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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G02B
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G02B
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G02B
管理番号 1304571
審判番号 不服2014-3519  
総通号数 190 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-10-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-02-25 
確定日 2015-08-17 
事件の表示 特願2010- 97854「偏光板、液晶パネルおよび液晶表示装置」拒絶査定不服審判事件〔平成23年11月10日出願公開、特開2011-227337〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成22年4月21日の出願であって、平成25年9月5日付けで拒絶理由が通知され、同年11月6日に意見書及び手続補正書が提出されたが、同年11月25日付けで拒絶査定され、これを不服として、平成26年2月25日に審判請求がされると同時に手続補正書が提出され、当審において、平成27年4月2日付けで最後の拒絶理由(以下「当審拒絶理由」という。)が通知され、同年5月28日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。


第2 補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成27年5月28日に提出された手続補正書による補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正の内容
本件補正は、平成26年2月25日に提出された手続補正書によって補正された本件補正前(以下「本件補正前」という。)の特許請求の範囲についてするものであって、そのうち請求項1についての補正は、以下のとおりである。(下線は補正箇所を示す。)

(1)本件補正前の請求項1
「偏光子の少なくとも片面に透明保護フィルムを備え、前記透明保護フィルムの偏光子が備えられていない側の面に粘着剤層を備えた偏光板であって、
前記粘着剤層は、位相差変化量が3nm以下であり、前記透明保護フィルムの光弾性係数の絶対値が10×10^(-12)m^(2)/N以下であり、
前記粘着剤層を形成する粘着剤が、アクリル系ポリマーを含み、
前記アクリル系ポリマーは、アルキルアクリレートモノマー単位およびアルキルメタクリレートモノマー単位からなる群より選ばれる少なくとも1種(A)、ならびに、芳香環構造を有するアクリレートモノマー単位および芳香環構造を有するメタクリレートモノマー単位からなる群より選ばれる少なくとも1種(B)を含み、
前記粘着剤全体に対し、前記(A)の配合割合が78.1?85.1重量部の範囲であり、
前記粘着剤全体に対し、前記(B)の配合割合が10?17.0重量部の範囲であることを特徴とする偏光板。」

(2)本件補正により補正された請求項1
「偏光子の少なくとも片面に透明保護フィルムを備え、前記透明保護フィルムの偏光子が備えられていない側の面に粘着剤層を備えた偏光板であって、
前記粘着剤層は、位相差変化量が3nm以下であり、前記透明保護フィルムの光弾性係数の絶対値が10×10^(-12)m^(2)/N以下であり、
前記粘着剤層を形成する粘着剤が、重量平均分子量が、100万?300万の範囲であるアクリル系ポリマーを含み、
前記アクリル系ポリマーは、アルキルアクリレートモノマー単位としてブチルアクリレート(A)を用い、芳香環構造を有するアクリレートモノマー単位としてベンジルアクリレート(B)を用いて、反応させて得たものであり、
反応時において、前記(A)の配合割合が78.1?85.1重量部の範囲に対し、前記(B)の配合割合が10?17.0重量部の範囲であることを特徴とする偏光板。」


2 補正の目的の適否及び新規事項の有無
(1)上記請求項1に対する補正のうち、「重量平均分子量が、100万?300万の範囲である」は、本願の願書に最初に添付された明細書(以下、願書に最初に添付された明細書を「当初明細書」といい、願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲及び図面をあわせて「当初明細書等」という。)の【0048】の記載を根拠にして、本件補正前の「アクリル系ポリマー」を限定するものである。

したがって、上記補正は、当初明細書等に記載された事項の範囲内においてなされた補正であって、特許法17条の2第3項に規定する要件を満たす。また上記補正は、特許請求の範囲を減縮しようとするものであって、本件補正の前後で当該請求項に係る発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題は同一であると認められるから、特許法17条の2第5項2号に掲げられた特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

(2)上記請求項1に対する補正のうち、「アクリル系ポリマーは、アルキルアクリレートモノマー単位としてブチルアクリレート(A)を用い、芳香環構造を有するアクリレートモノマー単位としてベンジルアクリレート(B)を用いて、反応させて得たものであり、
反応時において、前記(A)の配合割合が78.1?85.1重量部の範囲に対し、前記(B)の配合割合が10?17.0重量部の範囲であること」は、本願当初明細書の【0062】、【0065】及び【0066】の記載を根拠にして、本件補正前の「アルキルアクリレートモノマー単位およびアルキルメタクリレートモノマー単位からなる群より選ばれる少なくとも1種(A)」及び「芳香環構造を有するアクリレートモノマー単位および芳香環構造を有するメタクリレートモノマー単位からなる群より選ばれる少なくとも1種(B)」をそれぞれ「ブチルアクリレート」及び「ベンジルアクリレート」に限定するとともに、「(A)の配合割合」及び「(B)の配合割合」が「反応時」であることを明確化するものである。

したがって、上記補正は、当初明細書等に記載された事項の範囲内においてなされた補正であって、特許法17条の2第3項に規定する要件を満たす。また上記補正は、特許請求の範囲を減縮しようとするものであって、本件補正の前後で当該請求項に係る発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題は同一であると認められるから、特許法17条の2第5項2号に掲げられた特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当し、合わせて、特許法17条の2第5項4号に掲げられた明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当する。

