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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1304577
審判番号 不服2014-12834  
総通号数 190 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-10-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-07-03 
確定日 2015-08-18 
事件の表示 特願2011-500083「チップをウェハ上にボンディングするための方法」拒絶査定不服審判事件〔平成21年 9月24日国際公開、WO2009/115240、平成23年 5月 6日国内公表、特表2011-514686〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成21年3月13日(パリ条約に基づく優先権主張外国庁受理 平成20年3月18日 欧州特許庁(EP))を国際出願日とする特許出願であって、平成25年2月18日付け拒絶理由通知に対する応答時、同年5月14日付けで手続補正がなされたが、平成26年2月21日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年7月3日付けで拒絶査定不服審判の請求及び手続補正がなされたものである。

2.平成26年7月3日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成26年7月3日付けの手続補正を却下する。
[理 由]
(1)補正後の本願発明
平成26年7月3日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)により、特許請求の範囲の請求項1は、
「【請求項1】
複数のチップ(3)を一つのベースウェハ(1)にボンディングする方法であって、前記チップ(3)が複数の層になって前記ベースウェハ(1)上にスタックされ、これら垂直方向に隣接するチップ(3)ならびに前記ベースウェハ(1)と、前記ベースウェハ(1)に垂直方向に隣接するチップ(3)層との間に導電性接続(7)が存在する方法において、以下のステップ;
a)前記ベースウェハ(1)を担体(5)上に固定するステップ、
b)チップ(3)の少なくとも一つの層を前記ベースウェハ(1)上の所定の位置に配置するステップ、
c)前記担体(5)に固定された前記ベースウェハ(1)の上で、前記チップ(3)に圧力をかけて前記チップ(3)を熱処理するステップ、
をこの順番で有し、
前記ステップb)およびステップc)が異なる装置内で実施され、
前記担体(5)が前記ベースウェハ(1)の大きさにほぼ相当していることを特徴とする方法。」
と補正された。

上記補正は、請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「前記チップ(3)を熱処理するステップ」について、「前記チップ(3)に圧力をかけて」行う旨の限定を付加するものである。
よって、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで、本件補正後の上記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項に規定する要件を満たすか)否かについて以下に検討する。

(2)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された特開2004-273525号公報(以下、「引用例」という。)には、「半導体装置の製造方法」について、図面とともに以下の各記載がある(なお、下線は当審で付与した。)。
ア.「【0010】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態による半導体装置の製造方法、半導体装置、及び電子機器について詳細に説明する。本実施形態の半導体装置の製造方法は、概説すると薄板化したウェハ(基板)上に個々の半導体チップを積層する点を特徴とするものであり、全体の製造工程は半導体チップが積層させる基板を処理する第1処理工程と、積層する半導体チップを製造する第2処理と、基板上にチップを積層する第3処理とに大別される。これらの工程は順次行われても良く、第1処理工程と第2処理工程とを並列して行っても良い。製造効率の観点からは、予め第2処理工程により半導体チップを形成しておき、第1処理工程が終了した後に第3処理工程を行うことが好ましい。以下、これらの各工程について詳細に説明する。」

