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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01L
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01L
管理番号 1303219
審判番号 不服2014-165  
総通号数 189 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-09-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-01-06 
確定日 2015-07-16 
事件の表示 特願2010-211759「マスクブランク及びその製造方法、並びに転写マスクの製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 2月24日出願公開、特開2011- 40770〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は、平成16年9月28日(優先権主張平成15年9月29日)に出願した特願2004-281672号(以下「原出願」という。)の一部を平成22年9月22日に新たな特許出願としたものであって、平成25年9月27日付けで拒絶査定がなされた。
本件は、これを不服として、平成26年1月6日に請求された拒絶査定不服審判であって、当審において、平成27年1月15日付けで拒絶の理由が通知され、これに対して、同年3月23日付けで意見書が提出されるとともに、手続補正がなされたものである。

2 本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成27年3月23日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)によって補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。
「【請求項1】
基板サイズが6インチ×6インチである四角形状の基板上に、レジスト材料及び溶剤を含むレジスト液を滴下し、前記基板を回転させ、滴下されたレジスト液を前記基板上に広げるとともに、前記基板上のレジスト液を乾燥させて、前記基板上に前記レジスト材料からなるレジスト塗布膜を形成する工程を有するマスクブランクの製造方法であって、
前記基板上に前記レジスト液を滴下した後に、前記基板の回転を開始し、
前記レジスト塗布膜を形成する工程において前記基板が回転している間、前記基板の上面に沿って基板の中央側から外周方向に気流の速度が、0.5m/秒以上5m/秒以下の気流を発生させ、基板の回転により基板周縁部に形成されるレジスト液の液溜まりが、前記気流により基板中央方向へ移動するのを抑制し、
前記レジスト液を塗布する際のレジスト液の粘度が10mPa・s以下であり、
前記レジスト塗布膜を形成する工程における基板の回転を途中で変更し、その前段と後段とで基板の回転を異ならしめ、
前記前段の基板回転数を1200?1900rpm、前記前段の基板回転時間を1?5秒とし、
前記後段の基板回転数を100?450rpmとし、
前記レジスト塗布膜を形成する工程において、基板中央部の132mm×132mmの領域である実パターン形成領域内でのレジスト塗布膜の平均膜厚を基準にして、
前記基板中央部の実パターン形成領域の周辺部にある領域であって、実パターン形成領域の外側から150mm×150mmまでの領域である補助パターン形成領域におけるレジスト塗布膜の最大膜厚と前記平均膜厚との差が、前記平均膜厚の1/2以下であることを特徴とするマスクブランクの製造方法。」

