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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06F
管理番号 1304438
審判番号 不服2014-23679  
総通号数 190 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-10-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-11-20 
確定日 2015-09-03 
事件の表示 特願2010-238763「情報処理装置、情報処理方法、およびプログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 5月17日出願公開、特開2012- 93844、請求項の数(6)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成22年10月25日の出願であって、平成26年2月6日付けで拒絶理由が通知され、平成26年4月10日付けで手続補正がされ、平成26年9月4日付けで拒絶査定がされ、これに対し、平成26年11月20日に拒絶査定不服審判が請求されたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1-6に係る発明は、平成26年4月10日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-6に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
【請求項1】
平面図形の画像である平面オブジェクトの形状を指定する情報である形状情報が格納される形状情報格納部と、
階層化された複数のデータで構成される階層構造データが格納される階層構造データ格納部と、
前記階層構造データ格納部から一の階層の1以上のデータを配置用データとして取得する配置用データ取得部と、
前記形状情報が示す平面オブジェクトの表面に、当該平面オブジェクトについて前記配置用データ取得部が取得した配置用データを配置した平面オブジェクトの画像情報を出力する出力部と、
前記平面オブジェクトについて、表面に配置される配置用データを変更する指示である出力変更指示を受け付ける出力変更指示受付部と、を備え、
前記配置用データ取得部は、前記出力変更指示受付部が受け付けた出力変更指示に応じて、前記出力部が出力する平面オブジェクトに配置された1以上の配置用データの従属先となる上位階層のノードと同じ階層の異なるノードに従属する1以上のデータを配置用データとして前記階層構造データから取得し、
前記出力部は、前記配置用データ取得部が前記出力変更指示に応じて取得した配置用データを配置した平面オブジェクトの画像情報で出力を更新する情報処理装置。
【請求項2】
平面図形の画像である平面オブジェクトの形状を指定する情報である形状情報が格納される形状情報格納部と、
階層化された複数のデータで構成される階層構造データが格納される階層構造データ格納部と、
前記階層構造データ格納部から一の階層の1以上のデータを配置用データとして取得する配置用データ取得部と、
前記形状情報が示す平面オブジェクトの表面に、当該平面オブジェクトについて前記配置用データ取得部が取得した配置用データを配置した平面オブジェクトの画像情報を出力する出力部と、
前記平面オブジェクトについて、表面に配置される配置用データを変更する指示である出力変更指示を受け付ける出力変更指示受付部と、
前記出力部が出力した画像情報が示す平面オブジェクトに配置された前記1以上の配置用データのうちの一の配置用データに対する指定を受け付ける指定受付部と、を備え、
前記出力変更指示受付部は、異なる出力変更指示である第一出力変更指示と、第二出力変更指示とを受け付け得るものであり、
前記配置用データ取得部は、
前記出力変更指示受付部が第一出力変更指示を受け付けた場合に、前記指定受付部が受け付けた指定により指定される配置用データに対して従属する下位階層の1以上のデータを配置用データとして前記階層構造データから取得し、
前記出力変更指示受付部が第二出力変更指示を受け付けた場合に、前記平面オブジェクトに配置された1以上の配置用データの従属先となる上位階層のノードと同じ階層の異なるノードに従属する1以上のデータを配置用データとして前記階層構造データから取得し、
前記出力部は、前記配置用データ取得部が前記出力変更指示に応じて取得した配置用データを配置した平面オブジェクトの画像情報で出力を更新する情報処理装置。
【請求項3】
平面図形の画像である平面オブジェクトの形状を指定する情報である形状情報が格納される形状情報格納部と、階層化された複数のデータで構成される階層構造データが格納される階層構造データ格納部と、配置用データ取得部と、出力部と、出力変更指示受付部とを用いて行われる情報処理方法であって、
前記配置用データ取得部が、前記階層構造データ格納部から一の階層の1以上のデータを配置用データとして取得する配置用データ取得ステップと、
前記出力部が、前記形状情報が示す平面オブジェクトの表面に、当該平面オブジェクトについて前記配置用データ取得ステップにより取得した配置用データを配置した平面オブジェクトの画像情報を出力する出力ステップと、
