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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F02F
審判 査定不服 4項1号請求項の削除 特許、登録しない。 F02F
管理番号 1302844
審判番号 不服2014-7017  
総通号数 188 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-08-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-04-16 
確定日 2015-07-08 
事件の表示 特願2011-514009「内燃機関用ピストン」拒絶査定不服審判事件〔平成21年12月23日国際公開、WO2009/153237、平成23年 9月 8日国内公表、特表2011-524958〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、2009(平成21)年6月15日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2008年6月20日、ドイツ連邦共和国)を国際出願日とする出願であって、平成22年12月15日に特許法第184条の5第1項に規定する国内書面及び特許法第184条の4第1項に規定する翻訳文が提出され、平成25年2月22日付けで拒絶理由が通知され、平成25年8月22日に意見書及び手続補正書が提出され、平成25年8月23日に手続補正書が提出され、平成25年9月10日付けで再び拒絶理由が通知され、平成25年12月12日に意見書及び手続補正書が提出されたが、平成26年1月7日付けで拒絶査定がされ、平成26年4月16日に拒絶査定に対する審判請求がされると同時に、特許請求の範囲を補正する手続補正書が提出されたものである。

2.本願発明
上記平成26年4月16日に提出された手続補正書によってされた手続補正は、補正前の請求項1を削除するとともに、補正前の請求項2ないし8の項番をそれぞれ1つずつ繰り上げて、補正後の請求項1ないし7としたものであるから、特許法第17条の2第5項第1号に規定された請求項の削除を目的とするものに該当する。
そして、本願の請求項1ないし7に係る発明は、平成22年12月15日に提出された明細書の翻訳文、平成26年4月16日に提出された手続補正書によって補正された特許請求の範囲及び国際出願時の図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし7に記載された事項によって特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりである。

「 【請求項1】
少なくとも1つの冷却通路を含み、該冷却通路は、少なくとも1つの流入部及び少なくとも1つの流出部の地域においてのみ、該冷却通路の残部と比べてピストンヘッドから比較的更に離れるより低いレベルに配置され、前記冷却通路は、前記残部では、前記ピストンヘッドにより近接する一定のより高いレベルに配置され、前記冷却通路は、前記より低いレベルに配置される領域と前記より高いレベルに配置される領域との間に傾斜した傾斜部を含み、そのより高いレベルで、前記冷却通路は、その下方縁部がリングキャリアの下方縁部と実質的に同じレベルに配置される、内燃機関用のピストン。」

3.引用文献
(1)引用文献の記載
本願の優先日前に頒布され、原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である特開2006-90158号公報(以下、「引用文献」という。)には、「内燃機関用ピストン」に関し、図面とともに次の記載がある。

(ア)「【0001】
本発明は、内燃機関用ピストンに係り、詳しくは冷却油を循環させるほぼ環状の冷却通路を頭部内に備えた内燃機関用ピストンに関する。」(段落【0001】)

(イ)「【0026】
図1(a)に示すように、ピストン13の上面中央には燃焼室14を構成する凹部(キャビティ)13aが形成されている。なお、図示の都合上、凹部13aは平面図にのみ図示する。図1(b)に示すように、ピストン13の上部外周には、ピストンリング(図示せず)が嵌合される溝17と、オイルリング(図示せず)が嵌合される溝18とが形成されている。ピストン13の頭部内には冷却油を循環させるほぼ環状の冷却通路19が凹部13aより下方位置に設けられている。冷却通路19は、ほぼ円環状に形成されるとともに、入口部20と、入口部20から互いに逆方向に冷却油を案内可能に分かれた2系統の通路として、第1の通路21及び第2の通路22とを備えている。両通路21,22は、ピストンピン23を挟んで入口部20と出口とが反対側に位置するように形成され、両通路21,22は、上側から見た状態において、それぞれ、ほぼ半円弧状に形成されている。」(段落【0026】)

