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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01D
管理番号 1304573
審判番号 不服2014-5874  
総通号数 190 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-10-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-04-01 
確定日 2015-08-17 
事件の表示 特願2011-117187「垂直ダイ・チップオンボード」拒絶査定不服審判事件〔平成23年12月 1日出願公開、特開2011-242400〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由
第1 手続の経緯
本願は、2005年2月25日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理 2004年2月27日 米国)を国際出願日とする特願2007-500980号の一部を平成23年5月25日に新たな特許出願としたものであって、平成24年10月17日付けの拒絶理由通知に対して平成25年1月16日付けで手続補正がなされるとともに意見書が提出され、同年6月10日付けの最後の拒絶理由通知に対して同年9月11日付けで意見書が提出されたが、同年11月29日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成26年4月1日付けで拒絶査定不服審判が請求されるとともに手続補正がなされたものである。

第2 本願発明

1 本願発明

本願請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりである。

「センサーパッケージにおいて、
a)入/出力(I/O)パッドと垂直方向センサーチップとを備えた垂直方向センサー回路構成要素であって、前記垂直方向センサーチップは、第1面、第2面、底縁部、上縁部、2つの側縁部、及び、垂直方向の感受方向を有し、前記入/出力(I/O)パッドは、前記垂直方向センサーチップの前記第2面上に配置されている、垂直方向センサー回路構成要素と、
b)上面、印刷回路板(PCB)取り付け面、第1の垂直方向センサーチップ境界縁部、少なくとも2つ又はそれ以上の他の縁部、及び前記垂直方向センサーチップの垂直の感受方向に直交する第1の感受方向を備えた第1の水平方向センサーチップと、
c)上面、印刷回路板(PCB)取り付け面、第2の垂直方向センサーチップ境界縁部、少なくとも2つ又はそれ以上の他の縁部、及び、前記垂直方向センサーチップの垂直の感受方向と直交し、且つ、前記第1の水平方向センサーチップの第1の感受方向と直交する第2の感受方向を備えた第2の水平方向センサーチップと、
を備えており、
前記第1及び第2の水平方向センサーチップがPCBに接続されており、
前記第1及び第2の各々の水平方向センサーチップの前記第1及び第2の垂直方向センサーチップ境界縁部の少なくとも1つが、前記垂直方向センサーチップを垂直の感受方向と平行な軸線に沿って接続的に支持している、ことを特徴とするセンサーパッケージ。」

なお、本願請求項1に記載の「第1の感受方向と直行する第2の感受方向」は、「第1の感受方向と直交する第2の感受方向」の誤記と認められるので、上記のとおり認定した。


2 引用例及びその記載事項

(1)原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先権主張の基礎となる出願の日前に頒布された刊行物である特開2003-28646号公報(平成15年1月29日公開、以下「引用例」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている(なお、下線は当審で付した。)。

a「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、特定の検出方向を有する半導体センサを複数用いて構成した多軸半導体センサに関するものである。」

