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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01R
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 H01R
管理番号 1302907
審判番号 不服2014-19215  
総通号数 188 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-08-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-09-26 
確定日 2015-07-09 
事件の表示 特願2010- 92138「圧着端子及び圧着構造」拒絶査定不服審判事件〔平成23年11月 4日出願公開、特開2011-222396〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成22年4月13日の出願であって、平成25年12月27日付けの拒絶理由通知に対して、平成26年3月4日に意見書が提出されたが、同年7月16日付け(発送日:同年7月22日)で拒絶査定がされ、これに対して、同年9月26日に拒絶査定不服審判の請求がされるとともに、その審判の請求と同時に手続補正がされ、同年11月27日付けで前置報告がなされ、これに対して同年12月19日付けで上申書が提出されたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1、2に係る発明は、平成26年9月26日の手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1、2に記載された事項により特定されるものであって、そのうち、本願の請求項1に係る発明は、次のとおりのものである(以下、「本願発明」という。)。
「【請求項1】
電線の導体に圧着して接続される導体圧着部を有し、該導体圧着部が、前記導体が内面に載る底板と、該底板の左右両側に延設されて該底板の内面上に載せられた前記導体を包むように内側に向けて丸められ、各先端が、前記底板の内面に向けて曲げられることで、前記各先端付近の外面の一部同士を擦り合わせながら前記導体に食い込むように加締められる左右一対の導体加締片とで、断面略U字状に形成された圧着端子において、
前記各導体加締片の各先端付近の内面のうち、前記両導体加締片の加締め時に各導体加締片の先端付近の外面の一部同士が擦り合わせられる部分の背面に相当する部分に、前記導体に対するエッジ部の引っ掛かり抵抗によって、前記一対の導体加締片の各先端の導体への食い込み状態からの抜け及び先端同士の開きを阻止する凹部または凸部が設けられ、
前記凹部または凸部として、前記導体加締片の内面にうち、前記両導体加締片の加締め時に各導体加締片の先端付近の外面の一部同士が擦り合わせられる部分の背面に相当する部分に、該導体加締片の丸められる方向と交差する方向に延びる凹条または凸条が設けられていることを特徴とする圧着端子。」

第3 刊行物に記載された事項
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に日本国内において頒布された特開2010-73344号公報(以下、「刊行物」という。)には、「端子金具および端子金具付き電線」に関し、図面(特に、【図3】参照)とともに、次の事項が記載されている。

1 段落【0010】
「【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
<実施形態1>
本発明の実施形態1を図1ないし図6の図面を参照しながら説明する。本実施形態における端子金具10は、図1に示すように、角筒形状をなす本体部20と、本体部20の後方に形成された圧着部30とを備えている。この端子金具10は、図2に示すように、圧着部30によって被覆電線40の端末に圧着されている。この端子金具10は、銅合金からなる金属平板を金型で所定の形状に打ち抜いて展開状態にある端子金具10を形成した後、この展開状態にある端子金具10を折り曲げ加工することによって形成されている。なお、本実施形態では端子金具10として本体部20を有する雌端子金具を例示しているものの、本発明によると、タブ状をなす雄端子金具としてもよい。」

