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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 A61K
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61K
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A61K
管理番号 1303725
審判番号 不服2014-2297  
総通号数 189 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-09-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-02-06 
確定日 2015-07-29 
事件の表示 特願2013-133421「発泡性皮膚外用剤」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 1月15日出願公開、特開2015- 7017〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本件出願は、平成25年6月26日の出願であって、平成25年8月1日付けの拒絶理由通知に対して、平成25年9月24日に意見書及び手続補正書が提出され、平成25年11月5日付けで拒絶査定がされ、これに対して、平成26年2月6日に審判請求がされ、同日に手続補正書が提出され、平成26年3月10日に手続補正書(審判請求書)が提出され、平成26年9月30日付けの審尋に対して、回答書が提出されなかったものである。

第2 平成26年2月6日付けの手続補正の却下の決定について
[補正却下の決定の結論]
平成26年2月6日付け手続補正を却下する。

[理由]
1.補正の内容
平成26年2月6日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)は、本件補正前の請求項1、2、4?6を削除するとともに、本件補正前の請求項3である、
「酸性物質、前記酸性物質と反応して炭酸ガスを発生する炭酸ガス発生物質、及び、水溶性ポリフェノール類及び水溶性ビタミン類からなる群より選択される1種類以上を含む水溶性ポリフェノール類及び水溶性ビタミン類の経皮吸収促進剤であって、前記水溶性ビタミン類がビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB3、ビタミンB5、ビタミンB6、ビタミンB9、及びこれらの塩からなる群より選択される1種類以上を含むことを特徴とする、水溶性ポリフェノール類及び水溶性ビタミン類の経皮吸収促進剤。」

「酸性物質、前記酸性物質と反応して炭酸ガスを発生する炭酸ガス発生物質、及び、水溶性ポリフェノール類及び水溶性ビタミン類からなる群より選択される1種類以上を含む水溶性ポリフェノール類及び水溶性ビタミン類の経皮吸収促進剤であって、前記炭酸ガス発生物質に対する前記酸性物質のモル比が1以下であり、前記水溶性ビタミン類がビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB3、ビタミンB5、ビタミンB6、ビタミンB9、及びこれらの塩からなる群より選択される1種類以上を含むことを特徴とする、水溶性ポリフェノール類及び水溶性ビタミン類の経皮吸収促進剤。」
としたうえで、新たな請求項1とするものである。

2.補正の目的要件
上記補正のうち、本件補正前の請求項3に係る補正事項について検討する。
当該補正事項は、「前記炭酸ガス発生物質に対する前記酸性物質のモル比が1以下であり」との事項を加えるものである。
そして、斯かる補正事項は、本件補正前の請求項3に記載された発明特定事項である「酸性物質、前記酸性物質と反応して炭酸ガスを発生する炭酸ガス発生物質」を、両物質(すなわち、酸性物質と炭酸ガス発生物質)のモル比を限定することによって、狭い範囲の態様に限定するものである。また、斯かる補正事項は、発明の属する技術分野及び解決すべき課題を変更するものではない。
よって、本件補正前の請求項3に係る補正事項は、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するといえる。

3.独立特許要件
そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下、「本件補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するものであるか否か。)について検討する。

(1)本件補正発明
本件補正発明は、本件補正に係る特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「酸性物質、前記酸性物質と反応して炭酸ガスを発生する炭酸ガス発生物質、及び、水溶性ポリフェノール類及び水溶性ビタミン類からなる群より選択される1種類以上を含む水溶性ポリフェノール類及び水溶性ビタミン類の経皮吸収促進剤であって、前記炭酸ガス発生物質に対する前記酸性物質のモル比が1以下であり、前記水溶性ビタミン類がビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB3、ビタミンB5、ビタミンB6、ビタミンB9、及びこれらの塩からなる群より選択される1種類以上を含むことを特徴とする、水溶性ポリフェノール類及び水溶性ビタミン類の経皮吸収促進剤。」

(2)刊行物、及び、刊行物に記載された事項
(2-1)刊行物
刊行物A:特開2012-254285号公報
(平成25年11月5日付け拒絶査定における引用文献3である。)

