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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04W
管理番号 1302730
審判番号 不服2013-17426  
総通号数 188 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-08-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-09-09 
確定日 2015-07-01 
事件の表示 特願2011-508640「通話ヘッダ中で設定されている、予め定められている値に基づいて、移動局が通話を識別することを可能にするシステム、装置および方法」拒絶査定不服審判事件〔平成21年11月12日国際公開、WO2009/137617、平成23年 8月 4日国内公表、特表2011-523266〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成21年5月6日(パリ条約に基づく優先権主張 2008年5月7日 米国、2008年7月11日 米国、2009年4月30日 米国)を国際出願日とする出願であって、平成24年7月24日付けで拒絶理由が通知され、これに対して平成25年1月30日に手続補正がなされ、平成25年4月26日付けで拒絶査定がなされ、これに対して平成25年9月9日に拒絶査定不服審判が請求され、同時に手続補正がなされ、平成26年9月1日付けで当審から拒絶理由が通知され、平成26年12月26日付けで手続補正がなされたものである。


第2.本願発明
本願の請求項44に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成26年12月26日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項44に記載された次の事項により特定されるものである。

「【請求項44】
ユーザ機器に、公共安全アクセスポイント(PSAP)との緊急通話を優先取扱いすることを促すための方法において、
前記PSAPにより、前記ユーザ機器との通信セッションを確立することと、
前記PSAPより前記ユーザ機器へ発信するデータパケット通信を送信することとを含み、前記送信されたデータパケット通信は、前記確立された通信セッションを緊急通話として識別し、および前記ユーザ機器に現在の通信セッションを遮断することを促し、これにより前記緊急通話を優先取扱いすることを促すヘッダを含み、
前記ヘッダは、無線アクセスノードと前記ユーザ機器との間でワイヤレスに通信することにより前記ユーザ機器に中継される方法。」


第3.引用発明
当審の拒絶の理由に引用された刊行物1(B. Rosen and J. Polk, "Best Current Practice for Communications Services in support of Emergency Calling draft-ietf-ecrit-phonebcp-04", [online], 2008.02.25, [retrieved on 2012.07.20], Retrieved from the Internet )には、図面とともに、以下の事項が記載されている。

(a)第16頁のセクション12「12.Call termination」
「12. Call termination
ED-65 UACs with an active emergency call(i.e. SIP Dialog) MUST NOT generate a BYE request (or equivalent for other non-SIP signaling). The PSAP must be the only entity that can terminate a call. If the user " hangs up " an emergency call, the device should alert the user, and if the user responds by attempting to pick up the call, the device MUST reconnect the caller to the PSAP.
ED-66 There can be a case where the session signaling path is lost, and the user agent dose not receive the BYE. If the call is hung up, and the session timer (if implemented) expires, the call MAY be declared lost. If in the interval, an incoming call is received from the domain of the PASP, the device MUST drop the old call and alert for the (new) incoming call. Dropping of the old call MUST only occur if the user is attempting to hang up; the domain of an incoming call can only be determined from the From header, which is not reliable, and could be spoofed. Dropping an active call by a new call with a spoofed From: would be a Dos attack.」
(当審訳:12.呼の終結
ED-65 アクティブな緊急電話(すなわち、SIP対話)を伴った複数のUACは、BYE要求(または、他の非SIP信号についての等価なもの)を発生してはならない。PSAPは、呼を終了させる唯一のエンティティでなければならない。もしユーザが緊急電話中に「受話器を降ろし」たら、装置はユーザに警告すべきである。そしてもしユーザが呼を再開することを試みることによって反応するなら、装置は発信者をPSAPへ再び接続しなければならない。
ED-66 セッション信号経路が失われ、ユーザエージェントがBYEを受信しないことがあり得る。受話器が降ろされ、セッションタイマーが満了したら、呼は失われたと宣言されるかもしれない。間隔中に、PSAPのドメインから入来してくる呼が受信されたら、装置は古い呼をやめて、新しい入来してくる呼のために警告しなければならない。もしユーザが受話器を降ろそうとしているなら、古い呼をやめることが、ただ起こらなければならない。入来してくる呼のドメインは、Fromヘッダからただ決定され得る。Fromヘッダは、信頼できず、偽装されることがある。偽造されたFromヘッダを伴った新しい呼によってアクティブな呼が中止されるのは、コンピュータサービス妨害であろう。)

「ED-66」の「ED」は「End Devices」の略であり、終端の装置の動作を記述したものであることを表している。よって、ED-65及びED-66の「装置」は、終端の装置、すなわちユーザ機器である。したがって、刊行物1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「通話のセッションは、SIPに従って確立され、
入来してくる呼のドメインは、Fromヘッダからただ決定され、
間隔中に、PSAPのドメインから入来してくる呼が受信されたら、ユーザ機器は古い呼をやめて、新しい入来してくる呼のために警告する方法。」


