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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06F |
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管理番号 | 1303241 |
審判番号 | 不服2014-12376 |
総通号数 | 189 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2015-09-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2014-06-27 |
確定日 | 2015-07-16 |
事件の表示 | 特願2012-208780「情報処理装置、方法及びコンピュータプログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 4月10日出願公開、特開2014- 63394〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1.手続の経緯 本願は,平成24年9月21日の出願であって, 平成25年3月5日付けで審査請求がなされ,平成25年12月16日付けで審査官により拒絶理由が通知され,これに対して平成26年2月21日付けで意見書が提出されると共に手続補正がなされたが,平成26年3月27日付けで審査官により拒絶査定がなされ(発送;平成26年4月1日),これに対して平成26年6月27日付けで審判請求がなされると共に手続補正がなされ,平成26年7月18日付けで審査官により特許法第164条第3項の規定に基づく報告がなされ,平成26年9月2日付けで上申書の提出があったものである。 第2.平成26年6月27日付けの手続補正の却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成26年6月27日付け手続補正を却下する。 [理由] 1.補正の内容 平成26年6月27日付けの手続補正(以下,「本件手続補正」という)により,平成26年2月21日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲, 「 【請求項1】 情報処理装置であって, その情報処理装置について,表示画面の面に沿った回転方向と,回転角度と,回転が停止したことを検出する検出手段と, その情報処理装置を予め定められた前記回転方向へ予め定められた角度まで回転させて停止させる操作を単位とする一連の操作が,予め定められた順序で前記検出手段により検出されたときに認証を肯定的と判定する認証判定手段と, を備え, 前記回転方向は,前記停止の直前に最後に回転していた回転方向である ことを特徴とする情報処理装置。 【請求項2】 検出されている前記回転角度を前記表示画面に表示する角度表示手段と, 検出されている前記回転角度の変化を打ち消すように前記角度の表示画像を情報処理装置に対して回転させる回転手段と, を備えたことを特徴とする請求項1記載の情報処理装置。 【請求項3】 前記回転角度の表示は,外側リング部と内側部とを備え, 外側リング部又は内側部の一方に角度を表す数字が表示され,他方はいずれかの前記数字を指し示すポインタ部を備え, 前記回転手段は,外側リング部又は内側部の一方を,検出されている前記回転角度の変化を打ち消すように情報処理装置に対して回転させる ことを特徴とする請求項2記載の情報処理装置。 【請求項4】 情報処理装置に対して情報サービスを提供するサーバ装置であって, 前記情報処理装置に対して加えられる一連の操作であって,表示画面の面に沿ったどちらの回転方向へどの角度まで回転させて停止されたかを単位とする一連の操作をその情報処理装置からデータとして受信する受信手段と, 受信された前記一連の操作を,予め定められている一連の操作と比較し一致したときに認証を肯定的と判定する認証判定手段と, 認証が肯定的と判定されたときに,前記情報処理装置に対して情報サービスを提供する提供手段と, を備え, 前記回転方向は,前記停止の直前に最後に回転していた回転方向である ことを特徴とするサーバ装置。 【請求項5】 第1の情報処理装置に与えられる操作に基く認証により,第2の情報処理装置に対して情報サービスを提供するためのサーバ装置であって, 前記第1の情報処理装置に対する操作であって,予め定められた回転方向へ予め定められた角度まで回転させて停止させる操作を単位とする一連の操作が予め定められた順序で行われたことを検出したときに認証が肯定的と判定する認証判定手段と, 前記認証が肯定的と判定された場合に,前記第2の情報処理装置に対して前記情報サービスを提供する提供手段と, を備え, 前記回転方向は,前記停止の直前に最後に回転していた回転方向である ことを特徴とするサーバ装置。 