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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F16F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F16F
管理番号 1304604
審判番号 不服2014-20154  
総通号数 190 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-10-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-10-06 
確定日 2015-08-20 
事件の表示 特願2010- 10353「制振ダンパ」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 8月 4日出願公開、特開2011-149476〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成22年1月20日の出願であって、平成26年7月4日付け(平成26年7月8日:発送日)で拒絶査定がなされ、これに対し、平成26年10月6日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に、手続補正書が提出されて明細書及び特許請求の範囲を補正する手続補正がなされたものである。

第2.平成26年10月6日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成26年10月6日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.本件補正の内容
平成26年10月6日付けの手続補正書による手続補正(以下、「本件補正」という。)は、特許請求の範囲の請求項1について、本件補正により補正される前の(すなわち、平成25年12月27日付けの手続補正書により補正された)下記Aに示す記載を、下記Bに示す記載へと補正するものである。
A 本件補正前の特許請求の範囲の請求項1
「【請求項1】
シリンダー及び該シリンダーの長さ方向に沿って延びるピストンロッドを具え、エラストマー成分に補強性充填剤を配合してなるエラストマー組成物と粉体とを含有する減衰材料を、前記シリンダー内面と前記ピストンロッド外面との間に圧入し、弾性材料を含み前記シリンダー内面と前記ピストンロッド外面との間に跨るシール材により、前記減衰材料のシリンダー長さ方向両端を拘束し、そして前記シール材が、前記ピストンロッドの長さ方向軸を一周する筒状形状の、弾性材料と剛性材料とを、シリンダー径方向に交互に積層した構造であることを特徴とする制振ダンパ。」

B 本件補正後の特許請求の範囲の請求項1
「【請求項1】
シリンダー及び該シリンダーの長さ方向に沿って延びるピストンロッドを具え、エラストマー成分に補強性充填剤を配合してなるエラストマー組成物と粉体とを含有する減衰材料を、前記シリンダー内面と前記ピストンロッド外面との間に圧入し、弾性材料を含み前記シリンダー内面と前記ピストンロッド外面との間に跨るシール材により、前記減衰材料のシリンダー長さ方向両端を拘束し、そして前記シール材が、前記ピストンロッドの長さ方向軸を一周する筒状形状の、弾性材料と剛性材料とを、シリンダー径方向に交互に積層した構造であり、前記剛性材料が金属、セラミック、または強化プラスチックであることを特徴とする制振ダンパ。」(アンダーラインは補正箇所を示すもので、請求人が付したものである。)

2.本件補正の目的
本件補正は、本件補正前の請求項1における「剛性材料」を「金属、セラミック、または強化プラスチック」と限定するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、本件補正後の請求項1に関する補正は、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

3.独立特許要件
そこで、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下 、「本件補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて、以下に検討する。
3-1.引用刊行物とその記載事項
(1)引用発明及び刊行物1に記載された技術事項
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願日前に頒布された刊行物である特開平3-338号公報(以下、「刊行物1」という。)には、「構造物用エネルギー吸収装置」に関して、図面とともに、次の事項が記載されている。
ア.「イ.発明の目的
〔産業上の利用分野〕
この発明は、建築物・配管等の構造物に作用する地震等の周期的エネルギーを吸収するいわゆる構造物用エネルギー吸収装置、特にはシリンダ型のエネルギー吸収装置に関し、更に詳しくは、金属塑性物質のせん断変形に伴うエネルギー吸収作用を利用したエネルギー吸収装置に関する。」(第1ページ右下欄第6ないし13行)

イ.「〔作用〕
構造物間に地震動などの強大な周期エネルギーが作用し、構造物が揺れると、構造物間の相対変位は本エネルギー吸収装置のシリンダ1とロッド2との軸線方向の相対変位となる。
このシリンダ1とロッドとの相対変位により、鉛室3に封入された鉛P及び該鉛室3の両側に配されたゴム体4,5はそれぞれせん断変形を受け、鉛Pのせん断抵抗及びゴム体4,5の変形抵抗に伴うエネルギー吸収作用により周期エネルギーを吸収し、構造物間の揺れを減衰させる。」(第2ページ右上欄第17行ないし左下欄第7行)