b「【0013】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0014】(第1の実施形態)図1は本発明の多軸半導体センサの第1の実施形態を示す分解斜視図である。図1において、10a?10cは半導体センサであり、ここでは例としてチップ状の角速度センサを用いている。角速度の検出方向は角速度ベクトルがチップに垂直となる向きである。半導体センサは、外部から供給される電流により駆動され、検出した角速度の大きさに応じた信号を出力する。ここでは、角速度に応じて変化する半導体センサのインピーダンスを信号として用いるものとする。そのため、半導体センサのチップ上面には駆動及び信号用の電極、チップ裏面には接地用電極がそれぞれ形成されている。なお、角速度センサの代わりに加速度センサを用いてもよい。
【0015】12a?12cはセンサブロックであり、いずれも同じ大きさと形状の直方体である。各センサブロックの表面は平滑且つ電気伝導性を持つように処理されており、接地用電極として用いられる。11a?11cはセンサブロックの表面の信号用電極で、周囲の接地用電極とは絶縁されており、隣り合う2つ以上の側面にわたって形成されている。これらのセンサブロックは、例えば、切断や焼結により得られたセラミクス小片の側面にメッキや蒸着等で電極を形成して構成されている。なお、他の材料でも、形状が直方体で、半導体センサのダイボンディングが可能な表面の接地用電極と、それとは絶縁された信号用電極を備えていれば使用することが可能である。一般には、センサブロックとしては、窒化アルミニウム等熱伝導性が良く且つ半導体センサの基板と熱膨張率が同程度である材料を使用することが望ましい。
【0016】この各センサブロックに各々半導体センサが設けられ、センサブロック12aはX軸方向、センサブロック12bはY軸方向、センサブロック12cはZ軸方向にそれぞれ検出方向を持っている。また、図1において、Wx,Wy,Wzは角速度の方向を示す。
【0017】次に、センサブロックについて詳細に説明する。各センサブロックは同じ構造なので、Z軸方向に検出方向を持つセンサブロック12cについて説明する。まず、図1に示す左下手前の頂点Aを右手系の原点とする。121cは原点を含むYZ面(左側面)、122cは原点を含まないYZ面(右側面)、123cは原点を含むXZ面(手前側面)、124cは原点を含まないXZ面(奥側面)、125cは原点を含むXY面(底面)、126cは原点を含まないXY面(上面)である。この時、接地用電極は少なくとも右側面122c、上面126c及び底面125cに形成する。左側面121c、手前側面123cと奥側面124cについては任意である。上面126cの接地用電極には、半導体センサ10cが銀ペーストやPbSnはんだ、AuSiはんだ等で固定(ダイボンディング)されており、半導体センサ10cのチップ裏面と電気的にも導通を取ることで、センサブロック12cの表面は接地電極となっている。
【0018】一方、半導体センサ10cのチップ上面の駆動及び信号用電極は、信号用電極11cとワイヤボンディングにより配線されている。この信号用電極は、半導体センサ10cがダイボンディングされた上面126cと、左側面121cにわたって形成されている。また、センサブロック12cの右側面122c、奥側面124c及び底面125cは、他のセンサブロックの面と正確に突き合わせるため表面が平滑で且つ互いに垂直に交わるよう仕上げられている。
【0019】ここで、個々のセンサブロックを多軸のセンサに構成するためにX軸方向の角速度検出を受け持つセンサブロック12a(以下X軸センサブロック)、Y軸方向の検出を受け持つセンサブロック12b(以下Y軸センサブロック)は、ともに右側面122a,122bを下にして配置する。更に、X軸センサブロック12aの底面125aとZ軸方向の検出を受け持つセンサブロック12c(以下Z軸センサブロック)の右側面122cを、Y軸センサブロック12bの底面125bとX軸及びZ軸センサブロックの奥側面124a,124cを互いに突き当てた状態で、接着剤で全体を固定する。全体を固定する順序としては、突き当てる各面122c,124a,124c,125a,125bに接着剤を塗布してから各センサブロックを集めても構わない。
【0020】図2はこうして組み立てた多軸半導体センサ14の外観を示す斜視図である。センサブロックとして、高さhと幅wを等しく、且つ、奥行きdが幅wの2倍となる直方体を用いれば、図2に示すように全体を直方体に構成することができるため、以後の取り扱いが容易である。多軸半導体センサ14の上面には、X,Y及びZ軸センサブロックの信号用電極11a?11cが配置されており、同じく上面あるいは底面の接地用電極と合わせて、各軸の半導体センサの駆動・信号検出に使用される。
【0021】図3は多軸半導体センサ14を他の回路部品と共に回路基板に実装した状態を示す図である。201は回路基板であり、表面には各種電子部品を実装するための電極パターン(図示せず)が形成されている。実際には、この基板が例えば既知のLCC(リードレスチップキャリア)内に格納されている。14は図2に示す多軸半導体センサであり、回路基板201に銀ペースト等でダイボンディングされている。この際、回路基板201に機械的に固定すると同時に多軸半導体センサ14の接地用電極と、その下部に隠れた電極パターンが電気的に接続されている。また、多軸半導体センサ14の上面の信号用電極は、回路基板201上に形成された各々対応する電極パターンにワイヤボンディングによって配線されている。」

c 図1には、X軸センサブロック、Y軸センサブロックの下側が、それぞれ、右側面122a、122bであることが示されており、また、図3には、回路基板201に、信号用電極を上にした状態で、多軸半導体センサ14(X軸センサブロック、Y軸センサブロック、Z軸センサブロック)が載置されていることから、「X軸センサブロックの右側面及びY軸センサブロックの右側面を、回路基板201の取り付け面とする」ことが示されているということができる。

d 図1、及び図1に対応する「【0018】‥‥‥センサブロック12cの右側面122c、奥側面124c及び底面125cは、他のセンサブロックの面と正確に突き合わせるため表面が平滑で且つ互いに垂直に交わるよう仕上げられている。」との記載から、図1には、「Z軸センサブロックの右側面122c、奥側面124c、X軸センサブロックの底面125a、Y軸センサブロックの底面125bは、それぞれZ軸センサブロックの検出方向(Z軸方向)に対して並行な面である」ことが示されている。

e 図3、及び図3に対応する「【0021】図3は多軸半導体センサ14を他の回路部品と共に回路基板に実装した状態を示す図である。‥‥‥多軸半導体センサ14の接地用電極と、その下部に隠れた電極パターンが電気的に接続されている。また、多軸半導体センサ14の上面の信号用電極は、回路基板201上に形成された各々対応する電極パターンにワイヤボンディングによって配線されている。」との記載から、図3には、「多軸半導体センサ14の、X軸センサブロック、Y軸センサブロック及びZ軸のセンサブロックの接地用電極及び信号用電極は、回路基板201上に形成された各々対応する電極パターンと電気接続されている」ことが示されているということができる。


