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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) E04D
管理番号 1302484
審判番号 不服2014-3736  
総通号数 188 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-08-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-02-27 
確定日 2015-06-25 
事件の表示 特願2009-174335号「持出部材の設置構造、その設置施工方法、及びそれを用いた外設部材の取付構造、改修構造」拒絶査定不服審判事件〔平成23年2月10日出願公開、特開2011-26859〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は、平成21年7月27日の出願であって、平成25年11月28日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成26年2月27日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものであり、当審において、平成27年1月23日付けで拒絶理由を通知し、応答期間内である同年3月30日に意見書が提出されたものである。

2 本願発明
本願の請求項1ないし5に係る発明は、特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。

「【請求項1】
屋根面に固定する第1部材と、該第1部材の表面側の全外周を覆う第2部材と、前記第1部材及び前記第2部材を連結する第3部材とからなる持出部材の設置構造であって、
前記第1部材は、屋根面に防水材を介して固定する固定部と該固定部に立設した縦杆とを備え、
前記第2部材は、前記第1部材を覆う被覆部の外側に屋根面に防水材を介して接地させる接地部を周設し、前記被覆部には前記縦杆を挿通させる挿通孔を設け、
前記第3部材は、前記縦杆に取り付けて締着することにより、前記第2部材を屋根面に圧着するものであることを特徴とする持出部材の設置構造。」

3 引用刊行物に記載された事項
当審において通知した拒絶理由で引用した本願出願前に頒布された特開平9-317111号公報(以下「刊行物1」という。)には、次の記載がある(下線は当審で付加した。)。

(1)特許請求の範囲
「【請求項1】 ねじ・釘穴付き金属板(1)に、屋根上設置機器取付用ボルト(2)を固定し、前述金属板(1)裏面に両面接着式防水素材(3)を接着した取り付け具基礎部と取付基礎部の裏面を除く全周囲を覆う、裏面に両面接着式防水素材(5)を接着した防水カバー(4)からなる平型洋風屋根用屋根上設置機器取付具。
【請求項2】 屋根葺き済みの平型洋風屋根に本発明による前述〔請求項1〕平型洋風屋根用屋根上設置機器取付具基礎部固定のために固定用ねじ・釘穴を固定個所に必要数開け、取付具基礎部(8)の両面接着式防水素材(3)のある裏面が平型洋風瓦(7)と接着するようにねじ又は釘(9)にて固定する。次に〔請求項1〕防水カバー(4)を、両面接着式防水素材(5)と平型洋風瓦(7)が接着するように取付具基礎部(8)に被せ、機器取付用ボルトにナット(12)をしめ取付具取付作業を完了することで、瓦をはがすことなく屋根上に機器取付具を取り付ける方法。」

(2)段落【0001】
「【発明の属する技術分野】本発明は、平型洋風屋根上にソーラー発電機や太陽熱湯沸かし器等の機器を設置する場合の機器取付具並びにその取付方法に関する。」

(3)段落【0008】
「【発明実施の形態】発明の実施の形態を実施例により図面を参照して説明する。図1は屋根上設置機器取り付け具基礎部斜視図である。ねじ・くぎ穴付き金属板(1)に両面接着式防水素材(3)を接着するがこの防水素材にはねじ釘穴は開けない。屋根上設置機器取付用ボルト(2)は両面接着式防水素材(3)の反対に付す。図2は図1の平面図であるがねじ・釘穴(13)は位置をずらす。図3は屋根上設置機器取り付け具防水カバー(4)上面からの斜視図である。5角形で機器取付用ボルトの穴(6)を上面に持ち裏面は両面接着式防水素材(5)を接着し中央部は基礎部を覆うため窪んでいる。図4は図3A-A’による断面図である。裏面窪みの基礎部と接する天井部にも両面接着式防水素材を接着してある。図5は防水カバー(4)下面からの斜視図である。窪みは基礎部がちょうど入るだけの大きさである。」

(4)段落【0009】
「図6はこの平型洋風屋根用屋根上設置機器取り付け具の屋根への設置方法の手順を示すものである。図6-(a)は第一工程を示す。機器設置位置の葺いてあ屋根瓦の必用位置の瓦(7)にのみ、ねじ・釘用の穴を開け屋根上設置機器取り付け具基礎部(8)を裏面の両面接着式防水素材が瓦に接着するよう配置して、ねじ、釘で固定する。図6-(b)は図6-(a)のB-B’による断面図である。ねじ、釘は取り付け具基礎部(8)瓦(7)屋根板(10)垂木(11)まで貫通する。図6-(c)は第二工程である。防水カバー(4)を、取り付け具基礎部の上から屋根の上部に向かって鋭角部が上になり両面接着式防水素材が瓦と接着するようにして被せ接着する。さらに、外部に突出した機器取付用ボルトの根元までナット(12)をしめる。つづく図6-(d)は、図6-(c)のC-C’による断面図である。防水カバー(4)と、機器取り付け具基礎部(8)は密着している。以上の工程で終了する。」

