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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04N
管理番号 1302673
審判番号 不服2014-10183  
総通号数 188 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-08-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-06-02 
確定日 2015-07-01 
事件の表示 特願2012-187418「撮像装置、印刷装置、印刷システム、印刷方法、表示装置、表示システムおよび表示方法」拒絶査定不服審判事件〔平成24年12月 6日出願公開、特開2012-239229〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯・本願発明
1 手続の経緯
本件出願は、2007年(平成19年)2月19日(優先権主張2006年2月20日、日本国)を国際出願日とする出願(特願2008-501698号)の一部を平成24年8月28日に新たな特許出願としたものであって、平成25年10月17日付けで拒絶理由の通知がなされ、これに対し、平成25年12月20日付けで手続補正がなされたが、平成26年2月26日付け(発送日同年3月4日)で拒絶査定がなされた。
本件は、上記拒絶査定を不服として平成26年6月2日付けで請求された拒絶査定不服審判である。

2 本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成25年12月20日付け手続補正により補正された特許請求の範囲、明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項によって特定されるものであり、次のとおりのものと認められる。

(A)被写体の光学的な像を受光し、前記光学的な像を電気的な画像信号に変換する撮像センサと、
(B)前記画像信号から、撮影画面上の測距領域より前記被写体に対する合焦位置を検出する合焦位置検出部と、
(C)前記画像信号と前記検出された合焦位置を示す合焦位置情報とを対応付けて記録させる制御部と、
(D)前記撮影画面上の前記合焦位置と異なる位置であり、かつ前記測距領域と少なくも重なるように文字情報または画像を配置して、前記画像信号に対応する撮影画像と前記文字情報または画像とを含む印刷データを生成する印刷データ生成部と、
(E)を備える撮像装置。

((A)?(E)は、当審で付与した。以下各構成要件を「構成要件A」等という。)

第2 刊行物の記載事項及び刊行物発明の認定
1 刊行物の記載事項
原査定における拒絶の理由に引用された特開2001-136424号公報(以下「刊行物1」という。)には、図面と共に次に掲げる事項が記載されている。
(下線は当審で付与した。なお、以下「○1」、「○2」および「○3」なる表記は、公報中の記号「○の中に数字を入れた記号」を示す。情報処理システムの能力上、公報中の同記号を表すことができないことによる。)

「 【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、撮影画面上に文字や画像情報を写し込める情報写し込み機能を有する撮影装置に関し、特にプリンタ機能を備えたデジタルカメラに適用して好適である。」

「 【0002】
【従来の技術】
従来から、撮影画面内に文字、記号、図案等の所定情報を写し込んで合成するデジタルカメラが提案されている。このようなデジタルカメラにおいては、前記所定情報の合成位置が固定されている構成のものや、撮影時にユーザが合成位置を任意に設定できる構成のものがある。」

「 【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来のデジタルカメラにおいては、所定情報の合成位置が固定されている形式のものでは、撮影画面内で主要画像部分が所定情報と重畳する不都合が発生することが多い。合成位置を任意設定できる形式のものでは、この問題を回避することは可能である反面、設定に手間取りシャッターチャンスを逃してしまうことが多々ある。
【0004】
そこで本発明は、前記課題に鑑みてなされたものであり、主要画像部分に所定情報が重畳する不都合を自動的に回避し、さほど重要でない部分を自動的に判断して所定情報を写し込み合成することにより、写し込み情報の合成による印刷画像への悪影響の大幅な低減を図るとともに、ユーザが所定情報の合成位置設定に煩わされずに被写体の撮影のみに集中することを可能とする撮影装置及び撮影制御方法を提供することを目的とする。」

「 【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明の撮影装置は、画像を撮像し、画像情報に変換する撮像手段と、前記画像情報を記憶可能な記憶手段と、前記画像情報から構成される撮影画面内の焦点位置に基づいて、前記撮影画面内の任意の位置に所定情報を合成する合成処理機構とを備える。
【0006】
本発明の撮影装置の一態様は、前記合成処理機構により前記所定情報が合成された前記画像情報から画像を印刷するプリンタ部を備える。
【0007】
本発明の撮影装置の一態様において、前記合成処理機構は、前記撮影画面内の相異なる複数の位置に設けられた各焦点検出領域について、前記焦点位置に基づいて合焦又は非合焦を判定する焦点検出手段と、前記撮影画面内の任意の位置について、前記焦点検出手段により非合焦と判定された前記焦点検出領域の近傍に写し込み位置を選択する情報写込位置選択手段と、前記情報写込位置選択手段により選択された写し込み位置に前記所定情報を写し込み合成する情報写込手段とを備える。」

