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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04Q 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04Q |
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管理番号 | 1303998 |
審判番号 | 不服2014-5894 |
総通号数 | 189 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2015-09-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2014-04-01 |
確定日 | 2015-08-05 |
事件の表示 | 特願2010-542251「車両システムと相互作用する双方向携帯型電子装置」拒絶査定不服審判事件〔平成21年 7月16日国際公開、WO2009/088835、平成23年 5月26日国内公表、特表2011-517143〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、2008年12月29日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2008年1月9日、米国)を国際出願日とする出願であって、原審において平成24年12月11日付けで拒絶理由が通知され、平成25年4月2日付けで手続補正され、同年6月5日付けで最後の拒絶理由が通知され、同年9月9日付けで手続補正されたが、同年11月26日付けで補正の却下の決定がなされるとともに、同日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成26年4月1日に拒絶査定不服の審判が請求されるとともに、同日付けで手続補正されたものである。 第2 補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成26年4月1日付けの手続補正を却下する。 [理由] 1.本願発明と補正後の発明 上記手続補正(以下「本件補正」という。)は、本件補正前の平成25年4月2日付けで手続補正された特許請求の範囲の請求項10に記載された 「携帯型電子装置の表示器を使用して第1のトランシーバを有する車両から受信される情報を表示する方法であって、 前記携帯型電子装置から前記第1のトランシーバに第1の信号を送信するステップであって、前記第1の信号が前記第1の信号に応答して前記車両に動作を行わせるように構成されるステップと、 前記第1のトランシーバから車両パラメータに関連する状態を前記第2のトランシーバに要求させるステップと、 前記要求に応答して前記携帯型電子装置で第2の信号を受信するステップと、 前記携帯型電子装置のコントローラを使用して、前記第2の信号に基づいて且つ応答して前記表示器に表示状態を変化させ、又は前記状態の要求がタイムアウトし若しくは前記携帯型電子装置が範囲外にある場合に、前記表示器に表示状態を変更させるステップと を備えることを特徴とする方法。」 という発明(以下「本願発明」という。)を、 「携帯型電子装置の表示器を使用して第1のトランシーバを有する車両から受信される情報を表示する方法であって、 前記携帯型電子装置から前記第1のトランシーバに第1の信号を送信するステップであって、前記第1の信号が前記第1の信号に応答して前記車両に前記携帯型電子装置が既定範囲内に入ると個人設定を含む動作を自動的に行わせるように構成されるステップと、 前記第1のトランシーバから車両パラメータに関連する状態を前記第2のトランシーバに要求させるステップと、 前記要求に応答して前記携帯型電子装置で第2の信号を受信するステップと、 前記携帯型電子装置のコントローラを使用して、前記第2の信号に基づいて且つ応答して前記表示器に表示状態を変化させ、又は前記携帯型電子装置が前記既定範囲外にある場合に、前記表示器に表示状態を変更させるステップと を備えることを特徴とする方法。」 という発明(以下「補正後の発明」という。)に変更することを含むものである。 2.