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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1303730
審判番号 不服2014-4435  
総通号数 189 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-09-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-03-06 
確定日 2015-07-29 
事件の表示 特願2011-507430「モード間通信のための通信装置、方法、およびコンピュータ可読媒体(モダリティ間ブリッジによる会話型非同期マルチチャネル通信)」拒絶査定不服審判事件〔平成21年11月 5日国際公開、WO2009/134362、平成23年 8月 4日国内公表、特表2011-523117〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 【第1】経緯
本願は,平成21年4月29日(パリ条約による優先権主張 平成20年4月30日,米国)を国際出願日とする出願であって,手続の概要は以下のとおりである。

手続補正(特許請求の範囲):平成22年12月20日
拒絶理由通知 :平成25年 3月18日(起案日)
意見書 :平成25年 5月 1日
手続補正(特許請求の範囲):平成25年 5月 1日
拒絶査定 :平成25年11月27日(起案日)
拒絶査定不服審判請求 :平成26年 3月 6日
手続補正(特許請求の範囲):平成26年 3月 6日
前置審査報告 :平成26年 5月15日
上申書 :平成26年 6月24日

【第2】本願発明
本願の請求項1?20に係る各発明は,出願当初の特許請求の範囲,明細書及び図面の記載,及び平成26年3月6日付け手続補正書の特許請求の範囲の記載からみて,それぞれ,同手続補正書の特許請求の範囲の請求項1?20に記載した事項により特定されるとおりのものと認められるところ,そのうち,請求項11に係る発明(以下「本願発明」という。)は,下記のとおりのものである。
記(本願発明)
【請求項11】
第1のモダリティを有する入力を受信するステップと,
コンテキスト情報に基づいて出力モダリティを決定するステップと,
前記入力を第1のモダリティから前記出力モダリティに変換するために複数の通信エンジンを管理するステップと,
変換中の前記入力にコンテキスト・データを関連付けるステップと,
関連出力チャネルに前記出力モダリティを出力するステップと,
を含み,
これらの各ステップをコンピュータに実行させる,モード間通信の方法。

【第3】当審の判断

[1]引用刊行物の記載
原査定の拒絶の理由に引用された,本願の出願前に頒布された刊行物である,特開2004-302850号公報(以下,「刊行物1」という。)には,図面とともに,以下の事項(下線は,注目箇所を示すために当審で施したものである。)が記載されている。

〈特許請求の範囲〉
【請求項1】
1以上のメッセージメディアから発行されるメッセージを,ネットワークを介して配信する動的メディア選択配信装置であって,
前記メッセージを,利用した前記メッセージメディアに固有のプロトコルに従い受信して統合形式のメッセージに変換するメッセージ受信部と,
前記統合形式のメッセージからメッセージ受信者のアドレスを特定し,当該受信者の現在における状態と,当該受信者によりあらかじめ設定された配信ルールを取得し,当該配信ルールを適用してメッセージ配信に適切なメッセージメディアおよび配信タイミングを動的に決定するメッセージ処理部と,
前記統合形式のメッセージを,前記決定されたメッセージメディアに固有のプロトコルおよび前記配信タイミングに従い配信するメッセージ配信部と,
を備えたことを特徴とする動的メディア選択配信装置。
【請求項4】
1以上のメッセージメディアから発行されるメッセージを,ネットワークを介して配信する動的メディア選択配信方法であって,
前記メッセージを,利用した前記メッセージメディアに固有のプロトコルに従い受信して統合形式のメッセージに変換し,
前記統合形式のメッセージからメッセージ受信者のアドレスを特定し,当該受信者の現在における状態と,当該受信者によりあらかじめ設定された配信ルールを取得し,当該配信ルールを適用してメッセージ配信に適切なメッセージメディアおよび配信タイミングを動的に決定し,
前記統合形式のメッセージを,前記決定されたメッセージメディアに固有のプロトコルおよび前記配信タイミングに従い配信すること,
を特徴とする動的メディア選択配信方法。
【請求項5】
1以上のメッセージメディアから発行されるメッセージを,ネットワークを介して配信する動的メディア選択配信装置に用いられるプログラムであって,
前記メッセージを,利用した前記メッセージメディアに固有のプロトコルに従い受信して統合形式のメッセージに変換するステップと,
前記統合形式のメッセージからメッセージ受信者のアドレスを特定し,当該受信者の現在における状態と,当該受信者によりあらかじめ設定された配信ルールを取得し,当該配信ルールを適用してメッセージ配信に適切なメッセージメディアおよび配信タイミングを動的に決定するステップと,
前記統合形式のメッセージを,前記決定されたメッセージメディアに固有のプロトコルおよび前記配信タイミングに従い配信するステップと,
をコンピュータに実行させる動的メディア選択配信プログラム。

〈技術分野〉
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は,インターネットメール,インスタントメッセンジャ,インターネットリレーチャット(IRC),Web掲示板,Webチャット等,1以上のメッセージメディアから発行されるメッセージを,ネットワークを介して配信する,動的メディア選択配信装置および方法,ならびに動的メディア選択配信プログラムに関する。