【発明の実施の形態】
「 【0013】
図1は、本実施形態の印刷機能付きデジタルスチルカメラ(以下、単にデジタルカメラと記す)の概略構成を示すブロック図である。
同図において、制御部100はマイクロコンピュータを中心とする構成の制御回路部であり、主にデジタルカメラ機能を含むシステムコントロールと印刷のためのプリンタコントロールを行ない、本デジタルカメラの全体制御を行なう。
【0014】
撮像光学系は、本実施形態で使用する複数の焦点検出が可能な焦点制御手段101と、複数のレンズ群の他に絞り機構等が含まれ、オートフォーカス機能とEE機能によりピント及び露出等が自動的に行われるレンズ102とを備えて構成されている。
【0015】
焦点制御手段101は、制御部100と接続されており、焦点情報を制御部100に伝達することが可能である。制御部100は、伝達された焦点情報に基づいて、撮影画面内で所定情報の写し込み位置を判定して所定情報を合成処理する。即ち、これら焦点制御手段101及び制御部100が合成処理機構として機能し、制御部100は焦点検出手段101により非合焦と判定された焦点検出領域の近傍に写し込み位置を選択する情報写込位置選択手段と、情報写込位置選択手段により選択された写し込み位置に前記所定情報を写し込み合成する情報写込手段とを備える。
【0016】
撮像光学系により結像される被写体の静止画(光学像)の結像面上にはCCDユニット103が配置される。CCDユニット103の出力は、信号増幅処理とノイズ除去を主に行なう信号処理回路104を経由して、A/D変換機105へ入力され、デジタル信号化された後、メモリコントローラ106により記憶素子であるRAM107にRGB各8ビットからなる24ビットのrawRGBデータとして蓄えられる。
【0017】
設定がメモリーカード111に画像を保存する通常撮影モードになっている場合には、先ずRAM107に展開しているrawRGBデータを画像処理112ユニットにおいて、ガンマ補正やシェーディング補正/エッジ補正や色補正を行なう。その後、符号化ユニット108により、画像処理ユニット112からのデータを着脱可能なメモリーカード111へ汎用の画像データファイル形成(例えばJPEG形式)に変換する。符号化されたデータはデータ書き込み用のカードインターフェイス回路109及びコネクタ110を経てメモリーカード111へ画像ファイルとして蓄えられる。
【0018】
設定が撮像直後の画像を同時印刷するモードになっている場合には、内蔵プリンタで印刷が行なえるように画像処理ユニット112により機能選択した処理を行なう。次に、その結果のRGBデータを印刷出力のためにCMYKへ変換する処理113を行ない、最後にプリンタ特有の階調に変換する4値化処理114(これは、プリンタのドット階調表現能力により異なる。)を行なう。ここで形成したデータは、プリンタエンジンにより、そのまま印刷できるようにデータ展開後、印刷ヘッドヘ送り込まれる。」

「 【0023】
写し込み情報124は、日付、文書、画像、文字、記号、図案等の所定情報が予め入力されており、出力する画像に重ねたり、または元データ自体を加工したりする。
【0024】
図2は、撮影画面内における焦点検出領域及び写し込み位置を示す模式図である。
同図において、○1,○2,○3がそれぞれ焦点検出領域151,152,153を、A,Bがそれぞれ写し込み位置154,155を示す。
【0025】
図3は、本実施形態のデジタルカメラの撮影制御を行なうための各処理を示すフローチャートである。
先ず、判断処理201では被写体に対する焦点検出が行なわれる。焦点制御手段101によって操作部122のシャッターが少し押下されて撮影画像が決定され、その時点で焦点が合わされた焦点位置を決定する。この焦点位置に基づいて焦点検出が行われた後、判断処理202によって写し込みが設定されているかを判断し、設定されていない場合この処理を終了する。写し込みの設定である場合には、判断処理203によって写し込み位置の判断を行う。写し込み位置は図2のA,Bの位置である。判断処理203でAの位置に初期設定されていると判断された場合、判断処理204により下記の表1の設定内容に従ってAの位置に情報を写し込む合成処理1を行うための処理205か、又はBの位置に情報を写し込む合成処理2を行うための処理207が実行される。他方、判断処理203でBの位置に初期設定されていると判断された場合、判断処理206により表1の判断処理に応じて合成処理205,207を行う。合成処理ではデータを直接加工する場合や、処理208によって印刷時のみ合成し、元のデータには情報を付加しないことも可能である。最後に、印刷処理208を行い、データを出力する。」