新規事項の有無、シフト補正、補正の目的要件について 上記補正は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内において、補正前の特許請求の範囲の請求項10に記載された、「前記車両に動作を行わせる」に関し、「前記車両に前記携帯型電子装置が既定範囲内に入ると個人設定を含む動作を自動的に行わせる」と限定し、また、「前記状態の要求がタイムアウトし若しくは前記携帯型電子装置が範囲外にある場合」に関し、択一的記載の一方を削除し「前記携帯型電子装置が前記既定範囲外にある場合」と限定して、特許請求の範囲を減縮するものであるから、特許法第17条の2第3項及び第4項の規定に適合するとともに、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 3.独立特許要件について 上記補正は特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、上記補正後の発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるのかどうか(特許法第17条の2第6項で準用する同法第126条第7項の規定に適合するかどうか)について以下に検討する。 (1)補正後の発明 上記「1.本願発明と補正後の発明」の項で補正後の発明として認定したとおりである。 (2)引用発明及び技術事項 A 原審の平成25年6月5日付け最後の拒絶理由に引用された、本願の優先権主張の日前に日本国内において頒布された刊行物である特開2000-54940号公報(平成12年2月22日公開、以下「引用例1」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。 イ.「【0001】 【発明の属する技術分野】この発明に係る自動車用エンジンの遠隔操作装置は、少なくとも自動車のエンジンを自動車室外から遠隔始動する為に利用する。 【0002】 【従来の技術】自動車のエンジンを自動車室外から遠隔始動させる、自動車用エンジンの遠隔操作装置が、例えば実開平2-42102号公報に記載されている様に従来から知られており、一部で実際に使用されている。 【0003】遠隔始動装置を利用して自動車用エンジンを始動する場合には、持ち運び自在な第一の送受信器を操作する事で無線信号を発信する。この無線信号は、自動車内に設けられた第二の送受信器により受信されて、制御器に送られる。そして、この制御器は、上記第二の送受信器が上記第一の送受信器からの無線信号を受け、且つ安全等の条件が満たされた場合にのみ、始動指令信号を出す。この始動指令信号に基づいて、始動装置を構成するイグニッションスイッチが閉じられ、セルモータが駆動して、エンジンが始動する。 【0004】この様な自動車用エンジンの遠隔操作装置として、近年、自動車用エンジンを、自動車室外から始動させると共に、このエンジンの運転状況を自動車室外から確認自在とする自動車用エンジンの遠隔操作装置が、一部で実際に使用されている。この様な自動車用エンジンの遠隔操作装置は、操作者が持ち運び自在な第一の送受信器と、自動車内に設けた第二の送受信機と、制御器と、始動装置と、作動検知装置と、上記第一の送受信器の一部に設けられ、エンジンの作動状態を操作者に確認自在とする表示部とを備える。 【0005】自動車室外からエンジンを始動させる為には、操作者が上記第一の送受信器を操作して、この第一の送受信器によりエンジンを始動させる為の無線信号を発信させる。この無線信号を上記第二の送受信器が受信すると、上記制御器がエンジンの始動指令信号を出す。そして、この始動指令信号に基づいて、上記始動装置がエンジンを始動させる。一方、操作者がエンジンの作動状態を確認しようとする場合には、上記第一の送受信器を操作して、この第一の送受信器によりエンジンの作動状態を確認する為の無線信号を発信させる。この無線信号を受信した上記第二の送受信器は、上記作動検知装置により検知したエンジンの作動状態を表す信号に基づく無線信号を発信する。この無線信号を受信した上記第一の送受信器は、エンジンの作動状態を、上記表示部により操作者に確認自在とする。 【0006】 【発明が解決しようとする課題】上述した従来から使用されている自動車用エンジンの遠隔操作装置の場合、操作者がエンジンを始動すべく上記第一の送受信器を操作して無線信号を発信させた後に、エンジンの作動状態を確認する為には、エンジン始動の為の操作とは別の操作を上記第一の送受信器に設けたスイッチを押す等により行なう必要があった。即ち、操作者がエンジンを始動すべく上記第一の送受信器を操作して発信させた無線信号を、上記第二の送受信器が受信した場合でも、始動装置又はエンジンの不良等の理由により、エンジンが正常に作動しない可能性がある。