ア 上記a、上記b(段落【0014】)の記載から、引用例には「多軸半導体センサ」が記載されている。

イ 上記bの「【0016】‥‥‥センサブロック12aはX軸方向、センサブロック12bはY軸方向、センサブロック12cはZ軸方向にそれぞれ検出方向を持っている。」との記載から、X軸方向に検出方向を持っているセンサブロック12aをX軸センサブロック、Y軸方向に検出方向を持っているセンサブロック12bをY軸センサブロック、Z軸方向に検出方向を持っているセンサブロック12cをZ軸センサブロックと記載すれば、引用例には、「それぞれ、X軸方向、Y軸方向、Z軸方向に検出方向を持つ、X軸センサブロック、Y軸センサブロック、Z軸センサブロック」が記載されているということができる。

ウ 上記bの「【0017】‥‥‥各センサブロックは同じ構造なので、Z軸方向に検出方向を持つセンサブロック12cについて説明する。まず、図1に示す左下手前の頂点Aを右手系の原点とする。121cは原点を含むYZ面(左側面)、122cは原点を含まないYZ面(右側面)、123cは原点を含むXZ面(手前側面)、124cは原点を含まないXZ面(奥側面)、125cは原点を含むXY面(底面)、126cは原点を含まないXY面(上面)である。」との記載から、引用例には、「左側面、右側面、手前側面、奥側面、底面、上面を備えるZ軸センサブロック」が記載されているということができる。
ここで、上記bの「【0015】12a?12cはセンサブロックであり、いずれも同じ大きさと形状の直方体である。‥‥‥」との記載から、Z軸方向に検出方向を持つセンサブロック12cは直方体であって、他のセンサブロック、すなわち、X軸方向に検出方向を持つセンサブロック12a(X軸センサブロック)、Y軸方向に検出方向を持つ第2のセンサブロック12b(Y軸センサブロック)についても同様に、それぞれ、「左側面、右側面、手前側面、奥側面、底面、上面を備える」「直方体」ということができるから、引用例には、「Z軸センサブロック、X軸センサブロック、Y軸センサブロックは、それぞれ、直方体であって、左側面、右側面、手前側面、奥側面、底面、上面を備える」ことが記載されているということができる。

エ 上記bの「【0015】12a?12cはセンサブロックであり、いずれも同じ大きさと形状の直方体である。各センサブロックの表面は平滑且つ電気伝導性を持つように処理されており、接地用電極として用いられる。11a?11cはセンサブロックの表面の信号用電極で、周囲の接地用電極とは絶縁されており、隣り合う2つ以上の側面にわたって形成されている。」との記載、同「【0017】‥‥‥各センサブロックは同じ構造なので、Z軸方向に検出方向を持つセンサブロック12cについて説明する。」との記載、同「【0021】‥‥‥多軸半導体センサ14の接地用電極と、その下部に隠れた電極パターンが電気的に接続されている。また、多軸半導体センサ14の上面の信号用電極は、回路基板201上に形成された各々対応する電極パターンにワイヤボンディングによって配線されている。」との記載から、信号用電極、接地用電極は、各センサブロックの表面に形成されているということができ、また、信号用電極、接地用電極は、回路基板の電極パターンに電気的に接続されていることから、外部接続用電極と捉えることができる。
ここで、上記bの「【0020】‥‥‥多軸半導体センサ14の上面には、X,Y及びZ軸センサブロックの信号用電極11a?11cが配置されており、同じく上面あるいは底面の接地用電極と合わせて、各軸の半導体センサの駆動・信号検出に使用される。」との記載から、信号用電極、接地用電極は、各軸の半導体センサの駆動・信号検出に使用されるものであるので、引用例には、Z軸方向に検出方向を持つセンサブロック(Z軸センサブロック)12cについて、「Z軸センサブロックの表面に、駆動・信号検出に使用される外部接続用電極が形成される」ことが記載されているということができる。