【請求項6】 前記サーバ装置は,認証を肯定的と判定すべき前記一連の操作として毎回異なる一連の操作を生成して前記第1の情報処理装置又は前記第2の情報処理装置へ表示のために送信するワンタイム送信手段を備えたことを特徴とする請求項5記載のサーバ装置。 【請求項7】 情報処理装置における情報処理方法であって, その情報処理装置について,表示画面の面に沿った回転方向と,回転角度と,回転が停止したことを検出する検出処理と, その情報処理装置を予め定められた前記回転方向へ予め定められた角度まで回転させて停止させる操作を単位とする一連の操作が,予め定められた順序で前記検出処理に より検出されたときに認証を肯定的と判定する認証判定処理と, コンピュータが実行し, 前記回転方向は,前記停止の直前に最後に回転していた回転方向である ことを特徴とする情報処理方法。 【請求項8】 情報処理装置に対して情報サービスを提供するサーバ装置における情報処理方法であって, 前記情報処理装置に対して加えられる一連の操作であって,表示画面の面に沿ったどちらの回転方向へどの角度まで回転させて停止されたかを単位とする一連の操作をその情報処理装置からデータとして受信する受信処理と, 受信された前記一連の操作を,予め定められている一連の操作と比較し一致したときに認証を肯定的と判定する認証判定処理と, 認証が肯定的と判定されたときに,前記情報処理装置に対して情報サービスを提供する提供処理と, をコンピュータが実行し, 前記回転方向は,前記停止の直前に最後に回転していた回転方向である ことを特徴とする情報処理方法。 【請求項9】 コンピュータを制御することにより,情報処理装置に対して情報サービスを提供させるコンピュータプログラムであって, そのプログラムはコンピュータを制御することにより, 前記情報処理装置に対して加えられる一連の操作であって,表示画面の面に沿ったどちらの回転方向へどの角度まで回転させて停止されたかを単位とする一連の操作をその情報処理装置からデータとして受信させ, 受信された前記一連の操作を,予め定められている一連の操作と比較し一致したときに認証を肯定的と判定させ, 認証が肯定的と判定されたときに,前記情報処理装置に対して情報サービスを提供させ, 前記回転方向は,前記停止の直前に最後に回転していた回転方向である ことを特徴とするコンピュータプログラム。」(以下,上記引用の請求項各項を,「補正前の請求項」という)は, 「 【請求項1】 情報処理装置であって, その情報処理装置について,表示画面の面に沿った回転方向と,回転角度と,回転が停止したことを検出する検出手段と, その情報処理装置を,停止状態から開始し且つ予め定められた前記回転方向へ予め定められた角度まで回転させて停止させる操作を単位とする一連の操作が,予め定められた順序で前記検出手段により検出されたときに認証を肯定的と判定する認証判定手段と, を備え, 前記回転方向は,前記停止の直前に最後に回転していた回転方向である ことを特徴とする情報処理装置。 【請求項2】 検出されている前記回転角度を前記表示画面に表示する角度表示手段と, 検出されている前記回転角度の変化を打ち消すように前記角度の表示画像を情報処理装置に対して回転させる回転手段と, を備えたことを特徴とする請求項1記載の情報処理装置。 【請求項3】 前記回転角度の表示は,外側リング部と内側部とを備え, 外側リング部又は内側部の一方に角度を表す数字が表示され,他方はいずれかの前記数字を指し示すポインタ部を備え, 前記回転手段は,外側リング部又は内側部の一方を,検出されている前記回転角度の変化を打ち消すように情報処理装置に対して回転させる ことを特徴とする請求項2記載の情報処理装置。 【請求項4】 情報処理装置に対して情報サービスを提供するサーバ装置であって, 前記情報処理装置に対して加えられる一連の操作であって,停止状態から開始し且つ表示画面の面に沿ったどちらの回転方向へどの角度まで回転させて停止されたかを単位とする一連の操作をその情報処理装置からデータとして受信する受信手段と, 受信された前記一連の操作を,予め定められている一連の操作と比較し一致したときに認証を肯定的と判定する認証判定手段と, 認証が肯定的と判定されたときに,前記情報処理装置に対して情報サービスを提供する提供手段と, を備え, 前記回転方向は,前記停止の直前に最後に回転していた回転方向である ことを特徴とするサーバ装置。 