2 段落【0015】ないし段落【0020】
「【0015】
圧着部30は、ワイヤバレル部31と、ワイヤバレル部31の後方に配置されたインシュレーションバレル部32とを備えている。圧着部30は、本体部20の底面部22と連続して前後方向(芯線42の軸線方向)に延びる底壁33を有している。
【0016】
ワイヤバレル部31は、底壁33と、この底壁33の両側縁から立ち上がる一対のかしめ片31Aとを備えて構成されている。ワイヤバレル部31は、底壁33上に前後方向に沿って芯線42の端末を配置し、両かしめ片31Aによって芯線42の端末をかしめることにより芯線42を圧着可能である。
【0017】
インシュレーションバレル部32は、底壁33と、この底壁33の両側縁から対向状態で立ち上がる一対のかしめ片32Aとを備えて構成されている。インシュレーションバレル部32は、底壁33上に被覆43の部分を配置し、両かしめ片32Aによって被覆43の部分をかしめることにより被覆43と芯線42とを圧着可能である。
【0018】
ここで、芯線42の表面には、空気中の水や酸素と反応することにより絶縁性の被膜(例えば水酸化アルミや酸化アルミなど)が形成されている。そして、芯線42とワイヤバレル部31との間に被膜が介在したまま両者42,31が接続されると、接触抵抗が大きくなるという問題がある。その点、本実施形態では銅合金からなる芯線を使用する場合よりも高い圧縮率に設定し、ワイヤバレル部31の圧着面にセレーション(本発明の「凹部」の一例)36を凹設することにより、被膜を削り取って導通をとるようにしている。このセレーション36は全体として網目状をなし、ワイヤバレル部31において芯線42を圧着する圧着面に芯線42の軸線方向に対して斜め方向に溝を形成することで構成されている。
【0019】
しかし、本実施形態のように太物の被覆電線を使用した場合、金属素線41の本数が多くなるため、かしめ片31Aからの圧力が分散しやすくなる。よって、かしめ片31Aと接触しない径方向内側の金属素線41には、被膜が残りやすくなり、導通がとれなくなることで接触抵抗が増加する。このため、径方向内側の金属素線41と導通をとるには、その前提として被膜を除去する必要がある。
【0020】
そこで、本実施形態では、圧着完了時に両かしめ片31Aが当たり合う当接部31Bより先端側に接触部31Cが設けられている。この接触部31Cは、芯線42を構成する金属素線41の束の内部に接触するように構成されている。この接触部31Cの表裏両側には、セレーション36が施されている。これにより、金属素線41の束の内部にセレーション36を接触させることで被膜を削り取ることができる。」

3 【図1】及び【図2】から、端子金具10が芯線42の金属素線41に圧着して接続されるワイヤバレル部31を有していること及び該ワイヤバレル部31が前記金属素線41が内面に載る底壁33と、この底壁33の両側縁から立ち上がる一対のかしめ片31Aとで、断面略U字状に形成されていることが看て取れる。

4 【図3】及び段落【0020】の「圧着完了時に両かしめ片31Aが当たり合う当接部31B」との記載から、一対のかしめ片31Aが底壁33の内面上に載せられた前記金属素線41を包むように内側に向けて丸められ、一対のかしめ片31Aの各先端が、前記底壁33の内面に向けて曲げられることで、前記各先端付近の外面の一部同士を擦り合わせながら前記金属素線41に食い込むように加締められると認められる。

5 【図1】及び段落【0018】の「セレーション36は全体として網目状をなし、ワイヤバレル部31において芯線42を圧着する圧着面に芯線42の軸線方向に対して斜め方向に溝を形成することで構成されている」から、セレーション36は、溝を形成することで構成されていると認められる。

これらの記載事項、図示内容及び上記認定事項を総合して、本願発明に則って整理すると、刊行物には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

「芯線42の金属素線41に圧着して接続されるワイヤバレル部31を有し、該ワイヤバレル部31が、前記金属素線41が内面に載る底壁33と、この底壁33の両側縁に延設されて該底壁33の内面上に載せられた前記金属素線41を包むように内側に向けて丸められ、一対のかしめ片31Aの各先端が、前記底壁33の内面に向けて曲げられることで、前記各先端付近の外面の一部同士を擦り合わせながら前記金属素線41に食い込むように加締められる一対のかしめ片31Aとで、断面略U字状に形成された端子金具10において、
前記各かしめ片31Aの各先端付近の内面に、セレーション36が設けられ、
前記セレーション36として、溝が設けられている圧着端子。」

第4 対比
本願発明と引用発明とを対比する。
引用発明の「芯線42」は、その機能、構造からみて、本願発明の「電線」に相当する。同様に、引用発明の「金属素線41」、「ワイヤバレル部31」、「底壁33」、「かしめ片31A」、「端子金具10」、「セレーション36」、「溝」は、本願発明の「導体」、「導体圧着部」、「底板」、「導体加締片」、「圧着端子」、「凹部または凸部」、「凹条または凸条」に、それぞれ相当する。