オ 図1には、「Z軸センサブロックの右側面122c、奥側面124c、X軸センサブロックの底面125a、Y軸センサブロックの底面125bは、それぞれZ軸センサブロックの検出方向(Z軸方向)に対して並行な面である」ことが示されており(上記d)引用例には、「Z軸センサブロックの右側面、奥側面、X軸センサブロックの底面、Y軸センサブロックの底面は、それぞれZ軸センサブロックの検出方向(Z軸方向)に対して並行な面である」ことが記載されているということができる。

カ 上記bの「【0019】‥‥‥X軸センサブロック12aの底面125aとZ軸方向の検出を受け持つセンサブロック12c(以下Z軸センサブロック)の右側面122cを、Y軸センサブロック12bの底面125bとX軸及びZ軸センサブロックの奥側面124a,124cを互いに突き当てた状態で、接着剤で全体を固定する。全体を固定する順序としては、突き当てる各面122c,124a,124c,125a,125bに接着剤を塗布してから各センサブロックを集めても構わない。」との記載において、Z軸センサブロックとの接着に着目すれば、引用例には、「X軸センサブロックの底面とZ軸センサブロックの右側面を、Y軸センサブロックの底面とZ軸センサブロックの奥側面を互いに突き当てた状態で、接着剤で全体を固定し、全体を固定する順序としては、突き当てる各面に接着剤を塗布してから各センサブロックを集める」ことが記載されているということができる。

キ 上記bの「【0021】図3は多軸半導体センサ14を他の回路部品と共に回路基板に実装した状態を示す図である。201は回路基板であり、表面には各種電子部品を実装するための電極パターン(図示せず)が形成されている。実際には、この基板が例えば既知のLCC(リードレスチップキャリア)内に格納されている。‥‥‥」との記載から、多軸半導体センサ14を回路基板に実装し、実装される回路基板の表面には、電子部品を実装するための電極パターン(図示せず)が形成されていることから、「多軸半導体センサを、電極パターンが形成されている回路基板に実装する」ことが記載されているということができる。
ここで、図1、図3によれば、「X軸センサブロックの右側面及びY軸センサブロックの右側面を、回路基板201の取り付け面とする」ことが示されているから(上記c)、 引用例には、「X軸センサブロックの右側面及びY軸センサブロックの右側面を、回路基板の取り付け面として、多軸半導体センサを、電極パターンが形成されている回路基板に実装する」ことが記載されているということができる。

ク 図3には、「多軸半導体センサ14の、X軸センサブロック、Y軸センサブロック及びZ軸のセンサブロックの接地用電極及び信号用電極は、回路基板201上に形成された各々対応する電極パターンと電気接続されている」ことが示されており(上記e)、ここで、信号用電極、接地用電極は、外部接続用電極といえるから(上記エ)、引用例には、「X軸センサブロック、Y軸センサブロック及びZ軸のセンサブロックの外部接続用電極は、回路基板上に形成された各々対応する電極パターンと電気接続されている」ことが記載されているということができる。

ケ 上記bの「【0021】図3は多軸半導体センサ14を他の回路部品と共に回路基板に実装した状態を示す図である。201は回路基板であり、表面には各種電子部品を実装するための電極パターン(図示せず)が形成されている。実際には、この基板が例えば既知のLCC(リードレスチップキャリア)内に格納されている」との記載から、多軸半導体センサを実装した回路基板は、LCC(リードレスチップキャリア)内に格納されているといえ、ここで、LCC(リードレスチップキャリア)はパッケージ形状の呼称であるから、引用例には、「パッケージされた多軸半導体センサ」ことが記載されているということができる。

したがって、上記引用例に記載された事項、図面の記載、及び上記アないしケを総合すると、引用例には、次の事項が記載されている(以下、引用発明という。)。

「多軸半導体センサであって、
それぞれ、X軸方向、Y軸方向、Z軸方向に検出方向を持つ、X軸センサブロック、Y軸センサブロック、Z軸センサブロックからなり、
Z軸センサブロック、X軸センサブロック、Y軸センサブロックは、それぞれ、直方体であって、左側面、右側面、手前側面、奥側面、底面、上面を備え、
Z軸センサブロックの表面に、駆動・信号検出に使用される外部接続用電極が形成され、
Z軸センサブロックの右側面、奥側面、X軸センサブロックの底面、Y軸センサブロックの底面は、それぞれZ軸センサブロックの検出方向(Z軸方向)に対して並行な面であって、
X軸センサブロックの底面とZ軸センサブロックの右側面を、Y軸センサブロックの底面とZ軸センサブロックの奥側面を互いに突き当てた状態で、接着剤で全体を固定し、全体を固定する順序としては、突き当てる各面に接着剤を塗布してから各センサブロックを集めるものであり、
X軸センサブロックの右側面及びY軸センサブロックの右側面を、回路基板の取り付け面として、多軸半導体センサを、電極パターンが形成されている回路基板に実装し、
X軸センサブロック、Y軸センサブロック及びZ軸のセンサブロックの外部接続用電極は、回路基板上に形成された各々対応する電極パターンと電気接続された、
パッケージされた多軸半導体センサ。」


