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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01R
管理番号 1302096
審判番号 不服2014-17106  
総通号数 188 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-08-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-08-28 
確定日 2015-06-18 
事件の表示 特願2010-15654「基板用シールドコネクタ」拒絶査定不服審判事件〔平成23年8月11日出願公開、特開2011-154893〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成22年1月27日の出願であって、平成25年11月21日付けの拒絶理由通知に対して、平成26年1月27日に意見書及び手続補正書が提出されたが、同年6月6日付け(発送日:6月10日)で拒絶査定がなされ、これに対し、同年8月28日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同時に手続補正がなされ、同年12月16日に上申書が提出されたものである。
なお、審判請求時の手続補正は、請求項3及び4を削除するものである。

第2 本願発明
本願の請求項1に係る発明は、平成26年8月28日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、次のとおりのものである(以下「本願発明」という。)。
「プリント基板に取り付けられ、該プリント基板上の接地用配線パターンおよび信号配線パターンにそれぞれ接続されるシールド端子およびインナー端子をハウジング内に収納する基板用シールドコネクタであって、
前記ハウジングの側壁から外に延出された前記インナー端子の一部である延び代は、その先端部が前記ハウジングの前記側壁に向かうように、前記プリント基板に向けて下方に折り返されていることを特徴とする基板用シールドコネクタ。」

第3 刊行物に記載された事項及び発明
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願日前に日本国内において頒布された特開2008-123966号公報(以下「刊行物」という。)には、「基板コネクタ」に関し、図面(特に図1、2参照)とともに、次の事項が記載されている。
以下、下線は当審で付与するものである。

ア.「【技術分野】
【0001】
本発明は、基板コネクタに関し、さらに詳しくは、プリント配線が形成されたプリント基板への信号の授受や電源供給のために取り付けられる基板コネクタに関するものである。」

イ.「【0017】
図1に示すように、この基板コネクタ1が取り付けられるプリント基板2は、導電性のプリント配線12が印刷あるいはメッキ等により形成され、その表面に絶縁性の保護フィルム12fが被着されて、電子部品やIC(集積回路)等が実装されることで回路が形成されている。このプリント基板2の端縁の所定の部位には、基板コネクタ1のハウジング14が嵌入されるハウジング用切り欠き16が形成されている。このハウジング用切り欠き16の周辺には、基板コネクタ1の内導体端子18が接続される信号配線パターン12sと、外導体端子20が接続されるグランド配線パターン12gとが形成されている。ハウジング用切り欠き16の後方側には、内導体端子18の基板接続片18aや外導体端子20の基板接続片20aを接続するために保護フィルム12fが部分的に取り除かれて信号配線パターン12sとグランド配線パターン12gが露呈した接続タブ22s,22gが形成されている。さらに、このハウジング用切り欠き16の両側には、プリント基板2の表側から裏側に向けて貫通する貫通孔24が形成されている。」

ウ.「【0018】
図1に示した基板コネクタ1は、内導体端子18と、この内導体端子18の外周を覆ってシールドする外導体端子20と、この内導体端子18と外導体端子20との間に介設された誘電体26とがハウジング14に収容されている。このハウジング14の両側面14a,14aには、ハウジング14を基板2に固定する固定部材(スナップフィット端子28)を保持する取付部30が突設されている。なお、この取付部30は、合成樹脂材料の射出成形などによりハウジング14と一体的に形成されている。」

エ.「【0028】
このようにして、基板コネクタ1をプリント基板2に仮固定した後、内導体端子18の基板接続片18aをプリント基板2の信号配線パターン12sの接続タブ22sに、外導体端子20の基板接続片20aをプリント基板2のグランド配線パターン12gの接続タブ22gに半田付けして接続する。そして、図6に示すようにプリント基板2を裏返し、スナップフィット端子28の脚部36先端の半田付けを行う。」

オ.「【0034】
ハウジング14は、絶縁性の樹脂により一体的に成形されており、内導体端子18を誘電体26の内部に保持しこの誘電体26を外導体端子20が収容してなるコネクタ端子を収容固定するようになっている。ハウジング14の後部には、前後方向に開口する端子収容室14bが貫通形成されており、後方の開口面14bから外導体端子20を挿入可能となっている。ハウジング14の前方面には相手側コネクタとの嵌合をガイドするように前面が開口されたフード部14cが設けられている(図1参照)。」

カ.図1及び図2には、外導体端子20から延出する内導体端子18は下方に折れ曲がり、更に外方に延出する基板接続片18aを有する点が図示されている。

上記記載事項イ、ウ、オ及び図示内容を総合して、本願発明に則って整理すると、刊行物には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
「プリント基板2に取り付けられ、プリント基板2の信号配線パターン12sに接続される内導体端子18と、該内導体端子18の外周を覆ってシールドし、プリント基板2のグランド配線パターン12gに接続される外導体端子20とを、ハウジング14に収容する基板コネクタ1であって、
ハウジング14の後方の開口面14bに挿入される外導体端子20から延出する内導体端子18は、下方に折れ曲がり、更に外方に延出する基板接続片18aを有する、基板コネクタ。」

