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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04L
管理番号 1302086
審判番号 不服2014-4742  
総通号数 188 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-08-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-03-12 
確定日 2015-06-18 
事件の表示 特願2011-542085「帯域幅制約ネットワークを介してサーバ・システムの監視および制御を行うシステムおよび方法」拒絶査定不服審判事件〔平成22年 7月 1日国際公開、WO2010/074667、平成24年 6月14日国内公表、特表2012-513708〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯と本願発明
イ.本願は、2008年12月22日を国際出願日とする出願であって、原審において平成24年11月15日付けで拒絶理由が通知され、平成25年11月5日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成26年3月12日に拒絶査定不服の審判が請求されたものである。

ロ.本願の請求項1ないし20に係る発明は、願書に最初に添付された特許請求の範囲の請求項1ないし20に記載された事項により特定されるものであるところ、そのうち、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおりである。

「ネットワークを介して少なくとも1つのシステムと通信する方法であって、
少なくとも1つのシステム・グループを規定するステップと、
前記少なくとも1つのシステム・グループについて一意的な識別子を決定するステップと、
前記ネットワークに接続されたシステムに対する通信に、前記通信が向けられた少なくとも1つのシステム・グループの決定された一意的な識別子を含めるステップと、
を含み、
前記通信が、前記通信に含められた前記一意的な識別子が自身がそのメンバであるグループを特定するものであることを確認したシステムだけに受容される、前記方法。」

ハ.ここで、請求項1に記載の「一意的な識別子」との用語について、その意味内容を一義的に理解することは困難であるので、本願明細書の発明の詳細な説明の記載を参酌して、その意味内容を理解すると、「一意的な識別子」について、本願明細書の発明の詳細な説明には、以下の記載がある。

・「【0060】
1つの対象グループの一例は、領域A(707)内の全てのサーバを含むことができる。領域A(707)は、例えば特定の位置、郵便番号、時間帯など、任意の所望の基準に従って編成された任意数のサーバ(例えば店舗1および2に実装されたサーバ702、704)を含むことができる。領域A内の全てのサーバに一意的な識別子を与えて、それらが「領域A対象グループ」に属するものとして特定することができる。・・・」
・「【0068】
図8は、本発明の一実施例によるネットワークのサーバ・システムの制御および監視を示す流れ図である。この方法では、最初に、ステップ810で、1つの単位として監視および/または制御することが望ましいサーバの少なくとも1つのグループ(すなわち「対象」グループ)を規定する。上述のように、サーバの各「対象グループ」は、少なくとも1つまたは複数のサーバ/サーバ・システムを含むことができ、例えば、一意的なグループ識別子を各グループに割り当てることによって規定することができる。上述のように、本発明の一実施例では、このようなグループは、小売ネットワーク・マネージャ224によって規定される。方法は、ステップ803に進む。
【0069】
ステップ803で、各サーバ・システム・グループについて、一意的な識別子を決定する。ここでもやはり、上述のように、本発明の一実施例では、これらの一意的な識別子は、小売ネットワーク・マネージャ224によって決定される。方法は、ステップ805に進む。
【0070】
ステップ805で、通信対象となっている少なくとも1つのサーバ・グループの決定された各一意的な識別子を、ネットワークに接続された全てのサーバ/サーバ・システムに対する通信に含める。上述のように、本発明の一実施例では、各通信は、例えばペイロード(送達する各パケット内の基本データ)を含むコマンドまたはメッセージを含むことができる。方法は、ステップ807に進む。
【0071】
ステップ807で、各サーバ/サーバ・システムは、通信を検査して、当該通信に含まれる一意的な識別子が、当該サーバ/サーバ・システムがそのメンバであり、従って通信対象であるグループを特定するものであるかどうかを判定する。通信対象のグループである場合には、サーバ/サーバ・システムは、メッセージのペイロードを処理する(すなわち含まれているコマンドを実行する)。例えば、各サーバは、受信した通信中の一意的なグループ識別子を、当該サーバが含まれるグループに割り当てられた一意的なグループ識別子と比較する。両者が一致した場合には、当該サーバは、当該通信が向けられた対象グループの一部として指定される。上述のように、本発明の一実施例では、各サーバ/サーバ・システムは、通信に含まれる一意的な識別子が、当該サーバ/サーバ・システムがそのメンバであるグループを特定するものであるかどうかを判定することによって、当該通信が当該サーバ/サーバ・システムに向けられたものであるかどうかを判定する、それぞれのグループ識別部を含む。」
そして、本願明細書の発明の詳細な説明における上記の記載より、本願に係る発明は、「領域A内の全てのサーバ」というように、1つの単位として監視および/または制御することが望ましいサーバ/サーバ・システムの少なくとも1つのグループを、一意的なグループ識別子を各グループに割り当てることによって規定し、上記グループには、少なくとも1つまたは複数のサーバ/サーバ・システムを含むことができるようにしたうえで、各一意的な識別子を、ネットワークに接続された全てのサーバ/サーバ・システムに対する通信に含め、各サーバ/サーバ・システムは、通信に含まれる一意的な識別子が、当該サーバ/サーバ・システムがそのメンバであるグループを特定するものであるかどうかを判定することによって、当該通信が当該サーバ/サーバ・システムに向けられたものであるかどうかを判定するようにしたもので、各サーバ/サーバ・システムに一意的な識別子を与えることで、それらが属するグループを特定することができるようにしたと認められる。
そうすると、本願明細書の記載を参酌すれば、請求項1に記載の「一意的な識別子」は、サーバ/サーバ・システム、すなわちシステムが属するグループを特定する識別子と理解できる。