3 引用刊行物
(1)引用刊行物1
これに対して、当審における平成27年1月15日付けの拒絶の理由に引用され、原出願の優先日前に頒布された、特開昭60-123031号公報(以下「引用例1」という。)には、次の事項が記載されている。(下線は当審で付した。)
a 発明の詳細な説明の記載
「本発明は、レティクル及びフォトマスクの製造に用いられるフォトマスク基板(以下、「基板」という。)のパターンを形成する薄膜上に感光性材料(以下、「レジスト」という。)を塗布する方法に関し、特に、このレジストの膜厚を均一にするためのレジスト塗布方法に関するものである。」(第1頁右下欄第13?18行)
「しかしながら、従来の塗布方法では、下記のような欠点があった。第2図に基づき説明する。同図(a)はレジスト側から見た基板の平面図、同図(b)は、同図(a)のA-A断面図である。先ず、従来の塗布方法では、同図(a)に示すとおり、レジスト6の膜厚は円状の部分S_(1)内では、ほぼ均一であるが、前記部分S_(1)外の周辺の部分S_(2)は、レジストの膜厚が極端に厚くなっていた。すなわち、近年要求されている基板1上のパターンを形成する矩形の部分S_(3)内のレジストの膜厚を均一化することは困難であった。
本発明者は、前記の欠点を除去するために鋭意研究した結果、従来の塗布方法では、乾燥まで同一の回転数で塗布するために、乾燥が進行するに従ってレジスト膜厚を不均一にしてしまうことを発見した。すなわち、本発明では、回転塗布方法において、レジスト膜厚を実質的に均一化する工程(以下、「均一化工程」という。)と、レジストを乾燥する工程(以下、「乾燥工程」という。)とを分離し、前記均一化工程では、レジスト中の溶媒の揮発性を考慮して、基板の回転数及び回転時間を適宜決定することによりレジスト膜厚を均一にすることを目的とするものである。さらに、本発明は、前記乾燥工程において、前記均一化工程に使用するスピンコータ上でレジストを前記均一化工程の回転数よりも低回転数で乾燥することを目的とするものである。
以下、本発明を実施例に基づき詳細に第1図を参照して説明する。
(実施例1) 本実施例では、ポジ型電子ビームレジストであるポリブテン-1-スルホンの塗布方法を示す。
先ず、均一化工程を示す。ガラス板上にクロム膜を一主表面(127mm×127mm)に被着したクロムマスク基板を、第1図のスピンコータのチャック2に設置、固定する。次に、前記基板のクロム膜上に、ノズル3より粘度30cpに溶剤メチルセロソルグアセテート(蒸気圧2mmHg(20℃))で調整された前記レジストを滴下し、モータ4により、回転数R(単位、rpm)が100?6,000、回転時間T(単位、秒)が基板を回転し始めて、設定した回転数に到達した時から最高20秒までの時間及びR×Tが24,000以下の条件、例えばRが960rpm、Tが14秒、R×Tが13,440rpm・秒で、前記基板板を回転し、所望するレジストの膜厚(4,000Å)を均一に得る。次に、乾燥工程は、前記均一化工程で14秒前記基板を回転した後、Rを500rpm以下及び前記均一化工程でのRよりも小さい、例えば50rpmで160秒回転し、前記溶媒を揮発させる。本実施例によれば、均一化工程後と乾燥工程後とのレジスト膜厚の均一性は、乾燥工程でのRが均一化工程のRよりも小さく、更に500rpmよりも小さいので、保持される。本実施例によるレジスト膜厚の平均値、最大値及び最小値と、比較例として、本実施例と同様のクロムマスク基板、ポジ型電子ビームレジスト及びこのレジストの膜厚(4,000Å)を均一にするために、Rを1,000rpm、Tを70秒で均一化、乾燥工程をした従来の塗布方法でのレジスト膜厚の平均値、最大値及び最小値を表1に示す。なお、レジストの膜厚は膜厚測定機IBM7840FTA(インターナショナル・ビジネス・マシーンズ・コーポレーション製)で測定し、さらに測定部は、前記127mm×127mm面のそれぞれの辺から10mm内側に設定した現在所望されている範囲107mm×107mmとする。」(第2頁左上欄第17行?第3頁左上欄第1行)
「(実施例2) 本実施例では、ネガ型電子ビームレジストであるポリグリシジルメタアクリレートの塗布方法を示す。
先ず、均一化工程を示す。基板及び塗布装置は、前記実施例1と同一であり、R,T及びR×Tの範囲も前記実施例1と同一である。本実施例では、前記基板のクロム膜上に、粘度15cpに溶剤メチルセロソルグアセテート(蒸気圧 1.2mmHg(20℃))で調整された前記レジストを滴下し、Rが1,160rpm、Tが6秒、R×Tが6,960rpm・秒で回転し、前記レジストの所望するレジストの膜厚(6,000Å)を均一に得る。次に、乾燥工程は、前記実施例1と同様に、Rを50rpm、Tを160秒の設定で行う。本実施例によるレジスト膜厚の平均値、最大値及び最小値と、比較例として、本実施例と同様のクロムマスク基板、ネガ型電子ビームレジスト及びこのレジストの膜厚(6,000Å)を均一にするために、Rを3,600rpm、Tを30秒で均一、乾燥工程をした従来の塗布方法でのレジスト膜厚の平均値、最大値及び最小値を表2に示す。測定機及び測定部は、前記実施例1と同様である。