ウ.「このエネルギー吸収装置Sは、直円筒状のシリンダ1と、該シリンダ1内の中心軸に沿って一端を突出して配される円柱状のロッド2と、シリンダ1とロッド2との環状空間に鉛Pを封入した鉛室3を介して相対向して配される第1ゴム体4及び第2ゴム体5と、該第1及び第2ゴム体4,5を固定保持する固定リング6,7と、を含み、また、シリンダ1にはブラケット8が、ロッド2の突出部にはブラケット9が取り付けられてなる。」(第2ページ左下欄第16行ないし右下欄第4行)

エ.「せん断変形室としての鉛室3は、シリンダ1の縮径部10とロッド2の拡径部14との間隙において、第1ゴム体4及び第2ゴム体5によって挟まれる閉塞された環状空間よりなり、該鉛室3にエネルギー吸収体としての鉛Pが封入される。使用される鉛Pは純粋鉛のほかに、鉛合金あるいは鉛その他の物質との混合物を含む。
ゴム体4,5はともに同一の構成よりなり、外側スリーブ18と、内側スリーブ19と、これらのスリーブ18,19間に介装されるゴム本体20とからなり、これらは加硫接着により一体化されている。外側・内側スリーブ18,19は所定の厚さを有し、外側スリーブ18の外径及び長さはシリンダ1の内側の拡径部11に等しく、内側スリーブ19の内径及び長さはロッド2の外側の縮径部15に等しい。これによって、ゴム体4,5はその外側スリーブ18をもってシリンダ1の拡径部11に、また、内側スリーブ19をもってロッド2の縮径部15に密接して嵌合される。」(第3ページ左上欄第3行ないし右上欄第1行)

オ.「第4図はこの動きを模式的に示す。今、ロッド2が図中右方向(またはシリンダ1が左方向)へ移動したとすると、ゴム体4,5はこの変位に容易に追従するものであり、鉛Pはこれらのゴム体4,5間に拘束されたものであり、ゴム体4,5に押されて変形する。」(第3ページ右下欄第8ないし13行)

カ.「第7図に示すゴム体4Bは、ゴム本体部20を補強板27とゴム弾性体28とを交互に積層したいわゆる積層ゴム構造を採る。」(第4ページ右上欄第11ないし13行)

キ.「(B)エネルギー吸収体として、鉛のほか、(1)(審決注:公報では○付き数字の1である。以下、同様。)錫、亜鉛、アルミニウム、ナトリウム、銅などの金属、(2)(審決注:公報では○付き数字の2である。以下、同様。)鉛-錫合金、亜鉛-アルミニウム-銅などの超塑性合金、あるいは、(3)(審決注:公報では○付き数字の3である。以下、同様。)ガラスビーズ、金属粉(鋼球を含む)、セラミック粒などの粒状物質、が使用される。更に、鉛、あるいは上記(1)及び(2)の物質が選ばれる場合は、これらの物質の2以上の組合わせも可能である。(3)においても、2以上の組合わせも適宜採用される。
上記(1)及び(2)の物質をエネルギー吸収体として使用する場合においては、これらの物質は鉛体と同じくその塑性流動化に伴うエネルギー吸収により減衰がなされる。」(第4ページ左下欄第1ないし13行)

ク.記載事項ウ.の「このエネルギー吸収装置Sは、直円筒状のシリンダ1と、該シリンダ1内の中心軸に沿って一端を突出して配される円柱状のロッド2・・・(中略)・・・と、を含み、」との記載及び第1図によれば、エネルギー吸収装置Sは、シリンダ1及び該シリンダ1の長さ方向に沿って延びるロッド2を具えていることが看てとれる。

