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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B25B
管理番号 1302906
審判番号 不服2014-19085  
総通号数 188 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-08-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-09-24 
確定日 2015-07-09 
事件の表示 特願2010-154910「回転工具」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 1月26日出願公開、特開2012- 16775〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成22年7月7日の出願であって、平成26年1月28日付けで拒絶理由が通知され、これに対し、同年3月27日付けで意見書及び手続補正書が提出され、同年7月4日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年9月24日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。

2.本願発明
本願の請求項1?5に係る発明は、平成26年3月27日付け手続補正書により補正された明細書、特許請求の範囲及び図面の記載からみて、その請求項1?5に記載された事項により特定されるとおりのものと認められ、請求項1には、次のとおり記載されている。

「モータの動力が伝達されて衝撃トルクを発生可能な衝撃トルク発生部を有する回転工具であって、
前記モータの前方に配置されて、該モータによって回転駆動されるピニオンと、
前記ピニオンに噛合する遊星歯車と、
前記衝撃トルク発生部の後部に設けられて、前記遊星歯車を回転自在に支持する支持軸を保持するキャリア部と、
前記衝撃トルク発生部及び前記遊星歯車と噛合する前記ピニオンを収容するユニットケースと、
前記ユニットケースの後方に配置されたギヤハウジングと、を有し、
前記ギヤハウジングには、前記ピニオンを軸支する第1のベアリングが保持され、
前記ユニットケース内には、該ユニットケースの径方向内側であって、前記衝撃トルク発生部と前記遊星歯車との間に、前記キャリア部を軸支する第2のベアリングが配置されることを特徴とする回転工具。」(以下請求項1に係る発明を「本願発明」という。)

3.引用刊行物とその記載事項
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願日前に頒布された、特開2003-291074号公報(以下「刊行物」という。)には、図面とともに、以下の事項が記載されている(下線は当審で付与)。

(ア)
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はインパクト工具に関し、特にオイルパルス発生機構を有する電動式のインパクト工具に関する。」

(イ)
「【0011】
【発明の実施の形態】本発明の実施の形態によるインパクト工具1について図1乃至図5に基づき説明する。図1に示されるように、インパクト工具1は、樹脂製のハウジング11、アルミ製のインナカバ12、ギヤカバ13、ケース14を備えており、これらは互いに接続されて外枠10を構成する。ハウジング11はインパクト工具1の最も後方に設けられており、その前方に向かってインナカバ12、ギヤカバ13、ケース14の順に設けられている。図4に示されるように、外枠10内には、電動モータ20と、その前方側に設けられた減速機構部30と、減速機構部30の前方側に設けられたオイルパルス発生機構40とが設けられている。電動モータ20はハウジング11内に固定されている。減速機構部30は、インナカバ12、ギヤカバ13にそれぞれ配設されたベアリング15によって、インナカバ12及びギヤカバ13内で支持されている。オイルパルス発生機構40はケース14内に位置している。オイルパルス発生機構40は減速機構部30を介して電動モータ20の出力軸21に駆動連結されており、電動モータ20の回転が減速されてオイルパルス発生機構40に伝達されるように構成されている。」

(ウ)
「【0019】オイルパルス発生機構40は、減速機構部30によって減速された回転を回転パルストルクへと変換するために設けられる公知の機構であり、図5に示されるように、ライナ41とライナケース42とからなる筒状体と、ドライバ等の図示せぬ先端工具を取付けるための略棒状をしたアンビル43とを備える。ライナ41、ライナケース42は共に筒状をしており、ライナ41はライナケース42の内周面に同軸的に固着されて設けられている。オイルパルス発生機構40は、ライナケース42が減速機構部30に駆動連結されて支持され、且つケース14に配設されたベアリング18にアンビル43が支持されることにより、外枠10に対して回転自在となっている。従って、電動モータ20の出力軸21が略一定速度で回転すると、当該回転が減速機構部30によって減速されてライナ41に伝達され、ライナケース42とライナ41とが一体に略一定速度で回転するように構成されている。」

(エ)
「【0026】インパクト工具1の動作は以下の通りである。ユーザがアンビル43にドライバ等の先端工具を取付けた後に、スイッチ17を操作して電動モータ20を略一定速度で回転させる。電動モータ20の回転は、減速機構部30で減速されてオイルパルス発生機構40のライナ41に伝達され、ライナ41が回転する。ねじ締めによりアンビル43にかかる負荷によって、ライナ41がアンビル43に対して相対的に回転する。そして、ライナ41の4個のシール面41Aとアンビル43の外周面に形成された2個のシール面43A及び2個のブレード45とが当接し互いに摺動してゆくと、2つの高圧室と2つの低圧室とからなる4つの室が形成される。高圧室ではオイルが圧縮されており、圧縮されたオイルの圧力が解放されようとしてアンビル43が一時的に逆方向に回転されて回転パルストルクが発生する。オイルパルス発生機構40内では、オイルの圧縮・解放が繰返され打撃トルクが繰返し発生することにより、ねじ締めが行なわれる。」

(オ)
上記記載事項(イ)及び減速機構に関する技術常識を参酌すると、図4には、「オイルパルス発生機構40を収容するケース14と、前記ケース14の後方に順に配置されたギヤカバ13とインナカバ12があり、減速機構部30は、遊星歯車機構で構成されており、電動モータ20の出力軸21に連なる太陽歯車と、太陽歯車に噛合する遊星歯車と、遊星歯車と噛合するインターナル歯車とを備えており、オイルパルス発生機構40の後部に設けられている部材は、遊星歯車を回転自在に支持する支持軸を保持する遊星歯車機構のキャリア部を構成しており、前記インナカバ12内には、前記遊星歯車と前記太陽歯車及び太陽歯車を軸支するベアリング15(以下「第一のベアリング」という。)が配置され、また、前記ギヤカバ13内には、該ギヤカバ13の径方向内側であって、前記オイルパルス発生機構40と前記遊星歯車との間に、前記キャリア部を軸支するベアリング15(以下「第二のベアリング」という。)が配置されていること」について記載されていることが見て取れる。

