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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1303993
審判番号 不服2014-2934  
総通号数 189 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-09-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-02-17 
確定日 2015-08-05 
事件の表示 特願2010-517162「チャンバ壁に一体化されたモータを伴う基板処理装置」拒絶査定不服審判事件〔平成21年 1月22日国際公開、WO2009/012396、平成23年 5月 6日国内公表、特表2011-514652〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 I.手続の経緯
本願は、2008年7月17日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理2007年7月17日(US)アメリカ合衆国、2008年7月17日(US)アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって、平成24年9月28日付けで拒絶の理由が通知され、平成25年4月1日に意見書とともに手続補正書が提出されたが、平成25年10月7日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成26年2月17日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に特許請求の範囲についての手続補正がなされたものである。

II.平成26年2月17日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成26年2月17日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1.補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、次のように補正された。
「基板搬送装置であって、
隔離された雰囲気を保持可能な基板搬送チャンバを画定する内面を有する周壁と、
前記周壁の前記内面とその隣接する外面との間の前記周壁内において前記周壁の大気側の側部の外部雰囲気から前記基板搬送チャンバの前記隔離された雰囲気を隔離する前記周壁の前記大気側の側部上に設けられた少なくとも1つのステータモジュールを含み、前記搬送チャンバ内において接触することなく支持された少なくとも1つのロータを含む少なくとも1つのリング形状のモータと、
前記少なくとも1つのロータに接続され、少なくとも1つの基板を保持するよう構成された少なくとも1つのエンドエフェクタを有する、少なくとも1つの基板搬送アームと、を含み、
前記リング形状のモータにより包囲された前記周壁の表面は、所定の装置の取り付け用に構成されていることを特徴とする基板搬送装置。」
(なお、下線は補正箇所を示すものである。)

2.補正の目的
本件補正は、「少なくとも1つのステータモジュール」について、「前記周壁の大気側の側部の外部雰囲気から前記基板搬送チャンバの前記隔離された雰囲気を隔離する前記周壁の前記大気側の側部上に設けられた」との限定を付加するもの、及び、「少なくとも1つのロータ」について、「懸架された」を「支持された」と表現を変更するものであり、前者は特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当し、後者は特許法第17条の2第5項第4号の明りょうでない記載の釈明に該当する。

3.独立特許要件
本件補正が特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものを含むことから、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について以下に検討する。

3-1.引用刊行物の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開2002-26105号公報(以下、「刊行物1」という。)には、次の事項が記載されている。

(ア)「【0031】
【発明の実施の形態】
以下、この発明を図示の実施の形態により詳細に説明する。
【0032】図1は、この発明による真空搬送モジュールを示した平面図である。図2は、この真空搬送モジュール1を構成する搬送室2の断面を示す拡大正面図である。この真空搬送モジュール1は、半導体部品、具体的には基板の製造装置の一部であり、平面において略正方形をなす搬送室2と、この搬送室2の周りに配置されて搬送室2に接続する4つの処理室3,3・・・を有する。上記処理室3,3,3・・・には、基板に所定の処理を施す例えばCVD(化学的気相成長)装置やPVD(物理的気相成長)装置等が設けられている。
【0033】上記搬送室2の内部には、処理室3,3・・・にて所定の処理が施されるべき基板を搬送するためのロボットアーム5が設けられている。このロボットアーム5は、第1アーム5aと、第2アーム5bと、把手5cとが順に接続してなる。上記第1アーム5aは、略円盤形状をなしていて、円筒形の第1中空回転軸6aの上端に、第1中空回転軸6aと軸を略一致させて連結されている。上記第1アーム5aは、円盤の中心部を貫通する開口穴8を有し、この開口穴8は、上記第1中空回転軸6aの内側に形成された吸引口9と連通している。さらに、上記第1アーム5aは、円周の1部に径方向に突出する凸部を有し、この凸部に第2アーム5bを接続している。
【0034】上記第1中空回転軸6aは、図2に示すように、上記搬送室2の底盤2aの平面において略中央に設けられている。この第1中空回転軸6aは、外側面の一部に永久磁石を備えてロータ11rを形成していて、径方向外側に、上記ロータ11rに対向するステータ11sを配置している。そして、上記ロータ11rとステータ11sとで、第1中空モータ11を形成している。
【0035】上記第1中空回転軸6aの径方向内側には、この第1中空回転軸6aと同軸に第2中空回転軸6bが配置されている。この第2中空回転軸6bは、内側面の一部に永久磁石を備えてロータ12rを形成していて、径方向内側に、上記ロータ12rに対向するステータ12sを配置している。そして、上記ロータ12rとステータ12sとで、第2中空モータ12を形成している。また、上記第2中空回転軸6bの内側において、上記第2中空モータ12の内面に形成される中空部分が、上記第1アーム5aの開口穴8に連通して搬送室2内の空気を吸引するための吸引口9になっている。
【0036】上記第1中空モータ11および第2中空モータ12は、軸方向の厚みが、上記搬送室2のケーシングを構成する1部分である底盤2aの厚みよりも薄く形成されていて、この底盤2aの中に配置されている。上記第1中空モータ11は、上記第1中空回転軸6aを駆動して、この第1中空回転軸6aに連結する第1アーム5aを直接回転駆動する。上記第2中空モータ12は、上記第2中空回転軸6bを駆動して、この第2中空回転軸6bの上端に掛け渡されて上記第1アーム5aの内部に設けられた図示しないベルトを介して、第2アーム5bを回転駆動する。なお、上記第1中空モータ11および第2中空モータ12は、ステッピングモータである。
【0037】上記搬送室2の底盤2aの下側面には、略円筒形の真空ポンプ14を取り付けている。この真空ポンプ14は、上記第1中空モータ11および第2中空モータ12と同軸に配置されていて、真空ポンプ14の吸引ポートを、上記第2中空モータ12の内側の吸引口9に連通している。」

