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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61B
管理番号 1302650
審判番号 不服2013-25235  
総通号数 188 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-08-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-12-24 
確定日 2015-06-30 
事件の表示 特願2012-539095「アルツハイマー病の静脈内免疫グロブリン処置における脳室拡大速度の使用」拒絶査定不服審判事件〔平成23年10月20日国際公開、WO2011/130355、平成25年3月21日国内公表、特表2013-509985〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は、平成23年4月13日(パリ条約による優先権主張外国庁受理平成22年4月13日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成24年10月9日付けで拒絶理由が通知され、平成25年2月8日付けで意見書が提出されるとともに手続補正がなされ、同年3月6日付けで拒絶理由が通知され、同年7月8日付けで意見書が提出されたが、同年8月23日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年12月24日に拒絶査定不服審判が請求がされたものである。

2 本願発明
この出願の請求項1に係る発明は、平成25年2月8日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるものであると認められ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりのものである。

「アルツハイマー病を患っているが該疾患に対する処置を受けていない対象の脳室容積における変化の速度を測定して取得された、脳室容積における変化の平均速度を非治療的速度とし、
アルツハイマー病を患っておりかつIVIG組成物を受けている対象の脳室容積における変化の速度を測定して取得された、脳室容積における変化の平均速度を治療的速度とし、
前記治療的速度を前記非治療的速度と比較し、それによりIVIG組成物の投与の有効性をモニターする段階を含む、アルツハイマー病を処置するように意図されたIVIG組成物投与の有効性をモニターするための方法であって、
前記脳室容積が磁気共鳴画像法(MRI)により測定され、前記治療的速度が前記非治療的速度より低いとき、IVIG組成物投与が有効であるとみなされ、および治療的速度が非治療的速度と同等であるか、またはそれより大きいとき、IVIG組成物投与が有効でないとみなされる、
前記方法。」

3 引用例の記載事項
本願優先日前に頒布され、原査定の拒絶の理由に引用された引用例である国際公開第2009/052439号(以下、「引用例」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている(引用例の日本語訳を記載する。訳文は、対応日本国公報である特表2011-501945号公報によるものであり、段落番号も併せて記載した。なお、下線は当審で付した。)。

(1)引用例の段落[0326]?[0328]
「【0275】
第2相試験
無作為に選ばれた二重盲検のプラセボ対照の多重漸増用量試験は、317名のスクリーニングされた患者の初期集団から無作為に選ばれた234名の患者の集団に行われた。患者はApoE4保有状態について評価され、保有者(同型および異型)および非保有者は同じ処置を受けた。試験対象患者基準は、AD疑の診断;50?85歳の高齢;MMSEスコア16?28;Rosen改変Hachinski虚血スコア≦4;有能な世話人とともに家または地域社会で暮らすこと;ADの診断と一致したMRI;容量分析のための十分な質のMRIスキャン;非排他的条件の処置のための薬剤の安定した用量;スクリーニング前の120日間のAchEIおよび/またはメマンチンの安定した用量であった。主な排他的な基準は、主要な精神障害(例えば、大うつ病性障害)の現在の兆候;患者の状態の悪化をもたらす可能性がある現在の全身病;臨床的に重要な自己免疫疾患または免疫系の障害の病歴または痕跡;下記のいずれかの病歴:臨床的に明らかな発作、臨床的に重要な頸動脈または椎骨脳底の狭窄/プラーク、発作(seizure)、過去5年以内の癌、過去2年以内のアルコール/薬物依存症、過去2年以内の心筋梗塞、認知力に影響を及ぼす可能性がある重大な神経学的疾患(AD以外)のいずれかの病歴であった。本発明のキットおよびそれらの付随するラベルまたは添付文書は、上記排他的基準のいずれか、およびそのいずれかのサブコンビネーションを満たす患者について排除することを示してもよい。
【0276】
4つの投与レベル(0.15、0.5、1.0および2.0mg/kg)、ならびにプラセボを使用した。124名の患者はバピネオズマブを受け、110名の患者はプラセボを受けた。これらの患者のうち、それぞれ122名および107名は有効性について分析された。バピネオズマブは、100mgのバピネオズマブ(20mg/mL)、10mMヒスチジン、10mMメチイオニン、4%マンニトール、0.005%ポリソルベート-80(植物由来)、pH6.0を含む5mlのバイアル中の滅菌水溶液として供給された。プラセボは、バピネオズマブ以外は同じ条件を含む一致しているバイアルで供給された。試験薬剤は、通常の生理食塩水に希釈され、約1時間かけて、100mlの静脈(IV)注射液として投与された。
【0277】
処置期間は、18カ月間、6回の静脈注射で13週間の間隔を空けた。MRIスキャンを含む安全性の追跡調査の来院は、各投与後の6週間行われた。処置期間後、患者は、非盲検継続における継続的処置のための1年の安全性追跡調査でモニタリングされた。試験の主目的は、軽度?中等度のアルツハイマー病の患者におけるバピネオズマブの安全性と寛容性を評価することであった。この試験の第1の評価項目は、(アルツハイマー病評価尺度-認知副尺度(ADAS-Cog)、認知症の障害評価尺度(ADA)、ならびに安全性および寛容性)であった。ADAS-Cog12は、ADAS-Cog11と比較した、10項目の単語リストの遅延再生を含むさらなる試験を含む。この試験の第2の目的は、軽度?中等度のアルツハイマー病の患者におけるバピネオズマブの有効性を評価することであった。他の評価項目は、神経心理テストバッテリー(NTB)、神経精神医学的インベントリー(NPI)、臨床認知症評価ボックス合計(CDR-SB)、MRI脳容量測定、およびCSF測定であった。」