上表のとおり、本実施例では最大値と最小値との差が50Åであり、一方、比較例では2,690Åであり、本実施例の方が数段均一性に優れている。
以上、均一化工程での本発明の回転数R、回転時間T及び回転数R×回転時間Tの設定は、下記の理由である。まず、Rが100rpm未満であると、パターンを形成する薄膜上に滴下したレジストが均一に拡がらず、一方Rが6,000rpmを越えると、装置の安全上問題が出てくる。次に、Tが基板が回転し始めて設定した回転数に到達する前の時間であると、所望するレジスト膜厚を形成することができず、一方設定した回転数に到達した時から20秒を越えると、パターンを形成する薄膜表面の中心に向かってレジスト膜厚の不均一な部分が進行していく。さらに、R×Tが24,000を越えると、前記回転時間Tが20秒を越えたのと同様の結果となる。すなわち、本発明によれば、回転数Rを100?6,000rpm、回転時間Tを基板が回転し始めて、設定した回転数に到達した時から最高20(秒)及び回転数R×回転時間Tを24,000rpm・秒以下の条件内で、前記実施例1,2のレジスト以外の電子ビームレジスト、フォトレジストなどの感光性材料に適した回転数、回転時間及び回転数×回転時間を決定すれば均一なレジスト膜厚が得られる。次に、前記実施例1,2では、レジストを基板上に滴下するとき、前記基板を停止して滴下したが、設定された回転数(例えば、 実施例1において960rpm)より小さい回転数で前記基板を回転しておいて、レジストを滴下してもよい。
次に、乾燥工程は、前記実施例1,2では均一化工程で使用したスピンコータを使用したが、何らこれに限定されることなく、均一化工程修了後、回転を停止し、チャックより基板を取り外し、プリベークの工程で乾燥させてもよい。しかしながら、乾燥工程を前記のような工程で行うと、作業性、基板の清浄性が悪化するので、前記実施例1,2の工程がよい。また、乾燥工程の回転数は、より完全にレジスト膜厚の均一性を保持するために、望ましくは130rpm以下がよい。」(第3頁左上欄第9行?右下欄第16行)

b 図面の記載




c 上記a及びbの記載事項の考察
(ア)上記aの記載事項より、第2「図(b)は、同図(a)のA-A断面図である」から、上記bの記載事項の第2図(a)及び(b)より、基板1が矩形であることが読み取れる。
そして、上記aの記載事項には、第2図(a)及び(b)記載の矩形である基板1は従来のものであることが記載されているものの、上記aの記載事項の実施例1には、基板が「127mm×127mm」であることが記載されており、また、基板1が従来技術と実施例とで相違する記載も示唆も存在しないことから、実施例1及び2の「基板1」も矩形であると認められる。
(イ)上記bの記載事項の第2図(a)によると、「基板1上のパターンを形成する矩形の部分S_(3)」の外側に所定部分が存在することが読み取れる。

d 引用例1記載の発明
上記a及びbの記載事項並びに上記cの考察によると、引用例1には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「均一化工程にて、127mm×127mmの矩形の基板上に、基板を停止して、溶剤メチルセロソルグアセテートで調整されたポリグリシジルメタアクリレートのレジストを滴下し、基板を回転し、レジストの膜厚を均一に得て、次に乾燥工程を行うフォトマスク基板のレジスト塗布方法であって、
レジストは粘度15cpに調整され、
均一化工程は、回転数1,160rpm、回転時間6秒であり、
乾燥工程は、回転数50rpm、回転時間160秒の設定であり、
基板上のパターンを形成する矩形の部分S_(3)の外側に所定部分が存在し、
基板の127mm×127mm面のそれぞれの辺から10mm内側に設定した現在所望されている範囲107mm×107mmでは、レジスト膜厚の平均値、最大値及び最小値が、6,160Å、6,190Å及び6,140Åである、
フォトマスク基板のレジスト塗布方法。」

