• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1302141
審判番号 不服2013-6593  
総通号数 188 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-08-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-04-10 
確定日 2015-07-07 
事件の表示 特願2010- 53354「認証用バーコード付与方法」拒絶査定不服審判事件〔平成22年10月 7日出願公開、特開2010-225146〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯

1.出願までの経緯
平成12年5月2日に、特願2000-133741号が出願され、
平成13年4月13日に、該出願を原出願とする特許法第44条第1項の規定による新たな特許出願(以下「分割出願」と記す。)として、特願2001-115141号が出願され、
平成16年9月15日に、該特願2001-115141号を原出願とする分割出願として、特願2004-268433号が出願され、
平成21年3月23日に、該特願2001-115141号を原出願とする分割出願として、特願2009-070369号が出願され、
平成22年3月10日に、該特願2009-070369号を原出願とする分割出願として、本件に係る特許出願(以下「本願」と記す。)が出願された。

2.原審の経緯
本願は、上記のとおり、
平成12年5月2日を出願日とみなすべき分割出願として、
平成22年3月10日に出願されたものであり、
平成22年4月9日付けで審査請求がなされ、
平成24年10月15日付けで拒絶理由通知(平成24年10月18日発送)がなされ、
平成24年12月17日付けで意見書が提出され、
平成24年12月28日付けで拒絶査定(平成25年1月10日謄本発送、送達)がなされたものである。

3.当審での経緯
本件審判請求は、該拒絶査定を不服として、「原査定を取り消す 本発明はこれを特許すべきものとするとの審決を求める。」との趣旨で、
平成25年4月10日付けで請求されたものであり、同日付けで手続補正書が提出されている。
なお、
平成25年8月5日付けで特許法第164条第3項に定める報告(前置報告)がなされ、
平成25年11月5日付けで当該報告に対する意見を求める旨の審尋(平成25年11月7日発送)がなされ、これに対して
平成26年1月6日付けで回答書が提出されている。



第2.補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]
平成25年4月10日付けの手続補正を却下する。


[理由]
1.本件補正の内容

平成25年4月10日付けの手続補正(以下「本件補正」と記す。)は、特許請求の範囲について、下記本件補正前の特許請求の範囲から、下記本件補正後の特許請求の範囲に補正しようとするものである。

<本件補正前の特許請求の範囲>
「【請求項1】
認証要求者の顧客である被認証者に付与されると共に記憶される前記被認証者に固有の認証用バーコードであって、前記被認証者が携帯電話に表示することによって前記認証要求者に提示され、前記提示された認証用バーコードが記憶されていたとき前記被認証者が認証される、携帯電話に表示される認証用バーコードを被認証者に付与するバーコード付与方法であって、
認証装置が、前記被認証者の発信者番号を含むバーコード要求信号を、被認証者の携帯電話から通信回線を通して受信するステップと、
前記認証装置が、前記被認証者の発信者番号が顧客データベースに記録されているか否かを判定し、前記被認証者の前記発信者番号が顧客データベースに記録されていなかったときには、前記被認証者が前記発信者番号が顧客データベースに記録されていないことを示すメッセージを前記被認証者の携帯電話に通信回線を通して送信するステップと、
前記認証装置が、前記被認証者の発信者番号が前記顧客データベースに記録されていたときに前記被認証者に固有のバーコードを生成するステップと、
前記認証装置が、該バーコードを前記被認証者の携帯電話に通信回線を通して送信すると共に、該バーコードをバーコードデータベースに記憶するステップと、を備えている、バーコード付与方法。」

<本件補正後の特許請求の範囲>
「【請求項1】
認証要求者の顧客である被認証者に付与されると共に記憶される前記被認証者に固有の認証用バーコードであって、前記被認証者が携帯電話に表示することによって前記認証要求者に提示され、前記提示された認証用バーコードが記憶されていたとき前記被認証者が認証される、携帯電話に表示される認証用バーコードを被認証者に付与するバーコード付与方法であって、
認証装置が、前記被認証者の発信者番号を含むバーコード要求信号を、被認証者の携帯電話から通信回線を通して受信するステップと、
前記認証装置が、前記被認証者の発信者番号が顧客データベースに記録されているか否かを判定し、前記被認証者の前記発信者番号が顧客データベースに記録されていなかったときには、前記被認証者の前記発信者番号が顧客データベースに記録されていないことを示すメッセージを前記被認証者の携帯電話に通信回線を通して送信して処理を終了するステップと、
前記認証装置が、前記被認証者の発信者番号が前記顧客データベースに記録されていたことのみを条件として前記被認証者に固有のバーコードを生成するステップと、
前記認証装置が、該バーコードを前記被認証者の携帯電話に通信回線を通して送信すると共に、該バーコードをバーコードデータベースに記憶するステップと、を備えている、バーコード付与方法。」


2.本件補正の目的について
(1)本件補正は、本件審判請求と同時になされたものであり、上記「1.本件補正の内容」のとおり、特許請求の範囲についてする補正であるから、その目的について検討するに、本件補正は、本件補正前の請求項1記載の発明を特定するための事項(以下「発明特定事項」と記す。)であるところの「前記認証装置が、前記被認証者の発信者番号が顧客データベースに記録されているか否かを判定し、前記被認証者の前記発信者番号が顧客データベースに記録されていなかったときには、前記被認証者が前記発信者番号が顧客データベースに記録されていないことを示すメッセージを前記被認証者の携帯電話に通信回線を通して送信するステップ」および「前記認証装置が、前記被認証者の発信者番号が前記顧客データベースに記録されていたときに前記被認証者に固有のバーコードを生成するステップ」を、それぞれ、より下位の「前記認証装置が、前記被認証者の発信者番号が顧客データベースに記録されているか否かを判定し、前記被認証者の前記発信者番号が顧客データベースに記録されていなかったときには、前記被認証者の前記発信者番号が顧客データベースに記録されていないことを示すメッセージを前記被認証者の携帯電話に通信回線を通して送信して処理を終了するステップ」「前記認証装置が、前記被認証者の発信者番号が前記顧客データベースに記録されていたことのみを条件として前記被認証者に固有のバーコードを生成するステップ」に限定するものであり、この限定によって請求項1に係る発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が格別変更されるものではない。
したがって、本件補正の目的は、請求項に記載した発明特定事項を限定するものであって、その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに該当し、特許法第17条の2第4項第2号に掲げられる事項(以下「限定的減縮」と記す。)を目的とするものである。


3.独立特許要件について
上記「2.本件補正の目的について」のとおり、本件補正は限定的減縮を目的とするものであるので、本件補正後の請求項1に記載されている事項により特定される発明(以下、「本件補正発明」という。)が本願の特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かについて、以下に検討する。


3-1.本件補正発明
本件補正発明は、上記「1.本件補正の内容」において本件補正後の特許請求の範囲の【請求項1】として記載したとおりのものである。


3-2.先行技術

(1)引用文献
本願の出願前に頒布又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となり、原審の拒絶の査定の理由である上記平成24年10月15日付けの拒絶理由通知において引用された、下記引用文献には、それぞれ、下記引用文献記載事項が記載されている。(下線は当審付与。)

<引用文献1>
特開平10-69553号公報(平成10年3月10日出願公開)

<引用文献記載事項1-1>
「【請求項1】 ユーザーの発券要求情報を入力するユーザー装置と、
前記ユーザー装置と通信手段を介して接続され、前記ユーザー装置からの前記発券要求情報に応じた券情報を検索し、この検索された券情報及び前記券情報に対応するユーザーコード情報を共に出力するデータ処理手段と、前記ユーザー装置からの前記発券要求情報を受信し、前記データ処理手段からの前記券情報及び前記ユーザーコード情報を前記ユーザー装置に送信するデータ送受信手段とを有する券発行装置と、
前記券情報及び前記ユーザーコード情報を入力する情報入力手段と、前記情報入力手段からの前記券情報を認識して処理するデータ処理手段とを有する券使用装置と、を備えて成り、
前記ユーザー装置は、前記券発行装置からの前記券情報及び前記ユーザーコード情報の少なくとも一方を記録する記録媒体を含み、
前記券使用装置は、前記情報入力手段で、前記記録媒体に記録されたユーザーコード情報を読み込み、前記データ処理手段で、前記情報入力手段からのユーザーコード情報と前記券発行装置の前記データ処理手段からのユーザーコード情報との照合結果に基づいて、前記記録媒体に記録された券情報が有効であるか否かを決定することを特徴とする発券システム。」

<引用文献記載事項1-2>
「【請求項3】 請求項1、2のいずれかにおいて、
前記券発行装置の前記データ処理手段は、前記発券要求情報が有効であるか否かを判別し、前記発券要求情報が有効であると判別するならば、前記券情報を検索することを特徴とする発券システム。」

<引用文献記載事項1-3>
「【請求項4】 請求項3において、
前記記録媒体は、紙及び携帯型記録媒体のうちの少なくともいずれか一方であることを特徴とする発券システム。」

<引用文献記載事項1-4>
「【請求項5】 請求項4において、
前記ユーザー装置は、パーソナルコンピュータ装置であり、
このパーソナルコンピュータ装置は、前記通信手段を介して前記券発行装置の前記データ送受信手段に前記発券要求情報を送信し、前記券発行装置の前記データ送受信手段から前記発券要求情報に応じた前記券情報及び前記ユーザーコード情報を受信するデータ送受信手段を含むことを特徴とする発券システム。」

<引用文献記載事項1-5>
「【請求項9】 請求項5?7のいずれかにおいて、
前記券使用装置は、前記情報入力手段から入力される前記ユーザーコード情報を前記券発行装置に送信し、
前記券発行装置のデータ処理手段は、前記ユーザーコード情報と前記券使用装置から送信された前記ユーザーコード情報とを照合した照合結果を前記券使用装置に送信し、
前記券使用装置の前記データ処理手段は、前記送信された照合結果に基づいて、前記券情報が有効であるか否かを判別することを特徴とする発券システム。」

<引用文献記載事項1-6>
「【請求項10】 請求項8、9のいずれかにおいて、
前記ユーザーコード情報は、バーコード、数字列及び文字列のうちの少なくともいずれか一つで表されることを特徴とする発券システム。」

<引用文献記載事項1-7>
「【請求項11】 請求項8?10のいずれかにおいて、
前記ユーザーコード情報には、前記ユーザーを識別するユーザー識別情報を含み、
前記ユーザーコード情報の照合時には、前記ユーザー識別情報も照合することを特徴とする発券システム。」

<引用文献記載事項1-8>
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ユーザーが券を発注して購入する発券システム、券発行装置及び券使用装置に関する。」

<引用文献記載事項1-9>
「【0005】
【発明が解決しようとする課題】このように、券の購入者は、電話で発券の予約をしても、実際に有効な券を入手するためには、その予約をした場所まで行かなければならないので、手間や時間を費やす。
【0006】また、旅行代理店やコンビニエンスストアのような発券場所では、発券するための人員が必要である。
【0007】即ち、ユーザーが券を購入するための発券システムは、非常に煩雑なものとなっている。
【0008】本発明は、このような課題を鑑みてなされたものであり、その目的は、券の購入者が発券場所まで行かなくても簡易に券を購入することができ、発券場所では、人員を合理化することができる発券システム、券発行装置及び券使用装置を提供することにある。」

<引用文献記載事項1-10>
「【0035】また、請求項11の発明は、請求項8?10のいずれかにおいて、前記ユーザーコード情報には、前記ユーザーを識別するユーザー識別情報を含み、前記ユーザーコード情報の照合時には、前記ユーザー識別情報も照合することを特徴とする。
【0036】これにより、記録媒体を持参したユーザーが、その記録媒体に記録された券情報の真の利用者であるか否かを判別することができるので、記録媒体の偽造や不正使用を防止することができる。」

<引用文献記載事項1-11>
「【0078】前記発券システムで用いる通信回線は、有線であって、電話線を使用することが一般的であるが、ISDN回線やCATV(Cable Television)のケーブル、または光ファイバケーブルを用いることも可能である。また、通信回線は、無線であってもよく、PHS(簡易型携帯電話)や携帯電話、または人工衛星の双方向を利用した通信システムを利用することが考えられる。」

<引用文献記載事項1-12>
「【0080】このように発行される券としては、電車等の乗車券や航空券、ホテルや旅館等の宿泊券、音楽会等の入場券、馬券、宝くじなど、様々な券であることが可能である。
【0081】ユーザー装置2では、送信された券情報が表示される。ユーザーは、この券情報を、例えばユーザー装置2に備えるプリンタ装置で紙に印刷して、券110を生成する。ユーザーが、この印刷した券110を実際に使用するには、この券110を券使用場所104まで持参する。この券使用場所104は、具体的には、駅や施設等の券使用窓口や入場口等となる。」