ケ.記載事項イ.の「鉛Pのせん断抵抗及びゴム体4,5の変形抵抗に伴うエネルギー吸収作用により周期エネルギーを吸収し、構造物間の揺れを減衰させる。」との記載及び記載事項エ.の「せん断変形室としての鉛室3は、シリンダ1の縮径部10とロッド2の拡径部14との間隙において、第1ゴム体4及び第2ゴム体5によって挟まれる閉塞された環状空間よりなり、該鉛室3にエネルギー吸収体としての鉛Pが封入される。」との記載並びに第1図によれば、鉛Pからなる減衰材料を、前記シリンダ1内面と前記ロッド2外面との間に封入することが分かる。

コ.記載事項エ.の「ゴム体4,5はともに同一の構成よりなり、外側スリーブ18と、内側スリーブ19と、これらのスリーブ18,19間に介装されるゴム本体20とからなり、これらは加硫接着により一体化されている。」との記載、記載事項オ.の「今、ロッド2が図中右方向(またはシリンダ1が左方向)へ移動したとすると、ゴム体4,5はこの変位に容易に追従するものであり、鉛Pはこれらのゴム体4,5間に拘束されたものであり、ゴム体4,5に押されて変形する。」との記載並びに第1図及び第3図によればゴム本体20を含みシリンダ1とロッド2外面との間に跨るゴム体4,5は、鉛Pのシリンダ1長さ方向両端を拘束することが分かり、また、ゴム体4,5が、ロッド2の長さ方向軸を一周する筒状形状であることが看てとれる。

サ.記載事項カ.の「第7図に示すゴム体4Bは、ゴム本体部20を補強板27とゴム弾性体28とを交互に積層したいわゆる積層ゴム構造を採る。」との記載並びに第1図,第3図及び第7図によればゴム体4Bは、ロッド2の長さ方向軸を一周する筒状形状のゴム弾性体28と補強板27とを、シリンダ1径方向に交互に積層した積層ゴム構造であることが看てとれる。

上記記載事項及び認定事項並びに図示事項を総合し、本件補正発明の記載ぶりに則って整理すると、刊行物1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

「シリンダ1及び該シリンダ1の長さ方向に沿って延びるロッド2を具え、鉛Pからなる減衰材料を、前記シリンダ1内面と前記ロッド2外面との間に封入し、ゴム本体20を含み前記シリンダ1と前記ロッド2外面との間に跨るゴム体4,5により、前記鉛Pからなる減衰材料のシリンダ1長さ方向両端を拘束し、そして前記ゴム体4,5が、前記ロッド2の長さ方向軸を一周する筒状形状であるエネルギー吸収装置S。」

また、上記記載事項(特に、記載事項カ.参照)及び認定事項(特に、認定事項サ.参照)並びに図示内容(特に、第7図参照。)を総合すると、刊行物1には、次の技術事項(以下、「刊行物1に記載された技術事項」という。)が記載されている。

「ゴム体4Bを、前記ロッド2の長さ方向軸を一周する筒状形状のゴム弾性体28と補強板27とを、シリンダ1径方向に交互に積層した積層ゴム構造とする技術。」

(2)刊行物2に記載された技術事項
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願日前に頒布された刊行物である国際公開2009/057500号(以下、「刊行物2」という。)には、「免震構造体のプラグ用組成物」に関して、図面とともに、次の事項が記載されている。
タ.「[0006]しかしながら、上記したような従来の鉛プラグの代替技術では、プラグとして十分な減衰特性、変位追従性等を有する免震構造体用プラグを得ることができないため、性能面で改善の余地がある。」

チ.「[0007]そこで、本発明の目的は、上記従来技術の問題を解決し、十分な減衰性能、変位追従性等を有する免震構造体用プラグを提供することが可能な免震構造体のプラグ用組成物を提供することにある。また、本発明の他の目的は、かかる組成物を用いた免震構造体用プラグ及び該プラグを用いた免震構造体を提供することにある。
[0008]本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、エラストマー成分に補強性充填剤を配合してなるエラストマー組成物と補強性充填剤以外の粉体とを含有する組成物を免震構造体のプラグに使用することで、十分な減衰性能、変位追従性等を有する免震構造体が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。」