(3)そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものか(特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に適合するか)について、以下検討する。


3 独立特許要件の検討
(1)本願補正発明
本願補正発明は、上記第2[理由]1(2)に記載したとおりである。

(2)引用刊行物とその記載事項
当審拒絶理由で引用文献1として引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である、特開2008-144125号公報(以下「引用文献1」という。)には、次の事項が記載されている。(下線は当審で付した。以下同様。)
ア 「【請求項1】
単独で正の固有複屈折を有するモノマーを少なくとも一種と、単独で負の固有複屈折を有するアクリレート系モノマーを少なくとも一種と、架橋部位を有するモノマーを少なくとも一種と、を含有する組成物から形成された共重合体を含有することを特徴とするアクリレート系粘着剤。」
イ 「【請求項10】
請求項1?9のうちいずれか一項に記載のアクリレート系粘着剤により形成された粘着剤層が塗設されていることを特徴する偏光板。」
ウ 「【0020】
粘着剤としては、光学的透明性に優れ、適宜な濡れ性と凝集性と接着性の粘着特性を示して、耐候性や耐熱性などに優れるものが好ましく使用される。このような特徴を示すものとしてアクリレート系粘着剤が知られおり、本発明の粘着剤は、アクリレート系粘着剤であり、アクリレート系モノマーを含有する組成物から形成された共重合体(以下、「アクリレート系高分子」とも称する。)を必須の成分とするものである。即ち、アクリレート系高分子は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルのモノマーユニットを主骨格とするアクリレート系ポリマーをベースポリマーとするものである。なお、(メタ)アクリル酸アルキルエステルはアクリル酸アルキルエステル及び/又はメタクリル酸アルキルエステルをいい、本発明の(メタ)とは同様の意味である。なお、一般的に使用されているアクリレート系高分子であれば、特に制限されるものではなく、アクリレート系ポリマーの主骨格を構成する、(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル等を例示できる。これらは、一般的にアクリレート系粘着剤に使用されており、これらのモノマーは通常、25℃60%において、負の固有複屈折を有しており、本発明に係る単独で負の固有複屈折を有するアクリレート系モノマーとして好適に挙げることができる。」
エ 「【0030】
アクリレート系高分子の平均分子量は特に制限されないが、重量平均分子量は、30万?250万程度であるのが好ましい。・・(略)・・」
オ 「【0050】
(偏光板保護膜)
本発明の偏光板は、偏光子の両面に保護膜を有する。該保護膜としては、偏光板に保護膜として通常用いられる保護膜のいずれも使用できる。本発明においては、セルロースアシレートフィルムまたはシクロオレフィン系ポリマーを用いることが好ましい。両側の保護膜は、同一であっても、異なっていてもよい。例えば、偏光子の両側の保護膜のうち、
片側をセルロースアシレートフィルム、もう片側をシクロオレフィン系ポリマーを用いることもできる。また、お互いに異なる組成や異なる光学特性のフィルムを用いることもできる。さらに、セルロースアシレートフィルムやシクロオレフィン系ポリマーフィルムなどの上にポリマー層を設けて保護膜としてもよい。例えば、セルロースアシレートフィルムの上にポリイミド層を設けて保護膜とすることができる。そして、本発明の偏光板は、少なくとも片面(偏光子の片側)の保護膜(1)の表面または保護膜の表面に他の機能層を介して粘着層が設けられる。この場合粘着剤の光弾性係数の選定は、偏光板保護膜の光弾性係数により適宜調整する事が好ましい。特に偏光板の吸収軸が画面の辺に対し45度貼りの場合には、光漏れを低減させるために偏光板保護膜で発生するレタデーションを相殺しなければならないため粘着剤の光弾性係数は偏光板保護膜の光弾性係数に合わせて変更する必要がある。」
カ 「【0060】
(偏光板)
偏光板は、偏光子およびその両側に配置された二枚の透明保護膜からなる。偏光子には、ヨウ素系偏光子、二色性染料を用いる染料系偏光子やポリエン系偏光子がある。ヨウ素系偏光子および染料系偏光子は、一般にポリビニルアルコール系フィルムを用いて製造する。セルロースアシレートフィルムを偏光板保護膜として用いる場合、偏光板の作製方法は特に限定されず、一般的な方法で作製することができる。得られたセルロースアシレートフィルムをアルカリ処理し、ポリビニルアルコールフィルムを沃素溶液中に浸漬延伸して作製した偏光子の両面に完全ケン化ポリビニルアルコール水溶液を用いて貼り合わせる方法がある。アルカリ処理の代わりに特開平6-94915号公報、特開平6-118232号公報に記載されているような易接着加工を施してもよい。保護膜処理面と偏光子を貼り合わせるのに使用される接着剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール等のポリビニルアルコール系接着剤や、ブチルアクリレート等のビニル系ラテックス等が挙げられる。偏光板は偏光子及びその両面を保護する保護膜で構成されており、更に該偏光板の一方の面にプロテクトフィルムを、反対面にセパレートフィルムを貼合して構成される。プロテクトフィルム及びセパレートフィルムは偏光板出荷時、製品検査時等において偏光板を保護する目的で用いられる。この場合、プロテクトフィルムは、偏光板の表面を保護する目的で貼合され、偏光板を液晶板へ貼合する面の反対面側に用いられる。また、セパレートフィルムは液晶板へ貼合する接着層をカバーする目的で用いられ、偏光板を液晶板へ貼合する面側に用いられる。」
キ 「【0086】
以下の手順に従い、本発明に係るアクリレート系ポリマーを調整した。
冷却管、窒素導入管、温度計及び撹拌装置を備えた反応容器に、アクリル酸ブチル100部、アクリル酸3部、2,2′-アゾビスイソブチロニトリル0.3部を酢酸エチルと共に加えて固形分濃度30%とし窒素ガス気流下、60℃で4時間反応させ、アクリレート系重合体(A1)溶液を得た。また、A1と同様の操作にて、下記表1に示すアクリレート系ポリマー(A2?A8)を調整した。また、得られたアクリレート系ポリマーの固有複屈折は以下の方法により測定した。測定結果を表1に併せて示す。
【0087】
(アクリレート系ポリマーの固有複屈折の測定)・・(略)・・
【0088】
【表1】

