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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1303788
審判番号 不服2014-10919  
総通号数 189 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-09-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-06-10 
確定日 2015-07-30 
事件の表示 特願2012-264671「携帯電話装置及び携帯電話装置の制御方法」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 3月21日出願公開、特開2013- 54775〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成17年9月1日に出願した特願2005-253518号の一部を新たな特許出願である平成23年6月23日の特願2011-139805号とし、さらに当該特願2011-139805号の一部を平成24年12月3日に新たな特許出願としたものである。
そして、平成25年8月22日付けで拒絶の理由が通知され、これに対して同年10月23日に意見書及び手続補正書が提出され、平成26年3月7日付けで拒絶査定がなされ、同査定の謄本は同年3月11日に請求人に送達された。
これに対して、同年6月10日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、同時に手続補正がなされたものである。


第2 平成26年6月10日付けの手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成26年6月10日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1.本件補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲の請求項1を次のとおりに変更する補正事項を含むものである。(下線部は、補正箇所である。)

「通話機能を示すマーク及び通話機能を示す文字を隣接して表示する表示部と、
接触検知センサと、
前記接触検知センサが前記マークに対応する接触を検知した場合に、前記検知前に表示されていた前記マークおよび前記文字の両方を前記表示部に拡大表示させる制御部と、を備えることを特徴とする携帯電話装置。」

2.本件補正の適否
上記補正後の請求項1は、「前記接触検知センサが前記マークに対応する接触を検知した場合に、前記検知前に表示されていた前記マークおよび前記文字の両方を前記表示部に拡大表示させる制御部」を発明特定事項として含む(この発明特定事項を、以下、「発明特定事項A」という。)ものである。
しかし、その発明特定事項Aは、本願の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「当初明細書等」という。)に記載した事項の範囲内のものとはいえない。
理由は次のとおりである。

(1)当初明細書等において、「表示」という語は、一貫して「表示部への表示」を表す語として使用されており、入力ボタンの表面に情報が記されていることは、「表示」ではなく「明記」と呼称されていること(本願明細書の段落【0004】参照)、上記補正後の請求項1においても、「表示」の語は「表示部への表示」を表すものとして自然に理解できること、等の事情を考慮すると、上記発明特定事項Aの「前記検知前に表示されていた前記マークおよび前記文字の両方を前記表示部に拡大表示させる」という記載は、「前記検知前に表示部に表示されていた前記マークおよび前記文字の両方を前記表示部に拡大表示させる」という技術的事項を表すものと理解するのが妥当である。
仮に、当該記載がそのような技術的事項以外のものを含み得るとしても、当該記載が上記のような技術的事項を含んでいることは、当該記載の文言上明らかである。

(2)一方、当初明細書等には、「通話機能を示すマーク」や「通話機能を示す文字」が接触検知センサによる接触の検知の前に表示部に表示されることは一切記載されていないし、そのことを含んでいると解し得る上位概念の記載もない。また、そのことは、当業者に自明な事項であるともいえない。

(3)してみれば、上記発明特定事項Aの「前記検知前に表示されていた前記マークおよび前記文字の両方を前記表示部に拡大表示させる」という記載により表される「前記検知前に表示部に表示されていた前記マークおよび前記文字の両方を前記表示部に拡大表示させる」という技術的事項は、当初明細書等に記載した事項の範囲を超えるものである。

よって、上記発明特定事項Aを導入する本件補正は、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものであり、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてするものではないから、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものである。

3.まとめ
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。


第3 本願発明について

1.本願発明
平成26年6月10日付けの手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成25年10月23日付けの手続補正書の特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、明細書及び図面の記載からみてその請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「通話機能に関連する画像及び当該画像に関する説明を表示する表示部と、
接触検知センサと、
前記接触検知センサが前記画像に対応する接触を検知した場合に、当該画像を当該画像に関する説明と共に前記表示部に拡大表示させる制御部と、を備えることを特徴とする携帯電話装置。」


なお、上記請求項1でいう「前記画像に対応する接触」は、本願明細書の段落【0036】や図5の記載から明らかなように、【発明を実施するための形態】の欄では、「入力ボタンの一種と解される『通話キー50』への接触」とされているものであり、本願明細書の段落【0004】に記載される本願発明が解決しようとした課題についての記載も参酌すれば、「表示部に表示される画像に対応する機能である通話機能が割り当てられた入力ボタンへの接触」というべきものを少なくとも含んでいると解されるので、そのような意味に解する。