ニ.以上から、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その発明特定事項の「一意的な識別子」が、システムが属するグループを特定する識別子と解したうえで、請求項1に記載されたとおりのものと認める。

第2 引用発明
原審の拒絶理由に引用された本願の国際出願日前に日本国内において頒布された刊行物である特開2008-228307号公報(平成20年9月25日公開、以下「引用例」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。

イ.「【0001】
(技術分野)
本発明は、通信ネットワークの2つ以上のコンポーネントで受信されるデータストリームを生成するデータソースを制御する分野に関する。詳細には、本発明は、データソースの制御権を個々のネットワークコンポーネントに委譲する状況の態様に関する。」(3頁)

ロ.「【0044】
(発明を実施するための最良の形態)
以下では、2つ以上の移動端末を含む無線通信システムに関して、本発明を例示的に説明する。ただし、本発明は、パーソナルコンピュータのような固定端末だけを含む通信システムや、移動端末と固定端末の両方を含む通信システムにも用いることができることに注意されたい。
【0045】
以下の説明はストリーミングセッションの制御に焦点を当てたものであるが、ゲームセッションや他のセッションも同様に制御できる。さらに、以下で説明するRTSPシナリオでは、データソースへの直接アクセス権がセッションイニシエータにとどまるが、データソースへの直接アクセス権も渡される別のケースも同様に用いることができる。
【0046】
図1は、本発明による通信ネットワーク8の概略図である。通信ネットワーク8は、データソースとして動作するマルチメディアサーバの形態のストリーミングソース10と、ストリーミングソース10からデータストリーム16を受信するネットワークコンポーネント12、14のグループとを含む。
【0047】
以下では、直接フロア制御を行うシナリオで、図1に示した例示的実施形態を説明する。これは、既に定義したように、ストリーミングソース10への直接アクセス権を有するネットワークコンポーネントがさらにフロア制御権を有することを意味する。
【0048】
図1では2つのネットワークコンポーネント12、14だけを示しているが、原則として、ネットワークコンポーネントグループは3つ以上のネットワークコンポーネントも含むことができることに注意されたい。図1に示した実施形態では、ネットワークコンポーネント12、14は携帯電話である。
【0049】
ネットワークコンポーネント12、14のグループは、IP(インターネットプロトコル)マルチキャストホストグループ19を構成する。IPマルチキャストとは、単一のIP宛先アドレスで識別されるホストグループにIPデータグラムを送信することである。そのグループのメンバシップは動的である。これは、メンバがいつでもグループに参加したり、グループから離脱したりできることを意味する。グループ内でのメンバの位置や数には制限がない。さらに、ネットワークコンポーネントは、グループのメンバでなくても、グループにデータグラムを送信できる。IPマルチキャストホストグループは、永続的であっても、一時的であってもよい。永続的なグループは、よく知られる、管理上割り当てられたIPアドレスを有する。永続的なのはグループのアドレスであって、グループのメンバシップではない。永続的なグループのために予約されていない、そうしたIPマルチキャストアドレスは、メンバがいる間だけ存在する一時的なグループへの動的割り当てに利用できる。IPマルチキャストは、IETF文書RFC 2236「Internet Group Management Protocol」(バージョン2、1997年11月)で規定されている。
【0050】
本発明は、マルチキャストにもIPマルチキャストにも限定されないことに注意されたい。しかしながら、本発明は、マルチキャスト技術をベースとすることが好ましい。したがって、ストリーミングソース10からのデータストリーム16は、通信ネットワーク8に接続されているすべての端末にブロードキャストされるのではなく、選択されたネットワークコンポーネント12、14のグループ19にのみ送信されることが好ましい。
【0051】
図1に示すように、ストリーミングソース10からのデータストリーム16は、ネットワークコンポーネントのマルチキャストグループ19のすべてのメンバ12、14によって受信される。ただし、フロア制御をするネットワークコンポーネント(ダイレクトフロアコントローラ)14だけが、セッション制御チャネル18のかたちでストリーミングソース10への直接アクセス権を有することも図に示すとおりである。」(10?11頁)

