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審決分類 審判 訂正 ただし書き3号明りょうでない記載の釈明 訂正する C10M
管理番号 1303211
審判番号 訂正2015-390043  
総通号数 189 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-09-25 
種別 訂正の審決 
審判請求日 2015-05-08 
確定日 2015-07-09 
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第5723500号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第5723500号に係る明細書及び特許請求の範囲を本件審判請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり請求項ごとに訂正することを認める。 
理由 第1 手続の経緯
本件訂正審判の請求に係る特許第5723500号(以下、「本件特許」という。)は、平成26年9月30日にした特許出願(特願2014-561600号)の請求項1?7に係る発明について、平成27年4月3日に特許権の設定登録がなされたものであって、本件訂正審判の請求が、平成27年5月8日になされたものである。

第2 請求の要旨
本件審判の請求の要旨は、本件特許に係る明細書及び特許請求の範囲を、本件審判請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり請求項ごとに訂正することを求めるものである。

第3 訂正の内容
本件訂正審判に係る訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、特許請求の範囲の請求項5につき、
「【請求項5】
請求項3又は4に記載の固体潤滑剤であって、
0.1重量%以上1.5重量%以下の有機バインダーを更に含有する固体潤滑剤。」
とあるのを、
「【請求項5】
請求項3又は4に記載の固体潤滑剤塗布液であって、
0.1重量%以上1.5重量%以下の有機バインダーを更に含有する固体潤滑剤塗布液。」
とするものである。(以下、「本件訂正事項」という。なお、下線部は、訂正箇所を示す。)

第4 判断
1 訂正の目的について

ア.本件特許に係る特許請求の範囲の請求項5が引用する請求項3又は請求項4には、
「【請求項3】
請求項1又は2に記載の固体潤滑剤と、溶媒と、を含有し、
前記貝粉の添加量をV(重量%)とし、前記貝粉の平均粒径をd(μm)とすると、
(A)d≦5.0、かつ、V≦2.0
(B)5.0<d≦20、かつ、V≦(38/15)d-(32/3)
のいずれか一方を満たす
固体潤滑剤塗布液。
【請求項4】
請求項3に記載の固体潤滑剤塗布液であって、
前記溶媒は水である
固体潤滑剤塗布液。」
と記載されているから、本件特許に係る請求項5において引用する「固体潤滑剤」とは、「請求項1又は2に記載の固体潤滑剤」、すなわち、本件特許に係る請求項1又は2の記載によれば、
「【請求項1】
貝殻に焼成処理及び粉砕処理を施すことにより得られ、平均粒径が20μm以下である貝粉と、
ホウ酸を含む中和剤と、
を含有する固体潤滑剤。」
又は、
「【請求項2】
請求項1に記載の固体潤滑剤であって、
前記ホウ酸の添加量が、前記貝粉の添加量の2.0倍以上4.7倍以下である固体潤滑剤。」を意味するものといえる。
そうすると、請求項5は、
「貝殻に焼成処理及び粉砕処理を施すことにより得られ、平均粒径が20μm以下である貝粉と、
ホウ酸を含む中和剤と、
を含有する固体潤滑剤であって、
0.1重量%以上1.5重量%以下の有機バインダーを更に含有する固体潤滑剤。」
又は、
「貝殻に焼成処理及び粉砕処理を施すことにより得られ、平均粒径が20μm以下である貝粉と、
ホウ酸を含む中和剤と、
を含有する固体潤滑剤であって、
前記ホウ酸の添加量が、前記貝粉の添加量の2.0倍以上4.7倍以下であり、0.1重量%以上1.5重量%以下の有機バインダーを更に含有する固体潤滑剤。」であるといえる。

イ.他方、明細書の発明の詳細な説明の
「【0061】
2.貝粉添加潤滑剤塗布液
[概略]
本実施形態に係る貝類添加潤滑剤塗布液は、溶媒に上記貝類添加潤滑剤を添加することにより生成される。溶媒は、特定の種類に限定されないが、水であることが好ましい。溶媒として水を用いることにより、安価で、かつ、良好にスプレー塗布可能な固体潤滑剤塗布液が得られる。
・・・。(審決注;「・・・」は記載の省略を示す。)
【0071】
[有機系バインダー]
(概要)
本実施形態に係る貝類添加潤滑剤塗布液では、貝粉の分散性を向上させるために有機系バインダーが添加される。有機系バインダーは、特定の種類に限定されないが、ポリイミド又はユシロンフォーヂ(HF1550 ユシロ化学工学)であることが好ましい。