<引用文献記載事項1-13>
「【0094】ここで、データ処理部11の概略的な構成を図3に示す。
【0095】このデータ処理部11は、モデム12により受信した情報を判別する情報判別部200と、モデム12により受信した情報が、情報判別部200により発券要求情報であると判別されたときに、前記発券要求情報に応じた券情報を検索する券情報検索部204と、券情報検索部204により検索された前記券情報に対応するユーザーコード情報を作成するユーザーコード情報作成部206とを備え、モデム12により前記券情報検索部204から出力される券情報及び前記ユーザーコード情報作成部206から出力されるユーザーコード情報をユーザー装置2に送信する。
【0096】券情報検索部204には、発行するための複数種類の券情報を記憶する券情報記憶部205が接続され、また、ユーザーコード情報作成部206には、複数のユーザーのユーザー情報を記憶するユーザー情報記憶部207が接続される。ユーザー情報は、ユーザーの名前、住所、券の代金の支払いに利用する銀行の口座番号やクレジットカード番号等を含む情報である。」

<引用文献記載事項1-14>
「【0099】情報判別部200には、モデム12、13により受信された情報が入力され、この入力情報が何の情報であるのかを判別する。入力情報が発券要求情報であると判別されたときには、この発券要求情報は、発券要求情報判別部201、券情報検索部204及び課金部208に送られる。また、入力情報がユーザー識別情報であると判別されたときには、このユーザー識別情報はユーザーコード情報作成部206に送られる。また、入力情報が課金用識別情報であると判別されたときには、この課金用識別情報は、課金用識別情報比較部202及び課金部208に送られる。」

<引用文献記載事項1-15>
「【0103】また、ユーザーコード情報作成部206には、情報判別部200において判別されたユーザー識別情報が送られている。ユーザーコード情報作成部206は、発券要求情報判別部201から送られた判別結果が発券可能であることを示すときには、ユーザー情報記憶部207に記憶されるユーザー情報から、送信されるユーザー識別情報に対応するユーザー情報を読み出し、このユーザー情報を用いてユーザーコード情報を作成する。」

<引用文献記載事項1-16>
「【0104】課金部208は、課金用識別情報比較部202から送られた比較結果が課金可能であることを示すときに、発券要求情報に基づく券の代金を、課金用識別情報を用いて課金する。具体的には、後述するように、課金用識別情報に含まれる銀行口座番号やクレジットカード番号等に基づく銀行等に対して券の代金の支払いを要求する。また、課金処理を行うときには、課金用識別情報の代わりに、ユーザー情報記憶部207に記憶されるユーザー情報を用いて、課金を行ってもよい。具体的には、ユーザー情報記憶部207に記憶される複数のユーザー情報から、発券要求情報に含まれるユーザー識別情報に対応するユーザー情報を読み出し、このユーザー情報に含まれる銀行口座番号やクレジットカード番号に基づいて、課金を行う。」

<引用文献記載事項1-17>
「【0112】尚、前記携帯型記録媒体としては、フロッピーディスク、100MB以上の大容量磁気ディスク等のような磁気記録媒体、メモリカード、ICカード、切手サイズメモリカード、PCカード等のカード型記録媒体、光磁気、相変化等を利用した光記録媒体、手のひらサイズ等の超小型PC等の小型電子機器等を用いることが可能である。従って、券使用装置3は、携帯型記憶媒体の情報を読み込む情報入力手段として、例えばフロッピィディスクドライブ装置等のドライブ装置を備えるものであってもよい。これにより、ユーザーが携帯型記録媒体を持参した場合には、ドライブ装置に前記携帯型記憶媒体を挿入し、携帯型記録媒体に記憶される券情報及びユーザーコード情報を読み込んで、この券情報及びユーザーコード情報をデータ処理部31に送る。」

<引用文献記載事項1-18>
「【0121】尚、上述したように、ユーザーコード情報の照合動作は券使用装置3のデータ処理部31で行っているが、券情報判別部302は、情報入力手段により入力した前記第1のユーザーコード情報を前記データ送受信手段により外部へ送信した後に、外部へ送信した前記第1のユーザーコード情報と外部に予め記憶されている第2のユーザーコード情報との照合結果を、前記データ送受信手段を介して外部から受信することによって、前記券情報の有効性を判別するものとし、ユーザコード情報の照合動作を、券発行装置1のデータ処理部11で行うことも可能である。
【0122】具体的には、券使用装置3は、スキャナ装置34等から読み込まれたユーザーコード情報をデータ処理部31の処理によりモデム32から券発行装置1に送信する。
【0123】券発行装置1に送信されたユーザーコード情報は、券発行装置1のモデム13から、図3に示すデータ処理部11の情報判別部200で判別され、ユーザーコード情報照合部210に送られる。一方、ユーザーコード情報照合部210には、ユーザーコード情報作成部206から送られるユーザーコード情報が送られている。ユーザーコード情報作成部206からのユーザーコード情報を第2のユーザーコード情報とし、また、券使用装置3から券発行装置1に送信されたユーザーコード情報を第1のユーザーコード情報とすると、ユーザーコード情報照合部210は、第1のユーザーコード情報と第2のユーザーコード情報とを照合する。この照合結果は、モデム13から高速回線網4を介して券使用装置3に送信される。
【0124】券使用装置3は、送信された照合結果をモデム32で受信し、券情報判別部302に送る。
【0125】券情報判別部302は、送られた照合結果に基づいて、券情報が有効であるか否かを判別する。この時、券情報が有効であるか否かの判別は、前述のように券使用装置3の券情報判別部302で行う方法以外にも、券発行装置1のユーザーコード情報照合部210でその判別を行い、その結果としての有効である、または有効でない、という情報が、券使用装置3の券情報判別部302に送られる構成でもよい。」

<引用文献記載事項1-19>
「【0146】ユーザー装置2は、ステップS10で、受信したユーザー情報提示要求情報に基づいて、ユーザー識別情報を券発行装置1に送信する。」

<引用文献記載事項1-20>
「【0156】尚、課金方法としては、クレジットカード番号に応じた銀行口座から自動的に券の代金を引き落とす方法のほかに、例えばダイヤルQ^(2)サービスを利用する方法等が考えられる。」


<引用文献2>
日経ビジネス、2000年4月24日号、日経BP社、p.28-p.29

<引用文献記載事項2-1>
「携帯電話の購入者に個人を識別するためのバーコードを与え、来店時に携帯電話の画面にバーコードを呼び出してもらう。それを店員がバーコードリーダーで読めば、現金やカードを使わずに決済ができる仕組みだ。」(第29頁中欄第19行?第24行。)


<引用文献3>
特開平11-175477号公報(平成11年7月2日出願公開)

<引用文献記載事項3-1>
「【0007】この端末装置は、例えば、PHS(Personal Handy phonse System)電話機、携帯電話機、無線電話機、電話機能を備えるPDA(Personal Data Assistance)等の、端末に電話番号が設定されるような種々の端末装置として実現できる。」

<引用文献記載事項3-2>
「【0035】サーバ2のCPU21は、通信部25を介してデータPHS1-1からユーザ名として送信されてきた電話番号と、パスワードとして送信されてきた端末番号とを受信し(ステップS15)、RAM22に格納する。CPU21は、RAM22に格納したユーザ名(電話番号)とパスワード(端末番号)と、データベース24が記憶するユーザ名とパスワードとを照合し、完全に一致するものが存在するか否かを判別し、存在する場合には、データPSH1-1を登録ユーザとして認証し、接続又はサービスの提供を許可する(ステップS16)。また、存在しない場合には、接続相手を認証せず、接続又はサービスの提供を拒否する(ステップS16)。」

<引用文献記載事項3-3>
「【0052】この場合、サーバ2は、着信時に通知された電話番号をRAM22に格納し、必要があれば、ステップS14で、端末番号等の送信を要求するようにしてもよい。また、その電話番号のみを用いて認証を行う場合には、ステップS14の要求処理、ステップS15の受信処理を行わないまま、認証処理を実行してもよい。」


<引用文献4>
特開2000-59516号公報(平成12年2月25日出願公開)

<引用文献記載事項4-1>
「【0026】コンピューターシステム4にて自動着信15し、発信者番号通知による番号確認16をデータベースサーバー6検索で行い、データが存在する場合はパスワード入力17の指示を出し、データが存在しない場合は会員登録を促す。」


<引用文献5>
特開平10-21303号公報(平成10年1月23日出願公開)
<引用文献記載事項5-1>
「【0067】この際に、会員未登録の顧客が応募してきた場合は、会員登録データと照合の上、「会員登録をしてから応募してください。」という旨の表示をすることによって、未登録顧客の会員登録を促すこととなる。」


(2)参考文献
本願の出願前に頒布された刊行物である下記参考文献には、それぞれ、下記参考文献記載事項が記載されている。(下線は当審付与。)

<参考文献1>
特開平8-221482号公報(平成8年8月30日出願公開)

<参考文献記載事項1-1>
「【請求項5】 顧客から取引の請求があった場合に、暗証番号を決めて当該顧客に通知するとともに、この暗証番号と当該顧客の所有する携帯用無線端末の呼出し番号を記録するステップと、
顧客が持参してくる携帯用無線端末の呼出し番号を入力し、記録しておいた呼出し番号と一致するか否かを確認するステップと、
前記呼出し番号の一致が確認された場合、顧客が持参してきた携帯用無線端末の認証を行うため、当該呼出し番号に基づきキーワードを対応する携帯用無線端末に送信し、顧客が持参してきた携帯用無線端末が当該キーワードを受信するか否かを確認するステップと、
上記キーワードの一致が確認された場合、顧客の認証を行うため、その顧客から暗証番号を受け入れ、記録しておいた暗証番号と一致するか否かを確認するステップと、
上記暗証番号の一致が確認された場合、対応する取引物を出すステップとを有することを特徴とする取引物引渡し方法。」

<参考文献記載事項1-2>
「【0026】次に、上記実施例の動作を図3のフローチャートを参照して説明する。例えば携帯電話1aを所有する顧客が取引を行うため、その携帯電話1aより、通信網2を介して業者の所有する情報処理装置3に接続する(ステップS31)。
【0027】顧客と業者との取引が行われて取引情報が作成され、情報処理装置3内のメモリ31に登録される(ステップS32)。また、情報処理装置3は、顧客の所有する携帯電話1aの電話番号を検出し、この電話番号を上記取引情報とともにメモリ31に登録する(ステップS33)。
【0028】次に、情報処理装置3は暗証番号を決める。そして、情報処理装置3は、その暗証番号を顧客に通知するとともに、上記電話番号とともにメモリ31に登録する(ステップS34)。
【0029】次に、顧客は、自己の携帯電話1aを、例えば取引物引渡し装置4aの設置されている所まで持参する(ステップS35)。顧客は、取引物引渡し装置4aの指示に従い、携帯電話1aを取り付け、その携帯電話1aに備えられるボタン等を押してその電話番号をディスプレイ上に表示させるか、又は、スピーカから音声として発音させる。これにより、この電話番号はカメラ23又はマイク24を介して入力される(ステップS36)。
【0030】取引物引渡し装置4aは、読み込んだ電話番号に基づいて上記情報処理装置3内のメモリ31に登録されている各顧客の電話番号を検索し、上記電話番号に一致するものが検出された場合は、いま取り付けられている携帯電話が正真なものであると見なし、次のステップに進む。一方、一致するものが検出されない場合は、その携帯電話は正真なものではないと見なし、顧客に取引物を引き渡さない旨を知らせて終了する(ステップS37)。」


<参考文献2>
特開平11-184935号公報(平成11年7月9日出願公開)