上記引用例の記載及び図面並びにこの分野における技術常識を考慮すると、上記ロ.の【0046】における「図1は、本発明による通信ネットワーク8の概略図である。通信ネットワーク8は、データソースとして動作するマルチメディアサーバの形態のストリーミングソース10と、ストリーミングソース10からデータストリーム16を受信するネットワークコンポーネント12、14のグループとを含む。」との記載、及び図1によれば、通信ネットワーク(8)は、ストリーミングソース(10)と、ストリーミングソース(10)からデータストリーム(16)を受信するネットワークコンポーネント(12、14)のグループとを含んでいる。
また、上記ロ.の【0049】における「ネットワークコンポーネント12、14のグループは、IP(インターネットプロトコル)マルチキャストホストグループ19を構成する。・・・そのグループのメンバシップは動的である。これは、メンバがいつでもグループに参加したり、グループから離脱したりできることを意味する。」との記載、及び図1によれば、通信ネットワーク(8)は、ネットワークコンポーネント(12、14)のグループを構成することにより、(α)IP(インターネットプロトコル)マルチキャストホストグループ(19)を規定しているということができる。
また、上記ロ.の【0049】における「ネットワークコンポーネント12、14のグループは、IP(インターネットプロトコル)マルチキャストホストグループ19を構成する。IPマルチキャストとは、単一のIP宛先アドレスで識別されるホストグループにIPデータグラムを送信することである。」との記載によれば、IPマルチキャストは、IP(インターネットプロトコル)マルチキャストホストグループ(19)にIPデータグラムを送信し、その際、IP(インターネットプロトコル)マルチキャストホストグループ(19)が単一のIP宛先アドレスで識別されているから、通信ネットワーク(8)は、(β)IP(インターネットプロトコル)マルチキャストホストグループ(19)について単一のIP宛先アドレスを決定していることが読み取れる。
また、上記ロ.の【0049】における「ネットワークコンポーネント12、14のグループは、IP(インターネットプロトコル)マルチキャストホストグループ19を構成する。IPマルチキャストとは、単一のIP宛先アドレスで識別されるホストグループにIPデータグラムを送信することである。」との記載、同ロ.の【0046】における「通信ネットワーク8は、データソースとして動作するマルチメディアサーバの形態のストリーミングソース10と、ストリーミングソース10からデータストリーム16を受信するネットワークコンポーネント12、14のグループとを含む。」との記載、及び図1によれば、通信ネットワーク(8)は、ネットワークコンポーネント(12、14)に対するデータストリーム(16)が、IP(インターネットプロトコル)マルチキャストホストグループ(19)に宛てられているから、(γ)ネットワークに接続されたネットワークコンポーネント(12、14)に対するデータストリーム(16)に、データストリーム(16)が向けられた単一のIP宛先アドレスを含めていることは明らかである。
また、上記ロ.の【0051】における「図1に示すように、ストリーミングソース10からのデータストリーム16は、ネットワークコンポーネントのマルチキャストグループ19のすべてのメンバ12、14によって受信される。」との記載、及び図1によれば、(δ)前述のデータストリーム(16)は、ネットワークコンポーネント(12、14)に受信されている。
ここで、上記(α)ないし(δ)を方法として捉えると、通信ネットワーク(8)は、ネットワークを介してネットワークコンポーネント(12、14)へマルチキャストしているから、ネットワークを介してネットワークコンポーネント(12、14)へマルチキャストする方法ということができる。

