された同軸フィルタであって,
外導体(ハウジング)1の内部に,一方の端部がRFコネクタ等に接続されており,他方の端部が外導体1の内壁面と接触しているトランスフォーマ3を備えた同軸フィルタ。」


[技術事項]
原査定の拒絶理由に引用された特開2004-254085号公報(以下,「引用例2」という。)には,図面とともに以下の事項が記載されている。

イ.「【0004】
この場合,遮蔽金属ケース11は,加工性と重量の面からアルミニウム材が使用される。」(2頁35?36行)

ロ.「【0023】
上式(1),(2)を基に,図1または図2のA-A線における半同軸共振器の断面図である図4を参照して,半同軸共振器の温度特性を説明する。図4に示すように,調整ねじ棒31は内部導体14または24の同軸上に配設されている。温度が上昇した場合,遮蔽金属ケースがLTだけ伸びる。それによりギャップG1は広がる。この時,調整ねじ棒31もLNだけ伸びるが,LT≫LNであるので無視できる。また,遮蔽金属ケースの伸びLYによって特性インピーダンスZ0が変化するが,これも無視できる。従って,ギャップG1の変化により同調容量CG1は小さくなり,同調周波数は高くなる。
【0024】
しかしながら,半同軸共振器の内部導体も温度上昇によりL1だけ伸びるため,同調容量CG1の変化量は,その分だけ少なく,同調周波数の変化量もその分だけ少なくなる。
【0025】
次に,温度が下降した場合,上昇する場合と反対の考えでギャップ長の変化により同調周波数は低くなるが,半同軸共振器の内部導体が縮むことにより同調周波数の変化量はその分だけ少なくなる。
【0026】
このように,それぞれの金属材料の線膨張係数に対して,半同軸共振器の内部導体と調整ねじ棒の間のギャップ長の変化による同調周波数の変化量が,内部導体の長さが変化することによる同調周波数の変化量とほぼ一致するような材料を選択すると,同調周波数の温度変化を抑制することができる。
【0027】(略)
【0028】
従って,図1に示す構造の5段の帯域通過フィルタでは,遮蔽金属ケース11と遮蔽金属カバー12からなる遮蔽金属体101がアルミニウム材のとき,同調容量を0.15pF程度,誘導しなければならない半同軸共振器の内部導体の材料には,入力側(図4のタイプ)が鉄材,出力側(図5のタイプ)が線膨張係数の小さいインバー合金材を用いる。」(4頁22行?5頁2行)

上記摘記事項の記載及び図4並びにこの分野における技術常識を考慮すると,
上記摘記事項ロ.の【0026】段落によれば,温度変化に伴うギャップ長の変化による同調周波数の変化量が,内部導体の長さが変化することによる同調周波数の変化量とほぼ一致するような材料を選択することが示唆され,その結果として【0028】段落に遮蔽金属ケースにアルミニウム材を,内部導体には,鉄材を用いることが記載されている。ここで遮蔽金属ケースに用いるアルミニウム材は,内部導体に用いる鉄材と線膨張係数が異なり,鉄材の方がアルミニウム材に較べて線膨張係数が小さいことは自明であり,また,遮蔽金属ケースに用いるアルミニウム材が軽量性,及び切削性に富むことは,例えば上記摘記事項イ.や実願昭55-2214号(実開昭56-104205号)のマイクロフィルム(明細書2頁3?10行)に示唆されているように技術常識にすぎない。
このような構成により,上記摘記事項ロ.【0023】?【0025】段落も参照すれば,温度が下降した場合には,遮蔽金属ケースと,一端が遮蔽金属ケースに固定された内部導体との間のギャップ長が小さくなり,容量も小さくなって同調周波数は低くなるが,内部導体が縮むことにより誘導成分が小さくなるので,これは同調周波数の変化量を小さくするように働く。
また,温度が上昇した場合には,遮蔽金属ケースが伸び,ギャップは広がるから,容量成分は小さくなり同調周波数は高くなるが,内部導体も温度上昇により伸びるため,誘導成分が大きくなるので,これは同調周波数の変化量を小さくするように働くものである。
ここで,上記摘記事項ロ.によれば,半同軸共振器の調整ねじ棒3は温度変化による伸び分が無視できるものであるから,微調整の必要がなければ必要がないものといえる。