(2-2)刊行物Aに記載された事項
A1:「【特許請求の範囲】

【請求項11】
美容施術を適用するための装置を提供する工程と、
前記装置に封入される第1の活性物質を提供する工程と、
前記装置に封入される第2の活性物質を提供する工程と、
前記第2の活性物質を前記第1の活性物質と調整可能に化学的に反応させることにより発泡作用を生じさせる工程と、
前記第1の活性物質と、前記第2の活性物質と、前記発泡作用と、前記反応の結果生じる物質とのうちの少なくとも1つを、施術される皮膚に擦り込むことにより美容施術のために使用する工程と
を備える方法。

【請求項17】
前記発泡作用によって前記化学反応中に二酸化炭素(CO_(2))が放出される請求項11に記載の方法。」

A2「【0006】
一般的な皮膚施術、より詳しくは美容皮膚施術では、種々のターゲットに役立つことを目的とした種々の手段や物質が利用される。種々のターゲットとしては、皮膚の表皮層(上層または外層)を除去すること、皮膚の色を明るくすること、芳香または保湿物質を適用すること、医療組成物、ビタミンまたは消毒剤を適用すること等がある。…また、こうした施術手段や物質は、皮膚表皮層の最外層に入り込みこれを貫通する能力に限界があるため、その効果は限定的である。
【0007】
本発明の実施形態によれば、表皮層の除去深度、皮膚に対する施術用物質の浸透レベル、施術終了時における施術済み皮膚の最終的な滑らかさといった点について、より良い施術結果が得られるべく、ある種の第1および第2の物質の化学反応での周知の発泡作用の現象が美容皮膚施術に利用され得る。第1および第2の物質としては、例えば、ベーキングソーダ(重炭酸ナトリウム)、クエン酸(C_(6)H_(8)O_(7(aq)))などのいくつかの他の物質が挙げられる。…周知のように、ベーキングソーダとクエン酸との化学反応は、次式の通りに示される。
【0008】
【化1】



A3「【0011】
本発明の実施形態によれば、この現象は、反応中に放出される気体(例えばCO_(2))を利用することにより、この放出気体の助けがない時に可能である深度よりも深く施術用物質の粒状物を施術される皮膚内に押し込めるために利用され得る。…また、第1および/または第2の物質は、それらの化学反応が粒状物および気体を生じさせる限り、固体、粉体、液体、ゲル、または気体など、いかなる適切な相(phase)でも提供され得ることは当業者には明らかであろう。…」

A4「【0014】
(発泡性錠剤の組成)
…本発明の実施形態によれば、塩基は、酸との反応において二酸化炭素を放出することを要する。こうした酸の例としては、酒石酸やクエン酸が含まれ得る。塩基の例としては、炭酸ナトリウム、重炭酸カリウム、重炭酸ナトリウムが含まれる。…発泡性塩としては次の成分(重炭酸ナトリウム、クエン酸および酒石酸)を含むことができ、これらは実際に発泡を生じさせることができる。これらの酸および塩基は、水が添加されると、二酸化炭素を遊離するように反応し、発泡が生じる。…
【0015】
…通常、クエン酸と酒石酸との割合は1:2であることが好ましく、その結果、好ましい成分の割合としては、次式の通り算出されることができる。
【0016】
クエン酸:酒石酸:重炭酸ナトリウム=1:2:3.44(重量による)
…」

A5「【0028】
(美容活性の可能性)
(ビタミン)
粉末状での混合が可能な水溶性ビタミンが好ましい。例えば、ビタミンC(アスコルビン酸-発泡反応のための酸としても使用可能)、ビタミンB群(B1(チアミン)、B2(リボフラビン)、B3(ナイアシン)、B6(ピリドキシン)、プロビタミンB5(パンテノール)、B9(葉酸)、B12(コバラミン))が挙げられる。…ビタミンは、保湿、抗酸化、しわ減少、皮膚のホワイトニング、抗ニキビ作用を奏することができる。」