<参考文献記載事項2-1>
「【0015】次に、予約入場システム1の予約処理について説明する。図2は、予約処理の概要を示すフローチャートである。図2に示すように、ユーザ11は、携帯電話33から、インターネット3を介してサーバ13にアクセスする(ステップ201)。
【0016】そして、ユーザ11は、搭乗予約であることを示すコード、搭乗日時、フライトナンバ、座席のクラス等を指定する(ステップ202)。
【0017】次に、予約紹介会社5は、インターネット3を介して航空会社7に設置されたサーバ17にアクセスする(ステップ203)。航空会社7のコンピュータ19は、指定された飛行機の座席が確保できるかを搭乗予約データファイル21で確認する(ステップ204)。
【0018】指定された飛行機の座席が確保できない場合は、サーバ13は予約の失敗を携帯電話33に伝え(ステップ210)、予約内容を変更することを促す。携帯電話33のユーザ11が予約をやり直す場合(ステップ211)、ステップ202に戻り、指定した予約の内容を変更する。予約をあきらめる場合は、予約処理は終了する。この時、予約内容に近く、空いている飛行機の空き状況を、携帯電話33に表示してもよい。
【0019】予約できる場合(ステップ204)、ユーザ11は、切符の予約を申し込む(ステップ205)。この時ユーザ11は、ID番号を入力する。ID番号は、携帯電話33の電話番号とすることもできる。コンピュータ19は、搭乗予約データファイル21の該当飛行機の座席を予約塞がりの状態にし、ユーザのID番号等を記録する(ステップ206)。
【0020】この時コンピュータ19はユーザ11に対する課金情報を作成する。課金情報は、後日、ユーザ11に送られるか、または予めユーザ11が、航空会社に対して、口座を開いて、ある程度の金額を収めておき、そこから料金を、取るようにしてもよい。また、課金に関しては、クレッジトカードや電子マネーを用いて決済してもよい。
【0021】次に携帯電話33に予約内容が送られ保持される(ステップ207)。即ち、携帯電話33には、フライトナンバ、搭乗日時、出発時刻等が保持される。またユーザ11がコンピュータ31から予約を行う場合も、前述したのと同様の処理が行われ、携帯電話33に予約内容が保持される。即ち、ユーザ11がどのような方法で予約を行っても、携帯電話33には予約内容が保持される。」

<参考文献記載事項2-2>
「【0026】次に、入場処理について説明する。図4は、入場処理を示すフローチャートであり、図5は、飛行機の搭乗口の入場装置を示す図である。図5に示すように、入場装置は無線機能付きコンピュータ25と、ゲート27からなり、搭乗者41(ユーザ11と同一人)が、携帯電話33から、無線機能付きコンピュータ25に信号を発し、予約があれば、ゲート27が開いて、搭乗者41は入場できる。
【0027】まず、搭乗者41は、飛行場9の搭乗口で携帯電話33の発信ボタンを押し、ID番号等を、無線機能付きコンピュータ25に送る(ステップ401)。無線機能付きコンピュータ25は、専用線35を介して、コンピュータ19に信号を送り、コンピュータ19は、搭乗予約データファイル21で携帯電話33から送信されたID番号を検索する(ステップ402)。
【0028】無線機能付きコンピュータ25は、搭乗予約が有れば(ステップ403)、ゲート27を開くが(ステップ404)、搭乗予約が無ければ、ゲート27を開かない。このように、搭乗者41は、切符を用いずに飛行機に搭乗できる。尚、前述した実施の形態では、携帯電話33を用いたが、携帯電話33に替えてインターネットアクセス機能付きPHSや、PHS付き携帯型小型コンピュータ(PDA)を用いてもよい。」


<参考文献3>
特開2000-92236号公報(平成12年3月31日出願公開)

<参考文献記載事項3-1>
「【0016】具体的には、「インターネット接続サービス」においては、通信端末100が電話番号No1に接続要求を行う際に発信する呼設定信号に含まれる加入者番号のみに基づいて認証を行い、IPアドレスを付与する。従って、ユーザは、単に電話番号No1にダイヤルすれば、インターネット400に接続できる。また、「モバイル情報サービス」においては、通信端末100が電話番号No2に接続要求を行う際に発信する呼設定信号に含まれる加入者番号の他に、ユーザIDおよびパスワードに基づいて認証を行う。なお、より詳しくは後述する。」

<参考文献記載事項3-2>
「【0030】このように、「インターネット接続サービス」においては、接続要求時に送信される発信者番号にのみ基づいて認証を行うので、ユーザがユーザIDやパスワードを送信する手続きは不要となり、認証のための手続きを簡素化でき、ユーザは迅速にインターネットにアクセスすることができ、センタ300はインターネット400上の情報をユーザに迅速に情報を提供することが可能となる。」


<参考文献4>
特開平11-120397号公報(平成11年4月30日)

<参考文献記載事項4-1>
「【0019】つぎに、上記の構成の作用を図2のフローチャートを参照して説明する。暗証番号に関する変更トリガが発生したとき(ステップ101 のYES )、例えばタイマー計時に基づく所定の時間になったとき、あるいは係員によって暗証番号の変更操作がなされたとき、乱数発生器2bから乱数が発せられ、その乱数から新規の暗証番号が設定される(ステップ102 )。設定された新規の暗証番号は暗証番号メモリ2cに更新記憶される(ステップ103 )。
【0020】現在の新しい暗証番号を知りたい者は、自身が所持する携帯電話器10にセンター装置2の電話番号を入力し、発信を行なう。この発信は暗証番号通知要求として接続設備3に送られる。
【0021】接続設備3は、暗証番号通知要求の着信に応答し(ステップ104 のYES )、携帯電話器10との無線電話回線の接続を行なう(ステップ105 )。無線電話回線が接続されると、電話会社の発番号通知サービスにより、発信者の電話番号がセンター装置2に通知される。そして、通知された発信者電話番号と許可データメモリ2a内の許可データつまり登録電話番号とが照合される(ステップ106 )。
【0022】発信者電話番号が登録電話番号のいずれかに合致すると(ステップ107 のYES)、発信者は特定者(登録者)であるとの判定の下に、暗証番号メモリ2c内の暗証番号が携帯電話器10に通知される(ステップ108 )。そして、無線電話回線が切断される(ステップ109 )。」

<参考文献記載事項4-2>
「【0023】ただし、図3に示すように、発信者が非特定者(非登録者)であれば、発信者電話番号は登録電話番号のいずれにも合致しない(ステップ107 のNO)。この場合、発信者は非特定者(非登録者)であるとの判定の下に、拒否の旨が携帯電話器10に通知される(ステップ110 )。そして、無線電話回線が切断される(ステップ109 )。
【0024】なお、発信者電話番号と登録電話番号との照合に際し、さらに、発信者固有のID番号(たとえば暗証番号)を携帯電話器10から入力させ、それと予め登録されたID番号との合致を特定者(登録者)判定の条件に加えるようにすれば、セキュリティ度が高まり、仮に携帯電話器10が紛失した場合でもその悪用を防ぐことができる。」


<参考文献5>
特開平11-298639号公報(平成11年10月29日出願公開)

<参考文献記載事項5-1>
「【0018】図1?図4において、正規ユーザー1がアクセスするときは、発信者ID対応モデム13をダイヤルする(ステップS1)。モデム13は自動対応する前に、PSTN11の「ナンバー・ディスプレイ」サービスによって提供される発信者の電話番号をサーバ5に通知し(ステップS2)、サーバ5は予め作成されたアクセス権保持者一覧表7に、その番号が確かに存在するか否かの確認をする(ステップS3?S4)。
【0019】その後、アクセス権の有無に関係なく、モデム13へ着信指示し(ステップS5)、モデム13の自動着信応答(ステップS6)、またはモデム13への着信指示(ステップS10)、モデムの自動着信応答(ステップS11)で自動発信させる。
【0020】このとき、ハッカー2がルートBを通ってアクセスしようとしていた場合は、ハッカーの自宅電話番号がアクセス権保持者一覧表7の中に存在しないため、サーバ5上のトーキー機能により、ユーザーはアクセス権を保持しないことと、回線を切断する旨を通知し(ステップS7)、モデム13へ回線切断指示を出し(ステップS8)、モデム13が回線を切断する(ステップS9)。」


<参考文献6>
特開2000-90038号公報(平成12年3月31日出願公開)

<参考文献記載事項6-1>
「【0098】ここで、投入された使用者IDが適正なものであるか否かを判定するが(ST3)、それが、既に携帯端末1に登録されているユーザ情報と一致しない場合(ST3;NO)、携帯端末1は、ローカル個人認証が失敗したとして、当該携帯端末1の利用者に対し登録不可通知を提示して(ST4)、処理を終了する。」


<参考文献7>
特開昭63-287124号公報(昭和63年11月24日出願公開)

<参考文献記載事項7-1>
「(v)(その他証明証の代用としての機能)
▲1▼(当審注:▲数字▼は数字を○で囲った文字を意味する。以下同様) 運転免許証の代用
携帯電話機の持つPIDの他に運転免許PID(MPIDと略記)を付加し運転免許証のライセンス番号として機能する事により、自動車の運転免許証として使用する事が出来る。MPIDには運転免許の種類,運転歴,違反歴,年齢等を含めるものである。また、この場合、携帯電話機の加入者情報記憶部の記憶情報のうち、運転免許に関する情報は公安委員会の管理する機関に転送される必要がある。
▲2▼ ゴルフの会員証始め各種団体の会員証としての機能
携帯電話機の持つPIDの他にゴルフの会員証のPID(GPIDと略記)を付加することにより会員証としての機能を持たせる事が可能である。
また、会社、事業所等の出退勤カードとしての機能を有する。更に無線による電子ロッカーの開閉についても、特定のPID所有者のみ開閉する事が可能である。
将来は外国との条約を締結する事により、パスポートの代用等(PID+パスポートPID(PPID)等にも使用する事が出来旅券の発行業務を効率化することが出来る。」(第51頁下右欄第11行?第52頁上左欄第15行)


3-3.引用発明の認定

(1)引用文献1は、上記引用文献記載事項1-9記載のとおりの「券の購入者が発券場所まで行かなくても簡易に券を購入することができ、発券場所では、人員を合理化することができる」ことを目的とした発明である「発券システム、券発行装置及び券使用装置」を説明する文献であるところ、該「発券システム」は上記引用文献記載事項1-8記載のごとく「ユーザーが券を発注して購入する発券システム」であり、引用文献1には該「発券システム」による「発券処理方法」が記載されていると言える。
したがって、引用文献1には
「券の購入者が発券場所まで行かなくても簡易に券を購入することができ、発券場所では、人員を合理化することができる」ことを目的とした
「ユーザーが券を発注して購入する発券システムによる発券処理方法」の発明が記載されているとも言える。

(2)上記引用文献記載事項1-1等から引用文献1には、
「該発券システムは
ユーザーの発券要求情報を入力するユーザー装置と、
前記ユーザー装置と通信手段を介して接続され、前記ユーザー装置からの前記発券要求情報に応じた券情報を検索し、この検索された券情報及び前記券情報に対応するユーザーコード情報を共に出力するデータ処理手段と、前記ユーザー装置からの前記発券要求情報を受信し、前記データ処理手段からの前記券情報及び前記ユーザーコード情報を前記ユーザー装置に送信するデータ送受信手段とを有する券発行装置と、
前記券情報及び前記ユーザーコード情報を入力する情報入力手段と、前記情報入力手段からの前記券情報を認識して処理するデータ処理手段とを有する券使用装置と、を備えて成り、
前記ユーザー装置は、前記券発行装置からの前記ユーザーコード情報を記録する記録媒体を含み、
前記券使用装置は、前記情報入力手段で、前記記録媒体に記録されたユーザーコード情報を読み込み、前記データ処理手段で、前記情報入力手段からのユーザーコード情報と前記券発行装置の前記データ処理手段からのユーザーコード情報との照合結果に基づいて、前記記録媒体に記録された券情報が有効であるか否かを決定するもの」であることが記載されていると言える。

(3)上記引用文献記載事項1-2等から引用文献1には、
「前記券発行装置の前記データ処理手段は、前記発券要求情報が有効であるか否かを判別し、前記発券要求情報が有効であると判別するならば、前記券情報を検索するもの」が記載されていると言える。

(4)上記引用文献記載事項1-3等から引用文献1には、
「前記記録媒体は携帯型記録媒体」
であることが記載されていると言える。

(5)上記引用文献記載事項1-4等から引用文献1には、
「前記ユーザー装置は、パーソナルコンピュータ装置であり、
このパーソナルコンピュータ装置は、前記通信手段を介して前記券発行装置の前記データ送受信手段に前記発券要求情報を送信し、前記券発行装置の前記データ送受信手段から前記発券要求情報に応じた前記券情報及び前記ユーザーコード情報を受信するデータ送受信手段を含むもの」
であることが記載されていると言える。

(6)上記引用文献記載事項1-5等から引用文献1には、
「前記券使用装置は、前記情報入力手段から入力される前記ユーザーコード情報を前記券発行装置に送信し、
前記券発行装置のデータ処理手段は、前記ユーザーコード情報と前記券使用装置から送信された前記ユーザーコード情報とを照合した照合結果を前記券使用装置に送信し、
前記券使用装置の前記データ処理手段は、前記送信された照合結果に基づいて、前記券情報が有効であるか否かを判別するもの」
であることが記載されていると言える。