(ウ)「【0042】
(第3の実施形態)
次に第3の実施形態を図4(a),(b)に従って説明する。この実施形態は、冷却通路19を構成する第1及び第2の通路21,22の傾斜部21b,22bがピストンピン23を中心としてほぼ対称となるように配置されている点が、前記両実施形態と大きく異なっている。入口部の構成は配置を除いて第1の実施形態と同じである。第1の実施形態と同一部分に関しては同一符号を付して詳しい説明を省略し、異なる部分について説明する。なお、図4(a)はピストンの平面図、(b)は(a)のD-D線における模式断面図である。
【0043】
図4(a)に示すように、第1及び第2の通路21,22の入口部20は、ピストンピン23の一端側でピストンピン23に近い位置に形成されている。入口部20は、図1(c)に示されたものと同様に、上部が冷却油案内隔壁24により二つの流入口20a,20bに分離されており、各流入口20a,20bが各通路21,22の主通路21a,22aに連通している。両通路21,22は入口部20から分岐し、第1の通路21は平面視ほぼ半円弧状に形成され、第2の通路22は第1の通路21より長く、即ち平面視ほぼ半円弧状より長く形成されている。そして、図4(b)に示すように、各通路21,22の傾斜部21b,22bは、ピストンピン23の周面とほぼ一定の間隔をもって沿うように延びるとともにピンボス部27に出口開口21c,22cが形成されている。
【0044】
この実施形態の構成では、第1の実施形態の効果(1)?(3),(5),(6)と同様な効果が得られる他に、次の効果が得られる。
(8)各通路21,22の傾斜部21b,22bがピンボス部27において、ピストンピン23の周面に沿って延びるように形成されているため、ピンボス部27の冷却にも寄与し、ピストン13のより高い冷却効果が得られる。」(段落【0042】ないし【0044】)

(エ)「【0045】
(第4の実施形態)
次に第4の実施形態を図5(a),(b)に従って説明する。この実施形態は、冷却通路19の入口側の構成が前記第3の実施形態と異なり、その他の構成は基本的に第3の実施形態と同じである。第3の実施形態と同一部分に関しては同一符号を付して詳しい説明を省略し、異なる部分について説明する。なお、図5(a)はピストンの平面図、(b)は(a)のE-E線における模式断面図である。
【0046】
前記第3の実施形態では冷却通路19を構成する第1の通路21及び第2の通路22の長さが異なるように形成されているが、この実施の形態では両通路21,22の長さを同等とするため、各通路21,22の入口部21d,22dがピストンピン23を中心としてほぼ対称となるように配置されている。図5(b)に示すように、各入口部21d,22dは、ピンボス部27においてピストンピン23の周面に沿って延びるように形成されている。入口開口21e,22eは、シリンダブロック11に装備されたオイル噴射ノズル25(図示せず)の噴射口25a,25bと対向するように配置されている。両通路21,22が完全に独立しているため、ピストン13を鋳造で製造する際、第1の通路21用及び第2の通路22用として2個の塩中子が必要となる。
【0047】
この実施形態においては、第1の実施形態の効果(1),(2),(5),(6)、第2の実施形態の効果(7)と同様な効果が得られる他に、次の効果が得られる。
(9)各通路21,22の傾斜部21b,22b及び入口部21d,22dがピンボス部27において、ピストンピン23の周面に沿って延びるように形成されているため、ピンボス部27の冷却にも寄与し、ピストン13のより高い冷却効果が得られる。
【0048】
(10)各通路21,22の長さが同じため、冷却油26による冷却効果が均等になる。」(【0045】ないし【0048】)

(2)引用文献記載の事項
上記(1)(ア)ないし(エ)並びに図1、図4及び図5の記載から、以下の事項が分かる。

(オ)上記(1)(ア)ないし(エ)並びに図1、図4及び図5の記載から、引用文献に第4の実施形態として記載された内燃機関用ピストンは、冷却通路19を構成する第1及び第2の通路21,22を含むものであることが分かる。