(5)上記記載事項(1)及び(3),(4)を参照して図3?図5をみると、防水カバー4は、取付具基礎部を覆うため窪んでいる中央部の外側に瓦と接着する両面接着式防水素材5を接着した裏面接着部分が周設されており、中央部に機器取付用ボルトの穴6を持っていることが明らかである。

これら記載事項(1)ないし(5)及び図面の記載から、刊行物1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

「ねじ・釘穴付き金属板(1)に屋根上設置機器取付用ボルト(2)を固定し、上記金属板(1)裏面に両面接着式防水素材(3)を接着した取付具基礎部(8)と、
取付具基礎部(8)を覆うため該取付具基礎部(8)がちょうど入るだけの大きさ窪んでいて、機器取付用ボルトの穴(6)を持つ中央部と、取付具基礎部(8)の裏面を除く全周囲を覆うように、中央部の外側に瓦と接着する両面接着式防水素材(5)を接着した裏面接着部分が周設されている防水カバー(4)と、
からなる平型洋風屋根用屋根上設置機器取付具の取り付け構造であって、
取付具基礎部(8)の両面接着式防水素材(3)のある金属板(1)裏面が平型洋風瓦(7)と接着するようにねじ又は釘(9)にて固定し、
防水カバー(4)を、両面接着式防水素材(5)と平型洋風瓦(7)が接着するように取付具基礎部(8)に被せ、
さらに、外部に突出した機器取付用ボルトにナット(12)をしめ、防水カバー(4)と取付具基礎部(8)を密着させる、
平型洋風屋根用屋根上設置機器取付具の取り付け構造。」

4 対比
本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「平型洋風屋根用屋根上設置機器取付具の取り付け構造」は、その構造及び機能からみて、本願発明の「持出部材の設置構造」に相当しており、以下同様に、
「平型洋風瓦(7)と接着するようにねじ又は釘(9)にて固定」する「取付具基礎部(8)」は、「屋根面に固定」する「第1部材」に、
「中央部は取付具基礎部(8)を覆うため基礎部がちょうど入るだけの大きさ窪んでい」る「防水カバー(4)」は、「第1部材の表面側の全外周を覆う」「第2部材」に、
「防水カバー(4)と取付具基礎部(8)を密着させる」「ナット(12)」は、「第1部材及び第2部材を連結する」「第3部材」に、
「平型洋風瓦(7)と」「両面接着式防水素材(3)のある金属板(1)裏面」を「ねじ又は釘(9)にて固定」する「金属板(1)」は、「屋根面に」「防水材を介して」「固定する」「固定部」に、
「金属板(1)に」「固定し」た「屋根上設置機器取付用ボルト(2)」は、「固定部に」「立設した」「縦杆」に、
「取付具基礎部(8)を覆うため基礎部がちょうど入るだけの大きさ窪んでい」る「中央部」は、「第1部材を覆う」「被覆部」に、
「瓦と接着する両面接着式防水素材(5)を接着した」「裏面接着部分」は、「屋根面に防水材を介して接地させる」「接地部」に、
「中央部」に「機器取付用ボルトの」「穴(6)」「を持つ」ことは、「被覆部」には「縦杆を挿通させる」「挿通孔」「を設け」たことに、
「ナット(12)を」「機器取付用ボルトにしめ」ることは、「第3部材は」「縦杆に取り付けて締着する」ことに、
それぞれ相当する。

したがって、両者は、以下の点で一致している。
「屋根面に固定する第1部材と、該第1部材の表面側の全外周を覆う第2部材と、前記第1部材及び前記第2部材を連結する第3部材とからなる持出部材の設置構造であって、
前記第1部材は、屋根面に防水材を介して固定する固定部と該固定部に立設した縦杆とを備え、
前記第2部材は、前記第1部材を覆う被覆部の外側に屋根面に防水材を介して接地させる接地部を周設し、前記被覆部には前記縦杆を挿通させる挿通孔を設け、
前記第3部材は、前記縦杆に取り付けて締着するものである持出部材の設置構造。」