(7)上記引用文献記載事項1-6等から引用文献1には、
「前記ユーザーコード情報はバーコードで表されるもの」
であることが記載されていると言える。

(8)上記引用文献記載事項1-7等には、「前記ユーザーコード情報には、前記ユーザーを識別するユーザー識別情報を含み」、「前記ユーザーコード情報の照合時には、前記ユーザー識別情報も照合すること」が記載されている。
そして、上記引用文献記載事項1-10等には、「これにより、記録媒体を持参したユーザーが、その記録媒体に記録された券情報の真の利用者であるか否かを判別することができる」ことが記載されている。
したがって、引用文献1には、
「前記ユーザーコード情報には、前記ユーザーを識別するユーザー識別情報が含まれ、
前記ユーザーコード情報の照合時には、前記ユーザー識別情報も照合することにより、記録媒体を持参したユーザーが、その記録媒体に記録された券情報の真の利用者であるか否かを判別することができるもの」
であることが記載されていると言える。

(9)上記引用文献記載事項1-11等から引用文献1には、
「前記通信回線は携帯電話を利用した通信システムを利用するもの」
であることが記載されていると言える。

(10)上記引用文献記載事項1-13等から
「データ処理部11」すなわち「券発行装置のデータ処理手段」は「ユーザーコード情報作成部206とを備え」「ユーザーコード情報作成部206には、複数のユーザーのユーザー情報を記憶するユーザー情報記憶部207が接続され」ているものであることが読み取れるところ、上記引用文献記載事項1-15等からは該「ユーザーコード情報作成部206は」「ユーザー情報記憶部207に記憶されるユーザー情報から、送信されるユーザー識別情報に対応するユーザー情報を読み出し、このユーザー情報を用いてユーザーコード情報を作成する」ものであることが読み取れる。
そして、上記引用文献記載事項1-14、1-16、1-19等からみて、該「ユーザー識別情報」が前記「ユーザー装置」から送信されるものであることも明らかである。
したがって、上記引用文献1には、
「前記券発行装置のデータ処理手段はユーザーコード情報作成部を備え、該ユーザーコード情報作成部には、複数のユーザーのユーザー情報を記憶するユーザー情報記憶部が接続され、前記ユーザー情報記憶部に記憶されるユーザー情報から、前記ユーザー装置から送信されるユーザー識別情報に対応するユーザー情報を読み出し、このユーザー情報を用いて前記ユーザーコード情報を作成するもの」
であることが記載されていると言える。

(11)上記引用文献記載事項1-18等から、「ユーザコード情報の照合動作を、券発行装置1のデータ処理部11で行う」ための具体例として「券使用装置3から券発行装置1に送信されたユーザーコード情報を第1のユーザーコード情報と」し、「ユーザーコード情報照合部210」が「第1のユーザーコード情報と第2のユーザーコード情報とを照合する」ことが読み取れ、また「第2のユーザーコード情報」が「予め記憶されている」ものであることも読み取れる。
したがって、上記引用文献1には、
「前記ユーザーコード情報の照合は、前記券使用装置から送信された前記ユーザーコード情報と予め記憶されているユーザーコード情報との照合を行うもの」
であることが記載されていると言える。

(12)よって、引用文献1には、「券の購入者が発券場所まで行かなくても簡易に券を購入することができ、発券場所では、人員を合理化することができる」ことを目的とした、下記引用発明が記載されていると言える。

<引用発明>
「ユーザーが券を発注して購入する発券システムによる発券処理方法であって(上記(1)より)
該発券システムは
ユーザーの発券要求情報を入力するユーザー装置と、
前記ユーザー装置と通信手段を介して接続され、前記ユーザー装置からの前記発券要求情報に応じた券情報を検索し、この検索された券情報及び前記券情報に対応するユーザーコード情報を共に出力するデータ処理手段と、前記ユーザー装置からの前記発券要求情報を受信し、前記データ処理手段からの前記券情報及び前記ユーザーコード情報を前記ユーザー装置に送信するデータ送受信手段とを有する券発行装置と、
前記券情報及び前記ユーザーコード情報を入力する情報入力手段と、前記情報入力手段からの前記券情報を認識して処理するデータ処理手段とを有する券使用装置と、を備えて成り、
前記ユーザー装置は、前記券発行装置からの前記ユーザーコード情報を記録する記録媒体を含み、
前記券使用装置は、前記情報入力手段で、前記記録媒体に記録されたユーザーコード情報を読み込み、前記データ処理手段で、前記情報入力手段からのユーザーコード情報と前記券発行装置の前記データ処理手段からのユーザーコード情報との照合結果に基づいて、前記記録媒体に記録された券情報が有効であるか否かを決定するものであり、(上記(2)より)
前記券発行装置の前記データ処理手段は、前記発券要求情報が有効であるか否かを判別し、前記発券要求情報が有効であると判別するならば、前記券情報を検索するものであり、(上記(3)より)
前記記録媒体は携帯型記録媒体であり(上記(4)より)
前記ユーザー装置は、パーソナルコンピュータ装置であり、
このパーソナルコンピュータ装置は、前記通信手段を介して前記券発行装置の前記データ送受信手段に前記発券要求情報を送信し、前記券発行装置の前記データ送受信手段から前記発券要求情報に応じた前記券情報及び前記ユーザーコード情報を受信するデータ送受信手段を含むものであり、(上記(5)より)
前記券使用装置は、前記情報入力手段から入力される前記ユーザーコード情報を前記券発行装置に送信し、
前記券発行装置のデータ処理手段は、前記ユーザーコード情報と前記券使用装置から送信された前記ユーザーコード情報とを照合した照合結果を前記券使用装置に送信し、
前記券使用装置の前記データ処理手段は、前記送信された照合結果に基づいて、前記券情報が有効であるか否かを判別するものであり、(上記(6)より)
前記ユーザーコード情報はバーコードで表されるものであり、(上記(7)より)
前記ユーザーコード情報には、前記ユーザーを識別するユーザー識別情報が含まれ、
前記ユーザーコード情報の照合時には、前記ユーザー識別情報も照合することにより、記録媒体を持参したユーザーが、その記録媒体に記録された券情報の真の利用者であるか否かを判別することができるものであり、(上記(8)より)
前記通信回線は携帯電話を利用した通信システムを利用するものであり、(上記(9)より)
前記券発行装置のデータ処理手段はユーザーコード情報作成部を備え、該ユーザーコード情報作成部には、複数のユーザーのユーザー情報を記憶するユーザー情報記憶部が接続され、前記ユーザー情報記憶部に記憶されるユーザー情報から、前記ユーザー装置から送信されるユーザー識別情報に対応するユーザー情報を読み出し、このユーザー情報を用いて前記ユーザーコード情報を作成するものであり、(上記(10)より)
前記ユーザーコード情報の照合は、前記券使用装置から送信された前記ユーザーコード情報と予め記憶されているユーザーコード情報との照合を行うものである(上記(11)より)
発券処理方法」


3-4.対比
以下、本件補正発明と引用発明とを比較する。

(1)
ア.
(ア)引用発明における「券使用装置」は、当然にこれを所有・運用する組織や人物(上記引用文献記載事項1-12などに示される「ホテルや旅館等」「駅や施設等」あるいは「窓口や入場口等」の従業員等)が存在し、これは本件補正発明における「認証要求者」に対応付けることができるところ、引用発明においては「前記券使用装置の前記データ処理手段は、前記送信された照合結果に基づいて、前記券情報が有効であるか否かを判別するもの」であり、しかも、該照合により「記録媒体を持参したユーザーが、その記録媒体に記録された券情報の真の利用者であるか否かを判別することができる」のであるから、前者も後者と同様に「認証要求者」と言えるものである。

(イ)引用発明における「ユーザー」は本件補正発明における「被認証者」に対応づけられる者であるところ、前者は「前記券使用装置の前記データ処理手段は、前記送信された照合結果に基づいて、前記券情報が有効であるか否かを判別する」ことで「真の利用者であるか否かを判別」される者であるから、後者と同様に「認証要求者の顧客である被認証者」とも言えるものである。

(ウ)引用発明における「ユーザーコード情報」は「ユーザー装置に送信」され「記録媒体に記録」されるものであるところ、これが「ユーザーが券を」「購入する」ことに相当するものなのであるから、該「ユーザーコード情報」は「ユーザー」に授け与えられるもの、すなわち「被認証者に付与される」ものとも言える。

(エ)また、引用発明における「ユーザーコード情報」は、「ユーザー情報を用いて」「作成」され、その「照合」によって「記録媒体を持参したユーザーが、その記録媒体に記録された券情報の真の利用者であるか否かを判別することができる」ものなのであるから、「前記被認証者に固有の」ものであることも明らかである。

(オ)さらに、引用発明における「ユーザーコード情報」は「券使用装置」から「券発行装置に送信」され、ここで「照合」され、その「照合結果」が「券使用装置に送信」され、そこで「判別」がされるものであり、しかも「バーコードで表されるもの」なのであるから、「認証用バーコード」と言えるものである。

(カ)よって、引用発明における「ユーザーコード情報」は、本件補正発明における「認証用バーコード」と同様に、「認証要求者の顧客である被認証者に付与されると共に記憶される前記被認証者に固有の認証用バーコード」であると言える。

イ.引用発明における「ユーザーコード情報」は「券使用装置」において「入力」「読み込み」がなされるものであり、一方、本件補正発明における「認証用バーコード」は「前記被認証者が携帯電話に表示することによって前記認証要求者に提示され」るものであるところ、両者は「前記被認証者が提示することによって前記認証要求者に提示され」るものである点で共通する。

ウ.引用発明における「券発行装置」の「データ処理手段」では、「前記情報入力手段からのユーザーコード情報と前記券発行装置の前記データ処理手段からのユーザーコード情報との照合結果に基づいて、前記記録媒体に記録された券情報が有効であるか否かを決定」し、「前記ユーザーコード情報と前記券使用装置から送信された前記ユーザーコード情報とを照合した照合結果を前記券使用装置に送信」し、これにより「記録媒体を持参したユーザーが、その記録媒体に記録された券情報の真の利用者であるか否かを判別することができる」のであるから、「券発行装置」には「真の利用者」の「ユーザーコード情報」が記憶されていることは明らかであり、「記録媒体を持参したユーザーが、その記録媒体に記録された券情報の真の利用者である」と判別されるのは、該「記録媒体」に記録される「ユーザーコード情報」と「券発行装置」に記憶される「真の利用者」の「ユーザーコード情報」とが一致したときにほかならない。
したがって、引用発明における「ユーザーコード情報」は「前記提示された認証用バーコードが記憶されていたとき前記被認証者が認証される」「認証用バーコード」であるとも言える。

なお、この点に関して、請求人は審判請求書の【請求の理由】の「(3)原査定の誤りについて」において「上記2に関して、・・(中略)・・ここで引用発明では、券を持参した者、即ち券の使用時における券の所持者が、券の発券を行った者であるとの推定のもとで、ある程度のレベルでの被認証者の認証を行っている、といえる。」と認めている。

エ.そして、引用発明は「ユーザーが券を発注して購入する発券システムによる発券処理方法」であり、「券発行装置」の「データ送受信手段」は「前記ユーザーコード情報を前記ユーザー装置に送信する」ものであるところ、上記ア.でも述べたように「ユーザーコード情報」は「被認証者に付与」される「認証用バーコード」と言えるものであるから、引用発明も本件補正発明と同様に「認証用バーコードを被認証者に付与するバーコード付与方法」と言えるものである。

オ.よって、引用発明と本件補正発明とは「認証要求者の顧客である被認証者に付与されると共に記憶される前記被認証者に固有の認証用バーコードであって、前記被認証者が提示することによって前記認証要求者に提示され、前記提示された認証用バーコードが記憶されていたとき前記被認証者が認証される、認証用バーコードを被認証者に付与するバーコード付与方法」と言えるものである点で共通する。

(2)
ア.引用発明における「券発行装置」は、本件補正発明における「認証装置」に対応付けられるものであるところ、前者は「前記ユーザー情報記憶部に記憶されるユーザー情報から、前記ユーザー装置から送信されるユーザー識別情報に対応するユーザー情報を読み出し、このユーザー情報を用いて前記ユーザーコード情報を作成する」処理や、「前記ユーザーコード情報と前記券使用装置から送信された前記ユーザーコード情報とを照合した照合結果を前記券使用装置に送信」する処理等を行っているのであるから、「認証装置」と言えるものである。

イ.
(ア)引用発明における「ユーザー識別情報」は、本件補正発明における「発信者番号」に対応付けられるものであるところ、両者とも被認証者の「識別情報」と言えるものである。

(イ)引用発明における「ユーザー装置から送信されるユーザー識別情報」は、「前記ユーザー情報記憶部に記憶されるユーザー情報から、前記ユーザー装置から送信されるユーザー識別情報に対応するユーザー情報を読み出し、このユーザー情報を用いて前記ユーザーコード情報を作成する」ために用いられ、この「ユーザーコード情報」は「ユーザー装置に送信」されるのであるから、その受信が「ユーザーコード情報を作成」し「ユーザー装置に送信」するためになされるものであることも明らかである。