また、上記請求項1でいう「拡大表示」という記載については、本願明細書の段落【0007】の「なお、本明細書において『拡大表示』とは、入力ボタンにより入力したときに表示部に表示される入力情報や機能情報の通常の大きさよりも大きく表示されることを意味する。」という記載、及び、「通常表示」に戻す旨の限定が請求項1にはなく、請求項2にあるという事情を考慮し、「入力ボタンにより入力したときに表示部に表示される入力情報や機能情報の通常の大きさよりも大きく表示されることを意味するが、拡大表示された情報と同じ情報が、入力ボタンによる入力の後に通常の大きさでも表示されることまでを要件とするものではない」と解釈する。


2.引用発明
原査定の拒絶の理由で引用された、本願のみなし出願日(平成17年9月1日)前に頒布された刊行物である特開2003-223265号公報(以下、「引用例」という。)には、関連する図面とともに、次の記載がある。

「【0002】
【従来の技術】ユーザは、情報処理装置に情報を入力する場合、釦やキーパッド等(以下、キーパッド等も含めたハードウエアとしての釦を一括して釦と称する)を操作することが多い。
【0003】例えば、ユーザは、パーソナルコンピュータ(PC)に情報を入力する場合、複数の釦からなるキーボードを操作したり、携帯電話機に電話番号のみならず様々な情報を入力する場合、複数の機能が割り当てられている数字釦や操作釦を操作する。
【0004】このような操作時に、ユーザは、釦の表面に印刷されている記号または文字等のシンボルを視認して、その釦に割り当てられている機能を推定している。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、次の(1)乃至(5)に示されるような場合、ユーザは、釦の表面に印刷されているシンボルを視認することが困難であり、その結果、その釦に割り当てられている機能を推定することが困難であるという課題があった。
【0006】(1) 周囲が暗い場合(ユーザが、夜間、携帯電話機の釦を操作する場合、または、暗い部屋でテレビジョン(TV)受像機のリモートコントローラの釦を操作する場合等)
(2) 1つの釦に複数の機能が割り当てられており、それらの機能に対応する複数のシンボルがその1つの釦の表面にそれぞれ印刷されている場合(モードによって、その釦に対応する機能が変化する場合)
(3) 釦が目視できない位置に配置されている場合(例えば、機器の裏側に釦が設けられている場合)
(4) 釦の上にユーザの指が乗せられている状態の場合
(5) 釦に割り当てられた機能を適切に表現するシンボルが、その釦の表面に印刷されていない場合(ユーザにとって視認しにくいシンボルが、その釦の表面に印刷されている場合)
【0007】本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、釦に割り当てられている機能をユーザに容易に認識させることができるようにするものである。」

「【0053】次に、情報入力装置1が適用された情報処理装置の動作例の概略を説明する。なお、その動作例の詳細については、後述する図5の情報処理装置31の動作例として説明する。
【0054】情報入力装置1は、上述したように、生体の物理的な接触に基づく入力を、接点11dのON状態(またはOFF状態)として検出する釦11、および、釦11に対する生体(ユーザの指等)の近接に基づく入力(生体の接近)を検出する近接センサ12を設けている。
【0055】これにより、ユーザは、情報入力装置1が適用された情報処理装置を用いて、マウスのインタフェースとして使用されている「ツールチップ」と称される技法を、物理的な(ハードウエアとしての)釦に関して利用することができる。
【0056】即ち、「ツールチップ」は、次の(a)乃至(c)の動作が可能な技法であり、ユーザは、この「ツールチップ」を利用することにより、画面上のソフト釦やアイコンに割り当てられている機能を情報処理装置に実行させる前に、これらの機能に関する情報を取得することができる。
【0057】(a) ユーザが、マウスを操作して、マウスのカーソルを画面上のソフト釦またはアイコンの上に配置させた場合、情報処理装置は、そのソフト釦またはアイコンに割り当てられている機能に関する情報(例えば、機能の名称等)が表示されたツールチップを画面上にポップアップ表示させる。
【0058】(b) ユーザが、マウスの釦を押した場合(左クリックした場合)、情報処理装置は、そのソフト釦またはアイコンに割り当てられている機能を実行する。
【0059】(c) ユーザが、マウスの釦を押さず(左クリックせず)、マウスを操作して、マウスカーソルを別の位置に移動させた場合、情報処理装置は、そのソフト釦またはアイコンに割り当てられている機能を実行しない。
【0060】情報入力装置1が適用された情報処理装置は、これら(a)乃至(c)に対応する動作、例えば、次の(A)乃至(C)の動作を実行することができる。
【0061】(A) ユーザが、その指を釦11の押下部11aに乗せた場合(接触させた場合)、近接センサ12は、その接触を検出して、接近情報を情報処理装置に入力する。情報処理装置は、入力された接近情報に基づいて、釦11に割り当てられている機能に関する情報(例えば、機能の名称等)が表示されたツールチップを画面上にポップアップ表示させる。
【0062】(B) ユーザが、その指で押下部11aを押下した場合(釦11を操作した場合)、情報処理装置は、その釦11に割り当てられている機能を実行する。
【0063】(C) ユーザが、押下部11aを押下せず(釦11を操作せず)、その指を押下部11aより離した場合(別の位置に移動させた場合)、情報処理装置は、その釦11に割り当てられている機能を実行しない。
【0064】(情報処理装置)図5は、本発明が適用される情報処理装置31の構成例を表したブロック図である。
【0065】CPU(Central Processing Unit)41は、ROM(Read Only Memory)42に記憶されているプログラム、または記憶部48からRAM(Random Access Memory)43にロードされたプログラムに従って各種の処理を実行する。」