(カ)上記(1)(エ)の段落【0045】には、第4の実施形態に関し、「この実施形態は、冷却通路19の入口側の構成が前記第3の実施形態と異なり、その他の構成は基本的に第3の実施形態と同じである。」と記載されているから、(1)(ウ)及び図4の記載から、引用文献に第4の実施形態として記載された内燃機関用ピストンにおいて、第1及び第2の通路21,22は、主通路21a,22a、傾斜部21b,22b及び出口開口21c,22cを含むものであることが分かる。

(キ)上記(1)(エ)及び図5の記載から、引用文献に第4の実施形態として記載された内燃機関用ピストンにおいて、第1及び第2の通路21,22は、入口部21d,22d及び入口開口21e,22eを含むものであることが分かる。

(ク)上記(1)(エ)及び図5の記載から、引用文献に第4の実施形態として記載された内燃機関用ピストンにおいて、第1及び第2の通路21,22は、入口開口21e,22e付近及び出口開口21c,22c付近においてのみ、主通路21a,22aと比べてピストンヘッドから離れた位置に配置されるものであることが分かる。

(ケ)上記(1)(エ)及び図5の記載から、引用文献に第4の実施形態として記載された内燃機関用ピストンにおいて、第1及び第2の通路21,22は、主通路21a,22aでは、ピストンヘッドに近接する一定の位置に配置されるものであることが分かる。

(コ)図5の記載において、傾斜部21b,22bは、主通路21aから出口開口21c,22c付近に向けて、それぞれ、ピストンヘッドから徐々に離れるように形成されているから、傾斜部21b,22bにおいて、ピストンヘッドから最も離れた部位を、便宜上それぞれ「傾斜部21bの下端域」及び「傾斜部22bの下端域」とすれば、引用文献に第4の実施形態として記載された内燃機関用ピストンにおいて、第1及び第2の通路21,22は、傾斜部21bの下端域と主通路21aとの間に傾斜部21bを含むとともに、傾斜部22bの下端域と主通路22aとの間に傾斜部22bを含むものであることが分かる。

(サ)図4の記載において、入口部21d,22dは、主通路21aから入口開口21e,22e付近に向けて、それぞれ、ピストンヘッドから徐々に離れるように形成されているから、入口部21d,22dにおいて、ピストンヘッドから最も離れた部位を、便宜上それぞれ「入口部21dの下端域」及び「入口部22dの下端域」と呼称すれば、引用文献に第4の実施形態として記載された内燃機関用ピストンにおいて、第1及び第2の通路21,22は、入口部21dの下端域と主通路21aとの間に入口部21dを含むとともに、入口部22dの下端域と主通路22aとの間に入口部22dを含むものであることが分かる。

(シ)上記(1)(イ)及び(エ)並びに図1及び図5の記載から、引用文献に第4の実施形態として記載された内燃機関用ピストンにおいて、第1及び第2の通路21,22の主通路21a,22aと、ピストンリングが嵌合される溝17は、ピストンヘッドからの距離が同程度であることが分かる。

(3)引用発明
上記(1)、(2)並びに図1、図4及び図5の記載から、引用文献には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。

「冷却通路19を構成する第1及び第2の通路21,22を含み、
第1及び第2の通路21,22は、入口開口21e,22e付近及び出口開口21c,22c付近においてのみ、主通路21a,22aと比べてピストンヘッドから離れた位置に配置され、
第1及び第2の通路21,22は、主通路21a,22aでは、ピストンヘッドに近接する一定の位置に配置され、
第1及び第2の通路21,22は、傾斜部21bの下端域と主通路21aとの間に傾斜部21bを含むとともに、傾斜部22bの下端域と主通路22aとの間に傾斜部22bを含み、
第1及び第2の通路21,22は、入口部21dの下端域と主通路21aとの間に入口部21dを含むとともに、入口部22dの下端域と主通路22aとの間に入口部22dを含み、
第1及び第2の通路21,22の主通路21a,22aと、ピストンリングが嵌合される溝17は、ピストンヘッドからの距離が同程度である内燃機関用ピストン。」