(ウ)また、本件補正発明における「バーコード要求信号」は「被認証者の発信者番号を含む」ものであるところ、該「バーコード要求信号」と「発信者番号」との関係は必ずしも明確なものではなく、この記載が意味するものとしては、例えば、「発信者番号」の他には何の情報も含まずにヘッダ等を付加しただけのものを「バーコード要求信号」として送受信する態様(以下「態様1」と記す。)、「発信者番号」以外の情報(例えば、「店舗」の情報)と「発信者番号」とを別個の信号に構成し、これらを「バーコード要求信号」と総称して、別々に送受する態様(以下「態様2」と記す。)、「発信者番号」以外の情報を「発信者番号」と結合して一つの「バーコード要求信号」として送受する態様(以下「態様3」と記す。)が想定できる。

(エ)一方、上記引用文献記載事項1-13?1-15、1-19等からは、引用発明の態様として「発券要求情報」と「ユーザー識別情報」とを別々に送受信するものが読み取れるところ、この引用発明の態様における「ユーザー識別情報」を送受信するための信号は、本件補正発明を上記態様1と仮定した場合における「バーコード要求信号」に対応付けることができ、「前記被認証者の識別情報を含むバーコード要求信号」と言えるものである。

(オ)また、この引用発明の態様における「発券要求情報」や「ユーザー識別情報」等の一連の情報を送受するための複数の信号も、本件補正発明を上記態様2と仮定した場合における「バーコード要求信号」に対応付けることができ、これも「前記被認証者の識別情報を含むバーコード要求信号」と言えるものである。

(カ)さらに、上記引用文献記載事項1-16等からは引用発明の態様として「発券要求情報」に「ユーザー識別情報」を含めて送受信するものが読み取れるところ、この引用発明の態様における「発券要求情報」は、本件補正発明を上記態様3と仮定した場合における「バーコード要求信号」に対応付けることができ、これも「前記被認証者の識別情報を含むバーコード要求信号」と言えるものである。

(キ)このように、本件補正発明における「バーコード要求信号」と「発信者番号」との関係をいずれに解釈しても、引用発明における「券発行装置」は「前記被認証者の識別情報を含むバーコード要求信号」を「受信する」ものであると言える。

ウ.
(ア)引用発明においては「前記通信回線は携帯電話を利用した通信システムを利用するもの」なのであるから、「発券要求情報」や「ユーザー識別情報」が「ユーザー装置」である「パーソナルコンピュータ装置」に内蔵あるいは接続された「携帯電話」を介して送受信されるものであることは明らかである。
してみると、引用発明における「券発行装置」は「発券要求情報」や「ユーザー識別情報」を「被認証者の携帯電話から通信回線を通して受信する」ものであると言える。

(イ)なお、「携帯電話を利用した通信システム」を用いる際には音声通話機能を有しない所謂「データカード」等と称される装置を用いることや、該「データカード」機能を内蔵するパーソナルコンピュータもあり、これら音声通話機能を有しない装置は本件補正発明における「携帯電話」には含まれないとする解釈も考え得る。
しかしながら、仮に該解釈をしたとしても、携帯電話は小型のパーソナルコンピュータと等価なものとして当業者に認識されていたものである(必要があれば上記引用文献記載事項3-1、上記参考文献記載事項2-2等参照)から、引用発明における「パーソナルコンピュータ装置」に代えて「携帯電話」を採用することは、当業者であれば当然のごとく想到する設計変更にすぎないものであり、これが本決定及び審決の結論に影響を与えるものではない。

(ウ)また、この点に関して、上記特願2009-070369号に関する判決であるところの、平成24年(行ケ)第10149号の判決においてはその「事実及び理由」「第4 当裁判所の判断」「1 取消事由1(相違点の看過)について」「(2)判断」「ア 上記▲1▼の主張について」に、
「また,携帯電話通信回線を使用する場合のユーザー装置は必然的に携帯電話になると考えられるから,ここでは,ユーザー装置として携帯電話を使用することが開示されていると認められる(【0078】)。」
と判示され、上記特願2000-133741号に関する判決であるところの、平成21年(行ケ)第10082号の判決においてはその「事実及び理由」「第4 当裁判所の判断」「2 相違点についての判断」「(2) 相違点の看過(その1)について」「イ 個人認証を行うか否かについて」「(イ)」「a 引用発明における記録媒体について」に、
「また,【0078】は,使用する通信回線に関する記述であるが,携帯電話通信回線を使用する場合のユーザー装置は必然的に携帯電話になると考えられるから,ここでは,ユーザー装置として携帯電話を使用することが開示されている。」
と判示されている。

エ.したがって、引用発明と本件補正発明とは、「認証装置が、前記被認証者の識別情報を含むバーコード要求信号を、被認証者の携帯電話から通信回線を通して受信するステップ」を備えている点で共通するといえる。

(3)
ア.引用発明における「ユーザー情報記憶部」は「ユーザー情報を記憶する」のであるから、「顧客データベース」とも言えるものである。

イ.そして、引用発明における「券発行装置」は「前記ユーザー情報記憶部に記憶されるユーザー情報から、前記ユーザー装置から送信されるユーザー識別情報に対応するユーザー情報を読み出し」ているところ、該「ユーザー情報記憶部に記憶されるユーザー情報」と「ユーザー識別情報」との対応をとるためには「ユーザー情報記憶部に記憶されるユーザー情報」中の「ユーザー識別情報」が「ユーザー装置から送信されるユーザー識別情報」と一致するか否かの判定をすることは明らかであり、これは「前記被認証者の識別情報が顧客データベースに記録されているか否かを判定」することにほかならない。

ウ.したがって、引用発明と本件補正発明とは、「前記認証装置が、前記被認証者の識別情報が顧客データベースに記録されているか否かを判定するステップ」を備えている点で共通するといえる。

(4)
ア.引用発明における「券発行装置」は「前記ユーザー情報記憶部に記憶されるユーザー情報から、前記ユーザー装置から送信されるユーザー識別情報に対応するユーザー情報を読み出し、このユーザー情報を用いて前記ユーザーコード情報を作成する」のであるから、引用発明も「前記被認証者に固有のバーコードを生成するステップ」を備えていると言えるものであり、また、該「ユーザー情報記憶部」に「前記ユーザー装置から送信されるユーザー識別情報」が記録されていなければ、これに「対応」する「ユーザー情報」を「読み出」すことができないことは明らかであるから、該ステップが「前記被認証者の識別情報が前記顧客データベースに記録されていたことを条件として」なされるものであることも明らかである。

イ.また、本件補正発明における「前記被認証者に固有のバーコードを生成するステップ」も「前記被認証者の識別情報が前記顧客データベースに記録されていたことを条件として」なされるものであると言える。

ウ.したがって、引用発明と本件補正発明とは、「前記認証装置が、前記被認証者の識別情報が前記顧客データベースに記録されていたことを条件として前記被認証者に固有のバーコードを生成するステップ」を備えている点で共通するといえる。

(5)
ア.引用発明における「券発行装置」は「前記ユーザー装置と通信手段を介して接続され」「前記データ処理手段からの前記券情報及び前記ユーザーコード情報を前記ユーザー装置に送信するデータ送受信手段」を有するものであるところ、上記(3)ウ.(ア)と同様に、「前記券情報及び前記ユーザーコード情報」が「ユーザー装置」である「パーソナルコンピュータ装置」に内蔵あるいは接続された「携帯電話」を介して送受信されるものであることは明らかであるから、「該バーコードを前記被認証者の携帯電話に通信回線を通して送信する」ものであると言える。

イ.また、引用発明においては、「前記ユーザーコード情報の照合は、前記券使用装置から送信された前記ユーザーコード情報と予め記憶されているユーザーコード情報との照合を行うもの」であるから、「券発行装置」が「作成」された「ユーザーコード情報」を記憶手段に記憶させることも行うことは明らかであるところ、この記憶手段は「バーコードで表される」「ユーザーコード情報」を蓄積するものであるから「バーコードデータベース」とも言えるものである。

ウ.したがって、引用発明と本件補正発明とは、「前記認証装置が、該バーコードを前記被認証者の携帯電話に通信回線を通して送信すると共に、該バーコードをバーコードデータベースに記憶するステップ」「を備えている」点でも共通するといえる。

(6)よって、本件補正発明は、下記一致点で引用発明と一致し、下記相違点を有する点で引用発明と相違する。

<一致点>
「認証要求者の顧客である被認証者に付与されると共に記憶される前記被認証者に固有の認証用バーコードであって、前記被認証者が提示することによって前記認証要求者に提示され、前記提示された認証用バーコードが記憶されていたとき前記被認証者が認証される、認証用バーコードを被認証者に付与するバーコード付与方法であって、
認証装置が、前記被認証者の識別情報を含むバーコード要求信号を、被認証者の携帯電話から通信回線を通して受信するステップと、
前記認証装置が、前記被認証者の識別情報が顧客データベースに記録されているか否かを判定するステップと、
前記認証装置が、前記被認証者の識別情報が前記顧客データベースに記録されていたことを条件として前記被認証者に固有のバーコードを生成するステップと、
前記認証装置が、該バーコードを前記被認証者の携帯電話に通信回線を通して送信すると共に、該バーコードをバーコードデータベースに記憶するステップと、を備えている、バーコード付与方法。」

<相違点1>
本件補正発明においては、認証用バーコードの提示が「携帯電話に表示」することでなされる点。
(これに対し、引用文献1には「記録媒体」として「手のひらサイズ等の超小型PC」等も例示されてはいる(引用文献記載事項1-17)が、引用文献1においてはこれを携帯電話とし、バーコードを該「携帯電話に表示」することは記載されていない。)

<相違点2>
本件補正発明においては、識別情報が「発信者番号」である点。
(これに対して、引用文献1には「ユーザー識別情報」として「発信者番号」を用いる旨の記載はない。)

<相違点3>
本件補正発明においては、前記被認証者の発信者番号が前記顧客データベースに記録されていたこと「のみ」を条件として前記被認証者に固有のバーコードを生成する点。
(これに対して、引用文献1にはユーザー識別情報がユーザー情報記憶部に記憶されていること「のみ」をユーザーコード情報を作成する条件とすることは示されていない。)

<相違点4>
本件補正発明においては、上記判定するステップが「前記被認証者の前記発信者番号が顧客データベースに記録されていなかったときには、前記被認証者の前記発信者番号が顧客データベースに記録されていないことを示すメッセージを前記被認証者の携帯電話に通信回線を通して送信して処理を終了する」ステップでもある点。
(これに対して、引用文献1には、かかるメッセージを送って処理を終了する旨の明示はない。)


3-5.判断
以下、上記相違点について検討する。

(1)相違点1について
上記引用文献記載事項2-1からは、携帯電話を使った取引において、バーコードリーダーにバーコードを提示するための手段として携帯電話を用いることも、本件出願時には当業者が知るところとなっていたことが認められる。
してみると、引用発明におけるバーコードを提示するための「携帯型記録媒体」を携帯電話とし、バーコードを該「携帯電話に表示」するものとすること、すなわち、引用発明を上記相違点1にかかる構成を備えるものとすることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。
そして、本件補正後の特許請求の範囲における「携帯電話」には「前記」や「該」等の接頭語が付されていないこと、及び、本願明細書の段落【0030】に「また、上記実施形態では、バーコード送受信端末が単一の携帯電話200である場合を例にしたが、バーコード装置受信端末が、電話回線に接続されたパソコン等であってもよい。この場合、発信者信号は、パソコンが接続された固定電話の電話番号となる。さらに、この態様では、認証装置からダウンロードしたバーコード信号を、一旦、パソコンで受信し、バーコードを表示可能な表示部を備えた携帯電話または他の携帯端末に入力することになる。また、この態様においては、パソコンからのバーコード要求信号に、顧客が所有する携帯電話の電話番号を示す信号を含ませることにより、バーコード信号を顧客の所有する携帯電話で直接ダウンロードさせ、パソコンをバーコード要求手段として、携帯電話をバーコード受信手段として使用することもできる。」と記載されていることなどからみて、本件補正発明は「バーコード要求信号」を送信する「携帯電話」と、「認証用バーコード」を受信する「携帯電話」と、「認証用バーコード」を表示する「携帯電話」とが単一の携帯電話である旨の限定がなされているものではなく、これらが別個の携帯電話であるもの、すなわち「被認証者の発信者番号」が「バーコード要求信号」を送信する「携帯電話」の「発信者番号」でないことも、「認証用バーコード」を表示した「携帯電話」が「顧客」の所有する「携帯電話」ではないことも包含していると解するのが妥当であり、その個人認証の確度は引用発明と格別相違するものではない。
また、携帯電話を個人認証に用いることは、古くから提唱されていたものであり、本願出願時には当業者の技術常識となっていた技術思想である(必要があれば、上記参考文献記載事項4-1、4-2、7-1等参照)から、その個人認証の確度も本願出願時の当業者であれば当然熟知しているものにほかならず、上記相違点1にかかる構成による作用効果の相違が仮にあるとしても、その作用効果は本願出願時の当業者にとっては当然のごとく予想し得る程度のものにすぎない。