上記記載事項(ア)?(エ)、上記認定事項(オ)及び図面の記載並びに当業者の技術常識によれば、上記刊行物には、以下の発明が記載されていると認められる。

「電動モータ20の動力が伝達されてオイルパルスによる衝撃トルクを発生可能なオイルパルス発生機構40を有する回転式のインパクト工具であって、
前記電動モータ20の前方に配置されて、該電動モータ20によって回転駆動される太陽歯車と、
前記太陽歯車に噛合する遊星歯車と、
前記オイルパルス発生機構40の後部に設けられて、前記遊星歯車を回転自在に支持する支持軸を保持するキャリア部と、
前記オイルパルス発生機構40を収容するケース14と、
前記ケース14の後方に順に配置されたギヤカバ13とインナカバ12と、を有し、
前記インナカバ12内には、前記遊星歯車と前記太陽歯車及び太陽歯車を軸支する第一のベアリングが配置され、
前記ギヤカバ13内には、該ギヤカバ13の径方向内側であって、前記オイルパルス発生機構40と前記遊星歯車との間に、前記キャリア部を軸支する第二のベアリングが配置される回転式のインパクト工具。」(以下「引用発明」という。)

4.本願発明と引用発明との対比
本願発明と引用発明とを対比すると、その機能及び作用からみて、引用発明の「電動モータ20」、「オイルパルス発生機構40」、「回転式のインパクト工具」、「太陽歯車」、「第一のベアリング」、「第二のベアリング」は、本願発明の「モータ」、「衝撃トルク発生部」、「回転工具」、「ピニオン」、「第1のベアリング」、「第2のベアリング」に相当する。
また、引用発明の「ケース14」、「ギヤカバ13」及び「インナカバ12」と、本願発明の「ユニットケース」及び「ギヤハウジング」とは、それぞれ、その中に「衝撃トルク発生部、遊星歯車、ピニオン及びベアリングを収容、保持及び配置するケース」である点で共通している。

そうすると、両者は、
「モータの動力が伝達されて衝撃トルクを発生可能な衝撃トルク発生部を有する回転工具であって、
前記モータの前方に配置されて、該モータによって回転駆動されるピニオンと、
前記ピニオンに噛合する遊星歯車と、
前記衝撃トルク発生部の後部に設けられて、前記遊星歯車を回転自在に支持する支持軸を保持するキャリア部と、
前記衝撃トルク発生部及び前記遊星歯車と噛合する前記ピニオンを収容し、前記ピニオンを軸支する第1のベアリングを保持し、径方向内側であって前記衝撃トルク発生部と前記遊星歯車との間に、前記キャリア部を軸支する第2のベアリングを配置するケースを有する回転工具。」
の点で一致し、次の点で相違している。

〈相違点〉
「ケース」について、本願発明では、「衝撃トルク発生部及び遊星歯車と噛合するピニオンを収容し、その径方向内側であって、前記衝撃トルク発生部と前記遊星歯車との間に、キャリア部を軸支する第2のベアリングを配置するユニットケースと、ユニットケースの後方に配置され、前記ピニオンを軸支する第1のベアリングを保持するギヤハウジングとから構成されている」のに対して、引用発明では、「オイルパルス発生機構40を収容するケース14と、径方向内側であって前記オイルパルス発生機構40と遊星歯車との間に、キャリア部を軸支する第二のベアリングを配置したギヤカバ13と、前記遊星歯車と太陽歯車及び太陽歯車を軸支する第一のベアリングを配置したインナカバ12とから構成されている」点。
なお、請求人は、審判請求書の「3.本願発明と引用文献との対比」の(2)で、本願発明では、キャリア部を片持ち支持するのに対して、引用発明では、キャリア部を両持ち支持する点で相違している旨主張しているが、上記2.で摘記したように、請求項1には、「前記キャリア部を軸支する第2のベアリングが配置される」という記載はあるものの、当該第2のベアリングのみでキャリア部を片持ち支持することは何ら記載されておらず、請求人の上記主張は、特許請求の範囲の記載に基づくものではないので採用できない。

5.相違点についての検討
機械技術分野において、機械部品又は装置を、収容、保持及び配置するために、ケースまたはハウジングをどのような形態のものとするかは、その製作方法や分割した場合における組み立ての難易性等を勘案して適宜選択し得るものであり、引用発明の「ケース14」、「ギヤカバ13」及び「インナカバ12」に代えて、本願発明のような「ユニットケース」及び「ギヤハウジング」を採用することは、当業者ならば必要に応じて適宜選択し得る範囲のものであって、格別の顕著性はない。
また、本願発明の効果も、当業者であれば、引用発明及び技術常識から予測し得る範囲のものであって、格別なものとはいえない。

6.まとめ
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本願の他の請求項に係る発明を検討するまでもなく、本願は拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-04-30 
結審通知日 2015-05-12 
審決日 2015-05-25 
出願番号 特願2010-154910(P2010-154910)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B25B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 足立 俊彦  
特許庁審判長 栗田 雅弘
特許庁審判官 刈間 宏信
石川 好文
発明の名称 回転工具  
代理人 上田 恭一  
代理人 石田 喜樹  

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