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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G03B
管理番号 1303480
審判番号 不服2015-7775  
総通号数 189 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-09-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-04-27 
確定日 2015-07-21 
事件の表示 特願2014-180451「写真シール作成装置」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 2月12日出願公開、特開2015- 28644〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は、平成24年4月24日(優先権主張平成24年2月9日)に出願した特願2012-98716号の一部を平成26年6月18日に新たな特許出願(特願2014-125780号)とし、該新たな特許出願の一部をさらに平成26年9月4日に新たな特許出願としたものであって、平成26年11月26日に手続補正がなされ、平成27年1月30日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、平成27年4月27日に拒絶査定不服審判が請求されたものである。

2 本願発明
本願の請求項1及び2に係る発明は、平成26年11月26日に補正された特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項によって特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明は、その特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりの次のものと認める。

「利用者を被写体として撮影し、得られた撮影画像に対して利用者に編集入力を行わせ、前記撮影画像を所定のシール紙に印刷する写真シール作成装置であって、
撮影空間における前記利用者の背面全面に貼付された背面クロマキー用シートと、
前記撮影空間における前記利用者の側面下部のみに貼付された側面クロマキー用シートと、
前記撮影空間の床全面に貼付された床面クロマキー用シートと、
前記撮影空間にいる前記利用者の全身を前方斜め上から撮影するように、高さと焦点距離とが調整されるカメラ部と、
前記カメラ部が前記利用者の全身を前方斜め上から撮影して得られた前記撮影画像において、クロマキー処理により、背景領域に所定の背景画像を合成する合成手段と
を備える写真シール作成装置。」(以下、「本願発明」という。)

3 刊行物の記載事項
(1)本願の優先権主張の日(以下、「優先日」という。)前に頒布され原査定の拒絶の理由に引用文献1として引用された刊行物である特開2001-100305号公報(以下「引用例1」という。)には、次の事項が図とともに記載されている(下線は審決で付した。以下同じ。)。

ア 「【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ゲームセンター等に設置され、硬貨等が投入されて被写体を撮影し、シール,カード,紙類,フィルム等にプリントアウトする写真自販機に関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、ゲームセンター等において、写真を撮影してシールプリント等にする写真自販機が数多く設置されている。このような写真自販機としては、一般に、図7に示すようなものが用いられている。このものは、本体52の内部に、略45°の角度をもってハーフミラー53が設けられている。このハーフミラー53の奥に、被写体を撮影するカメラ55が設けられ、ハーフミラー53の下方には、上記カメラ55で撮影された画像を表示するモニタ56が設けられている。図において51はコントローラ、57は写真プリント58を印刷するプリンタである。
【0003】上記写真自販機では、ハーフミラー53を透してカメラ55で撮影された画像がモニタ56に表示され、このモニタ56に表示された画像がハーフミラー53に反射して被写体54によって確認できるようになっている。そして、被写体は、モニタ56に映った自分の姿を確認しながら所望のポーズをとり、好みのところでコントローラ51を操作して静止画を撮影することが行われる。そして、この静止画は、適当なフレームや前景の画像と合成されて写真プリント58として印刷される。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】ところが、上記従来の写真自販機では、被写体の顔写真やせいぜいバストアップ程度の写真しか撮ることができない。特に最近は、写真自販機利用者の増加とともにそのニーズも多様化し、被写体の画像に合成されるフレームや前景として各種の趣向を凝らしたものも数多く提供されているが、単に顔写真等を撮影するだけの画一的なものではもう満足されなくなってきている。
【0005】そこで、被写体54の顔写真だけでなく、全身を撮影できるものとして、図8に示すような写真自販機が発明され実施されている。このものは、基本的には図7に示すものと同様であるが、カメラ55がハーフミラー53の奥上方に取り付けられている。このようにすることにより、被写体54を斜め上から見下ろすように、その全身を撮影することができるようになっている。
【0006】しかしながら、上記写真自販機でも、1台のカメラ55が固定されている点では図7のものと変わるところはない。したがって、カメラアングルは一定に固定されていて、変化に富んだアングルで撮影することはできず、多様な写真をとりたいというニーズには十分に応えられていないのが実情である。
【0007】また、上記各従来例の写真自販機では、被写体を照射する照明装置として、一般の蛍光灯やタングステンランプが用いられるが、単に被写体を照明する以外の機能は持たず、この点でも変化に富んだ多様な写真をとりたいというニーズには応えられていない。
【0008】本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、変化に富んだ撮影を可能とする写真自販機の提供を目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するため、本発明の写真自販機は、被写体の写真を撮影して販売する写真自販機であって、被写体を撮影するカメラがスライド可能に取り付けられたレールが設けられ、上記レール上でカメラが回動しうるように構成されていることを第1の要旨とする。
【0010】また、本発明の写真自販機は、被写体の写真を撮影して販売する写真自販機であって、異なる色の光を照射する複数の光源が設けられ、上記光源のうち任意の光源を選択して照射させる光源選択手段が設けられていることを第2の要旨とする。
【0011】すなわち、本発明の第1の写真自販機は、被写体を撮影するカメラがスライド可能に取り付けられたレールが設けられ、上記レール上でカメラが回動しうるように構成されている。このため、上記レールをスライドしながら回動するカメラで被写体を撮影することにより、変化に富んださまざまなカメラアングルでの撮影が可能となり、利用者の多様なニーズに応えることができる。」

