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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04N |
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管理番号 | 1303882 |
審判番号 | 不服2014-6695 |
総通号数 | 189 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2015-09-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2014-04-10 |
確定日 | 2015-08-06 |
事件の表示 | 特願2010- 10980「生体認証装置およびモバイル機器」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 8月 4日出願公開、特開2011-151596〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1.手続の経緯 本願は、平成22年1月21日の出願であって、平成26年1月6日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成26年4月10日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに同日付で手続補正がなされた。 その後当審において、平成27年2月26日付けで最初の拒絶理由が通知されたが、それに応答して平成27年5月1日付けで手続補正がなされたものである。 第2.本願発明 本願の請求項に係る発明は、平成27年5月1日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし請求項5に記載された事項により特定されるものであると認められるところ、そのうち請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という)は次のとおりである。 なお、本願発明の各構成の符号は便宜的に当審で付したものである。 (本願発明) (A)バックライトを備えた表示部と、 (B)加速度センサと、 (C)点灯状態にある前記バックライトを消灯するか否か決定する検知部と、 (D-1)前記加速度センサの出力に基づいて前記表示部が観察中の姿勢にある限りこの姿勢において前記検知部が前記バックライトを消灯することを決定しても既に点灯状態にある前記バックライトの点灯状態を変更せず継続してこれが誤って消灯されることを防止するとともに (D-2)前記加速度センサの出力に基づいて前記表示部が観察中の姿勢にないとき前記検知部が前記バックライトを消灯することを決定すれば既に点灯状態にある前記バックライトの点灯状態を変更して直ちにこれを消灯する制御部と (E)を有することを特徴とするモバイル装置。 第3.当審の判断 1.刊行物の記載 当審における、平成27年2月26日付けの拒絶理由に引用された特開2003-224655号公報(以下、刊行物1という)には、図面と共に次に掲げる事項が記載されている。 「【0001】 【発明の属する技術分野】この発明は、たとえばPDA(Personal Digital Assistants)などと称される可搬型の情報処理装置および同装置の表示装置制御方法に係り、特に、音声通話機能を用いた通話中における省電力化を実現する情報処理装置および同装置の表示装置制御方法に関する。」 「【0004】 【発明が解決しようとする課題】ここで、この情報処理装置が携帯電話機として利用される場合を考える。この場合、利用者は、音声出力用のスピーカ部に耳に当て、かつ、音声入力用のマイク部に口を当てるように情報処理装置を保持するのが一般的である。つまり、この情報処理装置は、通話中は利用者の頭部側面で保持されることになり、利用者の視野からは外れることになる。このことから、通話中における表示装置の駆動は電力の無駄な消費に他ならないと考えることができる。」 「【0009】 【発明の実施の形態】以下、図面を参照してこの発明の実施形態を説明する。 (第1実施形態)まず、この発明の第1実施形態について説明する。図1は、第1実施形態に係る情報処理装置の外観を示す図である。この情報処理装置は、音声通話機能を有するバッテリ駆動可能ないわゆる携帯端末であり、図1に示すように、音声通話機能用の部材として、無線部2、スピーカ部3およびマイク部4が設けられている。