(2)相違点2について
携帯電話に限らず、電話を通信手段として用いる場合には、その電話番号を用いて個人の特定や認証をすることも適宜採用されている周知慣用技術である(必要があれば、上記引用文献記載事項3-2、3-3、上記参考文献記載事項1-1、2-1(特に段落【0019】)、3-1、3-2、4-1等参照。)から、引用発明における「ユーザー識別情報」として「発信者番号」を採用すること、すなわち、引用発明を相違点2を備えるものとすることは、当業者が適宜採用し得た設計的事項にすぎないものであって、これによって格別な作用効果が奏されるものでもない。

(3)相違点3について
認証処理の簡略化等のために電話番号のみに基づいて認証処理を実行することは、要求される認証の信頼度等に応じて適宜に採用されていた周知慣用の技術思想である。(必要があれば、上記引用文献記載事項3-3、上記参考文献記載事項3-1、3-2、4-1(特に段落【0021】【0022】において「発信者電話番号」以外の情報の照合をしていない点)等参照)
一方、引用発明も「簡易に券を購入することができ」ることを課題としているように、ユーザーによる処理の簡略化を図ることは、当該分野における普遍的な課題であるから、引用発明における発券時の認証処理を簡略化するために、該周知慣用技術を採用することで、前記被認証者の発信者番号が前記顧客データベースに記録されていたこと「のみ」を条件として前記被認証者に固有のバーコードを生成するようにすること、すなわち、引用発明を相違点3を備えるものとすることは、「ユーザー識別情報」として「発信者番号」を採用した際に、当業者であれば当然のごとく想到し得る選択肢であって、適宜に採用し得た構成にすぎないものである。そして、これによっても格別な作用効果が奏されるものではない。

(4)相違点4について
不正な要求に対してその旨を通知することや、該通知の後に処理を終了させることは、証拠を挙げるまでもない(必要があれば上記引用文献記載事項4-1、5-1や上記参考文献記載事項1-2(特に段落【0030】)、4-2、5-1、6-1等参照)周知慣用の設計事項にすぎないものであり、引用発明においても、「前記被認証者の前記発信者番号が顧客データベースに記録されていなかったときには、前記被認証者の前記発信者番号が顧客データベースに記録されていないことを示すメッセージを前記被認証者の携帯電話に通信回線を通して送信して処理を終了する」ようにすること、すなわち上記相違点4に係る構成を採用することも、当業者が適宜採用し得た設計的事項にすぎないものであって、これによって格別な作用効果が奏されるものではない。

(5)してみると、本件補正発明の構成は引用発明に基づいて、当業者が容易に想到し得たものである。
そして、当該構成の採用によって奏される作用効果を総合的に勘案しても、本件補正発明の効果は当業者であれば容易に予測し得る程度のものであって、格別顕著なものではない。
よって、本件補正発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。


3-6.小結
以上のとおりであるので、本件補正後の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。


4.請求人の主張について

(1)請求人は、審判請求書において、『原査定における本発明と引用発明との間の一致点の認定は誤りであり、補正後の本願発明は、引用文献に記載された発明から容易に発明することができたものではないことが明らかである。』と主張しているところ、その根拠は下記取消事由に分けることができる。

<取消事由1>
『上記1に関し、原査定では、引用文献1に記載された発明(引用発明)において、ユーザー識別情報は、ユーザーコード情報を作成するために用いられるものであるから、ユーザー識別情報が送信されることは、ユーザーコード情報の作成及び発行を要求することにほかならならず、この結果、引用発明において「ユーザー識別情報を・・・受信する」ことは、「ユーザーコード情報の発行の要求を受信する」ことと言える、としている。
しかしながら、引用発明は、ユーザーコード情報付きの券を発行する「券発行システム」に関する発明であり、このシステムは、ユーザーコード情報だけを発行するものではない。即ち、引用発明では、ユーザーコード情報は、「券」を構成する情報の一部であるから、そもそも、引用発明において、券を構成する情報の一部であり単独の情報として存在し得ないユーザーコード情報の発行を要求する、ということ自体があり得ないことである。
そして、原査定における論理構成は、引用発明では、券にユーザーコード情報が記憶されており、ユーザーコード情報を作成するためにユーザー識別情報が必要であるから、ユーザー識別情報を送ることはユーザーコード情報を要求することである、というものである。このように、原査定における論理構成は、引用発明の処理の順番を無視して、本発明の構成を念頭におき、引用発明の構成を後知恵的に本願発明の構成に適合するように解釈したものである。
また、原査定で認定しているように、ユーザー識別情報はユーザーコード情報を作成するために必要な情報ではあるが、ユーザー識別情報は課金処理に際しても使用されるものであるから、ユーザーコード情報を作成するためだけに券発行装置に送られるものではない。このことからも、ユーザー識別情報を送ることが、必然的に、ユーザーコード情報の作成を要求している、ということはできない。
この点からも、上記認定は、引用文献1の開示の範囲を超えて、引用発明の認定を行っていることは明らかである。』

<取消事由2>
『上記2に関して、原査定では、引用発明において「ユーザーによる券の使用が可能となる」ことは、本願でいう「被認証者の認証」を行っているものといえる、としている。
ここで引用発明では、券を持参した者、即ち券の使用時における券の所持者が、券の発券を行った者であるとの推定のもとで、ある程度のレベルでの被認証者の認証を行っている、といえる。
これに対して、本発明は、携帯電話という所有者に対する一身専属性が高い媒体を用いることによって極めて高いレベルの認証を行っている、という点において、引用発明で行っていると原査定が認定する「認証」と、大きく異なっている。
例えば、券のような紙媒体は、金券ショップ等でもごく普通に販売されているものであり、転々と流通することが一般的である。従って、券の使用時に券を所持していた者が、発券を受けた者と一致していないことは、ごく一般的に起こりえることであり、引用発明のように紙媒体に印刷された券の所持者が、券の発券を行った者であるとの推定のもとで行う認証は極めて精度が低いものである。
これに対して、携帯電話は、上記のような紙媒体とは異なり、転々と流通とすることは通常は起こり得ない。仮に、携帯電話が転々と流通するとすれば、それは携帯電話の機体のみであり、「発信者番号」を内蔵した状態では起こりえないことである。したがって、携帯電話を媒体として用いて行われる個人認証と、紙媒体を媒体として行われる個人認証とを、同一のレベルで見ることができないことは明らかである。
そして、本発明は、携帯電話の一身専属性を利用して、紙媒体を用いた場合よりも個人認証の確度が著しく向上している、という作用・効果を奏しており、このような作用・効果は、紙媒体を利用した場合には得られないことは明らかである。
また、引用文献1〔0021〕には、記録媒体の例が例示されているが、ここに例示されている記録媒体は全て、単独で転々と流通し、単独で使用し得る機器であるのに対し、発信者番号を有する携帯電話は、通信事業者と契約を行っており、ある程度のレベルで携帯電話の所有者の身元が特定されている機器である。したがって、携帯電話が有する所持者との関係は、引用文献1〔0021〕の記録媒体が有する所持者との関係と、本質的に異なっている。
このため、仮に、引用発明において個人認証を行うことができるとしても、この個人認証は、本発明で達成することができる個人認証のレベルより、確度が低い個人認証であることは明らかであり、引用発明が奏しうる作用・効果を、本発明が奏し得る作用・効果と同一視することはできない。』

<取消事由3>
『上記3に関して原査定では、本願請求項1においても『「被認証者の発信者番号が顧客データベースに記録されているか否かの判定」が無条件で行われる場合に限らず、引用発明のように、ユーザー識別情報がユーザー情報記憶部に記録されているか否かの判定が条件付きで行われる場合をも包含するものである』ことを理由として、ユーザーコード情報を生成することは、ユーザー識別情報がユーザー情報記憶部に記録されていると判定された場合に行われる処理であることは自明である、と認定した。
これに対して出願人は、上記手続補正書により該当箇所を補正し、「前記認証装置が、前記被認証者の発信者番号が前記顧客データベースに記録されていたことのみを条件として前記被認証者に固有のバーコードを生成する」ものとした。
これにより、本発明では、被認証者の発信者番号が顧客データベースに記録されていた場合には、無条件でバーコードを生成する構成となった。』

<取消事由4>
『(4)その他
上記手続補正書により、本発明は、「前記被認証者の前記発信者番号が顧客データベースに記録されていなかったときには、前記被認証者の前記発信者番号が顧客データベースに記録されていないことを示すメッセージを前記被認証者の携帯電話に通信回線を通して送信して処理を終了する」構成を有するものとされた。
引用発明においては、ユーザー情報記憶部にユーザー識別情報が記憶されていない場合に、どのような処理を行うか明確に開示されておらず、この構成は、他の文献においても記載されていない。』

そこで、これらの取消事由について検討する。


(2)取消事由1について
ア.本件補正発明における「バーコード要求信号」については「前記被認証者の発信者番号を含む」との限定が付されているだけであり、本件補正後の請求項1には「認証装置」から「被認証者の携帯電話に通信回線を通して送信」される情報が「バーコード」のみである旨の限定もなされてはいない。
さらに、本願明細書の発明の詳細な説明の段落【0012】には「尚、表示部206には、バーコード400に加えて、登録の有効期限402や他のメッセージ404等を表示させるて利便性を向上させてもよい。また、バーコード要求信号に応答して、例えば図5に示すような、このシステムで認証を受けることができる店舗の選択肢A106、B108、C410、D412、E414を表示する画面を、顧客の携帯電話200の表示部206に送り、顧客に選択をさせるようにしてもよい。」と、段落【0028】には「この場合には、バーコード要求信号に、どの店舗で用いるバーコードを認証付与を要求するかを示す信号を含めるのがよい。また、バーコード要求信号に応答して、例えば図5に示すような、このシステムで認証を受けることができる店舗の選択肢A106、B108、C410、D412、E414を表示する画面を、顧客の携帯電話200の表示部206に送り、顧客に選択をさせるようにしてもよい。」とある。
これらのことからみて、本件補正発明を、「バーコード要求信号」に応答して「認証装置」が「被認証者の携帯電話に通信回線を通して送信」する情報が「バーコード」のみであるものに限定され、「バーコード要求信号」が「バーコード」のみを要求するものであると解釈することは妥当ではない。
したがって、引用発明における「ユーザーコード情報」が「券を構成する情報の一部であり単独の情報として存在し得ない」ものであることをもって、『引用発明において「ユーザー識別情報を・・・受信する」ことは、「ユーザーコード情報の発行の要求を受信する」ことと言える』とした原審の認定を誤りであるとすることはできない。

イ.なお、上記引用文献記載事項1-1等に示されるごとく、引用文献1には「記録媒体」に記録する情報は「前記券情報及び前記ユーザーコード情報の少なくとも一方」でよい旨が明記されており、引用文献1の記載からは当然に「ユーザーコード情報」のみを記憶する発明も読み取ることができ、この場合に不要な「券情報」を送受しないようにすることは、当業者であれば容易に想到し得る設計変更にすぎないものである。
してみると、仮に本件補正発明における「バーコード要求信号」を「バーコード」のみを要求するものであるとの限定解釈ができるとしても、本件補正発明に進歩性を認めることは到底できないものである。

ウ.上記「3-3.引用発明の認定」の(10)で述べたように、引用文献1記載の「ユーザー識別情報」が「ユーザー装置」から送信されるものであることは明らかであり、また、上記「3-4.対比」の(2)で述べたように、「ユーザー識別情報」の受信が「ユーザーコード情報を作成」し「ユーザー装置に送信」するためになされるものであることも明らかであるから、『「ユーザーの識別情報」は、ユーザーコード情報の発行を要求するために送信されているものといえ、当該「ユーザー識別情報」を受信することは、ユーザーコード情報の発行の要求を受信するといえるものである。』との原査定の論理構成に何ら誤りは認められない。したがって、「引用発明の処理の順番を無視して、本発明の構成を念頭におき、引用発明の構成を後知恵的に本願発明の構成に適合するように解釈したものである」との請求人の主張も妥当なものではない。