ツ.「[0056]<評価>
中央に円筒状の中空部を有し、外径が225mmで、剛性を有する剛性板[鉄板]と弾性を有する弾性板[加硫ゴム(G'=0.4MPa)]とが交互に積層されてなる積層体の中空部に、上記免震構造体用プラグを圧入して、図1に示す構造の免震構造体を作製した。なお、プラグの体積は、積層体の中空部の体積の1.01倍とした。上記免震構造体用プラグに対して、下記の方法で減衰性能、追従性、繰り返し安定性及び成形加工性を評価した。結果を表1?3に示す。」

上記記載事項及び図示内容を総合すると、刊行物2には、次の技術事項(以下、「刊行物2に記載された技術事項」という。)が記載されている。

「減衰材料が、エラストマー成分に補強性充填剤を配合してなるエラストマー組成物と粉体とを含有するものであって、当該減衰材料を、空間に圧入する技術。」

3-2.本件補正発明と引用発明との対比
本件補正発明と引用発明とを対比すると、引用発明における「シリンダ1」は、その技術的意義及び機能からみて、本件補正発明における「シリンダー」に相当し、以下同様に、「ロッド2」は「ピストンロッド」に、「ゴム本体20」は「弾性材料」に、「ゴム体4,5」は「シール材」に、「エネルギー吸収装置S」は「制振ダンパ」に、それぞれ相当する。
また、 引用発明における「鉛Pからなる減衰材料」は、「減衰材料」という限りにおいて、本件補正発明における「エラストマー成分に補強性充填剤を配合してなるエラストマー組成物と粉体とを含有する減衰材料」と共通する。
また、 引用発明における「封入し」は、「配設し」という限りにおいて、本件補正発明における「圧入し」と共通する。

したがって、本件補正発明と引用発明は、
「シリンダー及び該シリンダーの長さ方向に沿って延びるピストンロッドを具え、減衰材料を、前記シリンダー内面と前記ピストンロッド外面との間に配設し、弾性材料を含み前記シリンダーと前記ピストンロッド外面との間に跨るシール材により、前記減衰材料のシリンダー長さ方向両端を拘束し、そして前記シール材が、前記ピストンロッドの長さ方向軸を一周する筒状形状の構造である制振ダンパ。」
の点で一致し、以下の点で相違している。

[相違点1]
本件補正発明においては、「減衰材料」が、「エラストマー成分に補強性充填剤を配合してなるエラストマー組成物と粉体とを含有」するものであって、「シリンダー内面とピストンロッド外面との間に圧入」されるのに対し、引用発明においては、「減衰材料」が、「鉛Pb」であって、「シリンダ1(本件補正発明の「シリンダー」に相当)内面と前記ロッド2(本件補正発明の「ピストンロッド」に相当)との間に封入される点(以下、「相違点1」という。)。

[相違点2]
本件補正発明においては、「シール材」が、弾性材料と剛性材料とを、シリンダー径方向に交互に積層した構造であり、前記剛性材料が金属、セラミック、または強化プラスチックであるのに対し、引用発明においては、ゴム体4,5(本件補正発明の「シール材」に相当)が、弾性材料と剛性材料とを、シリンダー径方向に交互に積層した構造ではなく、剛性材料も特定されていない点(以下、「相違点2」という。)。