【請求項5】 第1の情報処理装置に与えられる操作に基く認証により,第2の情報処理装置に対して情報サービスを提供するためのサーバ装置であって, 前記第1の情報処理装置に対する操作であって,停止状態から開始し且つ予め定められた回転方向へ予め定められた角度まで回転させて停止させる操作を単位とする一連の操作が予め定められた順序で行われたことを検出したときに認証が肯定的と判定する認証判定手段と, 前記認証が肯定的と判定された場合に,前記第2の情報処理装置に対して前記情報サービスを提供する提供手段と, を備え, 前記回転方向は,前記停止の直前に最後に回転していた回転方向である ことを特徴とするサーバ装置。 【請求項6】 前記サーバ装置は,認証を肯定的と判定すべき前記一連の操作として毎回異なる一連の操作を生成して前記第1の情報処理装置又は前記第2の情報処理装置へ表示のために送信するワンタイム送信手段を備えたことを特徴とする請求項5記載のサーバ装置。 【請求項7】 情報処理装置における情報処理方法であって, その情報処理装置について,表示画面の面に沿った回転方向と,回転角度と,回転が停止したことを検出する検出処理と, その情報処理装置を,停止状態から開始し且つ予め定められた前記回転方向へ予め定められた角度まで回転させて停止させる操作を単位とする一連の操作が,予め定められた順序で前記検出処理により検出されたときに認証を肯定的と判定する認証判定処理と, コンピュータが実行し, 前記回転方向は,前記停止の直前に最後に回転していた回転方向である ことを特徴とする情報処理方法。 【請求項8】 情報処理装置に対して情報サービスを提供するサーバ装置における情報処理方法であって, 前記情報処理装置に対して加えられる一連の操作であって,停止状態から開始し且つ表示画面の面に沿ったどちらの回転方向へどの角度まで回転させて停止されたかを単位とする一連の操作をその情報処理装置からデータとして受信する受信処理と, 受信された前記一連の操作を,予め定められている一連の操作と比較し一致したときに認証を肯定的と判定する認証判定処理と, 認証が肯定的と判定されたときに,前記情報処理装置に対して情報サービスを提供する提供処理と, をコンピュータが実行し, 前記回転方向は,前記停止の直前に最後に回転していた回転方向である ことを特徴とする情報処理方法。 【請求項9】 コンピュータを制御することにより,情報処理装置に対して情報サービスを提供させるコンピュータプログラムであって, そのプログラムはコンピュータを制御することにより, 前記情報処理装置に対して加えられる一連の操作であって,停止状態から開始し且つ表示画面の面に沿ったどちらの回転方向へどの角度まで回転させて停止されたかを単位とする一連の操作をその情報処理装置からデータとして受信させ, 受信された前記一連の操作を,予め定められている一連の操作と比較し一致したときに認証を肯定的と判定させ, 認証が肯定的と判定されたときに,前記情報処理装置に対して情報サービスを提供させ, 前記回転方向は,前記停止の直前に最後に回転していた回転方向である ことを特徴とするコンピュータプログラム。」(以下,上記引用の請求項各項を,「補正後の請求項」という)に補正された。 2.補正の適否 本件手続補正は,補正前の請求項1における, 「情報処理装置を予め定められた前記回転方向へ予め定められた角度まで回転させて停止させる操作を単位とする一連の操作」, を,補正後の請求項1における, 「情報処理装置を,停止状態から開始し且つ予め定められた前記回転方向へ予め定められた角度まで回転させて停止させる操作を単位とする一連の操作」, に補正し,補正前の請求項4における, 「情報処理装置に対して加えられる一連の操作であって、表示画面の面に沿ったどちらの回転方向へどの角度まで回転させて停止されたかを単位とする一連の操作」, を,補正後の請求項4における, 「情報処理装置に対して加えられる一連の操作であって,停止状態から開始し且つ表示画面の面に沿ったどちらの回転方向へどの角度まで回転させて停止されたかを単位とする一連の操作」, に補正し,補正前の請求項5における, 「第1の情報処理装置に対する操作であって,予め定められた回転方向へ予め定められた角度まで回転させて停止させる操作」, を,補正後の請求項5における, 「第1の情報処理装置に対する操作であって,停止状態から開始し且つ予め定められた回転方向へ予め定められた角度まで回転させて停止させる操作」, に補正し,補正前の請求項7における, 「情報処理装置を予め定められた前記回転方向へ予め定められた角度まで回転させて停止させる操作」, を,補正後の請求項7における, 「情報処理装置を,停止状態から開始し且つ予め定められた前記回転方向へ予め定められた角度まで回転させて停止させる操作」, に補正し,補正前の請求項8における, 「情報処理装置に対して加えられる一連の操作であって,表示画面の面に沿ったどちらの回転方向へどの角度まで回転させて停止されたかを単位とする一連の操作」, を,補正後の請求項8における, 