イ.「【0011】
〔第1処理工程〕
図1は、本発明の一実施形態による半導体装置の製造方法において処理対象として用いられる基板(半導体基板)の上面図である。処理対処の基板10は、例えばSi(シリコン)基板であり、能動面10aには複数の区画領域(ショット領域)SAが設定されている。各々の区画領域SA内には、トランジスタ、メモリ素子、その他の電子素子並びに電気配線及び電極パッド16(図3参照)等からなる電子回路が形成されている。一方、基板10の裏面10b(図2参照)にはこれらの電子回路は形成されていない。
・・・・・(中 略)・・・・・
【0036】
下地膜22の形成が終了すると、基板10の能動面10a上にメッキレジストを塗布し、接続端子24を形成する部分のみが開口した状態にパターニングしてメッキレジストパターン28を形成する。図2(e)はメッキレジストパターンを形成した状態を示す断面図である。その後、Cu電解メッキを行って、図2(f)に示す通り基板10の孔部H3及びメッキレジストパターン28の開口部にCu(銅)を埋め込み、接続部としての接続端子24を形成する(第1工程)。図2(f)は、Cu電解メッキを行って接続端子24を形成した状態を示す断面図である。
・・・・・(中 略)・・・・・
【0043】
以上の工程が完了すると、基板10の裏面10bをエッチングして基板10の厚みを減ずる工程が行われる。図9は、基板10の裏面をエッチングして基板10の厚みを減する工程を示す工程図である。本実施形態では、基板10の厚みを50μm程度に減じているが、この程度まで基板10の厚みを減ずると基板10の強度が低下して反りが生じたり又は基板10が破損することがある。このため、基板10の厚みを減じても基板10の強度を保つため基板10の能動面10a側(再配置配線32が形成された側)に支持部材を取り付けてある。
【0044】
図9(a)は、基板10の能動面側に支持部材を取り付けた状態を示す断面図である。本実施形態においては、支持部材として粘着樹脂40と平坦なガラス基板42とを用いている。粘着樹脂40は基板10の能動面側10aに形成された接続端子24、応力緩和層26、及び再配置配線32等の凹凸を吸収するためのものであり、熱硬化性樹脂又はUV(紫外線)硬化樹脂等の硬化性樹脂を用いることが好ましい。また、ガラス基板42は基板10の強度を保つとともに、薄板化した基板10の裏面に対する処理を行う上で取り扱いを容易にするためのものである。尚、基板10は、後工程における処理で基板10の割れが生じない程度に強度が高く、両面の平坦性が高いものを用いることが好ましい。
【0045】
基板10の能動面10a側に粘着樹脂40及びガラス基板42を取り付けるには、まず液状の粘着樹脂40をスピンコート等の塗布方法を用いて基板10の能動面10a側に塗布する。次に、塗布した粘着樹脂40に対して加熱又はUV照射を行って粘着樹脂40を硬化させる。粘着樹脂40の硬化後、粘着樹脂40上に接着剤を塗布してガラス基板42を粘着樹脂40に接着する(第7工程)。
【0046】
粘着樹脂40及びガラス基板42の取り付けが完了すると、基板10の裏面10bに処理を行って基板10を薄板化し、基板10内に埋め込み形成された接続端子24を吐出させる工程が行われる(第2工程)。基板10を薄板化するために基板10の裏面10bに対して行う処理方法は、裏面研磨又は裏面エッチングを用いることができるが、ここではエッチングにより基板10を薄板化する方法を例に挙げて説明する。」

ウ.「【0064】
〔第3処理工程〕
第1処理工程を終えた基板10は、図9(d)に示す通り、基板10の能動面10a側に粘着樹脂40及びガラス基板42が取り付けられ、基板10の裏面10bにアライメントマークAMが形成された状態である。この基板10に対して第2処理工程で製造された半導体チップ60を積層するには、まず半導体チップ60の貫通電極としての接続端子54に形成された無鉛ハンダ58上に接合活性剤(フラックス)を塗布する。フラックスは、半導体チップ60を基板10上に積層したときに、半導体チップ60を保持することができる程度の粘度及び量が必要となる。
【0065】
次に、基板10の裏面10bに形成されたアライメントマークAMの位置を検出し、この検出結果に基づいて半導体チップ60を積層すべき位置に搬送し、半導体チップ60と基板10との位置合わせを行って、半導体チップ60を基板10の裏面10b側に積層する。このとき、半導体チップ60に形成された各接続電極54及び無鉛ハンダ58は、半導体チップ60が積層された位置に形成されている各接続端子24上に位置し、半導体チップ60は無鉛ハンダ58上に塗布されたフラックスの粘着力で保持される。
【0066】
次に、アライメントマークAMの検出結果に基づいて、次に積層すべき半導体チップ60を積層すべき位置に搬送し、基板10の裏面10b上に積層された半導体チップ60上に半導体チップ60を積層する。半導体チップ60の積層はアライメントマークAMを基準として行われているため、複数段に亘って半導体チップ60を積層する場合であっても高い精度で位置合わせを行うことができる。
【0067】
この工程を繰り返して複数段に亘り半導体チップ60を積層する。以上の工程を、基板10の他の位置(半導体チップ60を積層すべき位置)について同様に行い、基板10の複数箇所において半導体チップ60を積層する。尚、積層する半導体チップ60の段数は任意の段数で良い。また、積層順は積層すべき位置の全てについて1段目の半導体チップ60の積層が完了してから2段目の半導体チップ60を積層するようにしても良い。このようにして基板10の裏面10bに複数の半導体チップ60を積層する。
【0068】
半導体チップ60の積層が完了すると、基板10に形成された接続電極24と半導体チップ60に形成された接続電極54との接合、及び半導体チップ60に形成された接続電極54同士の接合が行われる。この接合工程においては、半導体チップ60が積層された基板60をリフロー装置に入れて、接続電極24及び接続電極54並びに接続電極54同士を無鉛ハンダ58により接合する。これにより、接続電極24と接続電極54とが電気的に接続される(第3工程)。接続電極24と接続電極54との接合及び接続電極54同士の接合をリフローで一括して行うことで、接合に要する時間を短縮することができ製造効率の向上を図ることができる。
【0069】
図13は、基板10に形成された接続電極24と半導体チップ60に形成された接続電極54とが接合されて基板10上に半導体チップ60が積層された状態を示す断面図である。図13を参照すると、接続電極24と接続電極54とがほぼ一直線上に配列されて接合されていることが分かる。また、図13に示す通り、基板10に形成された接続端子24及び半導体チップ60に形成された接続端子54の高さは100μm程度の高さであるため、基板10上に3段の半導体チップ60を積層しても、基板10を含めた半導体装置の高さは500μm以下となり、高集積化されていることが分かる。
【0070】
以上の工程が終了すると、積層した半導体チップ60及び基板10をトランスファーモールドにより一括して封止する工程が行われる(この工程は第4工程の一部である)。図14は、基板10及び半導体チップ60を封止した状態を示す図である。図14(a)に示す通り、封止は基板10に粘着樹脂40及びガラス基板42が取り付けられた状態で行われる。封止樹脂62は基板10の裏面全体を覆い、且つ半導体チップ60の全てが封止されるように形成されていることが分かる。
【0071】
基板10及び半導体チップ60の封止が完了すると、基板10から粘着樹脂40及びガラス基板42を取り外す工程が行われる(第8工程)。これらを取り外す場合には、まず、ガラス基板42側からガラス基板42と粘着樹脂40とを接着している接着剤にレーザ光を照射し、粘着樹脂40からガラス基板42を取り外す。次に、粘着樹脂40を除去するための除去テープを粘着樹脂40に貼り付け、除去テープの端部を略基板10に沿って又は基板10から離れる方向に引いて粘着樹脂40を取り外す。」