イ 「【発明の実施の形態】つぎに、本発明の実施の形態を詳しく説明する。
【0019】図1?図4は、本発明の写真自販機の一実施の形態を示す図である。このものは、本発明をプリント自販機に適用した例を示す。このプリント自販機は、筐体1の内部および表面に各種の装置が設けられている。ここで、説明の便宜上、筐体1において、使用者(被写体)2と対面する側(図2の左側,図3の下側)を筐体1の前側とし、反対側(図2の右側,図3の上側)を筐体1の後側とする。
【0020】上記被写体2の背後には、外部からの光を遮断するカーテン3が配設されている。このカーテン3は、筐体1の前面の上部および下部から突出された支持フレーム4,5によって支持される。上記カーテン3の内面には、画像の合成手法に応じた色彩が施される。例えば、クロマキー合成であれば、カーテン3の内面全体に緑,青等のクロマキー合成に適当な色の着色が施される。
【0021】上記筐体1内部の中央前側部には、被写体2を撮影するカメラ6と、このカメラ6が上下スライド移動可能に取り付けられたレール10とが設けられている。上記レール10の前側に対応する筐体1の部分には、開口部が形成され、この開口部にガラス・プラスチック等の透明板11が嵌めこまれている。上記カメラ6は、レール10にスライド移動可能に取り付けられたアーム22上に固定され、上記アーム22が上下左右に回動することにより、レール10上で上下左右に回動するようになっている。
【0022】上記筐体1の内部には、上記カメラ6から画像信号を受信して画像を合成する制御部7が設けられている。また、上記筐体1の前面左側部には、上記制御部7から送信された合成画像等の画像信号を受信して画像を表示するディスプレイ8が設けられている。さらに、上記筐体1の内部には、制御部7から送信された合成画像の信号を受信し、この合成画像を記録媒体15に印刷するプリンタ9が設けられている。このプリンタ9で印刷された記録媒体15は、筐体1前面に形成された送出口19から送出されるようになっている。
【0023】上記筐体1の上部および下部には、被写体2を照射する複数のライト13(この例では4つづつ)が取り付けられている。上記ライト13は、例えば、白,赤,青,黄それぞれ2灯づつ等、異なる色彩のものが複数種類設けられている。
【0024】さらに、上記筐体1の前面右側部には、操作部16が設けられている。この操作部16は、使用者2がカメラを上下スライド移動および回動させるカメラ移動レバー20や、上記複数のライト13のうちひとつまたは2つ以上の任意のライト13を選択して点灯するライト選択スイッチ21を含む各種の操作ボタン・レバー等を有し、制御部7に操作信号を送信する。
【0025】また、筐体1の前面には、コイン投入口14が設けられ、筐体1内部のコイン投入口に隣接した位置に、投入したコインを検出して制御部7に検出信号を送信するコイン検出部17(図5参照)が設けられる。また、筐体1前面の適所には、制御部7からサウンド信号を受信してサウンド出力するスピーカ18が設けられている。
【0026】また、上記筐体1のディスプレイ8の近傍には、タッチペン12が備えられている。このタッチペン12の先端をディスプレイ8の表面に接触させて文字や図形等を描いて入力することにより、手書き入力された文字・図形等の画像データがディスプレイ8に表示され、記録媒体15に印刷されるようになっている。
【0027】この例において、使用者2がディスプレイ8から見る合成画像およびプリンタ9から印刷される合成画像は、被写体2の像と、制御部7に予め記憶された記憶画像(所望のフレームや前景等)およびタッチペン12による手書き入力画像が合成されたものである。
【0028】つぎに、上記制御部7のシステム構成について詳しく説明する。図5に示すように、上記制御部7は、各種制御を実行するコンピュータ30を備えている。このコンピュータ30は、操作部16から使用者2の操作に基づく操作信号を受信し、タッチペン12によって入力された信号を受信し、さらに、コイン検出部17から検出信号を受信する。
【0029】また、上記コンピュータ30は、複数の画像データおよびサウンドデータを記憶する記憶装置31を有している。このコンピュータ30は、指定した画像データを記憶装置31から読み出してグラフィックI/F(インターフェース)回路32に転送するとともに、指定したサウンドデータを記憶装置31から読み出してサウンドI/F回路33に転送する。
【0030】上記グラフィックI/F回路32は、コンピュータ30から受け取った記憶画像データを所定の記憶画像信号に変換して画像合成装置34および表示選択回路35に送信する。一方、サウンドI/F回路33は、コンピュータ30から受け取ったサウンドデータを所定のサウンド信号に変換してスピーカ18に送信し、スピーカ18からサウンド出力させる。
【0031】また、上記制御部7には、上記カメラ6の移動を制御するコントローラ40が設けられている。このコントローラ40によるカメラ6の移動は、使用者2が操作部16のカメラ移動レバー20等を操作することにより行われ、使用者2が所望するレール10上の任意の位置にカメラ6を移動させるとともに、上記レール10上でカメラを上下左右に回動させるようになっている。そして、このカメラ6の移動および回動により、被写体2を撮影するカメラアングルが自在に変化するようになっている。
【0032】また、上記制御部7には、複数のライト13のうち任意のライト13を選択して点灯する光源選択手段41を備えている。この光源選択手段41によるライト13の選択は、使用者2が操作部16のライト選択スイッチ21を操作することによって行われる。なお、選択されるライト13はひとつでもよいし2つ以上でもよい。
【0033】さらに、上記制御部7には、タッチペン12で入力された文字図形等の信号を受信して、描かれた文字・図形等の画像データを生成する画像生成装置39が設けられている。
【0034】上記カメラ6で撮影された被写体2の画像信号と、画像生成装置39で生成された画像データは、画像合成装置34に送信される。画像合成装置34は、カメラ6からの被写体2の画像信号を第1画像信号として受信し、グラフィックI/F回路32からの記憶画像の画像信号を第2画像信号として受信し、第1画像と第2画像を合成する。さらに、上記画像合成装置34は、画像生成装置39からのタッチペン12での入力画像を第3画像信号として受信し、上記第1画像と第2画像の合成画像に合成する。