また、ユーザインターフェース用の部材として、キー入力部7および表示装置8が設けられている。」 「【0013】図2は、第1実施形態に係る情報処理装置の構成を示す図である。図2に示すように、この情報処理装置は、前述した無線部2、スピーカ部3、マイク部4、キー入力部7および表示装置8の他に、メイン制御部1、耳当て検出部5および角度検出部6を備えている。」 「【0015】耳当て検出部5は、スピーカ部3に利用者の耳が当てられているかどうかを検出するためのセンサであり、たとえば所定の値以上の押圧力が加わった時にオンとなるスイッチなどによって構成される。一方、角度検出部6は、この情報処理装置がスピーカ部3が上、マイク部4が下となって、ほぼ垂直に保持された状態で保持されているかどうかを検出するためのセンサであり、たとえばある値以上の傾きを検出したときにオンとなるスイッチなどによって構成される。 【0016】そして、このような構成をもつ第1実施形態の情報処理装置は、メイン制御部1が、音声通話機能を用いた通話の最中であって、情報処理装置が利用者の視野から外れるような形態で通話が行われている場合に、表示装置8をオフしてその消費電力を低減するといった表示装置制御を行う点を特徴としており、以下、この点について詳述する。 【0017】図3は、第1実施形態の情報処理装置における表示装置制御の動作手順を示すフローチャートである。 【0018】キー入力部7により番号入力および発信指示がなされて無線部2から発呼用の制御信号が送信され、または、着呼用の制御信号が無線部2により受信されてキー入力部7により受信指示がなされると、メイン制御部1は、音声通話機能を用いた通話が開始されたものと判断する(ステップA1)。そして、通話開始を認識したメイン制御部1は、まず、スピーカ部3に利用者の耳が当てられている旨を耳当て検出部5が検出しているかどうかを調べる(ステップA2)。 【0019】もし、スピーカ部3に利用者の耳が当てられている旨を耳当て検出部5が検出していた場合(ステップA2のYES)、メイン制御部1は、今度は、この情報処理装置がほぼ垂直に保持された状態で保持されている旨を角度検出部6が検出しているかどうかを調べる(ステップA3)。 【0020】ここで、この情報処理装置がほぼ垂直に保持された状態で保持されている旨を角度検出部6が検出していた場合(ステップA3のYES)、つまり、スピーカ部3に利用者の耳が当てられており、かつ、この情報処理装置がほぼ垂直に保持された状態で保持されている場合、メイン制御部1は、この情報処理装置が利用者の頭部側面で保持されていると判断する。そして、メイン制御部1は、現在、表示装置8はオンの状態かどうかを調べ(ステップA4)、オンの状態であれば(ステップA4のYES)、表示装置8をオフにする(ステップA5)。 【0021】一方、スピーカ部3に利用者の耳が当てられていない旨を耳当て検出部5が検出していた場合(ステップA2のNO)、または、スピーカ部3に利用者の耳が当てられている旨を耳当て検出部5が検出していたものの、この情報処理装置がほぼ垂直に保持された状態では保持されていない旨を角度検出部6が検出していた場合(ステップA2のYES,A3のNO)、メイン制御部1は、この情報処理装置が利用者の頭部側面で保持されていないと判断する。そして、メイン制御部1は、現在、表示装置8はオフの状態かどうかを調べ(ステップA6)、オフの状態であれば(ステップA6のYES)、表示装置8をオンにする(ステップA7)。 【0022】これらの処理の後、メイン制御部1は、音声通話機能を用いた通話が継続しているかどうかを調べ(ステップA8)、通話が継続していれば(ステップA8のYES)、ステップA2からの通話形態のチェックを繰り返し、一方、通話が終了していれば(ステップA8のNO)、ステップA1に戻って次の通話開始を待機する。 【0023】この情報処理装置では、単に通話中は表示装置8をオフするのではなく、通話中であって、かつ、この情報処理装置が利用者の頭部側面に保持されてその視野から外れている場合に、表示装置8をオフすべくメイン制御部1が表示装置制御を実行する。したがって、たとえば利用者が音声によるガイダンスを聞きながらキー入力を行うような場合は、音声ガイダンスを聞いている状態では表示装置8がオフになり、キー入力を行う状態では表示装置8がオンになるという非常に適切な表示装置制御が実現される。」 「 」 2.引用発明 ここで、上記刊行物1の記載について検討する。 (1)可搬型の情報処理装置 刊行物1の段落【0001】,【0004】,【0009】の記載によれば、刊行物1には、PDAや携帯電話機、携帯端末のような「可搬型の情報処理装置」に関する発明が記載されている。 