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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F16F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F16F
管理番号 1303356
審判番号 不服2014-19613  
総通号数 189 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-09-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-09-30 
確定日 2015-07-15 
事件の表示 特願2010-171852「緩衝体」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 2月16日出願公開、特開2012- 31931〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成22年7月30日の出願であって、平成26年4月2日付けの拒絶理由通知に対して、同年5月30日に意見書及び手続補正書が提出されたが、同年6月25日付け(発送日:同年7月1日)で拒絶査定がされ、これに対して、同年9月30日に拒絶査定不服審判の請求がされるとともに、その審判の請求と同時に手続補正がされたものである。

第2 平成26年9月30日付けの手続補正についての補正の却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成26年9月30日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1 補正後の本願発明
平成26年9月30日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。) は、補正前の特許請求の範囲の請求項1に記載された
「【請求項1】
野球場や競技場、または屋内外体育施設に設置されることを目的とした、緩衝材を備えた緩衝体であって、緩衝材は発泡樹脂層を有しており、
該緩衝材が可撓性を有するメッシュ材によって被覆されており、
前記緩衝材は、前記発泡樹脂層と、プラスチックダンボール層とを有しており、
前記メッシュ材によって被覆された緩衝材が、緩衝体の表面を構成する表面シートを袋状に形成した袋体によって被覆されていることを特徴とする、野球場や競技場、または屋内外体育施設に設置されることを目的とした緩衝体。」を、
補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された
「【請求項1】
野球場や競技場、または屋内外体育施設に設置されることを目的とした、緩衝材を備えた緩衝体であって、緩衝材は発泡樹脂層を有しており、
該緩衝材が可撓性を有するメッシュ材によって被覆されており、
前記緩衝材は、前記発泡樹脂層と、プラスチックダンボール層とを有しており、
前記メッシュ材によって被覆された緩衝材が、緩衝体の表面を構成する表面シートを袋状に形成した袋体によって被覆されており、
前記袋体を形成する表面シートは、正面、背面、側面、側面、上面、および底面の六面を有していることを特徴とする、野球場や競技場、または屋内外体育施設に設置されることを目的とした緩衝体。」
と補正するものである。
なお、下線は補正箇所であり、請求人が付したとおりである。

本件補正は、発明を特定するために必要な事項である緩衝体の表面を構成する「表面シート」を「正面、背面、側面、側面、上面、および底面の六面を有している」と限定するものであり、かつ、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号に規定された特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について、以下に検討する。

2 引用刊行物とその記載事項
(1)原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に日本国内において頒布された特開平4-79969号公報(以下、「刊行物1」という。)には、「競技場等における衝撃吸収材の取り付け方法」に関して、図面(第1図参照)とともに、次の事項が記載されている。
以下、下線は当審で付与したものである。

「〈本発明の説明〉
以下本発明の詳細な説明する。
〈イ〉ウレタンブロック
衝撃を吸収するための緩衝材の本体は、発泡軟質ウレタンのブロック1によって構成する。
・・・省略・・・
〈口〉無発泡ウレタン液の含浸
以上のような性状の発泡軟質ウレタンブロック1の一部に無発泡ウレタンの液を含浸させる。
無発泡ウレタン3の含浸作業は、たとえば発泡軟質ウレタンのブロック1を工場の床に水平に寝かせておき、その網材2側の表面から硬化の遅いウレタンエラストマー原液をローラで塗布して行う。
無発泡ウレタン原液としては次のような特性の材料を次の程度の量だけ塗布して使用することができる。
すなわち、MDIまたはTDIと分子量1000?5000、官能基数2?3のPPGをあらかじめ反応させてプレポリマー液を作り、これとPPG、架橋剤、触媒などをブレンドした成分を撹拌混合し、この材料を、軟質ウレタンの表面に1?2kg/m^(2)の量を塗布し含浸させるものである。
この無発泡ウレタン3を含浸させる部分は、完成後の吸収体において身体以外の堅いものが当たる部分のように、特に補強したい範囲に限って特定して行う。
たとえば野球場に使用する吸収体であれば、外野手がフェンスをぎりぎりで越えるようなボールを取ろうと跳び上がる時にスパイクをぶつけるような範囲や、壁に身体をぶつけて補給するような範囲である。
〈ハ〉網材
無発泡軟質ウレタン液を含浸させた側(すなわち競技者が衝突する側)の一面に網材2を固着する。
この網材2としては、繊維製、合成樹脂製、金属製など公知の材料を使用できる。
・・・省略・・・
〈ハ〉ブロックの張り付け(第2図)
以上の工程で発泡軟質ウレタンを主体とした吸収体Sが完成する。」(第2頁右上欄第9行?第3頁右上欄第5行)