エ.「【0074】
図16に示すように、半導体装置は接続部としての接続端子24が形成された第1半導体チップとしての基板10上に、貫通電極としての接続端子54が形成された第2半導体チップとしての半導体チップ60が複数積層された構造である。貫通電極54と接続電極24とは電気的に接続されている。また基板10には能動面10a側に応力緩和層26、再配置配線32、及び第2接続部としてのバンプ36が形成されている。また、本実施形態の半導体装置は、半導体チップ60の面に平行な面内における封止樹脂62の寸法が基板10の平面寸法と同一寸法とになるという特徴的な構成となっている。尚、図16において、64は根本補強樹脂である。
【0075】
以上説明したように、本発明の一実施形態による半導体装置の製造方法は、基板10を切断せずに、いわゆるウェハの状態の基板10上に半導体チップ60を積層し、積層した半導体チップ60を一括して封止し、切断して個々の半導体装置にしているため、製造工程を簡略化することができる。また、薄板化した基板10上に薄板化した半導体チップ60を積層しているため高集積化が可能である。更に、基板10に再配置配線32及びバンプ36を形成しているため、基板10に形成された接続端子26のピッチ及び配列の変換か可能となり、半導体装置を搭載するガラスエポキシ等の基板の配線の自由度が増し、更に高集積化が可能となる。」

オ.「【0081】
また、上記実施形態においては、無鉛ハンダ58を用いて半導体チップ60と基板10との接合(電気的接続)及び半導体チップ60同士の接合を行っていたが、無鉛ハンダに代えて金等の金属又は合金を用いても良い。更には、半導体チップ60と基板10との接合及び半導体チップ60同士の接合は、フリップチップボンディングにより行っても良い。」