「情報処理装置に対して加えられる一連の操作であって,停止状態から開始し且つ表示画面の面に沿ったどちらの回転方向へどの角度まで回転させて停止されたかを単位とする一連の操作」, に補正し,補正前の請求項9における, 「情報処理装置に対して加えられる一連の操作であって,表示画面の面に沿ったどちらの回転方向へどの角度まで回転させて停止されたかを単位とする一連の操作」, を,補正後の請求項9における, 「情報処理装置に対して加えられる一連の操作であって,停止状態から開始し且つ表示画面の面に沿ったどちらの回転方向へどの角度まで回転させて停止されたかを単位とする一連の操作」, に補正するものであって,何れの補正内容も,上記引用の補正前の請求項各項における発明特定事項である「情報処理装置」に加えられる「操作」に対して,「停止状態から開始する」という限定事項を付加するものであり,当該限定事項は,願書に最初に添付された明細書(以下,「当初明細書」という)の段落【0028】における, 「ここでは,回転操作は,端末Tを机面に置くなど,一旦静止させた状態から(ステップS11:「YES」)開始するものとする」, という記載に基づくものであるから,本件手続補正は当初明細書の記載の範囲内でなされたものであり,特許法第17条の2第3項の規定を満たすものである。 そして,本件手続補正は限定的減縮を目的とするものであるから,特許法第17条の2第5項の規定を満たすものである。 そこで,本件手続補正が,特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定をみたすものであるか否か,即ち,補正後の請求項に記載されている事項により特定される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か,以下に検討する。 (1)本件補正発明 本件手続補正により補正された請求項1に係る発明(以下,これを「本件補正発明」という)は,上記「1.補正の内容」において,補正後の請求項1として引用した,次のとおりのものである。 「情報処理装置であって, その情報処理装置について,表示画面の面に沿った回転方向と,回転角度と,回転が停止したことを検出する検出手段と, その情報処理装置を,停止状態から開始し且つ予め定められた前記回転方向へ予め定められた角度まで回転させて停止させる操作を単位とする一連の操作が,予め定められた順序で前記検出手段により検出されたときに認証を肯定的と判定する認証判定手段と, を備え, 前記回転方向は,前記停止の直前に最後に回転していた回転方向である ことを特徴とする情報処理装置。」 (2)引用例に係る発明 原審が,平成25年12月16日付けの拒絶理由(以下,これを「原審拒絶理由」という)において引用した,「Unlock direction of PrivacySafe,2012年 8月23日,URL,http://www.youtube.com/watch?v=cOhKHp3xTog&feature=youtu.be」(以下,これを「引用例1」という)においては,次の事項が開示されている。 A.「 」 B.「 」 C.「 」 D.「 」 E.「 」 F.「 」 ア.上記Aに示された事項,及び,上記A?Fの「2012/08/23に公開」の欄の, 「あなたのプライバシーを守る,iPhoneアプリ「守秘金庫」の解錠方法のビデオです。」 という記載から,引用例1には,「プラバシーを守るための,iPhoneアプリ「守秘金庫」の解除方法」が示されていることが読み取れる。 イ.上記B?上記Dにおいて開示された内容,及び,上記アにおいて検討した事項から, 引用例1に開示された「iPhoneアプリ「守秘金庫」」における「加速度センサーモード」において,「iPhone」の画面上に,“金庫のダイアル”と,その上部に,“ハイフン”で結ばれた,4つの“四角”を表示させ,「iPhone」画面の左の“四角”に,「30」を入力する場合は,“ダイアルの上にある三角の印が30に一致するまで,右に傾け,次に左に傾ける”ことで,「30」の入力を実現していることことが読み取れる。 そして,前記「30」は,上記アにおいて検討したとおり「解錠方法」に関するものである以上,パスワード等を構成するものであることは明らかであるから,前記左の“四角”に予め割り当てられた数字であることも明らかである。 ウ.上記E,及び,上記Fに開示された内容,及び,上記アにおいて検討した事項から, 引用例1に開示された「iPhoneアプリ「守秘金庫」」における「加速度センサーモード」において,上記イにおいて検討した「30」の入力に引き続いて,左から二番目の“四角”に,「00」を入力する場合は,“左に傾けながら,三角の印を00に一致させ,次に,右に傾ける”ことで,「00」の入力を実現していることが読み取れ,上記イにおいて検討した事項と併せると,引用例1に, “ダイアル上に,四角に入力しようとする数字が記載されている方向に,該数字と,ダイアルの上にある三角の印と一致するまで傾け,一致したら逆の方向に傾けることで,前記四角に,前記数字を入力する”ことが示されていることが読み取れる。 