「 【0027】
表1は、図3のフローチャート内の判断処理204、判断処理206の判断基準を示している。
表中で縦1列目は図2で表される焦点位置○1,○2,○3の焦点が同時に合っている場合の組み合わせを示している。縦2列目は写し込み位置がAに初期設定されている場合の処理を、縦3列目は写し込み位置がBに初期設定されている場合の処理をそれぞれ示す。
【0028】
一例として、表中で焦点が○1○2に設定された場合について、初期設定が位置Aの場合、Bの場合の各処理を説明する。
初期設定が位置Aの場合には、期待する被写体(主要画像部分)が位置Aの側にあることから、情報を写し込む位置をB側にずらし、被写体から情報写し込み位置を離したほうが都合が良い。従って、初期設定が位置Aであるのに関わらず自動的に位置Bに情報を写し込むようにする。他方、初期設定が位置A(審決注:「位置B」の誤記)の場合には、設定を変えずにそのまま位置Bに情報を写し込む準備をする。
このように、焦点数、焦点位置(焦点検出領域)、写し込み位置の組み合わせによってさまざまな情報写込み位置が設定できる。
【0029】
以上説明したように、本実施形態によれば、撮影画面内の主要画像部分に所定情報が重畳する不都合を自動的に回避し、さほど重要でない部分を自動的に判断して所定情報を写し込み合成することにより、写し込み情報の合成による印刷画像への悪影響の大幅な低減を図るとともに、ユーザが所定情報の合成位置設定に煩わされずに被写体の撮影のみに集中することが可能となる。」

「 【0034】
【発明の効果】
本発明によれば、複数の焦点検出領域に関する焦点検出情報に基づき、主要被写体の位置を自動的に推定し、主要被写体位置をなるべく回避するように情報の写し込みを行なうため、撮影画像内の中心となる被写体に写し込み情報が重畳される確率を大幅に低減することができる。」

2 刊行物発明の認定
刊行物1には、『印刷機能付きデジタルスチルカメラ』(段落【0013】)が記載されており、このカメラ(以下「当該カメラ」ともいう。)を刊行物1発明として認定する。

(1)当該カメラは、『主要画像部分に所定情報が重畳する不都合を自動的に回避し、さほど重要でない部分を自動的に判断して所定情報を写し込み合成することにより、写し込み情報の合成による印刷画像への悪影響の大幅な低減を図る』(段落【0004】)ものである。

(2)当該カメラは、CCDユニットを備えており、このCCDユニットは、『被写体の光学的な像を受光し、前記光学的な像を電気的な画像信号に変換する』ものである(段落【0016】)。

(3)当該カメラは、「デジタルカメラ機能を含むシステムコントロールと印刷のためのプリンタコントロールを行ない、本デジタルカメラの全体制御を行なう」制御部を備えている(段落【0013】)。

(4)当該カメラは「撮影画面内における焦点検出領域151,152,153」を有し(段落【0024】)、「焦点制御手段101によって操作部122のシャッターが少し押下されて撮影画像が決定され、その時点で焦点が合わされた焦点位置を決定」し、「この焦点位置に基づいて焦点検出が行われ」(段落【0025】)、上記(3)のとおり、制御部はカメラ全体の制御を行い、この制御を行う制御部は位置検出部といえるから、当該カメラは『前記画像信号から、撮影画面内の焦点検出領域より前記被写体に対する合焦位置を検出する位置検出部』を備えている。

(5)当該カメラは、メモリーカードに画像を保存するものであり(段落【0017】)、その画像は上記(2)の「画像信号」であり、上記(3)のとおり、制御部はカメラ全体の制御を行うから、当該カメラは、『上記画像信号を記録させる制御部』を備えている。

(6)当該カメラは、「日付、文書、画像、文字、記号、図案等の所定情報」(段落【0023】)を、焦点検出が行われた後、被写体から情報写し込み位置を離して、写し込み位置を判断し、画像に合成し、印刷データを生成し(段落【0025】、【0028】)、上記(3)のとおり制御部はカメラ全体を制御するから、印刷データ生成部といえる。ここで、「画像に合成し」における「画像」は、上記(2)の「画像信号」である。
また、当該カメラは、写し込み位置の選択に関し、「制御部100は焦点検出手段101により非合焦と判定された焦点検出領域の近傍に写し込み位置を選択する」(段落【0015】)ものである。
したがって、当該カメラは、『日付、文書、画像、文字、記号、図案等の所定情報を、非合焦と判定された焦点検出領域の近傍の写し込み位置において、上記画像信号に合成し、印刷データを生成する印刷データ生成部』を備えている。