【0089】
次に得られたアクリレート系ポリマーを、以下の手順に従い、本発明のアクリレート系粘着剤を作製した。
アクリレート系ポリマー固形分100部あたり2部のトリメチロールプロパントリレンジイソシアネート(日本ポリウレタン社製、コロネートL)、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン0.1部、を加えシリコーン系剥離剤で表面処理したセパレートフィルムにダイコーターを用いて塗布し150℃で3時間乾燥させ、アクリレート系粘着剤を得た。アクリレート系粘着剤の組成を下記表2に示す。なお、アクリレート系ポリマーA1とA8により粘着剤を作成する事を試みたが両者がうまく混合せず良好な粘着剤を得ることが出来なかった。また、架橋剤であるコロネートL(日本ポリウレタン)は、二つ以上の芳香環を持つ架橋剤であり、ALCH-TR(川研)はアルミキレートである。
【0090】
ゲル分率、固有複屈折および光弾性係数を以下の方法により測定した。表2に併せて示す。(ゲル分率の測定)・・(略)・・
【0091】
【表2】

【0092】
以下の手順に従い、本発明の液晶表示装置(評価用TV)を作製した。
厚さ120μmのポリビニルアルコールフィルムを沃素1質量部、沃化カリウム2質量部、ホウ酸4質量部を含む水溶液に浸漬し、50℃で4倍に延伸し、偏光子を作製した。また、偏光板保護フィルムには、市販のWVフィルム(富士フイルム(株)製)、WVBZ438フィルム(富士フイルム(株)製)、Z-TACフィルム(富士フイルム(株)製)、TD80(富士フイルム(株)製)、TF80(富士フイルム(株)製)を使用した。VAモードについてはLC-26GD3(シャープ(株)製)、IPSモードについては32LC100(東芝(株)製)、TNモードについてはMRT-191S(三菱電機(株)製)を購入し、それぞれの偏光板を剥離し評価用TVとした。
【0093】
(VAモード評価用偏光板の作製)
TD80を、濃度1.5モル/Lで55℃の水酸化ナトリウム水溶液中に浸漬した後、水で十分に水酸化ナトリウムを洗い流した。その後、濃度0.005モル/Lで35℃の希硫酸水溶液に1分間浸漬した後、水に浸漬し希硫酸水溶液を十分に洗い流した。最後に試料を120℃で十分に乾燥させた。TF80についても同様の処理を行った。得られた鹸化処理を行ったタックフィルムを、偏光子を挟むようにポリビニルアルコール系接着剤を用いて貼り合せ光学フィルムを作製した。次いで、粘着剤を光学フィルムの表面に、TD80/偏光子/TF80/粘着剤/セパレーターの順になるよう粘着剤層を貼合した後25℃、60%RHで7日間熟成させ偏光板を作製した。得られた偏光板をフロント偏光板として用いた。リア偏光板は、TF80をWVBZ438に変更したこと以外は、フロント偏光板と同様にして偏光板を作製した。使用した粘着剤を下記表3に示す。」

ク 上記表1には、アクリレート系ポリマーの例がA1?A9として示されており、そのうち、ポリマーA5を調製するためのモノマーは、ベンジルアクリレート20質量部、ブチルアクリレート100質量部及びアクリル酸2.0質量部である。

ケ 上記ア?クから、引用文献1には、以下の発明が記載されている。(以下、「引用発明」という。)