・・・略・・・

【0049】しかも、カメラアングルはカメラ6のスライド移動と回動とで無段階に変化させることができ、微妙な変化つけることができるうえ、全身を使ったさまざまなポーズの被写体2を多様なカメラアングルで撮影することができる。特に、被写体2を斜め下から見上げるように撮影した場合には、足が長く見栄えのよい全身写真を撮影できる。さらに、被写体2は、ディスプレイ8に映る自分の画像をリアルタイムで見ながら好みのポーズをとることができる。
【0050】なお、上記実施の形態では、本発明を、撮影された被写体の画像を含む原画像に基づいて印刷画像を生成し、この印刷画像を所定寸法の印刷用紙に印刷するプリント自販機に適用した例を示したが、これに限定するものではなく、銀塩写真の撮影装置にも適用することができる。
【0051】また、上記カメラ6としては、デジタルカメラを用いることもできるし、ビデオカメラを用いることもでき、特に限定するものではない。さらに、上記実施の形態では、被写体2の前側だけにライト13を配置した例を示したが、これに限定するものではなく、被写体2の背中から照射するライトを付け加える等、各種の位置にライトを配置することができる。
【0052】また、上記実施の形態において、記録媒体15としては、特に限定するものではなく、例えば、紙類,シール,プラスチックフィルム,カード類,布,不織布,ガラス板,樹脂板等各種のものを用いることができる。また、上記実施の形態において、ライト13としては、タングステンランプ,蛍光等,ストロボ等各種のものを用いることができる。」

