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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 A61K
管理番号 1302821
審判番号 不服2013-15859  
総通号数 188 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-08-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-08-16 
確定日 2015-07-08 
事件の表示 特願2008-519980「肌又は毛髪のケアにおける改良」拒絶査定不服審判事件〔平成19年1月4日国際公開,WO2007/000586,平成20年12月11日国内公表,特表2008-545003〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,2006年6月27日(パリ条約に基づく優先権主張 2005年6月29日 英国)を国際出願日とする出願であって,平成23年12月26日付け拒絶理由通知書に対して,その指定期間内の平成24年7月13日に手続補正書が提出されたが,平成25年4月11日付けで拒絶査定がなされたのに対して,平成25年8月16日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに手続補正書が提出されたものである。

第2 本願発明
本願請求項4に係る発明は,特許請求の範囲の請求項4に記載された事項により特定されるとおりのものであって,その記載は次のとおりである。
「大豆抽出物の発酵物を含む,毛髪のトリートメント又はケア用の化粧品組成物。」(以下,「本願発明」という。)
なお,請求項6にも請求項4と全く同一の記載がなされているが,ここでは請求項4について検討する。

第3 当審の判断
1 引用刊行物及びその記載事項
原審で引用され,本願優先権主張の日前に頒布されたことが明らかな刊行物である特開2002-193735号公報(以下,「刊行物A」という。)には,以下の事項が記載されている。
(A-1)【特許請求の範囲】
「【請求項1】以下の工程(a)及び(b)からなる皮膚外用組成物の製造方法。
(a)1種又は2種以上の微生物を大豆抽出物に作用させて発酵させる工程,
(b)工程(a)により得られた発酵生成物に,炭酸塩又はタルクより選ばれる1種又は2種以上を接触させる工程。
・・・
【請求項10】請求項1?9記載のいずれかの製造方法により得られる皮膚外用組成物。」
(A-2)【0001】
「【発明の属する技術分野】本発明は,大豆抽出物に微生物,特に乳酸菌又はビフィズス菌を作用せしめて得られる発酵生成物を有効成分とする皮膚外用組成物に関し,更に詳しくは,上記発酵生成物に炭酸塩或いはタルクより選ばれる1種又は2種以上を接触させることで,特有の臭いを低減させ,嗜好性を向上させた皮膚外用組成物及びその製造方法に関する。」
(A-3)【0017】?【0018】
「【0017】本発明では,上記の工程(a)で得られた発酵豆乳に,炭酸マグネシウム,炭酸カルシウム,炭酸亜鉛,炭酸ニッケル,炭酸バリウム,炭酸プラセオジム,炭酸ベリリウム,炭酸マグネシウムカルシウム,炭酸カルシウム,炭酸ラジウム,炭酸イットリウム,炭酸カドミウム,炭酸銀,炭酸クロム,炭酸コバルト,炭酸ジスプロシウム,炭酸水銀,炭酸セリウム,炭酸鉄,炭酸銅,炭酸ストロンチウム,炭酸マンガン,炭酸鉛等の炭酸塩,タルクより選ばれる1種又は2種以上を添加する。添加量は必要に応じて決めればよいが,発酵豆乳の量に対して0.005?10重量%,好ましくは0.1?2.0重量%,より好ましくは0.4?1.2重量%添加すればよい。
【0018】また,添加後一定時間放置すればより高い臭いの低減効果を得ることができる。放置する時間は,発酵豆乳の臭いの強さ等に応じて適宜決定すればよいが,5時間以上,好ましくは10?100時間,より好ましくは15?80,特に好ましくは50?70時間放置すればよく,その際,攪拌すれば更に好ましい。更に,20℃以下,好ましくは5℃以下で放置,或いは攪拌放置後上清を回収することで,より刺激臭が低減され,且つ,分解・不溶物析出等が押さえられた永続的安定性の高い発酵豆乳を得ることができる。」
(A-4)【0036】
「【0036】本発明の皮膚外用組成物を含む化粧品,医薬品,医薬部外品等は,常法により製造することができ,化粧水,乳液,保湿クリーム,クレンジングクリーム,マッサージクリーム,洗顔クリーム,パック,美容液等の基礎化粧品,シャンプー,リンス,トリートメント,ヘアトニック,ヘアリキッド,ヘアクリーム,ヘアミルク等の頭髪用製品,入浴剤等の浴用化粧品,ファンデーション,口紅,マスカラ,アイシャドウ等のメーキャップ化粧品,日焼け止め等の特殊化粧品,アフターシェーブローション,ボディーソープ等,種々の形態とすることができる。」
(A-5)【0040】
「【0040】(試験例1)上記製造例3にて得られた発酵豆乳に炭酸マグネシウム,炭酸カルシウム,タルク,活性炭,珪藻土を,各々全量の0.8%になるよう添加した。室温にて68時間攪拌放置した後,ろ紙にてろ過し,実施例1?5を得た。なお,無添加の発酵豆乳を比較例1とした。得られた試料各々に対し,乳酸量,酢酸量,ショ糖量,及びイソフラボン量を定量し,比較例の含量を100として算出した。pHの測定には水に各試料を10%になるように混和したものを用いた。刺激臭の低減効果に関しては,成人男女20名の前腕内側に比較例1及び実施例1?5を塗布し,表1の判断基準に基づいてスコア平均値を求めた。また,得られた試料それぞれに対し,ヒト皮膚に対する保湿効果を調べた。保湿効果は試料を10%水溶液とし,成人5名の清潔にした前腕内側にサンプルを塗布し,30分後に,その水分量をIBS株式会社製インピーダンスメーターSKICON-200型で測定し,その平均を算出し,比較した。」