3-3.当審の判断
まず、相違点1について検討する。
刊行物1の記載事項タ.の「(B)エネルギー吸収体として、鉛のほか、(1)錫、亜鉛、アルミニウム、ナトリウム、銅などの金属、(2)鉛-錫合金、亜鉛-アルミニウム-銅などの超塑性合金、あるいは、(3)ガラスビーズ、金属粉(鋼球を含む)、セラミック粒などの粒状物質、が使用される。」との記載からみて、引用発明における「減衰材料」として鉛以外のものを用いることが許容されていると解される。
他方、刊行物2の記載事項タ.の「従来の鉛プラグの代替技術では、プラグとして十分な減衰特性、変位追従性等を有する免震構造体用プラグを得ることができない。」との記載、及び、刊行物2に記載された技術事項を併せて読めば、「減衰材料」として、「エラストマー成分に補強性充填剤を配合してなるエラストマー組成物と粉体とを含有するもの」を、鉛に代えて、空間に圧入することが開示されている。
そうすると、刊行物1及び刊行物2に接した当業者であれば、引用発明に刊行物2に記載された事項を適用して、相違点1に係る本件補正発明の発明特定事項とすることは当業者が容易に想到し得たことである。

次に、相違点2について検討する。
前記刊行物1に記載された技術事項における「ゴム体4B」は、その技術的意義及び機能からみて、本件補正発明における「シール材」に相当し、以下同様に、「ロッド2」は「ピストンロッド」に、「ゴム弾性体28」は「弾性材料」に、「補強板27」は「剛性材料」に、「シリンダ1」は「シリンダー」に、それぞれ相当するから、刊行物1に記載された技術事項を本件補正発明の用語を用いて表現すると、「シール材を、ピストンロッドの長さ方向軸を一周する筒状形状の弾性材料と剛性材料とを、シリンダー径方向に交互に積層した積層ゴム構造とする技術。」ということができる。
また、減衰材料に隣接して設けられる積層ゴム構造体に用いる剛性材料を金属とすることは周知の技術(以下、「周知技術」という。例えば、特開平3-51543号公報の「硬質板(鋼板)24」(第3ページ左下欄第15行及び第16行)及び特開2005-256913号公報の「鋼製の円筒状の剛性部材33」(段落【0031】)等参照。)であるといえる。
そして、刊行物1に記載された技術事項は、引用発明の他の実施例として記載されているものであるから、引用発明に刊行物1に記載された技術事項を適用する動機付けが十分にあるといい得るものであって、引用発明に刊行物1に記載された技術事項を適用する際に上記周知技術を参酌することにより、剛性部材を金属として、相違点2に係る本件補正発明の発明特定事項とすることは当業者が容易に想到し得たことである。

また、本件補正発明は、全体としてみても、本願発明は、引用発明、刊行物1及び2に記載された技術事項並びに上記周知技術から予測できる作用効果以上の顕著な作用効果を奏するとも認められない。

したがって、本件補正発明は、本願発明は、引用発明、刊行物1及び2に記載された技術事項並びに上記周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際に独立して特許を受けることができないものである。

3-4.むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3.本願発明について
1.本願発明の内容
平成26年10月6日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本件出願の請求項1ないし10に係る発明は、平成25年12月27日付けの手続補正により補正された明細書及び特許請求の範囲並びに願書に最初に添付した図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1ないし10に記載された事項により特定されるとおりのものと認められ、そのうち、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、前記第2.[理由]1.Aに記載したとおりである。

2.引用刊行物とその記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物1(特開平3-338号公報)及び刊行物2(国際公開2009/057500号)の記載事項は、前記第2.[理由]3-1.に記載したとおりである。

3.対比・判断
本件補正発明は、前記第2.[理由]2.で検討したように、本願発明の発明特定事項を限定したものに相当する。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含む本件補正発明が、前記第2.[理由]3-3.に記載したとおり、引用発明、刊行物1及び2に記載された技術事項並びに上記周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明、刊行物1及び2に記載された技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.まとめ
以上のとおり、本願発明は、引用発明、刊行物1及び2に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第4.むすび
したがって、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-06-11 
結審通知日 2015-06-16 
審決日 2015-07-03 
出願番号 特願2010-10353(P2010-10353)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (F16F)
P 1 8・ 121- Z (F16F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 村山 禎恒  
特許庁審判長 小柳 健悟
特許庁審判官 内田 博之
中川 隆司
発明の名称 制振ダンパ  
代理人 冨田 和幸  
代理人 杉村 憲司  
代理人 高橋 林太郎  

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