• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1303244
審判番号 不服2014-16435  
総通号数 189 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-09-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-08-20 
確定日 2015-07-16 
事件の表示 特願2009-179680「固体撮像装置、および、その製造方法、電子機器」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 2月17日出願公開、特開2011- 35154〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由
第1.手続の経緯
本願は、平成21年7月31日の出願であって、平成25年10月15日付けの拒絶理由通知に対して、同年12月24日に意見書及び手続補正書が提出されたが、平成26年5月12日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年8月20日に拒絶査定を不服とする審判の請求がなされたものである。

第2.本願発明に対する判断
1.本願発明
本願の請求項1ないし請求項13に係る発明は、平成25年12月24日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲、明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし請求項13に記載されている事項によって特定されるものであって、そのうちの、請求項11に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。

「半導体基板において撮像面に形成されている複数の光電変換部と、
前記複数の光電変換部にて生成された信号電荷を読み出すために前記撮像面に形成されている複数の画素トランジスタと、
前記撮像面において、前記複数の光電変換部の間に配置される不純物拡散領域と、該不純物拡散領域上を覆い、前記光電変換部の形成領域および前記複数の画素トランジスタの形成領域を開口する素子分離絶縁膜と含む素子分離部と、
前記不純物拡散領域へ入射する光を遮光する、前記素子分離絶縁膜上の遮光部と、
を有し、
前記遮光部は、前記複数の画素トランジスタの各形成領域上にゲート絶縁膜を介して積層される複数のゲート電極のいずれかと連結されている、
固体撮像装置。」

2.引用例の記載事項と引用発明
(1)引用例の記載事項
本願の出願前に日本国内において頒布され、原査定の根拠となった拒絶理由に引用された刊行物である、特開2006-216616号公報(以下、「引用例」という。)には、「半導体装置とその製造方法、並びに固体撮像素子とその製造方法」(発明の名称)に関して、図1?図11とともに、以下の事項が記載されている(下線は、参考のため、当審において付したものである。以下、他の刊行物について同じ。)。

a.「【0046】
図1A?Cに、本発明に係る半導体装置の一実施の形態を示す。本実施の形態はMOSトランジスタを有する半導体集積回路に適用した例である。
本実施の形態に係る半導体装置21は、第1導電型、p型半導体基板22の一主面に同導電型で基板濃度より高濃度のp型不純物領域による素子分離領域23が形成され、この素子分離領域23に囲まれた2つの領域内にそれぞれn型のソース・ドレイン領域24と、ゲート絶縁膜26、例えばポリシリコンからなるゲート電極27及びゲート電極27の側壁に形成した絶縁膜からなるサイドウォール28とからなるゲート制御部25とを有したnチャンネル型のMOSトランジスタTr1 ,Tr2 が形成され、さらに素子分離領域23に対応した基板上に、イオン注入阻止用マスク29が残存して成る。
【0047】
このイオン注入阻止用マスク29は、基板22上に形成されている半導体素子の構成要素と同じ構成で形成される。すなわち、本実施の形態ではMOSトランジスタTr1 ,Tr2 のゲート制御部25と同じ構成のゲート絶縁膜26、ゲート電極27及びサイドウォール28からなる構成でイオン注入阻止用マスク29が形成される。」

b.「【0065】
次に、図5及び図6用いて本発明に係る半導体装置の製造方法の一実施の形態を説明する。なお、本実施の形態は前述した図1の半導体装置の製造に適用した製法である。
【0066】
先ず、図5Aに示すように、第1導電型、例えばp型のシリコン半導体基板22を設け、この半導体基板22の一主面上にレジストマスク41を介してp型不純物42、例えばボロン(B)をイオン注入してp型不純物による素子分離領域23を形成する。
【0067】
次に、図5Bに示すように、半導体基板22の一主面の全面にゲート絶縁膜26及びゲート電極となる例えばポリシリコン膜43を成膜する。
【0068】
次に、図5Cに示すように、レジストマスク(図示せず)を介してゲート絶縁膜26及びポリシリコン膜43をパターニングし、素子分離領域23で囲まれた2つの領域上にそれぞれゲート絶縁膜26とその上のゲート電極27を形成すると共に、素子分離領域23上に対応してイオン注入阻止用マスクを形成すべき領域に同じくゲート絶縁膜26及びゲート電極27を形成する。
【0069】
次に、図6Dに示すように、ゲート電極27上を覆うように基板上の全面に例えばシリコン酸化膜等の絶縁膜44を例えばCVD(化学気相成長)法で成膜する。
【0070】
次に、絶縁膜44をエッチバックして、図6Eに示すように、ゲート電極27の側面に絶縁膜44によるサイドウォール28を形成する。すなわち、素子分離領域23内ではゲート絶縁膜26とゲート電極27とサイドウォール28によるゲート制御部25を形成する。また、素子分離領域23上にはゲート制御部25と同じ構成となるゲート絶縁膜26とゲート電極27とサイドウォール28によるイオン注入阻止用マスク29を形成する。」