2 刊行物Aに記載された発明
刊行物Aには,その【請求項1】において,
「以下の工程(a)及び(b)からなる皮膚外用組成物の製造方法。
(a)1種又は2種以上の微生物を大豆抽出物に作用させて発酵させる工程,
(b)工程(a)により得られた発酵生成物に,炭酸塩又はタルクより選ばれる1種又は2種以上を接触させる工程。」(摘示(A-1))
と記載され,また,【請求項10】には,
「請求項1?9記載のいずれかの製造方法により得られる皮膚外用組成物。」(摘示(A-1))
と記載されている。
さらに,【0036】には,
「本発明の皮膚外用組成物を含む化粧品,医薬品,医薬部外品等は,常法により製造することができ,・・・シャンプー,リンス,トリートメント,ヘアトニック,ヘアリキッド,ヘアクリーム,ヘアミルク等の頭髪用製品,・・・等,種々の形態とすることができる。」(摘示(A-4))
と記載されていることから,上記【請求項10】でいう「皮膚外用組成物」を含む,頭髪用製品としてのトリートメントについても記載されているものと解される。
なお,『皮膚外用』との文言からすると,例えば,養毛剤や育毛剤など,頭皮(すなわち,頭の皮膚)に対するものと解釈される化粧品はともかく,頭髪用トリートメントなど,専ら頭髪・毛髪に対する化粧品などは含まれないものとも解しうるものではあるが,上記したように刊行物Aには,頭髪用トリートメントが1製品として明確に例示されているし,また,同様に『皮膚外用』との文言で,毛髪や頭髪用の化粧品類をも含む意味に使用されることは,例えば,以下の参考文献に示されるように,この分野ではしばしば行われてきたことである。したがって,上記のように解釈することは充分に合理性のあることである。
・参考文献1:特開平10-120579号公報の【0013】
・参考文献2:特開平9-124453号公報の【0024】
・参考文献3:特開平5-238925号公報の【0015】
以上のことから,刊行物Aには,次の発明が記載されているといえる。
「(a)1種又は2種以上の微生物を大豆抽出物に作用させて発酵させる工程,及び,
(b)工程(a)により得られた発酵生成物に,炭酸塩又はタルクより選ばれる1種又は2種以上を接触させる工程,
からなる製造方法により得られる皮膚外用組成物を含む,頭髪用製品としてのトリートメント。」(以下,「引用発明」という。)