前記出力変更指示受付部が、前記平面オブジェクトについて、表面に配置される配置用データを変更する指示である出力変更指示を受け付ける出力変更指示受付ステップと、を備え、
前記配置用データ取得ステップは、前記出力変更指示受付ステップにより受け付けた出力変更指示に応じて、前記出力ステップにより出力する平面オブジェクトに配置された1以上の配置用データの従属先となる上位階層のノードと同じ階層の異なるノードに従属する1以上のデータを配置用データとして前記階層構造データから取得し、
前記出力ステップは、前記配置用データ取得ステップにより前記出力変更指示に応じて取得した配置用データを配置した平面オブジェクトの画像情報で出力を更新する情報処理方法。
【請求項4】
平面図形の画像である平面オブジェクトの形状を指定する情報である形状情報が格納される形状情報格納部と、階層化された複数のデータで構成される階層構造データが格納される階層構造データ格納部と、配置用データ取得部と、出力部と、出力変更指示受付部と、
指定受付部とを用いて行われる情報処理方法であって、
前記配置用データ取得部が、前記階層構造データ格納部から一の階層の1以上のデータを配置用データとして取得する配置用データ取得ステップと、
前記出力部が、前記形状情報が示す平面オブジェクトの表面に、当該平面オブジェクトについて前記配置用データ取得ステップにより取得した配置用データを配置した平面オブジェクトの画像情報を出力する出力ステップと、
前記出力変更指示受付部が、前記平面オブジェクトについて、表面に配置される配置用データを変更する指示である出力変更指示を受け付ける出力変更指示受付ステップと、
前記指定受付部が、前記出力ステップにより出力した画像情報が示す平面オブジェクトに配置された前記1以上の配置用データのうちの一の配置用データに対する指定を受け付ける指定受付ステップと、を備え、
前記配置用データ取得ステップは、
前記出力変更指示受付ステップにより第一出力変更指示を受け付けた場合に、前記指定受付ステップにより受け付けた指定により指定される配置用データに対して従属する下位階層の1以上のデータを配置用データとして前記階層構造データから取得し、
前記出力変更指示受付ステップにより第二出力変更指示を受け付けた場合に、前記平面オ
ブジェクトに配置された1以上の配置用データの従属先となる上位階層のノードと同じ階層の異なるノードに従属する1以上のデータを配置用データとして前記階層構造データから取得し、
前記出力ステップは、前記配置用データ取得ステップにより前記出力変更指示に応じて取得した配置用データを配置した平面オブジェクトの画像情報で出力を更新する情報処理方法。
【請求項5】
平面図形の画像である平面オブジェクトの形状を指定する情報である形状情報が格納される形状情報格納部と、階層化された複数のデータで構成される階層構造データが格納される階層構造データ格納部とにアクセス可能なコンピュータを、
前記階層構造データ格納部から一の階層の1以上のデータを配置用データとして取得する配置用データ取得部と、
前記形状情報が示す平面オブジェクトの表面に、当該平面オブジェクトについて前記配置用データ取得部が取得した配置用データを配置した平面オブジェクトの画像情報を出力する出力部と、
前記平面オブジェクトについて、表面に配置される配置用データを変更する指示である出力変更指示を受け付ける出力変更指示受付部と、して機能させるプログラムであって、
前記配置用データ取得部は、前記出力変更指示受付部が受け付けた出力変更指示に応じて、前記出力部が出力する平面オブジェクトに配置された1以上の配置用データの従属先となる上位階層のノードと同じ階層の異なるノードに従属する1以上のデータを配置用データとして前記階層構造データから取得し、
前記出力部は、前記配置用データ取得部が前記出力変更指示に応じて取得した配置用データを配置した平面オブジェクトの画像情報で出力を更新するプログラム。
【請求項6】
平面図形の画像である平面オブジェクトの形状を指定する情報である形状情報が格納される形状情報格納部と、階層化された複数のデータで構成される階層構造データが格納される階層構造データ格納部とにアクセス可能なコンピュータを、
前記階層構造データ格納部から一の階層の1以上のデータを配置用データとして取得する配置用データ取得部と、
前記形状情報が示す平面オブジェクトの表面に、当該平面オブジェクトについて前記配置用データ取得部が取得した配置用データを配置した平面オブジェクトの画像情報を出力する出力部と、
前記平面オブジェクトについて、表面に配置される配置用データを変更する指示である出力変更指示を受け付ける出力変更指示受付部と、
前記出力部が出力した画像情報が示す平面オブジェクトに配置された前記1以上の配置用データのうちの一の配置用データに対する指定を受け付ける指定受付部と、して機能させるプログラムであって、
前記配置用データ取得部は、
前記出力変更指示受付部が第一出力変更指示を受け付けた場合に、前記指定受付部が受け付けた指定により指定される配置用データに対して従属する下位階層の1以上のデータを配置用データとして前記階層構造データから取得し、
前記出力変更指示受付部が第二出力変更指示を受け付けた場合に、前記平面オブジェクトに配置された1以上の配置用データの従属先となる上位階層のノードと同じ階層の異なるノードに従属する1以上のデータを配置用データとして前記階層構造データから取得し、
前記出力部は、前記配置用データ取得部が前記出力変更指示に応じて取得した配置用データを配置した平面オブジェクトの画像情報で出力を更新するプログラム。