「【0072】次に、図6のフローチャートを参照して、情報処理装置31の機能実行処理例について説明する。
【0073】いま、情報処理装置31の電源がオンされており(CPU41等が立ち上げられており)、ディスプレイ(出力部47)には所定の初期画面が表示されているものとする。
【0074】このとき、ステップS11において、CPU41は、図8に示されるような生体(指71)が釦11に接触している(接近している)第1の状態であるか否かを判定する。
【0075】いま、図7に示されるように、ユーザがその指71を釦11に接触させていない(近接センサ12に対して充分に接近させていない)ものとすると、近接センサ12は生体を検出しないので(接近情報を出力しないので)、ステップS11において、CPU41は、第1の状態ではないと判定(認識)し、ステップS11に戻り、第1の状態であるか否かを再度判定する。即ち、CPU41は、生体が釦11に接触したか否かを常時監視しており、生体が釦11に接触するまで(近接センサ12が生体を検出するまで)その処理を繰り返す。
【0076】その後、図8に示されるように、ユーザがその指71を釦11に乗せると(近接センサ12に充分接近させると)、近接センサ12は、生体(指71)を検出して、接近情報(検出信号)を入出力インタフェース45に入力してくる。
【0077】そこで、CPU41は、ステップS11において、バス44を介してこの接近情報を取得し、これにより、第1の状態であると判定(認識)し、ステップS12において、釦11に割り当てられた機能に関する情報を、バス44および入出力インタフェース45を介してディスプレイ(出力部47)に表示させる。
【0078】ステップS13において、CPU41は、図9に示されるような生体(指71)が釦11を操作した(押下した)第2の状態であるか否かを判定し、第2の状態ではないと判定した場合、ステップS11に戻り、それ以降の処理を繰り返す。
【0079】例えば、ユーザがその指71を釦11から離せば(図7の状態に戻せば)、CPU41は、釦11に割り当てられた機能に関する情報の表示を消去し、指71が再度釦11に乗せられるまで(ユーザが、図8の第1の状態にするまで)、その処理を継続する。
【0080】また、図8の第1の状態のままであれば、CPU41は、ステップS11乃至S13の処理を繰り返す。即ち、CPU41は、釦11に割り当てられた機能に関する情報をディスプレイに表示させたままにする。
【0081】いま、図9に示されるように、ユーザが、その指71で釦11を押下したものとすると、釦11は、その押下操作に対応する信号(接点11dがON状態であることを表す情報)を入出力インタフェース45に入力してくる。
【0082】そこで、CPU41は、ステップS13において、この信号(接点11dがON状態であることを表す情報)をバス44を介して取得し、これにより、第2の状態であると判定(認識)し、ステップS14において、釦11に割り当てられた機能を実行する。」