〈従来技術〉
【0002】
【従来の技術】
メッセージングを行うメディア(メッセージメディア)には,インターネットメール,インスタントメッセンジャ,インターネットリレーチャット(IRC),WEB掲示板,WEBチャット等がある。
これらのメディアは相互に交換性がないため,ユーザは,同一のメディアを利用してメッセージングを行う必要がある。また,受信側ユーザがメディアを利用してメッセージを閲覧できる環境に無い場合,メッセージの交換ができないか,あるいはメッセージを遅延して受け取る仕組みになっている。尚,従来技術として特許文献1,特許文献2が公開されている。
【0003】
【特許文献1】
特開平9-331352号公報
【特許文献2】
特開平6-224936号公報

〈課題,目的〉
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記したメディアは,それぞれ別々のデバイス,別々のプロトコル,および別々のメッセージ形式を利用している。そのため,それぞれのメディアは隔離された形になっており,異種メディア間でメッセージ交換を行うことができない。
また,メッセージ交換を行うには,事前に相手が利用できるメディアの種類,及び相手のメディア固有の通信アドレスを認知しておく必要があり,その上,同時刻にお互いが同時にメディアを利用できる環境にあることが条件になっている。また,一方が利用可能な状況において,事前にメッセージが送信できるメディアも存在するが,受け取り側での遅延が発生するため,双方向での同時通信はなしえない。

【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり,各種メッセージメディアをサーバで統合することにより透過的に扱えるようにすると共に,メッセージ本文や添付ファイルの内容,日時,時間,受信側ユーザの接続状況,利用帯域等の各種条件に対して,受信側ユーザが事前に配信ルールを設定しておくことにより,動的にメッセージの交換や時間調整を行い配信可能な,動的メディア選択配信装置および方法,ならびに動的メディア選択配信プログラムを提供することを目的とする。

〈課題を解決するための手段〉
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記した課題を解決するために本発明は,1以上のメッセージメディアから発行されるメッセージを,ネットワークを介して配信する動的メディア選択配信装置であって,前記メッセージを,利用した前記メッセージメディアに固有のプロトコルに従い受信して統合形式のメッセージに変換するメッセージ受信部と,前記統合形式のメッセージからメッセージ受信者のアドレスを特定し,当該受信者の現在における状態と,当該受信者によりあらかじめ設定された配信ルールを取得し,当該配信ルールを適用してメッセージ配信に適切なメッセージメディアおよび配信タイミングを動的に決定するメッセージ処理部と,前記統合形式のメッセージを,前記決定されたメッセージメディアに固有のプロトコルおよび前記配信タイミングに従い配信するメッセージ配信部と,を備えたことを特徴とする。
【0008】
本発明によれば,メッセージ処理部が,メッセージ受信部により変換された統合形式のメッセージからメッセージ受信者のアドレスを特定し,当該受信者の現在における状態と,当該受信者によりあらかじめ設定された配信ルールを取得し,当該配信ルールを適用してメッセージ配信に適切なメッセージメディアおよび配信タイミングを動的に決定することで,異種メディアで生成されたメッセージを透過的に扱うことができる。
また,メッセージ本文や添付ファイルの内容,日時,時間,受信側ユーザの接続状況,利用帯域等の各種条件に対して,受信者が事前に配信ルールを設定しておくことで,動的にメッセージの交換や時間調整を行うことができ,これらの要素に利用が制限されない動的メディア選択配信装置を提供することができる。

【0011】
上記した課題を解決するために本発明は,1以上のメッセージメディアから発行されるメッセージを,ネットワークを介して配信する動的メディア選択配信方法であって,前記メッセージを,利用した前記メッセージメディアに固有のプロトコルに従い受信して統合形式のメッセージに変換し,前記統合形式のメッセージからメッセージ受信者のアドレスを特定し,当該受信者の現在における状態と,当該受信者によりあらかじめ設定された配信ルールを取得し,当該配信ルールを適用してメッセージ配信に適切なメッセージメディアおよび配信タイミングを動的に決定し,前記統合形式のメッセージを,前記決定されたメッセージメディアに固有のプロトコルおよび前記配信タイミングに従い配信すること,を特徴とする。
【0012】
上記した課題を解決するために本発明は,1以上のメッセージメディアから発行されるメッセージを,ネットワークを介して配信する動的メディア選択配信装置に用いられるプログラムであって,前記メッセージを,利用した前記メッセージメディアに固有のプロトコルに従い受信して統合形式のメッセージに変換するステップと,前記統合形式のメッセージからメッセージ受信者のアドレスを特定し,当該受信者の現在における状態と,当該受信者によりあらかじめ設定された配信ルールを取得し,当該配信ルールを適用してメッセージ配信に適切なメッセージメディアおよび配信タイミングを動的に決定するステップと,前記統合形式のメッセージを,前記決定されたメッセージメディアに固有のプロトコルおよび前記配信タイミングに従い配信するステップと,をコンピュータに実行させることを特徴とする。