エ.また、引用文献1においては上記引用文献記載事項1-16等に「発券要求情報に含まれるユーザー識別情報」を課金に用いる態様の例示はあるものの、これは「課金用識別情報」を用いずに課金を行う態様の説明の中での記載であり、上記引用文献記載事項1-13?1-15に開示される「課金用識別情報」を用いて課金を行う態様においても「ユーザー識別情報」を課金に用いる旨を説明しているわけではない。
また、引用文献1における特許請求の範囲の記載等から見て「課金」が必須の処理でないことは明らかである。
してみると原審において『「ユーザーの識別情報」が送信される技術的意義(目的)は、ユーザーコード情報の作成及び発行を要求することに求めるほかはない』として『「ユーザーの識別情報」は、ユーザーコード情報の発行を要求するために送信されているものといえ、当該「ユーザー識別情報」を受信することは、ユーザーコード情報の発行の要求を受信するといえるものである。』と認定した点にも誤りがあるとは言えず、「ユーザー識別情報を送ることが、必然的に、ユーザーコード情報の作成を要求している、ということはできない。」との請求人の主張も妥当でない。

オ.なお、本件補正後の請求項1には「バーコード要求信号」が「認証装置」において如何なる処理に用いられるのかの限定はなく、本願の発明の詳細な説明にも「バーコード要求信号」が「バーコード」の生成以外の目的に一切用いられない旨の記載があるわけではない。
したがって、仮に上記引用文献記載事項1-16等に例示される「発券要求情報に含まれるユーザー識別情報」を課金に用いる態様のもの、すなわち「ユーザー識別情報」が「ユーザーコード情報を作成するためだけに券発行装置に送られるものではない」ものと本件補正発明とを比較しても、この点が相違点となるものではない。

カ.さらに、引用文献1における特許請求の範囲の記載等から見て引用発明において「課金」が必須の処理でないことは明らかであり、また、課金はするものの「ダイヤルQ^(2)サービスを利用する方法」(引用文献記載事項1-20)で課金するものも開示されていることから、「ユーザーコード情報」を課金に用いない態様も引用文献1の記載から読み取ることもできる。
してみると、仮に本件補正発明における「バーコード要求信号」を「バーコード」の要求のみに用いられるものであるとの限定解釈ができるとしても上記「3-4.対比」での一致点の認定が覆るものではなく、本件補正発明に進歩性を認めることは到底できないものである。

キ.なお、この点に関連して、上記特願2009-070369号に関する判決であるところの、上記平成24年(行ケ)第10149号の判決においてはその「事実及び理由」「第4 当裁判所の判断」「1 取消事由1(相違点の看過)について」「(2)判断」「ウ 上記▲3▼の主張について」に、
『上記(1) イ認定の事実によれば,引用文献1には,ユーザーコード情報作成部206には,情報判別部200において判別されたユーザー識別情報が送られ,発券要求情報判別部201から送られた判別結果が発券可能であることを示すときには,ユーザー情報記憶部207に記憶されるユーザー情報から,送信されるユーザー識別情報に対応するユーザー情報を読み出し,このユーザー情報を用いてユーザーコード情報を作成すること(【0103】),課金処理を行うときには,課金用識別情報の代わりに,ユーザー情報記憶部207に記憶されるユーザー情報を用いて,課金を行ってもよく,具体的には,ユーザー情報記憶部207に記憶される複数のユーザー情報から,発券要求情報に含まれるユーザー識別情報に対応するユーザー情報を読み出し,このユーザー情報に含まれる銀行口座番号やクレジットカード番号に基づいて,課金を行うこと(【0104】)が記載されており,また,ユーザーは,例えば会員として登録し,券発行装置1に対してクレジットカード番号を知らせておくことにより,発券要求情報を送信する度に,券発行装置1に対してクレジットカード番号を送信することなく,券の予約をすることができること(【0172】),券発行装置1のデータ処理手段11には,ユーザー情報を記憶するユーザー情報記憶手段を含み,このユーザー情報記憶手段には,ユーザー装置2から,ユーザーの名前,住所,券の代金の支払いに利用する銀行の口座番号やクレジットカード番号等を含むユーザー情報が予め送信されて記憶されていること(【0173】)も記載されている。これらの記載を総合すると,引用文献1において,発券要求情報がユーザー識別情報を含むことが示されているといえる。
したがって,引用発明において,バーコード要求信号は「被認証者の個人特定情報を含む」といえるから,「被認証者の個人特定情報を含むバーコード要求信号」との点を,本願発明と引用発明との一致点とした審決の認定に誤りはない。
これに対し,原告は,引用文献1の請求項1,段落【0099】,【0100】,【0128】,【0168】の記載から,発券要求情報にユーザー識別情報が含まれることはあり得ない旨主張する。たしかに,段落【0099】には,発券要求情報とユーザー識別情報は別であるかのような記載もあるが,これは引用発明の実施態様の1つにすぎず,上記のように,引用文献1には,発券要求情報にユーザー識別情報を含む実施態様も示されているといえるから,原告の主張は理由がない。』
と判示され、上記特願2000-133741号に関する判決であるところの、平成18年(行ケ)第10203号の判決においてはその「事実及び理由」「第5 当裁判所の判断」「1 取消事由1(審決判断における相違点の看過)について」「(3)」に
『引用発明1における「発券要求情報」は,確かに,所望の券の発行を要求するものであるといえるが,その発券(ユーザー装置への券情報の送信)には,券情報とともに,当該券に対応するユーザーコード情報が付加されるものであり,ユーザーコード情報は,照合を行うための必須の構成要素であること,ユーザーコード情報には,各ユーザー固有のユーザー識別情報を含むものであって,これにより,ユーザーの個人認証を行う態様が存在し得ることが認められる。そうすると,「発券要求情報」は,ユーザーコード情報の発行要求を含むものということができ,「本件発明7において,バーコードの送信とバーコードデータベースへの記録が,バーコードの付与の要求に応じている点について,・・・引用発明1の『発券要求信号』の場合と格別差異があるわけではない。」とした審決の認定に,原告主張の誤りはない。』
と判示され、また、同じく、特願2000-133741号に関する判決であるところの、平成21年(行ケ)第10082号の判決においてはその「事実及び理由」「第4 当裁判所の判断」「2 相違点についての判断」「(3) 相違点の看過(その2)について」「ア 引用発明における課金処理の有無」「b 判断」及び「イ 引用発明における,所望する券の条件が選択されるとの構成の有無」「b 判断」に、それぞれ、
『上記記載及び引用例の他の請求項の記載にみられるように,引用発明の請求項の1ないし12には課金処理に関する構成は示されておらず,請求項13で初めて課金処理の構成が示されているが,その請求項13においても,課金処理の手段が付加されるのは,請求項3ないし12に限定されている。そうすると,引用例の請求項1,2の発明には課金処理の構成は示されていないというべきであり,課金処理に関する構成を相違点としなかった本件審決の判断に誤りはない。
この点,原告は,引用発明において,発券前に課金することが前提となると主張する。しかし,原告の主張は失当である。すなわち,取引通念上,有料発券が通常であり,発券前に課金されるのが一般的であるとしても,そのことから当然に引用例の請求項1,2の発明が課金処理を含んだ構成と理解することはできない。引用例の特許請求の範囲及び発明の詳細な説明をみても,引用例の請求項1,2の発明が課金処理を含むとの記載はなく,原告の主張は採用の限りでない。』
『引用発明の特許請求の範囲の請求項1は,1の(2)のとおりであり,引用発明においては,ユーザーの発券要求情報には,所望する券の内容を示して発券要求するものと解される。
しかし,「券の内容を特定する情報の送信」の有無は,認証について技術な意味を持つ「ユーザーコード情報の送信」と直接関連するものではないから,その点の相違点の看過は,本件審決に影響を及ぼさない。したがって,相違点の看過を指摘するこの点の原告の主張は,採用の限りでない。』
と判示されている。

ク.したがって、取消事由1が上記「3-4.対比」「3-5.判断」における対比判断を覆し得るものではない。

(3)取消事由2について
ア.上記「3-5.判断」「(1)相違点1について」で述べたとおり、引用発明におけるバーコードを提示するための「携帯型記録媒体」を携帯電話とし、バーコードを該「携帯電話に表示」するものとすることによる作用効果も本願出願時の当業者にとっては当然のごとく予想し得る程度のものである。

イ.なお、この点に関連して、上記平成24年(行ケ)第10149号の判決の「事実及び理由」「第4 当裁判所の判断」「2 取消事由2(相違点1及び相違点2に関する判断の誤り)について」においては、
『原告は,本願発明は「携帯電話」を構成要素とすることにより,画期的なものとなったから,本願発明に係る相違点1及び2の構成は格別のものではないとした審決の判断には誤りがある旨主張する。
しかし,上記1(2) アのとおり,引用文献1の段落【0078】記載の携帯型記録媒体は,これを認証のための技術的手段を搭載する媒体としてみるときには,本願発明の携帯電話と同様の技術的意義を有するといえるから,引用文献1には,ユーザー装置として携帯電話を使用することが示されていると認められる。そうすると,相違点1に係る本願発明の構成が「携帯電話」であっても,個人認証を行うとの点について,格別のものということはできない。
また,引用文献2には,「携帯電話の購入者に個人を識別するためのバーコードを与え,来店時に携帯電話の画面にバーコードを呼び出してもらう。それを店員がバーコードリーダーで読めば,現金やカードを使わずに決済ができる仕組みだ。」との記載があり(甲2),携帯電話を使った取引において,バーコードリーダーにバーコードを提示するための手段として携帯電話を用いることが記載されているといえる。そうすると,相違点2に関し,「個人認証用バーコードの提示」が「携帯電話に表示」される本願発明の構成が格別なものということはできない。
したがって,相違点1及び2に関する上記審決の判断に誤りがあるということはできない。
これに対し,原告は,携帯電話の一身専属性,常時携帯性を強調し,これを個人認証に利用できることを理由として,相違点1及び2に係る本願発明の構成が「携帯電話」を有することは画期的である旨主張する。しかし,上記1(2) アのとおり,携帯電話を他人に貸与することが全くあり得ないまではいえないから,その一身専属性,常時携帯性は絶対的なものではなく,携帯電話を個人認証に使用する場合の正確性には,引用発明において携帯型記録媒体を使用する場合と同様,限界があるといわざるを得ない。原告の主張は採用できない。』
と判示されている。

ウ.したがって、上記取消事由2が上記「3-5.判断」における判断を覆し得るものではない。

(4)取消事由3について
ア.上記「3-5.判断」「(3)相違点3について」で述べたとおり、引用発明においても前記被認証者の発信者番号が前記顧客データベースに記録されていたこと「のみ」を条件として前記被認証者に固有のバーコードを生成するようにすることは、当業者であれば当然のごとく想到し得る選択肢であって、要求される認証の信頼度等に応じて適宜に採用し得た構成にすぎず、これによって格別な作用効果が奏されるものでもない。

イ.なお、この点に関連して、上記平成24年(行ケ)第10149号の判決の「事実及び理由」「第4 当裁判所の判断」「3 取消事由3(相違点3及び相違点4に関する判断の誤り)について」「(2) 判断」「イ 相違点4について」においては、
『上記(1) 認定の事実によれば,参考文献3には,「モバイル情報サービス」においては,通信端末を特定するための加入者番号とユーザ認証情報として送信された情報が,予め記憶したこれらの情報の組み合わせと一致して初めて接続が許可されるので,第三者がユーザ認証情報であるユーザIDおよびパスワードを不正に入手して,顧客データベースに登録されている通信端末100とは異なる通信端末100’から接続要求を発信しても接続を許可されることはなく,顧客データベースに登録された通信端末を不正なユーザが使用した場合であっても,当該不正なユーザは,ユーザ認証情報であるユーザIDおよびパスワードを知らなければ接続を許可されないこととなることが記載され,また,参考文献4には,発明に係る携帯電話機等の端末装置は,通信機能を備え,ネットワークを介してサーバに接続するための認証時に,認証用データをサーバに送信する端末装置において,端末番号と電話番号との少なくとも一方を記憶する記憶手段と,認証時に記憶手段が記憶する端末番号と電話番号との少なくとも一方を取得して認証用データとしてサーバに送信する送信手段とを有し,サーバのCPUは,通信部を介してデータPHS1-1からユーザ名として送信されてきた電話番号と,パスワードとして送信されてきた端末番号とを受信し,RAM22に格納したユーザ名(電話番号)とパスワード(端末番号)と,データベース24が記憶するユーザ名とパスワードとを照合し,完全に一致するものが存在するか否かを判別し,存在する場合には,データPSH1-1を登録ユーザとして認証し,接続又はサービスの提供を許可するが,存在しない場合には,接続相手を認証せず,接続又はサービスの提供を拒否することが記載されている(同ウ,エ)。そうすると,電話番号を含む顧客情報が顧客データベースに記憶されていたことのみを条件として認証し,接続又はサービスを提供し,上記の条件を満たさない場合には接続又はサービスの提供を拒否することも,本願優先日当時,当該技術分野において公知であると認められる。
したがって,相違点4に関し,引用発明の「ユーザー識別情報を含むユーザー情報が前記ユーザー情報記憶部に記憶されていることを条件としてユーザーコード情報を作成する」との構成を,本願発明の「発信者番号を含む顧客データが前記顧客データベースに記録されていること『のみ』を条件として前記被認証者に固有の個人認証表バーコードとして表示バーコードを生成する」との構成に変更することは,当業者にとって格別のこととはいえない。
なお,原告は,引用発明では,「発券要求情報」が有効と判断されることに加え,課金処理がなされることも条件とするから,引用発明と本願発明とは構成が異なる旨主張する。しかし,引用文献1の請求項1ないし12には課金処理に関する構成は示されず,課金手段を含むことが可能であることが示されるにすぎないから,引用発明において,課金処理がなされることがコード化の条件になっているとはいえず,原告の主張は採用できない。』
と判示されている。