(2)引用例の段落[0337]
「【0286】
MRIは、試験中、各注射後の6週間、患者当たり最大7回行われた。脳の変化は、脳容量、脳室(当審注:特表2011-501945号公報に記載された「心室」は「脳室」の誤訳と認められる。以下同様。)容量、脳境界シフト積分、および脳室境界シフト積分によって評価された。脳容量変化の測定としての境界シフト積分(BSI)は、登録された反復三次元磁気共鳴スキャンから導いた。BSIは、直接的にはボクセル強度から、所定の脳構造の境界が移動した全容量、したがって、容量変化を決定する。脳室シフト積分は、脳室空間変化の類似した測定である。これらのパラメータの両方は、アルツハイマー病が進行するにつれて増加する。したがって、プラセボと比較して、これらのパラメータ増加の阻害は、処置の陽性の(すなわち、所望の)効果を示す。」

以上の記載事項(1)及び(2)から、引用例には、以下の発明が記載されていると認められる。

「軽度?中等度のアルツハイマー病の患者におけるバピネオズマブの有効性を評価する方法であって、
ApoE4保有者および非保有者が同じ処置を受けるものであり、
4つの投与レベル(0.15、0.5、1.0および2.0mg/kg)、ならびにプラセボを使用し、124名の患者がバピネオズマブを受け、110名の患者がプラセボを受け、これらの患者のうち、それぞれ122名および107名は有効性について分析されるものであり、
バピネオズマブが、100mgのバピネオズマブ(20mg/mL)、10mMヒスチジン、10mMメチイオニン、4%マンニトール、0.005%ポリソルベート-80(植物由来)、pH6.0を含む5mlのバイアル中の滅菌水溶液として供給され、
プラセボが、バピネオズマブ以外は同じ条件を含む一致しているバイアルで供給され、 これらの試験薬剤が、通常の生理食塩水に希釈され、約1時間かけて、100mlの静脈(IV)注射液として投与されるものであり、
処置期間が、18カ月間、6回の静脈注射で13週間の間隔を空け、
MRIが、試験中、各注射後の6週間、患者当たり最大7回行われ、
脳の変化が、脳室境界シフト積分によって評価され、
脳室境界シフト積分が、脳室空間変化に類似した測定であり、アルツハイマー病が進行するにつれて増加するものであり、
プラセボと比較して、この脳室境界シフト積分の増加の阻害が、処置の陽性の効果を示す方法。」(以下、「引用発明」という。)