上記記載事項及び第1図を総合して、吸収体Sについて本願補正発明に則って整理すると、刊行物1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

「競技場等に設置されることを目的とした、吸収体Sは発泡軟質ウレタンのブロック1を有しており、
該吸収体Sは繊維製等の網材が固着されており、
前記吸収体Sは、前記発泡軟質ウレタンのブロック1と、前記発泡軟質ウレタンのブロック1の表面に含浸させた無発泡ウレタン3が硬化した部分とを有している、
競技場等に設置される吸収体S。」

(2)原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に日本国内において頒布された特開2001-37945号公報(以下、「刊行物2」という。)には、「スケートリンク用緩衝体」に関して、図面(特に、【図1】ないし【図3】参照)とともに、次の事項が記載されている。
「【0017】そして、このような緩衝体本体4は、断面台形形状の傾斜面側がコース3を向いた前面となり、垂直面側がその後面となるような姿勢で設置されるが、被覆材8のうち、前面側を除く両側面から後面にかけてファスナ9が設けられており、このファスナ9を介して被覆材8が袋状に閉じたり、開いたり出来るようにされている。そして、このファスナ9を開くことによって、クッション芯材7の出し入れが可能にされている。因みに、被覆材8の素材としては、耐寒性や耐水性に優れた可撓性シートで、所要の引張り強度、引裂き強度があればどのような素材でも良く、例えばウレタンターポリン等でも良い。」
上記記載事項及び【図1】ないし【図3】を総合すれば、刊行物2には、競技場等に設置されることを目的としたクッション芯材7の正面、背面、側面、側面、上面、および底面の六面が袋状かつ可撓性シートからなる被覆材8によって被覆されていること(以下、「刊行物2の記載事項」という。)が記載されていると認められる。

3 対比
本願補正発明と引用発明とを対比する。
引用発明の「競技場等に設置されることを目的とした、吸収体S」は、その機能、構造、性質からみて、本願補正発明の「野球場や競技場、または屋内外体育施設に設置されることを目的とした、緩衝材」に相当し、同様に、引用発明の「発泡軟質ウレタンのブロック1」、「繊維製等の網材が固着されて」いることは、本願補正発明の「発泡樹脂層」、「可撓性を有するメッシュ材によって被覆されて」いることに、それぞれ相当する。
また、本願補正発明の「プラスチックダンボール層」は、「メッシュ材によって被覆された緩衝材を袋体に挿入する工程において、緩衝材が折り曲がることなく袋体に挿入できるようになり、施工作業性が向上する」(段落【0010】)と記載されているように緩衝材の補強のためのものであるから、引用発明の「発泡軟質ウレタンのブロック1の表面に含浸させた無発泡ウレタン3が硬化した部分」と本願補正発明の「プラスチックダンボール層」は、補強部分という限りで共通する。

以上の点からみて、本願補正発明と引用発明とは、

[一致点]
「野球場や競技場、または屋内外体育施設に設置されることを目的とした、緩衝材であって、緩衝材は発泡樹脂層を有しており、
該緩衝材が可撓性を有するメッシュ材によって被覆されており、
前記緩衝材は、前記発泡樹脂層と、補強部分とを有している、野球場や競技場、または屋内外体育施設に設置されることを目的とした緩衝体。」
である点で一致し、