ウ.したがって、上記取消事由3が上記「3-5.判断」における判断を覆し得るものではない。

(5)取消事由4について
ア.上記「3-5.判断」「(4)相違点4について」で述べたとおり、引用発明においても、「前記被認証者の前記発信者番号が顧客データベースに記録されていなかったときには、前記被認証者の前記発信者番号が顧客データベースに記録されていないことを示すメッセージを前記被認証者の携帯電話に通信回線を通して送信して処理を終了する」ようにすることも、当業者が適宜採用し得た設計的事項にすぎないものである。

イ.なお、この点に関連して、上記平成24年(行ケ)第10149号の判決においてはその「事実及び理由」「第4 当裁判所の判断」「4 取消事由4(相違点5に関する判断の誤り)について」に、
『原告は,引用文献1において,ユーザーが希望する条件の券が存在しない場合,販売者は再検索を促し,販売者が取引を一方的に終了させることはあり得ないのに対し,本願発明は,発信者番号を再度要求しても送られてくる情報は全く同一の発信者番号であるので被認証者に対して発信者番号を再度要求することはあり得ないから,引用文献1に基づいて,相違点5に係る本願発明の構成を採用することは当業者が通常行うこととした審決の判断は誤りである旨主張する。
しかし,引用文献1の段落【0018】には「ユーザー装置から送信される発券要求情報が適正であるときのみ券情報を検索するので,券発行装置では券発行処理を確実に行うことができる。」,段落【0054】には「券発行装置は,発券要求情報が有効であると判別されたときのみ,券情報の検査動作及びユーザーコード情報の作成動作を行うので,より正確な発券の要求に対して,券情報及びユーザーコード情報を出力することができる。」との記載がある。また,上記3(1) ウ,エ認定のとおり,電話番号を含む顧客情報が顧客データベースに記憶されていたことのみを条件として認証して,接続又はサービスを提供し,上記の条件を満たさない場合には,接続又はサービスの提供を拒否することは,当該技術分野では公知といえる。
したがって,引用文献1の記載及び公知技術から,相違点5に係る本願発明の構成に想到することは,当業者にとって容易というべきであり,上記審決の判断に誤りがあるとはいえない。
これに対し,原告は,引用発明は,簡易に券を購入することができる発券システムを提供するものであって,ユーザーが会員か否かを判別するものではないから,発券要求情報が,券情報を検索するために十分な情報でなかった場合,処理を終了することはあり得ない旨主張する。しかし,上記のとおり,引用文献1においても,発券要求情報(上記1(2) イのとおり,ユーザー識別情報を含むことが示されると認められる。)が適正でないときには券情報の検索を行わないことが記載されているから,引用発明において,発券要求情報が,券情報を検索するために不十分であった場合,処理を終了することはあり得るし,このような場合に,ユーザー情報がユーザー情報記憶部に記憶されていなかった場合を含まないと解する根拠は見いだせないから,原告の上記主張は採用できない。』
と判示されている。

ウ.したがって、上記取消事由4が上記「3-5.判断」における判断を覆し得るものでない。


(6)以上のとおりであるから、審判請求書における主張によって、上記「3-6.小結」における結論が覆るものではない。


5.回答書について

(1)回答書の補正案について
ア.上記回答書では、請求項1を
「認証要求者の顧客である被認証者に付与されると共に記憶される前記被認証者に固有の認証用バーコードであって、前記被認証者が携帯電話に表示することによって前記認証要求者に提示され、前記提示された認証用バーコードが記憶されていたとき前記携帯電話を持参した者が予め登録された前記認証要求者の顧客であることが認証される、携帯電話に表示される認証用バーコードを被認証者に付与するバーコード付与方法であって、
認証装置が、前記被認証者の発信者番号を含むバーコード要求信号を、被認証者の携帯電話から通信回線を通して受信するステップと、
前記認証装置が、前記被認証者の発信者番号が顧客データベースに記録されているか否かを判定し、前記被認証者の前記発信者番号が顧客データベースに記録されていなかったときには、前記被認証者の前記発信者番号が顧客データベースに記録されていないことを示すメッセージを前記被認証者の携帯電話に通信回線を通して送信して処理を終了するステップと、
前記認証装置が、前記被認証者の発信者番号が前記顧客データベースに記録されていたことのみを条件として前記被認証者に固有のバーコードを生成するステップと、
前記認証装置が、該バーコードを前記被認証者の携帯電話に通信回線を通して送信すると共に、該バーコードをバーコードデータベースに記憶するステップと、を備えている、バーコード付与方法。」
とする補正案、すなわち「携帯電話を持参した者」が、認証要求者の管理するデータベース等に予め登録されている顧客であることを認証できることをより明確にすることを目的とした補正案が示されている。

イ.しかしながら、上記「3-4.対比」(1)のア.(イ)及びウ.で述べたように引用発明における「ユーザー」は「認証要求者の顧客である被認証者」とも言えるものであり、引用発明における「ユーザーコード情報」は「前記提示された認証用バーコードが記憶されていたとき前記被認証者が認証される」「認証用バーコード」であるとも言えるものである。そして、引用発明においても「ユーザー」が券の使用をする際に「ユーザーコード情報」が記録された「携帯型記録媒体」を持参することは明らかであるから、該「携帯型記録媒体」も、「前記提示された認証用バーコードが記憶されていたとき」これ「を持参した者が予め登録された前記認証要求者の顧客であることが認証される」ものにほかならない。してみると、該補正案によって追加された事項は、引用発明を上記相違点1にかかる構成を備えるものとすることによって必然的に採用される事項を記載したものに過ぎず、該補正案による補正によって引用発明との間に、新たな相違点が生じるものではない。

ウ.なお、当該補正案は、「バーコード要求信号」を送信する「携帯電話」と、「認証用バーコード」を受信する「携帯電話」と、「認証用バーコード」を表示する「携帯電話」とが単一の携帯電話である旨を限定することを意図したものと推測することもできるが、携帯電話を用いて登録や予約、認証情報の受け取り等の認証のための準備の手続を要する認証処理において、これらの複数の手続を共通の携帯電話で行うことは、当業者が通常採用する常套手段に過ぎないものである(必要があれば、上記参考文献記載事項1-2において「ステップS31」?「ステップS34」で用いる携帯電話と、「ステップS35」?「ステップS36」で用いる携帯電話が、共通の「携帯電話1a」である点、上記参考文献記載事項2-2における「予約処理」に用いる携帯電話と、上記参考文献記載事項2-3における「入場処理」に用いる携帯電話とが、共通の「携帯電話33」である点、上記参考文献記載事項4-1において「暗証番号通知要求」を行う携帯電話器と「暗証番号」が「通知される」携帯電話器とが共通の「携帯電話器10」である点等参照。)から、仮に上記意図が反映された補正がなされたと仮定しても、この点に進歩性を認め得るものではない。

エ. したがって、上記補正案に示される補正がなされたとしても、当該補正後の請求項1に係る発明は、上記本件補正発明と同様に、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、該補正案に基づく補正の機会を設けることに益はない。

(2)回答書における主張について
なお、上記回答書においては
『即ち、引用文献1では、券に記載されている内容と、発券時にデータベースに記憶した内容とを対比して券の正当性を照会しているに過ぎないのに対して、本発明では、「携帯電話の持参者=携帯電話の正当な所持者=認証要求者の顧客」という関係を用いて認証要求者の顧客を認証するようにしたものである。
引用文献1の発券方法では、媒体として券等の転々と流通する紙の券を介して照会を行っているため、券の持参者は、必ずしも券の正当な所持者であるということはできず、従って、券の持参者=正当な顧客である、ということはできない。このような作用効果の差異は、本発明で用いている携帯電話という表示媒体の性質と、紙表示媒体の性質との差異によって生じるものである。
そして本発明は、引用文献1に記載された紙媒体を単に電子媒体である携帯電話に置き換えただけのものではなく、メモリースティックのような数々の電子媒体の中から「所持者との一身専属性が極めて高い」という特別な性質をもつ携帯電話を選択し、完成したものである。
この点について、前置報告書では、引用文献2に携帯電話にバーコードを提示することが記載されていることを根拠に本発明の進歩性を否定している。しかしながら、引用文献2には、携帯電話にバーコードを提示する、という事実が記載されているだけであり、そのバーコードがどのような性質を有するものであるのか、どのような処理によって生成されたものであるのか等について一切記載されていない。従って、引用文献2には、「携帯電話の一身専属性を用いて顧客の認証を行う」という技術的思想について何ら記載も示唆もされていないことは明らかである。
以上のように、審判請求書において指摘した事項に加え、上述した事項からも明らかなように、本発明は引用文献1及び2に基づいて容易になし得たものではない。』
との主張がされているが、上記「3-5.判断」「(1)相違点1について」及び「4.請求人の主張について」「(3)取消事由2について」等で述べたとおりであるから、この主張も採用できない。


6.むすび
上記「2.本件補正の目的について」のとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号に掲げる事項を目的としたものであるところ、上記「3.独立特許要件について」のとおり本件補正後の請求項1に係る発明は特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下しなければならないものである。

よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。



第3.本件審判請求の成否について

1.手続の経緯、本願発明の認定
本願の手続の経緯は上記「第1.手続の経緯」記載のとおりのものであり、さらに、平成25年4月10日付けの手続補正は上記「第2.補正の却下の決定」のとおり却下された。
したがって、本願の特許請求の範囲は、上記「第2.補正の却下の決定」「1.本件補正の内容」の本件補正前の特許請求の範囲に記載したとおりのものであり、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」と記す。)は、そこに【請求項1】として記載したとおりのものである。

2.先行技術・引用発明の認定・対比・判断
上記「第2.補正の却下の決定」「3-2.先行技術」で示したとおり、本願の出願前に頒布又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となり、原審の拒絶の査定の理由である上記平成24年10月15日付けの拒絶理由通知において引用された上記引用文献にはそれぞれ上記引用文献記載事項が記載されており、本願の出願前に頒布又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となされた上記参考文献にはそれぞれ上記参考文献記載事項が記載されている。
そして、上記引用文献1には上記「第2.補正の却下の決定」「3-3.引用発明の認定」で認定したとおりの引用発明が記載されていると認められる。
上記「第2.補正の却下の決定」「3.独立特許要件について」で検討した本件補正発明は、本願発明に対し上記「第2.補正の却下の決定」「2.本件補正の目的について」で述べた限定的減縮をしたものであるから、本願発明は、上記本件補正発明から当該限定的減縮により限定される要件をなくしたものに相当する。
そして、本願発明の構成要件を全て含み、更に他の要件を付加したものに相当する上記本件補正発明は、上記「第2.補正の却下の決定」「3-4.対比」及び「3-5.判断」で論じたとおり、上記引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
したがって、本願発明も同様の理由により、上記引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

3.むすび
以上のとおり、本願請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、本願を拒絶すべきものとした原審の拒絶査定は妥当なものである。

よって、上記結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-02-12 
結審通知日 2014-02-13 
審決日 2014-02-27 
出願番号 特願2010-53354(P2010-53354)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G06F)
P 1 8・ 121- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 宮司 卓佳  
特許庁審判長 山崎 達也
特許庁審判官 飯田 清司
金子 幸一
発明の名称 認証用バーコード付与方法  
代理人 倉澤 伊知郎  
代理人 井野 砂里  
代理人 熊倉 禎男  
代理人 弟子丸 健  
代理人 辻居 幸一  
代理人 松下 満  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