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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A23K
管理番号 1302905
審判番号 不服2014-19084  
総通号数 188 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-08-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-09-24 
確定日 2015-07-09 
事件の表示 特願2011-267077号「産卵鶏用飼料添加剤及び該剤を含有する飼料」拒絶査定不服審判事件〔平成24年3月22日出願公開、特開2012-55319号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は,2005年(平成17年)2月3日(優先権主張 2004年2月6日,日本国)を国際出願日として出願した特願2005-517722号の一部を平成23年12月6日に新たな特許出願としたものであって,平成25年8月14日付けで拒絶理由が通知され,これに対して,同年10月21日に意見書及び手続補正書が提出されたが,平成26年6月16日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,同年9月24日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に特許請求の範囲についての手続補正がなされたものである。

2 本願発明
本願の請求項1ないし7に係る発明は,平成26年9月24日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし7に記載された事項により特定されるとおりのものと認められ,そのうち請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は,次のとおりである。
なお,上記補正において,請求項1に係る補正はないため,本願発明は,拒絶査定時の(平成25年10月21日付け手続補正書に記載の)請求項1に係る発明と同一である。

「ラクトビオン酸又はラクトビオン酸の塩を含む、産卵鶏用基礎飼料で飼育された産卵鶏へ与えるための、産卵鶏用の飼料添加剤。」

3 引用刊行物の記載内容
(1)原査定の拒絶理由に引用された,本願のもとの出願の優先権主張日前(以下「本願出願前」という。)に頒布された刊行物である,特開平7-277991号公報(以下「引用例」という。)には,以下の事項が記載されている(下線は当審で付加した。)。

ア 【特許請求の範囲】
「【請求項1】 ラクトビオン酸を有効成分とするミネラル吸収促進剤。」

イ 【0004】
「【発明が解決しようとしている課題】本発明者らは、上述したようにカルシウムの吸収を促進する物質を求めて鋭意研究を重ねた結果、一般式がO-β-D-ガラクトピラノシル-(1-4)-D-グルコン酸で表されるラクトビオン酸がカルシウムの吸収を促進することを見出し、本発明を完成するに至った。したがって、本発明は、ラクトビオン酸を有効成分とするミネラル吸収促進剤を提供することを課題とする。」

ウ 【0006】
「このミネラル吸収促進効果を有するラクトビオン酸は、ヒトや家畜の生体内で効果を発揮させるために、例えば、・・・(略)・・・ミネラル吸収促進食品素材として用いることもできる。さらには、飼料添加物として用いることもできる。・・・(略)・・・」

エ 【0007】
「本発明のラクトビオン酸を有効成分とするミネラル吸収促進剤は、カルシウム、鉄、マグネシウム、亜鉛、銅などの生体に必要なミネラルの吸収を促進する・・・(略)・・・」

オ 【0017】
「【試験例1】ラクトビオン酸のミネラル吸収促進効果について動物実験を行った。動物実験には8週齢のSD系雄ラットを用い、1群6匹で行なった。実験食は、表6に示したように各糖質を5重量%配合したものを用いた。」

カ 【0018】
「【表6】(省略)
A群:対照群、B群:ラクトース投与群、C群:ラクトビオン酸投与群
また、各実験食の成分値を表7及び表8に示した。」

キ 【0022】
「その結果を図1に示す。それによると、ラクトビオン酸投与群は、カルシウム吸収物質として知られているラクトース投与群に比べて、カルシウムやマグネシウムなどのミネラル吸収を促進させることが判った。」

(2)上記記載事項アないしキの記載によれば,引用例には,次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

「家畜の飼料添加物として用いることができ,カルシウムなどのミネラルの吸収を促進するラクトビオン酸を有効成分とするミネラル吸収促進剤。」

4 対比
本願発明と引用発明とを対比すると,引用発明の「ラクトビオン酸を有効成分とする」ことは,本願発明の「ラクトビオン酸」「を含む」ことに相当する。また,本願発明の「ラクトビオン酸又はラクトビオン酸の塩を含む」とは,「ラクトビオン酸」と「ラクトビオン酸の塩」とを選択的に含むことであると解される。したがって,引用発明の「ラクトビオン酸を有効成分とする」ことと,本願発明の「ラクトビオン酸又はラクトビオン酸の塩を含む」こととは,「ラクトビオン酸を含む」点で一致する。
また,引用発明の「家畜の飼料添加物として用いることができ」る「ミネラル吸収促進剤」と,本願発明の「産卵鶏用の飼料添加剤」とは,「飼料添加剤」で共通する。