〈実施の形態〉
【0013】
【発明の実施の形態】
図1は,本発明の動的メディア選択配信装置が実装されるメッセージ統合配信サーバの構成を説明するために引用した図である。
本発明の動的メディア選択配信装置は,送信側のメッセージメディア1と,受信側のメッセージメディア2を仲介し,メッセージ受信部31と,メッセージ処理部32と,メッセージ配信部33と,ユーザ状態管理部34で構成される。
メッセージメディア1,2は,ここでは,既存の各種の電子的なメッセージメディアを想定する。具体的には,インターネットメール,携帯電話メール,インスタントメッセンジャ,インターネットリレーチャット(IRC),Web掲示板,Webチャットを始めとする,ネットワーク上でメッセージを通信する統合配信の対象とする全ての手段を含むものとする。
【0014】
メッセージ受信部31は,上記した各種メッセージメディアからの電子電文を,各メディアが利用するプロトコルに則って受信する。また,受信したメッセージを,後述する統合形式と呼ばれる独自の管理形式フォーマットに変換する機能を持つ。
また,メッセージ処理部32は,各種メッセージに対して,ユーザ状況,メッセージ内容,添付内容,受信設定などのルールから,受信側ユーザへ配信するべきメディア及びメッセージ配信時間を動的に決定する機能を持つ。そして,決定されたメディア情報を統合形式に追記し,システムへログとして格納する。メッセージ配信部33は,統合形式メッセージに記述された配信メディア情報に従い,メッセージ配信時間に到達すると各メディアのプロトコルに則って配信する機能を持つ。ここで,メッセージ配信時間が0の場合は,受信して処理された後,即時に配信が行われる。
なお,ユーザ状態管理部34は,ユーザの状況をユーザ状態管理クライアント20から適宜受信し,ユーザの現在のメディア利用可能状態,および回線状態を把握する機能を持つ。

【0017】
以下,図1に示す本発明の動的メディア選択配信装置の動作について詳細に説明する。本発明の動的メディア選択配信装置は,各メッセージメディアを受け付け,統合し,配信するためのメディア統合配信サーバ3として動作する。
メッセージメディア受信部31は,メッセージメディアのそれぞれに対応した解析エンジン(図示せず)を備え,プラグイン的にこの解析エンジンを追加し,拡張することにより,メール,チャット,掲示板,インスタントメッセージをはじめとした様々なシステムのメッセージフォーマットに随時対応する。解析エンジンは,それぞれのメッセージの受信プロトコルに則って受信を行う。
【0018】
メッセージ受信部31の動作が図3にフローチャートで示されている。すなわち,各解析エンジンは常にメッセージを監視している(S31)。送信側メッセージメディア1からメッセージが配信されると(S32Yes),メッセージ受信部31は,そのメッセージのプロトコルに従い受信を行う(S33)。例えば,インターネットメールであればSMTP(Simple Mail Transfer Protocol),インターネットリレーチャットであればRFC1459準拠のIRC(Internet Relay Chat)プロトコルである。
次に,メッセージを解析して統合形式に従うメッセージを生成する(S34)。具体的には,送信者,受信者,本文,その他のメッセージ構成要素に分類する(S33)。ここで分類されたメッセージは,統合形式準拠のフォーマットとして管理される。そしてこの統合形式メッセージをメッセージ処理部323へ引き渡す。統合形式フォーマットの一例を図2に表形式で示す。

【0034】
説明を図1に戻し,メッセージ配信部33は,メッセージDB325に統合形式で保存されたメッセージを,それぞれのメッセージメディアに変換し,配信する機能部である。メッセージ受信部31におけるメディア解析エンジンとは対になるメディア生成エンジンから構成される。
メッセージ配信部33は,プラグイン的に解析エンジンを追加・拡張することにより,メール,チャット,掲示板,インスタントメッセージをはじめとして,様々なシステムのメッセージフォーマットに随時対応する。メディア解析エンジンは,それぞれのメッセージの配信プロトコルに則って,配信を行う。
以下,図6に示すフローチャートを参照しながら,メッセージ配信部33の動作について説明する。
【0035】
メッセージ配信部33は,時間監視を行い(S61),メッセージ配信時間に到達したメッセージから配信を開始する。そして,メッセージ処理部32から配信すべき統合メッセージを取得し(S62),この統合形式フォーマットから,配信すべきメディアのタイプ情報を取得する(S63)。
そして,そのメッセージのフォーマットに従って,各メディア用のメッセージを構成し(S64),選択されたメディアのプロトコルに則してメッセージ配信を行う(S65)。インターネットメールであればSMTP,インターネットリレーチャットであればRFC1459準拠のIRCプロトコルに従う。

【0036】
以上説明のように本発明は,各種メッセージメディアをメッセージ統合配信サーバで統合することにより透過的に扱えるようにすると共に,メッセージ本文や添付ファイルの内容,日時,時間,受信側ユーザの接続状況,利用帯域等の各種条件に対して,受信側ユーザが事前に配信ルールを設定しておくことにより,動的にメッセージの交換や時間調整を行い配信するものである。(以下略。)

〈効果〉
【0040】
【発明の効果】
以上説明のように本発明によれば,送信者側のメッセージメディアの非依存性を実現できる。すなわち,本発明により,メッセージ送信者は,メッセージ受信者の利用可能メディア,あるいはユーザの状態を意識することなく,利用したいメディアを用いて自由なタイミングでメッセージの送信が可能になる。
また,受信者側におけるメッセージメディアの非依存性の実現も可能である。すなわち,本発明により,メッセージ受信者は,メッセージ送信者の利用したメッセージ手段に依存せずに,受信者にとって最も都合の良いメッセージメディアでの受信を行うことができる。
【0041】
本発明によれば,動的なメッセージ配信メディアの切り替えが可能である。すなわち,メッセージ受信者はその利用環境に従い,事前に設定した配信ルールに応じて,適切な配信メディア,配信アドレスに対しての動的な配信を受けることができる。またメディア可用性の向上もはかれる。すなわち,デバイスに依存したメディアの制約を撤発することができることから,ユーザはデバイス間の差異を考慮せずに,メッセージ環境を実現することができる。
また,メッセージに付随する様々なファイル形式を判断し,そのファイルが配信先デバイスで利用可能か否かを判断して配信先を決定するため,適切なメディア利用が可能になり,メディアの可用性が向上する。