そして、段落【0009】,【0013】,【0015】,【図1】,【図2】の記載によれば、「可搬型の情報処理装置」は、表示装置8、角度検出部6、耳当て検出部5、及びメイン制御部1を備えている。 (2)メイン制御部の制御 刊行物1の段落【0017】?【0022】,【図3】には、メイン制御部1による「可搬型の情報処理装置」(以下、単に情報処理装置ということとする)の制御が記載されており、メイン制御部1は、少なくとも次に示す制御を行うものである。 a.スピーカ部3に利用者の耳が当てられている旨を耳当て検出部5が検出しているかどうかを調べる(ステップA2)。 b.スピーカ部3に利用者の耳が当てられている旨を耳当て検出部5が検出していた場合(ステップA2のYES)、この情報処理装置がほぼ垂直に保持された状態で保持されている旨を角度検出部6が検出しているかどうかを調べる(ステップA3)。 c.この情報処理装置がほぼ垂直に保持された状態では保持されていない旨を角度検出部6が検出していた場合(ステップA3のNO)、この情報処理装置が利用者の頭部側面で保持されていないと判断し、表示装置8はオフの状態かどうかを調べ(ステップA6)、オフの状態であれば(ステップA6のYES)表示装置8をオンにし(ステップA7)、オンの状態であれば(ステップA6のNO)表示装置8の制御は行わない。 d.この情報処理装置がほぼ垂直に保持された状態で保持されている旨を角度検出部6が検出していた場合(ステップA3のYES)、この情報処理装置が利用者の頭部側面で保持されていると判断し、表示装置8はオンの状態かどうかを調べ(ステップA4)、オンの状態であれば(ステップA4のYES)表示装置8をオフにし(ステップA5)、オフの状態であれば(ステップA4のNO)表示装置8の制御は行わない。 e.その後、通話が継続しているかどうかを調べ(ステップA8)、通話が継続していれば(ステップA8のYES)、ステップA2からの通話形態のチェックを繰り返す。 (2-1)メイン制御部の上記a.の制御 刊行物1の段落【0004】,【0016】,【0023】の記載によれば、情報処理装置は、利用者が情報処理装置のスピーカ部を耳に当て、情報処理装置を頭部側面に保持している場合は、情報処理装置が利用者の視野から外れていることであるとして、消費電力の低減のために表示装置8をオフにするものである。 そうすると、上記a.の制御において、耳当て検出部5がスピーカ部3に利用者の耳が当てられている旨を検出すると、メイン制御部1は、表示装置8をオフにするための条件の少なくとも1つが充足したことを判断するものといえる。 また、上記e.の制御において、ステップA8からステップA2に戻る際には、ステップA7において表示装置がオンされた状態でステップA2に戻る場合が想定されている。 したがって、メイン制御部は、耳当て検出部の出力によりオン状態にある表示装置をオフするか否かを判断するものといえる。 すなわち、メイン制御部の上記a.の制御は、「耳当て検出部の出力によりオン状態にある表示装置をオフするか否かを判断する」という制御を行うことである。 (2-2)メイン制御部の上記b.c.の制御 上記(2-1)の検討を参酌すれば、上記b.の制御のステップA2において、耳当て検出部5がスピーカ部3に利用者の耳が当てられている旨を検出していた場合というのは、「耳当て検出部の出力によりオン状態にある表示装置をオフすることを判断した場合」のことである。 また、上記c.の制御において、角度検出部の検出結果に基づいて、情報処理装置が利用者の頭部側面で保持されていないと判断して、表示装置8をオンの状態にするということは、刊行物1の段落【0023】に記載されるように、キー入力を行う状態を想定したものであり、キー入力を行う状態とは、「表示装置を観察中の姿勢にある状態」であるといえる。 そうすると、上記c.の制御は「角度検出部の検出結果に基づいて、情報処理装置が表示装置を観察中の姿勢にある状態と判断した場合には、表示装置をオンの状態にする」というものである。 さらに、上記c.の制御において、ステップA6で表示装置がオンの状態であれば表示装置の制御を行わないということは、「既にオンの状態にある表示装置のオンの状態を変更せずに継続してオンの状態とする」ことである。 以上のことから、メイン制御部の上記b.及びc.の制御は、「耳当て検出部の出力によりオン状態にある表示装置をオフすることを判断した場合であっても、角度検出部の検出結果に基づいて、情報処理装置が表示装置を観察中の姿勢にある状態と判断した場合には、既にオンの状態にある表示装置のオンの状態を変更せずに継続してオンの状態とする」という制御を行うことである。 (2-3)メイン制御部の上記b.d.