・上記引用例に記載の「半導体装置の製造方法」は、上記「ア.」の記載事項によれば、全体の製造工程として、半導体チップが積層される基板を処理する第1処理工程と、積層する半導体チップを製造する第2処理工程と、第1処理工程及び第2処理工程が終了した後、基板上に半導体チップを積層する第3処理工程とからなるものである。
・上記「エ.」の段落【0074】の記載事項、及び図16によれば、製造される半導体装置は、接続部としての接続端子24が形成された基板10上に、貫通電極としての接続端子54が形成された半導体チップ60が複数積層された構造である。
・上記「ア.」、「イ.」、「エ.」の段落【0075】の記載事項によれば、基板10は、例えばシリコンウェハの状態のものであり、この状態の基板10に対して半導体チップ60が積層される。
・上記「イ.」の記載事項によれば、第1処理工程として、基板10の孔部H3等にCu(銅)を埋め込み、接続部としての接続端子24を形成する工程、基板10の強度を保つとともに、基板10の裏面に対する処理を行う上で取り扱いを容易にするために基板の能動面10a側に支持部材を取り付ける工程、基板の裏面10bの処理(エッチング)を行って基板10の厚みを減ずる工程等を有する。
・上記「ウ.」の記載事項によれば、第3処理工程は、第1処理工程によって能動面10a側に支持部材が取り付けられた基板10に対して第2処理工程で製造れた半導体チップ60を積層すべき所定位置に複数段に亘り積層する工程を有する。
そして、半導体チップ60の積層が完了すると、半導体チップ60が積層された基板10をリフロー装置に入れて、基板10に形成された接続電極24と半導体チップ60に形成された接続電極54、及び半導体チップ60に形成された接続電極54同士を無鉛ハンダ58により接合する工程が行われる。
その後、積層した半導体チップ60及び基板10をトランスファーモールドにより一括して封止し、封止が完了すると、基板10から支持部材を取り外す工程が行われる。

したがって、上記記載事項及び図面を総合勘案すると、引用例には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。
「接続部としての接続端子が形成されたシリコンウェハの状態の基板上に、貫通電極としての接続端子が形成された半導体チップが複数積層された構造の半導体装置の製造方法であって、
前記半導体チップが積層される前記シリコンウェハの状態の基板を処理する第1処理工程と、積層する前記半導体チップを製造する第2処理工程と、前記第1処理工程及び前記第2処理工程が終了した後、前記シリコンウェハの状態の基板上に前記半導体チップを積層する第3処理工程とからなり、
前記第1処理工程は、前記シリコンウェハの状態の基板の孔部等にCu(銅)を埋め込み、前記接続部としての接続端子を形成する工程と、前記シリコンウェハの状態の基板の強度を保つとともに、当該基板の裏面に対する処理を行う上で取り扱いを容易にするために当該基板の能動面側に支持部材を取り付ける工程と、前記シリコンウェハの状態の基板の裏面の処理(エッチング)を行って当該基板の厚みを減ずる工程、等を有し、
前記第3処理工程は、前記第1処理工程によって能動面側に前記支持部材が取り付けられた前記シリコンウェハの状態の基板に対して前記第2処理工程で製造された前記半導体チップを積層すべき所定位置に複数段に亘り積層する工程と、前記半導体チップが積層された前記シリコンウェハの状態の基板をリフロー装置に入れて、当該基板に形成された前記接続電極と前記半導体チップに形成された前記接続電極、及び前記半導体チップに形成された前記接続電極同士を無鉛ハンダにより接合する工程と、積層した前記半導体チップ及び前記シリコンウェハの状態の基板をトランスファーモールドにより一括して封止し、封止が完了すると、前記シリコンウェハの状態の基板から前記支持部材を取り外す工程と、を有する半導体装置の製造方法。」

(3)対比
そこで、本願補正発明と引用発明とを対比すると、
ア.引用発明における「半導体チップ」、「シリコンウェハの状態の基板」は、それぞれ本願補正発明における「チップ」、「ベースウェハ」に相当し、
引用発明における「接続部としての接続端子が形成されたシリコンウェハの状態の基板上に、貫通電極としての接続端子が形成された半導体チップが複数積層された構造の半導体装置の製造方法であって・・・・前記半導体チップが積層された前記シリコンウェハの状態の基板をリフロー装置に入れて、当該基板に形成された前記接続電極と前記半導体チップに形成された前記接続電極、及び前記半導体チップに形成された前記接続電極同士を無鉛ハンダにより接合する工程と・・」によれば、
引用発明における、シリコンウェハの状態の基板に形成された接続部としての「接続端子」及び半導体チップに形成された貫通電極としての「接続端子」は、シリコンウェハの状態の基板と当該基板に積層方向に隣接する半導体チップとの間、及び積層方向に隣接する半導体チップ間において接合すなわち電気的接続がなされるものであることから、本願補正発明でいう「導電性接続」に相当するといえ、
本願補正発明と引用発明とは、「複数のチップを一つのベースウェハにボンディングする方法であって、前記チップが複数の層になって前記ベースウェハ上にスタックされ、これら垂直方向に隣接するチップならびに前記ベースウェハと、前記ベースウェハに垂直方向に隣接するチップ層との間に導電性接続が存在する方法において」の点で一致する。