【0072】
有機系バインダーの添加量Wが0.1重量%以上ある場合に、上記貝類添加潤滑剤塗布液における貝粉の分散性を向上させることができる。この一方で、有機系バインダーの添加量Wが多すぎると貝類添加潤滑剤塗布液では、鋼板の表面に良好な塗布膜が形成されなくなる。」
との記載によれば、有機バインダーは、貝類添加潤滑剤塗布液に添加されて用いるものであるから、有機バインダーを含有する固体潤滑剤は、固体潤滑剤塗布液をいうものともいえる。

ウ.そうすると、本件訂正事項は、特許明細書の特許請求の範囲の記載と特許明細書中の他の記載との関係において不合理を生じているために不明瞭となっている記載の不備を訂正し、その本来の意を明らかにするのであるから、本件訂正事項を有する本件訂正は、特許法第126条第1項ただし書第3号に掲げる、明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。

2 新規事項の追加の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
願書に最初に添付した明細書又は特許請求の範囲(以下、「当初明細書等」という。)には、本件特許に係る明細書の【0061】?【0071】又は特許請求の範囲の請求項3?請求項5と同内容の記載があるから、本件訂正事項は、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであり、新規事項を追加するものではない。
また、本件訂正事項は、その実質を捉えて考察しても、特許請求の範囲の拡張や変更はされていないといえるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は、変更するものに該当しない。
してみると、本件訂正事項を有する本件訂正は、特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

第5 むすび
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第126条第1項ただし書第3号に掲げる事項を目的とし、かつ、同条第5項及び第6項の規定に適合する。

よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
固体潤滑剤、固体潤滑剤塗布液、プレス加工用油、及びプレス加工用鋼板
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレス加工などに利用可能な潤滑技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車の車体には、燃費性能向上のため軽量化が求められるとともに、安全性能向上のため高強度化が求められている。したがって、自動車の車体の製造には、高強度鋼板が幅広く用いられている。
【0003】
しかし、高強度鋼板にプレス加工を行うためには、大きい荷重が必要である。また、高強度鋼板は一般的に延性が低いため、プレス加工後の高強度鋼板には、割れ、しわ、スプリングバックなどの不良が発生しやすくなる。更に、プレス加工の度に大きい荷重が加わるプレス加工用金型の寿命は短くなる傾向がある。
【0004】
このため、高強度鋼板のプレス加工には、荷重を低減させることが可能な技術が用いられる。このような技術として、例えば、温間成形技術や、潤滑油を利用した技術が挙げられる。温間成形技術では、加熱により高強度鋼板の延性を向上させた状態で、高強度鋼板のプレス加工を行う。
【0005】
潤滑油を利用した技術では、潤滑油により高強度鋼板とプレス加工用金型との間の摺動抵抗を低減させた状態で、高強度鋼板のプレス加工を行う。これらの技術により、プレス加工後の高強度鋼板に不良が発生することを防止でき、プレス加工用金型の寿命を向上させることができる。
【0006】
この一方で、固体潤滑剤が知られている。固体潤滑剤は、潤滑油と同様に使用することができる他、潤滑油を使用できない高温域で使用することもできる。つまり、潤滑油は温間成形技術と組み合わせて使用することができないが、固体潤滑剤は温間成形技術と組み合わせて使用することができる。
【0007】
固体潤滑剤を温間成形技術と組み合わせて使用することにより、高強度鋼板のプレス加工をより良好に行うことができるようなる。更に、固体潤滑剤は潤滑油と組み合わせて使用することもできる。固体潤滑剤を潤滑油と組み合わせることにより、極めて優れた潤滑性が得られる。
【0008】
特許文献1?3には、固体潤滑剤が開示されている。具体的には、特許文献1にはグラファイトを利用した固体潤滑剤が開示され、特許文献2には二硫化モリブデンを利用した固体潤滑剤が開示され、特許文献3には窒化ホウ素を利用した固体潤滑剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平8-311469号公報
