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審決分類 審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない。 C12N
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 C12N
管理番号 1303496
審判番号 不服2013-21299  
総通号数 189 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-09-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-11-01 
確定日 2015-07-23 
事件の表示 特願2008-547655「細胞又は細胞様システムへのゲノム若しくは部分ゲノムのインストール」拒絶査定不服審判事件〔平成20年 2月 7日国際公開、WO2008/016380、平成21年 6月 4日国内公表、特表2009-521229〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成18年(2006年)12月22日を国際出願日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2005年12月23日 米国)とする出願であって、平成24年10月22日付けで手続補正がなされたが、平成25年6月19日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年11月1日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同日付けで手続補正がなされたものである。

第2 平成25年11月1日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成25年11月1日付けの手続補正を却下する。
[理由]
(1)補正後の本願発明
上記補正により、補正前の特許請求の範囲の請求項1?12のうち、請求項3、4及び12が削除されるとともに、特許請求の範囲の請求項1及び2が補正され、そのうち請求項1は、補正前の
「【請求項1】
細菌の合成細胞を作成するための方法であって、該方法は、
ゲノムのインストールのための第1のマイコプラズマ種の標的細胞又は細胞様システムを調製するステップ;
第2のマイコプラズマ種から共有結合で閉じられた環状の二本鎖ゲノムを抽出するステップ、このステップで該抽出されたマイコプラズマゲノムはアガロースに懸濁される;及び
該抽出されたマイコプラズマゲノムを当該標的細胞又は細胞様システムに導入するステップ、
を含み、ここで:
当該抽出されたマイコプラズマゲノムは人造ゲノムを含み、且つ当該導入されたマイコプラズマゲノムは自己複製し、且つ当該標的細胞又は細胞様システムは当該導入されたマイコプラズマゲノムによってプログラムされた表現型を呈する、方法。」から、
「【請求項1】
細菌の合成細胞を作成するための方法であって、該方法は、
ゲノムのインストールのための第1のマイコプラズマ種の標的細胞又は細胞様システムを調製するステップ;
第2のマイコプラズマ種から共有結合で閉じられた環状の二本鎖ゲノムを抽出するステップ、このステップで該抽出されたマイコプラズマゲノムはアガロースに懸濁される;及び
該抽出されたマイコプラズマゲノムをポリエチレングリコールの存在下で当該標的細胞又は細胞様システムに導入するステップ、
を含み、ここで:
当該抽出されたマイコプラズマゲノムは人造ゲノムを含み、且つ当該導入されたマイコプラズマゲノムは自己複製し、且つ当該標的細胞又は細胞様システムは当該導入されたマイコプラズマゲノムによってプログラムされた表現型を呈する、方法。」へと、補正された(下線は当審で付与した。)。

上記請求項1に係る補正は、補正前の請求項1の発明特定事項である「マイコプラズマゲノムを当該標的細胞又は細胞様システムに導入するステップ」が「ポリエチレングリコールの存在下で」行われることを限定するものであって、補正前後の請求項1に係る発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題は同一であるから、平成18年法律第55号附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下、「平成18年改正前特許法」という)第17条の2第4項第2号に規定された特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

そこで、補正後の請求項1に記載されている事項により特定される発明(以下、「本願補正発明」という。)が、平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定を満たすものであるか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について検討する。

(2)当審の判断
(2-1)特許法第36条第4項第1号に規定する要件について
(2-1-1)本願明細書の記載
本願明細書には、以下の事項が記載されている(下線は当審で付与した。)。