[2]刊行物1に記載された発明(以下,「引用発明」という。)の認定

ア 刊行物1は,「インターネットメール,インスタントメッセンジャ,インターネットリレーチャット(IRC),Web掲示板,Webチャット等,1以上のメッセージメディアから発行されるメッセージを,ネットワークを介して配信する,動的メディア選択配信装置および方法,ならびに動的メディア選択配信プログラムに関する」(【0001】)もので,
それぞれ,請求項1,4,5として,
「1以上のメッセージメディアから発行されるメッセージを,ネットワークを介して配信する動的メディア選択配信装置」であって,・・動的メディア選択配信装置。」(請求項1),
「1以上のメッセージメディアから発行されるメッセージを,ネットワークを介して配信する動的メディア選択配信方法であって,・・・動的メディア選択配信方法。」(請求項4),
「1以上のメッセージメディアから発行されるメッセージを,ネットワークを介して配信する動的メディア選択配信装置に用いられるプログラムであって,・・・ステップと,をコンピュータに実行させる動的メディア選択配信プログラム。」(請求項5)としているところ,
その請求項4に着目すると共に請求項5を考慮すれば,上記請求項4記載の「・・・動的メディア選択配信方法」をプログラムにより「コンピュータに実行させる」方法,すなわち,
「1以上のメッセージメディアから発行されるメッセージを,ネットワークを介して配信する動的メディア選択配信方法であって,
前記メッセージを,利用した前記メッセージメディアに固有のプロトコルに従い受信して統合形式のメッセージに変換し,
前記統合形式のメッセージからメッセージ受信者のアドレスを特定し,当該受信者の現在における状態と,当該受信者によりあらかじめ設定された配信ルールを取得し,当該配信ルールを適用してメッセージ配信に適切なメッセージメディアおよび配信タイミングを動的に決定し,
前記統合形式のメッセージを,前記決定されたメッセージメディアに固有のプロトコルおよび前記配信タイミングに従い配信すること,
をプログラムによりコンピュータに実行させる動的メディア選択配信方法」
を認めることができる。
そして,その「1以上のメッセージメディア」とは,インターネットメール,携帯電話メール,インスタントメッセンジャ,インターネットリレーチャット(IRC),Web掲示板,Webチャット等のメディア(【0001】,【0013】)であって,それぞれ別々のプロトコル,別々のメッセージ形式を利用しているメディア(【0004】)である。
また,そのような「動的メディア選択配信方法」は,異種メディア間で動的にメッセージ交換を行うことができ(【0004】,【0006】),「異種メディアで生成されたメッセージを透過的に扱うことができ」(【0006】)るようにし,「動的なメッセージ配信メディアの切り替え」を「可能」(【0041】)とするものである。

イ また,【0013】?【0035】記載の実施形態は,装置発明である「動的メディア選択配信装置」(請求項1)の実施形態についての説明であるが,そこで説明される装置(の各部)の動作の説明は,方法発明である請求項4で行われる方法(の各工程)の説明とも理解し得るものであると共に,アで上述した「コンピュータに実行させる動的メディア選択配信方法」(の各工程)の説明とも理解し得るものである。

そして,【0013】の「本発明の動的メディア選択配信装置は,送信側のメッセージメディア1と,受信側のメッセージメディア2を仲介し,メッセージ受信部31と,メッセージ処理部32と,メッセージ配信部33と,ユーザ状態管理部34で構成される。
メッセージメディア1,2は,ここでは,既存の各種の電子的なメッセージメディアを想定する。具体的には,インターネットメール,携帯電話メール,インスタントメッセンジャ,インターネットリレーチャット(IRC),Web掲示板,Webチャットを始めとする,ネットワーク上でメッセージを通信する統合配信の対象とする全ての手段を含むものとする」という記載によれば,
上記アの「動的メディア選択配信方法」は,「送信側のメッセージメディア1と,受信側のメッセージメディア2を仲介」するものであると理解される。
なお,ここでいう「送信側のメッセージメディア1」,「受信側のメッセージメディア2」を含む「メッセージメディア」とは,「ネットワーク上でメッセージを通信する手段」と理解される。

