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審決分類 |
審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 H01B 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01B |
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管理番号 | 1302497 |
審判番号 | 不服2014-10272 |
総通号数 | 188 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2015-08-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2014-06-03 |
確定日 | 2015-06-25 |
事件の表示 | 特願2009-209896「透明導電性積層体およびその製造方法並びに静電容量タッチパネル」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 3月24日出願公開,特開2011- 60617〕について,次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は,成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は,平成21年9月11日の出願であって,平成25年9月27日付けの拒絶理由通知に対して,同年11月25日に手続補正がされ,平成26年2月28日付けで拒絶査定がされ,これに対して同年6月3日に審判請求がされるとともに,同日に手続補正がされたものである。 第2 補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 平成26年6月3日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1 本件補正の内容 本件補正は,明細書及び特許請求の範囲を補正するものであって,特許請求の範囲については,本件補正の前後で以下のとおりである。 ・補正前 「【請求項1】 透明基板の少なくとも一方の面に光学機能層を形成する工程と, 前記光学機能層の上に透明導電膜を形成する工程と, 前記透明導電膜に導電性パターン領域と非導電性パターン領域とを形成するパターニング工程と, 前記導電性パターン領域および前記非導電性パターン領域の表面に有機層を形成する工程とを含み, 前記有機層はUV硬化性樹脂層からなり, 前記有機層の膜厚が1μm以上10μm以下のμmの範囲である, ことを特徴とする透明導電性積層体の製造方法。 【請求項2】 前記透明導電膜の膜厚が10?50nmの範囲であることを特徴とする請求項1に記載の透明導電性積層体の製造方法。 【請求項3】 請求項1または2に記載の方法を用いて製造された透明導電性積層体。 【請求項4】 請求項3に記載の透明導電性積層体を電極材として用いた静電容量タッチパネル。 【請求項5】 透明基板と, 前記透明基板の少なくとも一方の面に形成された光学機能層と, 前記光学機能層の上に形成された透明導電膜と, 前記透明導電膜に形成された導電性パターン領域および非導電性パターン領域と, 前記導電性パターン領域および前記非導電性パターン領域の表面に形成された有機層とを備え, 前記有機層はUV硬化性樹脂層からなり, 前記有機層の膜厚が1μm以上10μm以下のμmの範囲である, ことを特徴とする透明導電性積層体。 【請求項6】 前記透明導電膜の膜厚が10?50nmの範囲であることを特徴とする請求項5に記載の透明導電性積層体。 【請求項7】 前記有機層の表面硬度が3H以上であることを特徴とする請求項5または6に記載の透明導電性積層体。 【請求項8】 前記導電性パターン領域および前記非導電性パターン領域の全光線透過率が何れも90%以上であることを特徴とする請求項5から7の何れか1項に記載の透明導電性積層体。 【請求項9】 前記導電性パターン領域および前記非導電性パターン領域のL*a*b色度系における透過色相b*が何れも3.0以下であることを特徴とする請求項5から8の何れか1項に記載の透明導電性積層体。 【請求項10】 前記導電性パターン領域および前記非導電性パターン領域の全光線透過率差が1.0%以下かつL*a*b色度系における透過色相b*差が1.5以下であることを特徴とする,請求項5から9の何れか1項に記載の透明導電性積層体。 【請求項11】 請求項5から10の何れか1項に記載の透明導電性積層体を電極材として用いた静電容量タッチパネル。」 ・補正後 「【請求項1】 透明基板の少なくとも一方の面に光学機能層を形成する工程と, 前記光学機能層の上に透明導電膜を形成する工程と, 前記透明導電膜に導電性パターン領域と非導電性パターン領域とを形成するパターニング工程と, 前記導電性パターン領域および前記非導電性パターン領域の表面に有機層を形成する工程とを含み, 酸化マグネシウム,二酸化珪素,フッ化マグネシウム,フッ化カルシウム,フッ化セリウム,フッ化アルミニウムから構成される群から選択される材料から形成され,かつ膜厚が50nm以上である層を,前記光学調整層は少なくとも1層含み, 前記有機層はUV硬化性樹脂層からなり, 前記有機層の膜厚が1μm以上10μm以下の範囲である, ことを特徴とする透明導電性積層体の製造方法。 