そうしてみると,上記摘記事項イ.ロ.及び図4によれば,引用例2には以下のような事項(以下,「技術事項」という。)が記載されているものと認められる。

(技術事項)
「半同軸共振器において,遮蔽金属ケースと,一端が遮蔽金属ケースに固定された内部導体とを線膨張係数の異なる金属材料で構成し,遮蔽金属ケースには軽量性,切削性に富む材料を使用し,内部導体には線膨張係数が小さい材料を使用し,
温度が下降した場合,内部導体が縮み誘導成分が小さくなった分の変化量とほぼ一致する程度に,遮蔽金属ケースと内部導体との間のギャップによる容量が大きくなるように変化させ,温度が高くなった場合,内部導体が伸び,誘導成分が大きくなった分の変化量とほぼ一致する程度に,遮蔽金属ケースと内部導体との間のギャップによる容量が小さくなるように変化させること。」

[対比]
補正後の発明を引用発明と対比すると,

a.引用発明の「外導体(ハウジング)1」「共振棒2」は,補正後の発明の「ハウジング」「共振棒」にそれぞれ相当する。
b.引用発明の「同軸フィルタ」は,後述する相違点に係る構成において相違するものの,特定の周波数において共振するものであるから,補正後の発明の「同軸共振器」に対応する。
c.引用発明の共振棒2の「一方の端部」は,外導体(ハウジング)1に接続されているから,補正後の発明の共振棒の「一端」に相当し,引用発明の共振棒2の「他方の端部」は外導体(ハウジング)1からあらかじめ定めた間隔だけ離間し,開放状態となっているから,補正後の発明の共振棒の「他端」に相当する。
d.引用発明の「トランスフォーマ3」「RFコネクタ等」は,補正後の発明の「トランスフォーマ」「外部端子」にそれぞれ相当する。そして,引用発明のトランスフォーマ3の「一方の端部」はRFコネクタ等に接続されているから補正後の発明のトランスフォーマの「他端」に相当し,引用発明のトランスフォーマ3の「他方の端部」は外導体1の内壁面と接触しているから補正後の発明のトランスフォーマの「一端」に相当する。


したがって,両者は以下の点で一致ないし相違する。

(一致点)
「 接地したハウジング内に内蔵することにより電気的に密封した空間内に配置し,かつ,一端が前記ハウジングに接続され,他端が前記ハウジングからあらかじめ定めた間隔だけ離れた位置で開放状態にされたあらかじめ定めた長さの共振棒を少なくとも備えた同軸共振器において,
前記空間内に配置し,かつ,一端が前記ハウジングに接続され,他端が外部端子に接続されたトランスフォーマを備えた,
同軸共振器。」

(相違点)
補正後の発明は,
「前記ハウジングを形成する材料と,前記共振棒及び前記トランスフォーマを形成する材料とを,互いの熱膨張係数が異なる材料とし,
前記ハウジングの材料として軽量性および切削性に富む材料を使用し,前記共振棒及び前記トランスフォーマの材料として熱膨張係数が小さい材料を使用し,
温度が低くなった場合,前記共振棒で与えられる誘導成分が小さくなる変化量とほぼ同程度に,前記ハウジングと前記共振棒の他端との間隔で与えられる容量成分が大きく変化し,温度が高くなった場合,前記共振棒で与えられる誘導成分が大きくなる変化量とほぼ同程度に,前記ハウジングと前記共振棒の他端との間隔で与えられる容量成分が小さく変化する」
のに対して,引用発明には材料について特定されておらず,このような構成がない点。