エ.そして,上記B?上記Fに開示した範囲内には明示されてはいないが,引用例1において,引用例1の「iPhoneアプリ「守秘金庫」」は,4つの“四角”の全てに,予め割り当てられた数字が入力されたことを検出した場合に,「解錠」されるものであることが明示されており,(なお,上記B?上記Fに開示した操作内容からして,当該アプリが,4つの“四角”の全てに,予め割り当てられた数字が入力されることで,「解錠」が可能となる構成であることは,当業者であれば,容易に推察し得る範囲のものである),「iPhone」が,「スマートフォン」の一種であることは,当業者と言わず,広く一般にも知られた事項である。 以上ア?エにおいて検討した事項から,引用例1には,次の発明(以下,これを「引用発明」という)が開示されているものと認める。 スマートフォンにおいてプライバシーを守るためのアプリである守秘金庫の解錠方法であって, 前記アプリは,前記スマートフォンの画面上に,金庫のダイヤルと,その上部にハイフンで結ばれた四角を表示し, 加速度センサーモードにおいて,前記4つの四角の画面上最左端の四角に,前記四角に予め割り当てられた数字を入力する場合, 開始点から,ダイアル上の入力しようとする数字が記載されている方向に,ダイアルの上の三角の印と,前記ダイアル上に記載された数字とが一致するまで前記スマートフォンを傾け, 前記三角の印と,前記数字とが一致したとき,前記スマートフォンを逆方向に傾けることで,前記数字を前記四角に入力し, 順次前記操作を繰り返して,前記4つの四角のそれぞれに,予め割り当てられた数字を入力し,前記4つの四角に,前記予め割り当てられた数字が入力されことを検出することで,解錠を行う,解錠方法。 (3)本件補正発明と引用発明との対比 ア.引用発明において,「スマートフォン」は,“表示画面”を有し,当該「スマートフォン」の傾きを検出していることは明らかであるから,本件補正発明における「情報処理装置」に相当する。 イ.引用発明における「入力しようとする数字が記載されている方向」が,本件補正発明における「回転方向」に相当し, 引用発明における「数字」は,「ダイアル」に配置されたものであって,該「ダイアル」の“回転角度”に対応していることは明らかであるから,引用発明における「数字」は,本件補正発明における「回転角度」に相当する。 そして,引用発明における「スマートフォン」が,前記「入力しようとする数字が記載されている方向」,と,「数字」,即ち,「回転方向」と,「回転角度」を検出する機能を有することは明らかであるから,当該機能と,本件補正発明における, 「表示画面の面に沿った回転方向と,回転角度と,回転が停止したことを検出する検出手段」とは, “表示画面の面に沿った回転方向と,回転角度とを検出する手段”である点で共通する。 ウ.引用発明における「解錠」の条件は,「前記4つの四角に,前記予め割り当てられた数字が入力されことを検出すること」であり,前記「数字」の入力は,“予め割り当てられた数字に対応した回転方向と,回転角度と,回転方向の変化”を契機として行われるものであるから,引用発明においては,前記「数字」の入力は, “1つの数字の入力は,当該数字に対応した回転方向と,回転角度と,回転方向の変化を1つの単位として行われる一連の操作”と言い得るものである。 そして,前記「4つの四角」中のそれぞれに,「予め割り当てられた数字」が入力されたことを判定することは,前記「4つの四角」に,順次,正しい「数字」が入力されたことを判定すること,即ち,正しい順番で,前記「回転方向と,回転角度と,回転方向の変化」が,4回行われたことを判定することに他ならず, 引用発明において,“正しい順番で行われた結果,解錠する”ことは,本件補正発明における「認証を肯定的と判断する」ことに相当する。 そして,上記において検討したことから,引用発明においても,前記判定を行うための機能を有していることも明らかである。 したがって,上記において認定した引用発明における機能と, 本件補正発明における「情報処理装置を,停止状態から開始し且つ予め定められた角度まで回転させて停止させる操作を単位とする一連の操作が,予め定められた順序で前記検出手段により検出されたときに認証を肯定的と判定する認証判定手段」とは, “情報処理装置を,予め定められた角度まで回転させることを含む操作を単位とする一連の操作が,予め定められた順序で,検出する手段によって検出されたときに認証を肯定的と判定する手段”を有する点で共通する。 以上ア?ウにおいて検討した事項から,本件補正発明と,引用発明との一致点,及び,相違点は,次のとおりである。 [一致点] 情報処理装置であって, その情報処理装置について,表示画面の面に沿った回転方向と,回転角度とを検出する手段と, その情報処理装置を,予め定められた角度まで回転させることを含む操作を単位とする一連の操作が,予め定められた順序で,検出する手段によって検出されたときに認証を肯定的と判定する手段と, を備える情報処理装置。 [相違点1] “検出する手段”に関して, 本件補正発明においては,「回転が停止したことを検出する検出手段」であるのに対して, 引用発明においては,「回転が停止したことを検出」し得るかが不明である点。 [相違点2] “判定する手段”に関して, 本件補正発明においては,「その情報処理装置を,停止状態から開始し且つ予め定められた前記回転方向へ予め定められた角度まで回転させて停止させる操作を単位とする一連の操作が,予め定められた順序で前記検出手段により検出されたときに認証を肯定的と判定する」ものであるのに対して, 引用発明においては,「判定」の対象となる「一連の操作」に,「停止状態から開始」すること,及び,「回転方向」,並びに,「停止させる操作」とが含まれているか不明である点。 [相違点3] 本件補正発明においては,「検出手段」によって検出される“回転方向は,停止の直前に回転した回転方向である”のに対して, 引用発明においては,「数字が記載されている方向」を検出の対象としているか不明である点。 (4)相違点についての当審の判断 ア.[相違点1]について ユーザインターフェースにおいて,操作の停止を検出して値を入力することは,例えば,本願の出願前に既に公知である,特開2011-159227号公報(平成23年8月18日公開,以下,これを「周知例1」という)に, G.「【0046】 前記特徴量の算出は,撮影対象を色ごとに分離し,それぞれ予め設定した閾値で2値化した後,領域を形成し,領域の重心及び面積を特徴量として算出する。初期画像t0の特徴量は最初にまたは操作開始時に一度だけ算出して記録しておき,入力画像tの特徴量と比較する。または,利用者の回転操作が停止する都度,該停止位置の画像の特徴量を初期画像t0の特徴量として記録し,続いて入力してくる入力画像の特徴量と比較するようにしてもよい。」(下線は,当審にて,説明の都合上附加したものである。以下,同じ。) と記載され,或いは,パスワード入力との関連において,本願の出願前に既に公知である,特開平11-282757号公報(平成11年10月15日公開,以下,これを「周知例2」という)に, H.「【請求項10】 前記パスワードの入力が,機器本体に設けられた回転部の,その回転数値,回転方向,又は回転停止位置に連動してなされることを特徴とする請求項1記載の情報機器。」 と記載されてもいるように,本願の出願前に当業者には周知の技術事項であり,引用発明においても,回転方向の変化が検出されていることは明らかであって,引用発明と,周知例1,及び,周知例2とは,共に,ユーザインターフェースに関連する技術であり,更に,引用発明と周知例2とは,認証のための情報を入力するための技術である点でも共通しているので,引用発明において,回転方向の変化の検出に換えて,回転の停止を検出するよう構成することは,周知の技術事項からみて,当業者が適宜なし得る事項である。 よって,相違点1は,格別のものではない。 イ.[相違点2],及び,[相違点3]について 上記アにおいて引用した周知例1,或いは,周知例2にあるように,停止を検出してその時点の値の入力等を行うこと自体は,本願の出願前に当業者には周知の技術事項である。 このような操作を連続して行う場合,次の操作の起点を,前回の停止位置にする構成を含むことは明らかである。 引用発明においては,次の操作の起点は,回転方向の変化が生じた時点と解されるが,上記アにおいて検討したことを踏まえると,回転方向の変化に換えて,回転方向の変化の際の停止を検出して,次の処理の開始を検出する構成を採用することは,当業者が適宜なし得る事項である。 「回転方向」を考慮する点については,原審拒絶理由に引用された,本願の出願前に既に公知である,特開2012-033086号公報(平成24年2月16日公開,以下,これを「引用例2」という)に, I.「【0026】 また,図2(a)及び(b)において,46は確定ボタンを示している。ユーザが,選択対象となる文字の目盛にダイヤル40の印43を合わせ,選択対象となる全ての文字の選択の終了後に,確定ボタン46を押下すると,入力が確定する。なお,図2の例では,ダイヤル40の回転位置は26個に設定されているが,本実施の形態はこれに限定されるものではない。更に,割り当てられる文字の種類も,限定されず,例えば,絵文字,記号等であっても良い。 ・・・・・(中略)・・・・・ 【0028】 更に,本実施の形態では,検出部12は,文字の選択が初めて行われる場合は,予め設定された回転位置(以下「初期位置」とする。)から選択対象となる文字の回転位置までにおけるダイヤル40の回転量及び回転方向を検出する。また,検出部12は,文字の選択が初めてでない場合は,直前に選択された文字の回転位置から選択対象となる文字の回転位置までにおけるダイヤル40の回転量及び回転方向を検出する。 【0029】 例えば,図2(a)に示すように,初期位置が,「D」が割り当てられた回転位置であり,最初の選択対象が「T」であるとすると,検出部12は,回転方向として「反時計回り」を検出し,回転量として「10目盛」を検出する。そして,「T」の後に,「A」が選択されるとすると,「T」が割り当てられた回転位置を基準にして,検出部12は,回転方向として「時計回り」を検出し,回転量として「7目盛」を検出する。」 と記載されていて,引用例2における「直前に選択された文字の回転位置」は,“前回の停止位置”に他ならないので,引用例2の,「直前に選択された文字の回転位置から選択対象となる文字の回転位置までにおけるダイヤル40の回転量及び回転方向を検出する」ことにおける「回転方向」は,最新の回転方向(本件補正発明における最後に回転した回転方向に相当)であることは明らかであって,この前記最新の回転方向が,本件補正発明における最後に回転した回転方向に相当する。 そして,引用例2に係る発明も, J.「【0009】 上記目的を達成するため,本発明の一側面における認証サーバは, 回転位置に応じて文字を選択可能なダイヤルを有し,前記ダイヤルによっていずれかの文字が選択されると,選択された文字毎に,前記ダイヤルにおける回転量及び回転方向を検出し,文字毎に検出された前記回転量及び前記回転方向を,認証情報として送信する,認証情報入力装置を対象として,認証を行う,認証部を備え, 前記認証部は,前記認証情報入力装置が,前記認証情報を送信すると,前記認証情報に基づいて,選択された文字で構成された文字列が,予め設定されたパスワードと一致するかどうかを判定し,一致する場合に認証を認める, ことを特徴とする。」 と記載されていて,引用発明と共通の技術分野に属するものであるから,引用発明において,一連の操作として検出する対象として,引用例2に係る発明における“最新の回転方向”を導入するよう構成することは当業者が適宜なし得る事項である。 よって,相違点2,及び,相違点3は格別のものではない。 上記で検討したごとく,相違点1?相違点3はいずれも格別のものではなく,そして,本件補正発明の構成によってもたらされる効果も,当業者であれば容易に予測できる程度のものであって,格別なものとは認められない。 よって,本件補正発明は,引用発明,引用例2に係る発明,及び,当該技術分野における周知技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるので,特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。 3.補正却下むすび したがって,本件手続補正は,特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので,同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 よって,補正却下の決定の結論のとおり決定する。 第3.本願発明について 平成26年6月27日付けの手続補正は,上記のとおり却下されたので,本願の請求項1に係る発明(以下,これを「本願発明」という)は,平成26年2月21日付けの手続補正により補正された,上記「第2.平成26年6月27日付けの手続補正の却下の決定」の「1.補正の内容」において,補正前の請求項1として引用した,次のとおりのものである。 「情報処理装置であって, その情報処理装置について,表示画面の面に沿った回転方向と,回転角度と,回転が停止したことを検出する検出手段と, その情報処理装置を予め定められた前記回転方向へ予め定められた角度まで回転させて停止させる操作を単位とする一連の操作が,予め定められた順序で前記検出手段により検出されたときに認証を肯定的と判定する認証判定手段と, を備え, 前記回転方向は,前記停止の直前に最後に回転していた回転方向である ことを特徴とする情報処理装置。」 第4.引用例に係る発明 一方,上記「第2.平成26年6月27日付けの手続補正の却下の決定」の「2.補正の適否」における「(2)引用例に係る発明」において引用例1とした,原審拒絶理由の引用された「「Unlock direction of PrivacySafe,2012年 8月23日,URL,http://www.youtube.com/watch?v=cOhKHp3xTog&feature=youtu.be」には,上記「第2.