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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01N |
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管理番号 | 1304816 |
審判番号 | 不服2014-8337 |
総通号数 | 190 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2015-10-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2014-05-07 |
確定日 | 2015-08-27 |
事件の表示 | 特願2008-209489「透過光検出装置、透過光検出方法、透過光検出プログラム及びシート材の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成22年 2月25日出願公開、特開2010- 44004〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成20年8月18日の出願であって、平成24年8月22日付けで拒絶理由が通知され、同年10月25日付けで意見書が提出され、平成25年4月26日付けで拒絶理由が通知され、同年7月8日付けで意見書が提出されたが、平成26年1月30日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年5月7日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。 第2 本願発明 本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、願書に最初に添付した特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものと認める。 「 シート状の測定対象の幅方向に沿って、少なくとも前記測定対象の一方の端縁から他方の端縁に至るまでの範囲に光を照射する面光源部と、 前記測定対象を介して前記面光源部からの出射光を受光できる位置に設置されて、前記測定対象を透過する光を検出する検出用撮像部と、 前記測定対象を介さずに前記面光源部からの出射光を受光できる位置に設置され、前記面光源部の出射面の光量を測定する補正用撮像部とを備えることを特徴とする透過光検出装置。」 第3 引用例 1 原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である特開平10-260027号公報(以下「引用例1」という。)には、次の事項が記載されている(下線は当審において付加したものである。また、表記上の制約があるため、丸囲み付きの数字は、数字の前に「○」を付し、「○1」のように表記した。)。 (1)「【0020】 【発明の実施の形態】図1は本発明の絶縁テープの異物検出除去装置の概略の構成を示す。XYテーブル1はその面に平行な二方向に移動自在なテーブルである。移動主軸方向をX軸とY軸とする。XYテーブル1には3つの主な部材が取り付けられる。線状の光を発生する光源2と、これに対向して設置され線状光源2からの透過光強度を検出するカメラ3と、これらの装置と一定の距離にあるパンチ4である。これらの3部材はXYテーブル1に固定されているから同時に平行移動する。相対的な位置関係は不動である。 【0021】光源2・カメラ3の間、パンチ4の上下の腕の間に絶縁テープ5が張られている。絶縁テープは透明叉は半透明である。短い場合、テープは固定されていても良い。しかしテープが長い場合は一定長さずつ送りその長さ分だけ検査除去作業をする。線状光源2の長手方向と直交する方向に絶縁テープが一定長さLずつ送られる。絶縁テープの幅をWとする。1回の検査領域はL×Wである。テープの送り方向をY方向、テープの幅方向をX方向とする。XYテーブル1は、X方向には少なくともWだけは移動可能であり、Y方向には少なくともLだけ移動可能である。つまりXYテーブルは少なくとも検査領域L×Wを覆うようにXY平面を自在に平行移動することができる。 