第4 対比
本願発明と引用発明とを対比する。
a.引用発明の「内導体端子18」は、本願発明の「インナー端子」に相当し、同様に、「グランド配線パターン12g」は「接地用配線パターン」に相当する。
b.引用発明の「外導体端子20」は、内導体端子18をシールドするものであるから、「シールド端子」であることは明らかである。
c.引用発明の「基板コネクタ」は、シールドコネクタであることは明らかであるから、「基板用シールドコネクタ」に相当する。
d.a?cを総合すると、引用発明の「プリント基板2に取り付けられ、プリント基板2の信号配線パターン12sに接続される内導体端子18と、該内導体端子18の外周を覆ってシールドし、プリント基板2のグランド配線パターン12gに接続される外導体端子20とを、ハウジング14に収容する基板コネクタ1」は、本願発明の「プリント基板に取り付けられ、該プリント基板上の接地用配線パターンおよび信号配線パターンにそれぞれ接続されるシールド端子およびインナー端子をハウジング内に収納する基板用シールドコネクタ」に相当する。
e.引用発明の内導体端子は、外導体端子から延出するものであるところ、該外導体端子は、ハウジング14の後方の開口面14bに挿入されており、この「ハウジングの後方の開口面」は、本願発明の「ハウジングの側壁」に相当する部位であるから、結局、引用発明の内導体端子は、ハウジングの側壁から延出するものであり、また、延出する内導体端子は「延び代」ということができる。したがって、引用発明の「ハウジング14の後方の開口面14bに挿入される外導体端子20から延出する内導体端子18」は本願発明の「前記ハウジングの側壁から外に延出された前記インナー端子の一部である延び代」に相当する。
f.引用発明の「延出する内導体端子18は、下方に折れ曲がり、更に外方に延出する基板接続片18aを有する」ことは、本願発明の「延び代は、その先端部が前記ハウジングの前記側壁に向かうように、前記プリント基板に向けて下方に折り返されていること」と、「延び代は、前記プリント基板に向けて下方に折れ曲がっている」ことで共通する。

以上の点からみて、本願発明と引用発明とは、
「プリント基板に取り付けられ、該プリント基板上の接地用配線パターンおよび信号配線パターンにそれぞれ接続されるシールド端子およびインナー端子をハウジング内に収納する基板用シールドコネクタであって、
前記ハウジングの側壁から外に延出された前記インナー端子の一部である延び代は、前記プリント基板に向けて下方に折れ曲がっている基板用シールドコネクタ。」
である点で一致し、次の点で相違する。

[相違点]
延び代について、本願発明では、「先端部が前記ハウジングの前記側壁に向かうように、前記プリント基板に向けて下方に折り返されている」のに対して、引用発明では、「下方に折れ曲がり、更に外方に延出する」点。

第5 判断
本願発明の効果は、本願明細書の段落【0022】に記載されるとおり、「基板用シールドコネクタとこれに接続される相手側コネクタとの間で発生する特性インピーダンスのズレ(不整合)を最小限に抑えるとともに、内導体端子のプリント基板における占有空間を少なくすることができる。」というものである。
ここで、インピーダンスに係る効果は、内導体端子の周りが空気に晒される部分を少なくすることにより奏される効果(本願明細書の段落【0036】、図3、図6参照)であるところ、内導体端子のプリント基板における占有空間が少なくなれば、付随的に、空気に晒される部分も少なくなるから、結局、本願発明の延び代の先端部を側壁に向かうように折り返すことは、内導体端子の専有面積を少なくするという点につきる。
すなわち、本願発明は、内導体端子がプリント基板上で占有する面積を少なくするために、延び代を側壁側に折り返すものといえる。
また、上記相違点に係る、延び代の先端部を側壁側に折り返した部分、あるいは、延び代の先端部を外方に折り曲げた部分は、何れも、プリント基板に半田付けされる部分である(本願明細書の段落【0035】等、刊行物の段落【0028】等参照)。
ところで、当該技術分野において、プリント基板上での端子の占有面積を小さくするために、クランク状の半田付け部、あるいは、コネクタから外方へ突出する接続部(半田付け部)を、コの字形状に折り返すことにより、実装に要する面積を小さくすることは、例えば、特開2009-266411号公報(段落【0023】、図2、5参照)、特開平7-135038号公報(段落【0013】、図3、4参照)に記載されるように周知の技術事項である。ここで「コの字形状」とは、本願発明の側壁に向かうように折り返した形状に他ならない。
そうすると、装置部品の小型化は一般的な課題であるから、引用発明において、側壁から延出する延び代の更に外方に延出する基板接続片18a(半田付け部)をコの字形状に折り曲げること、すなわち、側壁に向かうように折り返すことは、上記周知の技術事項に基づいて、当業者が容易に想到し得たことである。

そして、本願発明による効果も、引用発明及び周知の技術事項から当業者が予測し得た程度のものにすぎない。

以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知の技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第6 むすび
したがって、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、他の請求項に係る発明を検討するまでもなく、本願は、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-04-17 
結審通知日 2015-04-21 
審決日 2015-05-07 
出願番号 特願2010-15654(P2010-15654)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01R)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 石川 貴志  
特許庁審判長 島田 信一
特許庁審判官 森川 元嗣
小関 峰夫
発明の名称 基板用シールドコネクタ  
代理人 北島 健次  
代理人 花坂 達也  
代理人 本多 弘徳  

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