ウ 上記ア及びイからみて、引用例1には、
「硬貨等が投入されて被写体を撮影し、シール,カード,紙類,フィルム等にプリントアウトする写真自販機において、
従来、本体の内部に、略45°の角度をもってハーフミラーが設けられ、このハーフミラーの奥に、被写体を撮影するカメラが設けられ、ハーフミラーの下方には、上記カメラで撮影された画像を表示するモニタが設けられている写真自販機では、被写体の顔写真やせいぜいバストアップ程度の写真しか撮ることができないため、被写体の顔写真だけでなく、全身を撮影できるものとして、カメラがハーフミラーの奥上方に取り付けられ、被写体を斜め上から見下ろすように、その全身を撮影することができるようにした写真自販機が実施されているが、該写真自販機でも、1台のカメラが固定されている点では前述のものと変わるところはなく、カメラアングルは一定に固定されていて、変化に富んだアングルで撮影することはできず、多様な写真をとりたいというニーズには十分に応えられていないという課題があったところ、
変化に富んだ撮影を可能とする写真自販機の提供を目的として、使用者である被写体を撮影するカメラがスライド可能に取り付けられたレールが設けられ、上記レール上でカメラが回動しうるように構成することによって、上記レールをスライドしながら回動するカメラで被写体を撮影することにより、カメラアングルはカメラのスライド移動と回動とで無段階に変化させることができ、微妙な変化つけることができるうえ、全身を使ったさまざまなポーズの被写体を多様なカメラアングルで撮影することができ、変化に富んださまざまなカメラアングルでの撮影が可能となり、利用者の多様なニーズに応えるようにした、写真自販機であって、
被写体2の背後には、外部からの光を遮断するカーテン3が配設され、このカーテン3は、筐体1の前面の上部および下部から突出された支持フレーム4,5によって支持され、上記カーテン3の内面には、画像の合成手法に応じた色彩が施されるものであり、例えば、クロマキー合成であれば、カーテン3の内面全体に緑,青等のクロマキー合成に適当な色の着色が施され、
上記筐体1の内部には、上記カメラ6から画像信号を受信して画像を合成する制御部7が設けられ、上記筐体1の内部には、制御部7から送信された合成画像の信号を受信し、この合成画像をシール等の記録媒体15に印刷するプリンタ9が設けられ、該プリンタ9から印刷される合成画像は、画像合成装置34により、被写体2の像と、制御部7に予め記憶された記憶画像(所望のフレームや前景等)およびタッチペン12による手書き入力画像が合成されたものである、
写真自販機。」の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

(2)本願の優先日前に頒布され原査定の拒絶の理由に引用文献2として引用された刊行物である特開2010-256579号公報(以下、「引用例2」という。)には、次の事項が図とともに記載されている

ア 「【実施例】
【0031】
図1は、写真シール作成装置1の全体構成を示す右後方斜め上から見た斜視図である。
写真シール作成装置1は、前方(図示左)から順に撮影空間部2、撮影筐体3、および編集筐体4がこの順で配置されている。撮影空間部2と撮影筐体3の天井部分には、天井枠22が設置されており、この天井枠22に連結して編集筐体4の天井部にも天井枠5が設置されている。
【0032】
撮影空間部2の前方(図示左)の全面には、撮影筐体3と高さおよび幅が同じサイズの背景板23が設けられ、その両側部に側面板24が設けられている。側面板24は、背景板23と同じ高さであり、該側面板24と撮影筐体3との間にユーザが出入りする出入り口が形成されている。
【0033】
撮影空間部2の床面には、床シート25が敷かれている。この床シート25と背景板23と側面板24は、撮影した際にユーザ(被写体)の背景となり得るものであり、同一色に形成されている。この色は、クロマキー合成に適した緑や青、あるいは白など、適宜の色とすることができる。
【0034】
撮影空間部2の天井部分の天井枠22には、天井照明装置21が設けられている。この天井照明装置21は、撮影空間部2内のユーザを天井から全体的に明るく照明する。
【0035】
撮影空間部2の天井部分の前方(図示左)には、背景制御ユニット74aが設けられている。この背景制御ユニット74aは、例えば色の異なる複数の背景カーテン(ロールカーテン)で構成されており、このうちの適宜の背景カーテンを下降させることで背景色を変更できる。なお、背景制御ユニット74aの変わりに、クロマキー合成に適したカーテンを1枚備える構成にしてもよい。この場合、背景となるカーテンが単数でありながら、予め記憶された多種類の背景画像を合成して様々な背景にすることができる。」