3 対比,判断
(1)「大豆抽出物の発酵物を含む」について
まず,本願発明の「大豆抽出物の発酵物を含む(・・・組成物)」との特定事項に関して,該事項が引用発明において具備されているといえるか否かについて検討する。
引用発明では,(a)工程により得られた発酵生成物,すなわち,「1種又は2種以上の微生物を大豆抽出物に作用させて発酵させる」工程により得られた発酵生成物に,炭酸塩又はタルクより選ばれる1種又は2種以上を接触させる工程からなる製造方法により,皮膚外用組成物を得るとされている。
そこで,ここでいう『接触』に関して検討すると,刊行物Aには,以下の記載がなされている。
ア)「【0001】【発明の属する技術分野】本発明は,・・・上記発酵生成物に炭酸塩或いはタルクより選ばれる1種又は2種以上を接触させることで,特有の臭いを低減させ,嗜好性を向上させた皮膚外用組成物及びその製造方法に関する。」(摘示(A-2))
イ)「【0017】本発明では,上記の工程(a)で得られた発酵豆乳に,炭酸マグネシウム,・・・等の炭酸塩,タルクより選ばれる1種又は2種以上を添加する。・・・。
【0018】また,添加後一定時間放置すればより高い臭いの低減効果を得ることができる。・・・放置,或いは攪拌放置後上清を回収することで,より刺激臭が低減され,且つ,分解・不溶物析出等が押さえられた永続的安定性の高い発酵豆乳を得ることができる。」(摘示(A-3))
ウ)「【0040】(試験例1)上記製造例3にて得られた発酵豆乳に炭酸マグネシウム,・・・,珪藻土を,各々全量の0.8%になるよう添加した。室温にて68時間攪拌放置した後,ろ紙にてろ過し,実施例1?5を得た。・・・」(摘示(A-5))
以上の記載から見て,炭酸塩又はタルクは臭いを低減させるために使用され,その後ろ過等により除去されるものと解される。すなわち,「皮膚外用組成物」となった段階では,炭酸塩又はタルクは含まれていないものである。
さらに加えて,このような炭酸塩又はタルクは,技術的に見て,単に臭いの低減という作用のみを奏するに止まり,例えば,発酵生成物の化学的な変質等を引き起こすものとは解し得ないものである。
そうすると,引用発明に係る「皮膚外用組成物」には,「大豆抽出物の発酵物」を当然に含んでいるものと解され,ひいては,引用発明に係る「頭髪化粧品としてのトリートメント」においても,同様に「大豆抽出物の発酵物」を含んでいるものと解される。
したがって,引用発明は,本願発明でいう「大豆抽出物の発酵物を含む(・・・組成物)」との特定事項を具備するものといえる。
(2)「毛髪のトリートメント又はケア用の化粧品組成物」について
次に,本願発明の「毛髪のトリートメント又はケア用の化粧品組成物」なる特定事項について検討すると,引用発明の「頭髪用製品としてのトリートメント」は,本願発明の「毛髪のトリートメント・・・用の化粧品組成物」に相当することは明らかである。
したがって,本願発明の「毛髪のトリートメント又はケア用の化粧品組成物」なる特定事項についても,引用発明は具備するものといえる。
(3)まとめ
上記(1)及び(2)から,本願発明の特定事項は,何れも引用発明が具備するものといえるので,本願発明は,刊行物Aに記載された発明というべきものである。

第4 むすび
以上のように,本願請求項4に係る発明は,刊行物Aに記載された発明であって,特許法第29条第1項第3号に該当し,特許を受けることができないものであるから,他の請求項に係る発明について検討するまでもなく本願は拒絶をすべきものである。
なお,本審決においては,本願請求項4に係る発明について検討したが,該請求項4に係る発明は,平成25年8月16日付け手続補正の前と後とで変更されておらず,しかも,該請求項4に係る発明は,上記したように特許を受けることができないものである。そうすると,平成25年8月16日付け手続補正が所定の要件に適合せず却下されるべきものであるか否かにはかかわらず,「本願は拒絶をすべきものである」との判断に至ることは明らかである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-02-06 
結審通知日 2015-02-10 
審決日 2015-02-24 
出願番号 特願2008-519980(P2008-519980)
審決分類 P 1 8・ 113- Z (A61K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 吉岡 沙織菅野 智子山本 英一  
特許庁審判長 星野 紹英
特許庁審判官 新居田 知生
関 美祝
発明の名称 肌又は毛髪のケアにおける改良  
代理人 内藤 忠雄  
代理人 赤松 利昭  
代理人 奥谷 雅子  
代理人 山崎 行造  

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