(2)引用刊行物2
また、当審における平成27年1月15日付けの拒絶の理由に引用され、原出願の優先日前に頒布された、特開2001-179160号公報(以下「引用例2」という。)には、次の事項が記載されている。(下線は当審で付した。)
a 発明の詳細な説明の記載
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ホトレジスト或いはエッチング液など半導体製造プロセスで使用される薬液を角形基板に均一に塗布するための薬液塗布方法とその装置に関する。」
「【0006】
【発明の解決課題】本発明の解決課題は、角形基板でもその角部分の先端までほぼ均一な薬液層を形成する事の出来る薬液塗布方法並びにその装置を開発する事にある。
【0007】
【課題を解決するための手段】「請求項1」は本発明の薬液塗布方法に関し「角形基板(1)を回転させてその表面に薬液(2)を塗布する薬液塗布方法であって、薬液塗布表面(3)に沿って、角形基板(1)の中心(P)側から周縁方向(S)に気流(4)を流す」事を特徴とする。
【0008】前述のように角形基板(1)を回転させるとその遠心力で薬液(2)はその表面を周縁部分(S)に向かって流れていくが、角部分(5)では遠心力と表面張力の協働作用によって盛り上がろうとする。これに対して気流(4)が薬液塗布表面(3)に沿って角形基板(1)の中心(P)側から周縁方向(S)に向かって流れているので、薬液(2)が気流(4)によって後押しされ、角部分(5)まで急速に広がると同時に前記気流(4)が角部分(5)の薬液(2)を上から押え込むようになり、表面張力及び過剰供給による角部分(5)での薬液(2)の盛り上がりが抑制される。この状態で薬液層(2a)が乾燥或いは反応によって固化すると、角部分(5)まで略均一な薬液層(2a)を持つ角形基板(1)が得られる事になる。」
b 図面の記載
「【図4】


c 引用例2記載の発明
上記a及びbの記載事項によると、引用例2には、以下の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されていると認められる
「角形基板(1)を回転させてその表面にホトレジストの薬液(2)を塗布する薬液塗布方法であって、薬液塗布表面(3)に沿って、角形基板(1)の中心(P)側から周縁方向(S)に気流(4)を流すことにより、角形基板でもその角部分の先端までほぼ均一な薬液層を形成する事の出来る薬液塗布方法。」

4 対比
ここで、本願発明と引用発明とを対比する。
(1)引用発明の「基板」、「ポリグリシジルメタアクリレート」、「溶剤メチルセロソルグアセテート」、「レジスト」及び「フォトマスク基板」は、本願発明の「基板」、「レジスト材料」、「溶剤」、「レジスト液」及び「マスクブランク」にそれぞれ相当する。
引用発明の「127mm×127mmの矩形の基板上に、基板を停止して、溶剤メチルセロソルグアセテートで調整されたポリグリシジルメタアクリレートのレジストを滴下」する構成と、本願発明の「基板サイズが6インチ×6インチである四角形状の基板上に、レジスト材料及び溶剤を含むレジスト液を滴下」する構成とは、「四角形状の基板上に、レジスト材料及び溶剤を含むレジスト液を滴下」する構成で共通する。
また、引用発明の「基板を回転し、レジストの膜厚を均一に得」る構成は、本願発明の「基板を回転させ、滴下されたレジスト液を前記基板上に広げる」構成に相当する。
さらに、引用発明は、「均一化工程にて、127mm×127mmの矩形の基板上に、基板を停止して、溶剤メチルセロソルグアセテートで調整されたポリグリシジルメタアクリレートのレジストを滴下し、基板を回転し、レジストの膜厚を均一に得て、次に乾燥工程を行うフォトマスク基板のレジスト塗布方法」であるから、本願発明の「基板上のレジスト液を乾燥させて、前記基板上に前記レジスト材料からなるレジスト塗布膜を形成する工程」に相当する構成を有するものである。
また、引用発明の「フォトマスク基板のレジスト塗布方法」は、本願発明の「マスクブランクの製造方法」に相当する。
そうすると、引用発明の「均一化工程にて、127mm×127mmの矩形の基板上に、基板を停止して、溶剤メチルセロソルグアセテートで調整されたポリグリシジルメタアクリレートのレジストを滴下し、基板を回転し、レジストの膜厚を均一に得て、次に乾燥工程を行うフォトマスク基板のレジスト塗布方法」と、本願発明の「基板サイズが6インチ×6インチである四角形状の基板上に、レジスト材料及び溶剤を含むレジスト液を滴下し、前記基板を回転させ、滴下されたレジスト液を前記基板上に広げるとともに、前記基板上のレジスト液を乾燥させて、前記基板上に前記レジスト材料からなるレジスト塗布膜を形成する工程を有するマスクブランクの製造方法」とは、「四角形状の基板上に、レジスト材料及び溶剤を含むレジスト液を滴下し、前記基板を回転させ、滴下されたレジスト液を前記基板上に広げるとともに、前記基板上のレジスト液を乾燥させて、前記基板上に前記レジスト材料からなるレジスト塗布膜を形成する工程を有するマスクブランクの製造方法」で共通する。