平成26年6月27日付けの手続補正の却下の決定」の「2.補正の適否」における「(2)引用例に係る発明」において指摘したとおり,次の引用発明が開示されているものと認める。 スマートフォンにおいてプライバシーを守るためのアプリである守秘金庫の解錠方法であって, 前記アプリは,前記スマートフォンの画面上に,金庫のダイヤルと,その上部にハイフンで結ばれた四角を表示し, 加速度センサーモードにおいて,前記4つの四角の画面上最左端の四角に,前記四角に予め割り当てられた数字を入力する場合, 開始点から,ダイアル上の入力しようとする数字が記載されている方向に,ダイアルの上の三角の印と,前記ダイアル上に記載された数字とが一致するまで前記スマートフォンを傾け, 前記三角の印と,前記数字とが一致したとき,前記スマートフォンを逆方向に傾けることで,前記数字を前記四角に入力し, 順次前記操作を繰り返して,前記4つの四角のそれぞれに,予め割り当てられた数字を入力し,前記4つの四角に,前記予め割り当てられた数字が入力されことを検出することで,解錠を行う,解錠方法。 第5.本願発明と引用発明との対比 本願発明は,上記「第2.平成26年6月27日付けの手続補正の却下の決定」の「2.補正の適否」において検討した本件補正発明から,「停止状態から開始し且つ」という限定事項を取り除いたものであるから,上記「第2.平成26年6月27日付けの手続補正の却下の決定」の「2.補正の適否」における「(3)本件補正発明と引用発明との対比」においての検討事項を踏まえると, 本願発明と,引用発明との,一致点,及び,相違点は,次のとおりである。 [一致点] 情報処理装置であって, その情報処理装置について,表示画面の面に沿った回転方向と,回転角度とを検出する手段と, その情報処理装置を,予め定められた角度まで回転させることを含む操作を単位とする一連の操作が,予め定められた順序で,検出する手段によって検出されたときに認証を肯定的と判定する手段と, を備える情報処理装置。 [相違点a] “検出する手段”に関して, 本願発明においては,「回転が停止したことを検出する検出手段」であるのに対して, 引用発明においては,「回転が停止したことを検出」し得るかが不明である点。 [相違点b] “判定する手段”に関して, 本願発明においては,「その情報処理装置を,予め定められた前記回転方向へ予め定められた角度まで回転させて停止させる操作を単位とする一連の操作が,予め定められた順序で前記検出手段により検出されたときに認証を肯定的と判定する」ものであるのに対して, 引用発明においては,「判定」の対象となる「一連の操作」に,「回転方向」,並びに,「停止させる操作」とが含まれているか不明である点。 [相違点c] 本願発明においては,「検出手段」によって検出される“回転方向は,停止の直前に回転した回転方向である”のに対して, 引用発明においては,「数字が記載されている方向」,即ち,「回転方向」を検出の対象としているか不明である点。 第6.相違点についての当審の判断 本願発明と,引用発明との[相違点a],及び,[相違点b],並びに,[相違点c]は,本件補正発明と,引用発明との[相違点1],及び,[相違点2],並びに,[相違点3]と,ほぼ同じものであるから,上記「第2.平成26年6月27日付けの手続補正の却下の決定」の「2.補正の適否」における「(4)相違点についての当審の判断」において検討したとおり格別のものではない。 そして,本願発明の構成によってもたらされる効果も,引用発明から当業者ならば容易に予測することができる程度のものであって,格別のものとはいえない。 第7.むすび したがって,本願発明は,本願の特許出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるので,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって,結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2015-04-20 |
結審通知日 | 2015-04-21 |
審決日 | 2015-06-03 |
出願番号 | 特願2012-208780(P2012-208780) |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(G06F)
P 1 8・ 121- Z (G06F) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 久慈 渉、脇岡 剛 |
特許庁審判長 |
辻本 泰隆 |
特許庁審判官 |
石井 茂和 田中 秀人 |
発明の名称 | 情報処理装置、方法及びコンピュータプログラム |
代理人 | 酒井 宏明 |
代理人 | 中嶋 裕昭 |