【0022】線状光源2はスリットから光を上方に出すようになっている。線状の光が絶縁テープを透過する。線状の光がカメラ3にはいる。これはTVカメラであっても良いし、線状にアレイがならぶCCDあるいは線状にフォトダイオードが並んだPDアレイであっても良い。要するにX方向の光強度の変化が検知できるような光電変換センサであれば良いのである。光電変換センサというのは煩雑であるからこれらを総称して以後センサのことをカメラと表現する。」 (2)「【0026】カメラ中心Dは(x,y)にあるとしているから、刃体の中心Cは(x-d,y-b)と表す事ができる。カメラに入る光のX方向の長さを2qとする。テープ上の(x-q,y)から(x+q,y)の線分上の光がカメラに入る。光線の最大広がり2qはテープの幅Wよりも大きい(2q>W)。テープは連続体である。シートのようにそのままでも扱うことができる。しかし、より一般的には供給ローラから巻きだしてゆき巻き取りローラによって巻き取ってゆくようにする。一定長さLだけ繰り出してW×Lの長方形の範囲を被測定範囲とする。測定時にはテープは静止している。それでテープの上の面は静止系座標によって表現できる。」 (3)「【0033】 【実施例】図2は本発明の絶縁テープ異物検出除去装置の概略の正面図である。絶縁テープ5は初めサプライ10に巻き付けられている。サプライ10から繰り出されたテープはローラ11、ダンサー12、ローラ13を経て検出除去部にはいる。その部分を通過してテープは巻き取りローラ14に巻き取られる。前述の異物検出除去部は、線状の光を発する光源2、そのテープ透過光を検出するラインセンサ16、ラインセンサと一定位置関係にあるパンチ4と、これらの部材を担ってxy方向に自在に動き得るXYテーブルとよりなる。簡単のため、図2にはXYテーブルを表していないが、XYテーブル1はパンチ4、光源2、ラインセンサ16を一体としてxy平面上で変位させるものである。」 (4)「【0036】図3は検査部の概略を示す。線状光源2を直接テープの直下におく空間的な余裕がない場合は別異の箇所に光源装置21を設けライトガイド27によって投光装置28へ光を導くようにする。投光装置28の直上にラインセンサ16があり線状光源のテープ透過光がラインセンサ16に入る。光強度が電気信号に変換される。ラインセンサであるから一次元の光強度分布を求めることができる。X方向にならぶM個のCCDセルあるいはM個のフォトダイオードアレーなどによって検出部が構成される。 【0037】その信号はシェーディング補正ユニット22を通して光源の照明むらやセンサの感度むらが補正される。この信号はインタフェースボード23を通ってパソコン24に入力される。ラインセンサに入ったX方向の透過光強度(明度)分布が入力されるのである。」 (5)「【0038】図4によって検査ロジックを説明する。光源からの線状の光(X方向に伸びる)が絶縁テープを通ってラインセンサに入る。ラインセンサは一次元センサでありX方向の光強度分布波形を与える。一次元CCDセンサが適する。しかし光強度を電気信号に変換できればそれでよいので、フォトダイオードのアレーでもよい。さらに二次元センサであるTVカメラを用いてX方向に並ぶ画素の諧調を利用してもよい。カメラはかさばるが後で述べるような異物の寸法を計測する場合は一次元センサよりも便利である。 【0039】STARTからロジックが開始する。基準波形記憶というのはテープのない状態でラインセンサの出力波形(基準波形○1)をメモリに取り込むということである。右に分布の例を示す。横軸はX方向の位置である。縦軸は輝度である。ラインセンサであるから直線に沿う空間分布がもとまる。テープを通さないのであるから理想的には一様強度であるはずである。しかし光源の強度分布に偏りがあったりラインセンサの感度にばらつきがあるので必ずしも一様分布にはならない。照度むらをもつ。しかし基準波形をこのように初めに求めておくので、光源のパワーばらつき、受光素子の感度ばらつきがあっても差し支えないのである。これら二つの要因のばらつきを含めて照度むらという。これは光源自身のパワー分布を与えるものであるから基準波形と呼ぶ。 【0040】次にあるyの値にXYテーブルを固定しテープを通した透過光をラインセンサ(カメラ)に入れる。「テープを撮像し、ラインセンサの出力波形を得る」と記している。