(2)引用発明は、「基板を停止して、溶剤メチルセロソルグアセテートで調整されたポリグリシジルメタアクリレートのレジストを滴下し、基板を回転」するものであるから、本願発明の「基板上に前記レジスト液を滴下した後に、前記基板の回転を開始」する構成に相当する構成を有するものである。

(3)引用発明は、「均一化工程」の「次に、乾燥工程を行う」ものであるから、引用発明の「均一化工程は、回転数1,160rpm、回転時間6秒であり、乾燥工程は、回転数50rpm、回転時間160秒の設定であ」る構成と、本願発明の「レジスト塗布膜を形成する工程における基板の回転を途中で変更し、その前段と後段とで基板の回転を異ならしめ、前記前段の基板回転数を1200?1900rpm、前記前段の基板回転時間を1?5秒とし、前記後段の基板回転数を100?450rpmと」する構成とは、「レジスト塗布膜を形成する工程における基板の回転を途中で変更し、その前段と後段とで基板の回転を異ならしめ」る構成で共通する。

(4)引用発明の「基板上のパターンを形成する矩形の部分S_(3)」は、本願発明の「基板中央部の実パターン形成領域」に相当する。
また、本願発明の「基板中央部の実パターン形成領域の周辺部にある領域であ」る「補助パターン形成領域」は、「マスクブランク」としてはパターンは形成されていない、単にレジスト液が塗布された領域であるから、引用発明の「基板上のパターンを形成する矩形の部分S_(3)の外側」の「所定部分」は、本願発明の「基板中央部の実パターン形成領域の周辺部にある領域であ」る「補助パターン形成領域」に相当する。
そうすると、引用発明の「基板上のパターンを形成する矩形の部分S_(3)の外側に所定部分が存在」する構成と、本願発明の「基板の127mm×127mm面のそれぞれの辺から10mm内側に設定した現在所望されている範囲107mm×107mmでは、レジスト膜厚の平均値、最大値及び最小値が、6,160Å、6,190Å及び6,140Åである」構成とは、「基板中央部の実パターン形成領域の周辺部にある領域であって、実パターン形成領域の外側の領域である補助パターン形成領域を有する」構成で共通する。

上記(1)ないし(4)から、本願発明と引用発明は、
「四角形状の基板上に、レジスト材料及び溶剤を含むレジスト液を滴下し、前記基板を回転させ、滴下されたレジスト液を前記基板上に広げるとともに、前記基板上のレジスト液を乾燥させて、前記基板上に前記レジスト材料からなるレジスト塗布膜を形成する工程を有するマスクブランクの製造方法であって、
前記基板上に前記レジスト液を滴下した後に、前記基板の回転を開始し、
前記レジスト塗布膜を形成する工程における基板の回転を途中で変更し、その前段と後段とで基板の回転を異ならしめ、
前記基板中央部の実パターン形成領域の周辺部にある領域であって、実パターン形成領域の外側の領域である補助パターン形成領域を有する、
マスクブランクの製造方法。」
で一致し、以下a及びbの点で相違する。