4 対比
本願発明と引用発明とを対比する。

(1)引用発明の「プラセボを受け」及び「脳室空間」は、それぞれ、本願発明の「疾患に対する処置を受けていない」及び「脳室容積」に相当する。

(2)本願発明の「脳室容積における変化の速度」とは、本願明細書の段落【0014】を参酌すれば、「MRIなどの画像化技術を通して定量化された変化により示される、特定の量の時間に渡る(例えば、1年当たりの)脳室容積の増加を指す」ものと解すべきである。
また、本願発明の「脳室容積における変化の平均速度」とは、本願明細書(「【0029】…脳室拡大の平均速度がある期間に渡って測定され」、「【0051】…平均年間VERは7%であり、プラセボ群における12%の速度より有意に低かった」、「【0052】図13は、18ヶ月の試験の間にプラセボまたはIVIGを受けたAD患者の間で脳室容積における年間変化を比較しており、IVIG処置は有意に低下したVERを示す。」を参照すれば、「脳室容積における」「期間」「変化」であると解すべきである。
これに対し、引用発明の「脳室境界シフト積分」の「増加」は、「MRIが、試験中、各注射後の6週間、患者当たり最大7回行われ」る「脳室空間変化に類似した測定」の「増加」であるから、特定の量の時間に渡る「脳室空間」の増加と解することができ、また、「脳室空間」の期間変化と解することもできる。
したがって、引用発明の「軽度?中等度のアルツハイマー病の患者における」「プラセボを受け」た「患者」の「脳室空間変化に類似した測定であ」る「脳室境界シフト積分」の「増加」は、本願発明の「アルツハイマー病を患っているが該疾患に対する処置を受けていない対象の脳室容積における変化の速度を測定して取得された、脳室容積における変化の平均速度」に相当する。

(3)上記(2)と同様に解すれば、引用発明の「軽度?中等度のアルツハイマー病の患者における」「バピネオズマブを受け」た「患者」の「脳室空間変化の類似した測定であ」る「脳室境界シフト積分」の「増加」と、本願発明の「アルツハイマー病を患っておりかつIVIG組成物を受けている対象の脳室容積における変化の速度を測定して取得された、脳室容積における変化の平均速度」とは、「アルツハイマー病を患っておりかつ」抗体「を受けている対象の脳室容積における変化の速度を測定して取得された、脳室容積における変化の平均速度」の点で共通する。

(4)上記(2)および(3)から、引用発明の「軽度?中等度のアルツハイマー病の患者におけるバピネオズマブの有効性を評価する方法であって、」「脳の変化が、脳室境界シフト積分によって評価され、脳室境界シフト積分が、脳室空間変化に類似した測定であり、アルツハイマー病が進行するにつれて増加するものであり、プラセボと比較」することと、本願発明の「アルツハイマー病を患っているが該疾患に対する処置を受けていない対象の脳室容積における変化の速度を測定して取得された、脳室容積における変化の平均速度を非治療的速度とし、アルツハイマー病を患っておりかつIVIG組成物を受けている対象の脳室容積における変化の速度を測定して取得された、脳室容積における変化の平均速度を治療的速度とし、前記治療的速度を前記非治療的速度と比較」することとは、「アルツハイマー病を患っているが該疾患に対する処置を受けていない対象の脳室容積における変化の速度を測定して取得された、脳室容積における変化の平均速度を非治療的速度とし、アルツハイマー病を患っておりかつ」抗体「を受けている対象の脳室容積における変化の速度を測定して取得された、脳室容積における変化の平均速度を治療的速度とし、前記治療的速度を前記非治療的速度と比較」する点で共通する。

(5)引用発明の「軽度?中等度のアルツハイマー病の患者におけるバピネオズマブの有効性を評価する方法であって、」「プラセボと比較して、この脳室境界シフト積分の増加の阻害が、処置の陽性の効果を示す方法」と、本願発明の「前記治療的速度を前記非治療的速度と比較し、それによりIVIG組成物の投与の有効性をモニターする段階を含む、アルツハイマー病を処置するように意図されたIVIG組成物投与の有効性をモニターするための方法」とは、「前記治療的速度を前記非治療的速度と比較し、それにより」抗体「の投与の有効性をモニターする段階を含む、アルツハイマー病を処置するように意図された」抗体「投与の有効性をモニターするための方法」の点で共通する。

(6)引用発明の「脳室境界シフト積分」が「MRI」で測定されることは明らかである。
また、引用発明の「プラセボと比較して、この脳室境界シフト積分の増加の阻害が、処置の陽性の効果を示す」ことから、プラセボと比較した増加が同等であるか、またはそれより大きいとき、投与が有効でないとみなされることも明らかである。
したがって、引用発明の「脳室境界シフト積分」が「MRI」で測定され、「プラセボと比較して、この脳室境界シフト積分の増加の阻害が、処置の陽性の効果を示」し、プラセボと比較した増加が同等であるか、またはそれより大きいとき、投与が有効でないとみなされることと、本願発明の「前記脳室容積が磁気共鳴画像法(MRI)により測定され、前記治療的速度が前記非治療的速度より低いとき、IVIG組成物投与が有効であるとみなされ、および治療的速度が非治療的速度と同等であるか、またはそれより大きいとき、IVIG組成物投与が有効でないとみなされる」こととは、「前記脳室容積が磁気共鳴画像法(MRI)により測定され、前記治療的速度が前記非治療的速度より低いとき、」抗体「投与が有効であるとみなされ、および治療的速度が非治療的速度と同等であるか、またはそれより大きいとき、」抗体「投与が有効でないとみなされる」点で共通する。