その出力波形○2は透過光のX方向の光強度分布である。カメラ出力波形取込によって右のような分布が例えば得られるとする。テープが清浄な場合、テープのない場合のグラフを少し低くしたグラフ(照度むらだけ)が得られるはずである。ここでは輝度の局所的な落ち込みが見られる。これは異物があって遮光しており暗くなるためである。異物は、落ち込みが見られるX座標の位置にある。 【0041】次にテープ波形○2から基準波形○1を差し引く。すると照度むらの部分が差し引かれてなくなってしまう。○2-○1である。これが真のテープ透過光の強度を反映した波形である。すぐ右のグラフに示すように、異物による落ち込みはそのまま残る。その他の部分は大体平坦になる。」 (6)【図1】 「 」 2 引用例1に記載された発明の認定 上記1(1)ないし(6)を含む引用例1全体の記載を総合すると、引用例1には、 「 その面に平行な二方向に移動自在なテーブルであるXYテーブル1と、 XYテーブル1に取り付けられる3つの主な部材である、線状光源2、これに対向して設置され線状光源2からの透過光強度を検出するカメラ3、及び、これらの装置と一定の距離にあるパンチ4とを有し、 線状光源2とカメラ3の間、パンチ4の上下の腕の間に絶縁テープ5が張られ、 線状光源2はスリットから光を上方に出すようになっており、線状の光が絶縁テープ5を透過し、線状の光がカメラ3にはいり、 カメラ3に入る光のX方向の長さを2qとすると、光線の最大広がり2qは絶縁テープ5の幅Wよりも大きく、 絶縁テープ5のない状態でカメラ3の出力波形である基準波形○1をメモリに取り込み、絶縁テープ5を通した透過光をカメラ3に入れた出力波形であって、透過光のX方向の光強度分布であるテープ波形○2から基準波形○1を差し引き、照度むらの部分が差し引かれてなくなってしまうようにしたシェーディング補正ユニット22を備えた、絶縁テープの異物検出除去装置。」 の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。 3 原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である特開昭61-179664号公報(以下「引用例2」という。)には、次の事項が記載されている(下線は当審において付加したものである。)。 (1)第1頁下段右欄6?9行 「 この発明は光学的読取装置の発光素子アレイ、特にその各発光素子の発光量のバラツキを少なくするようにした発光素子アレイの発光量制御方法に関する。」 (2)第2頁上段左欄1?9行 「 しかしながら、各発光素子(ドットと称する)からの光の発光量にバラツキがあると、各ドット間に輝度差が生じてしまうので、例えば、ファクシミリ装置においてプリントアウトすると再生情報に濃度むらが生じてしまう。 そこで従来は、レーザトリミング装置を用いて各発光素子の抵抗をトリミングして発光素子に供給する電流量を個別に調整して各素子の発光量を揃える方法が取られている。」 (3)第2頁上段左欄16?18行 「 さらに、このトリミング方法では、発光量の再設定を行えず、従って発光量の変化に対処出来ないという欠点もあった。」 (4)第2頁上段右欄6?15行 「 光学読取装置において発光素子アレイからの光を利用して原稿情報を読取用受光素子で読取る際の、当該発光素子アレイの発光量を制御するに当り、 発光素子からの光をその発光素子に対応して設けた補助受光素子で受光し、その補助受光素子から受光量に応じて得られる出力をその発光素子にフィードバックさせ、このフィードバック量に応じてその発光素子の発光量を制御することを特徴とする。」 (5)第2頁下段右欄11?16行 「 このようにすれば、発光素子10の発光量に応じた補助受光素子からの出力を常にファイードバック(当審注:「ファイードバック」は「フィードバック」の誤記と認める。)させながら発光量の制御を行っているので、発光素子やその他の回路素子の経年変化或いは温度等による一時的な変化にも影響されずに、発光素子アレイの発光量の制御を行うことが出来る。」 (6)第3頁下段右欄12行?第4頁上段左欄2行 「 第5図はこの発明を関係する各構成成分の配置関係を概略的に示す線図である。発光素子アレイ10の各ドットからの発光の一部はこれを受光するよに(当審注:「よに」は「ように」の誤記と認める。)