したがって、上記(α)ないし(δ)をステップとして纏めると、上記引用例には以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

「ネットワークを介してネットワークコンポーネント(12、14)へマルチキャストする方法であって、
IP(インターネットプロトコル)マルチキャストホストグループ(19)を規定するステップと、
前記IP(インターネットプロトコル)マルチキャストホストグループ(19)について単一のIP宛先アドレスを決定するステップと、
前記ネットワークに接続されたネットワークコンポーネント(12、14)に対するデータストリーム(16)に、前記データストリーム(16)が向けられたIP(インターネットプロトコル)マルチキャストホストグループ(19)の決定された単一のIP宛先アドレスを含めるステップと、
を含み、
前記データストリーム(16)が、ネットワークコンポーネント(12、14)に受信される、前記方法。」

第3 周知技術
イ.原審の拒絶理由に引用された本願の国際出願日前に日本国内において頒布された刊行物である特開2008-283583号公報(平成20年11月20日公開、以下「周知例1」という。)には、以下の事項が記載されている。

「【背景技術】
【0002】
近年、インターネットの普及と通信回線の高速化とに伴い、音声や動画などのコンテンツデータを含むパケットを、ユーザがアクセスする多数の配信先サーバもしくは中継ノードに、ネットワーク経由でマルチキャストする、Point-to-multipoint方式による配信サービスが広く行なわれている。このマルチキャストとは、1台の配信元サーバが、複数のグループ(各グループは複数のサーバもしくは中継ノードをメンバーとして有する)のそれぞれに対してグループ識別機能を有するマルチキャストアドレスを割り当ててコンテンツデータを配信するものである。」

そして、通信システムにおいて、ネットワークに接続されたメンバ装置として、サーバを用いることは、周知例1の上記の記載にみられるように、周知の技術(以下「周知技術1」という。)である。

ロ.原審の拒絶理由に引用された本願の国際出願日前に日本国内において頒布された刊行物である特開2005-12462号公報(平成17年1月13日公開、以下「周知例2」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。

「【0034】
次に動作について説明する。
配信サーバ8は、図6に示すような地域-マルチキャストアドレス対応テーブルに基づき、配信したい地域に対応する送信先のマルチキャストアドレスをパケットのヘッダ部に挿入し、LAN7、ルータ6、基地局サーバ5、衛星基地局4、通信衛星2を介して、マルチキャスト型又はブロードキャスト型により一括してパケットを配信する。・・・
【0036】
図8は無線端末1a,1bの処理の流れを示すフローチャートである。ステップST21において、無線端末1a,1bの位置情報演算部31はGPS衛星3からの電波により現在の自己の緯度、経度及び高度の位置情報を演算する。ステップST22において、マルチキャストアドレス取得部33は、演算された位置情報より、地域-マルチキャストアドレス対応テーブル32を参照して、自己のマルチキャストアドレスを取得してマルチキャストアドレス記憶部34に記憶する。このようにして、無線端末1a,1bはマルチキャストグループに自動的に参加する。
【0037】
ステップST23において、パケット受信部35は通信衛星2から送信されたパケットを受信する。ステップST24において、パケット選択部36は、マルチキャストアドレス記憶部34に記憶されているマルチキャストアドレスが受信したパケットのヘッダ部に挿入されているマルチキャストアドレスと一致するかを判定する。
【0038】
マルチキャストアドレスが一致した場合に、ステップST25において、パケット選択部36はそのパケットを選択し、ステップST26において、データ表示部37は選択されたパケットに含まれるデータを表示する。マルチキャストアドレスが一致しない場合には、ステップST27において、パケット選択部36はそのパケットを廃棄する。」