イ 上記アからみて、引用例2には、
「写真シール作成装置において、
撮影空間部2、撮影筐体3、および編集筐体4が配置され、撮影空間部2の前方の全面には、撮影筐体3と高さおよび幅が同じサイズの背景板23が設けられ、その両側部に側面板24が設けられ、側面板24は、背景板23と同じ高さであり、該側面板24と撮影筐体3との間にユーザが出入りする出入り口が形成され、撮影空間部2の床面には、床シート25が敷かれ、この床シート25と背景板23と側面板24は、撮影した際にユーザ(被写体)の背景となり得るものであり、同一色に形成されており、この色は、クロマキー合成に適した緑や青、あるいは白など、適宜の色とすることができること。」(以下、「引用例2の記載事項」という。)が記載されているものと認められる。

4 対比
本願発明と引用発明とを対比する。
(1)引用発明の「『使用者』又は『被写体』」、「被写体2の像」、「タッチペン12による手書き入力」、「シール」、「印刷」、「写真自販機」、「カメラ」、「クロマキー合成」及び「画像合成装置34」は、それぞれ、本願発明の「『利用者』又は『被写体』」、「撮影画像」、「編集入力」、「シール紙」、「印刷」、「写真シール作成装置」、「カメラ部」、「クロマキー処理」及び「合成手段」に相当する。

(2)引用発明の「写真シール作成装置(写真自販機)」は、「利用者(使用者)」である「被写体(被写体)」の像である「撮影画像(被写体の像)」と、制御部7に予め記憶された記憶画像(所望のフレームや前景等)および「編集入力(タッチペン12による手書き入力)」画像が合成された合成画像を「シール紙(シール)」等の記録媒体15に「印刷(印刷)」するプリンタ9が設けられるものであるから、本願発明の「写真シール作成装置」と、「利用者を被写体として撮影し、得られた撮影画像に対して利用者に編集入力を行わせ、前記撮影画像を所定のシール紙に印刷する」点で一致する。

(3)引用発明において、「カメラ部(カメラ)」がレールにスライド可能に取り付けられ、上記レール上で「カメラ部」が回動しうるようになっており、カメラアングルは「カメラ部」のスライド移動と回動とで無段階に変化させることができ、微妙な変化つけることができるうえ、全身を使ったさまざまなポーズの被写体を多様なカメラアングルで撮影することができ、変化に富んださまざまなカメラアングルでの撮影が可能となっており、従来の「写真シール作成装置(写真自販機)」が、全身を撮影できるものとして、カメラがハーフミラーの奥上方に取り付けられ、被写体を斜め上から見下ろすように、その全身を撮影することができるようにしたものであったことを踏まえれば、前記多様なカメラアングルにおける撮影態様の1つとして、「使用者(利用者)」の全身を前方斜め上から撮影する撮影態様が含まれ、該撮影態様の際には、レール上における「カメラ部」の高さが調整されていることは明らかであるから、引用発明の「カメラ部」と、本願発明の「カメラ部」とは、「撮影空間にいる前記利用者の全身を前方斜め上から撮影するように、高さが調整される」点で一致する。

(4)引用発明の「写真シール作成装置(写真自販機)」は、「利用者(被写体2)」の背後には、外部からの光を遮断するカーテン3が配設され、このカーテン3の内面には、画像の合成手法に応じた色彩が施されるものであり、例えば、「クロマキー処理(クロマキー合成)」であれば、カーテン3の内面全体に緑,青等の「クロマキー処理」に適当な色の着色が施され、合成画像は、「合成手段(画像合成装置34)」により、「撮影画像(被写体2の像)」と、制御部7に予め記憶された記憶画像(所望のフレームや前景等)およびタッチペン12による手書き入力画像が合成されたものであり、上記(3)のように「利用者の全身を前方斜め上から撮影する」撮影態様による撮影により得られた撮影画像において、クロマキー処理により、背景領域となるカーテン3にフレーム等の所定の背景画像を合成することは当業者に自明であるから、本願発明の「写真シール作成装置」と、「前記カメラ部が前記利用者の全身を前方斜め上から撮影して得られた前記撮影画像において、クロマキー処理により、背景領域に所定の背景画像を合成する合成手段」を備える点で一致する。