の制御 上記(2-1)で検討したように、利用者が情報処理装置のスピーカ部を耳に当て、情報処理装置を頭部側面に保持している場合というのは、情報処理装置が利用者の視野から外れていることである。 ここで、情報処理装置が利用者の視野から外れている状態とは、「表示装置を観察中の姿勢にない状態」といえる。 そうすると、上記b.の制御において、耳当て検出部が、スピーカ部3に利用者の耳が当てられている旨を検出し、上記d.の制御において、角度検出部の情報処理装置がほぼ垂直に保持された状態で保持されているという検出結果に基づいて、情報処理装置が利用者の頭部側面で保持されていると判断した場合に、表示装置8をオフの状態にするというメイン制御部の制御は、上記(2-2)の検討も援用すると、「耳当て検出部の出力によりオン状態にある表示装置をオフすることを判断し、角度検出部の検出結果に基づいて、情報処理装置が表示装置を観察中の姿勢にない状態と判断した場合には、既にオンの状態にある表示装置のオンの状態を変更してオフの状態とする」という制御を行うということである。 (3)まとめ 以上によれば、刊行物1には次の発明(以下、「引用発明」という)が記載されていると認められる。 (引用発明) (a)表示装置と、 (b)角度検出部と、 (c)耳当て検出部と、 (d-1)耳当て検出部の出力によりオン状態にある表示装置をオフするか否かを判断し、 (d-2)耳当て検出部の出力によりオン状態にある表示装置をオフすることを判断した場合であっても、角度検出部の検出結果に基づいて、情報処理装置が表示装置を観察中の姿勢にある状態と判断した場合には、既にオンの状態にある表示装置のオンの状態を変更せずに継続してオンの状態とするとともに (d-3)耳当て検出部の出力によりオン状態にある表示装置をオフすることを判断し、角度検出部の検出結果に基づいて、情報処理装置が表示装置を観察中の姿勢にない状態と判断した場合には、既にオンの状態にある表示装置のオンの状態を変更してオフの状態とするメイン制御部と (e)を有する可搬型の情報処理装置。 3.対比 (1)本願発明の「モバイル装置」と引用発明の「可搬型の情報処理装置」とを対比すると、引用発明が有する「表示装置(構成a)」、「角度検出部(構成b)」、「耳当て検出部(構成c)」、及び「メイン制御部(構成d-1,d-2,d-3)」は、それぞれ、本願発明の「表示部(構成A)」、「加速度センサ(構成B)」、「検知部(構成C)」、及び「制御部(構成D-1,D-2)」に概ね対応するものと認められるところ、以下に、その詳細な対比検討を行う。 (2)本願発明の構成Aと、引用発明の構成aの対比 引用発明の「表示装置」は、バックライトを備えた表示装置であるのか不明であるが、引用発明の「表示装置」と本願発明の「バックライトを備えた表示部」は、表示を行う『表示手段』である点において共通する。 よって、本願発明の「バックライトを備えた表示部」と、引用発明の「表示装置」は、『表示手段』である点において共通し、『表示手段』が、本願発明では「バックライトを備えた表示部」であるのに対し、引用発明では「表示装置」であって、バックライトを備えたものであるのか不明である点で相違する。 (3)本願発明の構成Bと、引用発明の構成bの対比 本願発明の「加速度センサ」は、「モバイル装置」の姿勢を検出するものであるところ、引用発明の「角度検出部」も「可搬型の情報処理装置」の姿勢を検出するものであるから、両者は、それらが備え付けられている装置の姿勢を検出する『姿勢検出手段』である点において共通する。 よって、本願発明の「加速度センサ」と、引用発明の「角度検出部」は、『姿勢検出手段』である点において共通し、『姿勢検出手段』が、本願発明では「加速度センサ」であるのに対し、引用発明では「角度検出部」であって、「加速度センサ」と特定されていない点で相違する。 (4)本願発明の構成Cと、引用発明の構成c,d-1の対比 本願発明は「点灯状態にある前記バックライトを消灯するか否か決定する検知部」を備えたものであるところ、引用発明は、「耳当て検出部」を備え、「メイン制御部」が「耳当て検出部の出力によりオン状態にある表示装置をオフするか否かを判断」するものである。 ここで、本願発明の「点灯状態にあるバックライトを消灯する」ということは、本願の発明の詳細な説明の段落【0224】の記載を参酌すれば、表示部を見ることができない状態では、省電力のために表示部が備えるバックライトを消灯するというものであり、すなわち、表示部を見ることができない状態では、表示部をオフすることを意図したものと認められる。 