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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A61K
管理番号 1303869
審判番号 不服2013-9737  
総通号数 189 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-09-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-05-27 
確定日 2015-08-06 
事件の表示 特願2007-129919「DNA損傷抑制剤及びグルタチオン産生促進剤」拒絶査定不服審判事件〔平成20年11月27日出願公開、特開2008-285422〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯・本願発明
本願は、平成19年5月15日の出願であって、その請求項1?3に係る発明は、特許請求の範囲の請求項1?3に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1?3に係る発明はそれぞれ次のとおりである。
「【請求項1】
テンニンカからの抽出物を有効成分として含有することを特徴とするDNA損傷抑制剤(抗老化、美白及び抗炎症の用途を除く)。 」(以下、「本願発明1」という。)
「【請求項2】
テンニンカからの抽出物を有効成分として含有することを特徴とするDNA損傷に起因する疾患の予防及び/又は治療剤(抗老化、美白及び抗炎症の用途を除く)。」(以下、「本願発明2」という。)
「【請求項3】
テンニンカからの抽出物を有効成分として含有することを特徴とするグルタチオン産生促進剤(抗老化、美白及び抗炎症の用途を除く)。」(以下、「本願発明3」という。)

2 引用刊行物の記載事項及び引用発明
(1)これに対して、当審における、平成26年10月31日付けで通知した拒絶の理由に刊行物Aとして引用した本願の出願日前の平成18年8月3日に頒布された特開2006-199678号公報(以下、「引用刊行物」という。)には、次の事項が記載されている。
[1a]「テンニンカからの抽出物を有効成分として含有することを特徴とする美白剤。」(請求項3)
[2a]「テンニンカからの抽出物を有効成分として含有することを特徴とする抗老化剤。」(請求項5)
[3a]「本発明の抗炎症剤は、テンニンカからの抽出物が有するヒアルロニダーゼ阻害作用及び/又はヘキソサミニダーゼ遊離抑制作用を通じて、接触性皮膚炎(かぶれ)、乾癬、尋常性天疱瘡等の各種炎症性疾患を予防、治療又は改善することができる。ただし、本発明の抗炎症剤は、これらの用途以外にもヒアルロニダーゼ阻害作用及び/又はヘキソサミニダーゼ遊離抑制作用を発揮することに意義のあるすべての用途に用いることができる。」(【0045】)
[4a]「本発明の美白剤は、テンニンカからの抽出物が有するチロシナーゼ阻害作用を通じて、皮膚色素沈着症、シミ、ソバカス等を予防、治療又は改善することができる。ただし、本発明の美白剤は、これらの用途以外にもチロシナーゼ阻害作用を発揮することに意義のあるすべての用途に用いることができる。」(【0046】)
[5a]「本発明の抗老化剤は、テンニンカからの抽出物が有するエラスターゼ阻害作用、エストロゲン様作用及び線維芽細胞増殖促進作用からなる群より選ばれる1種又は2種以上の作用を通じて、皮膚のシワ形成、弾力性低下等の老化現象を予防、治療又は改善することができる。ただし、本発明の抗老化剤は、これらの用途以外にもエラスターゼ阻害作用、エストロゲン様作用及び線維芽細胞増殖促進作用からなる群より選ばれる1種又は2種以上の作用を発揮することに意義のあるすべての用途に用いることができる。」(【0048】)
(2)引用刊行物には、摘示[2a]から、「テンニンカからの抽出物を有効成分として含有する抗老化剤」の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。
また、引用刊行物には、摘示[1a]から、「テンニンカからの抽出物を有効成分として含有する美白剤」の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。

3 対比
(1)本願発明1と引用発明1とを対比すると、両者の一致点及び相違点は、次のとおりである。
一致点
テンニンカからの抽出物を有効成分として含有することを特徴とする剤である点。
相違点1
本願発明1では、DNA損傷抑制剤(抗老化、美白及び抗炎症の用途を除く)であるのに対し、引用発明1では、抗老化剤である点。
(2)本願発明2と引用発明1とを対比すると、両者の一致点及び相違点は次のとおりである。
一致点
テンニンカからの抽出物を有効成分として含有することを特徴とする剤である点。
相違点2
本願発明2では、DNA損傷に起因する疾患の予防及び/又は治療剤(抗老化、美白及び抗炎症の用途を除く)であるのに対し、引用発明1では、抗老化剤である点。
(3)本願発明3と引用発明1又は2とを対比する。
(3-1)まず、本願発明3と引用発明1とを対比すると、両者の一致点及び相違点は次のとおりである。
一致点
テンニンカからの抽出物を有効成分として含有することを特徴とする剤である点。
相違点3-1
本願発明3では、グルタチオン産生促進剤(抗老化、美白及び抗炎症の用途を除く)であるのに対し、引用発明1では、抗老化剤である点。
(3-2)次に、本願発明3と引用発明2とを対比すると、両者の一致点及び相違点は次のとおりである。
一致点
テンニンカからの抽出物を有効成分として含有することを特徴とする剤である点。
相違点3-2
本願発明3では、グルタチオン産生促進剤(抗老化、美白及び抗炎症の用途を除く)であるのに対し、引用発明2では、美白剤である点。