[判断]
上記相違点について検討する。
上述したように,引用例2には技術事項として,
「半同軸共振器において,遮蔽金属ケースと,一端が遮蔽金属ケースに固定された内部導体を線膨張係数の異なる金属材料で構成し,遮蔽金属ケースには軽量性,切削性に富む材料を使用し,内部導体には線膨張係数が小さい材料を使用し,
温度が下降した場合,内部導体が縮み誘導成分が小さくなった分の変化量とほぼ一致する程度に,遮蔽金属ケースと内部導体との間のギャップによる容量が大きくなるように変化させ,温度が高くなった場合,内部導体が伸び,誘導成分が大きくなった分の変化量とほぼ一致する程度に,遮蔽金属ケースと内部導体との間のギャップによる容量が小さくなるように変化させること。」
が記載されている。
ここで,上記技術事項における半同軸共振器は,一端が遮蔽金属ケースに固定された内部導体と遮蔽金属ケースによって共振器を構成したものであり,この点で共振棒2と外導体1によって共振器を構成した引用発明と共通の構成を有するものである。また,当該共振器の技術分野において温度変化に対して安定した電気特性を得ようとする技術課題は,引用例2,特開平10-276008号公報,特開昭52-075154号公報,あるいは実願昭55-002214号(実開昭56-104205号)のマイクロフィルムに示唆されているように,一般的な技術課題にすぎない。そうしてみると,引用発明に対して温度安定性を高めようとする一般的な技術課題を解決するために,上記技術事項を適用することは当業者が容易になし得た事項にすぎない。そして,その際に引用発明の「トランスフォーマ3」に関しても,温度変化によって寸法が変化し,周波数特性に影響を与えることは自明であるから,これも共振棒と同様に熱膨張係数が小さい材料によって構成することも当業者であれば必要に応じて適宜なし得た程度の事項にすぎない。
そうしてみると,相違点とした補正後の発明は,引用発明に,引用例2に記載された技術事項,及び周知技術を適用することによって,当業者が容易に想到できたものである。

そして,補正後の発明が奏する効果も,引用発明,引用例2に記載された技術事項,並びに周知技術から想到し得る構成から,容易に予測できる範囲内のものである。



よって,補正後の発明は,特許法第29条第2項の規定によって,特許出願の際,独立して特許を受けることができないものである。


3.結語
以上のとおり,本件補正は,補正後の発明が特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから,特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合していない。
したがって,本件補正は,特許法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。



第3 本願発明について
1.本願発明
平成26年6月4日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので,本願発明は上記「第2 補正却下の決定」の項中の「1.本願発明と補正後の発明」の項で「本願発明」として認定したとおりのものである。

2.引用発明
引用発明,引用例2に記載された技術事項及び周知技術は,上記「第2 補正却下の決定」の項中の「(2)独立特許要件」の項で引用発明,引用例2に記載された技術事項及び周知技術として認定したとおりである。

3.対比・判断
本願発明は補正後の発明から本件補正に係る限定を省いたものである。
そうすると,本願発明の構成に本件補正に係る限定を付加した補正後の発明が,上記「第2 補正却下の決定」の項中の「(2)独立特許要件」の項で検討したとおり,引用発明,引用例2に記載された技術事項及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本願発明も同様の理由により当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおり,本願発明は,引用発明,引用例2に記載された技術事項及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって,本願は,他の請求項について検討するまでもなく,拒絶すべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-04-08 
結審通知日 2015-04-14 
審決日 2015-04-27 
出願番号 特願2009-251057(P2009-251057)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01P)
P 1 8・ 575- Z (H01P)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 富澤 哲生高野 洋  
特許庁審判長 菅原 道晴
特許庁審判官 山中 実
山本 章裕
発明の名称 同軸バンドパスフィルタ、同軸共振器およびマイクロ波通信機器  
代理人 家入 健  

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