c.「【0076】
上述した本実施の形態に係るイオン注入阻止用マスクは、CMOS固体撮像素子に適用することができる。図7は、本発明に係るCMOS固体撮像素子における画素領域のレイアウトの一実施の形態を示す。
本実施の形態のCMOS固体撮像素子51は、光電変換部となるフォトレジストPDと、複数のMOSトランジスタとで単位画素52〔52A,52B,52C,52D〕を形成し、複数の単位画素52が規則的に配列して、例えばマトリクス状に配列して構成される。単位画素52は、例えば1つのフォトダイオードPDと3つのMOSトランジスタ、すなわち転送トランジスタ、リセットトランジスタ、増幅トランジスタで構成される。転送トランジスタTr4は、フォトダイオードPDの電荷蓄積領域とフローティング・ディフージョン(FD)となるソース・ドレイン領域54とゲート絶縁膜を介して形成された転送ゲート電極55とで形成される。リセットトランジスタTr5は、一対のソース・ドレイン領域54及び56とゲート絶縁膜を介して形成されたリセットゲート電極57とで形成される。増幅トランジスタTr6は、ソース・ドレイン領域56及び58とゲート絶縁膜を介して形成されたゲート電極59とで形成される。垂直方向に配列された各画素の増幅トランジスタTr6の一方のソース・ドレイン領域58には垂直信号線60が接続され、リセットトランジスタTr5 の一方のソース・ドレイン領域56には電源電圧Vddを供給する電源線61が接続される。各画素52〔52A,52B.52C,52D〕の相互間は斜線で示す素子分離領域63により分離される。
【0077】
本実施の形態に係るCMOS固体撮像素子51においては、素子分離領域63を所要の導電型、例えばp型の不純物領域で形成されると共に、素子分離領域63の全域あるいは所要領域上にMOSトランジスタTr4 ?Tr6 におけるゲート制御部(ゲート絶縁膜、ゲート電極、サイドウォールなどからなる)と同じ構成によるイオン注入阻止用マスクが形成される。この場合、イオン注入阻止用マスクは、各MOSトランジスタTr4 ?Tr6 のゲート制御部と分離して形成してもよい。あるいはイオン注入阻止用マスクを所要のMOSトランジスタのゲート制御部と一体的に連続して形成するようにしてもよい。
【0078】
本例では、図7に示すように、増幅トランジスタTr6のゲート制御部(図ではゲート電極59のみを示す)を、隣接する画素の増幅トランジスタTr6のソース・ドレイン領域58と転送トランジスタTr4のソース・ドレイン領域54(fd)間に位置するようにゲート制御部を含めたコ字型に素子分離領域63上に延長して、この延長部をイオン注入阻止用マスク64として構成する。この場合、その他の素子分離領域63上は例えばシリコン酸化膜やシリコン窒化膜などの絶縁膜、あるいは従来のレジストマスク等によるイオン注入阻止用マスクを形成することもできる。このイオン注入阻止用マスクとMOSトランジスタのゲート制御部とフォトダイオードPDを覆うレジストマスクとをマスクに、各MOSトランジスタの第2導電型、例えばn型のソース・ドレイン領域54、57、58をイオン注入により形成する。また、このイオン注入阻止用マスクとMOSトランジスタを覆うレジストマスクと、転送トランジスタTr6のゲート制御部とをマスクに、フォトダイオードPDを構成する所要導電型の半導体領域をイオン注入により形成する。
……(中略)……
【0080】
この技術を用いることによって、ソース・ドレイン領域のイオン注入マージンを確保しながら、素子分離を形成することができる。この効果は、増幅トランジスタのゲート制御部を延長した構成に限らず、後述する図8?図10の実施の形態のイオン注入阻止用マスクにおいても、同様に奏する。
【0081】
特に、画素の微細化、高集積化に伴い画素間の素子分離領域63の幅を狭くしたとき、すなわちレジストマスクの微細化の限度を超えるような狭さとしたときにも、イオン注入阻止用マスクを形成することができる。そして、イオン注入阻止用マスクがゲート制御部と同じ構成であるので、マスクに対してイオン注入を阻止するに十分な能力を持たせることができ、且つマスクずれを生じることもない。従って、従来のレジストマスクの場合のようなマスクずれで起こる素子分離能力の低下を防止することができる。
【0082】
また、このイオン注入阻止用マスクは、最終的にCMOS固体撮像素子内に残存させるので、イオン注入阻止用マスクを除去する工程が省略され、製造工程の簡素化を図ることができる。CMOS固体撮像素子の製造に際してのイオン注入阻止用マスクとして、本実施の形態のゲート制御部と同じ構成によるイオン注入阻止用マスクと、従来のレジストマスクによるイオン注入阻止用マスクとを併用することもできる。しかし、レイアウトによっては、レジストマスクによるイオン注入阻止用マスクを不要とすることができ、その分、工程を削減することができる。」

d.「【0086】
図9は本発明に係るCMOS固体撮像素子における画素領域のレイアウトの更に他の実施の形態を示す。本実施の形態のCMOS固体撮像素子67は、素子分離領域63を所要の導電型、例えばp型の不純物領域で形成されると共に、素子分離領域63の全域上にMOSトランジスタTr4?Tr6におけるゲート制御部と同じ構成によるイオン注入阻止用マスク64が形成される。この場合、イオン注入阻止用マスク64は、転送トランジスタTr4のゲート制御部(図ではゲート電極55のみを示す)より延長して形成され、かつ各画素ごとに分割して形成される。
その他の構成は、前述の図7と同様であるので対応する部分に同一符号を付して重複説明を省略する。
【0087】
本実施の形態のCMOS固体撮像素子67によれば、素子分離領域63の全域上に転送トランジスタTr4のゲート制御部と同じ構成のイオン注入阻止用マスク64が形成されることにより、ソース・ドレイン領域58をイオン注入で形成するとき、また、フォトダイオードPDの所要導電型の半導体領域を形成するとき、素子分離領域63には不純物がイオン注入されることがない。このため、素子分離領域63の分離能力を維持することができる。
素子分離領域63上に配置スルイオン注入阻止用マスク64を、転送トランジスタTr4のゲート制御部と共用することにより、フローティングディフージョン領域FDに信号蓄積時、そのゲートに負電圧を印加することで、さらにブルーミング耐性が強化される。
その他、図7のCMOS固体撮像素子で説明したと同様の効果を奏する。」