A6「【0041】
(代表的な配合例)
重量1.5グラム(1500mg)に製造される発泡性錠剤1錠であって、ビタミンC含有発泡性錠剤1錠の配合は、以下の通りである。
【0042】
ビタミンC 500mg
ピリドキシン 20mg
PVP 3% 45mg
スクロース 15% 225mg
クエン酸一水和物 208mg
酒石酸 222.9mg
PEG8000 30mg
(算出法)
本発明の実施形態にかかる美容皮膚施術用1500mg錠剤の計算式の例は、以下の通りである。
【0043】
発泡性錠剤の重量=1500mg
内層の重量(活性成分、酸、塩基、結合剤、および賦形剤からなる)(98%)=98/100×1500mg=1470mg
外層(潤滑剤からなる)(2%)=2/100×1500mg=30mg
酸および塩基の重量=内層-(活性成分+結合剤+賦形剤)=1470mg-(520+45+225)mg=680mg
クエン酸一水和物:
分子量=210.13
当量数=3
当量重量=210.13/3=70.04
酒石酸:
分子量=150.09
当量数=2
当量重量=150.09/2=75.05
重炭酸ナトリウム:
分子量=84.01
当量数=1
当量重量84.01/1=84.01
70.04(モル当量)+75.05(モル当量)+84.01(モル当量)=680mg
229.1(モル当量)=680mg
(モル当量)=2.97
クエン酸一水和物=70.04×2.97=208mg
酒石酸=75.05×2.97=222.9mg
重炭酸ナトリウム=84.01×2.97=249.5mg
(配合中の物質および製造選択法の考察)
本発明の実施形態にかかる皮膚施術用錠剤の調製に使用される好ましい結合剤は、PVPである。これは、PVPが水溶性の結合剤であるためである。また、結合剤として使用されるPVPの濃度としては、3%が選択され得る。これは、薬剤製造および技術における代表的な範囲が0.5?5%であるためである。賦形剤としては、スクロースが使用され得る。これは、発泡性錠剤に使用される賦形剤がショ糖であるためである。賦形剤の濃度としては、例えば15%が選択され得る。使用される酸は、クエン酸一水和物と酒石酸との組み合わせであり、これらは、製造される錠剤が優れた発泡作用を奏するように適合されている。クエン酸一水和物が単独で使用されると、製造される粒状物は粘着性があり且つ柔らかくなるため、圧縮されなくなる。一方、酒石酸が単独で使用されると、製造される発泡性錠剤は固くひび割れをする可能性がある。重炭酸ナトリウムは塩基として使用され得る。PEG8000は潤滑剤として使用され得る。」

A7「【0044】
(美容皮膚施術の適用)
…第1および第2の活性物質は、化学的に反応し、発泡作用を通じて気体(二酸化炭素など)を遊離する(ブロック16)。…公知の美容施術と比較して、少なくとも第1の活性物質の粒状物は、発泡作用の結果として施術される皮膚に対してより深く浸透することができ、これにより、好ましくない皮膚細胞をより深い皮膚層から除去することができる。また、発泡作用は、施術用錠剤の添加剤を皮膚層により深く供給する助けにもなり得る。

【図1】



(2-3)刊行物Aに記載された発明
刊行物Aには、第1の活性物質と第2の活性物質とを化学的に反応させることにより二酸化炭素(CO_(2))による発泡作用を生じさせて皮膚に擦り込むことによって美容施術を行うこと(摘示A1)が記載されており、さらに、第1、第2の活性物質が重炭酸ナトリウム、クエン酸、酒石酸等であること(摘示A2、A4)、及び、美容活性のために水溶性のビタミン類等を添加すること(摘示A5)が記載されている。
そして、摘示A6の段落【0043】の算出法の記載からみて、「活性成分520mg、結合剤45mg、賦形剤225mg、クエン酸一水和物208mg、酒石酸222.9mg、重炭酸ナトリウム249.5mg」を含有する内層を有する発泡性錠剤が記載され、段落【0042】?【0043】の記載(なお、【0043】には、「…本発明の実施形態にかかる皮膚施術用錠剤の調製に使用される好ましい結合剤は、PVPである。…賦形剤としては、スクロースが使用され得る。…PEG8000は潤滑剤として使用され得る。」と記載されている。)からみて、「活性成分520mg」、「結合剤45mg」、「賦形剤225mg」が順に、ビタミンC500mgとピリドキシン20mg、PVP45mg、スクロース225mgであること、PEG8000が潤滑剤であることが記載されているものと認められる

以上の刊行物Aの記載事項を、摘示A6の事項を中心にして総合すると、刊行物Aには、次の発明(以下、「引用発明」という。)が開示されているといえる。
「活性成分(ビタミンC500mgとピリドキシン20mg) 520mg、
結合剤(PVP) 45mg、
賦形剤(スクロース) 225mg、
クエン酸一水和物 208mg、
酒石酸 222.9mg、
重炭酸ナトリウム 249.5mg、
潤滑剤(PEG8000) 30mg
を含有する発泡性錠剤。」