イ.引用発明における「支持部材」は、本願補正発明における「担体」に相当し、
引用発明における「前記半導体チップが積層される前記シリコンウェハの状態の基板を処理する第1処理工程と、・・・・前記第1処理工程は、前記シリコンウェハの状態の基板の孔部等にCu(銅)を埋め込み、前記接続部としての接続端子を形成する工程と、前記シリコンウェハの状態の基板の強度を保つとともに、当該基板の裏面に対する処理を行う上で取り扱いを容易にするために当該基板の能動面側に支持部材を取り付ける工程と、前記シリコンウェハの状態の基板の裏面の処理(エッチング)を行って当該基板の厚みを減ずる工程、等を有し、」によれば、
引用発明においても、シリコンウェハの状態の基板の能動面側に支持部材を取り付ける工程、つまりシリコンウェハの状態の基板を支持部材上に固定する工程を有しているから、
本願補正発明と引用発明とは、「a)前記ベースウェハを担体上に固定するステップ」を有する点で一致する。

ウ.引用発明における「・・前記第1処理工程及び前記第2処理工程が終了した後、前記シリコンウェハの状態の基板上に前記半導体チップを積層する第3処理工程とからなり、・・・・前記第3処理工程は、前記第1処理工程によって能動面側に前記支持部材が取り付けられた前記シリコンウェハの状態の基板に対して前記第2処理工程で製造された前記半導体チップを積層すべき所定位置に複数段に亘り積層する工程と、・・」によれば、
引用発明においても、半導体チップをシリコンウェハの状態の基板上の積層すべき所定位置に複数段に亘り積層する工程を有しているから、
本願補正発明と引用発明とは、「b)チップの少なくとも一つの層を前記ベースウェハ上の所定の位置に配置するステップ」を有する点で一致する。

エ.引用発明における「前記半導体チップが積層される前記シリコンウェハの状態の基板を処理する第1処理工程と、・・・・前記第1処理工程及び前記第2処理工程が終了した後、前記シリコンウェハの状態の基板上に前記半導体チップを積層する第3処理工程とからなり、・・・・前記第3処理工程は、前記第1処理工程によって能動面側に前記支持部材が取り付けられた前記シリコンウェハの状態の基板に対して前記第2処理工程で製造された前記半導体チップを積層すべき所定位置に複数段に亘り積層する工程と、前記半導体チップが積層された前記シリコンウェハの状態の基板をリフロー装置に入れて、当該基板に形成された前記接続電極と前記半導体チップに形成された前記接続電極、及び前記半導体チップに形成された前記接続電極同士を無鉛ハンダにより接合する工程と、積層した前記半導体チップ及び前記シリコンウェハの状態の基板をトランスファーモールドにより一括して封止し、封止が完了すると、前記シリコンウェハの状態の基板から前記支持部材を取り外す工程と、を有する半導体装置の製造方法。」によれば、
(a)引用発明においても、半導体チップが積層されたシリコンウェハの状態の基板をリフロー装置に入れて、当該基板や半導体チップに形成された接続電極同士の無鉛ハンダによる接合を行う工程を有しており、リフロー装置において熱処理されることは自明であり、その際、シリコンウェハの状態の基板には支持部材が取り付けられたままである。
(b)そして、シリコンウェハの状態の基板に対して半導体チップを積層する工程が終わった後に、当該半導体チップが積層されたシリコンウェハの状態の基板をリフロー装置に入れるのであるから、半導体チップを積層する工程とリフロー装置による接合工程(熱処理工程)とは異なる装置内で実施されるものであることは明らかであるといえる。
したがって、本願補正発明と引用発明とは、後述の相違点を除いて「c)前記担体に固定された前記ベースウェハの上で、前記チップを熱処理するステップ、をこの順番で有し、前記ステップb)およびステップc)が異なる装置内で実施される方法。」る点で共通するといえる。