4.対比
本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明における「冷却通路19を構成する第1及び第2の通路21,22」は、その構成、機能又は技術的意義からみて、本願発明における「少なくとも1つの冷却通路」に相当し、以下同様に、「主通路21a,22a」は「冷却通路の残部」及び「残部」、「傾斜部21b,22b」及び「入口部21d,22d」は「傾斜部」に、「出口開口21c,22c」は、「少なくとも1つの流出部」に、「入口開口21e,22e」は「少なくとも1つの流入部」に、「ピストンリングが嵌合される溝17」は「リングキャリア」に、「内燃機関用ピストン」は「内燃機関用のピストン」に、それぞれ相当する。
そして、引用発明における「入口開口21e,22e付近及び出口開口21c,22c付近」は、本願発明における「少なくとも1つの流入部及び少なくとも1つの流出部の地域」に相当する。
また、引用発明における「ピストンヘッドから離れた位置」は、上方にあるピストンヘッドからみて低いレベルにあるといえるから、本願発明における「ピストンヘッドから比較的更に離れるより低いレベル」に相当し、同様に、引用発明における「ピストンヘッドに近接する一定の位置」は、本願発明における「ピストンヘッドにより近接する一定のより高いレベル」に相当する。
そして、引用発明における「傾斜部21bの下端域」、「傾斜部22bの下端域」、「傾斜部21dの下端域」及び「入口部22dの下端域」は、いずれも本願発明における「より低いレベルに配置された領域」に相当し、同様に、引用発明における「主通路21a」及び「主通路22a」は、いずれも本願発明における「より高いレベルに配置された領域」に相当する。

よって、本願発明と引用発明とは、
「 少なくとも1つの冷却通路を含み、該冷却通路は、少なくとも1つの流入部及び少なくとも1つの流出部の地域においてのみ、該冷却通路の残部と比べてピストンヘッドから比較的更に離れるより低いレベルに配置され、前記冷却通路は、前記残部では、前記ピストンヘッドにより近接する一定のより高いレベルに配置され、前記冷却通路は、前記より低いレベルに配置される領域と前記より高いレベルに配置される領域との間に傾斜した傾斜部を含む内燃機関用のピストン。」
である点で一致し、次の点で相違する。

<相違点>
本願発明においては、「より高いレベルで、冷却通路は、その下方縁部がリングキャリアの下方縁部と実質的に同じレベルに配置される」のに対し、引用発明においては、「第1及び第2の通路21,22の主通路21a,22aと、ピストンリングが嵌合される溝17は、ピストンヘッドからの距離が同程度である」点(以下、「相違点」という。)。

5.判断
上記相違点について検討する。
内燃機関用のピストンにおいて、必要な強度を確保しつつ、特に冷却が必要なキャビティ及びピストンリングの嵌合溝を効果的に冷却できるように、冷却通路を設けることは、一般的課題であって、内燃機関用のピストンの設計の際に、当然に検討される事項である。
そして、冷却通路の位置やピストンリングの嵌合溝の位置は、通常、ピストンの設計に際して、内燃機関自体の仕様やピストン及びピストンリングの形状及び材料等を総合的に勘案して決定されるべき事項である。
したがって、冷却通路とピストンリングの嵌合溝の位置関係は、内燃機関用のピストンの設計上の事項として、当業者の通常の創作能力の発揮の範囲内で決められるものであるから、引用発明において上記相違点に係る本願発明の特定事項のように特定することは、当業者が容易に想到し得たことである。

そして、本願発明を、全体的にみても、引用発明から予測できる作用効果以上の顕著な作用効果を奏するものではない。

6.まとめ
以上のとおり、本願発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

7.むすび
上記6.のとおり、本願発明は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないので、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-02-03 
結審通知日 2015-02-10 
審決日 2015-02-24 
出願番号 特願2011-514009(P2011-514009)
審決分類 P 1 8・ 571- Z (F02F)
P 1 8・ 121- Z (F02F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 二之湯 正俊  
特許庁審判長 加藤 友也
特許庁審判官 中村 達之
金澤 俊郎
発明の名称 内燃機関用ピストン  
代理人 伊東 忠重  
代理人 伊東 忠彦  
代理人 大貫 進介  
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