【特許文献2】特開2005-194496号公報
【特許文献3】特開2007-186698号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、固体潤滑剤に利用されるグラファイトや二硫化モリブデンや窒化ホウ素が高価であるため、固体潤滑剤を利用した技術は高コストとなる。更に、グラファイトや二硫化モリブデンは、廃棄時に炭化物や硫化物を発生させ、また塩素やリンなどの不純物を含むことがあるため、環境負荷が高い。また、窒化ホウ素は、環境負荷が低いものの、グラファイトや二硫化モリブデンに比べて非常に高価である。
【0011】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、環境調和性に優れ、安価に製造可能な固体潤滑剤、固体潤滑剤塗布液、プレス加工用油、及びプレス加工用鋼板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る固体潤滑剤は、貝粉と、中和剤と、を含有する。
上記貝粉は、貝殻に焼成処理及び粉砕処理を施すことにより得られ、平均粒径が20μm以下である。
前記中和剤は、ホウ酸を含む。
上記固体潤滑剤は、貝殻から得られる貝粉を主成分とする。貝殻は豊富に入手可能な自然物であるため、上記固体潤滑剤は、高い環境調和性を有するとともに、安価で製造可能である。また、上記固体潤滑剤は、アルカリ性の貝粉を中和するための中和剤を含むため、安全性を担保できる。更に、中和剤としてホウ酸を用いることにより、上記固体潤滑剤の機能が損なわれない。
【0013】
上記ホウ酸の添加量が、上記貝粉の添加量の2.0倍以上4.7倍以下であってもよい。
この構成では、ホウ酸によって、アルカリ性の貝粉をより良好に中和可能である。
【0014】
本発明の一形態に係る固体潤滑剤塗布液は、上記固体潤滑剤と、溶媒と、を含有する。
上記貝粉の添加量をV(重量%)とし、上記貝粉の平均粒径をd(μm)とすると、
(A)d≦5.0、かつ、V≦2.0
(B)5.0<d≦20、かつ、V≦(38/15)d-(32/3)
のいずれか一方を満たす。
この構成により、良好にスプレー塗布可能な固体潤滑剤塗布液が得られる。
【0015】
上記溶媒は水であってもよい。
この構成により、安価で、かつ、特に良好にスプレー塗布可能な固体潤滑剤塗布液が得られる。
【0016】
上記固体潤滑剤塗布液は、0.1重量%以上1.5重量%以下の有機系バインダーを更に含有してもよい。
この構成では、有機系バインダーの作用により、上記固体潤滑剤塗布液中の貝粉が良好に分散するようになる。
【0017】
本発明の一形態に係るプレス加工用油は、上記潤滑剤と、加工用油と、を含有する。
この構成により、このプレス加工用油では、上記加工用油よりも更に優れた潤滑性が得られる。
【0018】
本発明の一形態に係るプレス加工用鋼板は、上記プレス加工用油が塗布されている。
この構成により、上記プレス加工用鋼板は、常温においても比較的低荷重でプレス加工を行うことができるようになる。これにより、プレス加工後のプレス加工用鋼板に不良が発生しにくくなるとともに、プレス加工用金型の寿命が向上する。
【発明の効果】
【0019】
安価で、かつ、環境調和性の高い固体潤滑剤、固体潤滑剤塗布液、プレス加工用油、及びプレス加工用鋼板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態に係る貝粉添加潤滑剤の貝粉の製造過程を示すフローチャートである。
【図2】貝粉の製造過程における微細組織の写真である。
【図3】リングオンプレート摺動試験の方法を示す模式図である。
【図4】貝粉の平均粒径と鋼板試験片の摩擦係数との関係を示すグラフである。
【図5】貝粉添加潤滑剤に添加する中和剤の検討結果を示す写真である。
【図6】スラリー粉砕処理による貝粉スラリーの変化を示す写真である。
【図7】貝粉添加潤滑剤塗布液における貝粉の平均粒径及び添加量による塗布性の変化を示すグラフである。
【図8】貝粉添加潤滑剤塗布液の塗布膜の形成を示す模式図である。
【図9】バインダーの添加量と鋼板試験片の摩擦係数との関係を示すグラフである。
【図10】高温ドロー試験の方法を示す模式図である。
【図11】高温ドロー試験の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を説明する。
【0022】
1.貝粉添加潤滑剤
[概略]
本発明の一実施形態に係る貝粉添加潤滑剤は、貝殻から生成された水酸化カルシウム(Ca(OH)_(2))を利用した固体潤滑剤である。上記貝類添加潤滑剤は、貝殻から生成される貝粉と、アルカリ性の貝粉を中和するための中和剤と、を含有している。
【0023】