「アクリレート系粘着剤により形成された粘着剤層が塗接された偏光板であって、
前記アクリレート系粘着剤は、アクリレート系モノマーを含有する組成物から形成された共重合体であるアクリレート系高分子を必須の成分とするものであり、アクリレート系高分子の平均分子量は特に制限されないが、重量平均分子量は、30万?250万程度であるのが好ましく、
前記偏光板は、偏光子の両面に透明保護膜を有し、保護膜としては、偏光板に保護膜として通常用いられる保護膜のいずれも使用でき、偏光板は、少なくとも片面(偏光子の片側)の保護膜(1)の表面または保護膜の表面に他の機能層を介して粘着層が設けられ、
具体的には、アクリレート系ポリマーとして、ベンジルアクリレート20質量部、ブチルアクリレート100質量部及びアクリル酸2.0質量部を反応させて調製したアクリレート系ポリマーの固形分100部あたり2部のトリメチロールプロパントリレンジイソシアネート(日本ポリウレタン社製、コロネートL)、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン0.1部、を加えシリコーン系剥離剤で表面処理したセパレートフィルムにダイコーターを用いて塗布し150℃で3時間乾燥させ、アクリレート系粘着剤を得、市販の偏光板保護フィルムであるTD80(富士フイルム(株)製)、TF80(富士フイルム(株)製)を鹸化処理したフィルムを、偏光子を挟むようにポリビニルアルコール系接着剤を用いて貼り合せ光学フィルムを作製し、次いで、粘着剤を光学フィルムの表面に、TD80/偏光子/TF80/粘着剤/セパレーターの順になるよう粘着剤層を貼合した後25℃、60%RHで7日間熟成させて作製された、偏光板。」

(3)対比
ア 引用発明の「偏光板」は、「偏光子の両面に透明保護膜を有し」、「少なくとも片面(偏光子の片側)の保護膜の表面または保護膜の表面に他の機能層を介して粘着層が設けられ」ており、具体的には「TD80/偏光子/TF80/粘着剤/セパレーターの順になるよう貼合し」て作製されているから、本願補正発明の「偏光子の少なくとも片面に透明保護フィルムを備え、前記透明保護フィルムの偏光子が備えられていない側の面に粘着剤層を備えた偏光板」に相当する。

イ(ア)引用発明の、「ベンジルアクリレート20質量部、ブチルアクリレート100質量部及びアクリル酸2.0質量部を反応させて調製したアクリレート系ポリマー」は、反応時の配合割合が、ベンジルアクリレートを17質量部とすればブチルアクリレートが質量85部となる。
(イ)したがって、引用発明の「『アクリレート系高分子』及び「アクリレート系ポリマー』」は、本願補正発明の「アクリル系ポリマー」に相当する。そして、引用発明の「ベンジルアクリレート20質量部、ブチルアクリレート100質量部及びアクリル酸2.0質量部を反応させて調製したアクリレート系ポリマー」は、本願補正発明の「アルキルアクリレートモノマー単位としてブチルアクリレート(A)を用い、芳香環構造を有するアクリレートモノマー単位としてベンジルアクリレート(B)を用いて、反応させて得たものであり、反応時において、前記(A)の配合割合が78.1?85.1重量部の範囲に対し、前記(B)の配合割合が10?17.0重量部の範囲である」「アクリル系ポリマー」に相当する。

ウ よって、本願補正発明と、引用発明とは、
「偏光子の少なくとも片面に透明保護フィルムを備え、前記透明保護フィルムの偏光子が備えられていない側の面に粘着剤層を備えた偏光板であって、
前記粘着剤層を形成する粘着剤が、アクリル系ポリマーを含み、
前記アクリル系ポリマーは、アルキルアクリレートモノマー単位としてブチルアクリレート(A)を用い、芳香環構造を有するアクリレートモノマー単位としてベンジルアクリレート(B)を用いて、反応させて得たものであり、
反応時において、前記(A)の配合割合が78.1?85.1重量部の範囲に対し、前記(B)の配合割合が10?17.0重量部の範囲であることを特徴とする偏光板。」
である点で一致し、以下の点で相違している。

相違点1:本願補正発明では、「粘着剤層は、位相差変化量が3nm以下」であるのに対し、引用発明では、粘着剤層の位相差変化量が特定されていない点。
相違点2:本願補正発明では、「透明保護フィルムの光弾性係数の絶対値が10×10^(-12)m^(2)/N以下」であるのに対し、引用発明では、透明保護膜の光弾性係数が特定されていない点。
相違点3:本願補正発明では、アクリル系ポリマーは、「重量平均分子量が、100万?300万の範囲である」のに対し、引用発明では、ポリマーの重量平均分子量は、30万?250万程度が好ましいものの、100万?300万の範囲に特定されていない点。

(4)検討
上記相違点について検討する。
ア 相違点1について
(ア)本願の当初明細書には、粘着層の位相差変化量について、以下の様に記載されている。
a「【0041】 粘着剤層の位相差変化量は、例えば、粘着剤の成分を調整することで制御することができる。」
b「【0062】[実施例1]
(粘着剤の調製)
冷却管、撹拌羽、温度計が付属した4つ口フラスコ中に、ブチルアクリレート(BA)81.9重量部、ベンジルアクリレート(BzA)13.2重量部および過酸化ベンゾイル0.1重量部を、酢酸エチル140重量部とともに加え、十分に窒素置換した後、窒素気流下で攪拌しながら、55℃で8時間反応させて、重量平均分子量200万(GPCポリスチレン換算)のアクリル系ポリマーの溶液を得た。このアクリル系ポリマー溶液の固形分100重量部に対して、イソシアネート系架橋剤(日本ポリウレタン社製、商品名「コロネートL」)を固形分で0.1重量部、過酸化ベンゾイル0.1重量部およびシランカップリング剤(信越シリコーン社製、商品名「KBM403」)を0.1重量部加えて、粘着剤溶液を作製した。
【0063】
(粘着剤層の作製)
得られた粘着剤溶液を、離型処理を施したポリエステルフィルム(厚み38μm)からなるセパレータの上に、乾燥後の粘着剤層の厚みが20μmとなるように、リバースロールコート法により塗布し、155℃で3分間加熱処理して、溶剤を揮発させ、粘着剤層を得た。」
c「【0065】
[実施例2]
実施例1の粘着剤の調製において、ブチルアクリレート:85.1重量部、ベンジルアクリレート:10.0重量部とした以外は、実施例1と同様にして偏光板を作製した。
【0066】
[実施例3]
実施例1の粘着剤の調製において、ブチルアクリレート:78.1重量部、ベンジルアクリレート:17.0重量部とした以外は、実施例1と同様にして偏光板を作製した。
【0067】
[比較例1]
実施例1の粘着剤の調製において、ブチルアクリレート:95.1重量部、ベンジルアクリレート:0重量部とした以外は、実施例1と同様にして偏光板を作製した。
【0068】
[比較例2]
実施例1の粘着剤の調製において、ブチルアクリレート:45.8重量部、ベンジルアクリレート:49.3重量部とした以外は、実施例1と同様にして偏光板を作製した。」
d「【0079】【表1】