従来から使用されている自動車用エンジンの遠隔操作装置の場合、制御器がエンジン始動指令信号を出した時点で、エンジンの始動制御を開始した旨を表す無線信号が、上記第一の送受信器に送信され、この第一の送受信器によりエンジンの始動制御を開始した旨を確認自在としている。但し、この様にエンジンの始動制御を開始した旨を確認しただけでは、実際にエンジンが正常に作動したか否かが分からない。操作者が、エンジンが正常に作動した事を確認する為には、上述した様にエンジン始動の為の操作とは別に、スイッチを押す等の操作をする必要があり、面倒であった。本発明の自動車用エンジンの遠隔操作装置は、上述の様な事情に鑑みて発明したものである。」(2頁1欄?3頁3欄) ロ.「【0011】 【作用】上述の様に構成される本発明の自動車用エンジンの遠隔操作装置によれば、エンジンの始動指令信号を出した後に、少なくとも1回以上、その時点でのエンジンの作動状態を、第一の送受信器に設けた表示部により、操作者に確認自在とする。この為、操作者は、上記第一の送受信器によりエンジン始動の為の操作を行なうのみで、エンジンの作動状態を、面倒な手間を要する事なく、簡単に確認する事ができる。 【0012】又、好ましい構成によれば、上記第一の送受信器が、表示部として用いる、発光ダイオード又は液晶表示器の一部を点灯、表示、若しくは点滅させる事により、エンジンが始動制御中であるか、又は作動中であるかを操作者に確認自在とする為、操作者がエンジンの作動状態を瞬時に判断できて、操作者の視認性、操作性を向上する事ができる。」(3頁3?4欄) ハ.「【0014】 【発明の実施の形態】図1?2は、請求項1に対応する本発明の実施の形態の第1例を示しており、図1は本発明の自動車用エンジンの遠隔操作装置のブロック図を、図2は同じくエンジン1を遠隔始動する際の第一、第二の送受信器2、3の送受信状態及び第一の送受信器2に設ける表示部7の表示状態を、それぞれ示している。本発明の自動車用エンジンの遠隔操作装置は、操作者側(A)に設けた、少なくともエンジン1の始動を指示する為の無線信号を発信する第一の送受信器2と、車両側(B)に設けた、この第一の送受信器2からの無線信号を受信する第二の送受信器3と、この第二の送受信器3が無線信号を受けた場合に始動指令信号を出す制御器4と、この始動指令信号に基づいてエンジン1を始動させる始動装置5と、エンジン1の作動状態を検知してこの作動状態を表す信号を上記制御器4に入力する作動検知装置6と、上記第一の送受信器2の一部に設けられ、操作者にエンジン1の作動状態を確認自在とする表示部7とを備える。そして、自動車用エンジンの遠隔操作装置を起動させると、制御器4中に組み込まれたRAM等の記憶手段に記憶されている判断条件をこの制御器4の制御回路中に移し込む、所謂初期設定を行なう。この初期設定を行なった後、第二の送受信器3が第一の送受信器2からの無線信号を受信し、安全等の条件が満たされると、エンジン1の遠隔始動が行なわれる。 【0015】即ち、初期設定後に上記制御器4は、第二の送受信器3が第一の送受信器2からの無線信号を受けているか否かを常に判断し、第二の送受信器3が無線信号を受けていると判断される場合には、エンジン1の始動停止等を制御する。即ち、上記第一の送受信器2からエンジン1を始動すべき旨を指示する為の無線信号が発信され(A送信)、上記第二の送受信器3がこの無線信号を受信(B受信)した場合には、エンジン1を回転させるべき旨を表わす始動指令信号(エンジン回転フラグ)を立ち上げる(ONする)。エンジン回転フラグがONされると、割込ルーチンによる安全等の確認が行なわれる事を条件に、上記始動装置5を構成するイグニッションスイッチをONした数秒後に、セルモータを駆動してエンジン1の始動を開始する。 【0016】この際、上記制御器4は、上記第二の送受信器3がエンジン1の始動の為の無線信号を受信(B受信)した時点より予め設定された所定時間x(例えば0?1秒)経過後に、エンジン1の始動制御を開始した旨の無線信号を上記第二の送受信器3により発信(B送信1)させる。この無線信号を受信(A受信1)した第一の送受信器2は、上記表示部7によりエンジン1の始動制御を開始した旨を表示(表示1)して、操作者に確認自在とする。 【0017】特に、本発明の自動車用エンジンの遠隔操作装置の場合、上記制御器4が、上記第二の送受信器3により上記無線信号を発信(B送信1)させた時点より予め設定された所定時間y(例えば7秒程度の短時間)経過後に、その時点で上記作動検知装置6が検知した、エンジン1の作動状態を表す信号に基づく無線信号を、上記第二の送受信器3により発信(B送信2)させる。