第4.本願発明と引用発明の一致点・相違点
引用発明では、入来してくる呼のドメインは、Fromヘッダからただ決定されるから、入来してくる呼がPSAPのドメインからの呼であるということは、Fromヘッダに基づいて検出されていることは明らかである。
そして、引用発明では、入来してくる呼が、PSAPのドメインからの呼であれば、ユーザ機器は古い呼をやめて、新しい入来してくる呼のために警告するから、PSAPのドメインからの呼を緊急通話と判断し、「ユーザ機器に、公共安全アクセスポイント(PSAP)との緊急通話を優先取扱いすることを促」しているといえる。

引用発明では、PSAPのドメインから入来してくる呼を受信しているから、本願発明と引用発明とは、「前記PSAPにより、前記ユーザ機器との通信セッションを確立する」点で一致している。

SIPではデータパケット通信を送信することは、周知であり、且つ引用発明では、PSAPのドメインから入来してくる呼を受信しているから、本願発明と引用発明とは、「前記PSAPより前記ユーザ機器へ発信するデータパケット通信を送信する」点で一致している。

引用発明では、Fromヘッダに基づいて、入来してくる呼が、PSAPのドメインからの呼であることを検出し、その場合、ユーザ機器は古い呼をやめて、新しい入来してくる呼のために警告するから、PSAPのドメインからの呼を緊急通話と判断していることは明らかである。また、引用発明の「古い呼」が、本願発明の「現在の通信セッション」に相当し、引用発明の「古い呼をやめ」ることが、本願発明の「現在の通信セッションを遮断すること」に相当する。したがって、引用発明の入来してくる呼が、PSAPのドメインからの呼であることを示すFromヘッダと本願発明の「ヘッダ」とは、「前記確立された通信セッションを緊急通話として識別し、および前記ユーザ機器に現在の通信セッションを遮断することを促し、これにより前記緊急通話を優先取扱いすることを促すヘッダ」である点で一致している。

また、引用発明において、SIPのデータパケット通信がFromヘッダを含むことは明らかである。

引用発明では、入来してくる呼のドメインは、Fromヘッダからただ決定され、間隔中に、PSAPのドメインから入来してくる呼が受信されたら、ユーザ機器は古い呼をやめて、新しい入来してくる呼のために警告するから、Fromヘッダがユーザ機器まで中継されて届けられていることは明らかである。

したがって、本願発明と引用発明の一致点・相違点は、次のとおりである。

[一致点]
「ユーザ機器に、公共安全アクセスポイント(PSAP)との緊急通話を優先取扱いすることを促すための方法において、
前記PSAPにより、前記ユーザ機器との通信セッションを確立することと、
前記PSAPより前記ユーザ機器へ発信するデータパケット通信を送信することとを含み、前記送信されたデータパケット通信は、前記確立された通信セッションを緊急通話として識別し、および前記ユーザ機器に現在の通信セッションを遮断することを促し、これにより前記緊急通話を優先取扱いすることを促すヘッダを含み、
前記ヘッダは、前記ユーザ機器に中継される方法。」である点。

[相違点]
本願発明では、無線アクセスノードとユーザ機器との間でワイヤレスに通信するが、引用発明では、無線アクセスノードとユーザ機器との間でワイヤレスに通信するか不明な点。


第5.相違点についての検討
刊行物1の第12頁のセクション8「8. Identifying an emergency call」に、以下のように記載されている。
「ED-52 The endpoint MUST attempt to update its location at the time of an emergency call.」
(当審訳:ED-52 緊急通話の際には、終端は、その場所を更新するように試みなければならない。)
したがって、終端は固定電話ではなく、携帯電話機であることが明らかであるから、引用発明において、無線アクセスノードとユーザ機器との間でワイヤレスに通信することにより、相違点に係る構成とすることは、当業者が容易に想到したことである。

そして、本願発明の作用効果も、引用発明から当業者が予測できる範囲のものである。
したがって、本願発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。


第6.むすび
以上のとおり、本願の請求項44に係る発明は、刊行物1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願のその余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-01-29 
結審通知日 2015-02-03 
審決日 2015-02-16 
出願番号 特願2011-508640(P2011-508640)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H04W)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 北元 健太  
特許庁審判長 近藤 聡
特許庁審判官 江口 能弘
吉田 隆之
発明の名称 通話ヘッダ中で設定されている、予め定められている値に基づいて、移動局が通話を識別することを可能にするシステム、装置および方法  
代理人 砂川 克  
代理人 中村 誠  
代理人 河野 直樹  
代理人 佐藤 立志  
代理人 野河 信久  
代理人 赤穂 隆雄  
代理人 岡田 貴志  
代理人 井上 正  
代理人 井関 守三  
代理人 蔵田 昌俊  
代理人 峰 隆司  
代理人 福原 淑弘  
代理人 堀内 美保子  

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