そして、上記(2)において、本願発明の「バックライトを備えた表示部」と引用発明の「表示装置」が、『表示手段』である点において共通するとしたことを踏まえると、本願発明の「点灯状態にあるバックライトを消灯する」ということと、引用発明の「オン状態にある表示装置をオフする」ということは、『オン状態にある表示手段をオフする』ことである点において共通するものといえる。 ただし、上記(2)において検討した、本願発明の「バックライトを備えた表示部」と、引用発明の「表示装置」の相違に伴って、制御する対象が相違し、本願発明は、「バックライトの点灯消灯を制御する」ものであるのに対し、引用発明は、「表示装置のオンオフを制御する」ものである点で相違する。 また、本願発明の「バックライトを消灯するか否か決定する検知部」について、本願の発明の詳細な説明の段落【0223】,【0268】,【図48】,【図64】を確認すると、制御部339の動作のフローチャートのS612の[近接検知?]において、CIGS撮像センサ325による頬近接の検知出力に基づいて、S460の[バックライトを消灯]の方へ分岐する判断をしているものである。 すなわち、CIGS撮像センサ325の検知出力が制御部によるバックライトの消灯を決定しているというものといえる。 一方、引用発明の「メイン制御部」が「耳当て検出部の出力によりオン状態にある表示装置をオフするか否かを判断」するということは、引用発明の上記第3.1.で摘示した【図3】の、A2の[耳当て検出ON?]において、A5の[表示装置をオフにする]の方へ分岐する判断をしているものであるから、本願発明と同様の動作を行うものである。 そうすると、引用発明の「耳当て検出部」を備え、「メイン制御部」が「耳当て検出部の出力によりオン状態にある表示装置をオフするか否かを判断」するということは、本願発明と同様に表現すれば、耳当て検出部の出力がメイン制御部による表示装置のオフを決定していることであり、「オン状態にある表示装置をオフするか否かを決定する耳当て検出部」といえる。 また、上述したように、本願発明の「点灯状態にあるバックライトを消灯する」ということと、引用発明の「オン状態にある表示装置をオフする」ということは、『オン状態にある表示手段をオフする』ことである点において共通し、さらに、引用発明の「耳当て検出部」と本願発明の「検知部」とは共に表示手段のオフを決定するものであるから、引用発明の「耳当て検出部」は、本願発明の「検知部」に相当するものといえる。 以上のことから、本願発明の「点灯状態にある前記バックライトを消灯するか否か決定する検知部」と、引用発明の「耳当て検出部」を備え、「メイン制御部」が「耳当て検出部の出力によりオン状態にある表示装置をオフするか否かを判断」するということは、『オン状態にある表示手段をオフするか否か決定する検知部』という点において共通する。 ただし、本願発明の「バックライトを備えた表示部」と、引用発明の「表示装置」の相違に伴って、検知部の「表示手段のオンオフを制御する」ことが、本願発明では「バックライトの点灯消灯を制御する」ものであるのに対し、引用発明では「表示装置のオンオフを制御する」ものである点で相違する。 (5)本願発明の構成D-1と、引用発明の構成d-2の対比 引用発明は「耳当て検出部の出力によりオン状態にある表示装置をオフすることを判断した場合であっても」(引用条件1とする)、「角度検出部の検出結果に基づいて、情報処理装置が表示装置を観察中の姿勢にある状態と判断した場合には」(引用条件2とする)、表示装置をオン状態とするというものであり、本願発明は、「前記加速度センサの出力に基づいて前記表示部が観察中の姿勢にある限りこの姿勢において」(本願条件1とする)、「前記検知部が前記バックライトを消灯することを決定しても」(本願条件2とする)、バックライトの点灯状態とするというものである。 引用発明の引用条件1は、上記(2)において検討したように、「表示装置」は本願発明の「バックライトを備えた表示部」と相違し、上記(4)において検討したように、「耳当て検出部」と「メイン制御部」の一部の動作は本願発明の「検知部」と相違するものの、上記(2),(4)の検討結果を参酌すれば、本願発明の本願条件2と『前記検知部が前記表示手段をオフすることを決定しても』というものである点で共通する。 また、引用発明の引用条件2は、上記(2)において検討したように、「表示装置」は本願発明の「バックライトを備えた表示部」と相違し、上記(3)において検討したように、「角度検出部」は本願発明の「加速度センサ」と相違するものの、上記(2),(3)の検討結果を参酌すれば、本願発明の本願条件1と『前記姿勢検出手段の出力に基づいて前記表示手段が観察中の姿勢にある限りこの姿勢において』というものである点で共通する。 