即ち、上記時点でエンジン1が正常に作動しており、上記作動検知装置6がエンジン1の作動を検知した場合には、エンジン1が作動中である旨を表す信号を上記制御器4に入力する。反対に、エンジン1が未だ作動しておらず、上記作動検知装置6がエンジン1の非作動を検知した場合には、エンジン1が始動制御中である旨を表す信号を上記制御器4に入力する。尚、エンジンを始動する為の安全条件の検知エラー等により、エンジンの始動制御を停止した場合には、エンジンの始動を停止した旨及び停止の原因を表す信号を制御器4に入力する。そして、この制御器4は、上記エンジン1の作動状態を表す信号に基づいた無線信号を、上記第二の送受信器3により発信させる。この無線信号を受信(A受信2)した上記第一の送受信器2は、上記表示部7に、表示1に代えて、エンジン1の作動状態を表す表示2を、所定時間z(例えば8秒間)の間表示して、操作者に確認自在とする。」(3頁4欄?4頁5欄) 上記引用例1の記載及び図面並びにこの分野における技術常識を考慮すると、上記ハ.の【0014】における「本発明の自動車用エンジンの遠隔操作装置は、操作者側(A)に設けた、少なくともエンジン1の始動を指示する為の無線信号を発信する第一の送受信器2と、車両側(B)に設けた、この第一の送受信器2からの無線信号を受信する第二の送受信器3と、この第二の送受信器3が無線信号を受けた場合に始動指令信号を出す制御器4と、この始動指令信号に基づいてエンジン1を始動させる始動装置5と、エンジン1の作動状態を検知してこの作動状態を表す信号を上記制御器4に入力する作動検知装置6と、上記第一の送受信器2の一部に設けられ、操作者にエンジン1の作動状態を確認自在とする表示部7とを備える。」との記載、及び図1によれば、引用例1の自動車エンジンの遠隔操作装置は、操作者側(A)に、第一の送受信器(2)と表示部(7)とを備えており、これらをまとめて操作者側遠隔操作装置と称することは任意である。また、自動車エンジンの遠隔操作装置は、車両側(B)に、第二の送受信器(3)と、制御器(4)と、始動装置(5)と、作動検知装置(6)を備えており、これらをまとめて車両側装置と称することは任意である。 また、上記ハ.の【0015】における「上記制御器4は、第二の送受信器3が第一の送受信器2からの無線信号を受けているか否かを常に判断し、第二の送受信器3が無線信号を受けていると判断される場合には、エンジン1の始動停止等を制御する。即ち、上記第一の送受信器2からエンジン1を始動すべき旨を指示する為の無線信号が発信され(A送信)、上記第二の送受信器3がこの無線信号を受信(B受信)した場合には、エンジン1を回転させるべき旨を表わす始動指令信号(エンジン回転フラグ)を立ち上げる(ONする)。エンジン回転フラグがONされると、・・・上記始動装置5を構成するイグニッションスイッチをONした数秒後に、セルモータを駆動してエンジン1の始動を開始する。」との記載、図1及び図2によれば、自動車エンジンの遠隔操作装置は、操作者側遠隔操作装置の第一の送受信器(2)から車両側装置の第二の送受信器(3)に無線信号を送信し、車両側装置の制御器(4)が第一の送受信器(2)からの無線信号を受けているか否か常に判断している。そして、車両側装置の第二の送受信器(3)が無線信号を受信した場合には、車両側装置は、エンジン(1)を回転させる動作を行っており、無線信号は、車両にエンジン(1)を回転させる動作を自動的に行わせていることが読み取れる。ここで、操作者側遠隔操作装置の第一の送受信器(2)から車両側装置の第二の送受信器(3)に送信する無線信号を第1の無線信号と称することは任意である。 よって、自動車エンジンの遠隔操作装置は、(α)操作者側遠隔操作装置から第二の送受信器(3)に第1の無線信号を送信し、無線信号が無線信号に応答して車両にエンジン(1)を回転させる動作を自動的に行わせているということができる。 また、上記ハ.の【0015】における「上記第一の送受信器2からエンジン1を始動すべき旨を指示する為の無線信号が発信され(A送信)、上記第二の送受信器3がこの無線信号を受信(B受信)した場合には、エンジン1を回転させるべき旨を表わす始動指令信号(エンジン回転フラグ)を立ち上げる(ONする)。・・・上記始動装置5を構成するイグニッションスイッチをONした数秒後に、セルモータを駆動してエンジン1の始動を開始する。」