(相違点)
a 本願発明は、(1)「基板サイズが6インチ×6インチであ」り、「実パターン形成領域」が「基板中央部の132mm×132mmの領域であ」り、(2)「レジスト液を塗布する際のレジスト液の粘度が10mPa・s以下であり、」(3)「前記前段の基板回転数を1200?1900rpm、前記前段の基板回転時間を1?5秒とし、前記後段の基板回転数を100?450rpmとし」ているのに対し、引用発明は、(1)基板が「127mm×127mm」であって、「パターンを形成する矩形の部分S_(3)」の大きさは不明であり、(2)「レジストは粘度15cpに調整され、」(3)「均一化工程は、回転数1,160rpm、回転時間6秒であり、乾燥工程は、回転数50rpm、回転時間160秒の設定であ」る点。

b 本願発明は、「レジスト塗布膜を形成する工程において前記基板が回転している間、前記基板の上面に沿って基板の中央側から外周方向に気流の速度が、0.5m/秒以上5m/秒以下の気流を発生させ、基板の回転により基板周縁部に形成されるレジスト液の液溜まりが、前記気流により基板中央方向へ移動するのを抑制し、」「前記レジスト塗布膜を形成する工程において、」「実パターン形成領域内でのレジスト塗布膜の平均膜厚を基準にして、実パターン形成領域の外側から150mm×150mmまでの領域である補助パターン形成領域におけるレジスト塗布膜の最大膜厚と前記平均膜厚との差が、前記平均膜厚の1/2以下である」のに対し、引用発明は、気流を発生させておらず、「基板の127mm×127mm面のそれぞれの辺から10mm内側に設定した現在所望されている範囲107mm×107mmでは、レジスト膜厚の平均値、最大値及び最小値が、6,160Å、6,190Å及び6,140Åである」点。