上記貝類添加潤滑剤の主成分である貝粉は、日々大量に廃棄されることが環境問題にもなっている貝殻から製造される。このため、本発明は、貝殻を有効利用することにより、環境問題の解消におおいに寄与する。また、上記貝類添加潤滑剤は、豊富に入手可能な貝殻を利用するため、安価で製造可能である。
【0024】
また、上記のとおり、本実施形態に係る貝粉は、自然物である貝殻に由来して製造される。このため、上記貝類添加潤滑剤の使用により環境に悪影響を及ぼすことがなく、上記貝類添加潤滑剤の廃棄時に危険な物質が排出されることもない。したがって、上記貝類添加潤滑剤は高い環境調和性を有する。
【0025】
上記貝類添加潤滑剤は、例えば、潤滑剤や離型剤として使用可能である。一例として、上記貝類添加潤滑剤は、鋼板の表面に塗布され、鋼板のプレス加工時の潤滑剤として使用可能である。また、上記貝類添加潤滑剤は、金型の表面に塗布され、金型から加工後の材料をスムーズに取り出すための離型剤として使用可能である。
【0026】
上記貝類添加潤滑剤は、鋼材や金型の表面などへの塗布を容易に行うことができるようにするため、例えば、水などの溶媒に分散させて、スプレー塗布可能な貝類添加潤滑剤塗布液として使用される。なお、本実施形態に係る貝類添加潤滑剤塗布液の詳細については後述する。
【0027】
スプレー塗布可能な貝類添加潤滑剤塗布液では、鋼材や金型の表面などに容易に塗布することができる他、鋼板や金型の表面などに対して、均一な厚さの貝類添加潤滑剤の塗布膜を形成することができる。均一な厚さの塗布膜とすることにより、貝類添加潤滑剤がより良好に潤滑性を発揮することができるようになる。
【0028】
また、上記貝類添加潤滑剤は、主成分である貝粉が熱的に安定であるため、高温で使用可能である。したがって、上記貝類添加潤滑剤は、常温での冷間プレス加工は勿論、温間プレス加工に利用することもできる。この貝類添加潤滑剤の使用可能温度の上限は、グラファイト(500℃程度)及び二硫化モリブデン(400℃程度)よりも高い900℃程度である。
【0029】
このように、本実施形態に係る貝類添加潤滑剤は、従来窒化ホウ素を使用せざるを得なかった高温領域で使用することができる上に、窒化ホウ素よりも大幅に安価で製造可能である。
【0030】
また、上記貝類添加潤滑剤をプレス加工用油に分散させることにより、プレス加工用油の潤滑性を向上させることができる。つまり、この貝類添加潤滑剤を分散させた加工用油では、加工用油本来の潤滑油としての機能に加え、貝類添加潤滑剤としての機能が発揮される。なお、本実施形態に係る貝類添加プレス加工用油の詳細については後述する。
【0031】
[貝粉]
(概要)
本実施形態に係る貝類添加潤滑剤の貝粉は、貝殻に焼成処理及び粉砕処理を施すことにより得られる。上記貝粉を製造するために用いる貝殻は、炭酸カルシウム(CaCO_(3))を主成分とするものであればよく、特定の種類の貝殻に限定されない。このような貝殻としては、例えば、ホタテ、カキ、ホッキ、ハマグリ、アサリなどの貝殻が挙げられる。
【0032】
(貝粉の製造方法)
図1は、本実施形態に係る貝粉の製造過程を示すフローチャートである。図1に沿って上記貝粉の製造方法について説明する。
【0033】
ステップS01:焼成処理
本ステップS01では、原料である貝殻を焼成する。これにより、貝殻の主成分である炭酸カルシウム(CaCO_(3))が、二酸化炭素を排出するとともに酸化カルシウム(CaO)に化学変化する。
【0034】
上記焼成処理における焼成温度は900℃程度であることが好ましい。焼成温度を900℃とする場合、例えば、焼成時間を1時間程度とすることができる。なお、焼成温度が900℃より低温であっても、焼成時間を長くすることにより、焼成処理を良好に行うことができる。例えば、焼成温度を750℃とし、焼成時間を5時間とすることができる。
【0035】
ステップS02:粉砕処理
本ステップS02では、ステップS01における焼成処理後の貝殻に粉砕処理を施す。粉砕処理には、ボールミル、ロッドミル、スタンプミル、超遠心粉砕機などといった公知の粉砕機を利用可能である。この粉砕処理により、貝粉の平均粒径dを20μm以下とする。
【0036】
ステップS03:水酸化カルシウム(Ca(OH)_(2))化処理
本ステップS03では、ステップS02における粉砕処理で得られた貝粉の酸化カルシウム(CaO)成分を水酸化カルシウム(Ca(OH)_(2))に化学変化させる。具体的には、貝粉を水と反応させることにより、酸化カルシウム(CaO)が水酸化カルシウム(Ca(OH)_(2))に化学変化する。
【0037】
図2(a)は、ステップS02後における貝粉の微細組織の写真である。図2(b)は、ステップS03後における貝粉の微細組織の写真である。図2(a)に示す貝粉の主成分である酸化カルシウムは岩塩型構造(面心立法格子構造)であり、図2(b)に示す固体潤滑剤としての貝粉の主成分である水酸化カルシウムはCd(OH)_(2)型構造である。
【0038】