3 対比

本願発明と引用発明とを対比する。

(1)引用発明の「パッケージされた多軸半導体センサ」は、本願発明の「センサーパッケージ」に相当する。

(2)
a 引用発明の「Z軸方向に」「検出方向を持っている」「Z軸センサブロック」において、Z軸方向を垂直方向とすることは常套手段であり、また、引用発明の「Z軸センサブロック」は、センサー機能を備えたひとかたまりの構成体ということができるから、「Z軸センサブロック」は「垂直方向センサー」と捉えることができる。
b 一方、引用発明は、「Z軸センサブロックの表面に、駆動・信号検出に使用される外部接続用電極が形成され」たものであり、一方、本願発明の「入/出力(I/O)パッド」も外部接続用電極ということができるから、引用発明の「駆動・信号検出に使用される外部接続用電極」と本願発明の「入/出力(I/O)パッド」とは「外部接続用電極」である点で共通する。
c そして、このような「外部接続用電極」と「Z軸センサブロック」(垂直方向センサー(上記a))は、全体として回路構成要素と捉えることができるから、引用発明の「表面に、外部接続用電極が形成され」た「Z軸センサブロック」と本願発明の「入/出力(I/O)パッドと垂直方向センサーチップとを備えた垂直方向センサー回路構成要素」とは、「外部接続用電極と垂直方向センサーを備えた垂直方向センサー回路構成要素」である点で共通する。

(3)引用発明の「Z軸センサブロック」は、「左側面、右側面、手前側面、奥側面、底面、上面を備え」るものであって、「底面」、「上面」は、それぞれ、本願発明の「第1面、第2面、底縁部、上縁部、2つの側縁部」のうち、「底縁部」、「上縁部」に相当し、引用発明の「右側面」は本願発明の「第1面」に相当し、引用発明の「奥側面」は本願発明の「2つの側縁部」のうちの一の側縁部に相当し、引用発明の「左側面」は本願発明の「第2面」に相当し、引用発明の「手前側面」は、本願発明の「2つの側縁部」のうちの他の側縁部に相当する。
そして、Z軸方向を垂直方向とすることは常套手段であるから(上記(2)a)、引用発明の「Z軸センサブロック」が、「左側面、右側面、手前側面、奥側面、底面、上面を備え」ることと、本願発明の「前記垂直方向センサーチップは、第1面、第2面、底縁部、上縁部、2つの側縁部、及び、垂直方向の感受方向を有」することとは、「前記垂直方向センサーは、第1面、第2面、底縁部、上縁部、2つの側縁部、及び、垂直方向の感受方向を有」する点で共通する。

(4)引用発明の「Z軸センサブロックの表面に、駆動・信号検出に使用される外部接続用電極が形成され」ることにおける「表面」は、外部接続用電極が形成されているという点において、本願発明の「前記入/出力(I/O)パッドは、前記垂直方向センサーチップの前記第2面上に配置されている、垂直方向センサー回路構成要素」における「第2面上」と、「表面」である点で共通する。
また、引用発明の「外部接続用電極」と「Z軸センサブロック」(垂直方向センサー(上記a))は、全体として回路構成要素と捉えることができるから(上記(2)c)、引用発明の「表面に、駆動・信号検出に使用される外部接続用電極が形成され」た「Z軸センサブロック」と、本願発明の「前記入/出力(I/O)パッドは、前記垂直方向センサーチップの前記第2面上に配置されている、垂直方向センサー回路構成要素」とは、「外部接続用電極は、前記垂直方向センサーの表面に配置されている、垂直方向センサー回路構成要素」である点で共通する。