5 当審の判断
以下、上記a及びbの相違点について検討する。
(aの相違点について)
(1)フォトマスク基板を6インチ×6インチとして、実パターン形成領域を基板中央部の132mm×132mmの領域とすることは、周知技術であり、引用発明の基板として、6インチ×6インチのものを用い、引用発明の「パターンを形成する矩形の部分S_(3)」を「基板中央部の132mm×132mmの領域」とすることに格別の困難性はない。
(2)粘度が10mPa・s以下のレジストは広く用いられている周知のものであり、引用発明のレジストの粘度を10mPa・s以下に調整することに、格別の困難性はない。
(3)引用発明は、「均一化工程は、回転数1,160rpm、回転時間6秒であり、乾燥工程は、回転数50rpm、回転時間160秒の設定であ」るが、引用例1には、「先ず、均一化工程を示す。・・・(略)・・・回転数R(単位、rpm)が100?6,000、回転時間T(単位、秒)が基板を回転し始めて、設定した回転数に到達した時から最高20秒までの時間・・・(略)・・・で基板を回転し、・・・(略)・・・次に、乾燥工程は、前記均一化工程で14秒前記基板を回転した後、Rを500rpm以下及び前記均一化工程でのRよりも小さい・・・(略)・・・回転し、前記溶媒を揮発させる」(上記引用例1の摘記事項参照。)と記載されている。
そして、引用発明の「レジスト塗布方法」において、レジストの均一化なる課題を達成するためには、基板の回転数及び回転時間は、基板の大きさ及びレジストの粘度等の変化によりその最適な値が変化することは、当業者であれば容易に想到できたことであるから、引用発明を基板サイズが6インチ×6インチで、レジストの粘度が10mPa・s以下のものに適用するに際して、基板の大きさ及びレジストの粘度に合わせて最適な値を選択することは、当業者が容易になし得た事項であり、基板の回転数及び回転時間を、均一化工程として、「基板回転数を1200?1900rpm」、「基板回転時間を1?5秒」、乾燥工程として、「基板回転数を100?450rpm」程度のものが格別であることを示す根拠もない。
してみると、引用発明において、基板の回転数及び回転時間を、均一化工程として、「基板回転数を1200?1900rpm」、「基板回転時間を1?5秒」、乾燥工程として、「基板回転数を100?450rpm」とすることは、当業者が容易になし得たことである。
したがって、上記aの相違点に係る本願発明の発明特定事項を得ることは、当業者が容易になし得たことである。
(bの相違点について)
まず、上記bの相違点に係る本願発明の発明特定事項(以下「相違点b事項」という。)と引用発明2とを対比する。
引用発明2の「角形基板(1)」、「ホトレジストの薬液(2)」、「気流(4)」及び「薬液層」は、相違点b事項の「基板」、「レジスト液」、「気流」及び「レジスト塗布膜」に相当する。
また、引用発明2は、「薬液塗布表面(3)に沿って、角形基板(1)の中心(P)側から周縁方向(S)に気流(4)を流す」構成を有するものであるから、相違点b事項の「基板の回転により基板周縁部に形成されるレジスト液の液溜まりが、前記気流により基板中央方向へ移動するのを抑制」する構成に相当する構成を有するものであるといえる。
そうすると、引用発明2の「薬液塗布表面(3)に沿って、角形基板(1)の中心(P)側から周縁方向(S)に気流(4)を流すことにより、角形基板でもその角部分の先端までほぼ均一な薬液層を形成する事の出来る」構成と、相違点b事項の「基板の上面に沿って基板の中央側から外周方向に気流の速度が、0.5m/秒以上5m/秒以下の気流を発生させ、基板の回転により基板周縁部に形成されるレジスト液の液溜まりが、前記気流により基板中央方向へ移動するのを抑制」する構成とは、「基板の上面に沿って基板の中央側から外周方向に気流を発生させ、基板の回転により基板周縁部に形成されるレジスト液の液溜まりが、前記気流により基板中央方向へ移動するのを抑制」する構成で共通する。
次に、上記bの相違点について検討する。
引用発明は、「矩形の基板上に」「レジストの膜厚を均一に得」る「レジスト塗布方法」を含むのに対し、引用発明2は「角形基板でもその角部分の先端までほぼ均一な」「ホトレジストの」「薬液層を形成する事の出来る薬液塗布方法」を含み、両者は、矩形の基板上にレジストの膜厚を均一に得るレジスト塗布方法を含む点で共通するから、引用発明の「レジスト塗布方法」において、引用発明2を適用することに阻害要因も困難性もない。
そして、その際の「気流(4)」の速度は、引用発明の「レジスト塗布方法」において、レジストの均一化なる課題、特に、「角形基板でもその角部分の先端までほぼ均一な薬液層を形成する」課題を達成するために、基板の大きさ及びレジストの粘度等の変化によりその最適な値が変化することは、当業者であれば容易に想到できたことであるから、引用発明において、基板の大きさ及びレジストの粘度に合わせて最適な値を選択することは、当業者が適宜なし得た事項であり、「気流(4)」の速度を「0.5m/秒以上5m/秒以下」のものが格別であることを示す根拠もない。
また、引用発明において、レジストの均一化なる課題を達成するために、「パターンを形成する矩形の部分S_(3)」の外側から150mm×150mmまでの領域のレジストを均一化することは、当業者が容易に想到できたことであるし、「パターンを形成する矩形の部分S_(3)」内でのレジストの平均膜厚を基準にして、「パターンを形成する矩形の部分S_(3)」の外側から150mm×150mmまでの領域である領域におけるレジストの最大膜厚と前記平均膜厚との差が、前記平均膜厚の1/2以下である」ことが格別であることを示す根拠もない。
してみると、引用発明に引用発明2を適用し、その際に、「気流(4)」の速度を「0.5m/秒以上5m/秒以下」とし、さらに、「パターンを形成する矩形の部分S_(3)」内でのレジストの平均膜厚を基準にして、「パターンを形成する矩形の部分S_(3)」の外側から150mm×150mmまでの領域である領域におけるレジストの最大膜厚と前記平均膜厚との差が、前記平均膜厚の1/2以下である」ようにして、相違点b事項を得ることは、当業者が容易になし得たことである。

上記a及びbの相違点については以上のとおりであり、本願発明によってもたらされる効果は、引用発明、引用発明2及び周知技術から当業者が予測できる範囲内のものと認められる。
よって、本願発明は、引用発明、引用発明2及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

6 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明、引用発明2及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、その余の請求項に係る発明について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-05-15 
結審通知日 2015-05-19 
審決日 2015-06-01 
出願番号 特願2010-211759(P2010-211759)
審決分類 P 1 8・ 537- WZ (H01L)
P 1 8・ 121- WZ (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 久保田 創  
特許庁審判長 神 悦彦
特許庁審判官 土屋 知久
山口 剛
発明の名称 マスクブランク及びその製造方法、並びに転写マスクの製造方法  
代理人 大塚 武史  
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