水酸化カルシウムは、ファンデルワールス力による弱い力で相互に結合された複数の板状結晶により構成される層状構造を有する。水酸化カルシウムは、各層間の面を滑り面として、板状結晶が横滑りしやすいという特性を有する。水酸化カルシウムによる潤滑性は、主にこの板状結晶の横滑り現象に起因する。
【0039】
一方、本ステップS03前の面心立法格子構造の酸化カルシウムでは、水酸化カルシウムにおける上記の特性を有さない。つまり、本ステップS03に係る水酸化カルシウム化処理は、酸化カルシウムを水酸化カルシウムに化学変化させることによって、本実施形態に係る貝粉に潤滑性を発現させるための処理である。
【0040】
なお、貝類添加潤滑剤が水を溶媒とする塗布液として使用される場合には、ステップS03が省略されてもよい。この場合、ステップS02後の貝粉を水に分散させることにより、貝粉の酸化カルシウム成分が水酸化カルシウムに化学変化するとともに、貝類添加潤滑剤塗布液が生成される。
【0041】
(リングオンプレート摺動試験)
本実施形態に係る貝粉の粒径を決定するために、リングオンプレート摺動試験を行った。
【0042】
図3はリングオンプレート摺動試験の方法を示す模式図である。本試験では、鋼板試験片Sの塗布面に相手材(SUJ2)であるリングR(φ6mm)を接触させて回転させる。鋼板試験片S及びリングRの接触面は、いずれも#1200の研磨仕上げがなされた平面である。
【0043】
本試験では、リングRの回転数を20rpmとし、リングRの鋼板試験片Sへの押付圧力を10N(面圧:約0.25MPa)とした。リングRの摩擦トルクをロードセルによって測定し、リングRの摩擦トルクから摩擦係数μ_(R)を求めた。
【0044】
貝粉の添加量Vを2重量%とし、バインダーの添加量Wを1重量%として、貝粉の平均粒径dの異なる複数の貝類添加潤滑剤塗布液を作製し、リングオンプレート摺動試験を行った。なお、溶媒には工業用精製水(TSP-01 山栄製)を用い、バインダーにはユシロンフォーヂ(HF1550 ユシロ化学工業)を用いた。
【0045】
各貝類添加潤滑剤塗布液を、エアブラシ(wave社製super airbrush0.3&0.5)及びコンプレッサー(エアテックス社製APC-002)を用いて鋼板試験片Sの塗布面に均一に塗布して塗布膜Lを形成した。
【0046】
図4はリングオンプレート摺動試験の結果の一例を示すグラフである。図4(a)は500℃での結果を示し、図4(b)は室温での結果を示している。
【0047】
いずれの温度においても、平均粒径dが20μmを超える貝類添加潤滑剤塗布液では摩擦係数μ_(R)が高くなるのに対し、平均粒径dが20μm以下の貝類添加潤滑剤塗布液ではいずれも低い摩擦係数μ_(R)が得られた。
【0048】
より具体的には、平均粒径dが20μm以下の貝類添加潤滑剤塗布液では、500℃における摩擦係数μ_(R)として1.5以下の低い値が得られ、室温における摩擦係数μ_(R)として1.0以下の低い値が得られることが確認された。
【0049】
この結果により、本実施形態に係る貝類含有潤滑剤では、貝粉の粒径を20μm以下と決定した。
【0050】
[中和剤]
本実施形態に係る貝類添加潤滑剤は、アルカリ性である貝粉を中和するための中和剤を含有する。
【0051】
中和剤を含まないアルカリ性の貝類添加潤滑剤では、人体に悪影響が及ぶおそれがあるとともに、収容するための容器、塗布される鋼板や金型が腐食されるおそれがある。中和剤で貝類添加潤滑剤を中和することにより、このような不具合を未然に解消することができる。
【0052】
また、特に、貝類添加潤滑剤を中和することにより、貝類添加潤滑剤塗布液のスプレー塗布のためにスプレー缶を利用可能となるというメリットがある。
【0053】
本実施形態に係る貝類添加潤滑剤の中和剤として利用可能な酸についての検討を行った。具体的には、上記貝粉を分散させた水を収容したビーカーに、pH8前後になるまで各種酸を滴下し、ビーカー内の状態の観察を行った。
【0054】
図5(a)はクエン酸を滴下したビーカーを示し、図5(b)は乳酸を滴下したビーカーを示し、図5(c)はホウ酸を滴下したビーカーを示している。
【0055】
図5(a)に示すクエン酸を滴下したビーカー内では、水と分離した粘度の高い沈殿物が発生した。図5(b)に示す乳酸を滴下したビーカー内では、成分全体の凝固が発生した。このように、中和剤としてクエン酸や乳酸を利用した場合、良好に塗布可能な貝類添加潤滑剤塗布液を生成することが困難である。
【0056】
この一方で、図5(c)に示すホウ酸を滴下したビーカー内では、ホウ酸の一部が残存しているものの、適度な粘度を有する貝粉スラリーが得られた。
【0057】
図5(c)に示す貝粉スラリーを更に均一化するため、スラリー粉砕処理を行った。スラリー粉砕処理とは、例えば、湿式微粉砕・分散機によって、貝粉スラリーに連続してせん断力を付与することにより、貝粉スラリーを微細なレベルで均一に分散させる処理である。
【0058】