そして、マルチキャストの通信方法のメンバ装置において通信に含められた識別子が自身がそのメンバであるグループを特定するものであることを確認した装置だけが受容することは、周知例2の上記の記載にみられるように、周知の技術(以下「周知技術2」という。)である。

第4 対比
本願発明と引用発明とを対比する。
a.引用発明の「ネットワークコンポーネント(12、14)」と、本願発明の「システム」とは、いずれも、「特定の装置」という点で一致する。
b.引用発明の「IP(インターネットプロトコル)マルチキャストホストグループ(19)」と、本願発明の「システム・グループ」とは、いずれも、「特定のグループ」という点で一致する。
c.引用発明の「単一のIP宛先アドレス」と、本願発明の「一意的な識別子」とは、いずれも、「特定の識別子」という点で一致する。
d.引用発明の「データストリーム(16)」は、上記引用例の上記ロ.の【0046】における「通信ネットワーク8は、データソースとして動作するマルチメディアサーバの形態のストリーミングソース10と、ストリーミングソース10からデータストリーム16を受信するネットワークコンポーネント12、14のグループとを含む。」との記載によれば、ネットワークを介して、ストリーミングソース(10)からネットワークコンポーネント(12、14)が受信する(下りの)通信であるから、「通信」ということができる。
e.引用発明の「ネットワークコンポーネント(12、14)に受信される」と、本願発明の「前記通信に含められた前記一意的な識別子が自身がそのメンバであるグループを特定するものであることを確認したシステムだけに受容される」とは、いずれも、「特定の装置に受信される」という点で一致する。
f.引用発明の「ネットワークコンポーネント(12、14)へマルチキャストする方法」と、本願発明の「システムと通信する方法」とは、「マルチキャスト」が「通信」といえるから、いずれも、「特定の装置と通信する方法」という点で一致する。

したがって、本願発明と引用発明は、以下の点で一致ないし相違する。

<一致点>

「ネットワークを介して少なくとも1つの特定の装置と通信する方法であって、
少なくとも1つの特定のグループを規定するステップと、
前記少なくとも1つの特定のグループについて特定の識別子を決定するステップと、
前記ネットワークに接続された特定の装置に対する通信に、前記通信が向けられた少なくとも1つの特定のグループの決定された特定の識別子を含めるステップと、
を含み、
前記通信が、特定の装置に受信される、前記方法。」

<相違点1>

「特定の装置」に関し、
本願発明は、「システム」であるのに対し、引用発明は、「ネットワークコンポーネント(12、14)」である点。

<相違点2>

「特定のグループ」に関し、
本願発明は、「システム・グループ」であるのに対し、引用発明は、「IP(インターネットプロトコル)マルチキャストホストグループ(19)」である点。

<相違点3>

「特定の識別子」に関し、
本願発明は、「一意的な識別子」であるのに対し、引用発明は、「単一のIP宛先アドレス」である点。

<相違点4>

「前記通信が、特定の装置に受信される」に関し、
本願発明は、「前記通信に含められた前記一意的な識別子が自身がそのメンバであるグループを特定するものであることを確認したシステムだけに受容される」のに対し、引用発明は、「ネットワークコンポーネント(12、14)に受信される」点。