e.「【0091】
また、本発明に係るCMOS固体撮像素子の製造方法の実施の形態としては、前述した半導体装置の製造方法と同様な工程を有して行われる。
本実施の形態のCMOS固体撮像素子の製造方法においても、素子分離領域の微細化に伴う微細化されたイオン注入阻止用マスクの形成を可能にすること、ソース・ドレイン領域のイオン注入工程での素子分離領域の分離能力低下を回避できること、工程削減を可能にすること等、前述の半導体装置の製造方法と同様の効果を奏する。」

f.「A,B及びC 本発明に係る半導体装置の一実施の形態を示す平面図、そのAーA線上の断面図及びBーB線上の断面図」である図1、「A?C 本発明に係る半導体装置の製造方法の一実施の形態を示す製造工程図(その1)」である図5には、イオン注入阻止用マスク29を構成するゲート絶縁膜26上にゲート電極27を形成すること、及び、トランジスタのゲート制御部25を構成するゲート絶縁膜26上にゲート電極27を形成することが示されている。

g.「本発明に係るCMOS固体撮像素子の画素領域のレイアウトに更に他の実施の形態を示す要部の平面図」である図9には、フォトダイオードPDとフォトダイオードPDの間に素子分離領域63を設けることが示されている。

(2)引用発明
ア.引用例の段落【0086】の「本実施の形態のCMOS固体撮像素子67は、素子分離領域63を所要の導電型、例えばp型の不純物領域で形成されると共に、素子分離領域63の全域上にMOSトランジスタTr4?Tr6におけるゲート制御部と同じ構成によるイオン注入阻止用マスク64が形成される。この場合、イオン注入阻止用マスク64は、転送トランジスタTr4のゲート制御部(図ではゲート電極55のみを示す)より延長して形成され、かつ各画素ごとに分割して形成される。」という記載から、「CMOS固体撮像素子67」の同一面に、「素子分離領域63」と、「イオン注入阻止用マスク64」と、「転送トランジスタTr4」とを形成することは明らかである。
また段落【0087】の「本実施の形態のCMOS固体撮像素子67によれば、素子分離領域63の全域上に転送トランジスタTr4のゲート制御部と同じ構成のイオン注入阻止用マスク64が形成されることにより、ソース・ドレイン領域58をイオン注入で形成するとき、また、フォトダイオードPDの所要導電型の半導体領域を形成するとき、素子分離領域63には不純物がイオン注入されることがない。」という記載から、「CMOS固体撮像素子67」の同一面に、「素子分離領域63」と、「イオン注入阻止用マスク64」と、「フォトダイオードPD」とを形成することは明らかである。
また段落【0066】の「この半導体基板22の一主面上にレジストマスク41を介してp型不純物42、例えばボロン(B)をイオン注入してp型不純物による素子分離領域23を形成する。」という記載、段落【0091】の「また、本発明に係るCMOS固体撮像素子の製造方法の実施の形態としては、前述した半導体装置の製造方法と同様な工程を有して行われる。」という記載から、引用例には、「半導体基板」の「一主面上」に「素子分離領域」を形成することが記載されている。
以上をまとめると、引用例には、「半導体基板」の「一主面上」に、「素子分離領域63」と、「イオン注入阻止用マスク64」と、「転送トランジスタTr4」と、「フォトダイオードPD」とを形成することが記載されている。

イ.上記アから、引用例には、「半導体基板」の「一主面上」に「フォトダイオードPD」を形成することが記載されている。
また引用例の段落【0076】の「本実施の形態のCMOS固体撮像素子51は、光電変換部となるフォトレジストPDと、複数のMOSトランジスタとで単位画素52〔52A,52B,52C,52D〕を形成し、複数の単位画素52が規則的に配列して、例えばマトリクス状に配列して構成される。単位画素52は、例えば1つのフォトダイオードPDと3つのMOSトランジスタ、すなわち転送トランジスタ、リセットトランジスタ、増幅トランジスタで構成される。」という記載、段落【0086】の「その他の構成は、前述の図7と同様であるので対応する部分に同一符号を付して重複説明を省略する。」という記載から、引用例には、「複数」の「フォトダイオードPD」を形成することが記載されている。
以上をまとめると、引用例には、「半導体基板」の「一主面上」に形成される「複数」の「フォトダイオードPD」が記載されている。