さらに,【0014】の「メッセージ受信部31は,上記した各種メッセージメディアからの電子電文を,各メディアが利用するプロトコルに則って受信する。また,受信したメッセージを,後述する統合形式と呼ばれる独自の管理形式フォーマットに変換する機能を持つ。」,
【0017】の「メッセージメディア受信部31は,メッセージメディアのそれぞれに対応した解析エンジン(図示せず)を備え」,
図1,【0018】の「メッセージ受信部31の動作が図3にフローチャートで示されている。すなわち,各解析エンジンは常にメッセージを監視している(S31)。送信側メッセージメディア1からメッセージが配信されると(S32Yes),メッセージ受信部31は,そのメッセージのプロトコルに従い受信を行う(S33)。送信側メッセージメディア1からメッセージが配信されると(S32Yes),メッセージ受信部31は,そのメッセージのプロトコルに従い受信を行う(S33)。例えば,インターネットメールであればSMTP(Simple Mail Transfer Protocol),インターネットリレーチャットであればRFC1459準拠のIRC(Internet Relay Chat)プロトコルである。
次に,メッセージを解析して統合形式に従うメッセージを生成する(S34)」の各記載によれば,
上記アの「前記メッセージを,利用した前記メッセージメディアに固有のプロトコルに従い受信して統合形式のメッセージに変換し」という工程は,
「メッセージメディアのそれぞれに対応した解析エンジンにより,
(i)前記各種メッセージメディアから発行されるメッセージを各種メディアが利用する各種メッセージメディアに固有のプロトコルに則って受信し,
(ii)受信したメッセージを統合形式のメッセージに変換する」工程(ステップ)と理解される。

また,【0034】の「説明を図1に戻し,メッセージ配信部33は,メッセージDB325に統合形式で保存されたメッセージを,それぞれのメッセージメディアに変換し,配信する機能部である。メッセージ受信部31におけるメディア解析エンジンとは対になるメディア生成エンジンから構成される。
メッセージ配信部33は,プラグイン的に解析エンジン(審決註:「解析エンジン」は誤記であって,正しくは「生成エンジン」であることは明らかである。)を追加・拡張することにより,メール,チャット,掲示板,インスタントメッセージをはじめとして,様々なシステムのメッセージフォーマットに随時対応する。メディア解析エンジン(審決註:上記と同様,正しくは「メディア生成エンジン」であることは明らかである。)は,それぞれのメッセージの配信プロトコルに則って,配信を行う。」という記載によれば,
上記アの「前記統合形式のメッセージを,前記決定されたメッセージメディアに固有のプロトコルおよび前記配信タイミングに従い配信する」という工程は,
「メディア生成エンジンにより,
(i)前記統合形式のメッセージを前記決定されたメッセージメディアに固有のプロトコルのメッセージメディアに変換し,
(ii)変換したメッセージを前記配信タイミングに従い配信する」工程(ステップ)と理解される。

ウ 引用発明
以上のことを総合勘案すれば,引用発明(刊行物1記載された発明)として,下記の発明を認めることができる(次項での対比の便宜上,構成要素毎にp?uの符号を付した。)。

記(引用発明)
p 送信側のメッセージメディア1と,受信側のメッセージメディア2を仲介して異種メディア間で動的にメッセージ交換を行うことができ,異種メディアで生成されたメッセージを透過的に扱うことができるようにし,動的なメッセージ配信メディアの切り替えが可能とするものであって,
q インターネットメール,インスタントメッセンジャ,インターネットリレーチャット(IRC),Web掲示板,Webチャット等のメディアであって,それぞれ別々のプロトコル,別々のメッセージ形式を利用しているネットワーク上でメッセージを通信する手段である1以上のメッセージメディアから発行されるメッセージを,ネットワークを介して配信する動的メディア選択配信方法であって,
r メッセージメディアのそれぞれに対応した解析エンジンにより,
r1 前記各種メッセージメディアから発行されるメッセージを各種メディアが利用するプロトコルに則って受信し,
r2 受信したメッセージを統合形式のメッセージに変換する
ステップと,
s 前記統合形式のメッセージからメッセージ受信者のアドレスを特定し,当該受信者の現在における状態と,当該受信者によりあらかじめ設定された配信ルールを取得し,当該配信ルールを適用してメッセージ配信に適切なメッセージメディアおよび配信タイミングを動的に決定するステップと,
t メディア生成エンジンにより,
t1 前記統合形式のメッセージを前記決定されたメッセージメディアに固有のプロトコルのメッセージメディアに変換し,
t2 前記配信タイミングに従い配信する
ステップと,
u をプログラムによりコンピュータに実行させる動的メディア選択配信方法。

[3]本願発明と引用発明との対比(対応関係)

(1)本願発明(構成要件の分説)

本願発明は,以下のように要件A?Fに分説することができる。
本願発明(分説)
A 第1のモダリティを有する入力を受信するステップと,
B コンテキスト情報に基づいて出力モダリティを決定するステップと,
C 前記入力を第1のモダリティから前記出力モダリティに変換するために複数の通信エンジンを管理するステップと,
D 変換中の前記入力にコンテキスト・データを関連付けるステップと,
E 関連出力チャネルに前記出力モダリティを出力するステップと,
を含み,
F これらの各ステップをコンピュータに実行させる,モード間通信の方法。

(2)本願発明と引用発明との対比(対応関係)

本願発明の各構成要件について,引用発明と対比する。

ア 要件A「第1のモダリティを有する入力を受信するステップと(を含む)」について

本願発明の「モダリティ」とは,明細書の「モダリティとは,異なる通信技術および方法を指す。このような技術としては,多種多様な場所およびフォーマットで人が他の人と通信できるようにするためのWebチャット,ショート・メッセージ・サービス(SMS:short message service),指名通話(person to persontelephony),ファクシミリ,Eメールなどを含むことができる。」(段落【0002】)
「入力は任意の形の通信データおよび通信モダリティを含むことができる。このような通信モダリティとしては,たとえば,SMS,データ・ストリーム,文書,音声伝送,写真,ファクシミリ,Eメール,およびビデオを含むことができる。」(段落【0019】)に照らせば,
例えば,WebチャットやEメールを含む異なる通信技術および方法を指すものであるところ,
引用発明の「(メッセージ)メディア」も,qにおいて「インターネットメール」,「Webチャット」等を含むものであって「それぞれ別々のプロトコル,別々のメッセージ形式を利用しているネットワーク上でメッセージを通信する手段」というものであるから,本願発明でいう「モダリティ」といい得るものである。