(5)上記(1)ないし(4)から、本願発明と引用発明とは、
「利用者を被写体として撮影し、得られた撮影画像に対して利用者に編集入力を行わせ、前記撮影画像を所定のシール紙に印刷する写真シール作成装置であって、
撮影空間にいる前記利用者の全身を前方斜め上から撮影するように、高さが調整されるカメラ部と、
前記カメラ部が前記利用者の全身を前方斜め上から撮影して得られた前記撮影画像において、クロマキー処理により、背景領域に所定の背景画像を合成する合成手段と
を備える写真シール作成装置。」である点で一致し、次の点で相違する。

相違点1:
本願発明では、「撮影空間における利用者の背面全面に貼付された背面クロマキー用シートと、前記撮影空間における前記利用者の側面下部のみに貼付された側面クロマキー用シートと、前記撮影空間の床全面に貼付された床面クロマキー用シートと」を備えるのに対して、
引用発明では、被写体の背後には、外部からの光を遮断するカーテンが配設され、該カーテンの内面には、画像の合成手法に応じた色彩が施されるものであり、例えば、クロマキー合成であれば、カーテンの内面全体に緑,青等のクロマキー合成に適当な色の着色が施される点。

相違点2:
前記「カメラ部」が、
本願発明では、「焦点距離が調整される」のに対し、
引用発明では、「焦点距離が調整される」のかが明らかでない点。

5 判断
(1)上記相違点1について検討する。
ア クロマキー合成できる色を着色するためにクロマキーシートを用いることは周知(以下、「周知技術1」という。例.特開2009-71463号公報(【0023】の「この撮影補助椅子9と、撮影台8と、撮影空間Zと、背面パネル6とは、クロマキー合成に適した同一色(例えば青、緑、白など)に着色されている。これにより、容易にクロマキー合成することができる。」との記載、【0089】の「また、撮影台8の側面8aが床面の色と異なる色に着色し、それ以外の撮影台8全体をクロマキー合成できる色(背面部の椅子を覆っているクロマキーシートと同色)に着色したため、撮影台8を容易に確認することができ、安全性に優れている。」との記載参照。)、特開2010-54924号公報(【0011】の「前記背景部材は、背景カーテン、背景板など、背景を構成する部材で構成することができる。この背景部材は、例えば背景板の表面を単色のクロマキーシートで覆う、あるいは単色のクロマキーシートで構成することができる。」との記載参照。)、特開2010-61646号公報(【0052】の「また、撮影ブース内側から見たシート材は均等な色調及び明度となるようにしてある。カメラ21から観た場合にユーザの後方がシート材の均等な色調及び明度となるので、後述にて説明するようにユーザが写っている領域以外を透明化するクロマキー処理が可能になる。」との記載参照。))である。
イ 上記3(2)イのように、引用例2の記載事項は、写真シール作成装置の撮影空間部において、床シート25と背景板23と側面板24は、撮影した際にユーザ(被写体)の背景となり得るものであり、同一色に形成されており、この色は、クロマキー合成に適した緑や青、あるいは白など、適宜の色としたことである。
ウ 引用発明は、被写体の背後にカーテンを配設し、該カーテンの内面には、画像の合成手法に応じた色彩が施され、カーテンの内面全体に緑,青等のクロマキー合成に適当な色の着色が施したものであり、変化に富んだ撮影を可能とすることを目的としていることからして、カーテン領域外についても、撮影画像に写り込む可能性があるところ、引用発明において、背景となるカーテンに換えて、引用例2の記載事項のように、クロマキー合成に対応した床シートと背景板と側面板を採用することは当業者が引用例2の記載事項に基づいて容易になし得たことである。
エ 引用発明において、上記ウのように、クロマキー合成に対応した床シートと背景板と側面板を採用した際に、上記アからみて、クロマキー用シートを貼付する構成となすことは、当業者が周知技術1に基づいて適宜なし得たことである。
オ そして、クロマキーシートで覆う範囲は、少なくともカメラで撮影した撮影画像に写り込む範囲とすることが技術常識(例.上記特開2010-54924号公報の【0041】参照。)であるところ、引用発明において、全身を斜め上方から撮影する場合には、上記エのように、クロマキー用シートを貼付する箇所を必要最低限の箇所、例えば、側面板については撮影空間における利用者の側面下部のみとなすことは当業者が技術常識に基づいて適宜なし得た設計的事項にすぎない。
カ してみると、引用発明において、相違点1に係る本願発明の構成となすことは、当業者が周知技術1及び技術常識に基づいて適宜なし得たことである。