との記載、同ハ.の【0016】における「この際、上記制御器4は、上記第二の送受信器3がエンジン1の始動の為の無線信号を受信(B受信)した時点より予め設定された所定時間x(例えば0?1秒)経過後に、エンジン1の始動制御を開始した旨の無線信号を上記第二の送受信器3により発信(B送信1)させる。」との記載、図1及び図2によれば、自動車エンジンの遠隔操作装置は、操作者側遠隔操作装置の第一の送受信器(2)から第二の送受信器(3)に第1の無線信号を送信し、エンジン(1)の始動制御を開始した旨の無線信号を車両側装置の第二の送受信器(3)により発信させているから、第1の無線信号は、(β)車両側装置の第二の送受信器(3)からエンジン(1)の始動制御を開始した旨を第一の送受信器(2)に要求させているということができる。 また、上記ハ.の【0016】における「エンジン1の始動制御を開始した旨の無線信号を上記第二の送受信器3により発信(B送信1)させる。この無線信号を受信(A受信1)した第一の送受信器2は、上記表示部7によりエンジン1の始動制御を開始した旨を表示(表示1)して、操作者に確認自在とする。」との記載、図1及び図2によれば、自動車エンジンの遠隔操作装置は、操作者側遠隔操作装置で前述の要求の応答として無線信号を受信している。ここで、操作者側遠隔操作装置で前述の要求の応答として受信する無線信号を第2の無線信号と称することは任意である。よって、(γ)要求に応答して操作者側遠隔操作装置で第2の無線信号を受信しているということができる。 また、上記ハ.の【0016】における「エンジン1の始動制御を開始した旨の無線信号を上記第二の送受信器3により発信(B送信1)させる。この無線信号を受信(A受信1)した第一の送受信器2は、上記表示部7によりエンジン1の始動制御を開始した旨を表示(表示1)して、操作者に確認自在とする。」との記載、図1及び図2によれば、自動車エンジンの遠隔操作装置は、操作者側遠隔操作装置において、前述の第2の無線信号に基づいて、すなわち、第2の無線信号に応答して表示部(7)に作動状態を確認自在としているから、(δ)操作者側遠隔操作装置を使用して、前記第2の無線信号に基づいて且つ応答して前記表示部(7)に作動状態を確認自在とさせているということができる。 そして、上記(α)ないし(δ)より、上記引用例1の自動車エンジンの遠隔操作装置は、操作者側遠隔操作装置の表示部(7)を使用して、車両側装置の第二の送受信器(3)からの第2の無線信号に基づいて且つ応答して表示部(7)に作動状態を確認自在としているから、上記引用例1には、操作者側遠隔操作装置の表示部(7)を使用して第二の送受信器(3)を有する車両から受信される情報を表示する方法が記載されているということができる。 したがって、上記引用例1には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。 「操作者側遠隔操作装置の表示部(7)を使用して第二の送受信器(3)を有する車両から受信される情報を表示する方法であって、 前記操作者側遠隔操作装置から前記第二の送受信器(3)に第1の無線信号を送信するステップであって、前記第1の無線信号が前記第1の無線信号に応答して前記車両にエンジン(1)を回転させる動作を自動的に行わせるように構成されるステップと、 前記第二の送受信器(3)からエンジン(1)の始動制御を開始した旨を第一の送受信器(2)に要求させるステップと、 前記要求に応答して前記操作者側遠隔操作装置で第2の無線信号を受信するステップと、 前記操作者側遠隔操作装置を使用して、前記第2の無線信号に基づいて且つ応答して前記表示部(7)に作動状態を確認自在とさせるステップと を備える方法。」 B 原審の平成25年6月5日付け最後の拒絶理由に引用された、本願の優先権主張の日前に日本国内において頒布された刊行物である特開平10-231651号公報(平成10年9月2日公開、以下「引用例2」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。 ニ.「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、アンサーバック機能を有するキーレスエントリーシステムに関する。特に、車両や家屋等のドア錠やトランクの蓋などを遠隔から施解錠するためのキーレスエントリーシステムに関する。」(2頁2欄) ホ.