【請求項2】 前記透明導電膜の膜厚が10?50nmの範囲であることを特徴とする請求項1に記載 の透明導電性積層体の製造方法。 【請求項3】 請求項1または2に記載の方法を用いて製造された透明導電性積層体。 【請求項4】 請求項3に記載の透明導電性積層体を電極材として用いた静電容量タッチパネル。 【請求項5】 透明基板と, 前記透明基板の少なくとも一方の面に形成された光学機能層と, 前記光学機能層の上に形成された透明導電膜と, 前記透明導電膜に形成された導電性パターン領域および非導電性パターン領域と, 前記導電性パターン領域および前記非導電性パターン領域の表面に形成された有機層とを備え, 酸化マグネシウム,二酸化珪素,フッ化マグネシウム,フッ化カルシウム,フッ化セリウム,フッ化アルミニウムから構成される群から選択される材料から形成され,かつ膜厚が50nm以上である層を,前記光学調整層は少なくとも1層含み, 前記有機層はUV硬化性樹脂層からなり, 前記有機層の膜厚が1μm以上10μm以下の範囲である, ことを特徴とする透明導電性積層体。 【請求項6】 前記透明導電膜の膜厚が10?50nmの範囲であることを特徴とする請求項5に記載の透明導電性積層体。 【請求項7】 前記有機層の表面硬度が3H以上であることを特徴とする,請求項5または6に記載の透明導電性積層体。 【請求項8】 前記導電性パターン領域および前記非導電性パターン領域の全光線透過率が何れも90%以上であることを特徴とする,請求項5から7の何れか1項に記載の透明導電性積層体。 【請求項9】 前記導電性パターン領域および前記非導電性パターン領域のL*a*b色度系における透過色相b*が何れも3.0以下であることを特徴とする請求項5から8の何れか1項に記載の透明導電性積層体。 【請求項10】 前記導電性パターン領域および前記非導電性パターン領域の全光線透過率差が1.0%以下かつL*a*b色度系における透過色相b*差が1.5以下であることを特徴とする,請求項5から9の何れか1項に記載の透明導電性積層体。 【請求項11】 請求項5から10の何れか1項に記載の透明導電性積層体を電極材として用いた静電容 量タッチパネル。」 2 補正事項の整理 本件補正による特許請求の範囲についての補正を整理すると次のとおりとなる。 ・補正事項1 補正前の請求項1に,「酸化マグネシウム,二酸化珪素,フッ化マグネシウム,フッ化カルシウム,フッ化セリウム,フッ化アルミニウムから構成される群から選択される材料から形成され,かつ膜厚が50nm以上である層を,前記光学調整層は少なくとも1層含み,」を追加する補正をすること。 ・補正事項2 補正前の請求項1の「前記有機層の膜厚が1μm以上10μm以下のμmの範囲である,」を,「前記有機層の膜厚が1μm以上10μm以下の範囲である,」と補正すること。 ・補正事項3 補正前の請求項5に「酸化マグネシウム,二酸化珪素,フッ化マグネシウム,フッ化カルシウム,フッ化セリウム,フッ化アルミニウムから構成される群から選択される材料から形成され,かつ膜厚が50nm以上である層を,前記光学調整層は少なくとも1層含み,」を追加する補正をすること。 ・補正事項4 補正前の請求項5の「前記有機層の膜厚が1μm以上10μm以下のμmの範囲である,」を,「前記有機層の膜厚が1μm以上10μm以下の範囲である,」と補正すること。 3 本件補正の適否 以下,補正事項1及び3について,本願の願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面(以下「当初明細書等」という。)に記載された事項の範囲内においてされたものであるか否かについて検討する。 なお,補正事項1及び3における「前記光学調整層」なる記載は,補正後の請求項1における「透明基板の少なくとも一方の面に光学機能層を形成する工程と,前記光学機能層の上に透明導電膜を形成する工程と,」なる記載,及び補正後の請求項5における「前記透明基板の少なくとも一方の面に形成された光学機能層と,前記光学機能層の上に形成された透明導電膜と,」なる記載との関係より,「前記光学機能層」の誤記と認める。 (1)当初明細書等の記載 当初明細書等には,本願に係る発明における「光学機能層」について,以下の記載がある。(当審注.下線は当審において付加した。以下同じ。) ア「【0004】 本発明はかかる従来技術の欠点に鑑みてなされたもので,その目的は,パターン形状を目立たなくする上で有利な透明導電性積層体およびその製造方法並びに静電容量タッチパネルを提供することにある。 【課題を解決するための手段】 【0005】 課題を解決するための手段として,請求項1に記載の発明は,透明基板の少なくとも一方の面に光学機能層を形成する工程と,前記光学機能層の上に透明導電膜を形成する工程と,前記透明導電膜に導電性パターン領域と非導電性パターン領域とを形成するパターニング工程と,前記導電性パターン領域および前記非導電性パターン領域の表面に有機層を形成する工程とを含むことを特徴とする透明導電性積層体の製造方法である。 ・・・ 【0010】 請求項6に記載の発明は,透明基板と,前記透明基板の少なくとも一方の面に形成された光学機能層と,前記光学機能層の上に形成された透明導電膜と,前記透明導電膜に形成された導電性パターン領域および非導電性パターン領域と,前記導電性パターン領域および前記非導電性パターン領域の表面に形成された有機層とを備えることを特徴とする透明導電性積層体である。」 イ「【0021】 図1は,本発明の製造工程の一例を示す,透明導電性積層体の断面図である。 透明基材11の両面に光学機能層の一部としてUV硬化性樹脂層12および12’を塗工・硬化し,次に一方のUV硬化性樹脂層12上に光学機能層13および透明導電膜14を形成する。次に,透明導電膜14のパターン領域をエッチングし,最後にパターニングされた透明導電膜14上にUV硬化性樹脂15を塗工・硬化させ,透明導電性積層体10を得た。 言い換えると,透明基板としての透明基材11の両面に光学機能層の一部を構成するUV硬化性樹脂層12および12’を形成し,一方のUV硬化性樹脂層12上に光学機能層の残りを構成する光学機能層13を形成する。 したがって,本実施の形態では,一方のUV硬化性樹脂層12および光学機能層13と,他方のUV硬化性樹脂層12’とによって特許請求の範囲の光学機能層がそれぞれ構成さている。・・・ ・・・ 【0023】 光学機能層の一部を構成するUV硬化性樹脂層12,12’と,有機層としてのUV硬化性樹脂15とは,透明性と適度な硬度と機械的強度があれば,特に限定されるものではない。 特に紫外線照射硬化型のアクリルや有機珪素系の樹脂が好適である。 これらの樹脂は透明な樹脂基板11と屈折率が同等もしくは近似していることがより好ましく,1.45?1.65程度から適宜選択する。 これらUV硬化性樹脂層12,12’,15の膜厚は,透明性,塗工精度,取り扱いから1?10μmの範囲が好ましい。 ここではUV硬化性樹脂を挙げたが,代わりに電離放射線の照射による硬化樹脂や熱硬化性の樹脂等が使用できる。 【0024】 特に,光学機能層の一部を構成するUV硬化性樹脂層12,12’は,透明導電膜14に形成された導電性パターン領域および非導電性パターン領域のパターン形状が目立ち視認性が低下する問題を解消するために,光学特性を持ち合わせてもよい。 光学特性を付与する方法としては,UV硬化性樹脂層12,12’の屈折率を制御する方法や,UV硬化性樹脂層12,12’にフィラー等を添加する方法等が挙げられる。 【0025】 光学機能層13として,無機化合物を用いる場合,酸化物,硫化物,フッ化物,窒化物などの材料が使用可能である。 上記無機化合物からなる薄膜は,その材料により屈折率が異なり,その屈折率の異なる薄膜を特定の膜厚で形成することにより,光学特性を調整することが可能となる。 なお,ここでは,無機化合物を用いた光学機能層13を1層としたが,目的とする光学特性に応じて,複数層あってもよい。 【0026】 光学機能層13を形成するための屈折率の低い材料としては,酸化マグネシウム(1.6),二酸化珪素(1.5),フッ化マグネシウム(1.4),フッ化カルシウム(1.3?1.4),フッ化セリウム(1.6),フッ化アルミニウム(1.3)などが挙げられる。 また,光学機能層13を形成するための屈折率の高い材料としては,酸化チタン(2.4),酸化ジルコニウム(2.4),硫化亜鉛(2.3),酸化タンタル(2.1),酸 化亜鉛(2.1),酸化インジウム(2.0),酸化ニオブ(2.3),酸化タンタル(2.2)が挙げられる。但し,上記括弧内の数値は屈折率を表す。」 ウ「【0035】 (実施例1) 次に実施例について説明する。 透明基板としてPET(125μm)を用い,両面に光学機能層としてのUV硬化性樹脂(屈折率n=1.50)を塗布し,一方のUV硬化性樹脂の表面にパッタリング法により光学機能層としてのTiO_(2)(n=2.23)を12nm,光学機能層としてのSiO_(2)(n=1.46)を55nm,透明導電膜としてのITO(n=2.03)を30nmこの順番で成膜した。 このようにして形成されたフィルムを断裁後,フォトリソ法により,ITOをパターニングし,導電性パターン領域と非導電性パターン領域を形成した。 最後に有機層としてのUV硬化性樹脂(n=1.50)2μmをスピンコート塗布し,透明導電性積層体を作製した。 【0036】 この透明導電性積層体の導電性パターン領域の全光線透過率(JIS-K7105)は90.6%,L*a*b色度系における透過色相b*は1.5,非導電性パターン領域の全光線透過率(JIS-K7105)は90.7%,L*a*b色度系における透過色相b*は2.3で,高透過率・高透明でかつ,パターン領域の目立たない透明導電性積層体が得られた。 ・・・ 本実施の形態によれば,透明基板の少なくとも一方の面に光学機能層を形成し,この光学機能層の上に導電性パターン領域および非導電性パターン領域を形成し,これら導電性パターン領域および非導電性パターン領域の表面に有機層を形成した。 