以上の点からみて、本願発明と引用発明とは、

[一致点]
「電線の導体に圧着して接続される導体圧着部を有し、該導体圧着部が、前記導体が内面に載る底板と、該底板の左右両側に延設されて該底板の内面上に載せられた前記導体を包むように内側に向けて丸められ、各先端が、前記底板の内面に向けて曲げられることで、前記各先端付近の外面の一部同士を擦り合わせながら前記導体に食い込むように加締められる左右一対の導体加締片とで、断面略U字状に形成された圧着端子において、
前記各導体加締片の各先端付近の内面に凹部または凸部が設けられ、
前記凹部または凸部として、凹条または凸条が設けられている圧着端子。」
である点で一致し、

次の点で相違する。

[相違点]
相違点1
凹部または凸部に関して、本願発明では、各導体加締片の各先端付近の内面のうち、両導体加締片の加締め時に各導体加締片の先端付近の外面の一部同士が擦り合わせられる部分の背面に相当する部分に、導体に対するエッジ部の引っ掛かり抵抗によって、一対の導体加締片の各先端の導体への食い込み状態からの抜け及び先端同士の開きを阻止するのに対して、引用発明では、これらが不明である点。

相違点2
凹条または凸条に関して、本願発明では、導体加締片の内面にうち、両導体加締片の加締め時に各導体加締片の先端付近の外面の一部同士が擦り合わせられる部分の背面に相当する部分に、導体加締片の丸められる方向と交差する方向であるのに対して、引用発明では、これらが不明である点。

第5 判断
1 相違点1について
引用発明のセレーション36は、刊行物の【図3】をみるに、また刊行物の段落【0020】の「各先端付近の外面の一部同士を擦り合わせながら」との記載に照らせば、各かしめ片31Aの各先端付近の内面のうち、両かしめ片31Aの加締め時に一対のかしめ片31Aの各先端付近の外面の一部同士が擦り合わせられる部分である当接部31Bの背面に相当する部分に設けられていると解される。
また、引用発明のセレーション36の開口縁部が金属素線41に対する引っ掛かり抵抗によって、一対のかしめ片31Aの各先端の金属素線41への食い込み状態からの抜け及び先端同士の開きを阻止する機能を持つことは明らかである(実願昭54-19667号(実開昭55-120080号)のマイクロフィルムの明細書第4頁7行-14行を参照。)。
そうすると、上記相違点1は、実質的な相違点ではない。
仮に、相違するとしても、上記相違点1に係る発明特定事項とすることは、当業者が適宜なし得ることである。

2 相違点2について
引用発明の溝は、刊行物の【図1】及び【図3】をみるに、また刊行物の段落【0018】の「セレーション36は全体として網目状をなし、ワイヤバレル部31において芯線42を圧着する圧着面に芯線42の軸線方向に対して斜め方向に溝を形成することで構成されている」との記載に照らせば、かしめ片31Aの内面のうち、両かしめ片31Aの加締め時に各かしめ片31Aの先端付近の外面の一部同士が擦り合わせられる部分である当接部31Bの背面に相当する部分に設けられていると解される。
また、引用発明の溝は、芯線42の軸線方向に対して斜め方向に形成されるのだから、かしめ片31Aの丸められる方向と交差する方向に延びている部分を有することは明らかである。
そうすると、上記相違点2は、実質的な相違点ではない。
仮に、相違するとしても、上記相違点2に係る発明特定事項とすることは、当業者が適宜なし得ることである。

3 そして、本願発明による効果も、引用発明から当業者が予測し得た程度のものである。

4 よって、本願発明は、引用発明と実質的に同一であり、仮に、そうでないとしても、引用発明に基づいて当業者が容易に成し得たものである。

5 なお、平成26年12月19日付けで上申書に記載された「補正書案」の「前記背面に相当する部分同士が擦り合わされた前記両導体加締片の各先端が前記底板側まで延びている」との特定事項は、圧着後の構造であって、圧着端子としては、本願発明と異なるところがないから、上記結論を左右しない。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、仮に、そうでないとしても、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明を検討するまでもなく、本願は、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-04-30 
結審通知日 2015-05-11 
審決日 2015-05-22 
出願番号 特願2010-92138(P2010-92138)
審決分類 P 1 8・ 113- Z (H01R)
P 1 8・ 121- Z (H01R)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 片岡 弘之  
特許庁審判長 森川 元嗣
特許庁審判官 小柳 健悟
小関 峰夫
発明の名称 圧着端子及び圧着構造  
代理人 三好 秀和  

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