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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01N
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G01N
管理番号 1303290
審判番号 不服2014-7156  
総通号数 189 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-09-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-04-17 
確定日 2015-07-13 
事件の表示 特願2009-115873「自動分析装置」拒絶査定不服審判事件〔平成22年11月25日出願公開、特開2010-266245〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、平成21年5月12日の出願であって、平成25年2月7日付けで拒絶理由が通知され、この通知に対して同年4月16日付けで意見書が提出されるとともに同日付けで手続補正がなされ、平成26年1月10日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年4月17日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同日付けで手続補正がなされたものである。

第2 平成26年4月17日付けの手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]

平成26年4月17日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]

1 補正後の本願発明

本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、

「試料及びこの試料の検査項目に該当する試薬を反応容器に分注してその混合液を測定する自動分析装置において、
前記試薬の内の1試薬系及び2試薬系の第1試薬が収容された第1試薬容器と及び前記2試薬系の第1試薬と対を成す第2試薬が収容された第2試薬容器を保持する第1試薬ラックと、前記第1試薬容器及び前記第2試薬容器を保持し、前記第1試薬ラックの外周に配置された第2試薬ラックとを有する試薬ラックが回動可能に配置された試薬庫と、
前記第1試薬ラック又は第2試薬ラックに保持された前記第1試薬容器内の第1試薬を吸引して前記反応容器に吐出する分注が可能な第1試薬分注プローブと、
前記第1試薬ラック又は前記第2試薬ラックに保持された前記第2試薬容器内の第2試薬を吸引して前記反応容器に吐出する分注が可能な第2試薬分注プローブとを備え、
前記第1試薬容器、第2試薬容器は、底面が略台形の柱形状で同じ寸法を成していることを特徴とする自動分析装置。」

と補正された。(下線は補正箇所を示す。)

上記補正は、実質的に、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「第1試薬容器」及び「第2試薬容器」について「底面が略台形の柱形状で同じ寸法を成している」との限定を付加するものであって、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について以下に検討する。

2 引用文献

(1)引用文献1

原査定の拒絶の理由に引用された特開2008-70115号公報(以下、「引用文献1」という。)には、次の事項が記載されている(下線は当審において付加したものである。)。

ア 「【請求項1】
試料と試薬とを混合することにより調製された測定試料を分析するための試料分析装置であって、
複数の試薬が配置される試薬配置部と、
表示部と、
前記表示部に表示された表示画面に対して所定の操作を行うための操作部と、
前記試薬配置部における各試薬の配置状態に対応して、少なくとも試薬名が記された各試薬マークを前記操作部によって指定可能に表示する試薬配置表示領域を含む試薬管理画面とともに、前記操作部によって指定された試薬マークに対応する試薬に関する詳細情報を前記表示部に表示させる表示制御部とを備える、試料分析装置。」

イ 「【0064】
測定機構部2は、搬送機構部3から供給された検体に対して光学的な測定を行うことにより、供給された検体に関する光学的な情報を取得することが可能なように構成されている。本実施形態では、搬送機構部3のラック251に載置された試験管250から測定機構部2のキュベット200内に分注された検体に対して光学的な測定が行われる。また、測定機構部2は、図3に示すように、試薬を保存するための試薬保存部6と、試薬を交換または追加するための試薬交換部7とを含んでいる。」

ウ 「【0081】
この試薬搬送部10は、図5に示すように、円形状の第1試薬テーブル11と、円形状の第1試薬テーブル11の外側に、第1試薬テーブル11に対して同心円状に配置された円環形状の第2試薬テーブル12とを含む。また、第1試薬テーブル11および第2試薬テーブル12は、それぞれ、試薬容器300を保持する第1試薬容器ラック310および第2試薬容器ラック320が着脱可能に配置されるように構成されている。また、外壁部20は、側面21(図4参照)と、側面21に固定されている上面22(図3参照)と、取り外し可能な蓋部23(図3参照)とにより構成されている。また、試薬保存部6の側面21(図4参照)の近傍には、試薬保存部6と所定の距離を隔ててバーコードリーダ350が設けられている。
【0082】
第1試薬テーブル11および第2試薬テーブル12は、それぞれ、時計回り方向および反時計回り方向の両方に回転可能で、かつ、各々のテーブルが互いに独立して回転可能なように構成されている。これにより、試薬が収容された試薬容器300を保持する第1試薬容器ラック310および第2試薬容器ラック320は、それぞれ、第1試薬テーブル11および第2試薬テーブル12によって回転方向に搬送される。また、試薬容器300を回転方向に搬送することによって、後述する試薬分注アーム120が試薬を分注する際に、分注対象の試薬を試薬分注アーム120の近傍に配置させることが可能である。」