(7)以上より、刊行物1には、次の発明(以下「刊行物1発明」という。)が記載されていると認められる。

「被写体の光学的な像を受光し、前記光学的な像を電気的な画像信号に変換するCCDユニットと、
前記画像信号から、撮影画面内の焦点検出領域より前記被写体に対する合焦位置を検出する位置検出部と、
上記画像信号を記録させる制御部と、
日付、文書、画像、文字、記号、図案等の所定情報を、非合焦と判定された焦点検出領域の近傍の写し込み位置において、上記画像信号に合成し、印刷データを生成する印刷データ生成部と、
を備えることにより、主要画像部分に所定情報が重畳する不都合を自動的に回避し、さほど重要でない部分を自動的に判断して所定情報を写し込み合成することにより、写し込み情報の合成による印刷画像への悪影響の大幅な低減を図る、
印刷機能付きデジタルスチルカメラ。」

第3 対比
1 対比
本願発明と刊行物1発明とを対比する。

(1)構成要件A
刊行物1発明における「被写体の光学的な像を受光し、前記光学的な像を電気的な画像信号に変換するCCDユニット」と構成要件Aとを対比する。
刊行物1発明の「CCDユニット」は、本願発明の「撮像センサ」に相当する。
したがって、本願発明と刊行物1発明とは、「被写体の光学的な像を受光し、前記光学的な像を電気的な画像信号に変換する撮像センサ」を備える点で一致する。

(2)構成要件B
刊行物1発明における「前記画像信号から、撮影画面内の焦点検出領域より前記被写体に対する合焦位置を検出する位置検出部」と構成要件Bとを対比する。
刊行物1発明の「撮影画面内の焦点検出領域」、「位置検出部」は、それぞれ構成要件Bの「撮影画面上の測距領域」、「合焦位置検出部」に相当する。
したがって、本願発明と刊行物1発明とは、「前記画像信号から、撮影画面上の測距領域より前記被写体に対する合焦位置を検出する合焦位置検出部」を備える点で一致する。

(3)構成要件C
刊行物1発明における「上記画像信号を記録させる制御部」と構成要件Cとを対比すると、「上記画像信号を記録させる制御部」として共通する。
しかしながら、本願発明は、「前記検出された合焦位置を示す合焦位置情報とを対応付けて」記録するのに対し、刊行物1発明はそうではない点で相違する。

(4)構成要件D
刊行物1発明における「日付、文書、画像、文字、記号、図案等の所定情報を、非合焦と判定された焦点検出領域の近傍の写し込み位置において、上記画像信号に合成し、印刷データを生成する印刷データ生成部」及び「主要画像部分に所定情報が重畳する不都合を自動的に回避し、さほど重要でない部分を自動的に判断して所定情報を写し込み合成することにより、写し込み情報の合成による印刷画像への悪影響の大幅な低減を図る」と構成要件Dとを対比する。
刊行物1発明の「非合焦と判定された焦点検出領域の近傍の写し込み位置」、「日付、文書、画像、文字、記号、図案等の所定情報」は、それぞれ構成要件Dの「前記撮影画面上の前記合焦位置と異なる位置」、「文字情報または画像」に相当する。
したがって、本願発明と刊行物1発明とは、「前記撮影画面上の前記合焦位置と異なる位置に文字情報または画像を配置して、前記画像信号に対応する撮影画像と前記文字情報または画像とを含む印刷データを生成する印刷データ生成部」を備える点で共通する。
しかしながら、文字情報または画像を配置する、前記撮影画面上の前記合焦位置と異なる位置が、本願発明においては、さらに「前記測距領域と少なくも重なるよう」になっているのに対し、刊行物1発明においては「主要画像部分に所定情報が重畳する不都合を自動的に回避し、さほど重要でない部分を自動的に判断して所定情報を写し込み合成することにより、写し込み情報の合成による印刷画像への悪影響の大幅な低減を図る」点で相違する。

(5)構成要件E
刊行物1発明における「印刷機能付きデジタルスチルカメラ」は、構成要件Eにおける「撮像装置」に相当し、本願発明と刊行物1発明とは、「撮像装置」として一致する。