ア.「【0006】
ゲノムを細胞又は細胞様システムにインストールする(installing)ための方法が提供される。(本発明により)インストールないし導入されるゲノムは、自然に生じるものでよく、自動化の有無に拘らずに人造的であるか、又は、自然のもの(ゲノム)と人造物質のハイブリッドでもあり得る。繊細なゲノムは、最小の損傷で細胞外から得られる。ゲノムを安定させるか、又は、レシピエント細胞若しくは細胞様システム(例えば、タンパク質、RNA、ポリカチオン、若しくは、遺伝子翻訳システムにおけるようなシステムも)に移動するようにさせる物質は、ゲノムを伴うことができる。ゲノムの幾つかのDNAヌクレオチドはメチル化されるか、あるいは、ゲノムを天然の染色体に一層類似するように修飾されることができる。ゲノムは緩和(relaxed)されてもよく、スーパーコイルとなることもでき、又は、通常の形態が環状であれば、線形でもありうる。ゲノムは、自然の細胞に導入されるか、又は、人造的な細胞様システム(脂質小胞若しくは自然のゲノムが抑制されるか除去されたゴーストセル(ghost cell)など)に導入される。細胞様システム又は(本発明により)提供される方法の実施から生じる合成細胞は、設計されることができ、所望のタンパク質などの遺伝子発現産物を産出するよう、用いられるか、又は、新規な人造の細菌種(その設計されたゲノムは、いかなる天然細胞によっても実行されない、特別な活性を可能にできる(例えば、標準的な20のアミノ酸以外から構成されるペプチドの合成など))を生じるよう、用いられることができる。物質(materials)及び膜のタイプ(複数)を伴い、広汎で様々なゲノムを含む細胞又は細胞様システムの合成を可能にすることによって、(本発明により)提供される方法は、従来方法を用いて可能である場合より拡い分野の実験及び生物工学を可能にする。」(段落【0006】)

イ.「【0016】
ゲノムの導入は、任意の手段によって実行できる。例えば、ゲノム又は他の核酸分子は、リポソーム若しくはミセルのいずれかに封入されるか、又はリポソーム若しくはミセルのいずれかとの複合体にでき、リポソーム若しくはミセルは、さらに、タンパク質分子をサポートするような他の物質、転写及び翻訳のためのシステム、原素のイオン、塑性(plastic)あるいは他の粒子並びに/若しくは低分子化合物を含んでも、含まなくてもよい。次いで、ゲノムを含むリポソーム若しくはミセル、又は、ゲノムとの複合体としてのリポソーム若しくはミセルは、細胞に小胞の内容物の取り込みを促進する環境下で、標的の宿主細胞と接触されることができる。レシピエント細胞又は細胞様システムにゲノムをインストール(installation)するための他の方法は、物理的なアプローチ、化学的なアプローチ、及び生物学的なアプローチを含み、物理的なアプローチは、光学的ピンセット、磁気支援型トランスフェクション(導入されるべきゲノムが磁性ナノビーズに結合され、次いで、磁石によってレシピエント細胞内に引き込まれる)、レーザー増強型形質転換、弾道的アプローチ(導入されるべきゲノム的DNAは金又はタングステンのナノ粒子と複合し、次いで、高速度でレシピエント細胞内に射出される)、及び、エレクトロポレーションなどであり、化学的なアプローチ(方法)は、ポリエチレングリコール媒介法、環状ペプチドを用いて細胞に生成した合成孔を介する導入、後の取り込み(subsequent incorporation)でレシピエント細胞に導入されるDNAのカルシウム媒介沈殿、及び、DNAの酢酸リチウム媒介沈殿などであり、生物学的なアプローチは、DNAの取り込み、膜融合性ペプチド(fusogenic peptide)、及び自然の能力の誘発が後続するレシピエント細胞への寒天プラグ(agar plugs)中のDNAの単純な適用などである。
【0017】
一つの例示的な実施態様において、抗生物質耐性マーカー(tetMなど)を含んでいるM.ゲニタリウムの染色体は、リポフェクション(上述したように、標的細胞にリポソームの内容物を送達するための標的細胞とのリポソームの融合)を介して一以上のM.ゲニタリウム又はM.ニューモニエ細胞に導入される。一以上の標的細胞は抗生物質耐性マーカーを欠くことが予期され、したがって、導入されたゲノムが耐性である、テトラサイクリンに対して感受性が残存する。リポフェクションの一日後、テトラサイクリンが一以上の標的細胞のための成長培地に添加されて、その結果、単に、ゲノムが導入された、一以上の標的細胞が成長する。レシピエント細胞への抗生物質耐性マーカーの組換えを防ぐために、レシピエント細胞の相同組換えタンパク質(RecA)を不能にする必要がある。
【0018】
別の例示的な実施態様において、マイコプラズマ・ミコイデスからのゲノムDNAは上述のようにアガロースでの消化を介して分離される。精製されたDNAを含んでいる一以上のアガロースプラグは溶解されてポリエチレンイミン及びカチオン性のリポソーム(例えば、LIPOFECTAMINE(商標)2000(インビトロジェン))と混合され、ゲノムDNAはリポフェクションを介して一以上のM.カプリコラム細胞に導入される。一つの例示的な実施態様において、マイコプラズマ・ミコイデスの大きなコロニーからの裸のゲノムDNA(naked genome DNA)は、ポリエチレングリコール媒介法を用いて、一以上のM.カプリコラム細胞に導入される。」(段落【0016】?【0018】)