「【0086】(第1実施形態)図10は、情報処理装置31の第1実施形態としての携帯電話機81の外観の構成例を表している。
【0087】携帯電話機81の表面の上部には、液晶ディスプレイ等からなる表示部91が設けられており、その中央部には、押下および回動自在なジョグダイヤル93が表面から僅かに突出した状態で設けられており、また、その下部には、釦群94が設けられている。
【0088】釦群94は、例えば、電話番号等を入力するための「0」乃至「9」の数字釦、および各種機能が割り当てられた複数の操作釦から構成されており、この釦群94を用いて各種指示を入力し得るようになされている。なお、必要に応じて数字釦にも複数の機能が割り当てられる。
【0089】また、図示はしないが、釦群94の下(近傍)には、釦群94の各釦に生体が接近したことをそれぞれ検知する近接センサ12が配置されている。
【0090】即ち、釦群94は、図2の釦11-1乃至11-12(図5の釦11)に相当し、図2に示されるように、釦群94の各釦の下には、送信電極22と受信電極23の1つの交差点がそれぞれ配置されている。
【0091】ただし、上述したように、図2の例では、12個の釦(釦11-1乃至11-12)が、4行3列のマトリックス状に配置されているが、図7の携帯電話機81の例では、17個の釦(釦群94の各釦)が、6行3列のマトリックス状に配置されている。従って、携帯電話機81の送信電極22の本数は、図2と同様に3本が好適であるが、受信電極23の本数は、6本が好適である。
【0092】表示部91は、図4の出力部47に相当し、その表示部91内の所定の領域(図10の例では、表示部91の下部)には、ユーザの指71が釦群94のうちのいずれかの釦の上に乗せられた場合(携帯電話機81が第1の状態であると認識した場合)、その釦に割り当てられた機能に関する情報が表示されたツールチップ92がポップアップ表示される。
【0093】例えば、図10に示されるように、いま、指71が釦94-1に乗せられたものとすると、釦94-1の機能の名称である「通話開始」が表示されたツールチップ92が表示部91にポップアップ表示される。
【0094】このように、ユーザは、携帯電話機81を利用することで、所望の機能がどの釦(キー)に割り当てられているかを知らなくても、その指71を釦群94上の任意の位置に移動させ、そのときのツールチップ92の表示を見るといった単純な作業を繰り返すことにより所望の機能を探すことができる。
【0095】即ち、ユーザは、所望の機能の名称が表示されたツールチップ92がポップアップ表示された場合(携帯電話機81が第1の状態であると認識した場合)、その指71の動きを止め、そのときにその指71を乗せている釦(釦群94のうちのいずれかの釦)を押下することで(携帯電話機81が第2の状態であると認識することで)、その所望の機能を携帯電話機81に実行させることができる。」


そして、引用例の上記記載事項を、関連図面と技術常識に照らせば、以下のことがいえる。

(1)上記段落【0092】-【0093】の記載及び図10から、携帯電話機81は、通話開始の機能が割り当てられた釦94-1の機能を示す情報であるツールチップ92を表示することができる表示部91を備えている。
よって、携帯電話機81は、「通話開始の機能が割り当てられた釦94-1の機能を示す情報であるツールチップ92を表示することができる表示部91」を備えているといえる。

(2)上記段落【0089】の記載及び図10から、携帯電話機81は、「近接センサ12」を備えていると認められる。

(3)上記段落【0065】及び図5、並びに上記段落【0086】及び図10の記載から、情報処理装置31の実施形態としての携帯電話機81は、各種の処理を実行するCPU41を有している。
そして、上記段落【0089】、【0092】-【0093】及び図10に示されるように、携帯電話機81は、近接センサ12が釦94-1への接触を検知した場合に、通話開始の機能が割り当てられた釦94-1の機能を示す情報であるツールチップ92を表示部91に表示させる処理を行っているが、その処理も当然にCPU41によって実行されるものと認められる。
よって、CPU41は、近接センサ12が釦94-1への接触を検知した場合に、通話開始の機能が割り当てられた釦94-1の機能を示す情報であるツールチップ92を表示部91に表示させる処理を行っているといえる。


以上を踏まえると、引用例には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。
「通話開始の機能が割り当てられた釦94-1の機能を示す情報であるツールチップ92を表示することができる表示部91と、
近接センサ12と、
前記近接センサ12が前記釦94-1への接触を検知した場合に、当該釦94-1の機能を示す情報であるツールチップ92を前記表示部91に表示させるCPU41と、を備える携帯電話機81」


3.対比
本願発明と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。

(1)本願明細書の段落【0004】に記載される本願発明が解決しようとした課題と、上記1.の「なお」以下に示した本願発明についての解釈を踏まえると、本願発明の「表示部」が表示する「通話機能に関連する画像及び当該画像に関する説明」は、「接触検知センサが接触を検知する対象である『通話機能が割り当てられた入力ボタン』の機能を示す情報」であるといえる。
そして、引用発明の「通話開始の機能が割り当てられた釦94-1」は上記「通話機能が割り当てられた入力ボタン」に相当するものといえる。
したがって、引用発明の「表示部91」と本願発明の「表示部」は、「『通話機能が割り当てられた入力ボタン』の機能を示す情報を表示する表示部」である点で共通する。

(2)引用例の上記段落【0061】に記載されているように、引用発明の「近接センサ12」はユーザの指の接触を検出するものであるから、引用発明の「近接センサ12」は、本願発明の「接触検知センサ」に相当する。