第3 原査定の理由の概要
原査定の理由の概要は、次のとおりである。
「この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)

・請求項: 1?7
・引用文献: 1?3
・備考:
引用文献1には、
階層化された複数の階層のデータ(データ)で構成される階層管理データ110(階層構造データ)が格納される記憶媒体105(階層構造データ格納部)と(11段落、図4)、
記憶媒体105(階層構造データ格納部)から一の階層の1以上の階層のデータ(データ)をリスト項目(配置用データ)として取得する展開リスト管理手段106(配置用データ取得部)と(11段落)、
リストが表示される画面領域(平面オブジェクトの表面)に、画面領域(平面オブジェクト)について展開リスト管理手段106(配置用データ取得部)が取得したリスト項目(配置用データ)を配置した画面領域(平面オブジェクト)の情報(画像情報)を出力するリスト表示手段107(出力部)と(11段落)、
画面領域(平面オブジェクト)について、画面領域(表面)に表示(配置)されるリスト項目(配置用データ)を変更する指示である移動要求(出力変更指示)を受け付ける手段(出力変更指示受付部)と(9,14,16段落)、を備え、
展開リスト管理手段106(配置用データ取得部)は、リスト表示手段107(出力部)が出力した情報(画像情報)に配置されたリスト項目(配置用データ)のうちの1以上に対して、移動要求(出力変更指示)に応じた階層関係にある1以上の階層のデータ(データ)をリスト項目(配置用データ)として記憶媒体105(階層構造データ格納部)から取得し(15,21,31段落、図6)、
リスト表示手段107(出力部)は、展開リスト管理手段106(配置用データ取得部)の移動要求(出力変更指示)に応じて取得したリスト項目(配置用データ)を配置したリストが表示される画面領域(平面オブジェクト)の情報(画像情報)で出力を更新するユーザインタフェース装置(情報処理装置)(11段落等)が開示されている。

本願発明と引用文献1に開示される発明とを対比すると、以下の点で相違している。

(1)平面のオブジェクトである平面オブジェクトの形状を指定する情報である形状情報が格納される形状情報格納部が開示されていない点
(2)階層構造データは、XMLデータであることが開示されていない点(請求項5)

上記相違点について検討する。

・相違点(1)(2)について
引用文献2の21段落、引用文献3の35段落には、平面オブジェクトを含む立体オブジェクト形状情報を格納する格納部が開示されている。
また、引用文献2の図6や引用文献3の127段落、145段落および図23には、XMLからなる階層構造データが開示されている。