ウ.「【実施例】
【0022】
図1は、細胞又は細胞様システムにゲノム又は部分ゲノム(partial genome)をインストールするための一つの例示的な方法を説明する図である。細胞外のゲノムは、例えば、裸のDNA(不図示)、又は、一以上のスカフォールドタンパク質104を有する一以上のスーパーコイル状の核酸分子102、又は、一以上のスカフォールドタンパク質104及び一以上のリボソーム106(正確な縮尺ではない)を有する一以上のスーパーコイル状の核酸分子102、又は、一以上のスカフォールドタンパク質104を有する一以上のスーパーコイル状の核酸分子102、一以上のリボソーム106、並びに一以上の付随する低分子108及び一以上の一本鎖核酸分子110を含む。一以上のゲノムは、脂質小胞などの膜で境界付けられた水性容積(membrane bound aqueous volume)112に導入できる。一つの例示的な実施態様において、トマトタンパク質を生成するために添加されたカセット及び添加されたマーカーヌクレオチドを有する最小限のM.ゲニタリウムのゲノムを含んでいるゲノムは、自然のゲノムを依然として含むE.coli細胞に寒天プラグ(agar plug)において導入される。
【0023】
図2は、スーパーコイルDNA202、スカフォールドタンパク質204、及びリボソーム206(正確な縮尺ではない)を含んでいるゲノム又は部分ゲノムを自然に生じるゲノム210を依然として含むE.coli細胞208にインストールするための一つ例示的な方法を説明する図である。この例示的な実施態様において、2つのゲノムを有する細胞は、自然に生じるE.coliのゲノム210を有する娘細胞と導入されたゲノム202を有する合成の娘細胞とを生成するよう、図中の仮想の三重線に沿って分割(分裂)する。これらの娘細胞(複数)は、さらなる自己複製ができる。
【0024】
図3は、一以上の合成細胞を用いて、関心のある遺伝子発現産物を生成するための一つの例示的な方法を説明する図である。一つの例示的な実施態様において、合成ゲノム302は、所望のタンパク質をコードするための人造カセットがスプライスされており、かつ天然細胞から除去分離された、自然に生じるゲノムを含む。ゲノム302は、スカフォールドタンパク質304を有する、二本鎖のスーパーコイルDNAの形態である。ゲノム302は、例えば、光学的ピンセットを用いて、ゴーストセル306に導入される。そのようなゲノム302を有する、一以上のそのような合成細胞308は調製され、成長培地310上に蒔いて培養されて、一以上のコロニー312を形成し、かつ所望のタンパク質を発現し、自己複製能を備える、合成細胞308を提供する。」(段落【0022】?【0024】)

(2-1-2)当審の判断
上記記載事項イ.、ウ.によれば、本願の発明の詳細な説明には、一般的なDNAの導入方法が記載されているのみであって、マイコプラズマ種から抽出したゲノムを実際にマイコプラズマ種の標的細胞又は細胞様システムに導入したことについては実験条件等何ら具体的な記載がない。また、実際に細菌の合成細胞を作製したことについて何ら具体的な記載がない。
マイコプラズマ種から抽出したゲノムは100万bp程もあり、一般的なDNAの導入方法で導入する核酸よりサイズが大きく、核酸のサイズが大きくなるほど細胞への導入効率は低下するということが本願出願時の技術常識であるから、マイコプラズマ種から抽出したゲノムを、マイコプラズマ種の標的細胞又は細胞様システムに導入することができるか否かは不明であるし、仮にできるとしても、導入効率が低いことにより、所望の細菌の合成細胞を得るには、導入のための条件等を種々検討しなければならない。また、細胞内でゲノムが機能発現・自己複製するためには、膜に区切られた空間とゲノムとが存在するだけでは十分でないということが本願出願時の技術常識であるから、マイコプラズマ種から抽出したゲノムを、他のマイコプラズマ種種に由来する標的細胞や、脂質小胞やゴーストセル等を含む細胞様システムに導入した場合に、導入したゲノムが実際に機能発現・自己複製できるか否かは不明であるか、又は不可能である。
以上を考慮すれば、合成細胞の由来となるマイコプラズマ種の標的細胞や細胞様システムの選択、調製、ゲノム導入の条件の検討、導入したゲノムが実際に機能しているか等を当業者は逐一確認しなければならないことになり、それは当業者に過度な試行錯誤を強いるものであるから、本願の発明の詳細な説明は、本願出願時の技術常識を考慮しても、請求項1に係る発明を当業者が実施できるように明確かつ十分に記載されているとは認められない。
よって、本願は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。