したがって,光の干渉の効果により,高透過率・高透明でかつ,パターン領域の目立たない透明導電性積層体を得る上で有利となる。」 (2)新規事項の追加の有無について 補正事項1及び3は,補正前の請求項1及び5に,「光学機能層」が,「酸化マグネシウム,二酸化珪素,フッ化マグネシウム,フッ化カルシウム,フッ化セリウム,フッ化アルミニウムから構成される群から選択される材料から形成され,かつ膜厚が50nm以上である層」を,「少なくとも1層含む」ことを追加するものと認められるから,補正事項1及び3による補正で,「光学機能層」に含まれる「少なくとも1層」について,材料に関する上記の限定と膜厚に関する上記の数値限定とが,補正前の請求項1及び5に追加されると認められる。 他方,上記(1)アより,当初明細書等には,本願に係る発明は,パターン形状を目立たなくする上で有利な透明導電性積層体及びその製造方法の提供を目的とし,透明基板の少なくとも一方の面に光学機能層を形成する工程と,上記光学機能層の上に透明導電膜を形成する工程と,上記透明導電膜に導電性パターン領域と非導電性パターン領域とを形成するパターニング工程と,上記導電性パターン領域及び上記非導電性パターン領域の表面に有機層を形成する工程とを含む透明導電性積層体の製造方法,並びに透明基板と,上記透明基板の少なくとも一方の面に形成された光学機能層と,上記光学機能層の上に形成された透明導電膜と,上記透明導電膜に形成された導電性パターン領域及び非導電性パターン領域と,上記導電性パターン領域及び上記非導電性パターン領域の表面に形成された有機層とを備える透明導電性積層体が,それぞれ記載されていると認められる。 また,上記(1)イより,透明基板としての透明基材11の両面に光学機能層の一部を構成するUV硬化性樹脂層12及び12’を形成し,一方のUV硬化性樹脂層12上に光学機能層の残りを構成する光学機能層13を形成すること,並びに上記光学機能層13として,無機化合物を用いる場合,その材料により屈折率が異なり,その屈折率の異なる薄膜を特定の膜厚で形成することにより,光学特性を調整することが可能となり,光学機能層13を形成するための材料としては,酸化マグネシウム,二酸化珪素,フッ化マグネシウム,フッ化カルシウム,フッ化セリウム,及びフッ化アルミニウムが挙げられることが記載されていると認められる。 さらに,上記(1)ウより,当初明細書等には, 透明基板としてPET(125μm)を用い,両面に光学機能層としてのUV硬化性樹脂(屈折率n=1.50)を塗布し,一方のUV硬化性樹脂の表面にパッタリング法により光学機能層としてのTiO_(2)(n=2.23)を12nm,光学機能層としてのSiO_(2)(n=1.46)を55nm,透明導電膜としてのITO(n=2.03)を30nmこの順番で成膜し,上記ITOをパターニングした後,有機層としてのUV硬化性樹脂(n=1.50)2μmをスピンコート塗布して作製することで,光の干渉の効果により,高透過率・高透明でかつ,パターン領域の目立たない透明導電性積層体が得られたことが記載されていると認められる。 しかし,上記(1)ウによれば,当初明細書等には,光学機能層としてのSiO_(2)を55nm成膜した透明導電性積層体の実施例が記載されているだけで,光学機能層としてのSiO_(2)の膜厚を50nm以上とする数値限定をすることは,当初明細書等には記載されていない。 そして,上記(1)ウの実施例における透明導電性積層体は,光の干渉の効果により,高透過率・高透明でかつ,パターン領域の目立たないとの作用効果を奏するものであるところ,光の干渉の効果は,光学機能層としてのSiO_(2)の膜厚のみに起因して生じるものではなく,透明基板,光学機能層としてのUV硬化性樹脂,光学機能層としてのTiO_(2),透明導電膜,及び有機層の材料や膜厚との組み合わせに起因して生じることは当該技術分野における技術常識であるから,この点に鑑みれば,上記(1)ウの実施例の記載から,光学機能層としてのSiO_(2)の膜厚を50nm以上にするとの数値限定が,自明な事項であるとも認められない。 加えて,補正事項1及び3において,「光学機能層」に含まれる「少なくとも1層」を形成する材料が,「酸化マグネシウム,二酸化珪素,フッ化マグネシウム,フッ化カルシウム,フッ化セリウム,フッ化アルミニウムから構成される群から選択される材料」と限定されるところ,上記(1)によれば,当初明細書等には,「光学機能層」に含まれる「少なくとも1層」が,上記材料のうち二酸化珪素以外の材料で形成され,かつ膜厚を50nm以上とすることは,当初明細書等には記載されていない。 また,上記(1)イによれば,上記材料のうち,二酸化珪素とその他の材料とでは,その材料により屈折率が異なり,その屈折率の異なる薄膜を特定の膜厚で形成することによって,光学特性を調整することが可能となるから,この点に鑑みれば,上記(1)ウの光学機能層としてのSiO_(2)を55nm成膜した実施例の記載より,「光学機能層」に含まれる「少なくとも1層」が,上記材料のうち二酸化珪素以外の材料で形成され,かつ膜厚を50nm以上にすることが,自明な事項であるとも認められない。 