そして、引用文献1も、引用文献2または3も、ともに、所定の表示領域またはオブジェクト面に階層化された情報を表示する発明であって、同一の技術分野に属し、インタフェースの操作性を高める点で共通の課題および機能・作用を有しているものであるから、引用文献1を前提として、引用文献2または3に接した当業者であれば、引用文献1に開示される発明に、引用文献2または3に開示される発明を適用することによって、本願発明のように構成することは、当業者が容易に想到し得ることであると判断される。

引 用 文 献 等 一 覧

1.特開2009-259163号公報
2.特開2010-033184号公報
3.特開2009-187113号公報

出願人は、平成26年4月10日付の手続補正書にて補正を行ない、同日付けの意見書にて、以下の点を主張している。

本願の請求項1にかかる発明の特徴的な発明特定事項は、「配置用データ取得部は、前記出力変更指示受付部が受け付けた出力変更指示に応じて、前記出力部が出力する平面オブジェクトに配置された1以上の配置用データの従属先となる上位階層のノードと同じ階層の異なるノードに従属する1以上のデータを配置用データとして前記階層構造データから取得」する点、及び「出力部は、前記配置用データ取得部が前記出力変更指示に応じて取得した配置用データを配置した平面オブジェクトの画像情報で出力を更新する」点にあります。
かかる発明特定事項により、ノード間を接続するリンクを一つずつ辿って、同じ階層の異なるノードに従属するデータを探し出し、これを出力するための操作を行わなくても、平面オブジェクトについて出力変更指示を与えるだけで、容易かつ直感的に、同じ階層の異なるノードに従属するデータを表示できるという格別な効果を奏するものであります。
・・・(略)・・・
引用文献1には、表示されているデータに対して、ドラッグ操作に応じた階層数だけ上位の階層(または下位の階層)となるデータを取得して表示することしか開示されておらず、本願発明のように、出力変更指示に応じて、平面オブジェクトに配置された1以上のデータの従属先となるノードと同じ階層の異なるノードに従属する1以上のデータを取得し、取得したデータを配置した平面オブジェクトの画像情報で出力を更新することについては何らの開示も示唆もされておりません。
また、引用文献1には、一度のドラッグ指示に応じて、表示されているデータに対して直系となる階層関係のデータ以外のデータを取得して出力する構成についてさえ、何らの開示も示唆もされておりません。
従って、このような引用文献1に基づき、本願発明のように、平面オブジェクトについて出力変更指示を与えるだけで、現在表示されているデータの従属先となる上位階層のノードと同じ階層の異なるノードに従属するデータを取得して、容易かつ直感的に表示できるという顕著な効果を奏するものを得ることは、当業者といえども決して容易に想到するものではありません。

この点について、以下のように判断する。

引用文献1では、図5の502に示すように、リスト項目をスクロールして表示することが示されており、23段落及び図4から明らかなように、Song118のリスト項目の表示枠の下に、Song121以下のリスト項目の表示枠が表示されている。ここでは、リスト項目の表示枠(平面オブジェクト)に配置されたSong118(配置用データ)の上の階層2のリスト項目であるCat11(従属先となる上位階層のノード)と同じ階層の異なるノードであるCat12に従属する1以上のデータであるSong121以下のリスト項目を、表示すべきリストとして、スクロール可能なように表示処理している。このように、木構造データから、同階層のデータを適宜表示させるようにすることは、ごく当たり前に行われるようなことにすぎない。
なお、出力変更指示の度に順次表示を切り替えるようにすることは、必要に応じて行い得る設計事項であって、格別の創意工夫を要するものではない。