エ 「【0084】
また、図3に示すように、外壁部20の上面22は、3つの穴部22a、22bおよび22cを含む。この3つの穴部22a、22bおよび22cを介して、試薬分注アーム120により試薬保存部6に保存されている試薬の吸引が行われる。なお、穴部22aは、第1試薬容器ラック310に保持されている試薬容器300の上方に位置する。この穴部22aを介して、第1試薬容器ラック310に保持されている試薬容器300から試薬の吸引が行われる。また、穴部22bおよび22cは、それぞれ、第2試薬容器ラック320の後列および前列に保持されている試薬容器300の上方に位置する。この穴部22bおよび22cを介して、第2試薬容器ラック320の後列および前列に保持されている試薬容器300から試薬の吸引が行われる。」

オ 「【0087】
2つの保持部311および312は、検体から測定用試料を調製する際に添加される種々の試薬を収容した複数の試薬容器300を1つずつ保持することが可能である。すなわち、第1試薬テーブル11には、最大10個(2×5=10)の試薬容器300が配置可能である。また、切欠部311aおよび312aは、それぞれ、バーコード311cおよび312cをバーコードリーダ350(図5参照)によって読み取るために設けられている。また、把持部313は、第1試薬容器ラック310を試薬保存部6から取り出す時に把持される。」

カ 「【0090】
また、第2試薬容器ラック320は、図5に示すように、第2試薬テーブル12に5つ配置可能である。この5つの試薬容器ラック320に、試薬容器300が円環状に配置される。また、互いに隣接する第2試薬容器ラック320の5箇所の隙間のうち、1個所は、他の4箇所の隙間の間隔よりも大きい間隔を有する。この大きい間隔を有する隙間12aを介して、試薬保存部6の外部に位置するバーコードリーダ350により、第2試薬テーブル12の内側に位置する第1試薬テーブル11に配置される第1試薬容器ラック310のバーコード311bおよび312bと、第1試薬容器ラック310に保持される試薬容器300のバーコード300aとが読み取られる。また、第2試薬容器ラック320は、図14および図16に示すように、試薬容器300を保持するための6つの保持部321?326と、保持部321?326の前面側にそれぞれ設けられた切欠部321a?326aと、上方に突出するように設けられた1つの把持部327とを含む。また、第2試薬容器ラック320の保持部321?326は、第1試薬容器ラック310と同様に、平面的に見て円形状に形成されており、円筒形状の試薬容器300が差し込まれることにより試薬容器300を保持可能である。この第2試薬容器ラック320は、保持部321?326の内径の組み合わせがそれぞれ異なるように形成された3種類のラックを含む。また、第2試薬容器ラック320には、第1試薬容器ラック310に配置された試薬と同じ試薬を配置することが可能に構成されている。」

キ 「【0112】
試薬分注アーム120は、図3?図5に示すように、試薬保存部6に載置された試薬容器300内の試薬をキュベット200に分注することにより、キュベット200内の検体に試薬を混合するために設けられている。具体的には、前述した試薬保存部6の外壁部20の穴部22a、22bまたは22c(図3参照)を介して試薬の吸引を行い、加温(37℃)が完了したキュベット200を移送用キャッチャ部111が加温部100のキュベット保持部101aから取り出し、把持した状態で、吸引した試薬をキュベット200に分注する。なお、試薬分注アーム120のピペット部121には加温機能が設けられており、吸引された試薬は、瞬間的に約37℃に加温される。すなわち、試薬保存部6で低温(約10℃)保存されている試薬は、試薬分注アーム120によって約37℃に加温された状態で、加温が完了した約37℃の検体と混合される。このように、第1光学的情報取得部80による光学的な測定が終了した検体に試薬を添加して測定用試料が調製される。」