2 一致点、相違点
以上より、本願発明と引用発明との一致点、相違点は、次のとおりである。

(一致点)
被写体の光学的な像を受光し、前記光学的な像を電気的な画像信号に変換する撮像センサと、
前記画像信号から、撮影画面上の測距領域より前記被写体に対する合焦位置を検出する合焦位置検出部と、
前記画像を信号記録させる制御部と、
前記撮影画面上の前記合焦位置と異なる位置に文字情報または画像を配置して、前記画像信号に対応する撮影画像と前記文字情報または画像とを含む印刷データを生成する印刷データ生成部と、
を備える撮像装置。

(相違点1)
制御部が信号記録させる前記画像が、
本願発明においては、「前記検出された合焦位置を示す合焦位置情報とを対応付けて」記録されるのに対し、
刊行物1発明においては、そうではない点

(相違点2)
文字情報または画像を配置する、前記撮影画面上の前記合焦位置と異なる位置が、
本願発明においては、さらに「前記測距領域と少なくも重なるよう」になっているのに対し、
刊行物1発明においては、「主要画像部分に所定情報が重畳する不都合を自動的に回避し、さほど重要でない部分を自動的に判断して所定情報を写し込み合成することにより、写し込み情報の合成による印刷画像への悪影響の大幅な低減を図る」点

第4 判断
1 相違点1について
刊行物1発明は、撮像画像を記録すること及び撮像画像を印刷することができるものであり、このような撮像装置において、記録した撮像画像についても印刷することは普通に想定されることである。
そして、刊行物1発明は、撮像画像を印刷する際に、前記撮影画面上の前記合焦位置と異なる位置に文字情報または画像を配置文字情報または画像を配置するのであるから、記録した撮像画像を印刷する際にも、文字情報または画像を配置する位置を決めるために合焦位置情報が必要なことは明らかであり、合焦位置情報を得るために、撮像画像とともに検出された合焦位置を示す合焦位置情報を記録することは、当業者が容易に想到し得ることである。
また、撮像画像と共に合焦位置情報を記録することは、原査定における拒絶の理由に引用された特開2005-94423号公報(以下「刊行物2」という。)の段落【0035】?【0037】に記載されているように公知の技術である。
そうすると、刊行物1発明において、制御部が信号記録される前記画像が前記検出された合焦位置を示す合焦位置情報とを対応付けて記録されるようにすることは当業者が容易に想到し得ることである。

2 相違点2について
測距領域を撮影画面上に多数設けることは、周知の技術である(特開2003-143444号公報:段落【0028】、【0029】、図2、特開2004-101632号公報:段落【0008】、【0025】、図3、図9、特開2005-215750号公報:段落【0029】、図9等参照)。
刊行物1発明の測距領域を上記周知技術の測距領域にすることは、当業者が容易に想到し得ることであって、このようにすることにより、合焦位置と異なる位置にある測距領域は撮影画面上において広い領域を占めることになる。刊行物1発明は、「主要画像部分に所定情報が重畳する不都合を自動的に回避し、さほど重要でない部分を自動的に判断して所定情報を写し込み合成することにより、写し込み情報の合成による印刷画像への悪影響の大幅な低減を図る」ものであって、刊行物1発明における文字情報または画像情報は、文書等を含むものであり(刊行物1段落【0023】)、文書は数行にわたる領域を占めることが想定され、このような状況において、合焦位置と異なる位置に文字情報または画像情報を配置すると、合焦位置ではない測距領域と重なることは普通に想定されることである。
したがって、刊行物1発明に周知技術を適用して、「前記撮影画面上の前記合焦位置と異なる位置であり、かつ前記測距領域と少なくも重なるように文字情報または画像を配置」するようにすることは、当業者が容易に想到し得ることである。

そして、本願発明が奏する効果は、その容易想到である構成から当業者が容易に予測し得る範囲内のものであり、同範囲を超える顕著なものでもない。

第5 むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、刊行物1、刊行物2に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-01-28 
結審通知日 2015-02-03 
審決日 2015-02-16 
出願番号 特願2012-187418(P2012-187418)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 村山 絢子  
特許庁審判長 渡邊 聡
特許庁審判官 丹治 彰
小池 正彦
発明の名称 撮像装置、印刷装置、印刷システム、印刷方法、表示装置、表示システムおよび表示方法  
代理人 鷲田 公一  

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