(イ)上記aとして摘記したように、本願の当初明細書には、粘着剤層の位相差変化量は、粘着剤の成分を調整することで制御することができると記載されており、具体的には、上記b?dで摘記したように、本願の当初明細書には、実施例1?3及び比較例1、2において、ブチルアクリレートとベンジルアクリレートとの配合割合を変えるのみでその他の粘着剤の成分を変えずに位相差変化量等の評価を行っている。これらの結果から、粘着剤の調製において、アクリル系ポリマーのモノマーであるブチルアクリレート及びベンジルアクリレートの配合割合を、請求項1に記載された配合割合の範囲内に調整することにより、位相差変化量を3nm以下としているものと認められる。
(ウ)引用発明においても、アクリル系ポリマー重合時のベンジルアクリレートとブチルアクリレートの配合割合は、本願請求項1に記載された範囲内であり(上記(3)イ(ア))、したがって、該アクリル系ポリマーを含む粘着剤層の位相差変化量は、3nm以下となる蓋然性が高い。
(エ)よって、相違点1は、実質的な相違点ではない。

イ 相違点2について
(ア)引用発明は、「液晶セルに用いられる偏光板は、高温高湿条件下で処理すると、偏光板に生ずる内部応力によって偏光板周縁部の吸収軸にゆがみが生じ、光の透過率が変化し、光漏れ現象が発生しやすい。」(引用文献1の【0003】)ため、「温湿度変化や液晶表示装置の連続点灯による画面周辺部における光漏れ、および偏光板の剥離を改善することが可能な粘着剤、ならびにそれを用いた偏光板および液晶表示装置を提供すること」(引用文献1の【0007】)を発明の課題としている。
(イ)液晶ディスプレイ用の偏光板において、偏光板に応力が発生した時の屈折率変化による表示ムラを発生しにくくするため、偏光板保護層の光弾性係数を10×10^(-12)m^(2)/N以下程度とすることは、下記a?cに記載のように、本願の出願前に周知である。(以下「周知技術1」という。)
a 当審拒絶理由で引用文献2として引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である、特開2000-206303号公報には、以下の記載がある。
(a)「【請求項1】 トリアセチルセルロースよりも吸湿性が小さく正の光弾性定数を有する樹脂層と、トリアセチルセルロースよりも吸湿性が小さく負の光弾性定数を有する樹脂層とが積層され、光弾性定数が10.0×10^(-7)cm^(2)/kgf以下であることを特徴とする偏光板保護フィルム。」(10.0×10^(-7)cm^(2)/kgf以下は、約10.2×10^(-12)m^(2)/Nである)
(b)「【0002】【従来の技術】近年、液晶ディスプレイ(LCD)は車両積載機器用や携帯情報機器用として用いられることが多くなり、高温及び高温多湿環境下におけるLCDの信頼性が強く要望されている。従来よりLCDに用いられる偏光板は、延伸配向したポリビニルアルコール(PVA)にヨウ素もしくは二色染料を吸着させた偏光子の両面に、光学等方性を有するフィルムが保護膜として用いられている。保護膜としては複屈折率が小さいトリアセチルセルロース(TAC)が一般的に使用されている。
【0003】しかし、TACは吸水率が高いために高温多湿環境下において偏光度の低下、変色による透過率の低下が起こる。又、高温環境下でPVAの配向緩和が起き、保護膜のTACに応力が発生したとき大きな複屈折が生じることにより偏光度の低下をもたらし、LCDに表示むらの発生やコントラスト低下が起こる原因となる。」
(c)「【0006】【発明が解決しようとする課題】本発明は上記の問題点を解消し、偏光板に用いた場合、高温或いは高温多湿の環境下においても表示むらの発生やコントラストの低下を生じることのない偏光板保護フィルム、及び光学的特性に優れた偏光板を提供することを目的とする。」
b 当審拒絶理由で引用文献3として引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2002-122740号公報には、以下の記載がある。
(a)「【請求項1】ヨウ素または二色性染料を用いたポリビニルアルコール系偏光子の両面に保護層を備え、前記保護層の少なくとも一方の片面に粘着剤層を備えた偏光板であって、保護層自体の光弾性系数と前記粘着剤層の弾性率の積が、8.0×10^(-12)[m^(2)/N・MPa]以下であることを特徴とする偏光板。」
(b)「【0004】ところで、近年LCDの大型化、ハイコントラスト化が進み、偏光板の高品質化が要請されている。また、偏光板のパネル装着の際、LCDパネルと偏光板を貼り合わせる時に若干なりとも偏光板に対して応力が加わる。この時に加わった応力により、偏光板を構成する保護層フィルムの屈折率の変化により、LCDの黒表示に部分的なムラが発生しやすい。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明はこの表示品位を損なうムラを偏光板を構成する保護層フィルム材料の光弾性系数に着目し、保護層を選択することにより、面内でムラが発生しにくく均一性のある表示を可能とする偏光板及びこれを用いた液晶表示装置を提供することを目的とする。」
(c)「【0026】【表1】