(2)上記相違点2について検討する。
ア 写真を撮影してシールプリント等にする写真自販機において、カメラにズームレンズを備えることは周知(以下、「周知技術2」という。例.特開2002-125176号公報(【0035】の「このズームダイヤル10により、カメラ6のズームレンズを操作してカメラ6が撮像する画角を調節しうるようになっている。・・・このフットペダル10Aを備えたことにより、全身撮影や複数人での撮影等の際に、筐体1から離れた位置に立ったままズーミング操作が行なえる。」との記載、【0068】の「ここでは、プリントする印刷媒体15として、シール台紙やはがき等のなかから所望のシートを選択したり、シールプリントにおけるシールの枚数や大きさを選択することが行なわれる。そして、シートが選択されると、プリンタ9で所定の印刷媒体15に選択された固定画像の印刷が行なわれる(ステップ110)。」との記載参照。)、特開2001-311993号公報(【請求項1】の「前記表示画面では撮影範囲の選択を該使用者に対して促す選択画面が表示され、当該使用者の選択に応じて前記カメラがズームイン又はズームアウトを行うことを特徴とするフォトブース。」との記載、【0012】の「フォトブースは、・・・合成部4で合成された合成画像データCを一枚のプリントシールからなる被印刷体5にプリントするレーザープリンタからなる印刷手段6と、・・・とを備えている。」との記載参照。)、特開2007-295598号公報(【0106】の「尚、本実施の形態では、以上に説明した通りズームレンズは自動的に調整されるが、これ以外に、ここでは詳述しないが、コンピュータ7による自動制御を行わず、利用者Mが操作スイッチ9を操作することでズームレンズを制御する、などの手段を設けることも考えられる。」との記載、【0107】の「以上のようにして、本発明に係る映像プリント装置Aにより合成画像45が作成され、印刷される。ところで、この合成画像45の印刷を、従来の映像プリント装置のように、シール紙に印刷することも可能であるが、本実施の形態による映像プリント装置では、合成画像45をシール紙ではなく、厚手タック紙Tである印刷用紙Rに印刷するように構成している。」との記載参照。))である。
イ 引用発明は、変化に富んだ撮影を可能とする写真自販機(写真シール作成装置)の提供を目的としているところ、引用発明において、カメラアングルだけでなく、様々な画角を得るために、カメラ部が焦点距離が調整されるようになすこと、すなわち、相違点2に係る本願発明の構成となすことは当業者が周知技術2に基づいて適宜なし得たことである。

(3)本願発明の奏する効果は、引用発明の奏する効果、引用例2の記載事項の奏する効果、周知技術1の奏する効果及び周知技術2の奏する効果から当業者が予測することができた程度のものである。

(4)したがって、本願発明は、当業者が引用例1に記載された発明、引用例2の記載事項、周知技術1及び周知技術2に基づいて容易に発明をすることができたものである。

(5)なお、本願明細書には、その【0089】に「なお、図11に示されるように、クロマキー用シート121Bは、側面パネル52Bの下部のみに貼付されるものとしたが、側面パネル52Bにおいてクロマキー用シート121Bが貼付される部分は、カメラ91の画角に入る部分より広ければよく、例えば側面パネル52Bの全面であってもよい。」と記載され、クロマキー用シートはカメラの画角に入る部分より広ければよいものであるので、撮影時の画角を想定して、側面クロマキー用シートを下部のみに配置することは、当業者が適宜なし得る程度のことであるともいうことができる。

6 むすび
本願発明は、以上のとおり、当業者が引用例1に記載された発明、引用例2の記載事項、周知技術1及び周知技術2に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-05-25 
結審通知日 2015-05-26 
審決日 2015-06-08 
出願番号 特願2014-180451(P2014-180451)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G03B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 登丸 久寿  
特許庁審判長 藤原 敬士
特許庁審判官 本田 博幸
鉄 豊郎
発明の名称 写真シール作成装置  
代理人 稲本 義雄  
代理人 西川 孝  

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