以上の理由により、出願人の主張を受け入れることができない。」

第4 当審の判断
本願の【請求項1】-【請求項6】記載の発明をそれぞれ、「本願発明1」-「本願発明6」と称する。
1.本願発明1について
(1)引用発明
原査定で引用された引用文献1(特開2009-259163号公報)には、次の記載がある(下線は、本審決で特に着目した箇所を示す。)。
「【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、カーナビゲーションシステムや携帯音楽プレーヤ等の電子機器におけるコンテンツ検索のためのユーザインタフェース装置及びプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の電子機器におけるユーザインタフェース装置として、例えば、内蔵記録媒体に記録された音楽ファイル等のコンテンツを分類し、更にその分類を階層化することで、一分類あたりに含まれるコンテンツの数を、電子機器のユーザインタフェースでのリスト表示が可能な程度の数に抑えることにより、検索性を確保するようにしたものがあった(例えば、特許文献1参照)。
また、単一のリストが長い場合の検索性の向上策として、ユーザがスクロールの速さを指定可能な自動スクロール方式があった(例えば、特許文献2参照)。
【0003】
【特許文献1】米国特許第6928433号明細書
【特許文献2】特開2002-32170号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来のコンテンツ検索のためのユーザインタフェースにおいては、コンテンツの数が更に増えた場合、一分類あたりのコンテンツ数を抑えるために階層数を増加させることになる。その結果、階層間の移動のための操作回数が増加し、分類をまたいだコンテンツの検索性が悪化するという問題があった。
【0005】
この発明は上記のような課題を解決するためになされたもので、大量のコンテンツから少ない操作回数で素早くコンテンツを検索することのできるユーザインタフェース装置及びプログラムを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係るユーザインタフェース装置は、入力機器へのドラッグ操作の方向と速さに基づき、リストのスクロール方向とスクロール速度を表すスクロール操作情報と、リストのどの階層を表示するかを表す表示階層操作情報を生成する操作情報生成手段と、スクロール操作情報に基づいて、リストのスクロール制御を行う自動スクロール制御手段と、表示階層操作情報に基づいて、リストの表示階層を決定する表示階層管理手段と、表示階層管理手段で決定された階層のリストを画面上に表示すると共に、自動スクロール制御手段による制御に基づいて表示されている階層のリストをスクロールさせるリスト表示手段とを備えたものである。
【発明の効果】
【0007】
この発明のユーザインタフェース装置は、ドラッグ操作の方向と速さに基づき、リストのスクロール方向およびスクロール速度と、リストの表示階層とを決定するようにしたので、大量のコンテンツから少ない操作回数で素早くコンテンツを検索することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1によるユーザインタフェース装置を示す構成図である。
図において、ユーザインタフェース装置は、タッチパネル101、操作情報生成手段102、自動スクロール制御手段103、表示階層管理手段104、記録媒体105、展開リスト管理手段106、リスト表示手段107、ディスプレイ108を備えている。また、記録媒体105には、コンテンツデータ109と階層管理データ110が格納されている。
【0009】
タッチパネル101は、ディスプレイ108の上面に設けられ、本装置のユーザが操作する入力機器であり、ユーザが表面を指やペンでタッチまたはドラッグすることにより、その押下位置を表す信号を送出する。操作情報生成手段102は、タッチパネル101からの信号を受け取り、タッチパネル101へのユーザの操作に応じて、スクロール操作情報および表示階層操作情報を生成し出力する。ドラッグ操作の場合は、画面表示されるリスト(これについては後述する)のスクロール方向と平行する座標軸におけるドラッグ操作の速度成分から、自動スクロールの速さと方向を計算し、その結果をスクロール操作情報として自動スクロール制御手段103に出力する。また、操作情報生成手段102は、リストのスクロール方向と直交する座標軸におけるドラッグ操作の距離と方向から、表示階層の移動方向と移動階層数を計算し、その結果を表示階層操作情報として表示階層管理手段104に出力する。ドラッグ速度が0の場合、即ち、単なるタッチ操作の場合は、自動スクロールを停止するために自動スクロールの速さを0としたスクロール操作情報を自動スクロール制御手段103に対して出力する。
【0010】
自動スクロール制御手段103は、操作情報生成手段102が生成したスクロール操作情報に基づきリストの自動スクロールの方向と速さを設定し、リストの自動スクロールを開始する制御をする。速さの設定が0の場合は自動スクロールを停止する。自動スクロール制御手段103は、自動スクロール実行中は、自動スクロールの速さに応じた周期で、リスト内画面表示位置の増加または減少をリスト表示手段107に要求する。
表示階層管理手段104は、操作情報生成手段102が生成した表示階層操作情報と現在の表示階層から新たな表示階層を決定し、新たな表示階層への移動をリスト表示手段107に要求する。
【0011】
記録媒体105は、コンテンツデータ109および階層管理データ110を記録する。
展開リスト管理手段106は、指定された表示階層に属する全てのコンテンツまたは分類の名称を、記録媒体105に記録されたコンテンツデータ109および階層管理データ110から取得し、取得した順に結合して単一のリストを生成し、リスト表示手段107に提供する。また、表示階層の変更の際には、リスト表示手段107が指定した現在表示中のリスト項目に対し、新たに表示する階層における、指定リスト項目を含む上位階層のリスト項目、または指定リスト項目が含む下位階層のリスト項目を、記録媒体105に記録された階層管理データ110を検索して取得し、リスト表示手段107に通知する。
リスト表示手段107は、表示階層の展開リストを展開リスト管理手段106から取得し、リスト内画面表示位置から画面に表示するリスト項目を決定し、リストを表示する。
ディスプレイ108はリスト表示手段107が表示したリストを物理的に可視化し、ユーザに提示する。
【0012】
記録媒体105に格納されるコンテンツデータ109は、音楽や写真、動画像等のデータであり、コンテンツ名の情報を含む。また、階層管理データ110は、コンテンツデータの分類と、分類間の階層関係のデータであり、分類名の情報を含む。