さらに、引用発明は、引用条件1および2が充足した場合に「既にオンの状態にある表示装置のオンの状態を変更せずに継続してオンの状態とする」というものであり、本願発明は、本願条件1および2が充足した場合に「既に点灯状態にある前記バックライトの点灯状態を変更せず継続してこれが誤って消灯されることを防止する」というものである。 ここで、引用発明の「継続してオンの状態とする」ということは、本願発明の「継続してこれが消灯されることを防止する」ことに対応するといえる。 そうすると、上記(2)の検討結果を参酌し、両者は『既にオン状態にある前記表示手段のオン状態を変更せず継続してこれがオフされることを防止する』というものである点で共通するものといえるが、本願発明は、表示手段のオン状態が「誤って」オフされることを防止するものであるのに対し、引用発明には、そのような特定がない点において相違する。 以上の検討をまとめると、本願発明の「制御部」の「前記加速度センサの出力に基づいて前記表示部が観察中の姿勢にある限りこの姿勢において前記検知部が前記バックライトを消灯することを決定しても既に点灯状態にある前記バックライトの点灯状態を変更せず継続してこれが誤って消灯されることを防止するとともに」という動作と、引用発明の「メイン制御部」の「耳当て検出部の出力によりオン状態にある表示装置をオフすることを判断した場合であっても、角度検出部の検出結果に基づいて、情報処理装置が表示装置を観察中の姿勢にある状態と判断した場合には、既にオンの状態にある表示装置のオンの状態を変更せずに継続してオンの状態とするとともに」という動作は、『前記姿勢検出手段の出力に基づいて前記表示手段が観察中の姿勢にある限りこの姿勢において前記検知部が前記表示手段をオフすることを決定しても既にオン状態にある前記表示手段のオン状態を変更せず継続してこれがオフされることを防止するとともに』というものである点で共通する。 ただし、本願発明の「バックライトを備えた表示部」と、引用発明の「表示装置」の相違に伴って、本願発明の制御部では、「バックライトの点灯消灯を制御する」ものであるのに対し、引用発明のメイン制御部では、「表示装置のオンオフを制御する」ものである点、「姿勢検出手段」が、本願発明が「加速度センサ」であるのに対し、引用発明は「角度検出部」である点、及び、本願発明は、表示手段のオン状態が「誤って」オフされることを防止するものであるのに対し、引用発明には、そのような特定がない点において相違する。 (6)本願発明の構成D-2と、引用発明の構成d-3の対比 引用発明は「耳当て検出部の出力によりオン状態にある表示装置をオフすることを判断し」(引用条件3とする)、「角度検出部の検出結果に基づいて、情報処理装置が表示装置を観察中の姿勢にない状態と判断した場合には」(引用条件4とする)、表示装置をオフ状態とするというものであり、本願発明は、「前記加速度センサの出力に基づいて前記表示部が観察中の姿勢にないとき」(本願条件3とする)、「前記検知部が前記バックライトを消灯することを決定すれば」(本願条件4とする)、バックライトの消灯状態とするというものである。 引用発明の引用条件3は、上記(2)において検討したように、「表示装置」は本願発明の「バックライトを備えた表示部」と相違し、上記(4)において検討したように、「耳当て検出部」と「メイン制御部」の一部の動作は本願発明の「検知部」と相違するものの、本願発明の本願条件4と『前記検知部が前記表示手段をオフすることを決定すれば』というものである点で共通する。 また、引用発明の引用条件4は、上記(2)において検討したように、「表示装置」は本願発明の「バックライトを備えた表示部」と相違し、上記(3)において検討したように、「角度検出部」は本願発明の「加速度センサ」と相違するものの、本願発明の本願条件3と『前記姿勢検出手段の出力に基づいて前記表示手段が観察中の姿勢にないとき』というものである点で共通する。 さらに、引用発明は、引用条件3および4が充足した場合に「既にオンの状態にある表示装置のオンの状態を変更してオフの状態とする」というものであり、本願発明は、本願条件3および4が充足した場合に「既に点灯状態にある前記バックライトの点灯状態を変更して直ちにこれを消灯する」というものである。 上記(2)において検討したように、引用発明の「表示装置」は本願発明の「バックライトを備えた表示部」と相違するものの、引用発明の「オンの状態を変更してオフの状態とする」ということは、本願発明の「点灯状態を変更してこれを消灯する」ことに相当する。 