そして、以下の相違点で相違している。
「第3部材は、
本願発明では、縦杆に取り付けて締着することにより、第2部材を屋根面に圧着するものであるのに対して、
引用発明では、圧着するものであるか否か不明である点。」

5 判断
(1)当審の判断
引用発明においても、機器取付用ボルトにナット(12)をしめて、防水カバー(4)と取付具基礎部(8)を密着させており、防水カバー(4)の中央部は基礎部がちょうど入るだけの大きさ窪んでいることから、該状況で、防水カバー(4)を瓦(7)に圧着させていると解される。
仮に、そうでないとしても、防水カバー(4)の中央部が基礎部がちょうど入るだけの大きさ窪んでいて、かつ、両面接着式防水素材(5)と瓦(7)が接着するように防水カバー(4)を取付具基礎部(8)に被せているのであるから、ナット(12)に、締着により防水カバー(4)を瓦(7)に圧着するという自明の機能を発揮させて、本願発明の相違点に係る特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得ることである。
また、本願発明が奏する作用効果は、当業者が引用発明から予測しうる程度のものであって、格別のものではない。
したがって、本願発明は、当業者が引用発明に基いて容易に発明をすることができたものである。

(2)請求人の主張について
ア 請求人は、平成27年3月30日に提出した意見書において、本件発明における「第2部材」は、本願の特許請求の範囲に記載したとおり「前記第2部材は、前記第1部材を覆う被覆部の外側に屋根面に防水材を介して接地させる接地部を周設し、前記被覆部には前記縦杆を挿通させる挿通孔を設け」た構成であり、刊行物1における「防水カバー(4)」のように「基礎部がちょうど入るだけの大きさ窪んでいる」という条件を全く含むものでなく、この点で本件発明と引用発明とは明らかに相違する旨を主張している。

しかしながら、本願発明において、「第2部材」については「該第1部材の表面側の全外周を覆う第2部材」、及び「前記第2部材は、前記第1部材を覆う被覆部の外側に屋根面に防水材を介して接地させる接地部を周設し、前記被覆部には前記縦杆を挿通させる挿通孔を設け」と特定されているが、第1部材を覆う空間の大きさは特定(限定)されていないので、本願発明は、「第2部材」の構成として、刊行物1における「防水カバー(4)」のように「基礎部がちょうど入るだけの大きさ窪んでいる」構成を含むものである。
よって、請求人の上記主張は採用できない。

イ 請求人は、同意見書において、引用発明では、「防水カバー(4)と取付具基礎部(8)を密着させており」と認定されているが、本件発明では第2部材と第1部材とが密着するようなことは一切ないので、このことからも本件発明と引用発明とが相違することは明らかである旨を主張している。

しかしながら、本願発明において、「第2部材」と「第1部材」との関係については「該第1部材の表面側の全外周を覆う第2部材」、及び「前記第2部材は、前記第1部材を覆う被覆部の外側に屋根面に防水材を介して接地させる接地部を周設し、前記被覆部には前記縦杆を挿通させる挿通孔を設け」と特定されているが、第2部材と第1部材とが密着するか否かは特定されていないので、言い換えると、第2部材と第1部材とが密着していないとは特定されていないので、本願発明は、引用発明のような「防水カバー(4)と取付具基礎部(8)を密着させて」いる構成を排除してない。
よって、請求人の上記主張は採用できない。

ウ 請求人は、同意見書において、引用発明では、「両面接着式防水素材(5)と瓦(7)が接着するように」と特定されているが、本件発明では、「屋根面に防水材を介して接地させる」という記載からも明らかなように両面接着材を用いるものではなく、防水材を用いるものであるので、このことからも本件発明と引用発明とが相違することは明らかである旨を主張している。

しかしながら、引用発明の「両面接着式防水素材(5)」が防水機能を有し、本願発明の「防水材」と同様に雨水等の侵入を防止することは明らかであり、また、本願発明において、防水材については特段の限定はないので、本願発明の「防水材」は、引用発明の「両面接着式防水素材」を含むものである。
よって、請求人の上記主張は採用できない。

6 むすび
以上のとおり、本願発明は、当業者が引用発明に基いて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、その余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-04-22 
結審通知日 2015-04-28 
審決日 2015-05-11 
出願番号 特願2009-174335(P2009-174335)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (E04D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 西村 隆  
特許庁審判長 赤木 啓二
特許庁審判官 小野 忠悦
住田 秀弘
発明の名称 持出部材の設置構造、その設置施工方法、及びそれを用いた外設部材の取付構造、改修構造  
代理人 福田 伸一  
代理人 加藤 恭介  
代理人 福田 賢三  

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