そうすると,補正事項1及び3による補正で補正前の請求項1及び5に付加される,「光学機能層」が,「酸化マグネシウム,二酸化珪素,フッ化マグネシウム,フッ化カルシウム,フッ化セリウム,フッ化アルミニウムから構成される群から選択される材料から形成され,かつ膜厚が50nm以上である層」を,「少なくとも1層含む」ことは,当初明細書等に記載されたものとは認められない。 以上より,補正事項1及び3による補正は,いずれも,当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入するものといわざるを得ないから,補正事項1及び3による補正は,当初明細書等に記載された事項の範囲内においてされたものであるとは認められない。 (3)小括 以上のとおり,本件補正における補正事項1及び3による補正は,当初明細書等に記載された事項の範囲内においてされたものであるとは認められないから,本件補正は,当初明細書等に記載された事項の範囲内においてされたものとはいえず,特許法第17条の2第3項に規定に違反するものと認める。 4 むすび したがって,本件補正は,特許法第17条の2第3項の規定に違反するから,同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3 本願発明の容易想到性について 1 本願発明について 平成26年6月3日に提出された手続補正書による手続補正は前記のとおり却下されたので,本願の請求項1?11に係る発明は,平成25年11月25日に提出された手続補正書に記載されたとおりのものであり,その請求項5の記載は,再掲すると次のとおりである。(以下,本願の請求項5に係る発明を「本願発明」という。) 「【請求項5】 透明基板と, 前記透明基板の少なくとも一方の面に形成された光学機能層と, 前記光学機能層の上に形成された透明導電膜と, 前記透明導電膜に形成された導電性パターン領域および非導電性パターン領域と, 前記導電性パターン領域および前記非導電性パターン領域の表面に形成された有機層とを備え, 前記有機層はUV硬化性樹脂層からなり, 前記有機層の膜厚が1μm以上10μm以下のμmの範囲である, ことを特徴とする透明導電性積層体。」 2 引用発明及び周知技術 (1)引用文献の記載と引用発明 ア 原査定の拒絶の理由に引用された,本願出願日前に日本国内において頒布された刊行物である,特開2008-243622号公報(以下「引用文献」という。)には,図面とともに,次の記載がある。 (ア)「【0001】 本発明は,透明面状体及び透明タッチスイッチに関する。 【背景技術】 【0002】 入力位置を検出するための透明タッチスイッチの構成は,従来から種々検討されているが,一例として静電容量式の透明タッチスイッチが知られている。例えば,特許文献1に開示された透明タッチスイッチは,それぞれ所定のパターン形状を有する透明導電膜を備えた一対の透明面状体の間に誘電体層が介在されて構成されており,指などが操作面に触れると,人体を介して接地されることによる静電容量の変化を利用して,タッチ位置を検出することができる。 【0003】 この透明タッチパネルは,液晶表示装置やCRTなどの表面に装着して用いられるが,透明面状体に形成された透明導電膜のパターン形状が目立ってしまい,視認性の低下を招いていた。 ・・・ 【発明の開示】 【発明が解決しようとする課題】 【0004】 そこで,本発明は,視認性を向上させることができる透明面状体及び透明タッチスイッチの提供を目的とする。」 (イ)「【0011】 図1は,本発明の一実施形態に係る透明タッチスイッチの概略構成断面図である。この透明タッチスイッチ101は,静電容量式のタッチスイッチであり,透明基板11の一方面にパターニングされた透明導電膜12が形成された第1の透明面状体1と,透明基板21の一方面にパターニングされた透明導電膜22が形成された第2の透明面状体2とを備えている。第1の透明面状体1と第2の透明面状体2とは,それぞれの透明導電膜12,22を全体的に被覆する接着性材料からなる被覆層14,24を貼着することにより一体化されている。 ・・・ 【0014】 アンダーコート層13,23は,それぞれ透明基板11,21と透明導電膜12,22との間に介在するように配置されており,それぞれ光屈折率が異なる2以上の層の積層体から構成されている。具体的に説明すると,このアンダーコート層13,23は,それぞれ低屈折率層13a,23aと,低屈折率層13a,23aよりも光屈折率が高い高屈折率層13b,23bとの積層体から構成されており,低屈折率層13a,23a側に透明導電膜12,22が形成されるように配置されている。 【0015】 アンダーコート層13,23の積層体を構成する各層の材料としては,シリコン錫酸化物(STO),酸化珪素,酸化チタン,酸化錫などを例示することができ,好ましい組み合わせとして,酸化錫-酸化ハフニウム系,酸化珪素-酸化錫系,酸化亜鉛-酸化錫系,酸化錫-酸化チタン系などを挙げることができる。視認性向上の観点から特に好ましいのは,低屈折率層13a,23aが酸化珪素(SiOn,n=1.7?2.0)からなり,高屈折率層13b,23bがシリコン錫酸化物(silicon-tin oxide)からなる組み合わせである。