(d)「【0029】【表4】


c 当審拒絶理由で引用文献4として引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である、特表2005-520209号公報には、以下の記載がある。
(a)「【請求項1】
下記式(I)により定義されるReレターデーション値が0?100nmの範囲で、かつ下記式(II)により定義されるRthレターデーション値が70?500nmの範囲にあるポリマーフィルムと、その上方に、液晶性化合物を含む光学異方性層とを有し、前記ポリマーフィルムが、光弾性係数10×10^(-12)m^(2)/N以下で、且つJIS Z0208試験法により測定した透湿度が1g/m2・24hrs以下、70?500nmであるポリマーからなる光学補償フィルム;
(I) Re=(nx-ny)×d
(II) Rth={(nx+ny)/2-nz}×d
式中、nxおよびnyはそれぞれポリマーフィルムの面内の遅相軸方向および進相軸方向の屈折率であり、nzはポリマーフィルムの厚み方向の屈折率、dは厚さである。」
(b)「【請求項11】
二の表面を有する偏光膜と、前記二の表面のそれぞれに設けられた二の保護フィルムとを有し、前記二の保護フィルムの少なくとも一方が請求項1?10のいずれか中に定義されるポリマーフィルムである偏光板。」
(c)「【0003】
ところが、これらの光学補償フィルムは、高温高湿等、厳しい環境下で使用されると、応力および歪みが発生し、その箇所に位相差が発生しやすい。この位相差により、液晶表示装置に額縁状の光漏れ(透過率の上昇)が生じ、液晶表示装置の表示品位が低下することが分かってきた。特に、17インチ以上の大型液晶表示装置の場合は、光漏れを完全になくすことは困難である。また、前記光学補償フィルムを偏光膜に貼り合わせ、偏光膜の保護フィルムとしても機能させることにより、さらに簡易な構造の液晶表示装置とすることが提案されている。しかし、光学補償フィルムを偏光膜の保護フィルムとして機能させると、上記問題が生じるのに加えて、高温高湿で使用されることによって光学補償フィルムが水分を透過させ、この水分がさらに偏光膜の光学特性を低下させるという問題が生じることがある。従って、光学補償フィルムには、高温および高湿等の厳しい使用条件でも光学的特性が低下せず、水分を透過させない耐久性が要求されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は前記諸問題に鑑みなされたものであって、画像表示装置に用いた場合に、視野角の改良に寄与するとともに、前記画像表示装置が厳しい条件下で使用されても、光漏れなどによって表示品位が低下するのを軽減するのに寄与する光学補償フィルムおよび偏光板を提供することを課題とする。また、本発明は、厳しい条件下で使用された際に生じる光学的特性の変化が少ない、耐久性に優れた光学補償フィルムおよび偏光板を提供することを課題とする。また、本発明は、視野角が広く、且つ厳しい条件下で使用された場合に生じる光漏れによる表示品位の低下が軽減された耐久性に優れる画像表示装置を提供することを課題とする。」
(d)「【0094】
(光学補償フィルムの作製)
比較例1のポリマーフィルムを用いた以外は、実施例1と全く同様にして、比較例の光学補償フィルム(KHH-1)を作製した。
【表1】

【0095】
[実施例4]
延伸したポリビニルアルコールフイルムにヨウ素を吸着させて偏光膜を作製し、実施例1で作製した光学補償フィルム(KH-01)のポリマーフィルム側にコロナ処理を行い、ポリビニルアルコール系接着剤を塗工してこの偏光膜の片側に貼り付けた。また市販のセルローストリアセテートフイルム(フジタックTD80UF、富士写真フイルム(株)製)にケン化処理を行い、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて、偏光膜の反対側に貼り付け、本発明の偏光板(PP-01)を作製した。」

(ウ)上記(ア)及び(イ)から、引用発明において偏光板保護膜を選択する際、周知技術1を採用して、光弾性係数が10×10^(-12)m^(2)/N以下のフィルムを選択することは、当業者が容易に想到し得たことである。