(イ)第2図には、搬送室2の構成図(特に、搬送室2が側部を有する点)が図示されている。

上記記載事項(ア)及び図示内容の上記認定事項(イ)を総合すると、刊行物1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「真空搬送モジュール1であって、
隔離された雰囲気を保持可能な搬送室2を画定する内面を有するケーシングと、
前記ケーシングの大気側の側部の外部雰囲気から前記搬送室2の前記隔離された雰囲気を隔離する前記ケーシングの前記大気側の側部と、
前記ケーシングの前記内面とその隣接する外面との間の前記ケーシング内に設けられたステータ11sを含み、前記搬送室2内において支持されたロータ11rを含むリング形状の第1中空モータ11と、
前記ロータ11rに接続され、基板を保持するよう構成された把手5cを有する、ロボットアーム5と、を含み、
前記リング形状の第1中空モータ11により包囲された前記ケーシングの表面は、真空ポンプ14の取り付け用に構成されている真空搬送モジュール1。」

3-2.対比
本願補正発明と引用発明とを対比すると、その構造または機能からみて、引用発明の「真空搬送モジュール1」は、本願補正発明の「基板搬送装置」に相当し、以下同様に、「搬送室2」は「基板搬送チャンバ」に、「ケーシング」は「周壁」に、「ステータ11s」は「ステータモジュール」に、「ロータ11r」は「ロータ」に、「第1中空モータ11」は「モータ」に、「把手5c」は「エンドエフェクタ」に、「ロボットアーム5」は「基板搬送アーム」に、「真空ポンプ14」は「所定の装置」に、それぞれ相当する。

そうすると、両者は次の点で一致する。
(一致点)
「基板搬送装置であって、
隔離された雰囲気を保持可能な基板搬送チャンバを画定する内面を有する周壁と、
前記周壁の大気側の側部の外部雰囲気から前記基板搬送チャンバの前記隔離された雰囲気を隔離する前記周壁の前記大気側の側部と、
前記周壁の前記内面とその隣接する外面との間の前記周壁内に設けられた少なくとも1つのステータモジュールを含み、前記搬送チャンバ内において支持された少なくとも1つのロータを含む少なくとも1つのリング形状のモータと、
前記少なくとも1つのロータに接続され、少なくとも1つの基板を保持するよう構成された少なくとも1つのエンドエフェクタを有する、少なくとも1つの基板搬送アームと、を含み、
前記リング形状のモータにより包囲された前記周壁の表面は、所定の装置の取り付け用に構成されている基板搬送装置。」

そして、両者は、次の相違点1、2で相違する。
(相違点1)
ステータモジュールが、本願補正発明では、大気側の側部上に設けられているのに対し、引用発明では、そのようになっていない点。