配置した長尺状のホトダイオード等の受光素子アレイ20で検出され、前述したようにこの発明の方法で制御されてドットの発光量が均一となるようにされている。従って、各ドットからの均一となった光で光学系回路16を介して原稿30を照射し、例えばその反射光を読取用受光素子18で検出すれば、原稿30に描かれた情報を読取ることが出来る。」 (7)第5図 「 」 (8)上記摘記事項(7)の第5図には、発光素子アレイ10からの発光を原稿を介さずに直接受光できる位置に補助受光素子20を設置することが示されている。 4 引用例2に記載された技術の認定 上記3(1)ないし(8)を含む引用例2全体の記載を総合すると、引用例2には、 「 光学読取装置において発光素子アレイからの光を利用して原稿情報を読取用受光素子で読取る際の、当該発光素子アレイの発光量を制御するに当り、 発光素子アレイの各ドットからの発光の一部を原稿を介さずに直接受光できる位置に設置した長尺状のホトダイオードの受光素子アレイである補助受光素子で検出し、その補助受光素子から受光量に応じて得られる出力をその発光素子にフィードバックさせ、このフィードバック量に応じてその発光素子の発光量を制御する技術。」(以下「引用発明2」という。) の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されている。 第4 本願発明と引用発明との対比 1 対比 本願発明と引用発明とを対比する。 (1) ア 引用発明の「絶縁テープ5」がシート状であることは、明らかである。 イ 引用発明において、「絶縁テープ5」は異物検出除去の対象であり、異物検出の過程でカメラ3により透過光のX方向の光強度分布が検出されるものであるから、引用発明の「絶縁テープ5」は、透過光のX方向の光強度分布の測定対象にほかならない。 ウ 上記ア及びイから、引用発明の「絶縁テープ5」は、本願発明の「シート状の測定対象」に相当する。 エ 引用発明は、「線状光源2」の「スリット」から出た「線状の光が絶縁テープ5を透過し、線状の光がカメラ3にはいり、カメラ3に入る光のX方向の長さを2qとすると、光線の最大広がり2qは絶縁テープ5の幅Wよりも大きく」なっているものであることから、引用発明の「線状光源2」の「スリット」から出た「線状の光」は、「絶縁テープ5」の幅方向の一方の端部から他方の端部に至るまでの範囲に照射されるものといえる。 オ 引用発明の「線状光源2」と本願発明の「面光源部」とは、「光源部」である点において共通する。 カ 以上のことから、引用発明の「スリット」から出た「線状の光が絶縁テープ5を透過し、線状の光がカメラ3にはいり、カメラ3に入る光のX方向の長さを2qとすると、光線の最大広がり2qは絶縁テープ5の幅Wよりも大きく」なっている「線状光源2」と、本願発明の「シート状の測定対象の幅方向に沿って、少なくとも前記測定対象の一方の端縁から他方の端縁に至るまでの範囲に光を照射する面光源部」とは、「シート状の測定対象の幅方向に沿って、少なくとも前記測定対象の一方の端縁から他方の端縁に至るまでの範囲に光を照射する光源部」である点において共通する。 (2) ア 引用発明の「カメラ3」は、「線状光源2」に「対向して設置され」、「線状光源2」の「スリット」から出た「線状の光が絶縁テープ5を透過し、線状の光」がはいるものであることから、「絶縁テープ5」を介して「線状光源2」からの「線状の光」を受光できる位置に設置されていることは明らかである。 イ 引用発明の「カメラ3」は「線状光源2からの透過光強度を検出する」ものであるところ、「絶縁テープ5を透過し」た「線状の光がカメラ3にはい」ることから、引用発明の「カメラ3」が、「絶縁テープ5を透過し」た「線状の光」の「透過光強度を検出する」ものであることは明らかである。 ウ 引用発明の「カメラ3」は、その機能において、本願発明の「検出用撮像部」に相当する。 エ 以上のことから、引用発明の「線状光源2」に「対向して設置され」、「線状光源2」の「スリット」から出た「線状の光が絶縁テープ5を透過し、線状の光」がはいり、「線状光源2からの透過光強度を検出するカメラ3」と、本願発明の「前記測定対象を介して前記面光源部からの出射光を受光できる位置に設置されて、前記測定対象を透過する光を検出する検出用撮像部」とは、「前記測定対象を介して前記光源部からの出射光を受光できる位置に設置されて、前記測定対象を透過する光を検出する検出用撮像部」である点において共通する。 (3) ア 引用発明は、「テープ波形○2から基準波形○1を差し引き、照度むらの部分が差し引かれてなくなってしまうように」するものであるから、「絶縁テープ5のない状態でカメラ3の出力波形である基準波形○1をメモリに取り込」む際に、カメラ3が線状光源2の光を受光し、線状光源2の出射面の光量を測定していることは明らかである。 イ 引用発明の「カメラ3」は、シェーディング補正を行うために「絶縁テープ5のない状態で」「出力波形である基準波形○1を」出力することから、補正用のカメラであるといえ、本願発明の「補正用撮像部」に相当する。 ウ 以上のことから、引用発明の「絶縁テープ5のない状態で」「出力波形である基準波形○1を」出力する「カメラ3」と、本願発明の「前記測定対象を介さずに前記面光源部からの出射光を受光できる位置に設置され、前記面光源部の出射面の光量を測定する補正用撮像部」とは、「前記測定対象を介さずに前記光源部からの出射光を受光する、前記面光源部の出射面の光量を測定する補正用撮像部」である点において共通する。 (4) ア 引用発明の「絶縁テープの異物検出除去装置」は、「線状光源2からの透過光強度を検出するカメラ3」を有していることから、透過光を検出する装置であることは明らかである。 イ よって、引用発明の「絶縁テープの異物検出除去装置」は、本願発明の「透過光検出装置」に相当する。 2 一致点 してみると、本願発明と引用発明とは、 「 シート状の測定対象の幅方向に沿って、少なくとも前記測定対象の一方の端縁から他方の端縁に至るまでの範囲に光を照射する光源部と、 前記測定対象を介して前記光源部からの出射光を受光できる位置に設置されて、前記測定対象を透過する光を検出する検出用撮像部と、 前記測定対象を介さずに前記光源部からの出射光を受光する、前記面光源部の出射面の光量を測定する補正用撮像部とを備える透過光検出装置。」 の発明である点で一致し、次の2点で相違する。 3 相違点 (相違点1) 光源部が、本願発明は、「面光源部」であるのに対し、引用発明は、「線状光源2」である点。 (相違点2) 測定対象を介さずに前記面光源部からの出射光を受光する補正用撮像部が、本願発明においては、「出射光を受光できる位置に設置され」るのに対し、引用発明においては、そのような特定はない点。 第5 当審の判断 1 上記各相違点について検討する。 (1)相違点1について 引用発明の「線状光源2」は、「スリットから光を上方に出すようになって」いるところ、「スリット」が「有限の幅」を有するものであることは技術常識であるから、引用発明の「線状の光」は現実には長い面状の光であり、引用発明の「線状光源2」は、面光源部であるといえる。 よって、相違点1は、実質的な相違点ではない。 加えて、引用発明の「線状光源2」が面光源部であるといえないとしても、透過光検出において面光源部を用いることは、本願出願前において周知であり(例えば、特開平9-300596号公報の段落【0014】等参照。)、引用発明において線状光源2に代えて面光源部を用いることに、何ら困難性はない。 (2)相違点2について ア 相違点2は、本願発明は「補正用撮像部」を「検出用撮像部」とは別体の撮像部で構成し、面光源部からの出射光を直接受光できる位置に「補正用撮像部」を設置しているのに対し、引用発明はそのような特定をしていない(補正用の出力波形の取得と透過光強度の検出とを単独の「カメラ3」で行っている)ことを意味するものである。 イ 引用例2には、上記第3の4のとおり、 「 光学読取装置において発光素子アレイからの光を利用して原稿情報を読取用受光素子で読取る際の、当該発光素子アレイの発光量を制御するに当り、 発光素子アレイの各ドットからの発光の一部を原稿を介さずに直接受光できる位置に設置した長尺状のホトダイオードの受光素子アレイである補助受光素子で検出し、その補助受光素子から受光量に応じて得られる出力をその発光素子にフィードバックさせ、このフィードバック量に応じてその発光素子の発光量を制御する技術。」 である引用発明2が記載されている。 