よって、本願補正発明と引用発明とは、
「複数のチップを一つのベースウェハにボンディングする方法であって、前記チップが複数の層になって前記ベースウェハ上にスタックされ、これら垂直方向に隣接するチップならびに前記ベースウェハと、前記ベースウェハに垂直方向に隣接するチップ層との間に導電性接続が存在する方法において、以下のステップ;
a)前記ベースウェハを担体上に固定するステップ、
b)チップの少なくとも一つの層を前記ベースウェハ上の所定の位置に配置するステップ、
c)前記担体に固定された前記ベースウェハの上で、前記チップを熱処理するステップ、
をこの順番で有し、
前記ステップb)およびステップc)が異なる装置内で実施される方法。」
である点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点1]
チップを熱処理するステップについて、本願補正発明では、「前記チップに圧力をかけて」行う旨特定するのに対し、引用発明では、そのような特定を有していない点。

[相違点2]
本願補正発明では、「前記担体が前記ベースウェハの大きさにほぼ相当している」と特定するのに対し、引用発明では、そのような明確な特定を有していない点。

(4)判断
上記相違点について検討する。
[相違点1]について
引用例の段落【0081】には、半導体チップと基板との接合を「無鉛ハンダに代えて金等の金属又は合金を用いても良い」と記載(上記「(2)オ.」を参照)され、金属接合によるボンディングも示唆されているところ、例えば原査定の拒絶の理由に引用された特開2006-179562号公報(段落【0054】を参照)、さらには特開平9-326418号公報(段落【0021】を参照)、特開2005-26564号公報(段落【0031】を参照)、特開2007-158200号公報(段落【0008】を参照)に記載のように、チップボンディング等における接続端子(電極)同士の接合において、ハンダを用いてリフロー(加熱溶融)する方法も、金属を用いて加熱・加圧(熱圧着)する方法もともに周知の技術事項であり、引用発明においても、ハンダを用いたリフロー(加熱溶融)による接合に代えて金属を用いた加熱・加圧(熱圧着)による方法を採用して相違点1に係る構成とすることは当業者であれば容易になし得ることである。

[相違点2]について
引用発明において、支持部材(本願補正発明における「担体」に相当)は基板の強度を保つとともに、薄板化した基板の裏面に対する処理を行う上で取り扱いを容易にするためのものであり、また、図14等も参照するに、特に取り扱いの容易性を考慮した場合、支持部材は基板とほぼ同じ大きさとするのが自然であり、そのように構成することは当業者であればごく普通になし得ることである。

そして、上記各相違点を総合的に判断しても本願補正発明が奏する効果は、引用発明及び周知の技術事項から当業者が十分に予測できたものであって、格別顕著なものがあるとはいえない。

(5)むすび
以上のとおり、本願補正発明は、引用発明及び周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について
平成26年7月3日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成25年5月14日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された、次のとおりのものである。
「【請求項1】
複数のチップ(3)を一つのベースウェハ(1)にボンディングする方法であって、前記チップ(3)が複数の層になって前記ベースウェハ(1)上にスタックされ、これら垂直方向に隣接するチップ(3)ならびに前記ベースウェハ(1)と、前記ベースウェハ(1)に垂直方向に隣接するチップ(3)層との間に導電性接続(7)が存在する方法において、以下のステップ;
a)前記ベースウェハ(1)を担体(5)上に固定するステップ、
b)チップ(3)の少なくとも一つの層を前記ベースウェハ(1)上の所定の位置に配置するステップ、
c)前記担体(5)に固定された前記ベースウェハ(1)の上で前記チップ(3)を熱処理するステップ、
をこの順番で有し、
前記ステップb)およびステップc)が異なる装置内で実施され、
前記担体(5)が前記ベースウェハ(1)の大きさにほぼ相当していることを特徴とする方法。」

(1)引用例
原査定の拒絶の理由で引用された引用例及びその記載事項は、前記「2.(2)」に記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願発明は、前記「2.」で検討した本願補正発明の発明特定事項である「前記チップ(3)を熱処理するステップ」について、「前記チップ(3)に圧力をかけて」行う旨の限定を省いたものに相当する。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、更に他の限定事項を付加したものに相当する本願補正発明が前記「2.(4)」に記載したとおり、引用発明及び周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明及び周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、その余の請求項について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-03-19 
結審通知日 2015-03-23 
審決日 2015-04-03 
出願番号 特願2011-500083(P2011-500083)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (H01L)
P 1 8・ 121- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 今井 拓也  
特許庁審判長 酒井 朋広
特許庁審判官 井上 信一
関谷 隆一
発明の名称 チップをウェハ上にボンディングするための方法  
代理人 久野 琢也  
代理人 高橋 佳大  
代理人 アインゼル・フェリックス=ラインハルト  

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