ウ.上記アから、引用例には、「半導体基板」の「一主面上」に「転送トランジスタTr4」を形成することが記載されている。
また引用例の段落【0076】の「本実施の形態のCMOS固体撮像素子51は、光電変換部となるフォトレジストPDと、複数のMOSトランジスタとで単位画素52〔52A,52B,52C,52D〕を形成し、複数の単位画素52が規則的に配列して、例えばマトリクス状に配列して構成される。単位画素52は、例えば1つのフォトダイオードPDと3つのMOSトランジスタ、すなわち転送トランジスタ、リセットトランジスタ、増幅トランジスタで構成される。」という記載、段落【0086】の「その他の構成は、前述の図7と同様であるので対応する部分に同一符号を付して重複説明を省略する。」という記載から、引用例には、「複数」の「転送トランジスタ」を形成することが記載されている。
また段落【0076】の「転送トランジスタTr4は、フォトダイオードPDの電荷蓄積領域とフローティング・ディフージョン(FD)となるソース・ドレイン領域54とゲート絶縁膜を介して形成された転送ゲート電極55とで形成される。」という記載から、引用例には、「フォトダイオードPD」の「電荷蓄積領域」と「フローティング・ディフージョン(FD)」となる「ソース・ドレイン領域54」と「ゲート絶縁膜」を介して形成された「転送ゲート電極55」とで形成される「転送トランジスタTr4」が記載されている。
以上をまとめると、引用例には、「半導体基板」の「一主面上」に形成され、「フォトダイオードPD」の「電荷蓄積領域」と「フローティング・ディフージョン(FD)」となる「ソース・ドレイン領域54」と「ゲート絶縁膜」を介して形成された「転送ゲート電極55」とで形成される「複数」の「転送トランジスタTr4」が記載されている。

エ.上記アから、引用例には、「半導体基板」の「一主面上」に「素子分離領域63」を形成することが記載されている。
また引用例の段落【0086】の「本実施の形態のCMOS固体撮像素子67は、素子分離領域63を所要の導電型、例えばp型の不純物領域で形成されると共に、」という記載から、引用例には、「素子分離領域63」は「p型の不純物領域」で形成されることが記載されている。
また前記gで指摘した図9の図示態様から、引用例には、「フォトダイオードPDとフォトダイオードPDの間」に「素子分離領域63」を設けることが記載されている。
以上をまとめると、引用例には、「半導体基板」の「一主面上」に形成され、「フォトダイオードPDとフォトダイオードPDの間」に設けられる、「p型の不純物領域」で形成される「素子分離領域63」が記載されている。

オ.上記アから、引用例には、「半導体基板」の「一主面上」に「イオン注入阻止用マスク64」を形成することが記載されている。
また段落【0086】の「素子分離領域63の全域上にMOSトランジスタTr4?Tr6におけるゲート制御部と同じ構成によるイオン注入阻止用マスク64が形成される。」という記載から、引用例には、「素子分離領域63」の「全域上」に、「ゲート制御部」と同じ構成による「イオン注入阻止用マスク64」を形成することが記載されている。
また段落【0087】の「本実施の形態のCMOS固体撮像素子67によれば、素子分離領域63の全域上に転送トランジスタTr4のゲート制御部と同じ構成のイオン注入阻止用マスク64が形成されることにより、ソース・ドレイン領域58をイオン注入で形成するとき、また、フォトダイオードPDの所要導電型の半導体領域を形成するとき、素子分離領域63には不純物がイオン注入されることがない。」という記載から、「イオン注入阻止用マスク64」は、「フォトダイオードPD」が形成される「半導体領域」に開口を有することは明らかである。
また引用例の段落【0047】の「本実施の形態ではMOSトランジスタTr1 ,Tr2 のゲート制御部25と同じ構成のゲート絶縁膜26、ゲート電極27及びサイドウォール28からなる構成でイオン注入阻止用マスク29が形成される。」という記載、段落【0076】の「上述した本実施の形態に係るイオン注入阻止用マスクは、CMOS固体撮像素子に適用することができる。」という記載から、「イオン注入阻止用マスク」は、「ゲート絶縁膜」、「ゲート電極」及び「サイドウォール」から構成されることが記載されている。
以上をまとめると、引用例には、「半導体基板」の「一主面上」に形成され、「素子分離領域63」の「全域上」に形成され、「フォトダイオードPD」が形成される「半導体領域」に開口を有する「イオン注入阻止用マスク64」を構成する「ゲート絶縁膜」、「ゲート電極」及び「サイドウォール」が記載されている。
すなわち、引用例には、「半導体基板」の「一主面上」に形成され、「素子分離領域63」の「全域上」に形成され、「フォトダイオードPD」が形成される「半導体領域」に開口を有する「イオン注入阻止用マスク64」を構成する「ゲート絶縁膜」が記載されている。