そして、上記第3の3(5)に摘記したように、引用例2には、「このようにすれば、発光素子10の発光量に応じた補助受光素子からの出力を常にファイードバック(当審注:「ファイードバック」は「フィードバック」の誤記と認める。)させながら発光量の制御を行っているので、発光素子やその他の回路素子の経年変化或いは温度等による一時的な変化にも影響されずに、発光素子アレイの発光量の制御を行うことが出来る。」との記載がある。当該記載を含む引用例2に接した当業者であれば、補助受光素子を配置して発光素子アレイの発光を検出することにより、発光素子アレイ本来の用途に影響を与えずに、発光素子アレイの使用状況下においても、その発光量分布を検知することが可能になるものと理解するのが自然である。 よって、引用発明2は、「読取用受光素子」とは別体の「受光素子アレイ」を「発光素子アレイ」からの「発光の一部を」「直接受光できる位置に設置」することにより、「発光素子アレイ」の発光量を常時検出して補正に利用しようとするものであるといえる。 ウ ここで、本願発明と引用発明2とを対比する。 (ア)引用発明2の「読取用受光素子」は、「原稿情報」を「読み取る」ものであるから、本願発明の「検出用撮像部」に相当する。 (イ)引用発明2の「受光素子アレイ」は、一次元の光量分布、すなわち一次元の像を検出することができるものであるから、撮像部であるといえる。また、その出力が発光素子の発光量を制御するために使用されるものであるから、補正用の受光素子アレイであるといえる。よって、引用発明2の「受光素子アレイ」は、本願発明の「補正用撮像部」に相当する。 (ウ)引用発明2の「発光素子アレイの各ドットからの発光」は、有限の大きさを有する光であって、「発光素子アレイ」全体からの発光も現実には有限の長さと幅を有する面状の光であることは技術常識であり、引用発明2の「発光素子アレイ」は面光源であるといえるから、引用発明2の「発光素子アレイ」は、本願発明の「面光源部」に相当する。 (エ)してみると、引用発明2は、「検出用撮像部」とは別体の「補正用撮像部」を「面光源部」からの「発光の一部を」「直接受光できる位置に設置」することにより、「面光源部」の発光量を常時検出して補正に利用しようとするものであると言い換えることができ、引用発明2は、相違点2の要因となる本願発明の構成である「補正用撮像部」を「検出用撮像部」とは別体の撮像部で構成し、面光源部からの出射光を直接受光できる位置に「補正用撮像部」を設置する構成を備えたものにほかならない。 エ 引用発明と引用発明2との組合せについて (ア)その1 線状光源2を使用する絶縁テープの異物検出除去装置である引用発明において、絶縁テープの異物検出除去装置の使用中における線状光源2の照明むらの変動が異物検出の判定結果に影響を及ぼし得ることは明らかであり、使用中における線状光源2の照明むらの変動に対処することは、引用発明に内在する課題であるといえる。 引用発明と引用発明2とは、光源からの線状の光を対象物に照射し、対象物を介した光を受光部で検出する点において共通する技術に関するものであり、照明むらが検出結果に与える影響を補正するという共通の課題を有するものである。 してみると、引用例1及び2に接した当業者であれば、引用発明において、使用中における線状光源2の照明むらの変動に対処すべく、シェーディング補正ユニット22が使用中における線状光源2の照明むらの変動による影響をも相殺できるようにするために、引用発明2の「読取用受光素子」とは別体の「受光素子アレイ」を「発光素子アレイ」からの「発光の一部を」「直接受光できる位置に設置」する構成を採用し、カメラ3とは別体の受光素子アレイを線状光源2からの光を直接受光できる位置に設置することは、容易に想到し得ることである。 そして、引用発明において、「カメラ3」とは別体の受光素子アレイを「線状光源2」からの「光」を直接受光できる位置に設置した結果、受光素子アレイ(補正用撮像部)の設置位置が、絶縁テープ5(測定対象)を介さずに線状光源2(面光源部)からの光(出射光)を受光できる位置となることは明らかである。 よって、相違点2に係る本願発明の発明特定事項は、引用発明及び引用発明2から、当業者が容易に想到し得ることである。 (イ)その2 また、上記したように、引用発明と引用発明2とは、光源からの線状の光を対象物に照射し、対象物を介した光を受光部で検出する点において共通する技術に関するものであり、照明むらが検出結果に与える影響を補正するという共通の課題を有するものであるから、引用例1及び2に接した当業者であれば、引用発明において、引用発明2の「受光素子アレイである」「補助受光素子から受光量に応じて得られる出力をその発光素子にフィードバックさせ、このフィードバック量に応じてその発光素子の発光量を制御する技術」を採用すべく、線状光源2を発光素子アレイで構成するとともに、発光素子アレイからの発光の一部を直接受光できる位置に受光素子アレイを設置することも、容易に想到し得ることである。 2 本願発明の奏する作用効果 本願発明によってもたらされる効果は、引用発明及び引用発明2から当業者が予測し得る程度のものである。 3 まとめ 以上のとおりであり、本願発明は、引用発明及び引用発明2に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 なお、請求人は、審判請求書の「(c)本願発明と引用発明との対比」において、「(2)しかしながら、本願発明では、シート状の測定対象の全幅に光を照射する一つの面光源部に対して、二つの撮像部(検出用撮像部及び補正用撮像部)を設けておき、一方の撮像部(検出用撮像部)で測定対象を透過する透過光量を測定するとともに、他方の撮像部(補正用撮像部)で面光源部の光量を測定するようにしています。これは、測定対象物を透過する前の光の状態を知るために面光源部の出射面の光量を同時に測定し、かかる光量に基づいて、実際に測定対象を透過してきた光の透過量を補正するためであり、本願発明にあっては、測定対象を透過する透過光量の測定値と、これと同時に測定された面光源部の光量の測定値とを比較することによって、測定対象を透過する光の透過率を高精度に測定できるようにしていますが、このような本願特有の技術的特長を教示するような記載は、引用文献1,2のいずれにもなく、引用文献1,2は、本願明細書[0004],[0017]段落等に記載した本願発明に特有の課題を教示するものでもありません。」、「(4)・・・(中略)・・・また、引用文献2に記載された発明は、光学読取装置の発光素子アレイの発光量のバラツキが少なくなるように、発光素子アレイの発光量を制御することを課題とするものですので、原査定に示された論理づけでは、光源の強度分布のばらつきを補正する構成が導かれるに過ぎません。そこから更に、面光源部の光量変動や輝度ムラがあることを前提として、測定対象を透過する光を検出するとともに、これと同時に測定対象を介さずに面光源部の出射面の光量を測定して、測定対象を透過する光の透過率を高精度に測定できるようにした本願発明に想到する動機づけになり得るものは、引用文献2には何も示されていません。」と主張しているが、本願発明である本願の請求項1に係る発明では、補正用撮像部での測定結果をどのように使用するかについては特定されておらず、補正用撮像部を透過率を測定するために使用するもののみならず、光源の強度分布のばらつきを補正するために使用するものをも包含するものであるから、本願の特許請求の範囲の請求項1の記載に基づいた主張であるとは認められず、採用することができない。 第6 むすび 以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、その余の請求項に係る発明について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2015-06-25 |
結審通知日 | 2015-06-30 |
審決日 | 2015-07-13 |
出願番号 | 特願2008-209489(P2008-209489) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G01N)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 平田 佳規 |
特許庁審判長 |
森林 克郎 |
特許庁審判官 |
麻生 哲朗 渡戸 正義 |
発明の名称 | 透過光検出装置、透過光検出方法、透過光検出プログラム及びシート材の製造方法 |
代理人 | 机 昌彦 |
代理人 | 岡野 功 |
代理人 | 下坂 直樹 |
代理人 | 生富 成一 |