そうすると,引用発明のr-r1「メッセージメディアのそれぞれに対応した解析エンジンにより,前記各種メッセージメディアから発行されるメッセージを各種メディアが利用するプロトコルに則って受信し,」とするステップは,(「前記各種メッセージメディアから発行されるメッセージ」は本願発明でいう「第1のモダリティを有する入力」といえ,したがって,)「第1のモダリティを有する入力を受信するステップ」とうことができ,要件Aにおいて,本願発明と引用発明とは相違しない。

イ 要件B「コンテキスト情報に基づいて出力モダリティを決定するステップと(を含む)」,及び,
要件E「関連出力チャネルに前記出力モダリティを出力するステップと,
を含み」について

本願発明の「コンテキスト情報」がいかなるものであるかについて,上記要件B中の記載ぶり,及び,明細書中の「コンテキスト情報」に関する記載(明細書中の「コンテキスト情報」に関するすべての記載を下記に掲載した。)に照らし検討するに,
その具体までは把握できないものの,それは,少なくとも「出力モダリティを決定するために必要な情報であって,『それに基づいて出力モダリティを決定する』とする制御情報」と理解され,そのように理解されるものに止まる。
引用発明のs「前記統合形式のメッセージからメッセージ受信者のアドレスを特定し,当該受信者の現在における状態と,当該受信者によりあらかじめ設定された配信ルールを取得し,当該配信ルールを適用してメッセージ配信に適切なメッセージメディアおよび配信タイミングを動的に決定するステップ」における「受信者によりあらかじめ設定された配信ルール」は,少なくとも,「配信に適切なメッセージメディア(モダリティ)を決定するために必要な情報であって,『それに基づいて配信メッセージメディア(配信モダリティ)を決定する』とする制御情報」といい得るものであるところ,
そのように決定された配信に適切なメッセージメディア(モダリティ)は,t-t1,t2のステップ(「前記統合形式のメッセージを前記決定されたメッセージメディアに固有のプロトコルのメッセージメディアに変換し,前記配信タイミングに従い配信する」)で配信される,すなわち,出力されるものであるから,「出力メッセージメディア」といえ,したがって,本願発明の要件Bの「出力モダリティ」ということができる。
そうすると,引用発明も「コンテキスト情報に基づいて出力モダリティを決定するステップ」を含んでいるということができる。
また,「配信」する以上,「関連」する「出力チャネルに」出力することになることは明らかであるから,引用発明は「関連出力チャネルに前記出力モダリティを出力するステップ」も含んでいる。
以上によれば,引用発明も,要件B及び要件Eを含んでいるといえ,要件B,要件Eにおいて,本願発明と相違しない

記(明細書中の「コンテキスト情報」に関するすべての記載)
「模範的な一実施形態では,このブリッジング方法は,メッセージ,データ・ストリーム,文書の形で入力を受信し,このようなデータに適切なハンドラおよびコンテナを提供し,さらにこのようなデータを適切な処理キューに入れ,適切なセッション情報,コンテキスト情報,履歴情報,ユーザ関連情報,または処理中のデータに関連する任意のその他の関連情報を作成し関連付けるステップを含む。」(段落【0013】)
「本発明をさらに説明するために,上記のブリッジを制御するための方法が提供される。ブリッジを制御するための方法は,(a)データ処理シーケンスを決定するステップと,(b)入力チャネルを決定し管理するステップと,(c)出力チャネルを決定し管理するステップと,(d)コンテキスト情報を処理し,データを保持するステップとを含むことになるであろう。」(段落【0039】)
「模範的な一実施形態では,コントローラの第4の責務は,データを保持し,処理エンジンが機能するために必要なすべてのコンテキスト情報を維持することを含む。」(段落【0043】)
「本発明の一実施形態では,このブリッジング方法は,メッセージ,データ・ストリーム,文書の形で入力を受信し,このようなデータに適切なハンドラおよびコンテナを提供し,さらにこのようなデータを適切な処理キューに入れ,適切なセッション情報,コンテキスト情報,履歴情報,ユーザ関連情報,または処理中のデータに関連する任意のその他の関連情報を作成し関連付けるステップ610を含む。」(段落【0045】)
「図7は,本発明によるコントローラ120を制御する方法の他の模範的な一実施形態を示している。図7を参照すると,ブリッジ110を制御するための方法は,データ処理シーケンスを決定するステップ710と,入力チャネルを決定し管理するステップ720と,出力チャネルを決定し管理するステップ730と,コンテキスト情報を処理し,データを保持するステップ740とを含むことができる。」(段落【0049】)
「一実施形態では,データを保持するステップ740は,処理エンジンが機能するために必要なすべてのコンテキスト情報を維持することを含むことができる。」(段落【0053】)