ク 「【0164】
まず、図21に示すステップS51において、制御部501によって、検体バーコードリーダ3cが制御されることにより、搬送機構部3によって搬送された検体を収容する試験管250に貼付されたバーコードが読み取られる。そして、ステップS52において、制御部501によって、読み取られたバーコード情報に基づいてオーダが取得され、ステップS53に進む。ステップS53において、制御部501によって、第1試薬テーブル11または第2試薬テーブル12の試薬交換ステータスがオンにセットされているか否かが判断される。この処理は、制御部501が試薬交換対象テーブルの駆動回路が内蔵するステータスレジスタを確認することによって行われる。ステップS53において、第1試薬テーブル11および第2試薬テーブル12のいずれか一方の試薬交換ステータスがオンにセットされていると判断された場合には、ステップS54に進む。また、ステップS53において、いずれの試薬交換ステータスもオンにセットされていないと判断された場合には、ステップS56に進む。ここで、オーダについて以下に説明する。オーダとは、検体を特定する情報に対応付けられた分析項目を含む情報である。オーダは、制御装置4に接続されたホストコンピュータ(図示せず)に登録されたり、制御装置4にユーザがマニュアル入力することで記憶されるようになっている。検体のバーコード情報を取得した後、制御装置4は、内部に記憶しているオーダから該当するものを検索したり、ホストコンピュータへ検体IDをキーとして問い合わせたりすることでオーダを取得する。制御装置4で取得されたオーダは、制御装置4の制御部4aから測定機構部2の制御部501へ送信され、制御部501はオーダを取得する。」

ケ 「【0165】
次に、ステップS56において、制御部501によって、オーダに従って検体分注駆動部70aが制御され、検体分注アーム70によって、搬送機構部3により搬送された試験管250に収容される検体が吸引されるとともに、吸引された検体をキュベット搬送テーブル61のキュベット保持部62に保持されたキュベット200内に分注される。そして、ステップS57において、制御部501によって、試薬分注駆動部120aが制御され、試薬分注アーム120によって、試薬保存部6の外壁部20の穴部22a、22bまたは22c(図3参照)を介して試薬の吸引が行なわれ、吸引された試薬は、加温が完了したキュベット200に分注される。なお、ステップS57において、図23に示すように、試薬分注アーム120のピペット部121が試薬を吸引するための初期位置(高さH1)から下方に移動する。このピペット部121は、ステッピングモータで駆動され、ステッピングモータに1パルス入力される毎に移動距離D移動される。そして、試薬の液面にピペット部121の先端に設けられたセンサによって試薬の液面が検知される。また、センサが試薬の液面を検知したときの液面検知情報のひとつであるパルス数Pが取得される。」

コ 【図5】




サ 上記摘記事項ウより、第1試薬テーブル11と第2試薬テーブル12は回転可能であり、第1試薬容器ラック310、第2試薬容器ラック320は、それぞれ第1試薬テーブル11、第2試薬テーブル12に配置されていることから、第1試薬容器ラック310及び第2試薬容器ラック320は回転可能に試薬保存部6に配置されることは明らかである。

シ 上記摘記事項オにおいて、「種々の試薬を収容した複数の試薬容器300」と記載されていることから、試薬容器300は複数種類の試薬を収容するものである「複数種類の試薬容器」であると認める。

ス 上記摘記事項コの図5を参照すると、第2試薬ラック320が第1試薬ラック310の外周に配置された点が記載されている。

上記アからスまでを含む引用文献1全体の記載を総合すると、引用文献1には、

「検体をキュベット200内に分注するとともに、検体を特定する情報に対応付けられた分析項目を含む情報であるオーダに従って試薬をキュベット200に分注し、検体から測定試料を調製し、調製された測定試料を分析するための試料分析装置であって、
複数種類の試薬容器300をそれぞれ保持する、第1試薬容器ラック310と、前記第1試薬容器ラック310の外周に第2試薬容器ラック320が回転可能に配置されている、試薬を保存するための試薬保存部6を備え、
第2試薬容器ラック320には、第1試薬容器ラック310に配置された試薬と同じ試薬を配置することが可能に構成されており、
第1試薬容器ラック310又は第2試薬容器ラック320に載置された試薬容器300内の試薬をキュベット200に分注することにより、キュベット200内の検体に試薬を混合する試薬分注アーム120のピペット部121を備えた、試料分析装置。」