してみると、本願発明と引用発明とは
「アルツハイマー病を患っているが該疾患に対する処置を受けていない対象の脳室容積における変化の速度を測定して取得された、脳室容積における変化の平均速度を非治療的速度とし、
アルツハイマー病を患っておりかつ抗体を受けている対象の脳室容積における変化の速度を測定して取得された、脳室容積における変化の平均速度を治療的速度とし、
前記治療的速度を前記非治療的速度と比較し、それにより抗体の投与の有効性をモニターする段階を含む、アルツハイマー病を処置するように意図された抗体投与の有効性をモニターするための方法であって、
前記脳室容積が磁気共鳴画像法(MRI)により測定され、前記治療的速度が前記非治療的速度より低いとき、抗体投与が有効であるとみなされ、および治療的速度が非治療的速度と同等であるか、またはそれより大きいとき、抗体投与が有効でないとみなされる、
前記方法。」
である点で一致し、次の点で相違する。

(相違点)
アルツハイマー病を処置するように意図され投与される抗体が、本願発明では「IVIG組成物」であるのに対し、引用発明では「バピネオズマブ」である点。

5 判断
(相違点について)
アルツハイマー病を処置するように意図され投与される抗体として「IVIG組成物」を用いることは、例えば、本願優先日前に頒布され、原査定の拒絶の理由に引用された国際公開第2003/064395号(明細書1頁11?15行「難治性神経変性疾患又は免疫性神経疾患の代表的なものには…アルツハイマー病などがある。」、明細書2頁15?18行「免疫性神経疾患の治療には…免疫グロブリン静脈内投与療法等が行われる。免疫グロブリン大量静注療法…の有効性が確立されている…」)、同様に、本願優先日前に頒布され、原査定の拒絶の理由に引用された国際公開第2009/021708号の段落[0008]?[0009](以下の翻訳は、対応日本国公報である特表2010-535825号によるものであり、段落番号も併せて記載する。「【0008】…本発明は、静脈内免疫グロブリン治療の投与と関連する治療の成功を予測する新しい予後マーカー、ならびに、MS、例えば…アルツハイマー病の治療で活用されてもよい、新しい治療標的を提供する。」、「【0010】本発明は、静脈内免疫グロブリン(IVIG)で治療された患者で過剰発現または過小発現される分子マーカーを使用して…アルツハイマー病の治療の予後を提供するための方法を提供する。」)に開示されているように周知技術であり、引用発明のバピネオズマブより有用性の高い抗体を探すことを目的として、IVIG組成物の有効性を評価しようとすることは、当業者が容易になし得たというべきである。

(効果について)
相違点により本願発明の奏する効果は、引用発明及び周知技術から、当業者が予測できる範囲のものであり、格別顕著なものとはいえない。

6 むすび
したがって、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-02-04 
結審通知日 2015-02-05 
審決日 2015-02-17 
出願番号 特願2012-539095(P2012-539095)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A61B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 島田 保  
特許庁審判長 森林 克郎
特許庁審判官 右▲高▼ 孝幸
藤田 年彦
発明の名称 アルツハイマー病の静脈内免疫グロブリン処置における脳室拡大速度の使用  
代理人 新見 浩一  
代理人 佐藤 利光  
代理人 川本 和弥  
代理人 五十嵐 義弘  
代理人 山口 裕孝  
代理人 山口 裕孝  
代理人 大関 雅人  
代理人 五十嵐 義弘  
代理人 渡邉 伸一  
代理人 大関 雅人  
代理人 刑部 俊  
代理人 春名 雅夫  
代理人 渡邉 伸一  
代理人 川本 和弥  
代理人 井上 隆一  
代理人 佐藤 利光  
代理人 春名 雅夫  
代理人 小林 智彦  
代理人 清水 初志  
代理人 井上 隆一  
代理人 新見 浩一  
代理人 小林 智彦  
代理人 刑部 俊  
代理人 清水 初志  
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