ウ 要件C「前記入力を第1のモダリティから前記出力モダリティに変換するために複数の通信エンジンを管理するステップと(を含む)」について
要件Cの「前記入力を第1のモダリティから前記出力モダリティに変換するために複数の通信エンジンを管理する」とは,
「前記入力を第1のモダリティから前記出力モダリティに変換するための複数の通信エンジン」を「使用し得る状態で用意する」ことを意味するものと解され,
その「前記入力を第1のモダリティから前記出力モダリティに変換するための複数の通信エンジン」とは,「前記入力を第1のモダリティから前記出力モダリティに直接変換するための複数の通信エンジン」と理解される。すなわち,「直接変換するための通信エンジン」が「複数」あるとするものであり,その「複数」とは,変換元である「第1のモダリティ」も変換先である「出力モダリティ」も種々存在することから,変換元の「第1のモダリティ」と変換先の「出力モダリティ」との組数分であると合理的に理解される。
一方,引用発明では,
r-r1,r2で「メッセージメディアのそれぞれに対応した解析エンジンにより,前記各種メッセージメディアから発行されるメッセージを各種メディアが利用するプロトコルに則って受信し,受信したメッセージを統合形式のメッセージに変換」し,
t-t1で「メディア生成エンジンにより,前記統合形式のメッセージを前記決定されたメッセージメディアに固有のプロトコルのメッセージメディアに変換」するとしていて,
かかる「解析エンジン」は「第1のモダリティ」の種類数分,「メディア生成エンジン」は「出力モダリティ」の種類数分使用できる状態で複数用意されているということができ,「解析エンジン」と「メディア生成エンジン」を併せたものは,「前記入力を第1のモダリティから前記出力モダリティに変換するための通信エンジン」ということができるものであって,その限りにおいては,本願発明と共通しているということができる。
しかし,その変換は,各種メッセージメディアからの種々のプロトコルに則るメッセージを,それぞれに対応した「解析エンジン」により,一旦統合形式のメッセージに変換し,その後,統合形式のメッセージを,「メディア生成エンジン」により,決定されたメッセージメディアに固有の種々のプロトコルのメッセージメディアに変換するものであって,中間に常に共通の統合形式のメッセージを介在させる変換であるから,「直接変換」するものではないし,「直接変換するための通信エンジン」が「複数」あるものでもなく,この点,本願発明と相違する。

エ 要件D「変換中の前記入力にコンテキスト・データを関連付けるステップと(を含む)」について

要件Dの「コンテキスト・データ」とは,明細書中に「コンテキスト情報」は記載されている一方,明細書中に「コンテキスト・データ」なる記載は一切無いことからすれば,要件Bの「コンテキスト情報」と同義と解される。
引用発明は,上記イでみたとおり,sで「コンテキスト情報に基づいて出力モダリティを決定」しているといえ,t-t1で「前記統合形式のメッセージを,前記決定されたメッセージメディアに固有のプロトコルのメッセージメディア(「出力モダリティ」)に変換し」ているから,引用発明も「変換中の前記入力」に「コンテキスト情報」を関連付けるステップを含んでいるといえ,要件Dにおいて,本願発明と相違しない。

オ 要件F「これらの各ステップをコンピュータに実行させる,モード間通信の方法」について

要件Fの「モード間通信」とは,明細書中に「本発明は,異なるモダリティ間で通信するための様々な方法およびシステムに関する。」(段落【0006】),「モダリティ間のブリッジを提供する方法が提供される。」(段落【0011】)と記載されている一方,明細書中に「モード」なる記載も「モード間通信」なる記載も一切無いことからすれば,「モダリティ間通信」と解される。
引用発明は,p「送信側のメッセージメディア1と,受信側のメッセージメディア2を仲介して異種メディア間で動的にメッセージ交換を行うことができ,異種メディアで生成されたメッセージを透過的に扱うことができるようにし,動的なメッセージ配信メディアの切り替えが可能とするものであって」,uで(r?tのステップ)「をプログラムによりコンピュータに実行させる動的メディア選択配信方法」であるから,「これらの各ステップをコンピュータに実行させる,モダリティ間通信の方法」といえ,したがって,要件Fにおいて,本願発明と相違しない。

[4]一致点,相違点
以上の対比結果によれば,本願発明と引用発明との一致点,相違点は次のとおりであることが認められる。

[一致点]
A 第1のモダリティを有する入力を受信するステップと,
B コンテキスト情報に基づいて出力モダリティを決定するステップと,
C’前記入力を第1のモダリティから前記出力モダリティに変換するために通信エンジンを管理するステップと,
D 変換中の前記入力にコンテキスト・データを関連付けるステップと,
E 関連出力チャネルに前記出力モダリティを出力するステップと,
を含み,
F これらの各ステップをコンピュータに実行させる,モード間通信の方法。

[相違点]
上記C’のステップの「通信エンジン」が,
本願発明では,「前記入力を第1のモダリティから前記出力モダリティに直接変換するため」の「複数」の通信エンジンとするのに対して,
引用発明では,そのような通信エンジン(「前記入力を第1のモダリティから前記出力モダリティに直接変換するため」の「複数」の通信エンジン)ではなく,中間に常に共通の統合形式のメッセージを介在させて変換する通信エンジンである点