そして、本願発明では、上記(4)に示した本願の【図64】を参照すると、S612(本願条件4に対応)及びS614(本願条件3に対応)が充足した場合にバックライト消灯とすることを「バックライトの点灯状態を変更して『直ちに』これを消灯する」と規定している。一方、引用発明は、【図3】のA2(引用条件4に対応)及びA3(引用条件3に対応)が充足した場合に表示装置をオフにするものであり、これを本願発明と同様に表現すれば、「表示装置のオンの状態を変更して『直ちに』これをオフの状態とする」ものということができる。 以上のことから、引用発明と本願発明とは『既にオン状態にある前記表示手段のオン状態を変更して直ちにこれをオフする』というものである点で共通するものである。 以上の検討をまとめると、本願発明の「制御部」の「前記加速度センサの出力に基づいて前記表示部が観察中の姿勢にないとき前記検知部が前記バックライトを消灯することを決定すれば既に点灯状態にある前記バックライトの点灯状態を変更して直ちにこれを消灯する」という動作と、引用発明の「メイン制御部」の「耳当て検出部の出力によりオン状態にある表示装置をオフすることを判断し、角度検出部の検出結果に基づいて、情報処理装置が表示装置を観察中の姿勢にない状態と判断した場合には、既にオンの状態にある表示装置のオンの状態を変更してオフの状態とする」という動作は、『前記姿勢検出手段の出力に基づいて前記表示手段が観察中の姿勢にないとき前記検知部が前記表示手段をオフすることを決定すれば既にオン状態にある前記表示手段のオン状態を変更して直ちにこれをオフする』というものである点で共通する。 ただし、本願発明の「バックライトを備えた表示部」と、引用発明の「表示装置」の相違に伴って、本願発明の制御部では、「バックライトの点灯消灯を制御する」ものであるのに対し、引用発明のメイン制御部では、「表示装置のオンオフを制御する」ものである点、「姿勢検出手段」が、本願発明が「加速度センサ」であるのに対し、引用発明は「角度検出部」である点において相違する。 また、以上の検討結果、及び上記(5)における検討結果を踏まえると、引用発明の「メイン制御部」は、姿勢検出手段と検知部の出力に基づいて、表示手段のオンオフを制御するものである点で、本願発明の「制御部」と共通するものである。 (7)本願発明の構成Eと、引用発明の構成eの対比 引用発明の「可搬型の情報処理装置」は、持ち運び可能な情報処理装置であるから、本願発明の「モバイル装置」に相当するものといえる。 4.一致点・相違点 上記3.の(1)ないし(7)の対比結果を踏まえると、本願発明と引用発明の一致点及び相違点は次の通りである。 [一致点] 表示手段と、 姿勢検出手段と、 オン状態にある表示手段をオフするか否か決定する検知部と、 前記姿勢検出手段の出力に基づいて前記表示手段が観察中の姿勢にある限りこの姿勢において前記検知部が前記表示手段をオフすることを決定しても既にオン状態にある前記表示手段のオン状態を変更せず継続してこれがオフされることを防止するとともに 前記姿勢検出手段の出力に基づいて前記表示手段が観察中の姿勢にないとき前記検知部が前記表示手段をオフすることを決定すれば既にオン状態にある前記表示手段のオン状態を変更して直ちにこれをオフ制御部と、 を有することを特徴とするモバイル装置。 [相違点1] 『表示手段』が、本願発明では「バックライトを備えた表示部」であるのに対し、引用発明では「表示装置」であって、バックライトを備えたものであるのか不明である点。 [相違点2] 『姿勢検出手段』が、本願発明では「加速度センサ」であるのに対し、引用発明では「角度検出部」であって、「加速度センサ」と特定されていない点。 [相違点3] 検知部、及び制御部における「表示手段のオンオフを制御する」ことに関し、本願発明では『表示手段』が「バックライトを備えた表示部」であることに伴い「バックライトの点灯消灯を制御する」ものであるのに対し、引用発明では『表示手段』がバックライトを備えものであるのか不明な「表示装置」であることに伴い「表示装置のオンオフを制御する」ものである点。 [相違点4] 本願発明は、表示手段のオン状態が「誤って」オフされることを防止するものであるのに対し、引用発明には、そのような特定はされていない点。 5.判断 (1)相違点1及び相違点3について 携帯電話等の可搬型の情報処理装置において、表示部をLCDとバックライトから構成される表示装置とすることは周知技術であり、表示装置のオンオフ制御を行う場合に、バックライトの点灯消灯の制御を行うことは普通のことである(例えば、当審における、平成27年2月26日付けの拒絶理由に引用された特開2005-278043号公報の【0028】,図1、特開2006-163294号公報の段落【0013】、特開平9-120323号公報の段落【0023】等を参照のこと)。 