アンダーコート層13,23は,スパッタリング法,抵抗蒸着法,電子ビーム蒸着法などにより形成することができる。 【0016】 低屈折率層13a,23aの厚みは,100nm以下であることが好ましく,高屈折率層13b,23bの厚みは,100nm以下であることが好ましい。 【0017】 透明導電膜12,22の材料としては,インジウム錫酸化物(ITO),酸化亜鉛,酸化インジウム,アンチモン添加酸化錫,フッ素添加酸化錫,アルミニウム添加酸化亜鉛,カリウム添加酸化亜鉛,シリコン添加酸化亜鉛や,酸化亜鉛-酸化錫系,酸化インジウム-酸化錫系,酸化亜鉛-酸化インジウム-酸化マグネシウム系などの金属酸化物を例示することができ,これら2種以上を複合して形成してもよい。 ・・・ 【0021】 透明導電膜12,22は,図2及び図3に示すように,平行に延びる複数の帯状導電部12a,22aの集合体としてそれぞれ形成されており,各透明導電膜12,22の帯状導電部12a,22aは,互いに直交するように配置されている。・・・ 【0022】 透明導電膜12,22のパターニングは,透明基板11,21にアンダーコート層13,23を介してそれぞれ形成された透明導電膜12,22の表面に,所望のパターン形状を有するマスク部を形成して露出部分を酸液などでエッチング除去した後,アルカリ液などによりマスク部を溶解させて,行うことができる。このように透明導電膜12,22のパターニングをエッチングにより行う方法は,不要な透明導電膜12,22は除去できる一方,アンダーコート層13,23は全て残存させることができる。但し,パターニングの方法はこれに限定されるものではなく,他の公知の方法で行ってもよい。 ・・・ 【0024】 被覆層14,24は,透明導電膜12,22およびアンダーコート層13,23の表面を覆う接着性材料により形成されており,エポキシ系やアクリル系など,一般的な透明接着剤を用いることができ,ノルボルネン系樹脂の透明性フィルムからなる芯材を含むものであってもよい。被覆層14,24の厚みは,通常10?100μm程度である。なお,被覆層14,24を接着性材料により形成する替わりに,例えば,アクリル系樹脂 等の非接着性材料により形成することもできる。このような非接着性材料で被覆層14,24を形成する場合,第1の透明面状体1と第2の透明面状体2との一体化は,被覆層14と被覆層24との間に接着性材料を別途介在させることにより行うことができる。」 (ウ)「【0025】 ここで,図6の透明面状体1の概略構成断面図に示すように,透明基板11の他方面11a側(透明導電膜12が形成された面と反対側)から透明導電膜12が形成されている領域に照射される光の反射光L1における波長毎の反射率である各第1分光反射率に,後述する光の波長毎に設定される各標準比視感度を乗じて得られる波長毎の各第1視感反射率と,透明基板11の他方面11a側から透明導電膜12が形成されていない領域に照射される光の反射光L2における波長毎の反射率である各第2分光反射率に,上述の光の波長毎に設定される各標準比視感度を乗じて得られる波長毎の各第2視感反射率との差の各絶対値について,光の可視範囲波長である380nm?780nmでの波長範囲における積分値(Esum)が,18.0以下であることが好ましい。更に,Esumが18.0以下であることに加えて,上述の反射光の波長毎に得られる各第1視感反射率と,各第2視感反射率との差の各絶対値についての380nm?780nmの波長範囲における最大値(Emax)が,0.3以下であることが好ましい。より好ましくは,Esumが16.0以下であり,かつ,Emaxが0.25以下であることが好ましい。 【0026】 EsumおよびEmaxの値が上述の数値範囲となるように,透明基板11や透明導電膜12,アンダーコート層13,被覆層14の材質や厚み等を選択することにより,透明面状体1において,透明導電膜12のパターン形状を目立たなくすることができ,視認性を向上させることができる。なお,透明面状体2についても同様である。」 イ 引用発明 (ア)上記ア(イ)(段落【0021】及び【0022】,並びに図2)によれば,透明導電膜12のパターニングにより不要な透明導電膜12が除去され,平行に延びる複数の帯状導電部12aが形成されるから,帯状導電部12a間に透明導電膜12が除去された領域が存在することは明らかである。 そして,上記ア(イ)(段落【0024】及び図1)より,透明導電膜12の表面を覆う被覆層14は,上記帯状導電部12a及び上記透明導電膜12が除去された領域の表面に形成されるものと認められる。 (イ)上記ア及び上記(ア)より,引用文献には,次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「透明基板11と, 上記透明基板11の一方の面に形成された,それぞれ光屈折率が異なる2以上の層の積層体から構成されるアンダーコート層13と, 上記アンダーコート層13の上に形成された透明導電膜12と, 上記透明導電膜12をパターニングして形成された帯状導電部12a,及び上記透明導電膜12が除去された領域と, 上記帯状導電部12a,及び上記透明導電膜12が除去された領域の表面に形成されたエポキシ系やアクリル系などの透明接着剤からなる被覆層14とを備えた, 透明面状体1。」 (2)周知例の記載と周知技術 ア 周知例1 原査定の拒絶の理由に引用された,本願出願日前に日本国内及び外国において頒布された刊行物である,国際公開第2005/024853号(以下「周知例1」という。)には,次の記載がある。 「【0039】 1.透明導電積層体 本発明の透明導電積層体は,第1の態様では,平滑な基板と,該平滑な基板上に塗布法により形成された,導電性微粒子を主成分とする透明導電アノード電極層と,該透明導電アノード電極層に接着剤層により接合された透明基材とを備え,かつ前記平滑な基板は,透明導電アノード電極層から剥離可能とされている。 ・・・ 【0043】 このようにして得られる本発明の透明導電積層体は,図1に示すような基本的な構造を有している。すなわち,透明導電アノード電極層2を成膜するための仮の基板として用いた平滑な基板1と,平滑な基板1上に塗布法により形成された透明導電アノード電極層2と,その透明導電アノード電極層2に接着剤層3で接合された透明基材4とを備え,この平滑な基板1は透明導電アノード電極層2から剥離することが可能とされている。 ・・・ 【0045】 一方,透明基材は,従来から有機EL素子に使用されているものでよく,例えば,可視光線を透過するポリエチレンテレフタレート(PET),ポリエチレンナフタレート(PEN),ポリエーテルサルフォン(PES)等のプラスチックのフィルム又は板,あるいはガラス板等を用いることができる。・・・ ・・・ 【0047】 接着剤としては,アクリル系,ウレタン系,エポキシ系等の常温硬化性樹脂,熱硬化性樹脂,紫外線硬化性樹脂,電子線硬化性樹脂など,各種のものを用いることができるが,少なくとも平滑な基板の剥離の際に,透明導電アノード電極層又は透明コート層を透明基材に接着しておくことができ,しかも平滑な基板の剥離性に悪影響を及ぼさない限り,これらに限定されない。」 イ 周知例2 本願出願日前に日本国内において頒布された刊行物である,特開2001-110238号公報(以下「周知例2」という。)には,次の記載がある。 ・「【特許請求の範囲】 【請求項1】 透明基材上にハードコート層と,少なくとも1種の金属からなる微粒子を有する透明導電層と,該透明導電層の外層に形成され,該透明導電層の屈折率と異なる屈折率を有する少なくとも1層の防汚性を有する導電層保護層(当審注.「導電層用保護層」の誤記と認める。)とを含むことを特徴とする低反射透明導電性積層フイルム。」 ・「【0015】本発明に用いられる基材は,フイルム状のプラスチックフイルムであり,ポリエチレンテレフタレート,ポリエチレンナフタレート,ポリエチレンテレフタレートとポリエチレンナフタレート共重合物あるいは混合物等のポリエステル,ポリカーボネート,ノルボルネン系樹脂(環状オレフィン共重合体),トリアセチルセルロース,ジアセチルセルロース等のセルロース樹脂,ポリアリレート,ポリメタクリル酸メチルエステル等のフイルムが好ましい。・・・ ・・・ 【0022】本発明の導電層は,少なくとも1種以上の導電性金属あるいは導電性金属酸化物を含有する層であり,その導電層の抵抗が10KΩ/□(90V印加電圧)以下,好ましくは10?1000Ω/□,さらに好ましくは10Ω?700Ω/□であることを特徴とする。・・・導電性金属微粒子としては,金,銀,銅,アルミニウム,鉄,ニッケル,パラジウム,プラチナあるいはこれらの合金などである。また導電性金属酸化物微粒子としては,酸化インジウム,酸化スズ,酸化アンチモン,酸化亜鉛,酸化アルミニウム,酸化珪素,酸化鉄あるいはこれらの複合酸化物である。・・・ ・・・ 【0027】次に本発明の導電層用保護層について詳細に記載する。・・・ 【0028】これらの中でも好ましく用いられる樹脂としては,フッ素ゴム,フェノール樹脂,尿素樹脂,メラミン樹脂,ナイロン6,ナイロン66,ポリメタクリル酸メチル,ポリ塩化ビニル,ポリ塩化ビニリデン,ポリフッ化ビニリデン,ポリビニルホルマール,(モノ-,ジ-,トリ-)アセチルセルロース,ニトロセルロース,更に活性エネルギー線(紫外線,電子線,ガンマ線など)硬化樹脂などをあげることができる。・・・」 ウ 周知技術 上記ア及びイより,透明基板上に透明導電体層を形成してなる透明導電積層体において,透明導電体層の接着や保護にUV硬化性樹脂の接着剤を用いることは,周知例1及び2にみられるように,本願出願前,当該技術分野では周知の技術と認められる。 3 本願発明と引用発明との対比 (1)引用発明における「透明基板11」,「上記透明基板11の一方の面」,「それぞれ光屈折率が異なる2以上の層の積層体から構成されるアンダーコート層13」,「透明導電膜12」,「上記透明導電膜12をパターニングして形成された」,「帯状導電部12a」,及び「透明導電膜12が除去された領域」は,それぞれ,本願発明の「透明基板」,「前記透明基板の少なくとも一方の面」,「光学機能層」,「透明導電膜」,「前記透明導電膜に形成された」,「導電性パターン領域」,及び「非導電性パターン領域」に相当するといえる。 