の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されている。

(2)引用文献2

同じく、原査定の拒絶の理由に引用された特開平9-297147号公報(以下、「引用文献2」という。)には、次の事項が記載されている。

ア 「【0006】
【課題を解決するための手段】本発明は2試薬系の自動化学分析装置であり、そこでの試薬注入装置は1個の回転式試薬庫と2個の試薬プローブを備え、その試薬庫には回転中心からの同心円上に試薬容器が多重に配置され、かつ最も内側に配置された試薬容器列を除き、外側に配置された試薬容器列はその列内で互いに隙間をもち、内側に配置された試薬容器の表示面がその隙間から識別できるように内側と外側の試薬容器列で円周方向の試薬容器の位置がずらされており、2個の試薬プローブは試薬庫の任意の位置の試薬を反応ディスクの2つの試薬分注位置のそれぞれの反応セルに分注するように駆動されるものである。分析動作の1サイクルを分割し、1サイクル内で2つの試薬プローブでの吸引・吐出のタイミングをずらす。1つの駆動系で試薬庫の回転を行ない、両試薬プローブでの試薬吸引を行なう2つの試薬吸引位置に試薬を位置決めする。」

イ 「【0012】
それに対し、実施例の装置の場合は、(B)に示されるように、反応ディスクが回転し吸光光度計による測光が行なわれている間に、試薬庫の試薬トレイ33が回転して第1試薬が第1試薬吸引位置に位置決めされ、第1試薬プローブ10により第1試薬が吸引される。反応ディスク2が停止すると、反応ディスク2上の第1試薬分注位置の反応セルへ第1試薬プローブ10から第1試薬が吐出される。試薬トレイ33は、第1試薬プローブ10による第1試薬の吸引完了後、再度回転して第2試薬が第2試薬吸引位置に位置決めされ、所定の位置の試薬が第2試薬プローブ12により吸引され、反応ディスク2上の第2試薬分注位置の反応セルへ第2試薬プローブ12から第2試薬が吐出される。ここでは、1サイクル中に試薬トレイ33が回転と停止を2回繰り返し、2台の試薬プローブ10,12による分注が順次行なわれる。」

3 対比

本願補正発明と引用発明1とを対比する。


(ア)引用発明1の「検体」、「試薬」、「分析項目」、及び、「キュベット」は、それぞれ、本願補正発明の「試料」、「試薬」、「検査項目」、及び、「反応容器」に相当する。
(イ)また、引用発明1の「試薬」は、「検体を特定する情報に対応付けられた分析項目を含む情報であるオーダに従って」分注されていることから、引用発明1の「検体をキュベット内に分注するとともに、検体を特定する情報に対応付けられた分析項目を含む情報であるオーダに従って試薬をキュベットに分注して、」は、本願補正発明の「試料及びこの試料の検査項目に該当する試薬を反応容器に分注して」に相当する。


(ア)引用発明1の「測定試料」は、「検体」と「試薬」がともに分注され、混合されたものであるから、本願補正発明の「混合液」に相当する。
(イ)引用発明1の「分析する」は、本願補正発明の「測定する」に相当する。
(ウ)引用発明1の「試料分析装置」は、分析の自動化を意図したものであることは技術常識を参酌すれば明らかであることから、引用発明1の「試料分析装置」は、本願補正発明の「自動分析装置」に相当する。
(エ)よって、引用発明1の「検体から測定試料を調製し、調製された測定試料を分析するための試料分析装置」は、本願補正発明の「その混合液を測定する自動分析装置」に相当する。


(ア)引用発明1の「第1試薬容器ラック」、「第2試薬容器ラック」、及び、「試薬を保存するための試薬保存部」は、それぞれ、本願補正発明の「第1試薬ラック」、「第2試薬ラック」、及び、「試薬庫」に相当する。
(イ)引用発明1の「第1試薬容器ラック」と「第2試薬容器ラック」は、合わせて「試薬容器ラック」を構成しているとみなすことができ、それは、本願補正発明の「試薬ラック」に相当する。
(ウ)引用発明1の「試薬容器」と、本願補正発明の「第1試薬容器」及び「第2試薬容器」は、それぞれ「試薬容器」である点で共通する。
(エ)引用発明1は、「第1試薬容器ラック」と「第2試薬容器ラック」のいずれも、「複数種類の試薬容器」を保持するのに対し、本願補正発明も、「第1試薬ラック」と「第2試薬ラック」のいずれも、「第1試薬容器」及び「第2試薬容器」を保持していることから、両者は、「複数種類の試薬容器を保持する第1試薬ラック」と「前記複数種類と同じ複数種類の試薬容器を保持」する「第2試薬ラック」を有する点で共通する。
(オ)よって、引用発明1の「複数種類の試薬容器300をそれぞれ保持する、第1試薬容器ラック310と、前記第1試薬容器ラック310の外周に第2試薬容器ラック320が回転可能に配置されている、試薬を保存するための試薬保存部6」と、本願補正発明の「前記試薬の内の1試薬系及び2試薬系の第1試薬が収容された第1試薬容器と及び前記2試薬系の第1試薬と対を成す第2試薬が収容された第2試薬容器を保持する第1試薬ラックと、前記第1試薬容器及び前記第2試薬容器を保持し、前記第1試薬ラックの外周に配置された第2試薬ラックとを有する試薬ラックが回動可能に配置された試薬庫」は、「複数種類の試薬容器を保持する第1試薬ラックと、前記複数種類と同じ複数種類の試薬容器を保持し、前記第1試薬ラックの外周に配置された第2試薬ラックとを有する試薬ラックが回動可能に配置された試薬庫」である点で共通する。