図6(a)はスラリー粉砕処理前の貝殻スラリーを示し、図6(b)はスラリー粉砕処理後の貝殻スラリーを示している。図6(b)に示すように、スラリー処理後では、ホウ素の残存が見られず、貝粉及びホウ酸が均一に分散した適度な粘度の貝殻スラリーが得られた。この貝粉スラリーは、良好にスプレー塗布可能な貝類添加潤滑剤塗布液となった。
【0059】
以上の結果より、本実施形態に係る貝類添加潤滑剤では、アルカリ性の貝粉を中和する中和剤としてホウ酸を用いる。中和剤は、ホウ酸を含んでいればよく、適宜ホウ酸以外の物質を含有していてもよい。
【0060】
貝類添加潤滑剤におけるホウ酸の添加量は、重量比で、貝粉の添加量Vの2.0倍以上4.7倍以下である。ホウ酸の添加量を貝粉の添加量Vの2.0倍以上とすることにより、貝類添加潤滑剤をより良好に中和することができる。また、ホウ酸の添加量を貝粉の添加量Vの4.7倍以下とすることにより、貝類添加潤滑剤のpHの低下に寄与しないホウ酸が発生することを抑制できる。
【0061】
2.貝粉添加潤滑剤塗布液
[概略]
本実施形態に係る貝類添加潤滑剤塗布液は、溶媒に上記貝類添加潤滑剤を添加することにより生成される。溶媒は、特定の種類に限定されないが、水であることが好ましい。溶媒として水を用いることにより、安価で、かつ、良好にスプレー塗布可能な固体潤滑剤塗布液が得られる。
【0062】
水としては、様々な種類の水を利用できるが、一例として、工業用精製水(TSP-01 山栄製)を利用することができる。
【0063】
[スプレー塗布試験]
本実施形態に係る貝類添加潤滑剤塗布液をスプレー塗布可能とするための貝粉の条件を決定するために、スプレー塗布試験を行った。具体的には、貝類添加潤滑剤塗布液がスプレー塗布可能となる貝粉の平均粒径d及び添加量Vについて検討した。
【0064】
貝粉の平均粒径d及び添加量Vの異なる複数の貝類添加潤滑剤塗布液を作製し、スプレー塗布試験を行った。
【0065】
なお、溶媒には工業用精製水(TSP-01 山栄製)を用い、バインダーにはユシロンフォーヂ(HF1550 ユシロ化学工業)を用いた。スプレー塗布には、エアブラシ(wave社製super airbrush0.3&0.5)及びコンプレッサー(エアテックス社製APC-002)を用いた。
【0066】
図7は、スプレー塗布の結果を示すグラフである。図7の横軸は各貝類添加潤滑剤塗布液に添加した貝粉の平均粒径d(μm)を示し、図7の横軸は貝類添加潤滑剤塗布液への貝類の添加量Vを示している。図7では、1種類の貝類添加潤滑剤塗布液についての結果が1つのプロットで示されている。図7では、各貝類添加潤滑剤塗布液におけるスプレー塗布の可否が、各プロットの種類によって示されている。
【0067】
具体的には、エアブラシから良好に噴霧される貝類添加潤滑剤塗布液を「スプレー塗布可能」と判定した。また、エアブラシから吐出されるものの、均一な霧状にならない貝類添加潤滑剤塗布液を「スプレー塗布困難」と判定した。更に、エアブラシから吐出されない貝類添加潤滑剤塗布液を「スプレー塗布不可」と判定した。
【0068】
図7を参照すると、貝粉の平均粒径dが5.0μm以下の場合、貝粉の添加量Vが2.0重量%以下の貝類添加潤滑剤塗布液においてスプレー塗布可能であることがわかる。
【0069】
また、貝粉の平均粒径dが5.0μmを超える場合、図5に示す直線Eの下側領域にあるプロットで表される貝類添加潤滑剤塗布液においてスプレー塗布可能であることがわかる。この直線Eは「V=(38/15)d-(32/3)」で表される。
【0070】
したがって、貝類添加潤滑剤塗布液をスプレー塗布可能とするための貝粉の平均粒径d及び添加量Vの条件は以下の式(A)及び式(B)で表される。
(A)d≦5.0、かつ、V≦2.0
(B)5.0<d≦20、かつ、V≦(38/15)d-(32/3)
【0071】
[有機系バインダー]
(概要)
本実施形態に係る貝類添加潤滑剤塗布液では、貝粉の分散性を向上させるために有機系バインダーが添加される。有機系バインダーは、特定の種類に限定されないが、ポリイミド又はユシロンフォーヂ(HF1550 ユシロ化学工業)であることが好ましい。
【0072】
有機系バインダーの添加量Wが0.1重量%以上である場合に、上記貝類添加潤滑剤塗布液における貝粉の分散性を効果的に向上させることができる。この一方で、有機系バインダーの添加量Wが多すぎる貝類添加潤滑剤塗布液では、鋼板の表面に良好な塗布膜が形成されなくなる。
【0073】
図8は、貝類添加潤滑剤塗布液によって鋼板試験片Sの表面に塗布膜Lが形成される過程を示す模式図である。
【0074】
図8(a)は、貝類添加潤滑剤塗布液における有機系バインダーの添加量Wが適切である場合について示している。つまり、この貝類添加潤滑剤塗布液が鋼板試験片Sの表面に塗布されると、貝粉及びバインダーが鋼板試験片Sの表面の微細な凹凸形状に沿って密着する。特に図に拡大して示すように鋼板試験片Sの表面に微細な穴Cがある場合にも、貝粉及びバインダーが穴Cの中に入り込む。
