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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 C12N
審判 査定不服 発明同一 特許、登録しない。 C12N
管理番号 1302414
審判番号 不服2013-17307  
総通号数 188 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-08-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-09-09 
確定日 2015-06-24 
事件の表示 特願2009-552209「イオン性洗剤によるポリメラーゼ安定化」拒絶査定不服審判事件〔平成20年 9月12日国際公開、WO2008/107473、平成22年 6月10日国内公表、特表2010-519920〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は2008年3月6日(パリ条約による優先権主張 2007年3月6日 欧州、同日 米国)を国際出願日とする出願であって、平成25年3月13日付けで特許請求の範囲が補正され、同年4月26日付けで拒絶査定がされたところ、同年9月9日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同日付けで手続補正書が提出されたものである。

第2 補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成25年9月9日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.補正の内容
平成25年9月9日付けの手続補正(以下、「本件補正」という)は、拒絶査定不服審判の請求と同時にしたものであって、補正前の請求項1と補正後の請求項1の記載は次のとおりである。
補正前:
「【請求項1】
a.組み換え型の核酸ポリメラーゼ、
b.不活性タンパク質、および
c.両性イオン性洗剤、
を含む組成物。」
補正後:
「【請求項1】
生物学的試料を精製することなく直接利用して酵素反応を行う直接酵素反応以外の酵素反応用組成物であって、
a.組み換え型の核酸ポリメラーゼ、
b.不活性タンパク質、および
c.両性イオン性洗剤、
を含む組成物。」(下線部は補正前からの補正箇所を示す。)

2.補正の適否
上記補正後の請求項1は、補正前の「組成物」の用途を「生物学的試料を精製することなく直接利用して酵素反応を行う直接酵素反応以外の酵素反応用」に限定するものであって、補正前の請求項1に係る発明と補正後の請求項1に係る発明は、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に規定された特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そこで、補正後の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という)が、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定を満たすものであるか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について検討する。

(1)本願補正発明
本願補正発明は、上記1.に「補正後」として記載したとおりのものである。

(2)先願明細書の記載
原査定の拒絶の理由において引用された、本願の優先権主張の日前である2006年7月25日を優先日として本願の出願日前の2007年7月25日に国際出願され、本願の優先権主張の日後に国際公開(国際公開第2008/013885号)され、その後、特許法第184条の4第1項に規定する翻訳文が提出された国際特許出願であるPCT/US2007/016790号(対応する国内出願番号は、特願2009-521833号)(以下、「先願」という。)の、国際出願日における国際出願の明細書(以下「先願明細書」という)には、以下の事項が記載されている。(以下、上記先願の翻訳文が記載されている特表2009-544316号公報における記載箇所で示す。下線は当審で付与した。)
そして、以下の事項は、先願における優先権主張の基礎出願である米国仮出願60/833331号(2006年7月25日出願)の出願当初明細書にも記載されている。

ア 「本発明は、核酸の増幅に係る、特に、DNAポリメラーゼの保存及び使用のための両性イオン洗剤に関する。」(【0001】)
イ 「本発明は、ポリメラーゼ及び両性イオン洗剤又は非洗浄性界面活性剤を含む反応混合物を提供する。反応緩衝液は、標的核酸の増幅に有用である。反応緩衝液は、用いられる両性イオン洗剤又は非洗浄性界面活性剤をそれぞれ約0.001%?5%(体積/体積)(V/Vとも書く)を含む。」(【0060】1?4行)
ウ 「反応緩衝液は20mMのトリスHCl(pH8.8)、10mMのKCl、10mMの(NH4)2SO4、2mMのMgSO4及び100ug/mlのBSAを含む。」 (【0070】1?3行)
エ 「本発明で使用され得る熱安定性DNAポリメラーゼとしては、Taq、Tne、Tma、Pfu、Tfl、Tth、Stoffel断片、VENT(商標)及びDEEPVENT(商標)DNAポリメラーゼ、KOD、Tgo、JDF3、並びにこれらの突然変異体、変異体及び誘導体が挙げられる(米国特許第5,436,149号、米国特許第4,889,818号、米国特許第4,965,18S号、米国特許第5,079,352号、米国特許第5,614,365号、米国特許第5,374,553号、米国特許第5,270,179号、米国特許第5,047,342号、米国特許第5,512,462号、国際公開第92/06188号、国際公開第92/06200号、国際公開第96/10640号、Barnes, W. M., Gene 112:29-35 (1992)、Lawyer, F. C., et al., PCR Meth. Appl. 2:275-287 (1993)、Flaman, J. -M, et al., Nuc. Acids Res. 22(15):3259-3260 (1994))。
一実施形態において、熱安定性DNAポリメラーゼは、Pfu DNAポリメラーゼ又はTaq DNAポリメラーゼである。さらなる実施形態において、熱安定性DNAポリメラーゼは、V93位に変異を有するPfu DNAポリメラーゼであり、このポリメラーゼはエキソヌクレアーゼ欠損である(例えば、Pfu V93、exo-)。Pfu V93、exo- DNAポリメラーゼを作製及び使用する方法は、2002年11月18日に出願された米国特許出願第10/298,680号に記載され、その全体が参照により本明細書中に援用される。別の実施形態では、ポリメラーゼは、ポリメラーゼ活性を有する融合タンパク質である(例えば、2005年7月15日に出願された米国特許出願第60/699,937号及び2004年3月14日に出願された米国特許公開第2005/0048530号(両方ともその全体が参照により本明細書中に援用される)に記載されたPfu DNAポリメラーゼ-Sso7)。」(【0081】、【0082】)
オ 「ポリメラーゼ及び従来の非イオン性洗剤を欠いた緩衝液の調製
非イオン性洗剤を最終保存緩衝液から除いたこと以外は標準的な製造プロトコルを使用して(洗剤非存在)、Pfu(exo+及びexo-)融合DNAポリメラーゼ(例えば、2005年7月15日に出願された米国特許出願第60/699,937号(その全体が参照により本明細書中に援用される)に記載されるような)、cPfu DNAポリメラーゼ(Stratageneのカタログ番号600154)、及びPEFを精製した。・・・・
非イオン性洗剤なしで、PCR反応緩衝液を調製した(「DF緩衝液」、洗剤無含有緩衝液)。例えば、1×cPfu DF緩衝液は、10mMのKCl、10mMの(NH4)2SO4、20mMのトリスHCl(pH8.8)、2mMのMgSO4、及び100μg/mlのBSAを含有する。・・・・
0.1% Triton X100(非イオン性洗剤)或いは1つ又は複数の両性イオン洗剤若しくは非洗浄性界面活性剤をPCR反応緩衝液に追加した。例えば、両性イオン洗剤CHAPS、CHAPSO、Anzergent 3-10、及びAnzergent 3-12をAnaTrace, Inc.(Maumee, OH)から得て、0.05%?0.5%の範囲の割合(v/v)でDF緩衝液に添加した。・・・・」(実施例1)
カ 「PCRの終点においてPfu及びPfu融合DNAポリメラーゼ活性を高めるための両性イオン洗剤の使用
0.9kb及び6kbのシステムに関して、1×cPfu DF緩衝液中でcPfu DNAポリメラーゼ40ng、又は1×Pfu融合DF緩衝液I若しくはDF緩衝液IIそれぞれの中でPfu融合DNAポリメラーゼ28ng又は224ngを使用して、PCR反応(50μl)を行った。PCR反応物は、2U/50μlのパイロコッカス・フリオサスdUTPアーゼ(PEF)、ヒトゲノムDNA 100ng、それぞれ250μMのdNTP、及び各プライマー100ngも含有していた。9kbのシステムに関して、PCR反応物(50μl)は、Pfu 80ng、1.5×cPfu DF緩衝液、2Uのパイロコッカス・フリオサスdUTPアーゼ(PEF)、ヒトゲノムDNA 200ng、それぞれ500μMのdNTP、及び各プライマー200ngから成っていた。0.1% Triton X100又は両性イオン洗剤(複数可)をPCR反応緩衝液に追加した。・・・・」(実施例2)