(ア)引用発明1の「試薬分注アームのピペット部」と、本願補正発明の「第1試薬分注プローブ」及び「第2試薬分注プローブ」は、試薬容器内の試薬を吸引し、反応容器に吐出する分注する機能を有する構成という点で両者は共通する。
(イ)よって、引用発明1の「第1試薬容器ラック又は第2試薬容器ラックに載置された試薬容器内の試薬をキュベットに分注することにより、キュベット内の検体に試薬を混合する試薬分注アームのピペット部を備えた」点と、本願補正発明の「前記第1試薬ラック又は第2試薬ラックに保持された前記第1試薬容器内の第1試薬を吸引して前記反応容器に吐出する分注が可能な第1試薬分注プローブと、前記第1試薬ラック又は前記第2試薬ラックに保持された前記第2試薬容器内の第2試薬を吸引して前記反応容器に吐出する分注が可能な第2試薬分注プローブとを備え」た点は、「第1試薬ラック又は第2試薬ラックに保持された試薬容器内の試薬を吸引して反応容器に吐出する分注が可能な試薬分注プローブ備え」た点で両者は共通する。

よって、両者は、

「試料及びこの試料の検査項目に該当する試薬を反応容器に分注してその混合液を測定する自動分析装置において、
複数種類の試薬容器を保持する第1試薬ラックと、前記複数種類と同じ複数種類の試薬容器を保持し、前記第1試薬ラックの外周に配置された第2試薬ラックとを有する試薬ラックが回動可能に配置された試薬庫と、
前記第1試薬ラック又は第2試薬ラックに保持された試薬を吸引して前記反応容器に吐出する分注が可能な試薬分注プローブを備えた、自動分析装置。」

である点で一致し、

以下の点で両者は相違する。

<相違点1>
第1試薬ラック及び第2試薬ラックでそれぞれ保持される複数種類の試薬容器が、本願補正発明では、試薬の内の1試薬系及び2試薬系の第1試薬が収容された第1試薬容器と、前記2試薬系の第1試薬と対を成す第2試薬が収容された第2試薬容器であるのに対して、引用発明1では、そのような特定がされていない点。

<相違点2>
試薬分注プローブが、本願補正発明では、第1試薬を吸引して反応容器に吐出する分注が可能な第1試薬分注プローブと、第2試薬を吸引して反応容器に吐出する分注が可能な第2試薬分注プローブとを有するのに対して、引用発明1では、そのような構成となっていない点。

<相違点3>
試薬容器が、本願補正発明では、第1試薬容器、及び、第2試薬容器が、底面が略台形の柱形状で同じ寸法を成しているのに対して、引用発明1では、そのようにされていない点。

4 当審の判断

各相違点について以下に検討する。

(1)相違点1について

複数種類の試薬容器として、具体的にどのような試薬が入った試薬容器を用いるかは、当業者が適宜選定し得ることであるから、試薬として、1試薬系及び2試薬系の第1試薬、及び、前記2試薬系の第1試薬と対を成す第2試薬を採用することは、当業者が適宜なしうる設計的事項であり、そして、その上で、「第1試薬」が収容された試薬容器を「第1試薬容器」と呼称し、「第2試薬」が収容された試薬容器を「第2試薬容器」と呼称することに何らの困難性もない。
よって、本願補正発明の上記相違点1に係る構成は、当業者が適宜なしうる設計的事項というべきである。

(2)相違点2について

上記「第2 2 引用文献」の「(2)引用文献2」において指摘した事項を含む引用文献2全体の記載を総合すると、引用文献2には、

「回転式試薬庫と2個の試薬プローブを備え、第1試薬プローブ10により第1試薬が吸引され、反応セルへ第1試薬プローブ10から第1試薬が吐出され、第2試薬が第2試薬吸引位置に位置決めされ、所定の位置の試薬が第2試薬プローブ12により吸引され、反応セルへ第2試薬プローブ12から第2試薬が吐出される2試薬系の自動化学分析装置。」