[5]相違点等の判断

(1)[相違点の克服]
引用発明を出発点とし,
引用発明の,前記入力を第1のモダリティから前記出力モダリティに変換するために通信エンジン,すなわち,「解析エンジン」と「メディア生成エンジン」を併せたものであって,各種メッセージメディアからの種々のプロトコルに則うメッセージを,それぞれに対応した「解析エンジン」により,一旦統合形式のメッセージに変換し,その後,統合形式のメッセージを,「メディア生成エンジン」により,決定されたメッセージメディアに固有の種々のプロトコルのメッセージメディアに変換するものであって,中間に常に共通の統合形式のメッセージを介在させる変換を行うものを,
「前記入力を第1のモダリティから前記出力モダリティに直接変換するため」の「複数」の通信エンジンとする,すなわち,各種メッセージメディアからの種々のプロトコルに則うメッセージを,直接,決定されたメッセージメディアに固有の種々のプロトコルのメッセージメディアに変換する複数の通信エンジンとすること(以下,[相違点の克服]という。)で,上記[相違点]は克服され,本願発明に到達する。

(2)相違点についての判断([相違点の克服]の容易想到性判断)

ア 周知技術
一般に,種々の変換元プロトコルを種々の変換先プロトコルに変換するプロトコル変換プログラムによる変換方式には,
変換元プロトコルと変換先プロトコルの組毎にプロトコル変換機能を用意しておき,そのいずれかを用いて変換元プロトコルから変換先プロトコルに直接変換する直接変換方式と,
各種変換元プロトコル毎に変換元プロトコルを共通の標準中間プロトコルに変換する変換機能と,各種変換先プロトコル毎に標準中間プロトコルを変換先プロトコルに変換する変換機能とを用意しておき,前者のいずれかと後者のいずれかを用いて全体として変換元から変換先へのプロトコル変換が,標準中間プロトコルを仲介として間接的に行われる間接変換方式
があることはよく知られている技術常識であり,
それらの得失,すなわち,
直接変換方式では,処理性能の面では優れているものの,プロトコルの組毎にプロトコル変換機能を用意しなければならないため,取り扱うプロトコルの種類が増えると用意すべきプロトコル変換機能の数が極めて大きくなってしまうという欠点があるのに対して,
他方,間接変換方式では,用意すべきプロトコル変換機能は少なくて済むものの,仲介となる中間プロトコルに各種のプロトコル機能を充分に伝達する能力が無ければ,全体としてのプロトコル変換が不完全になってしまうという欠点があること,も当業者によく知られていることにすぎない。
これには,例えば,特開平1-297936号公報(〔従来技術〕?〔発明が解決しようとする課題〕の項,1頁右下欄9行?2頁左下欄16行)が参照される。

イ 上記周知技術に照らせば,刊行物1に接した当業者であれば,例えば,取り扱うメッセージメディアの種類がそれほど多くない場合等において,処理性能を重視して,刊行物1記載発明(引用発明)が採用した間接プロトコル変換方式に代えて直接変換方式を採ることを試みるであろうといえ,そのようにしても,刊行物1の「異種メディア間でメッセージ交換を行うことができない。」という課題が解決できることは明らかである。
そして,引用発明において,そのようにすること(間接プロトコル変換方式に代えて直接変換方式を採ること)は,
各種メッセージメディアからの種々のプロトコルに則うメッセージを,それぞれに対応した「解析エンジン」により,一旦統合形式のメッセージに変換し,その後,統合形式のメッセージを,「メディア生成エンジン」により,決定されたメッセージメディアに固有の種々のプロトコルのメッセージメディアに変換するものであって,中間に常に共通の統合形式のメッセージを介在させる変換を行うものを,
各種メッセージメディアからの種々のプロトコルに則るメッセージを,直接,決定されたメッセージメディアに固有の種々のプロトコルのメッセージメディアに変換する複数の通信エンジンとすること,すなわち,
「前記入力を第1のモダリティから前記出力モダリティに直接変換するため」の「複数」の通信エンジンとすることであり,
このことにより,
C’「前記入力を第1のモダリティから前記出力モダリティに変換するために通信エンジンを管理するステップ」は,
C「前記入力を第1のモダリティから前記出力モダリティに変換するために複数の通信エンジンを管理するステップ」(「前記入力を第1のモダリティから前記出力モダリティに変換するための複数の通信エンジン」を「使用し得る状態で用意する」ステップ)となって,
上記相違点が克服されることになる。

以上によれば,引用発明を出発点として上記[相違点の克服]をすることは,当業者が容易に想到し得ることである。

(3)まとめ(相違点等の判断)
以上,引用発明を出発点として,上記[相違点の克服]をすることで,本願発明に構成に達するところ,同克服は,刊行物1及び周知技術に基づいて当業者が容易になし得たことである。
効果についてみても,上記[相違点の克服]に伴って予測し得ない格別顕著なものがあるとも認められない。

【第4】むすび

以上のとおり,本願の請求項11に係る発明は,上記刊行物1に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
それ故,本願の他の請求項について検討するまでもなく,本願は拒絶すべきものである。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-02-26 
結審通知日 2015-03-03 
審決日 2015-03-17 
出願番号 特願2011-507430(P2011-507430)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小林 義晴  
特許庁審判長 小曳 満昭
特許庁審判官 乾 雅浩
白石 圭吾
発明の名称 モード間通信のための通信装置、方法、およびコンピュータ可読媒体(モダリティ間ブリッジによる会話型非同期マルチチャネル通信)  
代理人 太佐 種一  
代理人 上野 剛史  

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