【0075】
このように、有機系バインダーの添加量Wが適切である貝類添加潤滑剤塗布液は、アンカー効果により鋼板試験片Sの表面に対して良好に密着する。鋼板試験片Sの表面に密着した貝類添加潤滑剤塗布液の水分が蒸発すると、鋼板試験片Sの表面に強固に接着された塗布膜Lが得られる。これにより、鋼板試験片Sでは、その表面の全域にわたって良好な潤滑性が得られる。
【0076】
図8(b)は、貝類添加潤滑剤塗布液における有機系バインダーの添加量Wが多すぎる場合について示している。この場合、バインダー同士が絡まり合うことにより、バインダー及び貝粉が比較的大きい粒子を形成する。このため、この貝類添加潤滑剤塗布液は、鋼板試験片Sの微細な凹凸形状に沿って密着することができない。特に図に拡大して示すように鋼板試験片Sの表面に微細な穴Cがある場合、貝粉及びバインダーが穴Cの中に進入できない。
【0077】
このように、有機系バインダーの添加量Wが多すぎる貝類添加潤滑剤塗布液では、アンカー効果が十分に得られない。したがって、この貝類添加潤滑剤塗布液は鋼板試験片Sの表面に対して密着しない。更に、この貝類添加潤滑剤塗布液は水分の蒸発により大きく収縮するため、塗布膜Lが鋼板試験片Sの表面から剥離しやすい。
【0078】
(リングオンプレート摺動試験)
本実施形態に係る貝類添加潤滑剤塗布液における有機系バインダーの添加量Wの上限を決定するために、リングオンプレート摺動試験を行った。
【0079】
リングオンプレート摺動試験の方法は図3と同様である。貝粉の平均粒径dを10μmとし、貝粉の添加量Vを2重量%として、バインダーの添加量Wの異なる複数の貝類添加潤滑剤塗布液を作製し、リングオンプレート摺動試験機による試験を行った。なお、溶媒には工業用精製水(TSP-01 山栄製)を用い、バインダーにはユシロンフォーヂ(HF1550 ユシロ化学工業)を用いた。
【0080】
各貝類添加潤滑剤塗布液を、エアブラシ(wave社製super airbrush0.3&0.5)及びコンプレッサー(エアテックス社製APC-002)を用いて鋼板試験片Sの塗布面に均一に塗布して塗布膜Lを形成した。
【0081】
図9はリングオンプレート摺動試験の結果の一例を示すグラフである。図9(a)は500℃での結果を示し、図9(b)は室温での結果を示している。
【0082】
いずれの温度においても、バインダーの添加量Wが1.5重量%を超える貝類添加潤滑剤塗布液では摩擦係数μ_(R)が高くなるのに対し、バインダーの添加量Wが1.5重量%以下の貝類添加潤滑剤塗布液ではいずれも低い摩擦係数μ_(R)が得られた。
【0083】
より具体的には、バインダーの添加量Wが1.5重量%以下の貝類添加潤滑剤塗布液では、500℃における摩擦係数μ_(R)として1.0以下の低い値が得られ、室温における摩擦係数μ_(R)として0.7以下の低い値が得られることが確認された。
【0084】
この結果より、本実施形態に係る貝類含有潤滑剤では、バインダーの添加量Wを1.5重量%以下とした。
【0085】
(高温ドロー試験)
鋼板試験片Sの高温加工時の本実施形態に係る貝類添加潤滑剤塗布液による効果を確かめるために、高温ドロー試験を行った。
【0086】
図10は高温ドロー試験の方法を示す模式図である。本試験では、まず、鋼板試験片Sを加熱炉Hで加熱する。その後、鋼板試験片Sに加圧部Pの上治具p1と下治具p2とによってZ軸方向にプレス荷重を印加した状態で、鋼板試験片SをX軸方向に引き動かす。なお、鋼板試験片Sにプレス荷重を印加する上治具p1及び下治具p2の対向面は、X軸に沿った幅が20mmで、YY軸方向に沿った奥行が70mmの矩形である。
【0087】
加圧部Pによって鋼板試験片Sに印加するZ軸方向のプレス荷重は1kNから2kNずつ段階的に増加させた。鋼板試験片SのX軸方向の引抜速度は200mm/sとした。また、加圧部Pにおける鋼板試験片Sの温度が500℃となるように、加熱炉Hでは鋼板試験片Sを550℃に加熱した。
【0088】
そして、各プレス荷重における引抜荷重を検出し、プレス荷重及び引抜荷重から摩擦係数μ_(D)を算出した。なお、本試験に係る摩擦係数μ_(D)と、上記のリングオンプレート摺動試験に係る摩擦係数μ_(R)とは、試験法が異なるので直接比較することができない。また、鋼板試験片Sに加圧部Pで焼き付きが発生した場合、焼き付きが発生したプレス荷重を当該鋼板試験片Sのゴーリング発生荷重とした。
【0089】
本試験に用いる鋼板試験片Sとして、無潤滑の鋼板試験片Sと、フッ化ホウ素を両面に塗布した鋼板試験片Sと、本実施形態に係る貝類添加潤滑剤塗布液を両面に塗布した鋼板試験片Sと、を用意した。
【0090】
図11は高温ドロー試験の結果を示すグラフである。図11は、各鋼板試験片Sについて、プレス荷重(kN)による摩擦係数μ_(D)の変化を示している。また、ゴーリング発生荷重が符号Gで示されている。