本願発明の「前記導電性パターン領域および前記非導電性パターン領域の表面に形成された有機層」と,引用発明における「上記帯状導電部12a,及び上記透明導電膜12が除去された領域の表面に形成されたエポキシ系やアクリル系などの透明接着剤からなる被覆層14」とは,本願発明の「有機層」に関する後述する相違点に係る構成を除き,「前記導電性パターン領域および前記非導電性パターン領域の表面に形成された有機層」である点で共通するといえる。 引用発明における「透明面状体1」は,本願発明の「透明導電性積層体」に相当するといえる。 (2)以上によれば,本願発明と引用発明との一致点と相違点は,次のとおりであると認められる。 ア 一致点 「透明基板と, 前記透明基板の少なくとも一方の面に形成された光学機能層と, 前記光学機能層の上に形成された透明導電膜と, 前記透明導電膜に形成された導電性パターン領域および非導電性パターン領域と, 前記導電性パターン領域および前記非導電性パターン領域の表面に形成された有機層とを備えた, 透明導電性積層体。」 イ 相違点 「有機層」について,本願発明は,「UV硬化性樹脂層からなり」,「膜厚が1μm以上10μm以下のμmの範囲である」のに対し,引用発明は,上記の構成を備えていない点。 4 相違点についての検討 上記2(2)ウより,透明基板上に透明導電体層を形成してなる透明導電積層体において,透明導電体層の接着や保護にUV硬化性樹脂の接着剤を用いることは,本願出願前,当該技術分野では周知の技術と認められるから,引用発明において,被覆層14を構成するエポキシ系やアクリル系などの透明接着剤として,UV硬化性樹脂の接着剤を用いることは,上記周知技術に基づいて,当業者が容易に想到し得たものと認められる。 また,上記2(1)ア(ウ)によれば,引用文献には,被覆層14の材質や厚み等を選択することにより,透明面状体1において,透明導電膜12のパターン形状を目立たなくすることができ,視認性を向上させることができることが記載されているから,引用発明において,UV硬化性樹脂の接着剤を用いて上記被覆層14を形成する際に,上記透明導電膜12のパターン形状を目立たなくして,視認性を向上できるように上記被覆層14の膜厚を設定することは,当業者が当然に行い得るものということができる。 そして,上記2(1)ア(イ)によれば,引用文献には,上記被覆層14の膜厚を「通常10?100μm程度」とすることが記載されてはいるが,引用発明において,UV硬化性樹脂の接着剤を用いて上記被覆層14を形成する際に,その膜厚を,1μm以上10μm以下のμmの範囲とすることは,上記透明導電膜12のパターン形状を目立たなくして,視認性を向上できるようにするために膜厚を調整するに際し,当業者が普通に行い得る程度のものと認められる。 そうすると,引用発明において,相違点に係る構成とすることは,上記周知技術に基づいて,当業者が容易に想到し得たものと認められる。 5 本願発明が奏する作用効果について 上記前記第2の3(1)アより,本願発明は,パターン形状を目立たなくする上で有利な透明導電性積層体及びその製造方法の提供を目的とし,これを達成するものと認められるのに対し,上記2(1)ア(ア)によれば,引用発明は,従来技術における,透明面状体に形成された透明導電膜のパターン形状が目立ってしまい,視認性の低下を招いていたとの課題に鑑み,視認性を向上させることができる透明面状体及び透明タッチスイッチの提供を目的とし,これを達成するものである。 そうすると,本願発明と引用発明との間に作用効果の点で格別の相違があるとは認められない。 以上から,本願発明が奏する作用効果は,格別のものということはできない。 6 まとめ 以上のとおり,本願発明と引用発明との相違点は,引用発明において,周知例1及び2にみられるような周知技術に基づいて,当業者が容易に想到し得たものであるから,本願の請求項5に係る発明(本願発明)は,引用文献記載の発明(引用発明),並びに周知例1及び2にみられるような周知の技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法第29条第2項の規定により,特許を受けることができないものである。 第4 結言 以上検討したとおり,本願の請求項5に係る発明は,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから,その余の請求項について検討するまでもなく,本願は拒絶されるべきものである。 よって,結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2015-04-27 |
結審通知日 | 2015-04-28 |
審決日 | 2015-05-11 |
出願番号 | 特願2009-209896(P2009-209896) |
審決分類 |
P
1
8・
561-
Z
(H01B)
P 1 8・ 121- Z (H01B) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 井原 純 |
特許庁審判長 |
鈴木 匡明 |
特許庁審判官 |
加藤 浩一 河口 雅英 |
発明の名称 | 透明導電性積層体およびその製造方法並びに静電容量タッチパネル |