したがって、引用発明の表示装置を、バックライトを備えたものとし、そして、表示装置のオンオフの制御を、バックライトの点灯消灯の制御により行うことは、当業者が容易に想到できることである。 よって、相違点1にかかる引用発明の「表示装置」を「バックライトを備えた表示部」とし、相違点3にかかる引用発明の「表示装置のオンオフを制御する」ものを「バックライトの点灯消灯を制御する」ものとすることは、当業者が容易になし得ることといえる。 (2)相違点2について 携帯電話等の可搬型の情報処理装置において、装置の向き、傾き等の姿勢の検出を加速度センサで行うことは周知技術である(例えば、当審における、平成27年2月26日付けの拒絶理由に引用された特開2006-163294号公報の段落【0010】?【0013】、特開平9-120323号公報の段落【0016】等を参照のこと)。 よって、引用発明において、装置の姿勢を検出する角度検出部を、相違点2にかかる「加速度センサ」とすることは、当業者が容易になし得ることといえる。 (3)相違点4について 引用発明の「メイン制御部」は、「耳当て検出部の出力によりオン状態にある表示装置をオフすることを判断した場合であっても、角度検出部の検出結果に基づいて、情報処理装置が表示装置を観察中の姿勢にある状態と判断した場合には、既にオンの状態にある表示装置のオンの状態を変更せずに継続してオンの状態とする」という動作を行うものであるところ、引用発明においても、例えば、表示装置を観察中に耳当て検出部に指が触れてしまうなど、耳当て検出部が「誤って」検出出力を出し、メイン制御部が「誤って」表示装置をオフすることを判断する場合は想定され得ることである。 すなわち、表示手段のオン状態が「誤って」オフされることを防止するということは、オフされることを防止するという動作の一態様に過ぎないものであり、引用発明の「表示装置のオンの状態を変更せずに継続してオンの状態とする」という動作においても、表示手装置のオン状態が「誤って」オフされることを防止することが含まれているといえる。 よって、引用発明は、相違点4にかかる表示手段のオン状態が「誤って」オフされることを防止するものであるということができる。 (4)効果等について 本願発明の構成は、上記のように当業者が容易に想到できたものであるところ、本願発明が奏する効果は、その容易想到である構成から当業者が容易に予測しうる範囲内のものであり、同範囲を超える格別顕著なものがあるとは認められない。 (5)出願人の意見書の主張について 出願人は、平成27年5月1日付けの意見書において、「引用文献1は通話開始後において機能する姿勢変化に対する表示装置8のオンオフ制御に関するものであり」、「表示部が観察中の姿勢に維持されている状態においてバックライトが誤って消灯されるのを防止することを開示するものではありません。」と主張している。 しかしながら、本願発明は、モバイル装置の通話を開始する前の動作に限定されたものではないから、刊行物1記載の装置が通話の開始後の動作を想定していることを理由に、本願発明と相違するものであるとはいえない。 また、上記(3)において検討したように、表示手段のオン状態が「誤って」オフされることを防止するということは、オフされることを防止するという動作の一態様に過ぎないものであり、この点に進歩性が認められるものでもない。 よって、出願人の上記主張は採用できない。 (6)まとめ 以上のとおりであるから、本願発明は引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 第4 むすび 以上のように、本願の請求項1に係る発明は、刊行物1に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく、拒絶をすべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2015-06-05 |
結審通知日 | 2015-06-09 |
審決日 | 2015-06-23 |
出願番号 | 特願2010-10980(P2010-10980) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(H04N)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 佐藤 直樹 |
特許庁審判長 |
藤井 浩 |
特許庁審判官 |
渡辺 努 清水 正一 |
発明の名称 | 生体認証装置およびモバイル機器 |
代理人 | 特許業務法人 佐野特許事務所 |
代理人 | 林田 英樹 |
代理人 | 佐野 静夫 |