カ.段落【0086】の「素子分離領域63の全域上にMOSトランジスタTr4?Tr6におけるゲート制御部と同じ構成によるイオン注入阻止用マスク64が形成される。」という記載から、引用例には、「素子分離領域63」の「全域上」に、「ゲート制御部」と同じ構成による「イオン注入阻止用マスク64」を形成することが記載されている。
また引用例の段落【0047】の「本実施の形態ではMOSトランジスタTr1 ,Tr2 のゲート制御部25と同じ構成のゲート絶縁膜26、ゲート電極27及びサイドウォール28からなる構成でイオン注入阻止用マスク29が形成される。」という記載、段落【0076】の「上述した本実施の形態に係るイオン注入阻止用マスクは、CMOS固体撮像素子に適用することができる。」という記載から、「イオン注入阻止用マスク」は、「ゲート絶縁膜」、「ゲート電極」及び「サイドウォール」から構成されることが記載されている。
また前記fで指摘した図1、図5の図示態様から、引用例には、「イオン注入阻止用マスク」を構成する「ゲート絶縁膜上」に「ゲート電極」を形成することが記載されている。
また段落【0046】の「ゲート絶縁膜26、例えばポリシリコンからなるゲート電極27及びゲート電極27の側壁に形成した絶縁膜からなるサイドウォール28とからなるゲート制御部25とを有したnチャンネル型のMOSトランジスタTr1 ,Tr2 が形成され、」という記載、段落【0047】の「本実施の形態ではMOSトランジスタTr1 ,Tr2 のゲート制御部25と同じ構成のゲート絶縁膜26、ゲート電極27及びサイドウォール28からなる構成でイオン注入阻止用マスク29が形成される。」という記載、段落【0076】の「上述した本実施の形態に係るイオン注入阻止用マスクは、CMOS固体撮像素子に適用することができる。」という記載から、引用例には、「ポリシリコン」からなる「ゲート電極」で「イオン注入阻止用マスク」を構成することが記載されている。
以上をまとめると、引用例には、「素子分離領域63」の「全域上」に形成される「イオン注入阻止用マスク64」を構成する「ゲート絶縁膜」、「サイドウォール」、及び、「ゲート電極」であって、「ゲート電極」は「イオン注入阻止用マスク64」を構成する「ゲート絶縁膜上」に形成され、「ポリシリコン」からなることが記載されている。
すなわち、引用例には、「素子分離領域63」の「全域上」に形成される「イオン注入阻止用マスク64」を構成する「ゲート電極」であって、「イオン注入阻止用マスク64」を構成する「ゲート絶縁膜上」に形成され、「ポリシリコン」からなる「ゲート電極」が記載されている。

キ.引用例の段落【0047】の「本実施の形態ではMOSトランジスタTr1 ,Tr2 のゲート制御部25と同じ構成のゲート絶縁膜26、ゲート電極27及びサイドウォール28からなる構成でイオン注入阻止用マスク29が形成される。」という記載、段落【0076】の「上述した本実施の形態に係るイオン注入阻止用マスクは、CMOS固体撮像素子に適用することができる。」という記載、段落【0086】の「本実施の形態のCMOS固体撮像素子67は、素子分離領域63を所要の導電型、例えばp型の不純物領域で形成されると共に、素子分離領域63の全域上にMOSトランジスタTr4?Tr6におけるゲート制御部と同じ構成によるイオン注入阻止用マスク64が形成される。この場合、イオン注入阻止用マスク64は、転送トランジスタTr4のゲート制御部(図ではゲート電極55のみを示す)より延長して形成され、かつ各画素ごとに分割して形成される。」という記載から、引用例には、「素子分離領域63」の「全域上」に形成される「イオン注入阻止用マスク64」を構成する、「ゲート絶縁膜」、「ゲート電極」及び「サイドウォール」は、「転送トランジスタTr4」の「ゲート絶縁膜」、「ゲート電極55」及び「サイドウォール」より延長して形成されることが記載されている。
すなわち、引用例には、「素子分離領域63」の「全域上」に形成される「イオン注入マスク64」を構成する「ゲート電極」は、「転送トランジスタTr4」の「ゲート電極55」より延長して形成されることが記載されている。
また前記fで指摘した図1、図5の図示態様と、段落【0076】の「転送トランジスタTr4は、フォトダイオードPDの電荷蓄積領域とフローティング・ディフージョン(FD)となるソース・ドレイン領域54とゲート絶縁膜を介して形成された転送ゲート電極55とで形成される。」という記載から、引用例には、「転送トランジスタTr4」を構成する「ゲート絶縁膜上」に「転送ゲート電極55」を形成することが記載されている。
以上をまとめると、引用例には、「素子分離領域63」の「全域上」に形成される「イオン注入阻止用マスク64」を構成する「ゲート電極」は、「転送トランジスタTr4」を構成する「ゲート絶縁膜上」に形成された「転送トランジスタTr4」の「転送ゲート電極55」より延長して形成されていることが記載されている。

ク.以上のア?キの開示内容を総合すると、引用例には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

「半導体基板の一主面上に形成される複数のフォトダイオードPDと、
前記半導体基板の一主面上に形成され、前記フォトダイオードPDの電荷蓄積領域とフローティング・ディフージョン(FD)となるソース・ドレイン領域54とゲート絶縁膜を介して形成された転送ゲート電極55とで形成される複数の転送トランジスタTr4と、
前記半導体基板の一主面上に形成され、前記フォトダイオードPDと前記フォトダイオードPDの間に設けられる、p型の不純物領域で形成される素子分離領域63と、
前記半導体基板の一主面上に形成され、前記素子分離領域63の全域上に形成され、前記フォトダイオードPDが形成される半導体領域に開口を有するイオン注入阻止用マスク64を構成するゲート絶縁膜と、
前記素子分離領域63の全域上に形成される前記イオン注入阻止用マスク64を構成するゲート電極であって、前記イオン注入阻止用マスク64を構成する前記ゲート絶縁膜上に形成され、ポリシリコンからなるゲート電極と、
前記素子分離領域63の全域上に形成される前記イオン注入阻止用マスク64を構成する前記ゲート電極は、前記転送トランジスタTr4を構成する前記ゲート絶縁膜上に形成された前記転送トランジスタTr4の前記転送ゲート電極55より延長して形成されている
CMOS固体撮像素子67。」