(5)
a 引用発明の「X軸センサブロック」は「左側面、右側面、手前側面、奥側面、底面、上面を備え」るものであって、「X軸センサブロックの底面とZ軸センサブロックの右側面を」「互いに突き当てた状態」とすることから、引用発明の「X軸センサブロック」の「底面」と、本願発明の「第1の垂直方向センサーチップ境界縁部」とは、「第1の垂直方向センサー境界縁部」である点で共通する。

b 引用発明は、「X軸センサブロックの右側面」を「回路基板の取り付け面」とするものであって、ここで、「回路基板」は「電極パターンが形成されている」ものであり、この電極パターンを印刷により形成することは常套手段であるから、引用発明の「X軸センサブロックの右側面」が、本願発明の「印刷回路板(PCB)取り付け面」に相当する。

c 引用発明の「X軸センサブロック」の回路基板の取り付け面である「右側面」を下面とすると、「右側面」に対向する面である「左側面」は、「上面」と捉えることができ、本願発明の「上面」に相当する。

d 引用発明のX軸センサブロックの「底面」、「右側面」、「左側面」以外のその他の面、すなわち、「手前側面」、「奥側面」、「上面」は、本願発明の「少なくとも2つ又はそれ以上の他の縁部」に相当する。

e 引用発明の「X軸センサブロック」の感受方向は「Z軸センサブロック」((垂直方向センサー(上記a)))の垂直の感受方向に直交する感受方向を備えるから、「X軸センサブロック」と、本願発明の「前記垂直方向センサーチップの垂直の感受方向に直交する第1の感受方向を備えた第1の水平方向センサーチップ」とは、「前記垂直方向センサーの垂直の感受方向に直交する第1の感受方向を備えた第1の水平方向センサー」である点で共通する。

f 上記a?eから、引用発明の 「X軸センサブロック」と、本願発明の「上面、印刷回路板(PCB)取り付け面、第1の垂直方向センサーチップ境界縁部、少なくとも2つ又はそれ以上の他の縁部、及び前記垂直方向センサーチップの垂直の感受方向に直交する第1の感受方向を備えた第1の水平方向センサーチップ」とは、「上面、印刷回路板(PCB)取り付け面、第1の垂直方向センサー境界縁部、少なくとも2つ又はそれ以上の他の縁部、及び前記垂直方向センサーの垂直の感受方向に直交する第1の感受方向を備えた第1の水平方向センサー」である点で共通する。

(6)
a 引用発明の「左側面、右側面、手前側面、奥側面、底面、上面を備え」る「Y軸センサブロック」は、「Y軸センサブロックの底面とZ軸センサブロックの奥側面を互いに突き当てた状態」とすることから、引用発明の「Y軸センサブロック」の「底面」と、本願発明の「第2の垂直方向センサーチップ境界縁部」とは、「第2の垂直方向センサー境界縁部」である点で共通する。

b 引用発明は、「Y軸センサブロックの右側面」を「回路基板の取り付け面」とするものであって、ここで、「回路基板」は「電極パターンが形成されている」ものであり、この電極パターンを印刷により形成することは常套手段であるから、引用発明の「Y軸センサブロック」の「右側面」が、本願発明の「印刷回路板(PCB)取り付け面」に相当する。

c 引用発明のY軸センサブロックの回路基板の取り付け面である「右側面」を下面とすると、「右側面」に対向する面である「左側面」は、「上面」と捉えることができ、本願発明の「上面」に相当する。

d 引用発明のY軸センサブロックの「底面」、「右側面」、「左側面」以外のその他の面、すなわち、「手前側面」、「奥側面」、「上面」は、本願発明の「少なくとも2つ又はそれ以上の他の縁部」に相当する。

e 引用発明の「Y軸センサブロック」の感受方向は、「Z軸センサブロック」(垂直方向センサー(上記(2)a))の垂直の感受方向に直交する感受方向を有するとともに、「X軸センサブロック」(本願発明の「第1の水平方向センサー」(上記(5)e))の感受方向と直交する感受方向を有するから、引用発明の「Y軸センサブロック」と、本願発明の「前記垂直方向センサーチップの垂直の感受方向と直交し、且つ、前記第1の水平方向センサーチップの第1の感受方向と直交する第2の感受方向を備えた第2の水平方向センサーチップ」とは、「前記垂直方向センサーの垂直の感受方向と直交し、且つ、前記第1の水平方向センサーの第1の感受方向と直交する第2の感受方向を備えた第2の水平方向センサー」である点で共通する。

f 上記a?eから、引用発明の 「Y軸センサブロック」と、本願発明の「上面、印刷回路板(PCB)取り付け面、第2の垂直方向センサーチップ境界縁部、少なくとも2つ又はそれ以上の他の縁部、及び、前記垂直方向センサーチップの垂直の感受方向と直交し、且つ、前記第1の水平方向センサーチップの第1の感受方向と直交する第2の感受方向を備えた第2の水平方向センサーチップ」とは、「上面、印刷回路板(PCB)取り付け面、第2の垂直方向センサー境界縁部、少なくとも2つ又はそれ以上の他の縁部、及び、前記垂直方向センサーの垂直の感受方向と直交し、且つ、前記第1の水平方向センサーの第1の感受方向と直交する第2の感受方向を備えた第2の水平方向センサー」である点で共通する。