の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されている。

引用発明2と本願補正発明とを対比すると、引用発明2における「第1試薬」、「第1試薬プローブ10」、「第2試薬」、「第2試薬プローブ12」、及び、「反応セル」は、それぞれ、本願補正発明の「第1試薬」、「第1試薬分注プローブ」、「第2試薬」、「第2試薬分注プローブ」、及び、「反応容器」に相当する。

したがって、引用発明2は、第1試薬を吸引して反応容器に吐出する分注が可能な第1試薬分注プローブと、第2試薬を吸引して反応容器に吐出する分注が可能な第2試薬分注プローブとを備えた構成を有すると認められる。

そして、引用発明1において、対をなす2つの試薬を含む複数種類の試薬を用いる場合において、引用発明2における上記の構成を適用し、本願補正発明の上記相違点2に係る構成を成すことは、当業者が容易に想到しうることである。

(3)相違点3について

試薬容器を保持する回転可能な保持構造を採用する場合において、試薬容器の円周方向への配列を効率的なものとするために、底面が略台形の柱形状の試薬容器を採用することは、特開2008-145124号公報(図2、図4-図6等参照)、特開2000-321283号公報(図1-図3等参照)、特開昭62-211562号公報(第2図等参照)に例示されるように、従来周知の事項である。
したがって、引用発明1において、試薬容器の円周方向への配列を効率的なものとするために、上記従来周知の事項を適用し、本願補正発明の上記相違点3に係る構成とすることは、当業者が容易に想到しうる程度のものである。

(4)本願補正発明の奏する作用効果

本願補正発明によってもたらされる効果は、引用発明1、引用発明2、及び、従来周知の事項から当業者が予測し得る程度のものである。

(5)まとめ

よって、本願補正発明は、引用発明1、引用発明2、及び、従来周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(6)むすび

以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項で準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

第3 本願発明について

1 本願発明

平成26年4月17日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を「本願発明」という。)は、平成25年4月16日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。

「試料及びこの試料の検査項目に該当する試薬を反応容器に分注してその混合液を測定する自動分析装置において、
前記試薬の内の1試薬系及び2試薬系の第1試薬が収容された第1試薬容器及び前記2試薬系の第1試薬と対を成す第2試薬が収容された第2試薬容器を保持する第1試薬ラックと、前記第1試薬容器及び前記第2試薬容器を保持し、前記第1試薬ラックの外周に配置された第2試薬ラックとを有する試薬ラックが回動可能に配置された試薬庫と、
前記第1試薬ラック又は第2試薬ラックに保持された前記第1試薬容器内の第1試薬を吸引して前記反応容器に吐出する分注が可能な第1試薬分注プローブと、
前記第1試薬ラック又は前記第2試薬ラックに保持された前記第2試薬容器内の第2試薬を吸引して前記反応容器に吐出する分注が可能な第2試薬分注プローブと、
を備えることを特徴とする自動分析装置。」

2 引用文献

原査定の拒絶の理由に引用された引用文献、および、その記載事項は、前記「第2 2 引用文献」に記載したとおりである。

3 対比・判断

本願発明と引用発明1を対比すると、「第2 3 対比」における本願補正発明と引用発明1の対比における一致点と同じ一致点で両者は一致し、相違点1及び相違点2のみで相違する。なお、相違点3については、本願発明と引用発明との相違点にはならない。

そして、相違点1及び相違点2については、「第2 4 当審の判断」において検討したとおりである。

したがって、本願発明は、引用発明1、及び、引用発明2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4 むすび

以上のとおり、本願発明は、引用発明1、及び、引用発明2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-05-15 
結審通知日 2015-05-22 
審決日 2015-06-02 
出願番号 特願2009-115873(P2009-115873)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G01N)
P 1 8・ 575- Z (G01N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 谷垣 圭二柏木 一浩  
特許庁審判長 森林 克郎
特許庁審判官 ▲高▼橋 祐介
麻生 哲朗
発明の名称 自動分析装置  
代理人 小林 美生子  
代理人 寺西 功一  
代理人 小林 美生子  
代理人 原 拓実  
代理人 原 拓実  
代理人 寺西 功一  

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