ウ 相違点3について
(ア)偏光板用の粘着剤に用いるアクリル系ポリマーの、重量平均分子量が100万?250万であることは、下記a?dに記載のように、本願の出願前に周知である。(「以下「周知技術2」という。)
a 当審拒絶理由で引用文献2として引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2000-206303号公報には、以下の記載がある。
「【0021】アクリル系粘着剤及び粘着剤層の調整
アクリル酸ブチル94.8重量部、アクリル酸5重量部、2-ヒドロキシエチルメタクリレート0.2重量部を過酸化ベンゾイル0.3重量部の存在下で酢酸エチルを溶媒として共重合し、重量平均分子量(Mw)120万、Mwと数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)が3.9であるアクリル系ポリマーの酢酸エチル溶液を得た。・・(略)・・」
b 本願の出願前に頒布された刊行物である、国際公開第2006-009250号には、以下の記載がある。
「[0024]・・(略)・・(分子量)
上記アクリル系共重合体(A)の重量平均分子量(Mw)は、80万?200万、好ましくは100万?180万、特に好ましくは100万?150万であることが望ましい。アクリル系共重合体(A)のMwが上記範囲にあることにより、偏光板の寸法変化に対する応力緩和性ならびに粘着剤としての凝集力に優れることから、偏光板の光漏れ、色むら、剥がれなどの発生を抑制することができる。なお、上記重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法におけるポリスチレン換算により求めた値である。」
c 本願の出願前に頒布された刊行物である、特開2009-242633号公報には、以下の記載がある。
「【0015】 前記(メタ)アクリル酸エステル共重合体は、その共重合形態については特に制限はなく、ランダム、ブロック、グラフト共重合体のいずれであってもよい。また、分子量は、重量平均分子量で50万以上が好ましく、50万?250万がより好ましい。この重量平均分子量が50万未満では被着体との接着性や耐久接着性が不十分となるおそれがある。接着性、及び耐久接着性などを考慮すると、この重量平均分子量は、100万?200万のものが好ましい。
なお、上記重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定したポリスチレン換算の値である。」
d 本願の出願前に頒布された刊行物である、特開2010-60618号公報には、以下の記載がある。
「【0163】 アルキル(メタ)アクリレート由来の構造単位を有する(共)重合体」のGPCで測定したポリスチレン換算重量平均分子量としては、1,000,000以上が好ましく、1,500,000?5,000,000がより好ましく、1,500,000?3,000,000がさらに好ましい。このように、重量平均分子量が1,000,000以上であると、粘着剤層と他材料との接着性が高まり、高温高湿下で長時間保存しても、発泡や剥離が起こらず、長期信頼性に優れる。」

(イ)上記(ア)から、引用発明において、アクリレート系粘着剤に用いるアクリル系ポリマーの重量平均分子量を、周知技術2に基づいて100万?250万程度とすることは、当業者が適宜なし得たことである。

エ そして、本願補正発明の奏する効果は、引用発明、周知技術1及び周知技術2から当業者が予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。

(5)まとめ
以上より、本願補正発明は、引用発明、周知技術1及び周知技術2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。


4 本件補正の適否についてのむすび
よって、本件補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するので、同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。



第3 本願発明について

1 本願発明
上記「第2 補正の却下の決定」での検討のとおり、平成27年5月28日に提出された手続補正書による本件補正は却下されたので、本願の請求項に係る発明は、本件補正前の請求項1?4に記載されたとおりのものであり、そのうち、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記第2の[理由]1(1)に記載したとおりである。

2 当審拒絶理由の概要
平成27年4月2日付けの当審拒絶理由の概要は、以下のとおりである。

〔理由1〕本件出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
〔理由2〕本件出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
〔理由3〕本件出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献
1.特開2008-144125号公報
2.特開2000-206303号公報
3.特開2002-122740号公報
4.特表2005-520209号公報


3 本願発明の記載事項について
(1)「前記粘着剤層を形成する粘着剤が、アクリル系ポリマーを含み、
前記アクリル系ポリマーは、アルキルアクリレートモノマー単位およびアルキルメタクリレートモノマー単位からなる群より選ばれる少なくとも1種(A)、ならびに、芳香環構造を有するアクリレートモノマー単位および芳香環構造を有するメタクリレートモノマー単位からなる群より選ばれる少なくとも1種(B)を含み、
前記粘着剤全体に対し、前記(A)の配合割合が78.1?85.1重量部の範囲であり、
前記粘着剤全体に対し、前記(B)の配合割合が10?17.0重量部の範囲であること」について
ア 本願の当初明細書には、本願発明の課題が
「液晶セルに装着した際に、使用環境が変化した場合であっても、特に端部部分における光漏れ等の表示不良が発生し難い偏光板を提供すること、また、光漏れが生じにくい液晶パネルおよび液晶表示装置を提供すること」(【0006】)であって、
該課題を達成する手段として、
「偏光子の少なくとも片面に透明保護フィルムを備え、前記透明保護フィルムの偏光子が備えられていない側の面に粘着剤層を備えた偏光板であって、前記粘着剤層は、位相差変化量が3nm以下であること」(【0007】)
あることが記載されていると認められる。