・・・(中略)・・・

【0023】
次に、実際にデータの例を挙げて展開リストの表示について説明する。
図4は、コンテンツデータとその階層構造の例を示した図である。
階層0はツリー構造におけるルートノードであり、ユーザインタフェース画面には表示されない。階層1にはこの例では9個の分類があり、名前はそれぞれ”Cat1”から”Cat9”である。階層2にも分類があり、名前は”Cat11”から”Cat18”、”Cat21”から”Cat24”、”Cat91”から”Cat98”等である。階層3にはコンテンツがあり、名前は”Song111”から”Song118”、”Song121”、”Song122”、”Song123”、”Song181”、”Song182”、”Song211”から”Song217”等である。
【0024】
図5は、一画面に4個の項目を表示するリストの画面例である。画面501は、表示階層は図4で示した階層1であり、階層1に含まれる9個の分類のうち、4個の分類がリスト項目として表示されている。画面502は、画面501と同じリスト画面例において、表示階層を階層3とした場合の表示例である。階層3に含まれるコンテンツのうち、”Song117”から連続する4個のコンテンツがリスト項目として表示されている。
【0025】
図6は、自動スクロール実行中の画面変化の例を示した図である。画面601で左上から右下にドラッグすると、1階層の下降と負方向の自動スクロールが行われる。即ち、上述した図2(a),(b)のフローチャートに示した表示階層移動処理と自動スクロール処理が行われる。このとき階層移動の基準となるリスト項目は”Cat21”である。画面602は1階層の下降が行われた状態である。”Cat21”に含まれるコンテンツのうち先頭のコンテンツが新たに基準リスト項目の位置に表示される。画面603は画面602から1項目分の自動スクロールが行われた状態である。画面604は画面603から1項目分の自動スクロールが行われた状態である。ここで右から左にドラッグすると、1階層の上昇が行われる。このとき階層移動の基準は”Song181”である。即ち、このドラッグ操作は、levelが負の数であるため階層を昇る方向への移動であり、また、Y軸方向への移動量が0であるため、自動スクロール速度の変更はなく、それまでのスクロール速度を継続する。
【0026】
画面605は1階層の上昇が行われた状態である。”Song181”を含む分類”Cat18”が新たに基準リスト項目の位置に表示される。画面606は画面605から1項目分の自動スクロールが行われた状態である。画面607は画面606から1項目分の自動スクロールが行われた状態である。ここで画面をタッチすると、自動スクロールが停止する。画面608は自動スクロールが停止した状態である。」