3.対比
(1)本願発明と引用発明との対比
本願発明と引用発明とを対比する。

ア.引用発明における「一主面」は「CMOS固体撮像素子67」の「複数のフォトダイオードPD」が形成される面であるから、「一主面」が撮像面であることは明らかである。
したがって、引用発明における「一主面」は本願発明における「撮像面」に相当し、引用発明における「半導体基板の一主面上に形成される複数のフォトダイオードPD」は、本願発明における「半導体基板において撮像面に形成されている複数の光電変換部」に相当する。

イ.引用発明における「前記フォトダイオードPDの電荷蓄積領域とフローティング・ディフージョン(FD)となるソース・ドレイン領域54とゲート絶縁膜を介して形成された転送ゲート電極55とで形成される複数の転送トランジスタTr4」とは、「フォトダイオードPDの電荷蓄積領域」に蓄積された電荷を「フローティング・ディフージョン(FD)となるソース・ドレイン領域54」に読み出すものであることは自明である。
また上記アから、引用発明における「一主面」は本願発明における「撮像面」に相当する。
したがって、引用発明における「前記半導体基板の一主面上に形成され、前記フォトダイオードPDの電荷蓄積領域とフローティング・ディフージョン(FD)となるソース・ドレイン領域54とゲート絶縁膜を介して形成された転送ゲート電極55とで形成される複数の転送トランジスタTr4」は、本願発明における「前記複数の光電変換部にて生成された信号電荷を読み出すために前記撮像面に形成されている複数の画素トランジスタ」に相当する。

ウ.引用発明における「p型の不純物領域で形成される素子分離領域63」は、「p型」の「不純物」が拡散された「領域」であるから、引用発明における「フォトダイオードPDとフォトダイオードPDの間に設けられる、p型の不純物領域で形成される素子分離領域63」は、本願発明における「前記複数の光電変換部の間に配置される不純物拡散領域」に相当する。
また上記のとおり、引用発明における「素子分離領域63」は、本願発明における「不純物領域」に相当することから、引用発明の「前記素子分離領域63の全域上に形成され」るということは、本願発明の「該不純物拡散領域上を覆」うということに相当する。
また引用発明における「前記フォトダイオードPDが形成される半導体領域に開口を有する」ということと、本願発明における「前記光電変換部の形成領域および前記複数の画素トランジスタの形成領域を開口する」ということは、「前記光電変換部の形成領域を開口する」という点で共通する。
また引用発明における「イオン注入阻止用マスク64を構成するゲート絶縁膜」と、本願発明における「素子分離絶縁膜」とは、「絶縁膜」という点で共通する。
また上記アから、引用発明における「一主面」は本願発明における「撮像面」に相当する。
したがって、引用発明における「前記半導体基板の一主面上に形成され、前記フォトダイオードPDと前記フォトダイオードPDの間に設けられる、p型の不純物領域で形成される素子分離領域63と、前記半導体基板の一主面上に形成され、素子分離領域63の全域上に形成され、前記フォトダイオードPDが形成される半導体領域に開口を有するイオン注入阻止用マスク64を構成するゲート絶縁膜」と、本願発明における「前記撮像面において、前記複数の光電変換部の間に配置される不純物拡散領域と、該不純物拡散領域上を覆い、前記光電変換部の形成領域および前記複数の画素トランジスタの形成領域を開口する素子分離絶縁膜と含む素子分離部」とは、「前記撮像面において、前記複数の光電変換部の間に配置される不純物拡散領域と、該不純物拡散領域上を覆い、前記光電変換部の形成領域を開口する絶縁膜」という点で共通する。

エ.引用発明における「前記イオン注入阻止用マスク64を構成するゲート電極」は、「前記イオン注入阻止用マスク64を構成するゲート絶縁膜上」に形成されるものである。
したがって、引用発明における「前記素子分離領域63の全域上に形成される前記イオン注入阻止用マスク64を構成する前記ゲート電極であって、前記イオン注入阻止用マスク64を構成するゲート絶縁膜上に形成され、ポリシリコンからなるゲート電極」と、本願発明における「前記不純物拡散領域へ入射する光を遮光する、前記素子分離絶縁膜上の遮光部」とは、「前記撮像面において、前記複数の光電変換部の間に配置される不純物拡散領域と、該不純物拡散領域上を覆い、前記光電変換部の形成領域を開口する絶縁膜上」の部材であるという点で共通する。

オ.引用発明における「前記素子分離領域63の全域上に形成される前記イオン注入阻止用マスク64を構成する前記ゲート電極は、前記転送トランジスタTr4を構成する前記ゲート絶縁膜上に形成された前記転送トランジスタTr4の前記転送ゲート電極55より延長して形成されている」点と、本願発明における「前記遮光部は、前記複数の画素トランジスタの各形成領域上にゲート絶縁膜を介して積層される複数のゲート電極のいずれかと連結されている」点とは、前記部材は「前記複数の画素トランジスタの各形成領域上にゲート絶縁膜を介して積層される複数のゲート電極のいずれかと連結されている」という点で共通する。