「【0068】(第9の実施形態)図24に示すものは本発明のさらに別な実施形態によるキーレスエントリーシステム101の携帯機2であって、携帯機2の受信回路12が受信待ちの期間内に車載機3からのアンサーバック信号を受信しなかった場合には、エラー出力を行なうエラー表示部102を備えている。 【0069】図25に示すものは、この実施形態による携帯機2の受信動作を示すフロー図である。図25のフロー図と図5のフロー図と比較すれば明らかなように、この実施形態では、受信回路12がアンサーバック信号を受信することなくパワーオフされた場合には、エラー表示信号を出力してエラー表示部102を一定時間点灯させるようにしている(S10) 【0070】なお、表示部を1つしか備えていない図15及び図16のようなキーレスエントリーシステムにおいても、車載機3で発生するキャリア波による施錠確認信号、解錠確認信号及びエラー表示信号の波形ないしオン/オフのタイミングを図26(a)(b)(c)のように異ならせることによってエラー表示させることが可能になる。」(8頁14欄) 上記引用例2の記載及び図面並びにこの分野における技術常識を考慮すると、上記ホ.の【0068】における「キーレスエントリーシステム101の携帯機2であって、携帯機2の受信回路12が受信待ちの期間内に車載機3からのアンサーバック信号を受信しなかった場合には、エラー出力を行なうエラー表示部102を備えている。」との記載、図24及び図25によれば、キーレスエントリーシステム(101)の携帯機(2)は、受信待ちの期間内に車載機(3)からのアンサーバック信号を受信しなかった場合、すなわち、タイムアウトした場合に表示部(102)にエラー表示を行っている。 したがって、上記引用例2には、以下の発明(以下「技術事項」という。)が記載されているものと認められる。 「キーレスエントリーシステム(101)の携帯機(2)において、タイムアウトした場合に表示部(102)にエラー表示を行うこと。」 (3)対比・判断 補正後の発明と引用発明とを対比する。 a.引用発明の「操作者側遠隔操作装置」は、上記引用例1の上記イ.の【0003】における「遠隔始動装置を利用して自動車用エンジンを始動する場合には、持ち運び自在な第一の送受信器を操作する事で無線信号を発信する。」との記載によれば、「携帯型電子装置」ということができる。 b.引用発明の「表示部(7)」、「第二の送受信器(3)」、「第1の無線信号」、「第一の送受信器(2)」及び「第2の無線信号」は、補正後の発明の「表示器」、「第1のトランシーバ」、「第1の信号」、「第2のトランシーバ」及び「第2の信号」にそれぞれ相当する。 c.引用発明の「エンジン(1)を回転させる動作」と、補正後の発明の「個人設定を含む動作」とは、いずれも、「特定の動作」という点で一致する。 d.引用発明の「エンジン(1)の始動制御を開始した旨」は、「車両パラメータに関連する状態」に含まれる。 e.引用発明の「作動状態を確認自在とさせる」は、上記引用例1の上記ロ.の【0012】における「上記第一の送受信器が、表示部として用いる、発光ダイオード又は液晶表示器の一部を点灯、表示、若しくは点滅させる事により、エンジンが始動制御中であるか、又は作動中であるかを操作者に確認自在とする」との記載によれば、「表示状態を変化させる」ということができる。 f.引用発明の「操作者側遠隔操作装置の表示部(7)を使用して第二の送受信器(3)を有する車両から受信される情報を表示する方法」は、後述する相違点を除いて、補正後の発明の「携帯型電子装置の表示器を使用して第1のトランシーバを有する車両から受信される情報を表示する方法」と差異はない。 したがって、補正後の発明と引用発明は、以下の点で一致ないし相違している。 (一致点) 「携帯型電子装置の表示器を使用して第1のトランシーバを有する車両から受信される情報を表示する方法であって、 前記携帯型電子装置から前記第1のトランシーバに第1の信号を送信するステップであって、前記第1の信号が前記第1の信号に応答して前記車両に特定の動作を自動的に行わせるように構成されるステップと、 前記第1のトランシーバから車両パラメータに関連する状態を前記第2のトランシーバに要求させるステップと、 前記要求に応答して前記携帯型電子装置で第2の信号を受信するステップと、 前記携帯型電子装置を使用して、前記第2の信号に基づいて且つ応答して前記表示器に表示状態を変化させるステップと を備える方法。」 (相違点1) 前記車両に「前記第1の信号が前記第1の信号に応答して特定の動作を自動的に行わせる」に関し、 補正後の発明は、前記車両に「前記携帯型電子装置が既定範囲内に入ると個人設定を含む動作を自動的に行わせる」のに対し、引用発明は、前記車両にエンジン(1)を回転させる動作を自動的に行わせるものの、前記車両に「前記携帯型電子装置が既定範囲内に入ると個人設定を含む動作を自動的に行わせる」ことは明示していない点。 (相違点2) 「前記携帯型電子装置を使用して、前記第2の信号に基づいて且つ応答して前記表示器に表示状態を変化させる」に関し、 補正後の発明は、前記携帯型電子装置「のコントローラ」を使用して、前記第2の信号に基づいて且つ応答して前記表示器に表示状態を変化させるのに対し、引用発明は、前記操作者側遠隔操作装置を使用して、前記第2の無線信号に基づいて且つ応答して前記表示部(7)に作動状態を確認自在とさせるものの、当該「コントローラ」を備えない点。 (相違点3) 「前記第2の信号に基づいて且つ応答して前記表示器に表示状態を変化させる」ステップに関し、 補正後の発明は、前記第2の信号に基づいて且つ応答して前記表示器に表示状態を変化させ、「又は前記携帯型電子装置が前記既定範囲外にある場合に、前記表示器に表示状態を変更させる」のに対し、引用発明は、当該「前記携帯型電子装置が前記既定範囲外にある場合に、前記表示器に表示状態を変更させる」構成を備えない点。 そこで、まず、上記相違点1について検討する。 引用発明は、「前記第1の無線信号が前記第1の無線信号に応答して前記車両にエンジン(1)を回転させる動作を自動的に行わせる」ところ、上記引用例1の上記ハ.の【0015】における「(車両側装置の)上記制御器4は、第二の送受信器3が第一の送受信器2からの無線信号を受けているか否かを常に判断し、第二の送受信器3が無線信号を受けていると判断される場合には、エンジン1の始動停止等を制御する。」との記載によれば、車両側装置の制御器(4)は、エンジン(1)を制御するために、操作者側遠隔操作装置の無線信号を受けているか否かを常に判断している。そして、「前記車両にエンジン(1)を回転させる動作を自動的に行わせる」ことができる以上、操作者側遠隔操作装置は、車両側装置から見た操作者側遠隔操作装置の無線信号が受信できる範囲内に入ることによってエンジン(1)を回転させる動作を自動的に行わせていることは明らかである。 一方、本願明細書段落【0031】には、「携帯型電子装置162が車両の規定範囲内(例えば、100フィート内、50ヤード内、50フィート内、10ヤード内等)に入ると、携帯型電子装置162は、例えば、ドアロック、車両エンジン、個人座席設定、ラジオ設定、及び/又は他の設定若しくは機能等の車両機能を自動的に作動させてもよい。」との記載があり、補正後の発明の「規定範囲内」は、100フィート内、50ヤード内、50フィート内、10ヤード内との記載があるにすぎず、どのように決定するのか特段の記載はない。よって、補正後の発明の「規定範囲内」は、車両から見た携帯型電子装置162の電波の受信できる範囲を表したものと解される。 そうすると、引用発明の「前記車両にエンジン(1)を回転させる動作を自動的に行わせる」ことができること、すなわち、車両側装置から見た操作者側遠隔操作装置の無線信号が受信できる範囲内に入ることと、補正後の発明の「前記携帯型電子装置が既定範囲内に入る」こととの間に実質的な差異があるとはいえない。仮に、差異があったとしても、「前記携帯型電子装置が既定範囲内に入る」とすることは、当業者であれば適宜なし得ることである。 そして、車両用の遠隔操作システムにおいて、車両に個人設定を含む動作を自動的に行わせることは、例えば、原審の平成25年11月26日付け補正の却下の決定に引用された特開2006-8126号公報(段落【0002】、【0031】、【0032】、図5)に開示されているように周知である。 そうすると、上記周知技術に接した当業者であれば、引用発明の「エンジン(1)を回転させる」動作に加えて、補正後の発明のように「個人設定を含む」ものとすることも、当業者であれば容易になし得ることである。 次に、上記相違点2について検討する。 引用発明は、「前記操作者側遠隔操作装置を使用して、前記第2の無線信号に基づいて且つ応答して前記表示部(7)に作動状態を確認自在とさせる」ところ、上記引用例1の上記ロ.の【0012】における「表示部として用いる、発光ダイオード又は液晶表示器の一部を点灯、表示、若しくは点滅させる事により、エンジンが始動制御中であるか、又は作動中であるかを操作者に確認自在とする」との記載によれば、表示器(7)は、表示状態を点灯、表示、若しくは点滅させる事によって動作状態を変化させている。