【0091】
無潤滑の鋼板試験片Sでは、摩擦係数μ_(D)が0.60?0.30程度であり、ゴーリング発生荷重が11kNであった。窒化ホウ素を塗布した鋼板試験片Sでは、摩擦係数μ_(D)が0.50?0.30程度であり、ゴーリング発生荷重が13kNであった。
【0092】
一方、本実施形態に係る貝類添加潤滑剤塗布液を塗布した鋼板試験片Sでは、プレス荷重全範囲にわたって摩擦係数μ_(D)が0.37以下であり、無潤滑の鋼板試験片S及び窒化ホウ素を塗布した鋼板試験片Sに比べて摩擦係数μ_(D)が低かった。更に、本実施形態に係る貝類添加潤滑剤塗布液を塗布した鋼板試験片Sでは、測定限界であるプレス荷重19kNまで焼き付きが発生しなかった。
【0093】
このように、本実施形態に係る貝類添加潤滑剤塗布液を用いることにより、鋼板表面の摩擦係数μ_(D)が低下し、鋼板のプレス加工時の摺動抵抗を低下させることができる。更に、この貝類添加潤滑剤塗布液を用いることにより、焼き付きが発生しにくくなるため、鋼板に加わる荷重が大きい場合にも良好にプレス加工を行うことができる。
【0094】
3.貝粉添加プレス加工用油
本実施形態に係る貝類添加プレス加工用油は、プレス加工用油に上記貝類添加潤滑剤を添加することにより生成される。プレス加工用油は、特定の種類に限定されない。
【0095】
本実施形態に係る貝粉添加プレス加工用油は、例えば、プレス加工用鋼板に塗布される。上記貝粉添加プレス加工用油では、油膜を形成する潤滑油としての機能と、結晶が横滑りする固体潤滑剤としての機能とを相補的に有する。このため、上記貝粉添加プレス加工用油が塗布されたプレス加工用鋼板では、低荷重でプレス加工を行うことができるとともに、潤滑油のみによっては困難なプレス加工を行うことが可能となる。
【0096】
なお、必要に応じて、上記貝類添加プレス加工用油にバインダーを添加してもよい。バインダーの種類は、加工用油の種類などに応じて適宜決定可能である。バインダーは、プレス加工用油中で貝粉を良好に分散させる機能を発揮可能なものであれば、特定の種類に限定されない。
【0097】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0098】
S…鋼板試験片
L…塗布膜
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
貝殻に焼成処理及び粉砕処理を施すことにより得られ、平均粒径が20μm以下である貝粉と、
ホウ酸を含む中和剤と、
を含有する固体潤滑剤。
【請求項2】
請求項1に記載の固体潤滑剤であって、
前記ホウ酸の添加量が、前記貝粉の添加量の2.0倍以上4.7倍以下である
固体潤滑剤。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の固体潤滑剤と、溶媒と、を含有し、
前記貝粉の添加量をV(重量%)とし、前記貝粉の平均粒径をd(μm)とすると、
(A)d≦5.0、かつ、V≦2.0
(B)5.0<d≦20、かつ、V≦(38/15)d-(32/3)
のいずれか一方を満たす
固体潤滑剤塗布液。
【請求項4】
請求項3に記載の固体潤滑剤塗布液であって、
前記溶媒は水である
固体潤滑剤塗布液。
【請求項5】
請求項3又は4に記載の固体潤滑剤塗布液であって、
0.1重量%以上1.5重量%以下の有機系バインダーを更に含有する
固体潤滑剤塗布液。
【請求項6】
請求項1又は2に記載の固体潤滑剤と、加工用油と
を含有するプレス加工用油。
【請求項7】
請求項6に記載のプレス加工用油が塗布されている
プレス加工用鋼板。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審決日 2015-06-30 
出願番号 特願2014-561600(P2014-561600)
審決分類 P 1 41・ 853- Y (C10M)
最終処分 成立  
前審関与審査官 馬籠 朋広  
特許庁審判長 豊永 茂弘
特許庁審判官 山田 靖
日比野 隆治
登録日 2015-04-03 
登録番号 特許第5723500号(P5723500)
発明の名称 固体潤滑剤、固体潤滑剤塗布液、プレス加工用油、及びプレス加工用鋼板  
代理人 金山 慎太郎  
代理人 金子 彩子  
代理人 関根 正好  
代理人 中村 哲平  
代理人 千葉 絢子  
代理人 高橋 満  
代理人 折居 章  
代理人 大森 純一  
代理人 白鹿 智久  
代理人 千葉 絢子  
代理人 白鹿 智久  
代理人 金山 慎太郎  
代理人 中村 哲平  
代理人 大森 純一  
代理人 金子 彩子  
代理人 吉田 望  
代理人 関根 正好  
代理人 折居 章  
代理人 吉田 望  
代理人 高橋 満  
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