(2)一致点及び相違点
そうすると、本願発明と引用発明とは、以下の点で一致し、以下の各点で一応、相違している。
≪一致点≫
「半導体基板において撮像面に形成されている複数の光電変換部と、
前記複数の光電変換部にて生成された信号電荷を読み出すために前記撮像面に形成されている複数の画素トランジスタと、
前記撮像面において、前記複数の光電変換部の間に配置される不純物拡散領域と、該不純物拡散領域上を覆い、前記光電変換部の形成領域を開口する絶縁膜と、
前記絶縁膜上の部材と、
を有し、
前記部材は、前記複数の画素トランジスタの各形成領域上にゲート絶縁膜を介して積層される複数のゲート電極のいずれかと連結されている、
固体撮像装置。」

≪相違点1≫
本願発明において「素子分離絶縁膜」は、「複数の画素トランジスタの形成領域」を開口するのに対して、引用発明の「イオン注入阻止用マスク64を構成するゲート絶縁膜」は、「転送トランジスタTr4」の形成領域を開口するか不明である点。
また、引用発明の「イオン注入阻止用マスク64を構成するゲート絶縁膜」は、「素子分離絶縁膜」であるか不明であると共に、「素子分離部」の一部であるか不明である点。

≪相違点2≫
本願発明において「素子分離絶縁膜上に形成」された部材は、「不純物拡散領域へ入射する光を遮光」するのに対して、引用発明の「イオン注入阻止用マスク64」を構成する「ゲート電極」は、「素子分離領域63」へ入射する光を遮光するかは不明である点。

4.当審の判断
相違点2について判断した後、相違点1について判断する。

(1)相違点2について
ア.引用発明における「イオン注入阻止用マスク64を構成するゲート電極」は、「ポリシリコン」からなる「ゲート電極」である。

イ.ここで、以下に示す周知例1及び周知例2に記載されるように、ポリシリコン膜が遮光性を有することは周知である。

(ア).周知例1:特開2006-179713号公報
本願の出願前に日本国内において頒布された刊行物である、特開2006-179713号公報には、「固体撮像装置及びその製造方法」(発明の名称)に関して、図1?図15とともに、次の記載がある。
a.「【0025】
図6では、第1の遮光膜50としてポリシリコン膜を使用した場合を示したが、半球形上の結晶粒を有するHSG(hemi-spherical grain)膜、高融点金属のシリサイド膜、例えば、モリブデンシリサイド(MoSi)、タングステンシリサイド(WSi)、チタンシリサイド(TiSi)、コバルトシリサイド(CoSi)、ニッケルシリサイド(NiSi)、若しくは窒化タンタル(TaN)膜を使用することができる。さらに、ポリシリコン膜、上記シリサイド膜のいずれか1若しくはTaN膜の内のいずれか2以上からなる積層膜を使用することもできる。上記のような膜は、光の反射率が高い及び/若しくは透過率が低いため、これを使用することによって、第1の遮光膜50を透過して信号検出領域104Dに到達する光の漏れ量を小さくすることができる。」

(イ).周知例2:特開平6-310697号公報
本願の出願前に日本国内において頒布された刊行物である、特開平6-310697号公報には、「固体撮像装置及びその製造方法」(発明の名称)に関して、図1?図4とともに、次の記載がある。
a.「【0003】図3の場合には、N形半導体基板1の表層部分にP形不純物層2が拡散によって埋設され、更にこれらの上面にシリコン酸化膜3が積層されると共に、P形不純物層2の受光領域となる上面部分を除いてポリシリコン膜4が積層されている。したがって、ポリシリコン膜4が遮光膜となるので、PN接合部分だけに光を入射させことができるとしている。」

また、審判請求人が審判請求書の「3.本発明が特許されるべき理由」において、「ポリシリコンの材料自体に、ある程度の遮光性があることは認めます。」と記載しているとおり、ポリシリコンという材料は遮光性を有するものである。
してみれば、引用発明における、「ポリシリコン」からなる「イオン注入阻止用マスク64を構成するゲート電極」は、遮光性を有するものと認められる。

ウ.そして、引用発明における「イオン注入阻止用マスク64を構成するゲート電極」は、「素子分離領域63の全域上に形成される」ものであるから、遮光性を有する「イオン注入阻止用マスク64を構成するゲート電極」が「素子分離領域63」へ入射する光を遮光するのは自明である。
よって、相違点2は実質的な相違点ではない。

(2)相違点1について
ア.引用発明における「転送トランジスタTr4」は、「フォトダイオードPD」に蓄積された電荷を「フローティング・ディフージョン(FD)」に読み出すためのチャネルを、「転送トランジスタTr4」を構成する「ゲート絶縁膜」の下部に形成するものであり、当該チャネルが形成される領域に「素子分離領域63」が形成されないことは自明である。
一方、上記2.(2)クのとおり、引用発明における「イオン注入阻止用マスク64」を構成する「ゲート絶縁膜」及び「ゲート電極」は「素子分離領域63」上に形成されるものである。

イ.したがって、引用発明における「イオン注入阻止用マスク64を構成するゲート絶縁膜」は「転送トランジスタTr4」の形成領域に開口を有するものと認められる。

ウ.また引用発明における「イオン注入阻止用マスク64を構成するゲート絶縁膜」は、「前記フォトダイオードPDと前記フォトダイオードPDの間に設けられる、p型の不純物領域で形成される素子分離領域63」の「全域上」に形成され、「前記フォトダイオードPDが形成される半導体領域」に「開口を有する」ものであるから、引用発明における「イオン注入阻止用マスク64を構成するゲート絶縁膜」は、フォトダイオードPDとフォトダイオードPDとを分離する位置に設けられる絶縁膜、すなわち、フォトダイオードPDという素子を分離する絶縁膜であると認められる。