イ それに対し、粘着剤層の位相差変化量が3nm以下である具体的な例は、本願の当初明細書の【0062】?【0066】、【0076】、【0079】に、アクリル(メタ)アクリレートモノマーとして「ブチルアクリレート」、芳香環構造を有する(メタ)アクリレートモノマーとして「ベンジルアクリレート」を用い、所定の条件で両モノマーの配合割合を以下の特定の割合として反応させて得たアクリル系ポリマー溶液の固形分を含む、粘着剤溶液から形成された粘着剤層のみが記載されている。
「ブチルアクリレート(BA)81.9重量部、ベンジルアクリレート(BzA)13.2重量部」(【0062】[実施例1])、
「ブチルアクリレート:85.1重量部、ベンジルアクリレート:10.0重量部」(【0065】[実施例2])
「ブチルアクリレート:78.1重量部、ベンジルアクリレート:17.0重量部」(【0066】[実施例3])

ウ 本願の当初明細書等には、「ブチルアクリレート」及び「ベンジルアクリレート」以外のモノマー単位を有するアクリル系ポリマーは、具体的に記載されていない。また、モノマー単位(A)及びモノマー単位(B)の配合量と、位相差変化量との関係を一般的に示す記載もない。

エ よって、アルキル(メタ)アクリレートモノマーと芳香環構造を有する(メタ)アクリレートモノマーとして、それぞれ任意のモノマーを用いたアクリル系ポリマーが、「ブチルアクリレート」及び「ベンジルアクリレート」を用いた場合と同じ配合割合で、同程度の位相差変化量を示すことは、本願の明細書に記載されておらず、出願時の技術常識であるとも認められない。

オ したがって、出願時の技術常識に照らしても、請求項1に係る発明の範囲まで、本願明細書の発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化することはできない。

(2)「前記粘着剤層を形成する粘着剤が、アクリル系ポリマーを含み、
前記アクリル系ポリマーは、アルキルアクリレートモノマー単位およびアルキルメタクリレートモノマー単位からなる群より選ばれる少なくとも1種(A)、ならびに、芳香環構造を有するアクリレートモノマー単位および芳香環構造を有するメタクリレートモノマー単位からなる群より選ばれる少なくとも1種(B)を含み、
前記粘着剤全体に対し、前記(A)の配合割合が78.1?85.1重量部の範囲であり、
前記粘着剤全体に対し、前記(B)の配合割合が10?17.0重量部の範囲であること」について
ア 本願の当初明細書に記載された、「ブチルアクリレート」及び「ベンジルアクリレート」の配合割合とは、【0062】の記載から明らかなように、アクリル系ポリマーの合成時における、モノマーの仕込み割合である。
イ それに対して、請求項1に記載された、「粘着剤全体に対し、」がどのような意味を示そうとしているのか、本願の明細書の記載を参照しても、明確ではない。

(3)上記(1)及び(2)から、請求項1に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものではなく、また、明確でない。

(4)以上より、本願発明は、特許法36条6項1号及び6項2号の規定により、特許を受けることができない。

4 本願発明の容易性について
(1)上記3(2)で検討したように、本願発明の
「前記粘着剤層を形成する粘着剤が、アクリル系ポリマーを含み、
前記アクリル系ポリマーは、アルキルアクリレートモノマー単位およびアルキルメタクリレートモノマー単位からなる群より選ばれる少なくとも1種(A)、ならびに、芳香環構造を有するアクリレートモノマー単位および芳香環構造を有するメタクリレートモノマー単位からなる群より選ばれる少なくとも1種(B)を含み、
前記粘着剤全体に対し、前記(A)の配合割合が78.1?85.1重量部の範囲であり、
前記粘着剤全体に対し、前記(B)の配合割合が10?17.0重量部の範囲である
ことを特徴とする偏光板。」
は明確ではないが、

「前記粘着剤層を形成する粘着剤が、アクリル系ポリマーを含み、
前記アクリル系ポリマーは、アルキルアクリレートモノマー単位およびアルキルメタクリレートモノマー単位からなる群より選ばれる少なくとも1種(A)、ならびに、芳香環構造を有するアクリレートモノマー単位および芳香環構造を有するメタクリレートモノマー単位からなる群より選ばれる少なくとも1種(B)を反応させて得たものであり、反応時の配合割合が、前記(A)の配合割合が78.1?85.1重量部の範囲であり、前記(B)の配合割合が10?17.0重量部の範囲であること」と解釈した場合を検討する。

(2)上記のように解釈すると、本願発明は、上記第2[理由]2及び3で検討した本願補正発明から、アクリル系ポリマーの重量平均分子量及びアクリル系ポリマーのモノマーに係る限定事項を削除したものである。

そうすると、本願発明の構成要件をすべて含み、これをより限定したものである本願補正発明が、上記第2[理由]3において検討したとおり、引用発明、周知技術1及び周知技術2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明及び周知技術1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)よって、本願発明は、引用発明及び周知技術1に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により、特許を受けることができない。

5 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法36条6項1号、6項2号及び29条2項の規定により、特許を受けることができない。したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-06-22 
結審通知日 2015-06-23 
審決日 2015-07-06 
出願番号 特願2010-97854(P2010-97854)
審決分類 P 1 8・ 537- WZ (G02B)
P 1 8・ 575- WZ (G02B)
P 1 8・ 121- WZ (G02B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 早川 貴之  
特許庁審判長 藤原 敬士
特許庁審判官 鉄 豊郎
大瀧 真理
発明の名称 偏光板、液晶パネルおよび液晶表示装置  
代理人 中山 ゆみ  
代理人 伊佐治 創  
代理人 辻丸 光一郎  
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