そして、引用文献1の上記記載事項を引用文献1の関連図面と技術常識に照らし、下線部分に着目すれば、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。
「コンテンツデータ109と階層管理データ110を記録する記録媒体105と、
指定された表示階層に属する全てのコンテンツまたは分類の名称を、記録媒体105に記録されたコンテンツデータ109および階層管理データ110から取得し、取得した順に結合して単一のリストを生成し、リスト表示手段107に提供する展開リスト管理手段106と、
前記展開リスト管理手段106が生成した単一のリストから画面に表示するリスト項目を決定し、そのリスト項目をディスプレイ108に表示する表示手段107と、
前記画面に表示するリスト項目を変更する指示であるドラッグ操作を受け付けるタッチパネルと、を備え、
前記表示手段107は、前記ドラッグ操作に応じたスクロール操作情報に従って画面に表示するリスト項目をスクロールするユーザインターフェース装置。」

(2)対比
本願発明1と引用発明を対比すると、次のことがいえる。
ア.引用発明の「コンテンツデータ109と階層管理データ110」は、本願発明1の「階層化された複数のデータで構成される階層構造データ」に相当し、引用発明の「記録媒体105」は、本願発明1の「階層構造データ格納部」に相当する。
イ.引用発明の「指定された表示階層に属する全てのコンテンツまたは分類の名称」は、本願発明1の「一の階層の1以上のデータ」に相当し、引用発明の「展開リスト管理手段106」と本願発明1の「配置用データ取得部」とは、「一の階層の1以上のデータを取得するデータ取得部」といい得る部分である点で共通する。
ウ.引用発明の「画面に表示するリスト項目」と本願発明1の「配置用データを配置した平面オブジェクトの画像情報」は、出力対象の「データ」である点で共通し、引用発明の「表示手段107」と本願発明1の「出力部」とは、「データを出力する出力部」といい得る部分である点で共通する。
エ.引用発明の「ドラッグ操作」は、本願発明1の「平面オブジェクトについて、表面に配置される配置用データを変更する指示である出力変更指示」と、「出力変更指示」といい得るものである点で共通し、引用発明の「タッチパネル」は本願発明1の「出力変更指示受付部」と、「出力変更指示受付部」といい得るものである点で共通する。
オ.引用発明の「表示手段107」が「ドラッグ操作に応じたスクロール操作情報に従ってリスト項目をスクロール」することは、本願発明の「出力部」が「出力を更新」することと、「出力部」が「出力変更指示に応じて出力を更新」することである点で共通する。
カ.引用発明の「ユーザインターフェース装置」は、本願発明の「情報処理装置」と同様に、「情報処理装置」ともいい得る。

したがって、本願発明1と引用発明の間には、次の一致点、相違点があるといえる。
(一致点)
「階層化された複数のデータで構成される階層構造データが格納される階層構造データ格納部と、
前記階層構造データ格納部から一の階層の1以上のデータを取得するデータ取得部と、
前記データ取得部が取得したデータを出力する出力部と、
前記データを変更する指示である出力変更指示を受け付ける出力変更指示受付部と、を備え、
前記出力部は、前記出力変更指示に応じて出力を更新する情報処理装置。」
である点。

(相違点1)
本願発明1は、「平面図形の画像である平面オブジェクトの形状を指定する情報である形状情報が格納される形状情報格納部」を有するのに対し、引用発明は、それに相当する構成を有するものではない点。

(相違点2)
本願発明1の「データ取得部」は、階層構造データ格納部から一の階層の1以上のデータを「配置用データ」として取得するものであるのに対し、引用発明の「データ取得部」(展開リスト管理手段106)は、データを「配置用データ」として取得するものではない点。