(3)引用発明の「CPU41」は「制御部」といい得るものである。
また、上記「1.」の「なお」以下に示した本願発明の解釈と、上記(1)、(2)で検討した事項を踏まえると、引用発明でいう「前記近接センサ12が前記釦94-1への接触を検知した場合」と本願発明でいう「前記接触検知センサが前記画像に対応する接触を検知した場合」とは、「前記接触検知センサが前記『通話機能が割り当てられた入力ボタン』への接触を検知した場合」である点で共通するということができ、引用発明のCPU41が「当該釦94-1の機能を示す情報を表示させる」ことと本願発明の制御部が「当該画像を当該画像に関する説明と共に前記表示部に拡大表示させる」こととは、「当該『通話機能が割り当てられた入力ボタン』に割り当てられた機能を示す情報を前記表示部に表示させる」ことである点で共通する。


よって、本願発明と引用発明の間には、次の一致点、相違点があるといえる。

(一致点)
「『通話機能が割り当てられた入力ボタン』の機能を示す情報を表示する表示部と、
接触検知センサと、
前記接触検知センサが前記『通話機能が割り当てられた入力ボタン』への接触を検知した場合に、当該『通話機能が割り当てられた入力ボタン』に割り当てられた機能を示す情報を前記表示部に表示させる制御部と、を備える携帯電話装置。」である点。

(相違点)
本願発明においては、「表示部」は「通話機能に関連する画像及び当該画像に関する説明を表示する」ものとされ、「制御部」は、「前記接触検知センサが前記画像に対応する接触を検知した場合に、当該画像を当該画像に関する説明と共に前記表示部に拡大表示させる」ものとされているのに対し、
引用発明においては、「表示部」は、「通話機能に関連する画像及び当該画像に関する説明を表示する」ものとはされておらず、「制御部」は、「前記接触検知センサが前記画像に対応する接触を検知した場合に、当該画像を当該画像に関する説明と共に前記表示部に拡大表示させる」ものとはされていない点。


4.判断

(1)(相違点)について
以下の事情を総合すると、引用発明において、上記相違点に係る本願発明の構成を採用することは、当業者が容易に想到し得たことというべきである。

ア.引用例の上記段落【0002】?【0007】の記載に照らせば、引用発明における「表示部」(表示部91)に表示される「『通話機能が割り当てられた入力ボタン』の機能を示す情報」(通話開始の機能が割り当てられたボタン94-1の機能を示す情報であるツールチップ92)について、その具体的態様が引用例の図10に示されるようなものに限られる必要がないことや、視認性の高いものが望ましいことは明らかであり、当該情報(ツールチップ)の表示の具体的態様をどのようにするかは、視認性やその他の事情を考慮しつつ当業者が適宜決定し得ることである。

イ.一方、表示情報の視認性を向上させる手法として、画像と当該画像に関する説明の両方を表示するようにするという手法や、通常の情報の表示の大きさよりも大きく表示するという手法は、いずれも広範な分野においてごく普通に採用されているものであり(前者については、ピクトグラムと呼ばれるもの等において普通に見られ、後者については、新聞や雑誌の見出し等において普通に見られる。)、それらのごく普通に採用されている表示の手法を、引用発明のツールチップ92の表示においても採用することは、当業者が容易に想到し得たことである。
そして、それらのごく普通に採用されている表示の手法を引用発明のツールチップ92の表示において採用するということは、引用発明の「表示部」を、「通話機能に関連する画像及び当該画像に関する説明を表示する」ものとし、「制御部」を、「前記接触検知センサが前記画像に対応する接触を検知した場合に、当該画像を当該画像に関する説明と共に前記表示部に拡大表示させる」ものとすることにほかならない。

(2)本願発明の効果について
本願発明の構成によってもたらされる効果は、引用発明から当業者が容易に相当し得た構成のものが奏するであろうと当業者が予測し得る範囲を超えるものではなく、本願発明の進歩性を肯定する根拠となり得るものではない。

(3)まとめ
以上のとおりであるから、本願発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。


5.むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。したがって、本願は、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-05-27 
結審通知日 2015-06-02 
審決日 2015-06-16 
出願番号 特願2012-264671(P2012-264671)
審決分類 P 1 8・ 561- Z (G06F)
P 1 8・ 121- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 岩橋 龍太郎  
特許庁審判長 小曳 満昭
特許庁審判官 桜井 茂行
千葉 輝久
発明の名称 携帯電話装置及び携帯電話装置の制御方法  

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