(2-2)特許法第36条第6項第1号について
本願補正発明の課題は、上記記載事項ア.からみて、マイコプラズマ種から抽出したゲノムをマイコプラズマ種の標的細胞又は細胞様システムに導入し、所望の機能発現をする細菌の合成細胞を作製することであると認められる。
しかしながら、上記(2-1-2)で述べたとおり、本願の発明の詳細な説明及び本願出願時の技術常識を考慮しても、マイコプラズマ種から抽出したゲノムをマイコプラズマ種の標的細胞又は細胞様システムに導入し、所望の機能発現をする細菌の合成細胞を作製できることを当業者が認識できるとは認められない。
そうすると、請求項1に係る発明は、発明の詳細な説明及び本願出願時の技術常識により、発明の課題を解決できると当業者が認識できる範囲を超える発明が記載されている。
よって、本願は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。

(3)審判請求人の主張
(3-1)審判請求人は、平成25年12月2日付けで補正された審判請求書において、以下の点を主張する。
主張ア.
確かに、本発明以前には、そのような合成細胞を実際に製造できると当業者が推認することはなかったでしょう。しかし、本願は、そのような合成細胞の製造が可能であることを明確に述べ、それらを製造するために使用される方法について十分な記載を提供しております。本件発明者らは、合成生物学ならびに分子生物学の分野では非常に著名で敬意を集める、極めて信頼の厚い科学者であり、本願の記載を読んだ当業者であれば、記載された合成細胞が実際に製造できると推認するはずであることに留意すべきです。さらに、Lartigue et al.の論文(以前に提出した添付資料1)は、そのような細胞が事実、製造可能であることを裏付けています。細かな実験条件は、本願明細書の記載に基づき、当業者であれば適宜決定できるものと思量いたします。したがいまして、特許法第36条第4項第1号および第36条第6項第1号に規定の要件は十分満たされているものと思量いたします。

主張イ.
請求人は今回、請求の範囲の記載を「該抽出されたマイコプラズマゲノムをポリエチレングリコールの存在下で当該標的細胞又は細胞様システムに導入するステップ」と補正いたしました。本補正は、明細書の段落0016および0018の記載を根拠とするものです。本発明のこの側面はLartigue et al.(以前に提出した添付資料1)によっても裏付けられております。たとえ導入効率が低いとしても、細かな実験条件の設定は、本願明細書を参照することのできる当業者にとってはルーチン的な作業に過ぎません。本発明は、合成生物学という新たな分野の進歩に重要な貢献をなしたものであり、導入効率の低さは、その貢献の大きさからすれば、些細な事項に過ぎません。したがいまして、特許法第36条第4項第1号および第36条第6項第1号に規定の要件は十分満たされているものと思量いたします。