(相違点3)
本願発明1の「出力部」は、「形状情報が示す平面オブジェクトの表面に、当該平面オブジェクトについて配置用データ取得部が取得した配置用データを配置した平面オブジェクトの画像情報」を出力するものであるのに対し、引用発明の「出力部」(表示手段107)は、そのような画像情報を出力するものではない点。

(相違点4)
本願発明1の「出力変更指示受付部」は、「平面オブジェクトについて、表面に配置される配置用データを変更する指示である出力変更指示」を受け付けるものであるのに対し、引用発明の「出力変更指示受付部」(タッチパネル)は、そのようなものではない点。

(相違点5)
本願発明1の「データ取得部」は、「出力変更指示受付部が受け付けた出力変更指示に応じて」、「出力部が出力する平面オブジェクトに配置された1以上の配置用データの従属先となる上位階層のノードと同じ階層の異なるノードに従属する1以上のデータを配置用データとして」階層構造データから取得するものであるのに対し、引用発明の「データ取得部」(展開リスト管理手段106)は、そのようなものではない点。

(相違点6)
本願発明1の「出力部」は、「配置用データ取得部が出力変更指示に応じて取得した配置用データを配置した平面オブジェクトの画像情報」で出力を更新するものであるのに対し、引用発明の「出力部」(表示手段107)は、そのような画像情報で出力を更新するものではない点。

(3)判断
当審は、原査定で引用された引用文献2(特開2010-033184号公報)、引用文献3(特開2009-187113号公報)の記載を考慮しても、引用発明において上記相違点1?6を克服することは、容易であったとはいえないと判断する。
理由は次のとおりである。
(ア)本願発明1でいう「平面オブジェクト」は「平面図形の画像」であり、本願発明1は、「『形状情報格納部に格納された平面図形の画像の形状情報が示す平面オブジェクト』の表面に『一の階層の1以上のデータ』を配置した画像情報」を出力するようにすべく、相違点1?6に係る各本願発明1の構成を採用したものと認められる。
(イ)一方、引用文献1自体には、そのような画像情報を出力するようにすることを示唆する記載はない。
(ウ)原査定で引用された引用文献2の21段落と、引用文献3の35段落には、「立体オブジェクト」の形状情報を格納する格納部を設けることは記載されているが、そこでいう「立体オブジェクト」は、「平面図形の画像」ではないし、「一の階層の1以上のデータ」が配置されるものでもない。
そして、引用文献2、3には、そのいずれにも、引用発明を「『形状情報格納部に格納された平面図形の画像の形状情報が示す平面オブジェクト』の表面に『一の階層の1以上のデータ』を配置した画像情報」を出力する」ように改変することについての示唆があるとはいえない。
(エ)ほかに、引用発明において上記相違点1?6を克服することが容易であったといえる根拠は見当たらない。

よって、引用発明において上記相違点1?6を克服することは、容易であったとはいえない。

(4)むすび
以上のとおりであるから、本願発明1は、引用文献1?3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

2.本願発明2?6について
(1)本願発明3、5について
本願発明3、5は、本願発明1を、方法、プログラムの観点から表現し直したに過ぎないものであり、本願発明1の要件の全てをを実質的に具備するものであるから、本願発明1と同様に、引用文献1?3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(2)本願発明2、4、6について
本願発明2、4、6は、それぞれ、本願発明1、3、5が具備する要件の全てを具備した上で、更なる要件(二種類の出力変更指示に対応するための要件)を具備するものであるから、本願発明1、3、5と同様に、引用文献1?3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

第5 むすび
以上のとおり、本願発明1?6は、当業者が引用文献1?3に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものではないから、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、ほかに本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2015-08-24 
出願番号 特願2010-238763(P2010-238763)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G06F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 猪瀬 隆広  
特許庁審判長 和田 志郎
特許庁審判官 山田 正文
小曳 満昭
発明の名称 情報処理装置、情報処理方法、およびプログラム  
代理人 谷川 英和  

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