(3)本件補正発明と引用発明との対比
本件補正発明と引用発明とを対比する。

引用発明の「クエン酸一水和物、酒石酸」、「重炭酸ナトリウム」は、本件補正発明の「酸性物質」、「前記酸性物質と反応して炭酸ガスを発生する炭酸ガス発生物質」に相当する。

「ピリドキシン」はビタミンB6と認められる(例えば、本件補正明細書の発明の詳細な説明の段落【0029】や摘示A5参照。)から、引用発明の「活性成分(ビタミンC500mgとピリドキシン20mg)」の「ピリドキシン20mg」は、本件補正発明の「水溶性ポリフェノール類及び水溶性ビタミン類からなる群より選択される1種類以上…であって、…、前記水溶性ビタミン類がビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB3、ビタミンB5、ビタミンB6、ビタミンB9、及びこれらの塩からなる群より選択される1種類以上を含む」のうちの「ビタミンB6」に相当する。

引用発明の「発泡性錠剤」は、本件補正発明の「経皮吸収促進剤」と「剤」である点で一致する。

本件補正発明が「酸性物質、前記酸性物質と反応して炭酸ガスを発生する炭酸ガス発生物質、及び、水溶性ポリフェノール類及び水溶性ビタミン類からなる群より選択される1種類以上を含む…剤」であって、発明特定事項とされた成分以外の他の成分を適宜の量使用することを許容するものであることからみて、引用発明の「活性成分(ビタミンC500mg…)520mg、結合剤(PVP)45mg、賦形剤(スクロース)225mg、…、潤滑剤(PEG8000)30mg」は、本件特許発明との相違点とならないものである。

(なお、本件補正発明の「経皮吸収促進剤」は一剤型のものである点は発明特定事項としないものと認められるが、引用発明は一剤からなる錠剤と認められるから、両者は斯かる点でも相違するといえないし、そもそも、皮膚外用剤として一剤型のものは周知であり、斯かる周知技術を考慮して皮膚外用剤を一剤型とすることは当業者が必要に応じ適宜行うことに過ぎないものと認められる。)

そうすると両者は、
「酸性物質、前記酸性物質と反応して炭酸ガスを発生する炭酸ガス発生物質、及び、水溶性ポリフェノール類及び水溶性ビタミン類からなる群より選択される1種類以上を含む剤であって、前記水溶性ビタミン類がビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB3、ビタミンB5、ビタミンB6、ビタミンB9、及びこれらの塩からなる群より選択される1種類以上を含むことを特徴とする剤。」
の点で一致し、次の点で一応相違するものと認められる。

相違点1:本件補正発明は「炭酸ガス発生物質に対する酸性物質のモル比が1以下」のものであるのに対して、引用発明は斯かる事項を発明特定事項としないものである点。
相違点2:本件補正発明は「水溶性ポリフェノール類及び水溶性ビタミン類の経皮吸収促進剤」であるのに対して、引用発明は「発泡性錠剤」である点。

(4)相違点の検討
ア.相違点1
引用発明は、炭酸ガス発生物質である重炭酸ナトリウムを249.5mg、酸性物質であるクエン酸一水和物、酒石酸を順に208mg、222.9mg含有するものである。
そして、重炭酸ナトリウム、クエン酸一水和物、酒石酸の分子量は技術常識からみて順に84.01、210.13、150.09である(摘示A6)から、引用発明は、炭酸ガス発生物質である重炭酸ナトリウムを2.97×10^(-3)モル(=249.5×10^(-3)÷84.01)、クエン酸一水和物を9.90×10^(-4)モル(=208×10^(-3)÷210.13)、酒石酸を1.49×10^(-3)モル(=222.9×10^(-3)÷150.09)含有し、炭酸ガス発生物質2.97×10^(-3)モル及び酸性物質2.48×10^(-3)(=9.90×10^(-4)+1.49×10^(-3))モルを含有するものであるから、炭酸ガス発生物質に対する酸性物質のモル比が0.84(=2.48×10^(-3)÷2.97×10^(-3))であって、「炭酸ガス発生物質に対する酸性物質のモル比が1以下」との条件を満たすものと認められる。