第5 判断
そこで、まず、上記相違点1及び2について検討する。
前記第1のハ.のとおり、本願明細書の発明の詳細な説明の記載より、本願に係る発明は、1つの単位として監視および/または制御することが望ましいサーバ/サーバ・システムの少なくとも1つのグループを、一意的なグループ識別子を各グループに割り当てることによって規定し、上記グループには、少なくとも1つまたは複数のサーバ/サーバ・システムを含むことができるようにしたうえで、各一意的な識別子を、ネットワークに接続された全てのサーバ/サーバ・システムに対する通信に含め、各サーバ/サーバ・システムは、通信に含まれる一意的な識別子が、当該サーバ/サーバ・システムがそのメンバであるグループを特定するものであるかどうかを判定することによって、当該通信が当該サーバ/サーバ・システムに向けられたものであるかどうかを判定するようにしたものと認められるから、本願発明における「システム」は、上記サーバ/サーバ・システムのようにネットワークに接続された装置と解される。
そして、引用例の段落【0048】における「図1では2つのネットワークコンポーネント12、14だけを示しているが、原則として、ネットワークコンポーネントグループは3つ以上のネットワークコンポーネントも含むことができることに注意されたい。図1に示した実施形態では、ネットワークコンポーネント12、14は携帯電話である。」との記載(前記第2のロ.)より、引用発明の「ネットワークコンポーネント(12、14)」も、ネットワークに接続した装置と認められる。
してみれば、本願発明の「システム」と引用発明の「ネットワークコンポーネント(12、14)」との間に実質的な相違があるとは認められない。
仮にそうでないとしても、前記第3のイ.のとおり、通信システムにおいて、ネットワークに接続されたメンバ装置として、サーバを用いることは、周知の技術(周知技術1)であり、引用発明において「ネットワークコンポーネント(12、14)」を、サーバ/サーバ・システムのような「システム」とすることは、当業者が適宜なし得たものである。
そうすると、相違点1に係る構成は、実質的な相違点であるとはいえず、仮にそうでないとしても、引用発明において当業者が適宜なし得たものである。
そして、引用発明における「ネットワークコンポーネント(12、14)」が「システム」である場合、上記「ネットワークコンポーネント(12、14)」のグループが構成する「IP(インターネットプロトコル)マルチキャストホストグループ(19)」を、本願発明のように「システム・グループ」と称することは当然であるから、相違点2に係る構成も、実質的な相違点であるとはいえず、仮にそうでないとしても、引用発明において当業者が適宜なし得たものである。

次に、上記相違点3について検討する。
上記「第1 手続の経緯と本願発明」の項のとおり、本願発明における「一意的な識別子」は、システムが属するグループを特定する識別子と解される。
一方、上記引用例の上記ロ.の【0049】における「ネットワークコンポーネント12、14のグループは、IP(インターネットプロトコル)マルチキャストホストグループ19を構成する。IPマルチキャストとは、単一のIP宛先アドレスで識別されるホストグループにIPデータグラムを送信することである。」との記載、及び上記相違点1についての検討を踏まえると、引用発明の「単一のIP宛先アドレス」は、ネットワークコンポーネント(12、14)(システム)が属するIP(インターネットプロトコル)マルチキャストホストグループ(19)(システム・グループ)を特定する識別子ということができる。
したがって、上記相違点3は、実質的なものではない

次に、上記相違点4について検討する。
マルチキャストの通信方法のメンバ装置において、通信に含められた識別子が自身がそのメンバであるグループを特定するものであることを確認した装置だけが受容することは、前記第3のロ.のとおり、周知の技術(周知技術2)である。
そうすると、周知技術2に接した当業者であれば、引用発明の「ネットワークコンポーネント(12、14)」において、通信に含められた一意的な識別子が自身がそのメンバであるグループを特定するものであることを確認したシステムだけに受容すること、すなわち、上記相違点4に係る構成とすることは、容易に想到し得たものということができる。

そして、本願発明の作用効果も、引用発明、周知技術1及び2から当業者が容易に予測できる範囲のものである。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明、周知技術1及び2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願はその余の請求項について論及するまでもなく拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-01-15 
結審通知日 2015-01-21 
審決日 2015-02-04 
出願番号 特願2011-542085(P2011-542085)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 鈴木 崇雅  
特許庁審判長 河口 雅英
特許庁審判官 萩原 義則
山中 実
発明の名称 帯域幅制約ネットワークを介してサーバ・システムの監視および制御を行うシステムおよび方法  
代理人 吹田 礼子  
代理人 倉持 誠  
代理人 石井 たかし  
代理人 木越 力  

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