次の点で相違する。
[相違点]
相違点1
補強部分に関して、本願補正発明では、「プラスチックダンボール層」であるのに対して、引用発明では、「発泡軟質ウレタンのブロック1の表面に含浸させた無発泡ウレタン3が硬化した部分」である点。

相違点2
本願補正発明では、「メッシュ材によって被覆された緩衝材が、緩衝体の表面を構成する表面シートを袋状に形成した袋体によって被覆されており、前記袋体を形成する表面シートは、正面、背面、側面、側面、上面、および底面の六面を有している」のに対して、引用発明では、かかる構成を有していない点。

4 判断
(1)相違点1について
引用発明の「発泡軟質ウレタンのブロック1の表面に含浸させた無発泡ウレタン3が硬化した部分」は、無発泡軟質ウレタン原液を「軟質ウレタンの表面に1?2kg/m^(2)」塗布し含浸硬化させたものだから(上記記載事項)層になっていると解され、また、発泡軟質ウレタンのブロック1の「補強したい範囲」に設けられるものであって(上記記載事項)、発泡軟質ウレタンのブロック1の表面層の補強したい範囲に硬度・強度を与えるものだから、かかる硬度・強度を与える部分を「プラスチックダンボール層」とすることは、当業者が適宜なし得る設計事項といえる(登録実用新案第3148752号公報の【0023】参照。)。
よって、上記相違点1に係る発明特定事項とすることは、当業者が引用発明に基づいて容易になし得たことである。

(2)相違点2について
引用発明に係る吸収体Sは、繊維製等の網材によって固着されており、これをそのまま緩衝体として使用すると、競技者が吸収体Sに指を突っ込んで骨折するといった危険があるから、吸収体Sの表面に上記危険を防止する構成が予定されているところ、刊行物2に接した当業者であれば、クッション芯材たる吸収体の有する危険を防止しようとすることは通常考慮することであるから、刊行物2の記載事項を適用することは、容易に推考できることである。
よって、上記相違点2に係る発明特定事項とすることは、当業者が引用発明及び刊行物2の記載事項に基づいて容易になし得たことである。

(3)作用効果について
そして、本願補正発明による効果も、引用発明及び刊行物2の記載事項から当業者が予測し得た程度のものにすぎない。

(4)まとめ
したがって、本願補正発明は、引用発明及び刊行物2の記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

5.むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1.本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、平成26年5月30日付けの手続補正によって補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される以下のもの(以下、「本願発明」という。)である。

「【請求項1】
野球場や競技場、または屋内外体育施設に設置されることを目的とした、緩衝材を備えた緩衝体であって、緩衝材は発泡樹脂層を有しており、
該緩衝材が可撓性を有するメッシュ材によって被覆されており、
前記緩衝材は、前記発泡樹脂層と、プラスチックダンボール層とを有しており、
前記メッシュ材によって被覆された緩衝材が、緩衝体の表面を構成する表面シートを袋状に形成した袋体によって被覆されていることを特徴とする、野球場や競技場、または屋内外体育施設に設置されることを目的とした緩衝体。」

2.引用刊行物とその記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に日本国内において頒布された特開平4-79969号公報の記載事項及び引用発明は、上記第2の2(1)に記載したとおりである。

3.対比・判断
本願発明は、本願補正発明に係る緩衝体の表面を構成する「表面シート」を「正面、背面、側面、側面、上面、および底面の六面を有している」に限定するという発明特定事項を省いたものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項をすべて含む本願補正発明が、上記第2の4に記載したとおり、引用発明及び刊行物2の記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明及び刊行物2の記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.まとめ
したがって、本願発明は、引用発明及び刊行物2の記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-05-07 
結審通知日 2015-05-12 
審決日 2015-05-26 
出願番号 特願2010-171852(P2010-171852)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F16F)
P 1 8・ 575- Z (F16F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 内田 博之  
特許庁審判長 森川 元嗣
特許庁審判官 大内 俊彦
小柳 健悟
発明の名称 緩衝体  
代理人 太田 恵一  
代理人 太田 恵一  

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