4 当審の判断
(1)本願発明1について
上記相違点1について検討する。
引用刊行物には皮膚老化を引き起こす機序としてDNA損傷は記載されていないが、皮膚老化を引き起こす機序の一つとして、DNA損傷があることは周知事項1である(例えば、参考文献1、2)。
ここで、テンニンカからの抽出物は抗老化剤として皮膚老化を予防等する機能を有することが知られていたのであるから(摘示[2a]、[5a])、抗老化剤としての作用機序が公知のいずれであるかを確認する程度のことは当業者が容易になし得ることとせざるを得ないところ、引用発明1において、上記周知事項1に基づいて、抗老化剤としての作用機序を確認した結果、テンニンカからの抽出物に「DNA損傷抑制」作用があることを見い出し、「DNA損傷抑制剤(抗老化、美白及び抗炎症の用途を除く)」に係る発明とすることに、格別な困難性があるとは認められない。
また、そのことにより当業者にとって格別予想外の効果を奏するものともいえない。
参考文献1:新化粧品ハンドブック、日光ケミカルズ株式会社、2006年10月30日、564?571頁(特に、567頁左欄の(2)紫外線によるDNA損傷等参照。)
参考文献2:特開2004-359603号公報(特に、【0002】等参照。)
(2)本願発明2について
上記相違点2について検討する。
上記4(1)で述べたように、本願発明1は、引用発明1及び周知事項1に基づき、容易に発明をすることができたものなのであるから、同様の理由で、テンニンカからの抽出物に「DNA損傷抑制」作用があることを見い出し、「DNA損傷に起因する疾患の予防及び/又は治療剤(抗老化、美白及び抗炎症の用途を除く)」に係る発明とすることに、格別な困難性があるとは認められない。
また、そのことにより当業者にとって格別予想外の効果を奏するものともいえない。
(3)本願発明3について
上記相違点3-1、3-2について検討する。
引用刊行物には、抗老化剤又は美白剤としての有効性を奏する作用機序としてグルタチオン産生促進作用は記載されていないが、抗老化剤又は美白剤としての有効性を奏する作用機序の一つとしてグルタチオン産生促進作用があることは周知事項2である(例えば、参考文献2、3参照。)。
テンニンカからの抽出物は抗老化剤又は美白剤としての有効性を示すことが知られていたのであるから(摘示[1a]、[2a]、[4a]、[5a])、抗老化剤又は美白剤としての作用機序として公知の機序の中から、そのいずれであるかを確認する程度のことは当業者が容易になし得ることとせざるを得ないところ、引用発明1又は2において、上記周知事項2に基づき、抗老化剤又は美白剤としての作用機序を確認した結果、テンニンカからの抽出物に「グルタチオン産生促進」作用があることを見い出し、「グルタチオン産生促進剤(抗老化、美白及び抗炎症の用途を除く)」に係る発明とすることに、格別な困難性があるとは認められない。
また、そのことにより当業者にとって格別予想外の効果を奏するものともいえない。
参考文献3:特開2006-348052号公報(特に、請求項5、10、【0009】等参照。)
参考文献4:特開2003-321463号公報(特に、【0012】等参照。)
(4)小括
以上のとおり、本願発明1?3は、いずれも引用刊行物に記載の発明及び周知事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(5)請求人の主張について
当審拒絶理由に対する平成27年1月5日付け意見書において、出願人は、皮膚老化、美白(対象としての色素沈着)には、極めて多種多様な現象が介在し、その機序も様々なものであるから、テンニンカからの抽出物が抗老化作用、美白作用を有することが知られていても本願発明1?3を想到することは容易ではない旨主張しているので以下検討する。
本願発明1?3は、抗老化作用又は美白作用を有することが知られていた成分について、それらの作用に対応する作用機序として既に知られていた複数のものの中から、該当するものを特定したに過ぎないといえるものであって、そのようなことは当業者にとって格別困難なこととはいえないし、また、本願各発明による効果も、抗老化剤の作用機序の一つとして知られていたDNA損傷抑制剤としての用途、あるいは、美白剤の作用機序として知られていたグルタチオン産生促進剤としての用途において、単に従来知られていたレベルでの利用が提示されたに過ぎないといえるものであって、これをもって技術的に格別特異な効果であるとすることはできない。
よって、請求人の上記主張は採用できない。

5 むすび
したがって、本願発明は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないので、本願は拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-06-01 
結審通知日 2015-06-02 
審決日 2015-06-19 
出願番号 特願2007-129919(P2007-129919)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A61K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 弘實 謙二  
特許庁審判長 星野 紹英
特許庁審判官 冨永 保
小久保 勝伊
発明の名称 DNA損傷抑制剤及びグルタチオン産生促進剤  
代理人 早川 裕司  
代理人 村雨 圭介  

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