エ.したがって、引用発明における「イオン注入阻止用マスク64を構成するゲート絶縁膜」は素子分離絶縁膜であり、引用発明の「素子分離領域63」と共に形成する素子分離部の一部であると認められる。

オ.よって、相違点1は実質的な相違点ではない。

カ.仮に、上記ウで引用発明における「イオン注入阻止用マスク64を構成するゲート絶縁膜」が素子分離絶縁膜ではない、と仮定した場合について、以下に検討する。

キ.前記2.(2)クで示したとおり、引用発明における、「素子分離領域63の全域上に形成され」る「ゲート絶縁膜」は、「素子分離領域63の全域上に形成され」る「ゲート電極」とともに「イオン注入阻止用マスク64」を構成する。
しかし、前記「ゲート絶縁膜」は「素子分離領域63」上に形成されている絶縁膜であるから、「素子分離領域63」の素子分離という機能を少なくとも補完していると認められる。
加えて、上記4.(1)で示したとおり、引用発明における、素子分離領域63の全域上に形成されるイオン注入阻止用マスク64を構成するゲート電極は、本願発明と同様、遮光性を有するものと認められ、引用発明においても、本願発明と同様、素子分離領域63へ入射する光を遮光することにより、素子分離領域63において暗電流の発生を抑えて、撮像画像の品質を向上させる、という効果を有することは明らかである。
そうすると、相違点1に係る構成により本願発明と引用発明との間に作用効果上、格別の相違が生じるとは認められない。
以上から、引用発明において、「素子分離領域63」上に形成された絶縁膜を、ゲート絶縁膜とするか、素子分離絶縁膜とするかは、当業者が適宜選択し得る設計的事項である。

ク.したがって、仮に、本願発明が相違点1において引用発明とは相違するとしても、相違点1は、引用発明において当業者が適宜選択し得る設計的事項である。

(3)審判請求人の主張について
ア.審判請求人は、審判請求書において、以下のように主張している。
a.「ポリシリコンの材料自体に、ある程度の遮光性があることは認めます。しかしながら、上記高エネルギーな短波長の光を遮光できるか否かは、遮光する部材の厚さ等にも依存し、単に材料が同じなら同じ光学的な効果(短波長遮蔽効果)が得られるとは、一概に言えません。」
b.「また、一般にゲート絶縁膜より数桁厚いとされる素子分離絶縁膜を、ゲート絶縁膜に相当するとする認定にも同意できません。」
c.「また、本願の出願人が平成25年12月24日付け意見書で主張しているように、引用文献1は「ゲート絶縁膜+ゲート電極」を不純物拡散領域に対するイオン注入マスク層として機能させており、この構成は本願発明の「素子分離絶縁膜」に相当し、また引用文献1に、不純物拡散領域に対する遮光に関する記載や示唆は一切ありません。よって本願発明の「遮光部」は引用文献1には記載されていないと認められるとする解釈が自然です。」
d.「以上より、単に材料が同じというだけで、引用文献1に記載のゲート電極27が、本願発明の短波長光まで含めた光に対して遮光性がある遮光部に相当するとする上記拒絶査定の認定は失当であると言わざるを得ません。」

イ.しかしながら、上記a及びdの主張については、本願の特許請求の範囲には「不純物拡散領域へ入射する光を遮光する」とのみ記載されており、「短波長の光を遮光」することは記載されていない。したがって、上記a及びdの主張については、本願の特許請求の範囲の記載に基づくものではなく、この主張は当を得ていない。

ウ.また上記bの主張については、本願の特許請求の範囲には、膜の厚さについては記載されておらず、上記bの主張についても、本願の特許請求の範囲の記載に基づくものではなく、この主張は当を得ていない。

エ.また上記cの主張は、本願発明の「素子分離絶縁膜」が、「不純物拡散領域に対するイオン注入マスク層として」の「機能」を有することに基づくものであるが、「素子分離絶縁膜」が「不純物拡散領域に対するイオン注入マスク層として」の「機能」を有することは、本願の特許請求の範囲にも発明の詳細な説明にも記載されていない。
そして、上記4.(1)で示したとおり、引用発明における、「ポリシリコン」からなる「イオン注入阻止用マスク64を構成するゲート電極」は、遮光性を有するものと認められる。

5.小括
以上のとおりであるから、相違点1及び2は実質的な相違点ではない。
したがって、本願発明は、引用例に記載された発明であると認められる。
また、仮に、本願発明が相違点1において引用発明と相違するとしても、引用発明において前記相違点1に係る構成とすることは、当業者が適宜選択し得る設計的事項である。

第3.結言
以上のとおり、本願発明は引用例に記載された発明であると認められるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
また、仮に、本願発明が相違点1において引用発明と相違するとしても、本願発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、他の請求項については検討するまでもなく、本願は、拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-05-12 
結審通知日 2015-05-19 
審決日 2015-06-02 
出願番号 特願2009-179680(P2009-179680)
審決分類 P 1 8・ 113- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 中内 大介今井 聖和  
特許庁審判長 鈴木 匡明
特許庁審判官 飯田 清司
中田 剛史
発明の名称 固体撮像装置、および、その製造方法、電子機器  
代理人 佐藤 隆久  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