そして、表示器に表示状態を変化させるためにコントローラを設けることは普通に行われていることである。 そうすると、引用発明の「操作者側遠隔操作装置」において、表示器に表示状態を変化させるために「コントローラ」を設けること、すなわち、上記相違点3に係る構成とすることは、当業者が適宜なし得ることである。 次に、上記相違点3について検討する。 上記(2)Bのとおり、引用例2には、「キーレスエントリーシステム(101)の携帯機(2)において、タイムアウトした場合に表示部(102)にエラー表示を行うこと。」(技術事項)が記載されている。 一方、本願明細書段落【0057】における「キーフォブは、既定の時間の間(例えば、約1ミリ秒から2秒の間、約100ミリ秒から1秒の間、約250ミリ秒から750ミリ秒の間等)、タイムアウト状態に入る(ステップ838)。車両から信号が受信されない場合、キーフォブは、例えば、1つ以上の照明を点滅させ、赤灯を示すこと等によって、要求がタイムアウトしたこと又はキーフォブが範囲外にある可能性を示す(ステップ840)。」との記載、図8Dによれば、キーフォブは、車両から信号が受信されない場合、すなわち、タイムアウト状態に入った(ステップ838)ことで、キーフォブが範囲外にあることを判断していると解される。 そうすると、上記技術事項に接した当業者であれば、引用発明の「操作者側遠隔操作装置」に上記技術事項を適用して、補正後の発明のように「前記携帯型電子装置が前記既定範囲外にある場合に、前記表示器に表示状態を変更させる」ことは、容易になし得ることである。 仮に、そうでないとしても、携帯型電子装置において、信号が受信できない距離にある場合に表示器にエラー表示させることは、例えば、特開平4-315684号公報(段落【0013】)に開示されるように周知であるから、周知技術に基づいて、当業者であれば容易になし得ることである。 そして、補正後の発明の作用効果も、引用発明、技術事項及び周知技術から当業者が容易に予測できる範囲のものである。 以上のとおり、補正後の発明は引用発明、技術事項及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 4.結語 したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3 本願発明について 1.本願発明 平成26年4月1日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願発明は、上記「第2 補正却下の決定 1.本願発明と補正後の発明」の項で「本願発明」として認定したとおりである。 2.引用発明及び技術事項 引用発明及び技術事項は、上記「第2 補正却下の決定」の項中の「3.独立特許要件について」の項中の「(2)引用発明及び技術事項」の項で認定したとおりである。 3.対比・判断 本願発明は上記補正後の発明から当該本件補正に係る限定を省いたものである。 そうすると、本願発明の構成に当該本件補正に係る限定を付加した補正後の発明が、上記「第2 補正却下の決定」の項中の「3.独立特許要件について」の項で検討したとおり、引用発明、技術事項及び周知技術に基づいて容易に発明できたものであるから、本願発明も同様の理由により、容易に発明できたものである。 4.むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明、技術事項及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 本願は、その余の請求項に論及するまでもなく拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2015-03-06 |
結審通知日 | 2015-03-10 |
審決日 | 2015-03-23 |
出願番号 | 特願2010-542251(P2010-542251) |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(H04Q)
P 1 8・ 121- Z (H04Q) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 宮田 繁仁 |
特許庁審判長 |
田中 庸介 |
特許庁審判官 |
山中 実 萩原 義則 |
発明の名称 | 車両システムと相互作用する双方向携帯型電子装置 |
代理人 | 伊藤 正和 |
代理人 | 三好 秀和 |