(7)引用発明は、「多軸半導体センサを、電極パターンが形成されている回路基板に実装し、X軸センサブロック、Y軸センサブロック及びZ軸のセンサブロックの外部接続用電極は、回路基板上に形成された各々対応する電極パターンと電気接続され」るものであって、X軸センサブロック(第1の水平方向センサー)、Y軸センサブロック(第2の水平方向センサー)に注目すれば、引用発明の「回路基板」が本願発明の「印刷回路板(PCB)」に相当することから(上記(5))、引用発明と、本願発明の「前記第1及び第2の水平方向センサーチップがPCBに接続されて」いることとは、「前記第1及び第2の水平方向センサーがPCBに接続されて」いる点で共通する。

(8)
a 引用発明は、「X軸センサブロックの底面」及び「Y軸センサブロックの底面」を、それぞれ、「Z軸センサブロック(垂直方向センサー)」の「右側面」、「奥側面」と互いに突き当てた状態で接着剤を用いて全体を固定しており、「Z軸センサブロック(垂直方向センサー)」を「X軸センサブロック」、「Y軸センサブロック」に固定して、切り離されることなく一体的に支持しているものということができるから、「X軸センサブロックの底面」(前記第1の水平方向センサーの第1の垂直方向センサー境界縁部(上記(5)a))及び「Y軸センサブロックの底面」(前記第2の水平方向センサーの第2の垂直方向センサー境界縁部(上記(6)a))が、「Z軸センサブロック(垂直方向センサー)」を接続的に支持しているということがいえる。

b また、引用発明において、「接着剤を塗布する」「突き当てる各面」である、「X軸センサブロックの底面」(第1の水平方向センサーの第1の垂直方向センサーチップ境界縁部)、「Y軸センサブロックの底面」(第1の水平方向センサーの第1の垂直方向センサーチップ境界縁部)は、「Z軸センサブロック」(垂直方向センサー)の「検出方向(Z軸方向)に対して並行な面」であるといえ、ここで、「検出方向(Z軸方向)」は、「垂直の感受方向と平行な軸線」と捉えることができる。

c よって、上記a、bから、引用発明の「Z軸センサブロックの右側面、奥側面、X軸センサブロックの底面、Y軸センサブロックの底面は、それぞれZ軸センサブロックの検出方向(Z軸方向)に対して並行な面であって、X軸センサブロックの底面とZ軸センサブロックの右側面を、Y軸センサブロックの底面とZ軸センサブロックの奥側面を互いに突き当てた状態で、接着剤で全体を固定し、全体を固定する順序としては、突き当てる各面に接着剤を塗布してから各センサブロックを集め」と、本願発明の「前記第1及び第2の各々の水平方向センサーチップの前記第1及び第2の垂直方向センサーチップ境界縁部の少なくとも1つが、前記垂直方向センサーチップを垂直の感受方向と平行な軸線に沿って接続的に支持している」こととは、「前記第1及び第2の各々の水平方向センサーの前記第1及び第2の垂直方向センサー境界縁部の少なくとも1つが、前記垂直方向センサーを垂直の感受方向と平行な軸線に沿って接続的に支持している」点で共通する。

すると、本願発明と引用発明とは、次の<一致点>及び<相違点>を有する。

<一致点>
「センサーパッケージにおいて、
a)外部接続用電極と垂直方向センサーとを備えた垂直方向センサー回路構成要素であって、前記垂直方向センサーは、第1面、第2面、底縁部、上縁部、2つの側縁部、及び、垂直方向の感受方向を有し、前記外部接続用電極は、前記垂直方向センサーの表面に配置されている、垂直方向センサー回路構成要素と、
b)上面、印刷回路板(PCB)取り付け面、第1の垂直方向センサー境界縁部、少なくとも2つ又はそれ以上の他の縁部、及び前記垂直方向センサーの垂直の感受方向に直交する第1の感受方向を備えた第1の水平方向センサーと、
c)上面、印刷回路板(PCB)取り付け面、第2の垂直方向センサー境界縁部、少なくとも2つ又はそれ以上の他の縁部、及び、前記垂直方向センサーの垂直の感受方向と直交し、且つ、前記第1の水平方向センサーの第1の感受方向と直交する第2の感受方向を備えた第2の水平方向センサーと、
を備えており、
前記第1及び第2の水平方向センサーがPCBに接続されており、
前記第1及び第2の各々の水平方向センサーの前記第1及び第2の垂直方向センサー境界縁部の少なくとも1つが、前記垂直方向センサーを垂直の感受方向と平行な軸線に沿って接続的に支持している、センサーパッケージ。」