(3-2)上記主張ア.及びイ.について検討する。
出願人が平成24年10月22日付け意見書において添付資料1として提出したLartigue et al.の論文は、本願出願後の2007年に頒布された刊行物であるところ、技術を公開する代償として独占権を与えるという特許制度の趣旨、及び先願主義という我が国特許制度の基本原則からみて、発明の詳細な説明及び特許請求の範囲の記載要件は、出願当初の明細書の記載及び出願時の技術常識から判断するのが妥当であり、出願時の技術常識を考慮しても、発明の詳細な説明の記載が、請求項に係る発明を当業者が実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものであるとはいえず、また、請求項に係る発明が発明の詳細な説明に記載されたものであるといえない場合には、出願後に提出された実験データ等によって、発明の詳細な説明の記載不足を補うことはできない。
しかし、上記(2)で述べたとおり、本願出願時の技術常識を考慮しても、マイコプラズマ種から抽出したゲノムをマイコプラズマ種の標的細胞又は細胞様システムに導入し、所望の機能発現をする細菌の合成細胞を作製できることは、本願の発明の詳細な説明に明確かつ十分に記載されておらず、また、当業者が認識できるとも認められない。
加えて、本願の発明の詳細な説明には、「ポリエチレングリコール媒介法」なる一般的なDNAの導入方法名が記載されているのみであるにも関わらず、出願後にその具体的な実施条件が明らかになったからといって、そのような具体的な事項までもが、出願当初の明細書に記載されていたに等しいと主張することは、先願主義の下、出願時における十分な技術開示の代償として保護を与えるものであるという特許制度の趣旨からも許されないことである。
以上のことから、本願出願後に頒布されたものであり、かつ、本願の発明の詳細な説明において着目されていない導入方法の有用性を示す添付資料1は、本願の実施可能要件及びサポート要件を判断する上で参酌することはできない。

また仮に、添付資料1を参酌したとしても、本願補正発明は、マイコプラズマ種から抽出したゲノムの導入先として脂質小胞やゴーストセル等の細胞様システムを包含するところ、添付資料1には、マイコプラズマ種から抽出したゲノムをマイコプラズマ種の標的細胞に導入して、合成細胞を作製できたことは記載されているが、脂質小胞やゴーストセル等の細胞様システムに導入して、合成細胞を作製できたことは記載されておらず、本願出願時の技術常識を考慮しても、合成細胞を作製することは不可能である。

よって、請求人の上記主張は採用できない。

(4)むすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、特許法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
(1)本願発明
平成25年11月1日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成24年10月22日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「【請求項1】
細菌の合成細胞を作成するための方法であって、該方法は、
ゲノムのインストールのための第1のマイコプラズマ種の標的細胞又は細胞様システムを調製するステップ;
第2のマイコプラズマ種から共有結合で閉じられた環状の二本鎖ゲノムを抽出するステップ、このステップで該抽出されたマイコプラズマゲノムはアガロースに懸濁される;及び
該抽出されたマイコプラズマゲノムを当該標的細胞又は細胞様システムに導入するステップ、
を含み、ここで:
当該抽出されたマイコプラズマゲノムは人造ゲノムを含み、且つ当該導入されたマイコプラズマゲノムは自己複製し、且つ当該標的細胞又は細胞様システムは当該導入されたマイコプラズマゲノムによってプログラムされた表現型を呈する、方法。」

(2)原査定の理由
拒絶査定の理由は、発明の詳細な説明は請求項1?12に係る発明を当業者が実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものでないから、本願は特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしておらず、請求項1?12に係る発明は発明の詳細な説明に記載したものでないから、本願は第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない、というものである。

(3)当審の判断
本願発明は、本願補正発明を包含するものであるから、発明の詳細な説明は、請求項1に係る発明を当業者が実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものでないから、本願は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしておらず、請求項1に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものでないから、本願は、第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。

第4 むすび
以上のとおり、発明の詳細な説明は請求項1に係る発明を当業者が実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものでないから、本願は特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしておらず、請求項1に係る発明は発明の詳細な説明に記載したものでないから、本願は第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないことから、その余の請求項に係る発明については検討するまでもなく、本願は拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-02-24 
結審通知日 2015-02-25 
審決日 2015-03-12 
出願番号 特願2008-547655(P2008-547655)
審決分類 P 1 8・ 537- Z (C12N)
P 1 8・ 536- Z (C12N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 北田 祐介  
特許庁審判長 中島 庸子
特許庁審判官 小暮 道明
植原 克典
発明の名称 細胞又は細胞様システムへのゲノム若しくは部分ゲノムのインストール  
代理人 佐藤 利光  
代理人 井上 隆一  
代理人 新見 浩一  
代理人 渡邉 伸一  
代理人 大関 雅人  
代理人 刑部 俊  
代理人 五十嵐 義弘  
代理人 山口 裕孝  
代理人 川本 和弥  
代理人 小林 智彦  
代理人 清水 初志  
代理人 春名 雅夫  
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