上記記載事項ア?ウ及びオの記載を総合すると、先願明細書には、標的核酸の増幅のための反応用組成物であって、核酸ポリメラーゼ、BSA及び両性イオン性洗剤を含む組成物が記載されている。
さらに、上記記載事項エには、使用できる核酸ポリメラーゼとして、さまざまなDNAポリメラーゼが列挙されており、上記記載事項エにおいて引用された文献を参酌すると、その多くは組み換え型のDNAポリメラーゼであるし、上記記載事項オによれば、実施例において使用されているDNAポリメラーゼも組み換え型DNAポリメラーゼである。
そうすると、先願明細書には、以下の発明が記載されていると認められる。
「標的核酸増幅のための反応用組成物であって、組み換え型核酸ポリメラーゼ、BSA及び両性イオン性洗剤を含む組成物。」(以下、「先願発明」という。)

(3)対比・判断
本願補正発明と先願発明とを対比すると、後者における「標的核酸増幅のための反応用組成物」は前者の「酵素反応用組成物」に相当し、後者における「BSA」は、前者における「不活性タンパク質」に相当するから、両者は、「酵素反応用組成物であって、a.組み換え型核酸ポリメラーゼ、b.不活性タンパク質、および、c.両性イオン性洗剤、を含む組成物。」で一致し、酵素反応用組成物を適用する酵素反応が、本願補正発明は、「生物学的試料を精製することなく直接利用して酵素反応を行う直接酵素反応以外」であるのに対し、先願発明は、そのような特定がされていない点で、一応相違する。
しかしながら、上記記載事項カによると、標的核酸として「ヒトゲノムDNA 100ng」や「ヒトゲノムDNA200ng」が記載されており、精製されたDNAを標的核酸としていると認められるから、先願発明も、生物学的試料を精製することなく直接利用して酵素反応を行うものではないといえ、上記相違点は、実質的な相違点には当たらない。

3.小括
したがって、本願補正発明は、先願明細書に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者が先願明細書に記載された発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が先願の出願人と同一でもないので、特許法第184条の13の規定により読み替えて適用される特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができない。
よって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
平成25年9月9日付け手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?18に係る発明は、平成25年3月13日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?18に記載された発明特定事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、上記第2 1.に「補正前」として記載したとおりのものである。
そして、第2 2.で述べたとおり、本願補正発明は、本願発明の特定事項の一部を限定したものであるから、本願発明は本願補正発明を包含するものであることが明らかである。
したがって、上記第2 3.で述べたとおり、本願補正発明は、先願明細書に記載された発明と同一であるから、本願補正発明を包含する本願発明も、同様に、先願明細書に記載された発明と同一である。

第4 まとめ
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、特許法第184条の13の規定により読み替えて適用される特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないから、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく、拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-01-21 
結審通知日 2015-01-27 
審決日 2015-02-09 
出願番号 特願2009-552209(P2009-552209)
審決分類 P 1 8・ 161- Z (C12N)
P 1 8・ 575- Z (C12N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 森井 文緒  
特許庁審判長 今村 玲英子
特許庁審判官 飯室 里美
小暮 道明
発明の名称 イオン性洗剤によるポリメラーゼ安定化  
代理人 特許業務法人特許事務所サイクス  

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