<相違点>
(ア)外部接続用電極について、本願発明は、「入/出力(I/O)パッド」であるのに対し、引用発明は、「入/出力(I/O)パッド」との特定がない点。

(イ)センサーについて、本願発明は、「センサーチップ」であるのに対し、引用発明は、「センサー」である点。

(ウ)表面に配置されている外部接続用電極について、本願発明は、「入/出力(I/O)パッド」が、センサーチップの「第2面上」に配置されているのに対し、引用発明はこのような特定がない点。

4 判断

<相違点>(イ)について(「<相違点>(ア)について」は後述する。)
引用発明の「X軸センサブロック」、「Y軸センサブロック」、「Z軸センサブロック」は、それぞれ「直方体」であってセンサ機能を有するものであり、同じくセンサ機能を有する直方体のセンサチップも、拒絶査定の備考において引用された特開2004-37105号公報(図2)に記載されているように周知である。
そして、一般に、複数のチップを一のケースに収納することは、例えば、特開平1-205457号公報(図1)に記載されているように周知慣用手段であるから、引用発明の、センサ機能を有する「直方体」の「X軸センサブロック」、「Y軸センサブロック」、「Z軸センサブロック」の載置形態から、それぞれセンサ機能を有する直方体のX軸センサチップ、Y軸センサチップ、Z軸センサチップの載置形態についても、引用発明と同様に載置することは、当業者が容易になし得る事項である。

よって、本願発明の<相違点>(イ)に係る構成のようにすることは格別なことではない。

<相違点>(ア)(ウ)について
最初に本願発明についてみるに、本願発明は、「入/出力(I/O)パッド」を「垂直方向センサーチップの前記第2面上に配置」するものであって、「第2面」とは、「第1面、第2面、底縁部、上縁部、2つの側縁部」のうちの第2面であり、また、垂直方向センサーチップは直方体である(本願図面第2図)ことから、「第2面上」は、「側面上」と捉えることができる。以下、これを踏まえて検討する。
一般に、センサーチップと回路基板との間において信号の授受(入出力(I/O))を行う外部接続用電極を設けることは常套手段であるから(必要であれば、例えば、特開2002-148047号公報(「【0002】‥‥‥角速度センサ素子1は、振動体2と、この振動体2を静電力で駆動する駆動電極部3,4と、振動体2に作用したコリオリ力を静電的に検出する検出電極部5,6と、‥‥‥から構成されている。【0003】駆動電極部3,4には、駆動制御回路9から所定の周波数で一定の振幅を有する駆動信号が入力される。」)、特開昭63-118667号公報(1頁右下欄4行「本発明は一次元加速度センサを組合せ使用し、」、2頁右下欄1?2行「なお第2図において81?83はそれぞれ加速度センサの入出力端子を示す。」)))、センサーチップに「入出力(I/O)」電極を設けることに格別の困難性を有しない。
そして、電気部品であるチップを回路基板に実装する際に、チップの側面にパッドを設けて外部接続用電極とすることは周知技術であり(例えば、特開平3-104246号公報(2頁左上欄9?10行「ICチップ1の側面にパッド2が設けられている」、同欄15?17行「ICチップ1の側面から、ボンディングワイヤ5を用いて回路基板6へ電気的接続が行われている。」、図1(a)(b))、特開平6-120294号公報(段落【0015】「化合物半導体ICのボンディング電極パッドをチップ側面に形成する」、図1、図4))、ここで、電極パッドは、一般に面上に形成されるものであるから、センサチップにおいて、外部接続用電極を「入出力(I/O)パッド」としてセンサーチップの側面上(本願発明の「第2面上」)に相当)に形成することは当業者が適宜なし得る事項である。

よって、本願発明の<相違点>(ア)(ウ)に係る構成のようにすることは格別なことではない。


そして、上記相違点を総合的に判断しても、本願発明が奏する効果は引用発明及び周知な事項から当業者が十分に予測できたものであって格別なものとはいえない。

したがって、本願発明は、引用発明及び周知な事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

5 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-03-26 
結審通知日 2015-03-27 
審決日 2015-04-07 
出願番号 特願2011-117187(P2011-117187)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G01D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 濱本 禎広中村 和正  
特許庁審判長 清水 稔
特許庁審判官 酒井 伸芳
関根 洋之
発明の名称 垂直ダイ・チップオンボード  
代理人 小林 泰  
代理人 小野 新次郎  
代理人 大房 直樹  
代理人 山本 修  
代理人 竹内 茂雄  

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