したがって,両者は,次の一致点で一致し,相違点で相違する。

(一致点)
「ラクトビオン酸を含む飼料添加剤。」

(相違点)
「ラクトビオン酸を含む飼料添加剤」が,
本願発明では,「産卵鶏用基礎飼料で飼育された産卵鶏へ与えるための,産卵鶏用」であるのに対し,
引用発明では,「カルシウムなどのミネラルの吸収を促進する」ものであって,「家畜」に用いる点。

5 相違点に係る判断
(1)当審の判断
ア 「家畜」とは「人間に飼養される鳥獣。牛・馬・豚・鶏・犬の類。」(株式会社岩波書店 広辞苑第六版)を意味するものであるから,「産卵鶏」も「家畜」であると解されるので,本願発明と引用発明とでは、飼料を与える対象に差異はない,すなわち上記相違点に係る両者の用途に差異はないといえる。少なくとも,引用例における,家畜の飼料添加物として用いることもできるとの記載から(上記3(1)ウの段落【0006】を参照。),当業者であれば引用発明のラクトビオン酸を含む飼料添加物を家畜又はそれに類すると認識できる「産卵鶏」に与えることも容易に着想できるといえる。

イ また,本願発明が,卵殻強化を目的とするものとしても,原査定の拒絶理由に周知例として引用された特開平7-147910号公報,特開平5-168420号公報,特開平10-108628号公報,特開2001-95499号公報,特公平3-71101号公報,特表2002-520003号公報に記載されているように,破卵やヒビ卵対策として,卵殻強化剤を産卵鶏用の飼料に投与すること,及び,卵殻強化剤として,カルシウム源となるカルシウムの吸収率を促進させる働きを持つものを含有させることは,本願出願前から周知技術であることを考慮すると,引用発明の「カルシウムなどのミネラルの吸収を促進するミネラル吸収促進剤であるラクトビオン酸」を産卵鶏用の飼料添加剤として用いることは,当業者が容易に想到し得ることである。

(2)請求人の主張について
ア 請求人は,引用例には,ラクトビオン酸によるミネラル吸収促進対象者については,ヒト及び家畜が挙げられているに止まり,家禽(特に採卵鶏)については一切開示されておらず,また,周知例の開示内容からは,採卵鶏においてカルシウム吸収の促進作用を示す物質であれば,必然的に卵殻強化が図られること(即ち,採卵鶏におけるカルシウム吸収促進が,卵殻強化のための十分条件になること)を示していることにはならない旨を主張している。

イ しかしながら,下記のように請求人の主張は採用できない。
上記(1)アで説示したように,当業者であれば引用発明のラクトビオン酸を含む飼料添加物を「産卵鶏」に与えることは容易に着想できるといえる。
また,上記(1)イに記載したように,破卵やヒビ卵対策として,卵殻強化剤を産卵鶏用の飼料に投与すること,及び,卵殻強化剤として,カルシウム源となるカルシウムの吸収率を促進させる働きを持つものを含有させることは本願出願前から周知技術であるから,当業者であれば,カルシウムの吸収を促進するラクトビオン酸を産卵鶏に与えれば卵殻が強化されることを容易に想定できるものであり,ラクトビオン酸を含む飼料を産卵鶏に与えることも(言い換えると,そのような作用効果を確認することも),当業者にとって格別に困難なことではない。すなわち,本願発明の効果は,引用発明及び周知技術から当業者が容易に想定できるものであって格別なものということができない。

(3)まとめ
したがって,本願発明は,引用発明及び周知技術に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものである。

6 むすび
以上のとおり,本願発明は,引用発明及び周知技術に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により,特許を受けることができない。
したがって,その余の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶されるべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-05-11 
結審通知日 2015-05-12 
審決日 2015-05-25 
出願番号 特願2011-267077(P2011-267077)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A23K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 松本 隆彦  
特許庁審判長 赤木 啓二
特許庁審判官 住田 秀弘
小野 忠悦
発明の名称 産卵鶏用飼料添加剤及び該剤を含有する飼料  
代理人 水谷 馨也  
代理人 田中 順也  
代理人 立花 顕治  
代理人 山田 威一郎  
代理人 松井 宏記  

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