(相違点2)
ロータが、本願補正発明では、接触することなく支持されるのに対し、引用発明ではそのようになっているか不明である点。

3-3.相違点の判断
上記相違点について検討する。
(相違点1について)
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開平10-316241号公報(以下、「刊行物2」という。)には、側部上に固定子(本願補正発明の「ステータモジュール」に相当)を設ける構成(以下、「刊行物2記載事項」という)が記載されている(第3頁第4欄1?14行、第5、6図等参照)。そして、基板搬送装置において、ステータモジュールをどのように配置するかは当業者が全体の構成を踏まえて適宜設計可能な事項であるので、引用発明において、上記刊行物2記載事項を適用することで、上記相違点1に係る本願補正発明の発明特定事項のようにすることは当業者が容易に想到し得たことである。

(相違点2について)
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物である実願昭63-81299号(実開平2-4024号)のマイクロフィルム(以下、「刊行物3」という。)には、軸受回転子1(本願補正発明の「ロータ」に相当)を接触することなく支持する構成(以下、「刊行物3記載事項」という)が記載されている(明細書第4頁12?18行、第13頁6行?第14頁4行、第6、7図等参照)。基板搬送装置において、ベアリングの潤滑剤等が生じる場合に真空での作業への悪影響が生じるという課題は刊行物3(明細書第4頁5?10行)に示されるように一般的に知られたものであるので、引用発明においても、上記課題の解決のために刊行物3記載事項を適用して上記相違点2に係る本願補正発明の発明特定事項のようにすることは当業者が格別の創意なくなし得たことである。

そして、本願補正発明による効果も、引用発明並びに刊行物2記載事項及び刊行物3記載事項から当業者が予測し得た程度のものであって、格別のものとはいえない。

したがって、本願補正発明は、引用発明並びに刊行物2記載事項及び刊行物3記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

3-4.むすび
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合しないので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記[補正却下の決定の結論]のとおり、決定する。

III.本願発明
平成26年2月17日付けの手続補正は、上記のとおり却下されたので、本件出願の発明は、平成25年4月1日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められ、その請求項1に係る発明は、以下のとおりのものである(以下、「本願発明」という。)。
「基板搬送装置であって、
隔離された雰囲気を保持可能な基板搬送チャンバを画定する内面を有する周壁と、
前記周壁の前記内面とその隣接する外面との間の前記周壁内に設けられた少なくとも1つのステータモジュールを含み、前記搬送チャンバ内において接触することなく懸架された少なくとも1つのロータを含む少なくとも1つのリング形状のモータと、
前記少なくとも1つのロータに接続され、少なくとも1つの基板を保持するよう構成された少なくとも1つのエンドエフェクタを有する、少なくとも1つの基板搬送アームと、を含み、
前記リング形状のモータにより包囲された前記周壁の表面は、所定の装置の取り付け用に構成されていることを特徴とする基板搬送装置。」

IV.引用例の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物1、及び、その記載事項は、前記II.3-1.に記載したとおりである。

V.対比・判断
本願発明は、前記II.1.の本願補正発明から、「少なくとも1つのステータモジュール」について、「前記周壁の大気側の側部の外部雰囲気から前記基板搬送チャンバの前記隔離された雰囲気を隔離する前記周壁の前記大気側の側部上に設けられた」との限定を省き、また、「少なくとも1つのロータ」について、「支持された」を「懸架された」と表現を変更したものである。なお、この表現の変更は明りょうでない記載の釈明による変更を元に戻すものであり実質上構成の変更を伴なうものではない。
してみると、本願発明と引用発明とを対比すると、両者は、前記II.3-2.における上記相違点2について相違し、その他の点で一致する。上記相違点2については、前記II.3-3.に記載したとおり、引用発明において刊行物3記載事項を適用して上記相違点2に係る本願発明の発明特定事項のようにすることは当業者が格別の創意なくなし得たことである。したがって、本願発明も、引用発明及び刊行物3記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

VI.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び刊行物3記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
そして、本願発明が特許を受けることができないものである以上、本件出願のその他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-03-04 
結審通知日 2015-03-10 
審決日 2015-03-23 
出願番号 特願2010-517162(P2010-517162)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (H01L)
P 1 8・ 121- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 鈴木 崇文  
特許庁審判長 栗田 雅弘
特許庁審判官 原 泰造
石川 好文
発明の名称 チャンバ壁に一体化されたモータを伴う基板処理装置  
代理人 藤村 元彦  

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