さらに、刊行物Aには、
「…発泡性塩としては次の成分(重炭酸ナトリウム、クエン酸および酒石酸)を含むことができ、…好ましい成分の割合としては、次式の通り算出されることができる。
クエン酸:酒石酸:重炭酸ナトリウム=1:2:3.44(重量による)」(摘示A4)
と記載されており、これは、重炭酸ナトリウム、クエン酸、酒石酸の分子量(重炭酸ナトリウム、酒石酸の分子量は上記のとおり84.01、150.09であり、クエン酸の分子量は192.13(=210.13-18(水の分子量))である。)を考慮すると、モル比に換算して、
クエン酸:酒石酸:重炭酸ナトリウム=0.127:0.325:1
(=1÷192.13:2÷150.09:3.44÷84.01)
であって、炭酸ガス発生物質である重炭酸ナトリウムに対する酸性物質であるクエン酸と酒石酸の合計のモル比として1以下(=0.127+0.325=0.452)が、好ましいものとして刊行物Aに開示されているといえる。

そうすると、相違点1に係る本件補正発明の構成の点は、引用発明との相違点といえないものである。

イ.相違点2
刊行物Aの「本発明の実施形態によれば、…皮膚に対する施術用物質の浸透レベル…といった点について、…利用され得る」(摘示A2)、「…施術される皮膚に対してより深く浸透することができ…」(摘示A7)等の記載等からみて、引用発明が皮膚に適用されて浸透して効能を発揮する剤、すなわち、「経皮吸収」剤であることは当業者にとって明らかなことといえる。

そして、刊行物Aの「…ビタミン…を適用すること等がある。…また、こうした施術手段や物質は、皮膚表皮層の最外層に入り込みこれを貫通する能力に限界があるため、その効果は限定的である。…本発明の実施形態によれば、…皮膚に対する施術用物質の浸透レベル、…について、より良い施術結果が得られるべく…」、「本発明の実施形態によれば…、反応中に放出される気体(例えばCO_(2))を利用することにより、この放出気体の助けがない時に可能である深度よりも深く施術用物質の粒状物を施術される皮膚内に押し込める」(摘示A2、A3)との事項等からみて、引用発明は、ビタミン類等を含む施術用物質の経皮吸収を促進するものであり、「…水溶性ビタミンが好ましい。例えば、…B6(ピリドキシン)…が挙げられる。…ビタミンは、保湿、抗酸化、しわ減少、皮膚のホワイトニング、抗ニキビ作用を奏することができる。」との記載等(摘示A5)からみて、経皮吸収を促進してその効能を高めるビタミン類としてB6(ピリドキシン)等の水溶性ビタミン等が記載されていると認められる。

以上によれば、刊行物Aには、引用発明がB6(ピリドキシン)等の水溶性ビタミン等の経皮吸収を促進することが開示されているといえるから、水溶性ポリフェノール類及び水溶性ビタミン類からなる群より選択される少なくとも1種類の成分を含有し当該成分の経皮吸収を促進することは未知の属性とはいえない。

すなわち、引用発明は、前記(3)、(4)ア.に記載したとおり、酸性物質、炭酸ガス発生物質及び水溶性ビタミン類(ビタミンB6)を含有し、炭酸ガス発生物質に対する酸性物質のモル比が1以下であって、本件補正発明と物としての経皮吸収剤として何ら相違しないものであるところ、斯かる引用発明が水溶性ポリフェノール類及び水溶性ビタミン類からなる群より選択される少なくとも1種類の成分(B6(ピリドキシン)等の水溶性ビタミン等)を含有し当該成分の経皮吸収を促進することが刊行物Aには開示されているから、水溶性ポリフェノール類及び水溶性ビタミン類からなる群より選択される少なくとも1種類の成分を含有し当該成分の経皮吸収を促進することは未知の属性とはいえない。
(なお、水溶性ビタミン等の経皮吸収が二酸化炭素等の気体によって促進されることは、例えば、平成25年11月5日付け拒絶査定で引用された特開2013-53147号公報(引用文献8)に「…ビタミンC誘導体などの美容薬剤を、炭酸を含まない通常の美容パックよりも炭酸によって皮膚により多く吸収させるようにすることを目的として開発された顔の美容技術に関するものである。」(段落【0006】)と開示されるように、周知の技術的事項と推認される。)。

そうすると、本件補正発明の「水溶性ポリフェノール類及び水溶性ビタミン類の経皮吸収促進剤」との構成の点は、引用発明が有することが刊行物Aに開示されたものであって、未知の属性とはいえないから、ある物の未知の属性により新たな用途に適することを見出したものではなく、引用発明との実質的な相違点とはいえないものである。

(5)独立特許要件のまとめ
以上のとおりであって、相違点1、2に係る本件補正発明の構成の点は、いずれも引用発明との相違点といえないものであるから、本件補正発明は、刊行物Aに記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができないものである。

4.補正の却下の決定のむすび
よって、本件補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものとはいえないから、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本件出願に係る発明
本件出願に係る発明は、平成25年9月24日付け手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1?6に記載された事項により特定されるとおりのものであり、そのうち請求項3に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。
「酸性物質、前記酸性物質と反応して炭酸ガスを発生する炭酸ガス発生物質、及び、水溶性ポリフェノール類及び水溶性ビタミン類からなる群より選択される1種類以上を含む水溶性ポリフェノール類及び水溶性ビタミン類の経皮吸収促進剤であって、前記水溶性ビタミン類がビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB3、ビタミンB5、ビタミンB6、ビタミンB9、及びこれらの塩からなる群より選択される1種類以上を含むことを特徴とする、水溶性ポリフェノール類及び水溶性ビタミン類の経皮吸収促進剤。」

第4 原査定の理由
原査定の理由は、「この出願については、平成25年8月1日付け拒絶理由通知書に記載した理由1及び2によって、拒絶をすべきものです。」というものであり、このうち理由1は、平成25年8月1日付け拒絶理由通知書によると次の理由によるものである。

「1.この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)
理由1及び2
・請求項 1-6
・引用文献等 1-13
・備考

引用文献3に開示される発明…と、請求項1-3、5、6に係る発明とは発明を特定するための事項に差異がない。

引 用 文 献 等 一 覧

3.特開2012-254285号公報
…」
(当審注:なお、当該拒絶理由通知における請求項5には、ビタミンB6等のビタミン類を含むものに係る発明が記載されている。)

第5 当審の判断
当審は、本願発明は、引用文献3に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定により、特許を受けることができないものであると判断する。

1.引用文献3の記載事項、及び、引用文献3に記載された発明
引用文献3の記載事項は、刊行物Aについて、前記「第2 3.(2)(2-2)」に記載したとおりである。
そして、引用文献3には前記「第2 3.(2)(2-3)」に記載したとおりの発明(以下、同様に、「引用発明」という。)が記載されている。
2.本願発明と引用発明との対比
本願発明は、本件補正発明(前記「第2 3.(1)」参照。)から、「前記炭酸ガス発生物質に対する前記酸性物質のモル比が1以下であり」との事項が削除されたものであって、斯かる発明特定事項が除かれた本願発明は、本件補正発明を包含するものといえる。
そこで、本願発明と引用発明とを前記「第2 3.(3)」において、本件補正発明と引用発明とを対比したのと同様に対比すると、両者は、「酸性物質、前記酸性物質と反応して炭酸ガスを発生する炭酸ガス発生物質、及び、水溶性ポリフェノール類及び水溶性ビタミン類からなる群より選択される1種類以上を含む剤であって、前記水溶性ビタミン類がビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB3、ビタミンB5、ビタミンB6、ビタミンB9、及びこれらの塩からなる群より選択される1種類以上を含むことを特徴とする剤。」
の点で一致し、次の点で一応相違するものと認められる。

相違点1’:本件補正発明は「水溶性ポリフェノール類及び水溶性ビタミン類の経皮吸収促進剤」であるのに対して、引用発明は「発泡性錠剤」である点。

3.相違点1’の検討
相違点1’は、前記「第2 3.(3)」に、本件補正発明と引用発明との対比において記載した相違点2と同様の相違点であるから、前記「第2 3.(4)イ.」に相違点2について記載した理由と同様の理由によって、相違点1’に係る本願発明の構成の点は、引用発明との相違点といえないものである。

4.まとめ
よって、本願発明は、引用文献3に記載された発明であると認められる。
第6 むすび
以上のとおりであって、本願発明は特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができないものであるから、その余の点について検討するまでもなく、本件出願は、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-05-27 
結審通知日 2015-06-01 
審決日 2015-06-16 
出願番号 特願2013-133421(P2013-133421)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A61K)
P 1 8・ 113- Z (A61K)
P 1 8・ 121- Z (A61K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 池田 周士郎  
特許庁審判長 松浦 新司
特許庁審判官 関 美祝
新居田 知生
発明の名称 発泡性皮膚外用剤  
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